説明

転写部材及び画像形成装置

【課題】転写部材の電気抵抗値の電圧依存性を0.13〜0.42とし、転写部材の電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性を0.30〔logΩ/mm〕以上1.35〔logΩ/mm〕以下とすることによって、低温低湿環境下においても良好な転写特性を得ることができ、高品質の画像を形成することができるようにする。
【解決手段】像担持体の表面に形成されたトナー像を転写21に転写するための転写部材であって、該転写部材は芯(しん)金及び弾性のある導電性発泡ゴムを備え、前記転写部材の電気抵抗値の電圧依存性は0.13〜0.42であり、前記転写部材の電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性は0.30〔1ogΩ/mm〕以上1.35〔1ogΩ/mm〕以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写部材及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の画像形成装置においては、感光体ドラム上に形成されたトナー像を記録紙に転写させるために転写ローラが使用されている。そして、画像形成装置周辺の温度、湿度等の環境変動の影響を受けにくく、安定した転写特性を得ることができるように、印加電圧の増加に伴って、電気抵抗が1〜3桁(けた)減少する特性を有する導電性ゴムを備える転写ローラが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−248669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の転写ローラのように、電圧依存性が大きい転写ローラを使用すると、通紙外側部へのリーク電流が増加する傾向がある。そのため、低温低湿環境下で幅が狭く抵抗が高い記録紙である葉書等に印刷する場合に、転写かすれが発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、転写部材の電気抵抗値の電圧依存性を0.13〜0.42とし、転写部材の電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性を0.30〔logΩ/mm〕以上1.35〔logΩ/mm〕以下とすることによって、低温低湿環境下においても良好な転写特性を得ることができ、高品質の画像を形成することができる転写部材及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の転写部材においては、像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写部材であって、該転写部材は芯(しん)金及び弾性のある導電性発泡ゴムを備え、前記転写部材の電気抵抗値の電圧依存性は0.13〜0.42であり、前記転写部材の電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性は0.30〔1ogΩ/mm〕以上1.35〔1ogΩ/mm〕以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転写部材は、電気抵抗値の電圧依存性が0.13〜0.42であり、電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性が0.30〔logΩ/mm〕以上1.35〔logΩ/mm〕以下である。これにより、低温低湿環境下においても良好な転写特性を得ることができ、高品質の画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の要部の構成を示す概略図である。
【0009】
図において、10は、本実施の形態における画像形成装置の画像形成ユニットとしてのイメージドラムユニットである。前記画像形成装置は、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、各種の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類のものであってもよい。また、前記画像形成装置は、各色の画像を形成するイメージドラムユニット10を多段式に配設してカラー印刷を行うカラープリンタであってもよいが、ここでは、説明の都合上、単一のイメージドラムユニット10によって単色(例えば、黒色)の印刷を行うモノクロプリンタである場合について説明する。
【0010】
この場合、前記イメージドラムユニット10は、像担持体としてのドラム型の感光体ドラム11を備える。そして、該感光体ドラム11の周囲には、前記感光体ドラム11の表面を帯電するための帯電ローラ13、一様に帯電した感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源18、前記感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を現像し、現像剤としてのトナーをトナー像として付着させる現像ローラ14、感光体ドラム11上のトナー像を記録紙、葉書等の転写材21上に転写するための転写部材としての転写ローラ12、及び、前記感光体ドラム11上に残存したトナーを除去するためのクリーニングブレード16が配設されている。なお、17はトナーを収容するトナーカートリッジであり、15はトナーを現像ローラ14に供給するための供給ローラである。
【0011】
また、19は前記転写材21上に転写されたトナー像を転写材21に熱及び圧力によって定着させるための定着器としての定着ユニットである。該定着ユニット19は、図示されない熱源を内部に備える定着ローラ19a、及び、図示されない付勢部材によって定着ローラ19aに押し付けられる加圧ローラ19bを有する。そして、22はトナーが定着されて装置外部に排出された転写材21が載置される排出トレイである。
【0012】
次に、前記転写ローラ12の構成について詳細に説明する。
【0013】
図2は本発明の第1の実施の形態における転写ローラの概略図である。
【0014】
図に示されるように、転写ローラ12は、導電性の金属から成る円柱状の芯金12aと、該芯金12aの周囲に形成されたゴム層12bとを有し、所型の抵抗値となるように電気導電性が調整された導電性ローラである。
【0015】
また、ゴム層12bは、弾性を備える導電性発泡ゴムから成る。具体的には、ゴムとしてシリコーンゴムを用い、以下に説明するように、ゴムに加硫剤、発泡剤、充填(てん)剤、導電性付与剤等を混合配合して加硫発泡成形されたものである。
