説明

輝度値演算装置、輝度値演算方法、及びデータ再生装置

【課題】コントラストがはっきりしておらず、S/N比がよくない場合であっても、イメージの正確な輝度値が演算できる輝度値演算装置及びそれを用いたデータ再生装置を提供する。
【解決手段】第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体を撮影して得たデジタルイメージ101の所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段105と、デジタルイメージ101の所定の範囲における輝度の平均値を生成する平均値生成手段106と、ヒストグラムに基づいて、存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算手段107と、ダーク値と平均値と存在比率に基づいて、存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2値データが2次元記録された媒体を撮影して得た多値デジタルイメージから2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算技術、及びこの輝度値演算技術を利用したデータ再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの普及によりマルチメディア化が進み、大容量と高転送レートを同時に実現できる情報記録媒体(以下、単に「媒体」と記述する。)の必要性が高まっている。ニーズに答える媒体の一つとしてホログラフィーを用いてメモリを構成する技術があり、この技術は2次元のページデータをパラレルに読み書きできるため高転送レートが可能であるといわれている。また、多重記録を利用して、大容量を実現できるといわれている。
【0003】
現存する2次元のページデータを読み出すデータ再生装置としては2次元コードリーダーがある。特許文献1の2次元コードリーダーは、紙等の媒体に印刷された2次元コードを含む領域をCCD(Charge Coupled Device)センサー等のイメージセンサーで撮影し、閾値で2値化後、メモリに蓄え、位置決め用シンボル等を利用して台形歪、回転等を補正し、2次元コードの情報を読み取るものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
デジタルイメージの輝度を閾値で2値化する方法としては、適切に閾値を制御することで、閾値以上の輝度に対応する第1のデータ(ここでは、“1”)と閾値より小さな輝度に対応する第2のデータ(ここでは“0”)をエラーができるだけ起こらないように識別する方法や、デジタルイメージの輝度を予め決められた値、例えば“1”に対応する画素の輝度の平均値を10(decimal)、“0”に対応する画素の平均値を−10(decimal)に補正し、補正された輝度が0(decimal)以上なら“1”、0(decimal)より小さければ“0”とする方法がある。
【0005】
デジタルイメージを2値化するため閾値を適切に制御する具体的な方法について説明する。図17は、2次元コードの1セル毎に中心画素の輝度(以下、単に「中心画素輝度」と記述する。)を求め、得られた中心画素輝度のイメージを小領域に分割する様子を表した図であり、図18は、2次元コードを2値化するための処理の一例のフローチャートである。図17、図18に示すように、イメージセンサーから読み出したデジタルイメージから2次元コードの存在する位置を検出し、コードの1セル毎に中心画素輝度を求め(ステップSA1)、求めた中心画素輝度を利用したデジタルイメージを小領域A1、A2、B1、B2に分割する。次いで、小領域A1、A2、B1、B2に分割された中心画素輝度のイメージから、それぞれの領域で最大値maxと最小値minを求め(ステップSA2)、その最大値maxと最小値minの中間値を閾値thとし(ステップSA3)、求めた閾値thを利用して中心画素輝度を2値化する(ステップSA4)。
【0006】
図19は、2次元コードを2値化するための処理の別の例のフローチャートである(例えば、特許文献2参照)。図19のフローでは、各セルの中心画素の輝度を求め(ステップSB1)、デジタルイメージの輝度のヒストグラムを作成し(ステップSB2)、そのヒストグラムを解析する。デジタルイメージのコントラストが良く、輝度むらがないときには、ヒストグラムに2つの山ができるので、画像の輝度むらの有無を判断し(ステップSB3)、輝度むらがない場合には、2つの山から閾値を演算し(ステップSB4)、演算した閾値を利用して2値化処理を行う(ステップSB5)。輝度むらがある場合には、図18の方法、すなわち輝度の最大値及び最小値から閾値を生成し、2値化する方法が利用される(ステップSB6)。
【0007】
デジタルイメージの輝度を予め決められた値にする具体的な方法としては、前述した最大値と最小値が予め決めておいた値になる様にデジタルイメージの階調を補正する方法、前述したヒストグラムの2つの山のピークの輝度が予め決めておいた値になる様にデジタルイメージの階調を補正する方法が利用できる。
【0008】
また、デジタルイメージの輝度を予め決められた値にする他の方法としては、図20に示すように、被写体像2001から光学系2002を介して、CCD2003のイメージセンサーから読み出された信号を、アンプ2004によって増幅し、増幅された信号を、クランプ回路2005で信号の低いレベルを0にクランプし、クランプされた信号から、レベル検出回路2006によってイメージの輝度レベルを検出し、検出した輝度レベルに基づいてアンプ2004のゲインを決定するAGC(Amplitude Gain Control)ループを構成することによって輝度を望む値に補正する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
