説明

転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法

【課題】保護層が架橋硬化されていても、転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こさず、転写後に剥がしムラを起こさない、転写性に優れる加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなる、転写加飾フィルムであって、該保護層が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであることを特徴とする転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形や熱転写による加飾成形品に用いられる転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられる。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際に金型内に挿入された加飾フィルムをキャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体表面に加飾を施す方法であって、樹脂成形体と一体化される加飾フィルムの構成の違いによって、一般に射出成形同時ラミネート加飾法と射出成形同時転写加飾法に大別される。
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾フィルムの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾フィルムが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾フィルムと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出し、基材を剥離することにより、転写層を転写した加飾成形品を得る。
【0003】
射出成形同時転写加飾法に用いられる転写シートとしては、例えば、離型性シートの離型性面に、未硬化状態において常温で固体であり、且つ、熱可塑性樹脂である紫外線硬化性又は電子線硬化性の樹脂の未硬化樹脂を有することを特徴とする転写シートが提案されている(特許文献1参照)。
また、成形性の良好な基材の上に、未硬化状態では熱可塑性の固体である電離放射線硬化性樹脂からなる保護層を設けた転写シートを、射出成形金型内に配置して、転写シートを真空成形又は真空・圧空成形をした後に、電離放射線を照射して樹脂を硬化させて保護層を形成し、更に金型内を閉じて溶融樹脂を射出して射出成形を行い、金型内で硬度の高い保護層を形成させることを特徴とする成形品の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
これらの方法は、シートの状態で保護層を硬化させると、十分な成形性が得られなくなるため、真空成形後、真空・圧空成形後又は射出同時成型後に、紫外線もしくは電子線を照射して、保護層の硬化がなされるが、真空成形、真空・圧空成形又は射出同時成型の際に、未硬化樹脂層が流動するために、成形体への転写が良好になされない場合があった。
従って、既に保護層を硬化させた転写用加飾フィルムを真空成形、真空・圧空成形又は射出同時成型あるいは熱転写に用いることが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−132095号公報
【特許文献2】特開平6−155518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、保護層を硬化させた加飾フィルムを射出成形同時転写や熱転写に用いるべく鋭意研究を重ねた結果、加飾フィルムの離型層と保護層との剥離強度を適切な範囲とすることにより、射出成形同時転写後及び熱転写後の加飾樹脂成型品の表面を良好にできることを知見した。
本発明は、加飾樹脂成型品に意匠性を付与するための射出成形同時転写加飾法及び熱転写に用いられる加飾フィルムであって、加飾樹脂成型品の最表面の層として転写される保護層が、電離放射線硬化性樹脂により構成され、かつ転写後の離型層と保護層との剥離強度範囲を適切にすることにより、転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こさず、転写後に剥がしムラを起こさない、転写性に優れる転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1] 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなる、転写加飾フィルムであって、該保護層が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであることを特徴とする転写加飾フィルム、
[2] 基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、基材上に離型層を積層する工程、該離型層上に重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層を形成する工程、該保護層の上に着色層を積層する工程及び該着色層の上に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする転写加飾フィルムの製造方法、
[3] 上記[1]に記載の転写加飾フィルムを用いてなる加飾成形品、及び
[4] 上記[2]に記載の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて熱盤によって基材側から該転写加飾フィルムを加熱する工程、加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程及び該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法を提供するものである。
但し、剥離強度測定方法は以下の通りである。
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護層が架橋硬化されていても、転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こさず、転写後に剥がしムラを起こさない、転写性に優れる転写加飾フィルム及びその製造方法並びにそれを用いた加飾成形品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の転写加飾フィルムの一例の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の転写加飾フィルムの転写後の該離型層と該保護層との剥離強度を測定する評価用試料の形状を示す平面模式図である。
【図3】本発明の転写加飾フィルムの転写後の該離型層と該保護層との剥離強度を測定する評価用試料の断面形状及び剥離方向を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の転写加飾フィルムの好ましい一例の断面を示す模式図である。
図1に示される本発明の転写加飾フィルム10は、基材11上に、離型層12、保護層13、必要に応じて設けられるプライマー層14、着色層15、接着剤層16を順に積層させてなり、保護層13が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ転写後の離型層12と保護層13との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであることを特徴とする。この剥離強度が0.1N/25mm未満であると転写時に層間剥離を起こす恐れがあり、1.0N/25mmを超えると転写後に剥がしムラを起こす恐れがあり、いずれも本発明の課題を解決し得ない。
【0010】
[基材]
