説明

軸肥大加工方法

【課題】作業者に熟練を要求することなく、ワーク(金属棒材)への拡径部の成形を可能にする軸肥大加工方法を提供する。
【解決手段】軸肥大加工方法は、拡径部の成形に必要なデータ入力や軸肥大加工機への各部の動作指示を操作盤(46)のタッチパネルディスプレイ(44)を通じて実施し、ワーク(W)の一部に拡径部を整形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属棒材の途中にカラー状の拡径部を成形する軸肥大加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の軸肥大加工方法は、金属棒材の軸線方向に離間した一対の保持体に金属棒材を嵌入保持し、そして、一方の保持体を金属棒材の軸線回りに回転させながら、一対の保持体を近接させるべく一方の保持体を移動させて金属棒材にその軸線方向の成形加圧力を付与するとともに、一方の保持体を前記軸線に対して傾動させることで、一対の保持体間における金属棒材の部位を所望の外径まで塑性変形により拡径させる拡径プロセスを実行し、この後、金属棒材の回転に加え、金属棒材に所定の整形加圧力を付与した状態で、前記傾動側の保持体の傾動を元に戻し、拡径部位の幅を一定に整形する整形プロセスを実行する(特許文献1,2)。
【特許文献1】特許第3418698号明細書
【特許文献2】特許第3788751号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1,2の軸肥大加工方法は何れも、作業者が金属棒材に成形又は整形加圧力を付与するアクチュエータや前記保持体を傾動させるアクチュエータを手動にて操作し、その成形過程を目視しながら拡径部を目標サイズに成形しているため、この成形には作業者の熟練度が要求され、生産性の向上を図ることができなかった。
本発明は上述の事情に基づいてなされ、その目的とするところは、作業者に熟練度を要求することなく、拡径部の成形加工を容易に実行でき、その生産性の向上を図ることができる軸肥大加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属棒材の軸線方向に離間した一対の保持体に前記金属棒材をそれぞれ嵌入して保持し、前記保持体の一方を前記軸線の回りに回転させながら、前記保持体の一方を他方に近接させるべく相対的に移動させて前記金属棒材に前記軸線方向に圧縮する拡径加圧力を付与するとともに、前記軸線に対して前記保持体一方を傾動させ、前記一対の保持体間における前記金属棒材の部位を拡径させる拡径プロセスと、この後、前記金属棒材への加圧力を整形加圧力として維持しながら、前記傾動側の保持体の傾動を元に戻し、前記軸線方向に沿う前記拡径部の幅を一定に整形する整形プロセスと順次実行する軸肥大加工方法において、前記拡径プロセスは、成形すべき拡径部の大きささや前記拡径動作を規定する設定値の入力を含むとともに、前記整形プロセスは前記整形動作を規定する設定値の入力を含み、そして、前記入力を含む前記拡径プロセス及び前記整形プロセスがタッチパネルディスプレイを介して実施されることを特徴とする(請求項1)。
【0005】
請求項1の軸肥大加工方法によれば、拡径部の拡径から整形に要求されるすべての動作がタッチパネルディスプレイを通じて実施可能であり、金属棒材への拡径部の成形は熟練度を要することなく実行される。
具体的には、前記拡径プロセスは手動モード及び自動モードから選択され、手動モードが選択されたとき、前記拡径プロセスは複数の段階に分けて実施される(請求項2)。
【0006】
このように前記拡径プロセスにあっては、段階毎に拡径部の拡径過程を把握できる一方、次の段階に進む際、設定値の変更が可能となる。
具体的には、前記拡径プロセスの各段階は、金属棒材の回転回数、前記傾動側の保持体の傾斜角、保持体間の間隔、及び金属棒材の拡径部外径の何れかにて区分されている(請求項3)。
【0007】