【0016】
まず、ゴムとしては、オルガノポリシロキサンポリマーとして、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルシリコーン生ゴム等を用いることができる。また、ビニル基含有のシリコーン生ゴムでもよい。
【0017】
次に、加硫剤としては、有機過酸化物架橋剤であるべンゾイルパーオキサイド、ビス2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を用いることができる。また、付加型架橋剤であるハイドロジエンオルガノシロキサンを用いることもできる。この場合、白金化合物の触媒を添加して、ビニル基含有のシリコーン生ゴムとの組み合わせとなる。
【0018】
次に、発泡剤としては、化学発泡剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)系やアゾジカルボンアミド(ADCA)系等を用いることができる。
【0019】
次に、充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、石英粉、けい酸ジルコニウム、クレー(けい酸アルミニウム)、タルク(含水けい酸マグネシウム)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化クロム、酸化鉄、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、マイカ(雲母粉)、グラファイト等を用いることができる。
【0020】
次に、導電性付与剤としては、カーボンブラック、グラファイト、銀、銅、ニッケルなどの金属粉、導電性亜鉛華、導電性炭酸カルシウム、カーボン繊維等の電子導電性付与剤やイオン導電性付与剤を用いることができる。イオン導電性付与剤は、カチオン性の物質であればよく、H+ 、Li+ 、Na+ 、K+ 、Ag+ 、Zn2 + 等の電解質であればよい。無機質電解質としては、LiBF4 、LiAlCl4 、NaBr、NaI、KI、AgNO3 等が挙げられ、有機電解質としては、第1級、第2級、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩等が挙げられる。これらを溶解させる溶媒としては、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリイミン類等が挙げられる。
【0021】
そして、前記転写ローラ12は前記ゴム層12bを発泡させることで、被接触物である感光体ドラム11及びトナーに対して柔軟に当接させることが可能であり、また、接触幅を大きく得ることで転写電界の良好な領域を広くさせることが可能になる。さらに、適度な押圧力によって機械的なトナー転写の効果を得ることが可能になる。
【0022】
次に、前記画像形成装置が有する感光体ドラム11、転写ローラ12及び転写材21の等価回路モデルについて説明する。
【0023】
図3は比較例における等価回路モデルを示す図、図4は比較例における転写ローラの電流及び電圧の関係を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における等価回路モデルを示す図である。
【0024】
ここでは、特許文献1に記載された画像形成装置を比較例として、本実施の形態における画像形成装置が有する感光体ドラム11、転写ローラ12及び転写材21の等価回路モデルについて説明する。なお、比較例においては、感光体ドラムが111、転写ローラが112、その芯金及びゴム層が112a及び112b、転写材が121であるものとして説明する。
【0025】
比較例における転写ローラ112は、印加電圧の増加に伴って電気抵抗が1〜3桁減少する特性を有する導電性ゴムを用いる。この場合、前記印加電圧に対して電気伝導度が大きく変動するので、電気抵抗の電圧依存性が大きい。
【0026】
そして、導電担体としてカーボンブラックを用いる場合に電圧依存性を大きくすることができる。図4に示されるように、電圧依存性が大きい転写ローラ112の場合、高電圧に対して電流はより多く流れる傾向があるので、耐久使用によってゴムの導電性が低下してきたとしても、電源への負担を増やさずに所望の転写電流を発生させることができることは利点である。その一方で、欠点は、葉書のように幅の狭い高抵抗の転写材121に対して転写かすれやちりが発生することである。
【0027】
ここで、図3に示されるような等価回路モデルを想定する。
【0028】
通紙部における抵抗値は、通紙外側部に比べて転写材121の抵抗値Rsの分だけ大きいため、通紙外側部の電流密度は多い。また、前記通紙部において、電源電圧Vallは、転写材121で消費する電圧Vpと転写ローラ112で消費する電圧Vt1とに分配されるので、前記転写ローラ112の通紙外側部で消費する電圧Vt2に対して、Vt1<Vt2(=Vb)の関係が成立する。そして、図4に示される電圧依存性から、Rt(Vt1)>Rt(Vt2)であるので、通紙部の抵抗値{Rs+Rt1(Vt1)}はRt2(Vt2)に比べて更に大きい。
【0029】
つまり、前記転写ローラ112の電圧依存性が大きいことが原因で、通紙外側部へのリーク電流が助長され、トナーを移動させるための電界が弱くなってしまう。これは、電圧依存性が大きい場合、転写ローラ112と感光体ドラム111との間に転写材121が存在すると、転写材121が存在する領域と存在しない領域との間で流れる電流の差が大きくなるためである。つまり、転写材121が存在しない領域では電流が大量に流れ、抵抗が高い転写材121が存在する領域では電流が流れなくなる。そして、電流が流れやすいところに電流が逃げてしまうからである。すなわち、転写材121が存在せず、転写ローラ112と感光体ドラム111とが直接接触している領域へ電流が逃げてしまい、転写材121が存在する領域では電流が流れなくなる。そのため、転写材121が存在する領域では電界が弱くなってしまう。特に、幅の狭い高抵抗の転写材121である葉書などを、転写材121の電気抵抗が上昇する低温低湿環境で印刷する場合に、転写かすれは悪化する。
【0030】
この対策として、電圧依存性のほとんどないイオン導電性付与剤をゴムに添加する方法がある。しかしながら、図4に示されるように、環境における抵抗値変動が激しく低温低湿環境で高抵抗化するため、最適な転写電流を発生させるためには容量の大きな電源が必要となり問題となる。
【0031】