本発明に係る基材11は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられる樹脂フィルムの厚みは、通常10〜150μmであり、10〜125μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。
また、基材11は、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムとして使用することができる。
【0011】
本発明においては、基材11として、ポリエステルフィルムを用いることが、耐熱性、寸法安定性、成形性、及び汎用性の点で好ましい。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーをいう。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。さらに本発明で用いるポリエステル樹脂は、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であっても良く、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのモノマーやポリマーとの共重合体であっても良い。
【0012】
ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
なお、該ポリエステル樹脂はホモポリマーでも良く、コポリマーでも良く、また第三成分を共重合させたものであっても良い。例えば、一般に耐熱性や寸法安定性に優れるポリエチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)としたポリエステル樹脂と、一般に成形性に優れるポリブチレンテレフタレートを主成分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)とするポリエステル樹脂とを配合することができる。該配合比としては、得られるフィルムの動的弾性率により適宜選択すれば良く、通常70/30〜95/5であり、75/25〜85/15の範囲が好ましい。このように配合したポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性、及び成形性に優れるため、本発明の基材シートとして好適に用いることができる。
【0013】
また、ポリエステルフィルムには、作業性を向上させる目的で、微粒子を含有させることが好ましい。微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機粒子、アクリル系樹脂などからなる有機粒子、内部析出粒子などを挙げることができる。微粒子の平均粒径は0.01〜5.0μmが好ましく、0.05〜3.0μmがより好ましい。また、ポリエステル系樹脂中の微粒子の含有量は0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。また、必要に応じて各種安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤などを配合することもできる。
【0014】
本発明に用いられるポリエステルフィルムは、例えば以下のように製造される。まず上記のポリエステル系樹脂とその他の原料をエクストルーダーなどの周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でも良い。また、必要に応じ、熱固定を施す前又は後に再度縦及び/又は横方向に延伸しても良い。本発明においては十分な寸法安定性を得るため延伸倍率を面積倍率として7倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、得られるポリエステルフィルムを転写加飾フィルムに用いた場合、該転写加飾フィルムが射出樹脂を射出する際又は熱転写する際の温度域で再び収縮せず、当該温度域で必要なフィルム強度を得ることができる。なお、ポリエステルフィルムは、上記のように製造しても良いし、市販のものを用いても良い。
【0015】
また、ポリエステルフィルムは、後述する離型層との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、基材は、基材と各層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施しても良い。なお、ポリエステルフィルムとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
【0016】
[離型層]
離型層12は、保護層13、所望により積層されるプライマー層14、着色層15、及び接着剤層16からなる転写層の、基材シート11からの剥離を容易に行うために設けられるものである。離型層12は、図1に示すように、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、一部に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
【0017】
離型層は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50重量%以上含有組成物で離型層12を構成することが特に好ましい。
離型層12の厚みは、通常、0.01〜5μm程度であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲である。
【0018】
[保護層]
保護層13は、重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。この重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwは1000〜40000であることが好ましい。重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが1000以上であれば転写後の剥離強度が高過ぎることがなく好ましく、また、重量平均分子量Mwが40000以下であれば剥離強度が低過ぎることがなく好ましい。これらの観点から、重量平均分子量Mwは、より好ましくは1500〜25000、特に好ましくは、2000〜20000である。
【0019】
本発明において、保護層13を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線硬化性樹脂として用いられる重合性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、分子中に複数のラジカル重合性不飽和基を持つ多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0020】
さらに、重合性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
上述の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、成形性を確保する観点から2官能性ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが特に好ましい。
【0021】
本発明においては、前記重合性(メタ)アクリレートオリゴマーとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性(メタ)アクリレートオリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0023】
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0024】
また、保護層13には所望によりフィラーを含有させても良い。フィラーを含有させることで、タック性をさらに改善させることができ、印刷適性を付与し得る。
