説明

軸シール機構

【課題】各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保ち、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止すること。
【解決手段】薄板12の側面と対向する低圧側側板18の内壁面18cが、前記低圧側側板18の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板12との隙間が漸次小さくなるようにして、回転軸の軸線方向と交差する方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機、ポンプなどの大型流体機械の回転軸等に用いて好適な軸シール機構に関するものである。また、流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させるタービンに関し、特にその回転軸に適用される軸シール機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスタービンや蒸気タービン等には、回転軸の軸周りに、高圧側から低圧側に漏れるガスの漏れ量を低減するための軸シール機構が設けられており、軸シール機構の一例としては、リーフシール(登録商標)なるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3616016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、リーフシール(登録商標)の摩耗は、薄板(リーフ)の余圧量(半径方向内側、すなわち、回転軸側への押し込み量)、および薄板まわりの圧力分布の不良により発生する。
薄板の余圧量については、製造時および組立時に調整することができる。そのため、薄板の余圧量の不良による薄板の摩耗は、ほとんど発生しない。
一方、薄板まわりの圧力分布については、例えば、特許文献1の図13に符号31で示されている低圧側隙間により調整され、薄板まわりの圧力分布による薄板の摩耗の低減が図られている。
【0005】
しかしながら、薄板29と低圧側側板26との間の隙間(低圧側隙間)31は、リーフシール(登録商標)を構成する各部品(構成要素)の製作誤差、および組立誤差により、リーフシール(登録商標)が回転軸の軸線方向に対して傾き、その結果、所定の低圧側隙間31が確保できなくなって、薄板まわりの圧力分布が崩れて、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗が増大してしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる軸シール機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る軸シール機構は、回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が漸次小さくなるようにして、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に沿って形成されている。
【0008】
本発明に係る軸シール機構によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板と低圧側側板との間に適正な隙間(低圧側隙間)が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる。
【0009】
上記軸シール機構において、前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記薄板の内周先端部に向かって突出する丸みを帯びた湾曲面で接続されているとさらに好適である。
【0010】
このような軸シール機構によれば、内壁面と内周面とで形成された角部がなくなり、内壁面と外壁面とが滑らかな湾曲面で接続されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、内壁面と内周面とで形成された角部に薄板が接触するのを回避することができ、当該角部により薄板が傷つけられるのを回避することができる。
【0011】
上記軸シール機構において、前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向に沿って配列され、前記回転軸の軸線方向に沿って延びる連通穴を介して連通されているとさらに好適である。
【0012】
このような軸シール機構によれば、内壁面の傾斜角度がさほど取れない(内壁面をあまり傾斜させることができない)等、内壁面を傾斜させるだけでは、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾き、薄板まわりに良好な圧力分布を形成させることができない場合でも、連通穴を介して低圧側側板の内壁面と、低圧側側板の外壁面とを連通させることにより、薄板まわりに良好な圧力分布を形成させることができる。
【0013】
本発明に係る軸シール機構は、回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向および軸線方向に沿って前記低圧側側板の内周面に彫り込まれたスリットを介して連通されている。
【0014】
本発明に係る軸シール機構によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、スリットを介して低圧側側板の内壁面と、低圧側側板の外壁面とが連通され、薄板まわりに良好な圧力分布が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる。
【0015】
本発明に係る軸シール機構は、回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向に沿って配列され、前記回転軸の軸線方向に沿って延びる連通穴を介して連通されている。
【0016】