また、別の対策として、転写ローラ112の弾性部分を2層化して表面層に高抵抗の材料を用いる方法がある。前記表面層の抵抗率を転写材121と同程度に設定すれば、リーク電流を抑制しつつ高抵抗になる領域は部分的であるので、電源への負荷は若干抑制することができる。しかしながら、前記転写ローラ112の構成が複雑化して製造が容易でないことが問題となる。
【0032】
これに対し、本実施の形態における転写ローラ12は、構成が簡素でありながら、電気抵抗の均一性を有する(イオン伝導)と同時に、電気抵抗の圧縮に対する抵抗上昇方向の適度な押圧依存性(電子伝導)及び適度な電圧依存性(電子伝導)を有する、ハイブリッド特性を有する転写ローラ12である。
【0033】
本実施の形態においては、図5に示されるように、ゴム層12bの表面近傍の電気抵抗値を、カーボンブラック電子伝導の押圧依存性を効果的に利用することによって転写材21の電気抵抗程度まで高抵抗化させ、所望の特性が得られるようにした。なお、転写材21は薄いので、圧縮による抵抗上昇に関する問題はない。また、電圧依存性として最適な範囲を検討した。
【0034】
次に、実際に作製した転写ローラ12の実験例について説明する。
【0035】
まず、実験例1について説明する。
【0036】
実験例1では、シリコーン生ゴムとしてTSE260−5U(東芝シリコーン株式会社製、商品名)100〔wt%〕に、イオン導電性付与剤としてポリアルキレングリコールにLiClO4 (過塩素酸リチウム)を10〔wt%〕溶解させたイオン導電性組成物を5〔wt%〕、MTカーボン(Medium Thermal Carbon Black、中粒熱分解カーボンブラック)としてN991(キャンカーブ社製、商品名)を55〔wt%〕、付加架橋剤としてC−25A/C−25B(信越化学工業株式会社製、商品名)を0.2〔wt%〕/3〔wt%〕、及び、発泡剤としてADCA−P(信越化学工業株式会社製、商品名)を2.3〔wt%〕添加して、オープンロールで均一状態に分散するまで混練を行った。
【0037】
得られたシリコーンゴムの半導電性組成物を、プライマーが塗布された芯金12aをセットしたパイプ形状の金型中にトランスファー成形によって注入した。そして、熱風オーブンを使って、150〔℃〕で30分間の加硫を行い、冷却後パイプ金型を脱型して、一次成形ローラを得た。
【0038】
その後、熱風オーブンを使用して、200〔℃〕で2時間及び230〔℃〕で4時間の加硫を行って、二次成形ローラを得た。冷却して24時間経過後、円筒研削盤によって研削して転写ローラ12を作製した。
【0039】
なお、前記MTカーボンは、低ストラクチャで大粒径で比表面積が小さいカーボンブラックであり、N911のメーカ公表値はDBP吸油量44〔cm3 〕/100〔g〕、平均粒子径270〔nm〕、窒素吸着比表面積7〜12〔m2 /g〕である。また、低ストラクチャで大粒径であるので電気伝導度は小さい。
【0040】
次に、実験例2について説明する。
【0041】
実験例2では、MTカーボンを60〔wt%〕添加した。それ以外は実験例1と同様に転写ローラ12を作製した。
【0042】
次に、実験例3について説明する。
【0043】
実験例3では、MTカーボンを65〔wt%〕添加した。それ以外は実験例1と同様に転写ローラ12を作製した。
【0044】
次に、実験例4について説明する。
【0045】
実験例4では、MTカーボンを70〔wt%〕添加した。それ以外は実験例1と同様に転写ローラ12を作製した。
【0046】
次に、実験例5について説明する。
【0047】
実験例5では、MTカーボンを75〔wt%〕添加した。それ以外は実験例1と同様に転写ローラ12を作製した。
【0048】
なお、実験例1〜5との比較のため、典型的な電子伝導性を有する転写ローラ12を作製した。まず、比較例1について説明する。
【0049】
比較例1では 実験例1におけるMTカーボンをアサヒサーマル#80(旭カーボン社製、商品名)に変更して20〔wt%〕添加した。
【0050】
それ以外は実験例1と同様にして転写ローラ12を作製した。アサヒサーマル#80はメーカ公表値でDBP吸油量113〔cm3 〕/100〔g〕、平均粒子径22〔nm〕及び窒素吸着比表面積115〔m2 /g〕である。
【0051】
次に、比較例2及び3について説明する。
【0052】
比較例2及び3では、実験例1〜5との比較のため、典型的なイオン導電性を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとを混合したゴムを加硫発泡成形した転写ローラ12を作製した。
【0053】
アクリロニトリルブタジエンゴム70〔wt%〕とエピクロルヒドリンゴム30〔wt%〕とから成るゴム組成物に、受酸剤としてハイドロタルサイト類化合物を3〔wt%〕、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを3〔wt%〕及びベンゼンスルホニルヒドラジトを3〔wt%〕、加硫剤として粉末硫黄を1〔wt%〕、加硫促進剤としてトリメチルチオ尿素を1〔wt%〕、及び、エニレンチオウレアを1〔wt%〕添加し、密閉式混練機によって100〔℃〕で10分間混練した。
【0054】
前記密閉式混練機からリボン取りしたゴム混合物を、40〔℃〕に温度調節された単軸押出機に投入し、中空チューブ状に押し出した。該中空チューブ状のゴムを適切な長さにカットし、予備成形チューブを成形した。該予備成形チューブを加圧式水蒸気式加硫缶に投入し、160〔℃〕で60分間の一次加硫を行った。
【0055】
この際、化学発泡剤がガス化して発泡するとともに、ゴム成分の架橋も進行した。円筒形状の加硫発泡体チューブの中空部にホットメルト接着剤を塗布した金属製のシャフトから成る芯金(外径6〔mm〕)を圧入挿入して、一次成形ローラを得た。
【0056】
該一次成形ローラを熱風オーブンに入れ、160〔℃〕で1時間の二次加硫を行って、芯金と導電性発泡ゴムとを接着して一体化した後に、冷却して24時間経過後、円筒研削盤によって研削して転写ローラ12を作製した。
【0057】
次に、前記各実験例及び各比較例の特性値の測定並びに各実験例及び各比較例を使用した画像形成装置の画像評価について説明する。
【0058】
図6は本発明の第1の実施の形態における転写ローラの抵抗値の測定方法を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における表面発泡セル径の定義を示す図、図8は本発明の第1の実施の形態における発泡セルが表面でつながっている場合を示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムと転写ローラとの軸間距離を固定した状態を示す図である。