フィラーの種類としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウムなどの無機物、アクリルビーズ、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)などの有機高分子などからなる粒子が用いられる。これらのうち、タック性低減効果を有し、取り扱いが容易で、かつ安価なシリカが好適である。
フィラーの平均粒径は好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmであり、添加量は、保護層を形成する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がさらに好ましい。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状などである。
【0025】
保護層13の厚みは、通常、1〜50μm程度であり、好ましくは、5〜15μmの範囲である。
【0026】
保護層13には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐傷付き性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0027】
[プライマー層]
本発明の転写加飾フィルムは、保護層13と後述する着色層15との間に、さらにプライマー層14を積層することが好ましい。プライマー層14を積層することにより、保護層13と着色層15の密着性をさらに向上させることができるからである。プライマー層14は透明又は半透明な層であることが好ましく、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂の1種単独又は2種以上の混合物が用いられるが、特にポリウレタン系2液硬化型樹脂を用いたものが好ましい。
上記樹脂を溶媒に溶解した塗工液を、公知の方法で塗布、乾燥してプライマー層とする。プライマー層の厚みについては、通常、0.5〜20μm程度であり、好ましくは、1〜5μmの範囲である。
【0028】
[着色層]
本発明に係る着色層15は、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり射出樹脂などの着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層には、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けられる場合の外、それ単独で装飾層を形成する場合がある。
本発明に係る絵柄層は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために設けられる層である。絵柄層の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。
着色層15は、通常は、上記の保護層13又はプライマー層14に印刷インキでグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法により形成することで、図1に示すように保護層13と接着剤層16との間に形成される。着色層15の厚みは、意匠性の観点から3〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0029】
着色層15の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、セルロース系樹脂などを好ましく挙げることができるが、アクリル系樹脂単独又はアクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂との混合物を主成分とするのが好ましい。これらの中では、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂又は別のアクリル系樹脂を混合すると印刷適性、成形適性がより良好となり好ましい。ここで、アクリル系樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体などのアクリル系樹脂〔ただし、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう〕、フッ素などによる変性アクリル樹脂が挙げられ、これらを1種又は2種以上の混合物として用いることができる。この他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、を共重合させて得られるアクリルポリオールを用いることもできる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。必要に応じ、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂にさらにマレイン酸、フマル酸などのカルボン酸を共重合させても良い。アクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂との混合比は、アクリル系樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂=1/9〜9/1(質量比)程度である。この他、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化ポリオレフィン系樹脂などの樹脂を混合しても良い。
【0030】
本発明に係る着色層15に用いられる着色剤としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮などの金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料、マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウムなどの蛍光顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモンなどの白色無機顔料、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料、イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラックなどの有機顔料(染料も含む)を1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0031】
このような着色層15は、本発明の転写加飾フィルムに意匠性を付与するために設けられる層であるが、意匠性を向上させる目的で、さらに金属薄膜層などを形成しても良い。金属薄膜層の形成は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅などの金属を用いて、真空蒸着、スパッタリングなどの方法で製膜することができる。この金属薄膜層は全面に設けても、部分的にパターン状に設けても良い。
着色層15の形成に用いられる印刷インキは、上記成分の他に、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤などを適宜添加することができる。印刷インキは、上記成分を、通常溶剤に溶解又は分散した態様で提供される。溶剤としては、バインダー樹脂を溶解又は分散させるものであれば良く、有機溶剤及び/又は水を使用することができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエステル類、アルコール類が挙げられる。
【0032】
[接着剤層]
本発明に係る接着剤層16は、好ましくは保護層13、所望により積層されるプライマー層14、及び着色層15を、接着性良く加飾成形品に転写するために形成される。接着剤層16としては、感熱接着剤や加圧接着剤などで構成されるものが挙げられるが、本発明においては、必要に応じて加熱及び加圧によって、加飾成形品に対する密着性を発現するヒートシール層であることが好ましい。接着剤層16に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の1種又は2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、前記剥離層で挙げた塗布方法の中から適した方法をそれぞれ選択して、塗布、乾燥することにより形成できる。