更に、前記整形プロセスは、前記傾動側の保持体の傾斜が元に戻された後、所定期間だけ前記金属棒材の回転を維持してから、この回転及び前記金属棒材への前記整形加圧力の付与がそれぞれ停止されるのが好ましい(請求項4)。このような整形プロセスによれば、金属棒材の芯振れが低減される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜3の軸肥大加工方法は、拡径プロセスから整形プロセスの動作がタッチパネルディスプレイを通じて実施されるから、作業者に熟練度を要求することなく、拡径部の成形が可能となり、その生産性の向上に大きく寄与する。
一方、請求項4の軸肥大加工方法は、整形プロセスを実施するにあたり、傾動側の保持体の傾斜が元に戻れた後にあっても、金属棒材の回転を所定の期間に亘って維持するようにしたから、金属棒材の芯振れが低減され、高品質な加工品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は軸肥大加工機を概略的に示す。
軸肥大加工機は、金属棒材のワークWが配置されるべき基準線Aを有し、この基準線Aは水平に延びている。ここで、ワークWは中実及び中空の何れであっても良い。
基準線A上には、図1でみて左方に駆動側ホルダユニット2aが配置されており、駆動側ホルダユニット2aは支持外筒4を備えている。この支持外筒4はその右端から突出した位置にてブラケット(図示しない)を介して一対の軸6に支持され、これら軸6を中心に上下方向に傾動可能である。
【0010】
一方、支持外筒4からは下方に向けて傾動操作部材8が延びており、この傾動操作部材8の下端に傾動シリンダ10のピストンロッドがその先端にて連結されている。それ故、図1に示す状態から、傾動シリンダ10が伸長されると、上述した支持外筒4は一対の軸6を中心として上方、即ち、図1中の矢印Cで示す時計方向に傾動することができる。
支持外筒4内には基準線Aと同心にて保持内筒12が軸受(図示しない)を介して回転自在に配置され、この保持内筒12の左端部は支持外筒4から突出している。保持内筒12の突出部にはプーリ14が取り付けられており、このプーリ14は伝動ベルトを含む動力伝達経路16を介して電動モータ18に接続されている。それ故、電動モータ18が駆動されたとき、保持内筒12は一方向に回転される。
【0011】
一方、保持内筒12内にはその右端に保持体としての保持スリーブ20が嵌合されており、この保持スリーブ20は保持内筒12から所定の距離だけ突出し、保持内筒12と一体的に回転可能である。ここで、保持スリーブ20は前述したワークの挿通を許容し且つワークをその全周に亘って保持するような内径を有する。
また、保持内筒12内にはその左端部には駆動側の排出シリンダ22が嵌合して取り付けられている。この排出シリンダ22は保持内筒12の右端に向けられたピストンロッド(図示しない)を有し、このピストンロッドは抜脱ロッド24に連結されている。この抜脱ロッド24は保持スリーブ20の左端部内に摺動自在に嵌合され、その先端面はワークWが保持スリーブ20内に挿入されたとき、ワークWの一端を所定位置にて受け止めるバッキング面を形成する。しかしながら、排出シリンダ22のピストンロッドが伸長されたとき、抜脱ロッド24は保持スリーブ20内をその右端側に向けて移動し、保持スリーブ20内に挿入されたワークWを保持スリーブ20から押し出すことができる。
【0012】
なお、排出シリンダ22は保持内筒12と一緒に回転するため、排出シリンダ22への圧油の給排経路中にはロータリジョイント(図示しない)が介挿されている。
一方、図1でみて、駆動側ホルダユニット2aの右方にはこのユニット2aと対をなす従動側ホルダユニット2bが配置されている。この従動側ホルダユニット2bはユニット2aの構成要素と左右対称にして同様な構成要素を備えており、ここでは説明の重複を避けるため、ユニット2aの構成要素と同様な機能を発揮する構成要素については同一の参照符号を付し、ユニット2aと相違する点のみを以下に説明する。
【0013】
従動側ホルダユニット2bの支持外筒4はスライド台26上に取り付けられており、このスライド台26はレール状をなす一対の案内ベッド28に摺動自在に支持されている。これら案内ベッド28は基準線Aを挟んで左右に配置され、基準線Aに沿って水平面内を互いに平行に延びている。従って、従動側ホルダユニット2bは駆動側ホルダユニット2aに対し、基準線Aに沿って接離自在である。
【0014】