【0059】
まず、温度10〔℃〕、湿度20〔%〕の低温低湿環境(L/L環境)で、特性値としての電気抵抗値を測定した。電気抵抗値は、図6に示されるような方法で測定した。すなわち、ドラム形状の金属35に転写ローラ12を押圧した状態で、安定な環境下において金属35及び転写ローラ12を回転させながら、直流電圧を印加したときの電流値の平均値である。前記ドラム形状の金属35の回転軸と転写ローラ12の回転軸との軸間距離を調整することによって、その際の押圧に対する電気抵抗の変化により押圧依存性を求めることができる。なお、32は定圧電源であり、33は電流計である。また、転写ローラ12の押し込み量は適宜調整する。
【0060】
次に、温度10〔℃〕、湿度20〔%〕のL/L環境で、電気抵抗周むらを測定した。なお、電気抵抗周むらは、転写ローラ12の1周内の電気抵抗の最大値と最小値との比である。
【0061】
次に、製品硬度を測定した。製品硬度の測定値は、転写ローラ12の側面にaskerC硬度計の加圧面を荷重1000〔gf〕で押し当てて読み取った値である。加圧面はローラで浮かせず、かつ、喰(く)い込ませないように止める。
【0062】
次に、平均表面発泡セル径を測定した。平均表面発泡セル径の測定値は、弾性発泡ゴムから成るゴム層12bの表面、すなわち、円筒状のゴム層12bの側面における発泡セル径を平均化したものである。
【0063】
この場合、発泡セル径は、図7に示されるように、転写ローラ12の表面と金属35の輪郭とが交差した曲面における発泡セル31の径を意味し、次の式(1)で定義される。
発泡セル径=√(A×B)/2 ・・・式(1)
なお、Aは発泡セル31の短径〔μm〕であり、Bは発泡セル31の長径〔μm〕である。
【0064】
また、図8(a)に示されるように、複数の発泡セル31同士が連続気泡のようにつながっている場合は、図8(b)に示されるように、各発泡セル31の輪郭を想定し、各発泡セル31を独立したセルとして把握して、発泡セル31の径を求める。
【0065】
次に、電気抵抗の電圧依存性を測定した。電気抵抗の電圧依存性の測定値は、規定の電流値を発生させる場合の電圧Vtrから±500〔V〕の電圧における電気抵抗値R(Vu)及びR(Vl)の比率を1から引いたものである。なお、規定の電流値を発生させる場合とは、温度10〔℃〕、湿度20〔%〕のL/L環境で15〔μA〕の電流を発生させる場合である。
【0066】
ここで、R(Vu)は、Vu=Vt+500〔V〕のときの電流抵抗値であり、R(Vl)は、Vl=Vt−500〔V〕のときの電流抵抗値である。そして、
電気抵抗の電圧依存性=1−{R(Vu)/R(Vl)}
である。
【0067】
また、押圧依存性を求める場合には、まず、所定の押し込み量a〔mm〕及びb〔mm〕において抵抗値Ra及びRbを求める。そして、抵抗値Ra及びRbの対数をとり、それぞれ、La及びLbとする。すると、
押圧依存性=(Lb−La)/(b−a)
である。なお、本実施の形態においては、押し込み量a=0.20〔mm〕及びb=0.30〔mm〕の条件で押圧依存性を求めた。
【0068】
次に、画像評価を行った。画像評価は、解像度600〔DPI〕の光学LED方式電子写真プリンタを使用して行った。この場合、図9に示されるように、感光体ドラム11と転写ローラ12との軸間距離を固定し、オーバーラップ量、すなわち、押し込み量を0.25〔mm〕で固定した。そして、温度10〔℃〕、湿度20〔%〕のL/L環境で、転写材21として葉書を使用し、100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷を行い、画像品質評価を行った。
【0069】
なお、前記100〔%〕濃度パターンは印刷密度が100〔%〕の全面印刷、グレースケールパターンは印刷密度が25〔%〕、キャラクタパターンは印刷密度が5〔%〕である。つまり、前記100〔%〕濃度パターンは、画像形成可能領域全面に画像が形成されるソリッドパターンである。また、前記グレースケールパターンは、解像度600〔DPI〕での2by2画像、すなわち、ドットを形成する際に、縦4ドット分及び横4ドット分の16ますのうち、縦2ドット分及び横2ドット分の4ます分のドットを形成するものである。さらに、前記キャラクタパターンは、文字パターンであり、画像形成可能領域の中で5〔%〕密度に相当するパターンである。
【0070】
転写材21として葉書を使用したのは、リーク電流の問題について、一番条件の厳しい転写材21のサイズが葉書サイズであるためである。転写材21の領域が狭い状態、すなわち、感光体ドラム11と転写ローラ12とが直接接触している領域が大きいほどリーク電流が発生しやすくなる。そのため、葉書サイズの転写材21で良好な結果を得ることができれば、より幅の広いサイズの転写材21の場合にも、リーク電流の問題が発生することがない。
【0071】
次に、前記特性値の測定結果及び画像評価の結果について説明する。
【0072】
図10は本発明の第1の実施の形態におけるカーボンブラックの配合量と電圧−電流曲線との関係を示す図、図11は本発明の第1の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【0073】
なお、図10にはL/L環境での電気抵抗値の電圧−電流曲線が示されている。また、図11には、温度20〔℃〕、湿度50〔%〕の中程度の温度湿度環境(N/N環境)での電気抵抗周むら、L/L環境での電気抵抗値の電圧依存性、及び、L/L環境での電気抵抗値の押圧依存性が示されている。
【0074】
また、実験例及び比較例での画質の評価における良(○)否(×)の定義は、「○:かすれやちりの発生がない」及び「×:かすれやちりの発生がある」である。ここで、「かすれ」は、本来印刷されるべき部分にトナー像が転写されず、転写材21の表面が剥(む)き出しになっている状態である。また、「ちり」は、本来印刷されるべきでない転写材21のバックグラウンドの部分に、転写で散ったトナーが付着している状態である。
【0075】
まず、実験例1について説明する。
【0076】
実験例1では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。押圧依存性の平均値は1.35と大きいので、転写ローラ12の表面近傍は葉書の抵抗率に近くなっていて、電圧依存性は0.42と少し大きくなった。
【0077】
次に、実験例2について説明する。
【0078】
実験例2では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。電圧依存性は0.33、押圧依存性の平均値は1.01であった。