このように、2値化データの内の第1のデータ(ここでは“1”)に対応するイメージの高い輝度値と、第2のデータ(ここでは“0”)に対応するイメージの低い輝度値を、最大値と最小値やヒストグラムの山に基づいて求めることによって、正確な2値化処理が行われ、2次元データの再生が可能となる。
【0010】
【特許文献1】特開2000―172777号(第10−14欄、第1図)
【特許文献2】特開平10―63771号(第5−13欄、第1図、第5図)
【特許文献3】特開平10―134134号(第3−5欄、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ホログラフィック・データ・ストレージ等のS/N比がよくない媒体のデータ再生においては、イメージの高い輝度のばらつきが大きく、輝度の最大値等に基づいて2値化データの一方(例えば“1”)に対応する輝度値を求めると正確な値を測定できない。
【0012】
また、ホログラフィック・データ・ストレージ等のコントラストがはっきりしていない場合のデータ再生においては、イメージの高い輝度対応するヒストグラムの山が現れ難く、高輝度に対応する2値化データ(例えば“1”)に対応する輝度値を正確に測定できない。
【0013】
また、AGCループを用いる方法でも、レベル検出回路でのイメージの輝度の検出にはイメージの最大値等高い輝度を用いるので、S/N比が悪くイメージの高い輝度のばらつきが大きい場合のデータ再生においては、正確な輝度値が測定できない。さらに、輝度値を正確に測定できないため、その情報を利用したデジタルイメージの2値化が正確に行えず、エラーの少ないデータ再生が行えない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、コントラストがはっきりしておらず、S/N比がよくない場合であっても、イメージの正確な輝度値が演算できる輝度値演算装置及びそれを用いたデータ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の輝度値演算装置は、第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体を撮影して得た多値デジタルイメージから前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算装置であって、前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成手段と、前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算手段と、前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算手段とを備えるものである。
【0016】
また、本発明の輝度値演算装置は、前記ライト値演算手段の出力が、前記存在頻度の高いデータと前記存在頻度が低いデータとの存在比率をA対Bとし、前記ライト値をLight_Valとし、前記ダーク値をDark_Valとし、前記平均値をAve_Valとしたとき、(式)Light_Val=((A+B)*Ave_Val−A*Dark_Val)/Bに基づいて決定されるものを含む。
【0017】
また、本発明のデータ再生装置は、第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体のイメージを取得するイメージセンサーと、前記イメージの輝度を増幅するアンプと、前記アンプのゲインを調整する第1のゲイン調整手段と、前記アンプによって増幅されたイメージをサンプリングしてデジタル値に変換するAD変換手段と、前記AD変換手段によって得られたデジタルイメージの輝度の補正と平面座標の補正との少なくとも一方を行う画像処理手段と、前記画像処理手段によって補正されたデジタルイメージを2値化する手段を備え、前記画像処理手段は、前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算手段を備え、前記輝度値演算手段は、前記AD変換手段によって得られた前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成手段と、前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算手段と、前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算手段とを備えるものである。
【0018】
また、本発明のデータ再生装置は、前記第1のゲイン調整手段が、前記輝度値演算手段で演算された前記ダーク値と前記ライト値に基づいて前記アンプのゲインを調整するものを含む。
【0019】
また、本発明のデータ再生装置は、前記画像処理手段が、前記デジタルイメージの輝度を補正する階調補正手段と、前記輝度値演算手段で演算された前記ダーク値と前記ライト値に基づいて前記階調補正手段のゲインとDCオフセットの少なくとも一方を調整する第2のゲイン調整手段とを備えるものを含む。
【0020】
また、本発明のデータ再生装置は、前記画像処理手段が、前記階調補正手段によって補正されたデジタルイメージを適切な平面座標でリサンプリングするリサンプリング手段と、前記リサンプリング手段によって、リサンプリングされたデジタルイメージを望みの特性にフィルタリングするフィルタと、前記第2のゲイン調整手段の調整目標値と、前記フィルタの入出力デジタルイメージから、前記フィルタの特性を演算するフィルタ特性演算手段とを備えるものを含む。
【0021】
また、本発明のデータ再生装置は、前記ライト値演算手段の出力が、前記存在頻度の高いデータと前記存在頻度が低いデータとの存在比率をA対Bとし、前記ライト値をLight_Valとし、前記ダーク値をDark_Valとし、前記平均値をAve_Valとしたとき、(式)Light_Val=((A+B)*Ave_Val−A*Dark_Val)/Bに基づいて決定されるものを含む。