本発明に係る軸シール機構によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、連通穴を介して低圧側側板の内壁面と、低圧側側板の外壁面とが連通され、薄板まわりに良好な圧力分布が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる。
【0017】
本発明に係る軸シール機構は、回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、前記低圧側側板の内壁面の表面粗さが大きくなるように、前記低圧側側板の内壁面の表面が加工されている。
【0018】
本発明に係る軸シール機構によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板と低圧側側板との間に適正な隙間(低圧側隙間)が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる。
【0019】
本発明に係るタービンは、高温高圧の流体を、ケーシングに導き、該ケーシング内部に回転可能に支持された回転軸の動翼に吹き付けることで、前記流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生するタービンであって、上記いずれかの軸シール機構を備えている。
【0020】
本発明に係るタービンによれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができる軸シール機構を備えている。
これにより、長期間にわたってガス漏れ量を低減させることができ、ガスの漏れによる駆動力の損失を低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板まわりの圧力分布の不良による薄板の摩耗を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る軸シール機構をガスタービン(流体機械)に適用した一具体例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る軸シール機構の、ステータに対する組み込み構造を示す図であって、回転軸の軸線を含む断面より見た断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【図7】図6に示す低圧側側板の外壁面を回転軸の軸線方向に沿って見た図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る軸シール機構について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る軸シール機構をガスタービン(流体機械)に適用した一具体例を示す概略構成図、図2は本実施形態に係る軸シール機構の、ステータに対する組み込み構造を示す図であって、回転軸の軸線を含む断面より見た断面図、図3は図2の要部を拡大して示す図である。
【0024】
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4とを備えている。
圧縮機2は、多量の空気をその内部に取り入れて圧縮するものである。通常、ガスタービン1では、後述する回転軸(ロータ)5で得られる動力の一部が、圧縮機2の動力として利用されている。
燃焼器3は、圧縮機2で圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させるものである。
タービン4は、燃焼器3で発生させた燃焼ガスをその内部に導入して膨張させ、回転軸5に設けられた動翼6に吹き付けることで燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させるものである。
【0025】
タービン4には、回転軸5の側に配置された複数の動翼6の他に、ステータ7の側に配置された複数の静翼(静止部)8が設けられており、これら動翼6と静翼8とが回転軸5の軸線方向に交互に配列されている。各動翼6は回転軸5の軸線方向に流れる燃焼ガスの圧力を受けて回転軸5を回転させ、回転軸5に与えられた回転エネルギーが軸端から取り出されて利用されるようになっている。各静翼8と回転軸5との間には、図2に示す環状空間を介して高圧側領域から低圧側領域に漏れる燃焼ガスの漏れ量を低減するための軸シール機構(「リーフシール(登録商標)」ともいう。)10が設けられている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る軸シール機構10は、回転軸5と静翼8との間に、回転軸5の周方向に沿って環状に配置されており、静翼8(図1参照)の内部に保持されたリーフシールハウジング(リーフシールリング)11と、回転軸5の周方向に互いに隙間をあけて設けられた複数枚の薄板12とを備えている。
【0027】
薄板12は、正面視T字状を呈する薄板状の部材であり、外周基端部13がリーフシールハウジング11内に固定され、内周先端部14が回転軸5の周面5aと鋭角をなし、かつ、回転軸5の軸線方向に沿って幅を有するようにして配置され、回転軸5の周面5aに摺接される。また、薄板12は、回転軸5の軸線方向に、板厚で決まる所定の剛性を有し、回転軸5の周方向に柔らかい可撓性を有している。
【0028】
リーフシールハウジング11は、複数枚の薄板12を、高圧側および低圧側の両側から挟み込む環状の部材であり、高圧側に配置される高圧側ハウジング15と、低圧側に配置される低圧側ハウジング16とを備えた二分割構造とされている。
【0029】
高圧側ハウジング15には、回転軸5の周方向に沿うとともに、内周面15aから回転軸5の周面5aに向かって突出する高圧側側板17が、圧力作用方向のガイド板として設けられている。
また、低圧側ハウジング16には、回転軸5の周方向に沿うとともに、内周面16aから回転軸5の周面5aに向かって突出する低圧側側板18が、圧力作用方向のガイド板として設けられている。
【0030】