スライド台26からは下方に向けて加圧操作部材30が延び、この加圧操作部材30の下端には加圧シリンダ32のシリンダ外筒がブラケット(図示しない)を介して取り付けられている。加圧シリンダ32は基準線Aと平行に配置され、そのピストンロッドは加工機のベース側に連結されている。従って、図示の状態から加圧シリンダ32がそのピストンロッドを伸長する方向に作動されたとき、スライド台26、即ち、従動側ホルダユニット2bは駆動側ホルダユニット2aに向けて移動する。
【0015】
次に、上述した軸肥大加工機を使用して実行するワークの加工方法について、図2を参照しながら説明する。なお、図2中、駆動側及び従動側ホルダユニット2a,2bは簡略化して示されている。
図2(a)は、駆動側及び従動側ホルダユニット2a,2bが基準線Aに沿い所定の距離だけ離間した状態を示し、この際、ユニット2a,2bの保持スリーブ20は基準線A上にあって互いに対向している。
【0016】
この状態にて、ユニット2a,2b間に加工すべきワークWが供給され、このワークWはその一端部が駆動側ホルダユニット2aの保持スリーブ20内に挿入される。
ここでの挿入は、ワークWの一端が抜脱ロッド24の先端に当接した時点で停止され、ワークWの一端は抜脱ロッド24を介して排出シリンダ22に受け止められる。
この後、加圧シリンダ32が伸長され、従動側ホルダユニット2bは駆動側ホルダユニット2aに向けて前進させ、ワークWの他端部をユニット2bの保持スリーブ20内に同様に挿入させる。それ故、ワークWの他端もまたユニット2b内の抜脱ロッド24を介して、その排出シリンダ22に受け止められ、図2(b)に示す状態となる。
【0017】
図2(b)の状態にて、ユニット2a,2bの保持スリーブ20間には所定の初期間隔Dが確保され、ここでの初期間隔Dは、ワークWに成形すべき拡径部の外径によって決定される。また、成形される拡径部の軸方向位置は、ワークWの一端とユニット2aにおける保持スリーブ20の外端面との間の距離(ワークWの挿入量)並びにワークWの他端とユニット2bにおける保持スリーブ20の外端面との間の距離(ワークWの挿入量)により決定される。
【0018】
この後、電動モータ18を駆動し、ユニット2a側の保持内筒12を回転させる。このような保持内筒12の回転に伴い、両抜脱ロッド24間にて挟持された状態にあるワークWは従動側ホルダユニット2bの保持内筒12とともに回転する。
このようにしてワークWを回転させながら、加圧シリンダ32は更に伸長されると、駆動側ホルダユニット2aに向けて従動側ホルダユニット2bが更に前進されるので、ワークWは基準線Aに沿い所定の拡径加圧力Faで圧縮される。
【0019】
一方、前述した傾動シリンダ10が伸長されると、図2(c)に示されるように駆動側ホルダユニット2aは軸6の回りに上方に向けて徐々に傾動され、この傾動に伴い、そのユニット2aの保持内筒12は基準線Aに対して所定の角度、具体的には8°以下の角度でもって傾斜される。それ故、ワークWは軸6の軸線とワークWとの交点を中心として曲げられることになる。
【0020】
この際にも、ワークWへの拡径加圧力Faの付与は継続され、ワークWはその軸線方向への圧縮を伴いながら、その曲げ方向でみて内側が塑性変形により膨らむ。このような膨らみはワークWの回転に伴い、その全周に亘って成長し、これにより、ワークWはその一部が拡径していくことになる(図2(d))。
この後、拡径加圧力Faの付与が更に継続され、一対のユニット2a,2bの保持スリーブ20間の間隔が所定の距離まで縮小されると、この時点にて、拡径プロセスが終了する。この後、加圧シリンダ32の伸長が停止され、加圧シリンダ32は従動側ホルダユニット2bに対する加圧力を所定の整形加圧力Fbに保持する。
【0021】
このような状態で、駆動側ホルダユニット2aの傾動、即ち、ワークWの曲げが徐々に元に戻され、そして、図2(e)に示されるようにユニット2a,2bの保持スリーブ20は共に基準線A上に位置付けられ、互いに再び対向する。
このようなワークWの曲げ戻しは、ワークWの軸線方向に沿った膨らみの幅をその全周に亘って均一にすべく整形することになり、この結果、ワークWにその一部を肥大化させた円形且つ一定幅の拡径部Cが成形される。ここで、拡径部Cの幅は前述の整形プロセスが完了した時点での保持スリーブ20の間隔により決定され、そして、拡径部Cの成形位置はユニット2a,2bでの前述したワークWの挿入量によって決定される。