【0022】
また、本発明の輝度値演算方法は、第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体を撮影して得た多値デジタルイメージから前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算方法であって、前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップと、前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成ステップと、前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算ステップと、前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コントラストがはっきりしておらず、S/N比がよくないイメージであっても輝度値を正確に演算することができる。また、正確な輝度情報に基づいて階調補正やフィルタリングを行うので、正確な2値化が可能となり、エラーの少ないデータ再生ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置の概略構成を示す。図1の輝度地演算装置は、ヒストグラム生成手段105、平均値生成手段106、ダーク値演算手段107、ライト値演算手段108、範囲設定手段102、第1の範囲記憶手段103、第2の範囲記憶手段104を含んで構成され、2次元データデジタルイメージ101の輝度値を演算するものである。演算された輝度値は、多値デジタルイメージから2値データを得るための基準輝度値等として利用される。
【0026】
ヒストグラム生成手段105は、範囲設定手段102によって第1の範囲記憶手段103に設定された第1の範囲での、デジタルイメージ101の輝度のヒストグラムを生成する。平均値生成手段106は、範囲設定手段102によって第2の範囲記憶手段104に設定された第2の範囲での、デジタルイメージ101の輝度の平均値を生成する。ヒストグラム生成手段105によって生成されたヒストグラムは、ダーク値演算手段107へ入力され、ダーク値演算手段107は、デジタルイメージ101の低い輝度値であるダーク値を演算する。低い輝度値であるダーク値と平均値は、ライト値演算手段108へ入力され、ライト値演算手段108はデジタルイメージ101の高い輝度値であるライト値を出力する。
【0027】
まず、デジタルイメージ101について説明する。デジタルイメージ101は、2次元符号化された2次元データに対応するイメージであってCCDセンサー(以下、単に「CCD]と記述する場合もある。)等のイメージセンサーに結像している光を光電変換し、AD変換器によってサンプリングした結果得られるものである。この例では2次元符号として、1−4符号(1 Light Bit on 4 Cells)と呼ばれるものを用いた2次元データに対応するイメージを示している。1−4符号とは、2ビットのデータを2x2セルの2次元データに変換する符号で、変換された2次元データは2x2セル合計4セルのうち1セルが“1”、残りの3セルが“0”になるものである。この符号を適用した2次元データの特徴としては、(1)“0”に比べて“1”のデータが少ない、(2)隣り合うセルのデータが両方“1”になる確率が低いといった特徴を持っている。
【0028】
図2に1−4符号化の例を示す。符号化に際しては、符号化すべきビットデータ系列の中から符号を割り当てようとしている2ビットを抜き出し、符号化テーブルを参照して抜き出した2ビットに対応する2x2セルの2次元データを取得する。そして、順次2ビットずつ同様の処理を繰り返す。図2の示す符号化によって得られる符号は、図から明らかなように“0”(図で黒に塗りつぶされていない部分)と“1”(図で黒に塗りつぶされている部分)の比率が3対1になっている。
【0029】
前述した(1)“0”に比べて“1”のデータが少ない、(2)隣り合うセルのデータが両方“1”になる確率が低い、という1−4符号の特徴は、“1”に対応する高い輝度の画素が多い場合にS/N比が悪化するイメージに対して有効である。つまり、イメージの明るい部分でS/N比が悪化するのであるから、“1”を減らして明るい部分を減らすことで、雑音を減少させることができる符号である。以下の説明では、2次元データの“1”に対応するデジタルイメージの輝度が高く、“0”に対応するデジタルイメージの輝度が低いものとする。
【0030】
次に、イメージの明るい部分でのS/N比の悪化について説明する。図3はCCDの1画素の光電変換を表した図である。図3の電界振幅及び電界強度は光電変換を理解しやすくするために1次元で表している。2次元符号によって空間変調された光をCCDカメラ等のイメージセンサーで観測するとき、電界強度をCCDの1画素の面積で積分した値に対応した値が、その画素の輝度として出力される。電界強度は2次元符号によって空間変調された光の振幅である電界振幅の2乗で表される。
【0031】
2次元符号化されたデータの“1”(高輝度データ)の周りに同じ“1”のデータがある時の電界振幅及び電界強度は図3の(a)の様になる。また、2次元符号化されたデータの“1”の周りに同じ“1”のデータが無い時(周りが“0”のみの時)の電界振幅及び電界強度は図3の(b)の様になる。前述したようにCCDの1画素の輝度は電界強度を1画素の面積で積分した値に対応した値になるので、周りに“1”がある時(図3の(a))の方が、周りに“1”が無いとき(図3の(b))より、CCDから出力される輝度は大きくなる。これは、周りの“1”の影響によるものである。つまり、同じ“1”に対応する輝度であっても、周りのデータが“1”であるか“0”であるかによって、CCDの1画素の面積で積分による誤差が生まれるので、出力される輝度が変化する。この変化は、“1”に対応する輝度を読み出す時の方が“0”に対応する輝度を読み出す時より大きくなり、CCDの出力で見た場合、“1”に対応する輝度のS/N比が悪化する。
