説明

転写方法及び転写装置

【課題】 樹脂の無駄を防ぐと共に、型がない部分への樹脂の供給をなくして良好な転写を可能にする
【解決手段】 繰出部40から繰出されたベースフィルム41に間欠塗工部10の塗工ダイ20から樹脂を間欠的に吐出してベースフィルム41に間欠的に塗布膜43を形成する。この間欠的に形成された塗布膜43は、この塗布膜43の塗工動作と同期して作動する転写部44へ移動し、型ロール46に設けられた型45により転写される。転写された塗布膜43は、紫外線照射装置48により硬化され、巻取部49に巻き取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、型を用いて樹脂の表面に微細な凹凸形状を賦形する転写方法及び転写装置に係り、特にベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写方法及び転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学記録媒体等の微細な凹凸形状のパターンを形成する方法として、紫外線硬化性樹脂等の樹脂に型を押付けて該パターンを賦形する転写方法がある。この転写方法は、例えば特許文献1に開示されているように、巻出部から繰り出される樹脂シートにディスペンサ法やロール転写法により紫外線硬化性樹脂を塗布し、この塗布された紫外線硬化性樹脂に型であるスタンパーを押付けて賦形すると共に、賦形した紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して該樹脂を硬化させるなどの方法である。
【0003】
樹脂シートに樹脂を塗布する方法としては、上記ディスペンサ法やロール転写法のほか、塗工ダイから樹脂をフィルム状に吐出して樹脂シートに塗布するいわゆる塗工法もあるが、従来の塗布方法は、いずれも樹脂シートに樹脂を連続して塗布する方法であった。
【0004】
しかしながら、賦形のための型は、上記特許文献1もそうであるように、樹脂シートの走行方向に連続したものではなく、例えばロールの円周面の一部にのみ取り付けられたものであり、型が存在しない部分があるのが一般的である。
【0005】
この型のない部分は、パターンが転写されることなく樹脂が硬化するため、樹脂が無駄になり、また、樹脂が型の溝に入り込むことがないため、塗布量が多いと、樹脂が溢れて運転に支障をきたすことがあった。
【0006】
ところで、上記塗工法には、特許文献2に開示されている間欠塗工方法がある。この間欠塗工方法は、シート状の基材に塗布剤を間欠的に塗布する方法であり、この間欠塗工方法をこの発明の対象である転写方法に取り入れれば、極めて好都合な転写が可能となる。
【特許文献1】特開平11−345436号公報
【特許文献2】特開2002−345436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記間欠塗工方法を転写の分野に取り込むことにより、樹脂の無駄を防ぐと共に、型がない部分への樹脂の供給をなくして良好な転写を可能にすることのできる転写方法及び転写装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのこの発明による転写方法は、ベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写方法において、前記ベースフィルムに対し樹脂を塗工ダイから間欠的に吐出して該樹脂を前記ベースフィルムに間欠的に塗工すると共に、この間欠塗工と同期させて前記型を前記間欠的に塗工された樹脂に押付けて前記パターンを転写することを特徴としている。
【0009】
なお、前記間欠塗工及び転写は、前記ベースフィルムの走行距離により同期されることが好ましく、また、前記ベースフィルムは連続走行し、連続回転するロールの周面に型を設けたロール式の型により転写する方法であってよく、さらにまた、前記ベースフィルムは間欠的に走行し、互いに対向して開閉されるプレス式の型により転写する方法であってもよい。
【0010】
また、上記目的を達成するためのこの発明による転写装置は、ベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写装置において、前記ベースフィルムに対し樹脂を塗工ダイから間欠的に吐出して該樹脂を前記ベースフィルムに間欠的に塗工する間欠塗工部と、前記型を前記間欠的に塗工された樹脂に押付けて前記パターンを転写する転写部と、前記間欠塗工部と転写部を互いに同期して作動させる同期制御部とを備えてなることを特徴としている。
【0011】
なお、前記同期制御部は、前記ベースフィルムの走行距離検出器を有し、前記ベースフィルムの走行距離により同期を取るように構成されていることが好ましく、また、前記型は、連続回転するロールの周面に型を設けたロール式の型又は、互いに対向して開閉されるプレス式の型のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、上記のように前記ベースフィルムに対し樹脂を塗工ダイから間欠的に吐出して該樹脂を前記ベースフィルムに間欠的に塗工すると共に、この間欠塗工と同期させて前記型を前記間欠的に塗工された樹脂に押付けて凹凸形状のパターンを転写するため、樹脂の無駄を防ぐと共に、型がない部分への樹脂の供給をなくして良好な転写が可能となる効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は、この発明による転写装置の概要構成図であり、10は後述する間欠塗工部であり、20は間欠塗工部10の一部を構成する塗工ダイである。