【0022】
この後、駆動側ホルダユニット2a側の保持内筒12の回転が停止され、そして、従動側ホルダユニット2bへの整形加圧力Fbは解放される。
この状態で、ユニット2a,2bの一方の排出シリンダ22が伸長され、その抜脱ロッド24を介してワークWが押し出されると、この押し出しは従動側ホルダユニット2bの後退を伴い、その一方のユニット2からワークWを抜け出ださせ(図2(f))、そして、従動側ホルダユニット2bは加圧シリンダ32の収縮を受け、所定の位置まで後退する。この後、他方の排出シリンダ22が伸長されると、ワークWは他方のユニット2からも抜け出すことができる。
【0023】
前述した軸肥大加工機は、前述の拡径プロセス及び整形プロセスを制御するため、図1に示されるようにコントローラ34を備え、このコントローラ34は電動モータ18に電気的に接続されているとともに、傾動シリンダ10、排出シリンダ22及び加圧シリンダ32の伸縮動作をそれぞれ制御する電磁制御弁36,38,40にも電気的に接続されている。
【0024】
また、コントローラ34には拡径プロセスや整形プロセスが実行されているとき、軸肥大加工機の各部の動きや、拡径部Cの成形状態を検出するセンサ類42が電気的に接続されている一方、タッチパネルディスプレイ44を備えた操作盤46にも電気的に接続されている。
前述した拡径部Cを成形するあたり、コントローラ34には、操作盤46のタッチパネルディスプレイ44を介して、加工前のワークWやワークWに成形すべき拡径部Cのそれぞれのサイズ、そして、拡径及び整形プロセス中における軸肥大加工機の各部の動作を規定する設定値が入力可能となっている。
【0025】
それ故、タッチパネルディスプレイ44は、前述したサイズや設置値の入力を受け付ける入力画面や数値入力キー、軸肥大加工機の動作スイッチ、運転停止スイッチ、運転モード切換スイッチ、軸肥大加工機の各部の動作を個別に操作する各種の操作スイッチ等が表示される。
また、タッチパネルディスプレイ44には、拡径プロセス又は整形プロセス中、軸肥大加工機における各部の動作状態や、成形された拡径部Cの成形データ等を示す画面等もまた表示されるようになっている。
【0026】
図3は、運転モード切換スイッチにより選択される手動モード、自動モード、エラー表示モード及びデータ表示モード等にて、タッチパネルディスプレイ44に表示される入力画面、動作表示画面、エラー表示画面、成形データ表示画面を概略的に示す。
次に、図4及び図5を参照しながら、運転モード切換スイッチにより手動モードが選択されたとき、この手動モードにて実行される拡径プロセス及び整形プロセスをより具体的に説明する。
【0027】
先ず、図4の拡径プロセスが実行されるに先立ち、ワークWや成形すべき拡径部Cのサイズは、手動モードにて、タッチパネルディスプレイ44に表示される入力画面を通じてコントローラ34に既に入力されているものとする。
先ず、拡径プロセスにあっては、前述した駆動側及び従動側ホルダユニット2a,2b間にてワークWを挟持すべく、タッチパネルディスプレイ44上の操作スイッチにより従動側ホルダユニット2bが駆動側ホルダユニット2aに向けて加圧開始位置まで前進される(ステップS1)。次に、タッチパネルディスプレイ44上の数値入力キーを介して、拡径加圧力Fa、ワークWの回転回数Na、ワークWの回転速度Va、駆動側ホルダユニット2aの傾斜角θ及びユニット2a,2bにおける保持スリーブ20間に残すべき間隔Dcがそれぞれ設定され、そして、タッチパネルディスプレイ44上の動作スイッチより軸肥大加工機の動作が開始される(ステップS2)。
【0028】
この動作の開始後、ステップS2での入力データが適正か否かが判別され(ステップS3)、ここでの判別結果が偽(No)の場合、異常処理が実行され(ステップS4)、拡径プロセスを終了する。
一方、ステップS3の判別結果が真(Yes)の場合、加圧シリンダ32からワークWに付与される実加圧力Fxが設定された拡径加圧力Faの1/2に達したか否かが判別され(ステップS5)、ここでの判別結果が偽の場合には、ステップS5の判別結果が真になるまでコントローラ34は待機する。
【0029】