【0032】
また、高い輝度のばらつきが大きくなる他の原因として、電界振幅に付加される雑音がある。つまり、電界振幅に白色ガウス雑音のような一様な分散の雑音が付加されていた場合、電界強度への変換である2乗によって、データ“1”に対応する電界強度の分散の方が、“0”に対応する電界強度の分散より大きくなる。
【0033】
次に、範囲設定手段102と、第1の範囲記憶手段103及び第2の範囲記憶手段104について説明する。
【0034】
第1の範囲記憶手段103は、ヒストグラム生成手段105でデジタルイメージ101の輝度のヒストグラムを演算するときの演算範囲(第1の範囲)を記憶するものである。ヒストグラム生成手段105については後述する。第2の範囲記憶手段104は、平均値生成手段106でデジタルイメージ101の輝度の平均値を演算するときの演算範囲(第2の範囲)を記憶する手段である。平均値生成手段106については後述する。
【0035】
第1の範囲記憶手段103及び第2の範囲記憶手段104への範囲の設定は範囲設定手段102で行う。範囲設定手段102で設定する第1の範囲及び第2の範囲は2次元符号化されたデータに対応するイメージが存在する範囲であれば任意に設定してよい。例えば、得られるデジタルイメージ101の内、中心の100x100画素の範囲に必ず2次元符号化されたデータに対応するイメージが存在する場合には、中心の100x100画素の範囲を設定する。なお、範囲設定手段102が第1の範囲と第2の範囲を必ず同じ範囲に設定する場合には、第1の範囲記憶手段103と第2の範囲記憶手段104は同一であってよい。これら第1の範囲、第2の範囲を2次元符号化されているデジタルイメージ101の範囲に設定することで、この範囲に後述する信号処理を行う。
【0036】
次に、ヒストグラム生成手段105について説明する。ヒストグラム生成手段105は、デジタルイメージ101の第1の範囲記憶手段103に記憶された範囲での輝度のヒストグラムを生成する。図4にデジタルイメージ101の一例を示す。また、図5に図4のデジタルイメージ101に対応する2次元データを示す。図5においては、白がデータ“1”(高輝度データ)、黒がデータ“0”(低輝度データ)である。
【0037】
図4に示されたデジタルイメージ101の演算範囲における輝度のヒストグラムは図6の様になる。図6を見ると、輝度が高い方にばらつきが多く、デジタルイメージ101のコントラストが低いため、ヒストグラムの山はデータ“0”に対応する山のみ目立って出ていて、データ“1”に対応する山は検出が困難であることが解る。よって、このヒストグラムのみでデジタルイメージ101の正確な輝度情報を得ることはできない。なお、図4のデジタルイメージ101は読者が見易いように誤差分散法を適用したもので実際のデジタルイメージ101はグレイスケールで表される。
【0038】
次に、平均値演算手段106について説明する。平均値演算手段106は、デジタルイメージ101の第2の範囲記憶手段104に記憶された範囲での輝度の平均値を生成する。第1の範囲と第2の範囲が同じ範囲の場合、図4に示されたデジタルイメージ101の演算範囲における輝度の平均値を求める。
【0039】
次に、ダーク値演算手段107について説明する。ダーク値演算手段107は、1−4符号を利用し、ヒストグラムから、データ“0”に対応する低い輝度であるダーク値を演算する手段である。図7にダーク値演算手段107の概略構成を示す。1−4符号による符号化を行った得られた2次元データはデータ“1”よりデータ“0”が多くなっている。よって、ヒストグラムを観測し、頻度が最も多い輝度をデータ“0”に対応するダーク値として検出することが出来る。しかし、ヒストグラムに雑音が存在する可能性があることを考慮し、ヒストグラムの頻度情報を階調方向の系列とみなして、ローパスフィルタ701を通すことで雑音を除く。最多輝度演算手段702は、雑音を除いたヒストグラムからダーク値である最多頻度の輝度を演算する。ローパスフィルタ701は、一般的に用いられる移動平均フィルタでもよい。最多輝度演算手段702は、雑音を除いたヒストグラムから頻度の最大値がある輝度を演算する。このように、符号を利用することで、データ“0”に対応する低い輝度であるダーク値を正確に求めることができる。なお、ローパスフィルタ701は、ヒストグラムに雑音が存在しない場合には必要ない。
【0040】
次に、ライト値演算手段108について説明する。ライト値演算手段108は、ダーク値と平均値とデータの比率から、データ“1”に対応する高い輝度値であるライト値を演算するものである。図8にライト値演算手段108の概略構成を示す。比率記憶手段801には2次元符号後のデータの比率3対1が記憶されている。加算器802は比率の要素の加算(この例では、3+1の演算)を行う。乗算器803は、加算器802の出力と平均値の乗算を行う。乗算器804は比率3対1のダークの要素3と、ダーク値の乗算を行う。減算器805は乗算器803の出力から乗算器804の出力を減算する。除算器806は減算器805の出力を比率3対1のライトの要素1で除算する。1−4符号の場合、1で除算するので除算器806は必要ない。
【0041】
この構成でライト値を演算できる理由を説明する。1−4符号化された2次元データに対応するデジタルイメージ101では、Light_Valをデジタルイメージの高い輝度値であるライト値とし、Dark_Valをデジタルイメージの低い輝度値であるダーク値とし、Ave_Valを所定の範囲におけるデジタルイメージの平均値としたとき、(式1)が成り立つ。
【0042】