なお、図2中の符号19は、薄板12の高圧側領域に対向する一方の側縁と、高圧側ハウジング15との間に挟み込まれて薄板12の一方の側縁に接触する分割環状の高圧側プレートであり、図2中の符号20は、薄板12の低圧側領域に対向する他方の側縁と、低圧側ハウジング16との間に挟み込まれて薄板12の他方の側縁に接触する分割環状の低圧側プレートである。
【0031】
図3に示すように、高圧側側板17は、内壁面17aと、内周面17bと、外壁面(傾斜面)17cとにより形成されている。
内壁面17aは、回転軸5の周方向に沿うとともに、低圧側ハウジング16の内壁面16bと対向する高圧側ハウジング15の内壁面15bと同一平面を形成するようにして、回転軸5の軸線方向と直交する方向に沿って延びている。
内周面17bは、回転軸5の周方向に沿うとともに、回転軸5の周面5aと平行になるようにして、回転軸5の軸線方向に沿って延びている。
【0032】
外壁面17cは、回転軸5の周方向に沿うとともに、高圧側側板17の先端(回転軸5の周面5aと対向する側の端)から高圧側側板17の基端(高圧側ハウジング15に接続される側の端)に向かって、末広がりとなるように、すなわち、高圧側側板17の板厚(図3において左右方向の長さ)が漸次厚く(大きく)なるようにして、回転軸5の軸線方向と交差する方向に沿って延びている。
また、内壁面17aと内周面17b、内周面17bと外壁面17c、外壁面17cと内周面15aは、それぞれ連続するようにして接続されている。
【0033】
低圧側側板18は、(第一の)内壁面18aと、(第一の)内周面18bと、(第二の)内壁面(テーパ面:傾斜面)18cと、(第二の)内周面18dと、外壁面(傾斜面)18eとにより形成されている。
内壁面18aは、回転軸5の周方向に沿うとともに、高圧側ハウジング15の内壁面15bと対向する低圧側ハウジング16の内壁面16bと同一平面を形成するようにして、回転軸5の軸線方向と直交する方向に沿って延びている。
内周面18bは、回転軸5の周方向に沿うとともに、回転軸5の周面5aと平行になるようにして、回転軸5の軸線方向に沿って延びている。
【0034】
内壁面18cは、回転軸5の周方向に沿うとともに、低圧側側板18の先端(回転軸5の周面5aと対向する側の端)から低圧側側板18の基端側(内周面18bに接続される側)に向かって、末広がりとなるように、すなわち、低圧側側板18の板厚(図3において左右方向の長さ)が漸次厚く(大きく)なるように、言い換えれば、薄板12との隙間が漸次小さくなるようにして、回転軸5の軸線方向と交差する方向に沿って延びている。
内周面18dは、回転軸5の周方向に沿うとともに、回転軸5の周面5aと平行になるようにして、回転軸5の軸線方向に沿って延びている。
【0035】
外壁面18eは、回転軸5の周方向に沿うとともに、低圧側側板18の先端(回転軸5の周面5aと対向する側の端)から低圧側側板18の基端(低圧側ハウジング16に接続される側の端)に向かって、末広がりとなるように、すなわち、低圧側側板18の板厚(図3において左右方向の長さ)が漸次厚く(大きく)なるようにして、回転軸5の軸線方向と交差する方向に沿って延びている。
また、内壁面18aと内周面18b、内周面18bと内壁面18c、内壁面18cと内周面18d、内周面18dと外壁面18eは、それぞれ連続するようにして接続されており、内壁面18c、内周面18d、および外壁面18eにより、断面視楔形状が形成されるようになっている。
【0036】
本実施形態に係る軸シール機構10によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12と低圧側側板18との間に適正な隙間(低圧側隙間)が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板12まわりの圧力分布の不良による薄板12の摩耗を防止することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る軸シール機構について、図4を参照しながら説明する。
図4は本実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態に係る軸シール機構40は、内周面18dの代わりに、湾曲面(R曲)18fが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
湾曲面18fは、薄板12の内周先端部14に向かって(一定の曲率で)突出する丸みを帯びた面である。これにより、内壁面18cと内周面18dとで形成された角部がなくなり、内壁面18cと外壁面18eとが滑らかに接続されることになる。
【0040】
本実施形態に係る軸シール機構40によれば、内壁面18cと内周面18dとで形成された角部がなくなり、内壁面18cと外壁面18eとが滑らかな湾曲面18fで接続されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、内壁面18cと内周面18dとで形成された角部に薄板12が接触するのを回避することができ、当該角部により薄板12が傷つけられるのを回避することができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0041】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る軸シール機構について、図5を参照しながら説明する。
図5は本実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係る軸シール機構50は、内壁面18cと外壁面18eとを連通する連通穴(バランス穴)51が、回転軸5の周方向および軸線方向に沿って複数個設けられているという点で上述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図5は、本実施形態に係る連通穴51を上述した第2実施形態に適用したものを示している。
【0043】
本実施形態に係る軸シール機構50によれば、内壁面18cの傾斜角度がさほど取れない(内壁面18cをあまり傾斜させることができない)等、内壁面18cを傾斜させるだけでは、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾き、薄板12まわりに良好な圧力分布を形成させることができない場合でも、連通穴51を介して低圧側側板18の内壁面18cと、低圧側側板18の外壁面18eとを連通させることにより、薄板12まわりに良好な圧力分布を形成させることができる。