【0014】
塗工ダイ20は、繰出部40から繰出されるベースフィルム41を巻き掛けて走行させるバックアップロール42の周面に対向配置され、ベースフィルム41に例えば紫外線硬化性樹脂からなる塗布膜43を後述するように間欠的に塗布すなわち塗工する。
【0015】
44は転写部で、型45を周面に取り付けた型ロール46と、この型ロール46と対をなして近接配置された加圧ロール47とからなるいわゆるロール式の型のよるものであり、型ロール46に対向する紫外線照射装置48を有している。これらは一般的な転写装置と同様の構成であるため、詳細な説明は省略するが、型ロール46は、図2に示すように、型ロール46の周面の一部にのみ型45が取り付けられている。
【0016】
転写部44で型45により塗布膜43に転写されたベースフィルム41は巻取部49に巻き取られる。
【0017】
図3は、間欠塗工部10の一例を示すもので、上記特許文献2に記載されたものの1つである。この間欠塗工部10は、塗布ダイすなわち塗工ダイ20に塗布剤21を注入口22から導入し、マニホールド23へ一旦溜めた後、供給通路24を介してリップ25にある吐出口26からフィルム状に吐出して上方向に走行する基材すなわち図1に示したベースフィルム41の表面に塗布剤21を塗布する。
【0018】
供給通路24の途中には通路の一部を構成するダイヤフラム28が設けてあり、このダイヤフラム28にはねじ軸29が連結され、このねじ軸29は、軸受32により回転のみ可能に取り付けられたボールナット33に螺合されている。ボールナット33はカップリング31を介してサーボモータ30に連結されている。
【0019】
サーボモータ30は、コントローラ35、サーボドライバー36及びパルス発生器37により回転量及び回転速度を自動制御され、位置変位設定曲線34のように回転角度Θに対しダイヤフラム28が変位量Xとなるように該ダイヤフラム28を変位させるように構成されている。
【0020】
しかして、ダイヤフラム28が上方へ変位して塗布剤引込み空間38の容積が増加するときには、注入口22から導入された塗布剤21はこの空間38内へ引込まれて蓄えられる。このためダイヤフラム28が上方へ変位するときには、吐出口26からの塗布剤21の吐出が停止する。
【0021】
他方、ダイヤフラム28が下方へ変位して塗布剤引込み空間38の容積が減少するときには、塗布剤引込み空間38に蓄えられた塗布剤21は供給通路24へ吐出され、注入口22から導入された塗布剤21と合流して吐出口26から吐出される。これにより図3に示すように、ベースフィルム41に塗布膜43が間欠的に塗工される。
【0022】
上記間欠塗工部10のコントローラ35には、図1に示すように、型ロール46に取り付けられてベースフィルム41の走行距離を検出する走行距離検出器50が接続されている。この走行距離検出器50は、間欠塗工部10と転写部44との同期を取るための同期制御部を構成するものであり、型ロール46の回転に同期、すなわちベースフィルム41の走行距離に同期して間欠塗工部10を作動させ、ベースフィルム41に塗工された塗布膜43が型ロール46上の型45に合致するように構成されている。
【0023】
次いでこの装置の作用について説明する。繰出部40から繰出されたベースフィルム41には、間欠塗工部10の塗工ダイ20から間欠的に吐出される塗布剤21としての紫外線硬化性樹脂からなる塗布膜43が間欠的に塗工される。
【0024】
ベースフィルム41上の塗布膜43は、ベースフィルム41の走行により転写部44へ搬送され、型ロール46の型45と加圧ロール47により転写が行われる。このとき、塗布膜43は、型45に対向する部分に限定された面積に形成されているため、塗布膜43を形成する紫外線硬化性樹脂の無駄がなくなると共に、型45及びその凹凸形状のパターンがない部分への該樹脂の供給はなく、このため該樹脂が溢れて運転に支障をきたすなどの不都合を生じることがなく、良好な転写が行われる。
【0025】
上記転写が行われた塗布膜43は、紫外線照射装置48により硬化されて転写工程を終了し、ベースフィルム41と共に巻取部49に巻き取られる。
【0026】
図4は、この発明の他の実施形態例を示す概要構成図である。図1に示した実施形態例では、連続回転する型ロール46からなるロール式の型45を用いてベースフィルム41を連続走行させる例を示したが、この図4に示す他の実施形態例は、互いに対向して開閉されるプレス式の型45Aを用いた転写部44Aとし、ベースフィルム41は、繰出部40から間欠的に繰出し、巻取部49へ間欠的に巻き取る間欠走行としたものである。
【0027】