3*Dark_Val+1*Light_Val≒(3+1)*Ave_Val・・・・(式1)
【0043】
(式1)を変形すると(式2)となる。
【0044】
Light_Val≒((3+1)*Ave_Val−3*Dark_Val)/1・・・・(式2)
【0045】
また、(式)を(式3)の様に変形しても良い。
【0046】
Light_Val=((3+1)*Ave_Val−3*Dark_Val)/1*C・・・・(式3)
ただし、Cは補正値である。
【0047】
(式1)の説明を行う。図9は、コントラストがはっきりしていて2色(黒、白)で表されているデジタルイメージ101の輝度値の一例を示す図で、1−4符号で符号化されたデータに対応したものである。デジタルイメージ101のデータ“0”に対応する輝度は10(decimal)で表され、“1”に対応する輝度は124(decimal)で表されている。図9のデジタルイメージ101は二次元符号に対して2x2倍の分解能を持っている。図9において、データ“0”に対応する低い輝度の合計は10×108となる。データ“1”に対応する高い輝度の合計は124×36となる。全輝度の合計は(10×108+124×36)である。平均値は(10×108+124×36)/(108+36)である。よって、10×108+124×36=((10×108+124×36)/(108+36))×(108+36)となり、データ“1”に対応する高い輝度の画素数36で規格化すると10×3+124×1=((10×108+124×36)/(108+36))×(3+1)となる。これは(式1)が成り立つことを示している。
【0048】
実際のデジタルイメージ101はコントラストがはっきりしていない場合が多い。よって(式3)の補正値Cを実験により最適な値に微調整することが考えられる。(式3)の補正値Cの設定は、次のように行うことができる。まず、Cを1にした時の演算されたライト値と、実際にデジタルイメージを観察した時のイメージのライト値を比較し、演算されたライト値が観察したイメージの適切な値を示しているか確認する。そして、誤差があるときには補正値Cを調整し、観察するイメージに対するライト値が適切な値になるまで、この調整を繰り返す。
【0049】
このように、(式2)又は(式3)の演算によって、ダーク値と平均値からライト値を求めることができる。なぜなら、画素の分解能が変化してもデータ“0”に対応するデジタルイメージ101の低い輝度の数とデータ“1”に対応するデジタルイメージ101の高い輝度の数との比率は変化しないため、(式1)がイメージセンサー1001の画素の分解能が変化しても、平均値等の演算範囲を広く取れば成り立つからである。なお、図8は、(式2)に基づいてライト値を演算するものである。
【0050】
以上の様に、ばらつきの大きいデータ“1”に対応する輝度値であるライト値を直接測定することなく、ばらつきの小さいデータ“0”に対応する輝度値であるダーク値と平均値から求めることで、正確な輝度情報が得られる。
【0051】
なお、以上の説明では、入力されるイメージデータが1−4符号を用いて符号化されたものとしたが、データ“0”とデータ“1”が特定の比率になっている符号であれば適用可能で例えば1−4符号よりデータ“1”が少なくなる3−16符号(3 Bright Bits on 16 Cells)を用いても良い。この場合1−4符号でデータ“0”とデータ“1”の比率は3対1であったが3−16符号では13対3となる。
【0052】
また、第1の実施の形態の輝度値演算装置では、イメージセンサーとしてCCDセンサーを用いるものとして説明したが、CMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)素子イメージセンサーを利用してもよい。
【0053】
また、第1の実施の形態の輝度値演算装置の各要素は、所定の回路要素を用いて実現してもよいし、所定のプログラムをインストールしたコンピュータを用いて実現してもよい。
【0054】
(第2の実施の形態)
図10に、本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置の概略構成を示す。図10のデータ再生装置は、イメージセンサー1001、アンプ1002、第1のゲイン調整手段1003、AD変換手段1004、メモリインタフェース(メモリI/F)1005、メモリ1006、画像処理手段1007、調整目標値設定手段1008、2値化手段1009を含んで構成される。また、メモリ1006は、デジタルイメージ領域10061、ワーク領域10062、2値データ領域10063を含み、画像処理手段1007は、輝度値演算手段10071、第2のゲイン調整手段10072、階調補正手段10073、リサンプリング手段10074、フィルタ10075、フィルタ特性演算手段10076を含む。
【0055】
図10のデータ再生装置において、イメージセンサー1001によって撮影されたイメージは、第1のゲイン調整手段1003によってゲイン調整されたアンプ1002によって増幅される。増幅されたイメージはAD変換手段1004によってされてデジタルデータに変換され、メモリI/F1005を介してメモリ1006のデジタルイメージ領域10061へ格納される。
【0056】
デジタルイメージ領域10061へ格納されたデジタルイメージはメモリI/F1005を介して画像処理手段1007の中の輝度値演算手段10071へ入力され、輝度値演算手段10071は、デジタルイメージの輝度情報であるダーク値とライト値を演算する。演算されたダーク値とライト値は第1のゲイン調整手段1003と第2のゲイン調整手段10072へ入力される。第2のゲイン調整手段10072は、入力された輝度情報から、第2のゲインとDCオフセットを演算し、これらの値は階調補正手段10073へ入力される。
【0057】