その他の作用効果は、上述した第2実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0044】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る軸シール機構について、図6および図7を参照しながら説明する。
図6は本実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図、図7は低圧側側板の外壁面を回転軸の軸線方向に沿って見た図である。
【0045】
図6または図7に示すように、本実施形態に係る軸シール機構60は、内壁面18cの代わりに内壁面18gが設けられ、内周面18dにスリット61が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
内壁面18gは、回転軸5の周方向に沿うとともに、高圧側ハウジング15の内壁面15bと対向する低圧側ハウジング16の内壁面16bと平行をなすようにして、回転軸5の軸線方向と直交する方向に沿って延びている。
また、内周面18bと内壁面18g、内壁面18gと内周面18dは、それぞれ連続するようにして接続されている。
【0047】
スリット61は、回転軸5の周方向および軸線方向に沿って、内周面18dから内周面18bに向かって彫り込まれるとともに、内壁面18gと外壁面18eとを連通するようにして内周面18dに複数個設けられている。
【0048】
本実施形態に係る軸シール機構60によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、スリット61を介して低圧側側板18の内壁面18cと、低圧側側板18の外壁面18eとが連通され、薄板12まわりに良好な圧力分布が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板12まわりの圧力分布の不良による薄板12の摩耗を防止することができる。
【0049】
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態に係る軸シール機構について、図8を参照しながら説明する。
図8は本実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【0050】
図8に示すように、本実施形態に係る軸シール機構80は、スリット61の代わりに、内壁面18gと外壁面18eとを連通する連通穴(バランス穴)81が、回転軸5の周方向および軸線方向に沿って複数個設けられているという点で上述した第4実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第4実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第4実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係る軸シール機構80によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、連通穴81を介して低圧側側板18の内壁面18cと、低圧側側板18の外壁面18eとが連通され、薄板12まわりに良好な圧力分布が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板12まわりの圧力分布の不良による薄板12の摩耗を防止することができる。
【0052】
〔第6実施形態〕
本発明の第6実施形態に係る軸シール機構について、図9を参照しながら説明する。
図9は本実施形態に係る軸シール機構の要部を拡大して示す断面図であって、図2と同様の図である。
【0053】
図9に示すように、本実施形態に係る軸シール機構90は、スリット61および連通穴81の代わりに、内壁面18gの表面粗さが大きくなるように内壁面18gの表面が加工されているという点で上述した第4実施形態および第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第4実施形態および第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第4実施形態および第5実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る軸シール機構90によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12と低圧側側板18との間に適正な隙間(低圧側隙間)が形成されることになる。
これにより、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板12まわりの圧力分布の不良による薄板12の摩耗を防止することができる。
【0055】
また、本発明に係るタービン4によれば、各構成要素の製作誤差、および組立誤差により、回転軸5の軸線方向に対して傾いたとしても、薄板12まわりの圧力分布を良好な状態に保つことができ、薄板12まわりの圧力分布の不良による薄板12の摩耗を防止することができる軸シール機構10,40,50,60,80,90を備えている。
これにより、長期間にわたってガス漏れ量を低減させることができ、ガスの漏れによる駆動力の損失を低減させることができる。
【0056】
なお、薄板12と低圧側側板18との間に形成される隙間、連通穴51,81の穴径および穴の数、スリット61の大きさおよび数、内壁面18gの表面粗さは、軸シール機構10,40,50,60,80,90を構成する各構成要素の製作誤差、および組立誤差を考慮した上で決定される。
【0057】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
【符号の説明】
【0058】
4 タービン
5 回転軸