【0079】
次に、実験例3について説明する。
【0080】
実験例3では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。電圧依存性は0.22、押圧依存性の平均値は0.97であった。
【0081】
次に、実験例4について説明する。
【0082】
実験例4では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。電圧依存性は0.13、押圧依存性の平均値は0.30であった。
【0083】
次に、実験例5について説明する。
【0084】
実験例5では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。電圧依存性は0.16、押圧依存性の平均値は0.73であった。
【0085】
次に、比較例1について説明する。
【0086】
比較例1では、電圧依存性が0.76と非常に大きいため、通紙外部へのリーク電流が大きくなり、葉書に対して良好な画質を得ることができなかった。
【0087】
次に、比較例2について説明する。
【0088】
比較例2では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができた。しかし、転写における必要電圧は3750〔V〕となっており、転写電源容量への負担が大きい。
【0089】
次に、比較例3について説明する。
【0090】
比較例3では、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷については、良好な画質を得ることができなかった。すなわち、電圧依存性及び押圧依存性が高かったため、通紙外側部へのリーク電圧が大きくなり、葉書に対して良好な画質を得ることができなかった。
【0091】
このように、本実施の形態においては、カーボンブラックの配合量を55〔wt%〕から75〔wt%〕として、L/L環境における電気抵抗値の電圧依存性が0.13〜0.42で、かつ、押圧依存性が0.30〜1.35〔logΩ/mm〕の転写ローラ12を得ることができた。この特性によって、L/L環境における葉書は良好な画質を得ることができた。
【0092】
更に望ましくは、L/L環境における電気抵抗値の電圧依存性が0.13〜0.33であり、かつ、押圧依存性が0.30〜1.01〔logΩ/mm〕であると非常に高画質な印刷を得ることができる。
【0093】
なお、本実施の形態においては、カーボンブラックの配合量が75〔wt%〕より多い転写ローラ12については、評価を実施しなかった。これは、カーボンブラックの配合量が75〔wt%〕より多いと、硬度のばらつきが発生するからであり、そのために、電気抵抗周むらが大きくなり、印刷時に転写ローラ12のピッチに由来する濃淡むらが発生するからである。
【0094】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0095】
図12は本発明の第2の実施の形態における耐久による電圧−電流特性の変化を示す図、図13は本発明の第2の実施の形態における耐久後の電圧−電流特性の変化を示す図である。
【0096】
前記第1の実施の形態において画像評価を行うために使用したプリンタの転写制御には、ローラ抵抗値の検出、転写電圧決定、印刷電圧印加等の過程が含まれる。ローラ抵抗値の検出過程では、転写ローラ12の電気抵抗値の耐久変化や環境変動をモニタリングする。そして、検出されたローラ抵抗値に対してあらかじめ格納された印刷電圧テーブルに基づいて最適な転写電流を流すための印刷電圧を決定する。また、転写材21の搬送に合わせて印刷電圧を印加する。
【0097】
そして、検出電圧は、定電圧であり、常に1500〔V〕である。その理由は、温度28〔℃〕、湿度80〔%〕の高温多湿環境(H/H環境)においては、ローラ抵抗値が小さくなって転写ローラ12で消費する電圧が小さい場合でも、感光体ドラム11に過剰電圧が供給され、転写ショックが発生しないことを考慮したためである。そして、印刷における転写電圧は、転写電流が15〔μA〕になるように調整している。
【0098】
実験例3の転写ローラ12を搭載した前記第1の実施の形態と同様のプリンタを使用して、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度パターン印刷を行ったところ、新品に近い状態では良好であったが、1000枚印刷すると転写ローラ12の抵抗値の検出不良が発生した。そして、実験例3の転写ローラ12について電圧−電流特性を確認したところ、図12に示されるようになった。1000枚印刷した転写ローラ12としての耐久ローラは、低電圧における電流の立ち上りが小さく、1500〔V〕の印加電圧に対する発生電流が微弱であるため、装置の検出感度に対して不十分になった。
【0099】
転写のメカニズムにおいて、転写電流は転写ローラ12の表面の発泡セルの空隙(げき)をパッシェン則に従って放電電流が流れる。放電によって発生したオゾンは、転写ローラ12の表面を劣化させてしまう。実験例3の転写ローラ12は、平均表面発泡セル径が400〔μm〕と大きく、表面セルで放電を生じるためには高電圧が必要となり、劣化の進行度合いが速くなった。
【0100】
また、耐久ローラは、図13に示されるように、1800〔V〕/3〔μA〕程度を境界にして、別々の電圧−電流曲線で表現されている。境界より高電圧側において検出過程を実施することができれば、転写制御が可能となる。
【0101】
そこで、本実施の形態においては、実験例6として、次のように転写制御を行った。
【0102】
実験例6では、検出過程において、定電流制御を行い、常に6〔μA〕の一定電流に制御した。定電流制御を行ったので、環境変動及び耐久変化による検出印加電圧の変動はほとんど転写ローラ12の電気抵抗値の変化の影響であり、感光体ドラム11に過剰な電圧が印加されて転写ショックが発生する心配はない。
【0103】
また、転写電圧の決定は、検出電流6〔μA〕及びそのときの電圧値に基づいて、あらかじめ格納された高電圧側の電圧−電流曲線に基づく転写制御テーブルに従った。この場合、最適な転写制御テーブル値を転写材21の搬送に合わせて印加した。
【0104】
このように、本実施の形態においては、検出電流6〔μA〕において2300〔V〕の電圧を印加した。そして、耐久ローラの高電圧側の転写制御テーブルに従って、転写電圧として3200〔V〕を印加して、最適な転写電流15〔μA〕を発生した。
【0105】
これにより、実験例1〜4の転写ローラ12を使用した場合、耐久においても良好な画質を得ることができた。