階調補正手段10073は、デジタルイメージ領域10061からメモリI/F1005を介してデジタルイメージを取得し、設定されたゲインとDCオフセットとダーク値を利用し、デジタルイメージの輝度を補正する。補正されたデジタルイメージは、リサンプリング手段10074へ入力され、リサンプリング手段10074は、デジタルイメージを適切なXY平面座標でリサンプリングする。リサンプリングされたデジタルイメージはメモリI/F1005を介してワーク領域10062へ格納される。
【0058】
リサンプリングされたデジタルイメージは、ワーク領域10062からメモリI/F1005を介してフィルタ10075へ入力される。フィルタ10075は、フィルタ特性演算手段10076から設定される特性で、まず、デジタルイメージを行方向へフィルタリングする。行方向へフィルタリングされたデジタルイメージは、メモリI/F1005を介してワーク領域10062へ格納される。行方向へフィルタリングされたデジタルイメージは、ワーク領域10062からメモリI/F1005を介してフィルタ10075へ入力される。フィルタ10075は、フィルタ特性演算手段10076から設定される特性で、デジタルイメージを列方向へフィルタリングする。フィルタ10075の特性はフィルタ特性演算手段10076で演算される。フィルタ特性演算手段10076は、調整目標値設定手段1008から設定されるライト調整目標値、ダーク調整目標値と、フィルタ10075の入出力イメージからフィルタ10075の特性を学習する。行方向及び列方向にフィルタリングされたデジタルイメージは2値化手段1009へ入力される。2値化手段1009は、デジタルイメージを2値化し、メモリI/F1005を介して2値データ領域10063へ格納される。
【0059】
2値データ領域10063へ格納された2値データは、図示しない記録符号復号手段で復号し、図示しない誤り訂正手段で誤り訂正を行ったあと、図示しないホストI/Fを介してホストへ転送される。第1のゲイン調整手段1003は、次のデジタルイメージを読む時のために、輝度値演算手段10071から出力される輝度情報と、調整目標値設定手段1008から出力される調整目標値を入力し、これらに基づいてアンプ1002の第1のゲインを調整する。
【0060】
まず、イメージセンサー1001、アンプ1002、AD変換手段1004について説明する。イメージセンサー1001は、図示しないレンズ等を介して撮像面に当たった光を光電変換するCCDセンサーである。アンプ1002は、イメージセンサー1001によって撮影されたイメージの輝度情報を増幅するためのものである。これは、AD変換手段1004のサンプリング時に十分なダイナミックレンジを稼ぐためのもので、そのゲインは後述する装置制御手段1002から設定される。AD変換手段1004は、輝度情報をサンプリングしてデジタル化する。
【0061】
次に、メモリI/F1005とメモリ1006について説明する。メモリI/F1005は、後述するメモリ1006へアクセスするためのインターフェイスである。メモリ1006は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いる。メモリ1006は、デジタルイメージ領域10061、ワーク領域10062、2値データ領域10063の3つの領域が確保されている。デジタルイメージ領域10061は、イメージセンサー1001で撮影されAD変換手段1004でサンプリングされたデジタルイメージを格納する領域であって、撮影されたイメージはこの領域に格納され管理される。ワーク領域10062は、信号処理を行うときに一時的に処理中のデジタルイメージを格納する領域である。信号処理については後述する。2値データ領域10063は、2値化されたデータを格納する領域である。AD変換手段1004でサンプリングされたデジタルイメージは、メモリI/F1005を介してデジタルイメージ領域10061へ格納される。
【0062】
次に、画像処理手段1007について説明する。画像処理手段1007は、撮影されたデジタルイメージの2値化が容易になるように、デジタルイメージの輝度の補正、平面座標の補正等を行う手段である。この画像処理手段1007での画像処理を行うことによって、2値化エラーを減少させることができる。
【0063】
次に、画像処理手段1007が含む各要素について説明する。輝度値演算手段10071は、第1の実施の形態で説明した輝度値演算装置であって、デジタルイメージ領域10061に格納されたデジタルイメージの輝度情報であるダーク値とライト値を演算するものである。デジタルイメージ領域10061へ格納されたデジタルイメージはメモリI/F1005を介して、輝度値演算手段10071へ入力され、輝度値演算手段10071はデジタルイメージの相対的に低い輝度値であるダーク値と相対的に高い輝度値であるライト値を出力する。輝度値演算手段10071については、第1の実施の形態で説明しているので、詳しい説明は省略する。輝度値演算手段10071を用いることでデジタルイメージの正確な輝度情報を演算できる。
【0064】
次に、第2のゲイン調整手段10072と、調整目標設定手段1008と、階調補正手段10073について説明する。第2のゲイン調整手段10072は、輝度値演算手段10071から出力されたダーク値とライト値と、調整目標設定手段1008から設定されるダーク調整目標値とライト調整目標値から、階調補正手段10073でデジタルイメージを補正するための第2のゲインとDCオフセットを演算し出力するものである。ライト調整目標はデジタルイメージの高い輝度の目標値であり、ダーク調整目標はデジタルイメージの低い輝度の目標値である。
【0065】