5a 周面
8 静翼(静止部)
10 軸シール機構
11 リーフシールハウジング
12 薄板
13 外周基端部
14 内周先端部
17 高圧側側板
18 低圧側側板
18c 内壁面
18d 内周面
18e 外壁面
18f 湾曲面
18g 内周面
40 軸シール機構
50 軸シール機構
51 連通穴
60 軸シール機構
61 スリット
80 軸シール機構
81 連通穴
90 軸シール機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、
前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、
前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、
前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、
前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が漸次小さくなるようにして、前記回転軸の軸線方向と交差する方向に沿って形成されていることを特徴とする軸シール機構。
【請求項2】
前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記薄板の内周先端部に向かって突出する丸みを帯びた湾曲面で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の軸シール機構。
【請求項3】
前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向に沿って配列され、前記回転軸の軸線方向に沿って延びる連通穴を介して連通されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軸シール機構。
【請求項4】
回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、
前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、
前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、
前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、
前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、
前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、
前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向および軸線方向に沿って前記低圧側側板の内周面に彫り込まれたスリットを介して連通されていることを特徴とする軸シール機構。
【請求項5】
回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、
前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、
前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、
前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、
前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、
前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、
前記低圧側側板の内壁面と、前記低圧側側板の外壁面とが、前記回転軸の周方向に沿って配列され、前記回転軸の軸線方向に沿って延びる連通穴を介して連通されていることを特徴とする軸シール機構。
【請求項6】
回転軸と静止部との間の環状空間を通って、前記回転軸の軸線方向に流れる流体を阻止する軸シール機構であって、
前記静止部の内部に保持されたリーフシールハウジングと、
前記回転軸の周方向に互いに隙間をあけて設けられ、外周基端部が前記リーフシールハウジング内に固定され、内周先端部が前記回転軸の周面と鋭角をなし、かつ、前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板と、
前記複数の薄板を間に挟み込み、前記リーフシールハウジングの低圧側および高圧側にそれぞれ設けられた低圧側側板および高圧側側板と、を備え、
前記薄板の側面と対向する前記低圧側側板の内壁面が、前記低圧側側板の半径方向内側から半径方向外側に向かって、前記薄板との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向と直交する方向に沿って形成され、
前記回転軸の周面と対向する前記低圧側側板の内周面が、前記回転軸の周面との隙間が一定になるようにして、前記回転軸の軸線方向に沿って形成されているとともに、
前記低圧側側板の内壁面の表面粗さが大きくなるように、前記低圧側側板の内壁面の表面が加工されていることを特徴とする軸シール機構。
【請求項7】
高温高圧の流体を、ケーシングに導き、該ケーシング内部に回転可能に支持された回転軸の動翼に吹き付けることで、前記流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生するタービンであって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の軸シール機構を備えていることを特徴とするタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−177420(P2012−177420A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40372(P2011−40372)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】