【0106】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0107】
図14は本発明の第3の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【0108】
前記第2の実施の形態で説明したように、実験例3の転写ローラ12の平均表面発泡セル径は400〔μm〕であった。そして、実験例3の転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して、実験例6のように転写制御を行い、5000枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度パターン印刷を行ったところ、転写抜けが発生した。
【0109】
転写のメカニズムにおいて、パッシェン則に従う放電によって発生したオゾンが、転写ローラ12の表面を劣化させ、転写ローラ12の耐久抵抗上昇が進行する。高電圧を印加することによって所望の電流を得ることができるが、放電は更に激しくなる。
【0110】
そこで、本実施の形態においては、実験例7及び8として、次のような転写ローラ12を作製した。
【0111】
まず、実験例7について説明する。
【0112】
実験例7では、有機過酸化物架橋剤としてC−23N/C−3(信越化学工業株式会社製、商品名)を1〔wt%〕/3〔wt%〕、発泡剤としてKE−P−13(信越化学工業株式会社製、商品名)を2〔wt%〕添加した。それ以外は実験例3と同様に転写ローラ12を作製した。
【0113】
次に、実験例8について説明する。
【0114】
実験例8では、付加架橋剤としてC−25A/C−25B(信越化学工業株式会社製、商品名)を0.5〔wt%〕/2〔wt%〕、発泡剤としてKE−P−26(信越化学工業株式会社製、商品名)を3〔wt%〕添加した。それ以外は実験例3と同様に転写ローラ12を作製した。
【0115】
そして、実験例7及び8の転写ローラ12を搭載したプリンタを使用し、次のように印刷を行った。
【0116】
まず、実験例7では、図14に示されるように、転写ローラ12の平均表面発泡セル径は360〔μm〕であった。そして、5000枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度及びグレースケールパターン印刷で良好な画質を得ることができた。
【0117】
次に、実験例8では、図14に示されるように、転写ローラ12の平均表面発泡セル径は130〔μm〕であった。そして、5000枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度及びグレースケールパターン印刷で良好な画質を得ることができた。
【0118】
理論的にセル径が小さい方が有利であるが、実験例8が成形上の限界となった。
【0119】
このように、本実施の形態においては、セル径が130〔μm〕〜360〔μm〕である場合、良好な画質を得ることができた。
【0120】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0121】
図15は本発明の第4の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【0122】
前記第2の実施の形態で説明したように、実験例3の転写ローラ12の平均表面発泡セル径は400〔μm〕であった。そして、実験例3の転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して、実験例6のように転写制御を行い、5000枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度パターン印刷を行ったところ、転写抜けが発生した。これは、セル径が大きくパッシェン則に従う放電開始電圧が高いので、オゾン劣化の進行が速いためである。
【0123】
そこで、本実施の形態においては、実験例9及び10として、次のような転写ローラ12を作製した。
【0124】
まず、実験例9について説明する。
【0125】
実験例9では、有機過酸化物架橋剤としてC−23N/C−3(信越化学工業株式会社製、商品名)を1〔wt%〕/3〔wt%〕、及び、発泡剤としてKE−P−13(信越化学工業株式会社製、商品名)を3〔wt%〕添加した。それ以外は、実験例3と同様に転写ローラ12を作製した。
【0126】
次に、実験例10について説明する。
【0127】
実験例10では、有機過酸化物架橋剤としてC−24/C−3(信越化学工業株式会社製、商品名)を1〔wt%〕/3〔wt%〕、及び、発泡剤としてKE−P−13(信越化学工業株式会社製、商品名)を3〔wt%〕添加した。それ以外は、実験例3と同様に転写ローラ12を作製した。
【0128】
そして、実験例9及び10の転写ローラ12を搭載したプリンタを使用し、次のように印刷を行った。
【0129】
まず、実験例9では、図15に示されるように、転写ローラ12の製品硬度はaskerC24度、平均表面発泡セル径は370〔μm〕であった。そして、5000枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。セル径は実験例3と同等であるが、ゴムが低硬度であるのでセルのつぶれ量が大きくなり、劣化を抑制することができたためである。
【0130】
次に、実験例10では、図15に示されるように、転写ローラ12の製品硬度はaskerC19度、平均表面発泡セル径は390〔μm〕であった。ゴムが低硬度であるので、押し込み量(プリンタでの押し込み量0.25〔mm〕)を固定値に設定すると、セルは容易につぶれるけれども、ゴムの反発が小さいため転写材21に対する圧力が弱くなり、転写効率が良くない。また、押し込み荷重を定荷重に設定すると、セルのつぶれ量が激しく抵抗値が非常に高く見えてしまうので、この現象を回避すべく転写ニップを十分弱く設定すると、ゴムの低硬度化の目的に反し矛盾する。
【0131】
さらに、前記第1の実施の形態より製品硬度がaskerC40度を超えると、電気抵抗のばらつきが大きくなり、良好な画質を得ることができなくなる。
【0132】
このように、本実施の形態においては、製品硬度はaskerC24〜40度である場合、良好な画質を得ることができた。
【0133】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0134】