図11に第2のゲイン調整手段10072の概略構成を示す。減算器1101は、ライト調整目標値からダーク調整目標値を減算し、調整目標値の大きさを出力する。減算器1102は、ライト値からダーク値を減算し、デジタルイメージの大きさを出力する。除算器1103は減算器1101の出力を減算器1102の出力で除算することで、デジタルイメージの大きさを調整目標値の大きさに調整するための第2のゲインを演算する。ダーク調整目標値はそのままデジタルイメージのオフセットを調整するためのDCオフセットをとして利用される。このように、デジタルイメージの階調を補正するための第2のゲインとDCオフセットを演算する。
【0066】
階調補正手段10073は、デジタルイメージ領域10061に格納されているデジタルイメージをメモリI/F1005を介して入力し、第2のゲイン調整手段10072で演算した第2のゲインとDCオフセットとダーク値を利用してデジタルイメージの階調を補正するものである。
【0067】
図12に階調補正手段10073の概略構成を示す。減算器1201は、デジタルイメージからダーク値を減算することで、デジタルイメージのダーク値が0になるようにデジタルイメージ全体の輝度をオフセットする。乗算器1202は、減算器1201から出力されるデジタルイメージの輝度系列に第2のゲインを乗算することで、大きさを補正する。加算器1203は、乗算器1202の出力からDCオフセットを加算することでオフセット調整を行う。このように輝度値演算手段10071で演算したライト値、ダーク値に基づいて、第2のゲイン調整手段10072で階調補正のため第2ゲインとDCオフセットを求め、それらの値を使って階調補正手段10073は、デジタルイメージのライト値をライト調整目標値に、ダーク値をダーク調整目標値にする正確な補正ができる。
【0068】
次に、リサンプリング手段10074について説明する。リサンプリング手段10074は、デジタルイメージを正確に2値化するため、デジタルイメージを適切な平面座標でリサンプリングするものである。デジタルイメージは、イメージセンサー1001の回転や媒体の傾き等よって歪みや回転が起こったイメージの可能性がある。そのため、この歪みや回転を考慮し、正確に2値化するため、適切な平面座標でリサンプリングする必要がある。これらの歪みや回転を補正する方法は多く報告されている。例えば、図4のデジタルイメージには4隅に特定のパターンであるマーカーがある。このマーカーはデータを媒体に書き込むときに付加したデータである。このマーカーが存在する位置を検出することで、デジタルイメージがどのように歪んでいるか検出する方法がある。例えば、デジタルイメージを(m,n)行列とし、左上のマーカーが(12,10)の位置にあり、右上のマーカーが(17,203)の位置にあり、左下のマーカーが(180,14)の位置にあり、右下のマーカーが(187,186)の位置にそれぞれ存在し、2次元データのマーカーの間隔が100セル毎に存在するデータフォーマットである時、左上と右上とのマーカー間距離、左上と左下とのマーカー間距離、同様に右上と右下、左下と右下とのマーカー間距離が全て100画素になるようにデジタルイメージに2次元補間を行う方法がある。この方法は一般的な2次元コードリーダーで用いられている。適切なXY平面座標でリサンプリングされたデジタルイメージはメモリI/F1005を介して、ワーク領域10062へ格納される。
【0069】
次に、フィルタ10075について説明する。フィルタ10075は、リサンプリングされたデジタルイメージを2値化し易いように、望みの特性にフィルタリングするものである。リサンプリングされたデジタルイメージはワーク領域10062からメモリI/F1005を介してフィルタ10075へ入力される。フィルタ10075は、デジタルイメージの1行目を、左上の輝度から順番に右へ向かってI(1,1)、I(1,2)、I(1,3)・・・と入力していき、続いて2行目、3行目もI(2,1)、I(2,2)、I(2,3)・・・I(3,1)、I(3,2)・・・と入力していく。I(y,x)はデジタルイメージの各平面座標での輝度である。
【0070】
図13にフィルタ10075の概略構成を示す。図13のフィルタは、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと呼ばれる構成になっている。フィルタ10075に入力されたデジタルイメージの輝度系列は遅延1301、1302、1303、1304によって遅延されタップ入力となる。タップ入力とフィルタ係数との乗算が乗算器1305、1306、1307、1308、1309で行われ、その出力が加算器1310で総和され出力される。FIRフィルタは入力系列にフィルタ係数に対応する特性を適用することができる。
【0071】
次にフィルタ特性演算手段10076について説明する。フィルタ特性演算手段10076は、リサンプリングされたデジタルイメージを2値化し易いように、望みの特性にフィルタリングするためのフィルタ10075の特性を演算するものである。フィルタの特性を演算する方法にはフィルタの入力系列に応じて適応的にその特性を学習する方法がある。その学習方法の一つとしてLMSアルゴリズムと呼ばれるものがある。LMSアルゴリズムは(式4)、(式5)で表わされる。
【0072】
h(n+1)=h(n)+(1/2)*μe(n)u(n)・・・・(式4)
e(n)=d(n)−uT(n)h(n)・・・・・・・・・・・・(式5)
【0073】
ただし、
h(n):学習前のフィルタ係数ベクトル
h(n+1):学習後のフィルタ係数ベクトル
μ:ステップサイズパラメーター
e(n):n番目の繰り返し時の誤差信号
u(n):n番目の繰り返し時のタップ入力ベクトル
e(n):誤差信号
d(n):望みの応答
uT(n):タップ入力ベクトルの転置
である。
【0074】
LMSアルゴリズムを動作させると誤差信号e(n)が最小つまりフィルタ10075の出力と望みの応答との誤差を最小にするように係数ベクトルh(n)が最適値h0に近づいていく。
【0075】