ここでの実加圧力Fxが拡径加圧力Faの1/2に設定されているのは、ワークWを保持スリーブ20内に確実に挿入させるためであり、ワークWの挿入が可能な圧力で且つワークWに座屈等の変形が生じない加圧力であれば、ここでの実加圧力Fxは拡径加圧力Faの1/2以下であってもよい。
ステップS5の判別結果が真になると、第1段の動作が開始される(ステップS6)。具体的には、ここでは、設定された拡径加圧力Fa、ワークWの回転速度Va、傾斜角θ、回転回数N及び保持スリーブ20間に残すべき間隔Dcの設定値のうち、何れか1つが選択され、そして、その選択された設定値に至る第1段の経過点(θ1,Na1,Dc1o又はVa1)が設定される。この設定の後、タッチパネルディスプレイ44上の動作スイッチにより、軸肥大加工機の動作が再開され、拡加圧力Fa1及びワークWの回転速度Va1によって第1段の拡径プロセスが実行され、そして、駆動側ホルダユニット2aは設定された傾斜角θ1だけ傾動する。
【0030】
そして、選択された設定値に関し、第1段の経過点に達したか否かが判別され(ステップS7〜S10の何れか)、ここでの判別結果が偽の場合、そのステップの判別結果が真になるまで、コントローラ34は待機する。
この後、前記ステップ(ステップS7〜S10の何れか)の判別結果が真になり、第1段の動作が完了すると、次に、ステップS11〜S15に示す第2段の動作、ステップS16〜ステップS20に示す第3段の動作、そして、ステップS21,S22の最終段の動作が順次同様にして実施される。
【0031】
ここで、第2段及び第3の動作にて設定される設定値(θ2,Na2,Dc2又はVa2:θ3,Na3,Dc3又はVa3)は、以下の関係を有する。
θ1<θ2<θ3<θ …(1)
Na1<Na2<Na3<Na …(2)
Dc1>Dc2>Dc3>Dc …(3)
Va1<Va2<Va3<Va …(4)
なお、これらの設定値の関係は一例であって、例えば、前記(1)式は下記の(1’)式に置き換えることも可能である。
【0032】
θ1<θ3<θ2<θ …(1’)
また、回転数や回転角度等も同様に設定しても良い。
そして、最終段の動作では、ステップS18にて単に動作が再開され、ステップS19にて、保持スリーブ20間の間隔がDcに達したか否かが判別される。ここでの判別結果が真になったとき、拡径プロセスは完了する。
【0033】
拡径プロセスが完了すると、図5の整形プロセスに移行し、ここでは、先ず、タッチパネルディスプレイ44を介して整形加圧力FbやワークWの回転速度Vb及びワークWの回転期間Tが設定された後、タッチパネルディスプレイ44上の動作スイッチにより整形プロセスの動作が開始される(ステップS23)。具体的には、このステップS23では、ワークWの回転を伴いながら、駆動側ホルダユニット2aの傾斜角θを0に戻すべく傾動シリンダ10が徐々に収縮される。なお、整形加圧力Fb、ワークWの回転速度Vbは前述した拡径プロセスが完了した時点でのワークWに対する加圧力、回転速度であってもよい。
【0034】
次に、傾斜角θが0に達したか否かが判別され(ステップS24)、ここでの判別結果が偽の場合、コントローラ34はステップS24の判別結果が真になるまで待機する。この後、ステップS24の判別結果が真になると、この時点で、ワークWの回転期間Tが設定され、設定されたワークWの回転期間TだけワークWが回転される(ステップS25)。
【0035】
この後、回転期間Tに達したか否かが判別され(ステップS26)、ここでの判別結果が真になった時点で、ワークWの回転が停止されると同時に、整形加圧力Fbの付与もまた停止される(ステップS27)。
なお、ステップS25,S26では、ワークWを回転期間Tだけ回転させる代わりに、ワークWを所定の回転回数だけ回転させるようにしてもよい。
【0036】
上述したように駆動側ホルダユニット2aの傾動が元に戻された後、ワークWが更に所定期間だけ回転されることで、ワークWの芯直しが良好になされる。
この後、タッチパネルディスプレイ44上の動作スイッチにより、前述したように選択された一方の排出シリンダ22が伸長されて(ステップS28又はS29)、ワークWは対応する一方の側のユニット2から抜け出し、そし、従動側ホルダユニット2bが後退位置まで後退される(ステップS30)。
【0037】