図16は本発明の第5の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す第1の図、図17は本発明の第5の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す第2の図、図18は本発明の第5の実施の形態における電圧−電流曲線を示す第1の図、図19は本発明の第5の実施の形態における電圧−電流曲線を示す第2の図である。
【0135】
画像評価に使用するプリンタでは、前記第1の実施の形態において説明したように、感光体ドラム11と転写ローラ12との押し込み量を0.25〔mm〕に固定してある。しかし、実験例1〜4の転写ローラ12は低硬度の発泡ゴムであるため、所定の外径寸法に精度良く研磨することが難しかった。
【0136】
そこで、本実施の形態においては、転写ローラ12の外径寸法のばらつきのために感光体ドラム11と転写ローラ12との押し込み量が変化した場合であっても、良好な画質で印刷することができる条件を検討した。なお、実験例1〜4の転写ローラ12の外径寸法はφ16.4〔mm〕であったので、本実施の形態においては、実験例11及び12として、各処方に対して外径寸法の異なる、次のような転写ローラ12を作製した。
【0137】
まず、実験例11について説明する。
【0138】
実験例11では、図16に示されるように、実験例1〜4の処方の外径寸法がφ16.2〔mm〕である転写ローラ12を、それぞれ、実験例1a、実験例2a、実験例3a及び実験例4aとした。そして、各転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷を行った。なお、実験例11の場合は、押し込み量が0.15〔mm〕となった。
【0139】
次に、実験例12について説明する。
【0140】
実験例12では、図17に示されるように、実験例1〜4の処方の外径寸法φが16.7〔mm〕である転写ローラ12を、それぞれ、実験例1b、実験例2b、実験例3b及び実験例4bとした。そして、各転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷を行った。なお、実験例12の場合は、押し込み量が0.4〔mm〕となった。
【0141】
そして、実験例11において説明した実験例1a、実験例2a、実験例3a及び実験例4aの転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して印刷を行った。これにより、図18に示されるような電圧−電流曲線を得ることができた。
【0142】
まず、実験例1aでは、L/L環境において、葉書のキャラクタパターン印刷でのみ良好な画質を得ることができた。100〔%〕濃度及びグレースケールパターン印刷で良好な画質を得ることができなかったが、実用上は問題のないレベルである。この理由は、押圧依存性は大きいけれども、電圧依存性が0.46と大きくなってしまったためである。
【0143】
また、実験例2aでは、L/L環境において、葉書のグレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。電圧依存性が0.37と大きくなっているためである。但し、実用上は問題のないレベルである。
【0144】
さらに、実験例3aでは、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。
【0145】
さらに、実験例4aでは、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。
【0146】
同様に、実験例12において説明した実験例1b、実験例2b、実験例3b及び実験例4bの転写ローラ12を搭載したプリンタを使用して印刷を行った。これにより、図19に示されるような電圧−電流曲線を得ることができた。
【0147】
実験例1b、実験例2b、実験例3b及び実験例4bのいずれの場合も、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。
【0148】
但し、実験例4bでは、転写電流15〔μA〕のときに、実験例2bのイオン伝導の転写ローラと同じ印加電圧が必要となるまで抵抗値が高くなっており、さらに、外径寸法が大きくできてしまうと、イオン伝導ローラよりも高電圧を印加しないとトナーを転写することができなくなるので、本発明の目的を達成することができる限界である。
【0149】
このように、本実施の形態においては、プリンタにおける押し込み量が0.15〜0.4〔mm〕となるように実験例1〜4の転写ローラ12を設定することによって、良好な画質を得ることができた。
【0150】
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、第1〜第5の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第5の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0151】
図20は本発明の第6の実施の形態における転写ローラの外径の変化を示す図、図21は本発明の第6の実施の形態における転写ローラを感光体ドラムに押圧した状態を示す図である。
【0152】
前記第1の実施の形態で説明した実験例1〜4の転写ローラ12は、低硬度の発泡ゴムであるために所定の外径寸法に精度良く研磨することが難しく、成形上の実力を鑑みて、規格公差は±0.1〔mm〕である必要があった。しかしながら、シリコーンゴムの耐摩耗性が充分ではなく、図20に示されるように、耐久テストによって外径の減少が発生する。そのため、転写ローラ12の外径が初期に規格公差の下限に近い寸法の場合、印刷枚数の増加に伴って感光体ドラム11との押し込み量が小さくなり、100〔%〕濃度及びグレースケールパターン印刷において、良好な画質を得ることができなくなる問題が生じた。
【0153】
これは、感光体ドラム11への押し込み量が小さくなったため、前記第5の実施の形態で説明した実験例11の場合と同様に、電圧依存性が大きくなってしまったことが原因である。
【0154】
そこで、本実施の形態においては、実験例13及び14として、感光体ドラム11に対して、転写ローラ12が常に一定荷重で押圧されるようにするために、図21に示されるように、転写ローラ12の中心軸である芯金12aをばねで押し込むようになっている。これにより、転写ローラ12は常に一定荷重で押圧され、感光体ドラム11と転写ローラ12とのオーバーラップ量が常に一定となる。
【0155】
まず、実験例13について説明する。
【0156】
実験例13では、常に線圧37〔gf/cm〕(ばね400〔gf〕相当)で、感光体ドラム11と転写ローラ12とを当接させた。そして、該転写ローラ12の初期、及び、200K枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷を行った。