接着剤層16の厚みとしては、転写加飾フィルムを接着性良く、かつ効率的に加飾成形品に転写し得るという点から、0.1〜6μm程度が好ましい。
【0033】
接着剤層16には、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物などの有機系の紫外線吸収剤や、また亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄などの酸化物のような無機系の紫外線吸収能を有する微粒子の添加剤を用いることができる。また、添加剤として、着色顔料、白色顔料、体質顔料、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤なども適宜、必要に応じて使用することができる。
【0034】
[剥離強度測定方法]
次に、図2及び図3に基づいて、剥離強度測定方法の詳細を説明する。図2及び図3は、本発明の転写加飾フィルム10の転写後の離型層12と保護層13との剥離強度を測定する評価用試料の形状を示す平面模式図、並びに評価用試料の断面形状及び剥離方向を示す断面模式図である。
図2に示すように転写後の加飾成形品1の加飾フィルム10の基材11表面に幅25mmのニチバン株式会社製セロハンテープ20を貼り付け、セロハンテープ端それぞれに沿ってカッターで切り込みを入れ、幅25mmの切れ込み部分を有する試験片を作製する。次に、セロハンテープが貼り付いた切れ込み部分の所定長さ(クランプ長さに相当する長さ)を、離型層−保護層間で剥がしてテンシロン引張試験機のクランプに取り付け、図3に示すように、射出樹脂30を有する加飾成形品1表面と基材11及び離型層12とが90°をなすように25℃の温度条件下、100mm/minの速度で基材11及び離型層12と保護層13とを剥離し、その剥離強度を測定する。
【0035】
[転写加飾フィルムの製造方法]
本発明の転写加飾フィルムの製造方法は、基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、[1]基材11上に離型層12を積層する工程、[2]該離型層12上に重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、[3]該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層13を形成する工程、[4]該保護層13の上に着色層15を積層する工程及び[5]該着色層15の上に接着剤層16を積層する工程を含むことを特徴とする。
【0036】
上記工程[1]、[2]、[4]及び[5]の積層方法は、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗工手段が用いられる。
なお、着色層15を例えば上記のように絵柄層と隠蔽層との組み合わせとする場合は、一層を積層した後、乾燥し、その後次の層を積層すれば良い。
【0037】
本発明における保護層13を形成する工程[3]において、離型層12上に積層された電離放射線硬化性樹脂組成物層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜60kGy(1〜6Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0038】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0039】
上記のようにして得られた本発明の転写加飾フィルムは、射出成形同時転写用加飾フィルム及び熱転写用加飾フィルムとして好適に用いられる。
[射出成形同時転写加飾による加飾成形品の製造方法]
以下に、射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法を説明する。
射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法は、以下の工程(1)〜(5)を含むものである。
(1)まず、本発明の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて、熱盤によって基材側から転写加飾フィルムを加熱する工程、
(2)加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程、及び
(5)該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程。
【0040】
上記工程(1)及び(2)において、転写加飾フィルムを加熱する温度は、基材シートのガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。
なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさし、基材として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70〜130℃程度である。
【0041】
上記工程(3)において、後述する射出樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該転写加飾フィルムと射出樹脂とを一体化させる。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、転写加飾フィルムが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜320℃程度である。
このようにして得られた加飾成形品は、冷却した後に金型から取り出した後、基材11及び剥離層12を剥離することにより保護層13、所望により設けられるプライマー層14、着色層15及び接着剤層16からなる転写層が転写された加飾成形品となる。
【0042】
[製造方法:射出樹脂]
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であれば良く、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でも良いし、二種以上混合して用いても良い。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述の基材に用いることのできるものと同様の公知の着色剤を使用できる。
加飾成形品を構成する射出樹脂成形体の厚みについては特に制限はなく、当該加飾成形品の用途に応じて選定されるが、通常1〜5mm、好ましくは2〜3mmである。
【0043】
[熱転写による加飾成形品の製造方法]
加飾前の成形品の表面に加熱された転写加飾フィルムを密着させた後冷却して加飾成形品を得る。熱転写による加飾の場合も、上記の射出成形同時転写加飾の場合と同様に、転写加飾フィルムを加熱する温度は、基材シートのガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましく、ガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。
加飾前の成形品の熱転写する表面は平面が好ましいが、なだらかな局面であっても良い。加飾前の成形品はシート状であっても良い。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
1.重量平均分子量
GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された値を用いた。
2.剥離強度
上記の方法による。
【0045】
実施例1〜6及び比較例1〜2
易接着処理が施された2軸延伸PETフィルム(厚み:75μm)上に、アクリル−メラミン系樹脂をグラビア法により塗布して、離型層(厚み:3μm)を形成した。