なお、この後、他方の排出シリンダ22が必要に応じて作動され、他方のユニット2からのワークWの抜き出しが実施される。
この後、データ表示モードに切り替え、手動モードで実施した成形データを登録しておくこともできる。
また、前述した運転モード切換スイッチにより自動モードが選択された場合には、自動モードでは必要なデータが入力された後、図4及び図5のルーチンが連続して実行される。
【0038】
さらに、前述の登録しておいた手動モードでの成形データを呼び出し、自動運転モードで実行することもできる。
本発明の軸肥大加工方法を実施するにあたり、本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、例えば、駆動側ホルダユニット2aは水平面内にて傾動されても良いし、従動側ホルダユニット2bが傾動されてもよい。
【0039】
また、拡径プロセスの進行形態も種々の変形が可能であり、例えば、設定値及び判別値を複数選択してもよいし、更には、これらに拡径部Cの外径Cdを加えても良く、また、時間で制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施例の方法を実行する軸肥大加工機を示した概略図である。
【図2】図1の軸肥大加工機により実施される加工手順(a)〜(f)の順序にて示す図である。
【図3】タッチパネルディスプレイに表示される入力画面及び動作表示画面等を示す図である。
【図4】拡径プロセスのルーチンを示すフローチャートである。
【図5】整形プロセスのルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 傾動シリンダ
18 電動モータ
20 保持スリーブ(保持体)
22 排出シリンダ
32 加圧シリンダ
44 タッチパネルディスプレイ
46 操作盤
A 基準線(軸線)
Fa 拡径加圧力
Fb 整形加圧力
θ 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属棒材の軸線方向に離間した一対の保持体に前記金属棒材をそれぞれ嵌入して保持し、前記保持体の一方を前記軸線の回りに回転させながら、
前記保持体の一方を他方に近接させるべく相対的に移動させて前記金属棒材に前記軸線方向に圧縮する拡径加圧力を付与するとともに、前記軸線に対して前記保持体一方を傾動させ、前記一対の保持体間における前記金属棒材の部位を拡径させる拡径プロセスと、
この後、前記金属棒材への加圧力を整形加圧力として維持しながら、前記傾動側の保持体の傾動を元に戻し、前記軸線方向に沿う前記拡径部の幅を一定に整形する整形プロセスと
を順次実行する軸肥大加工方法において、
前記拡径プロセスは、成形すべき拡径部の大きさや前記拡径動作に規定する設定値の入力を含むとともに、前記整形プロセスは、前記整形動作を規定する設定値の入力を含み、
前記入力を含む前記拡径プロセス及び前記整形プロセスがタッチパネルディスプレイを介して実施されることを特徴とする軸肥大加工方法。
【請求項2】
前記拡径プロセスは手動モード及び自動モードから選択され、
前記手動モードが選択されたとき、前記拡径プロセスは複数の段階に分けて実施されることを特徴とする請求項1に記載の軸肥大加工方法。
【請求項3】
前記拡径プロセスの各段階は、前記金属棒材の回転回数、前記傾動側の保持体の傾斜角、前記保持体間の間隔、及び前記金属棒材の拡径部外径の何れかにて区分されていることを特徴とする請求項2に記載の軸肥大加工方法。
【請求項4】
前記整形プロセスは、前記傾動側の保持体の傾斜が元に戻された後、所定期間だけ前記金属棒材の回転を維持してから、この回転及び前記金属棒材への前記整形加圧力の付与がそれぞれ停止されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の軸肥大加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212937(P2008−212937A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49153(P2007−49153)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】