【0157】
次に、実験例14について説明する。
【0158】
実験例14では、常に線圧84〔gf/cm〕(ばね900〔gf〕相当)で、感光体ドラム11と転写ローラ12とを当接させた。該転写ローラ12の初期、及び、200K枚を印刷する耐久テストの後、L/L環境において、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷を行った。
【0159】
そして、実験例13では、初期及び耐久テスト後のいずれの場合も、葉書のキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。なお、実験例13における転写ローラ12の電圧依存性は図12に示されているものと同様であり、押し込み条件は実験例11に相当する。
【0160】
また、実験例14では、初期及び耐久テスト後のいずれの場合も、葉書の100〔%〕濃度、グレースケール及びキャラクタパターン印刷で良好な画質を得ることができた。なお、実験例14における転写ローラ12の電圧依存性は図12に示されているものと同様であり、押し込み条件は実験例12に相当する。
【0161】
このように、本実施の形態においては、プリンタにおける感光体ドラム11と転写ローラ12との押し込み量が、常に線圧37〜84〔gf/cm〕であるように設計することによって、耐久テストでの転写ローラ12のニップ変化に依らず、常に最適な押し込み条件を確保することができた。また、L/L環境においては、電圧依存性を0.11〜0.34に設定することができ、良好な画質を得ることができた。
【0162】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の要部の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における転写ローラの概略図である。
【図3】比較例における等価回路モデルを示す図である。
【図4】比較例における転写ローラの電流及び電圧の関係を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における等価回路モデルを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における転写ローラの抵抗値の測定方法を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における表面発泡セル径の定義を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における発泡セルが表面でつながっている場合を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムと転写ローラとの軸間距離を固定した状態を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態におけるカーボンブラックの配合量と電圧−電流曲線との関係を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における耐久による電圧−電流特性の変化を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における耐久後の電圧−電流特性の変化を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す第1の図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態における特性値の測定結果及び画像評価の結果を示す第2の図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態における電圧−電流曲線を示す第1の図である。
【図19】本発明の第5の実施の形態における電圧−電流曲線を示す第2の図である。
【図20】本発明の第6の実施の形態における転写ローラの外径の変化を示す図である。
【図21】本発明の第6の実施の形態における転写ローラを感光体ドラムに押圧した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0164】
11 感光体ドラム
12 転写ローラ
12a 芯金
21 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写部材であって、
(b)該転写部材は芯金及び弾性のある導電性発泡ゴムを備え、
(c)前記転写部材の電気抵抗値の電圧依存性は0.13〜0.42であり、
(d)前記転写部材の電気抵抗値の圧縮に対する押圧依存性は0.30〔1ogΩ/mm〕以上1.35〔1ogΩ/mm〕以下であることを特徴とする転写部材。
【請求項2】
前記導電性発泡ゴムは、イオン導電性組成物及びカーボンブラックが添加されて加硫発泡され、ゴム重量に対する前記カーボンブラックの添加量が75〔wt%〕以下である請求項1に記載の転写部材。
【請求項3】
前記導電性発泡ゴムは、表面における平均発泡セル径が90〔μm〕以上360〔μm〕以下である請求項1に記載の転写部材。
【請求項4】
製品硬度は、askerC24〜40度である請求項3に記載の転写部材。
【請求項5】
請求項4に記載の転写部材を有する画像形成装置であって、
前記転写部材は、前記像担持体に当接し、前記転写部材の軸芯から前記像担持体の軸芯までの距離は一定で、オーバーラップ量が0.15〔mm〕以上0.4〔mm〕以下となるように押圧されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の転写部材を有する画像形成装置であって、
前記転写部材は、前記像担持体に対して線圧37〜84〔g/cm〕で押圧されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記転写部材に対する転写電流制御回路の電源として定電流電源を有し、前記転写部材の電気抵抗値を計測するために一定の電流を印加する請求項5又は6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−2628(P2010−2628A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160778(P2008−160778)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】