次いで、第1表に示す重量平均分子量を有する電子線硬化性樹脂EB−1乃至EB−8のいずれかを第1表に示すように電子線硬化性樹脂組成物として用いて上記離型層の上にグラビアリバース法により塗布して、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させ、保護層(厚み:12μm)を形成した。
なお、EB−1乃至EB−7は、いずれも2官能ウレタンアクリレートオリゴマーであり、EB−8は、2官能ウレタンアクリレートモノマーであった。
次に、上記保護層の上に、ポリウレタン系2液硬化型プライマー液を塗布してプライマー層(厚み:1.5μm)を形成した。
次いで、上記プライマー層の上に、アクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂とをバインダー樹脂とした印刷インキ(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂:50質量%)を塗工量3g/m2でグラビア印刷を施して木目模様の絵柄層を形成し、さらにアクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂とからなる樹脂組成物(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂:50質量%)を塗工量4g/m2でグラビア印刷を施して接着剤層を形成し、8種類の転写加飾フィルムを得た。これらの8種類の転写加飾フィルムを上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜6の転写加飾フィルムは、いずれも転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こさず、かつ転写後に剥がしムラを起こすことがなく、転写性に非常に優れ、取り扱いが容易であった。
これに対し、比較例1の転写加飾フィルムは転写時に離型層と保護層界面での剥離を起こし、比較例2の転写加飾フィルムは転写後に剥がしムラを起こし、いずれも転写性が劣り、取り扱いが難しかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の転写加飾フィルムは、射出成形同時転写加飾及び熱転写による各種の加飾成形品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
1 加飾成形品
10 転写加飾フィルム
11 基材
12 離型層
13 保護層
14 プライマー層
15 着色層
16 接着剤層
20 セロハンテープ
30 射出樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなる、転写加飾フィルムであって、該保護層が重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmであることを特徴とする転写加飾フィルム。
剥離強度測定方法:
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。
【請求項2】
前記重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが、1000〜40000である請求項1に記載の転写加飾フィルム。
【請求項3】
前記離型層が、熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体及びこれらの樹脂の変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の転写加飾フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂及び硝化綿から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の転写加飾フィルム。
【請求項5】
前記離型層が、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
【請求項6】
前記保護層と前記着色層との間に、さらにプライマー層を積層してなる請求項1〜5のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
【請求項7】
前記基材がポリエステルフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の転写加飾フィルム。
【請求項8】
基材上に、離型層、保護層、着色層及び接着剤層をこの順に積層してなり、転写後の該離型層と該保護層との剥離強度が0.1〜1.0N/25mmである転写加飾フィルムの製造方法であって、基材上に離型層を積層する工程、該離型層上に重合性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物層を積層する工程、該電離放射線硬化性樹脂組成物層に電離放射線を照射し該電離放射線硬化性樹脂組成物層を架橋硬化して保護層を形成する工程、該保護層の上に着色層を積層する工程及び該着色層の上に接着剤層を積層する工程を含むことを特徴とする転写加飾フィルムの製造方法。
剥離強度測定方法:
テンシロン引張試験機を用いて、25℃の温度条件下で100mm/min、剥離方向90°で剥がした際の剥離強度を測定する。
【請求項9】
前記重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mwが、1000〜40000である請求項8に記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記離型層が、熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体及びこれらの樹脂の変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物から構成されることを特徴とする請求項8又は9に記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂及び硝化綿から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記離型層が、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物から構成されることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記保護層を形成する工程と前記着色層を積層する工程との間に、さらに該保護層の上にプライマー層を積層する工程を含む請求項8〜12のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記基材がポリエステルフィルムである請求項8〜13のいずれかに記載の転写加飾フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の転写加飾フィルムを用いてなる加飾成形品。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれかに記載の製造方法により得られた転写加飾フィルムの基材側を金型内に向けて熱盤によって基材側から該転写加飾フィルムを加熱する工程、加熱された該転写加飾フィルムを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾成形品を取り出す工程及び該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−88421(P2011−88421A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245955(P2009−245955)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】