なお、51は型44Aを開閉及び押圧するための加圧装置、52は透明な受台であり、走行距離検出器50はバックアップロール42に取り付けられ、間欠塗工部10と転写部44Aをベースフィルム41の走行距離に同期して作動させるように構成されている。
【0028】
この装置は、間欠的に走行するベースフィルム41に対して間欠塗工部10により間欠的に塗布膜43を塗工し、この塗布膜43を転写部44Aに対応する位置で停止させ、この停止中にプレス式の型45Aにより転写を行う。この装置においても図1に示した装置と同様の効果が得られる。
【0029】
前述した実施形態例においては、間欠塗工部10の吐出口26から塗布剤21を間欠的に吐出させるための塗布剤引込み空間38を塗工ダイ20に設けた例を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、塗布剤引込み空間38は注入口22の上流側の塗布剤供給通路に設けてもよく、また、塗布剤引込み空間38の容積を増減させる手段としては、ダイヤフラム28に限らず、シリンダとピストンからなるものなど種々の間欠塗工装置を適用することができる。さらにまた、塗布膜43を形成する樹脂は、紫外線硬化性樹脂に限らず、熱硬化性樹脂等の他の硬化性樹脂であってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、ベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に間欠的に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写方法及び転写装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明による転写装置の一実施形態例を示す概要構成図。
【図2】図1の型及び型ロールを示す拡大図で、aは平面図、bは側面図。
【図3】図1の間欠塗工部の一例を示す概要構成図。
【図4】この発明による転写装置の他の実施形態例を示す概要構成図。
【符号の説明】
【0032】
10 間欠塗工部
20 塗工ダイ
21 塗布剤
22 注入口
23 マニホールド
24 供給通路
25 リップ
26 吐出口
28 ダイヤフラム
29 ねじ軸
30 サーボモータ
31 カップリング
32 軸受
33 ボールナット
34 位置変位設定曲線
35 コントローラ
36 サーボドライバー
37 パルス発生器
38 塗布剤引込み空間
40 繰出部
41 ベースフィルム
42 バックアップロール
43 塗布膜
44、44A 転写部
45、45A 型
46 型ロール
47 加圧ロール
48 紫外線照射装置
49 巻取部
50 走行距離検出器(同期制御部)
51 加圧装置
52 受台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写方法において、前記ベースフィルムに対し樹脂を塗工ダイから間欠的に吐出して該樹脂を前記ベースフィルムに間欠的に塗工すると共に、この間欠塗工と同期させて前記型を前記間欠的に塗工された樹脂に押付けて前記パターンを転写することを特徴とする転写方法。
【請求項2】
前記間欠塗工及び転写は、前記ベースフィルムの走行距離により同期されることを特徴とする請求項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記ベースフィルムは連続走行し、連続回転するロールの周面に型を設けたロール式の型により転写することを特徴とする請求項1又は2に記載の転写方法。
【請求項4】
前記ベースフィルムは間欠的に走行し、互いに対向して開閉されるプレス式の型により転写することを特徴とする請求項1又は2に記載の転写方法。
【請求項5】
ベースフィルムに樹脂を塗工し、該樹脂に型を押付けて凹凸形状のパターンを転写する転写装置において、前記ベースフィルムに対し樹脂を塗工ダイから間欠的に吐出して該樹脂を前記ベースフィルムに間欠的に塗工する間欠塗工部と、前記型を前記間欠的に塗工された樹脂に押付けて前記パターンを転写する転写部と、前記間欠塗工部と転写部を互いに同期して作動させる同期制御部とを備えてなることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
前記同期制御部は、前記ベースフィルムの走行距離検出器を有し、前記ベースフィルムの走行距離により同期を取るように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の転写装置。
【請求項7】
前記型は、連続回転するロールの周面に型を設けたロール式の型であることを特徴とする請求項5又は6に記載の転写装置。
【請求項8】
前記型は、互いに対向して開閉されるプレス式の型であることを特徴とする請求項5又は6に記載の転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−107193(P2009−107193A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281043(P2007−281043)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】