図14にフィルタ特性演算手段10076の概略構成を示す。フィルタ10075の入力であるデジタルイメージの輝度系列は、等化目標演算手段1401に入力される。また、調整目標値設定手段1008から輝度が高い側の目標値であるライト調整目標値と、輝度が低い側の目標値であるダーク調整目標値が等化目標演算手段1401に入力される。仮2値化手段14011は、ライト調整目標値とダーク調整目標値の間に閾値を設定しその閾値で輝度系列に対して仮の2値化を行う。目標選択手段14012は、仮2値化手段14011で判定された2値の内、“1”であるか“0”であるかによって、出力する等化目標値をライト調整目標値とダーク調整目標値のどちらにするか選択する。等化誤差演算手段1402は等化目標演算手段1401から出力された等化目標値とフィルタ10075の出力との誤差を演算する。係数演算手段1403は等化誤差演算手段1402で演算された等化誤差とタップ入力からフィルタ係数を演算し出力する。フィルタ特性演算手段10076は、このフィルタ係数の演算を繰り返し行うことにより、最適なフィルタ係数を学習し、フィルタ10075は演算されたフィルタ係数でデジタルイメージを望みの特性にフィルタリングする。フィルタ10075でフィルタリングされたデジタルイメージはメモリI/F1005を介してワーク領域10062へ格納される。
【0076】
前述したように、適応的なフィルタリングでは等化目標値である望みの応答を生成するために、階調補正手段10073での調整目標値であるライト調整目標値とダーク調整目標値を利用している。この様にすることで、フィルタ10075の入力系列の振幅と望みの応答の振幅が同等になっているので、フィルタ係数を学習する前から等化誤差を少なくすることができ、すばやく最適なフィルタ係数を学習できる。
【0077】
フィルタ10075によって行方向にフィルタリングされたデジタルイメージはメモリI/F1005を介してワーク領域10062からフィルタ10075へ再度読み出され今度は列方向に同様のフィルタリングを行う。このように行方向、列方向にそれぞれフィルタリングすることによって、デジタルイメージは適切な特性にフィルタリングされる。このフィルタリングによって、階調補正手段10073で補正された階調の更なる補正を実現できる。また、コントラストのはっきりしたデジタルイメージが得られる。
【0078】
なお、フィルタ特性演算手段10076でフィルタ係数の学習を行うとき、仮2値化手段14011の“0”か“1”かの判別によって、“0”の時に学習するフィルタ係数と、“1”の時に学習するフィルタ係数を個別に持ち、フィルタ10075でフィルタリングするときに、その“0”か“1”かの判別によって、“0”のフィルタ係数と“1”のフィルタ係数を切り替えることで、“0”の時のフィルタ10075の特性と“1”の時のフィルタ10075の特性を切り替えるようにしてもよい。前述したように、デジタルイメージは“1”の場合のS/N比と“0”の場合のS/N比が異なるので、このフィルタ10075の特性を切り替えによって、“0”、“1”それぞれに対して最適なフィルタリングができ、性能の向上が得られる。
【0079】
また、フィルタ特性演算手段10076でフィルタ係数の学習を行うとき、仮2値化手段14011への入力をフィルタ入力の輝度系列として説明したが、フィルタ出力の輝度系列としてもよい。
【0080】
次に2値化手段1009について説明する。2値化手段1009は、デジタルイメージを復号するために2値化するものである。画像処理手段1007の階調補正手段10073、リサンプリング手段10074、フィルタ10075で補正されたデジタルイメージは2値化手段1009で2値化される。各補正によってデジタルイメージは、輝度がライト調整目標値とダーク調整目標値に偏ったコントラストのはっきりしたイメージに補正され、平面座標の補正もされている。
【0081】
図15に2値化手段1009の概略構成を示す。補正されたデジタルイメージの輝度系列はしきい手段1501で“0”と“1”に判別される。判別のための閾値は、ライト調整目標値とダーク調整目標値にそれぞれ重みを付け加算した値にする。これらの計算は、乗算器1503、1504及び加算器1505によって行う。閾値をライト調整目標値とダーク調整目標値の中間値にするのであれば重み記憶手段1502に記憶されている重みは両方0.5となる。しかし、前述したように、デジタルイメージは明るい側の方が暗い側よりS/N比が悪化している。よって、暗い側の重みを大きくして、閾値を中間値より暗い側に寄せて使用すると良好な結果が得られることがある。この重みはシステムの違いによる雑音の違いによって最適値が異なるので、実験によって、エラーが最小になる最適な値を設定するのがよい。なお、しきい手段に設定する閾値は、図示しない閾値記憶手段等を設けて記憶しておいてもよい。この場合、乗算器1503、1504及び加算器1505等は不要である。
【0082】
2値化手段1009の2値化によって出力される2値データはメモリI/F1005を介して2値データ領域10063へ格納される。2値データ領域10063へ格納された2値データは、図示しない記録符号復号手段で1−4符号を復号し、図示しない誤り訂正手段で誤り訂正を行ったあと、図示しないホストI/Fを介してホストへ転送される。
【0083】
次に第1のゲイン調整手段1003について説明する。第1のゲイン調整手段1003は、次のデジタルイメージを取得する際、AD変換手段1004でのダイナミックレンジが十分取れるようにアンプ1002のゲインを調整するものである。
【0084】
図16に第1のゲイン調整手段1003の構成を示す。ゲイン記憶手段1605には第1のゲインの初期値が予め記憶されている。ライト調整目標値、ダーク調整目標値、ライト値、ダーク値からゲインの調整値を演算し、乗算記1604でゲイン記憶手段1605に記憶されている現在の第1のゲインと、調整値を乗算することで、新たな第1のゲインを演算する。調整値は次のように求める。ライト調整目標値からダーク調整目標値を減算記1601で減算し調整目標値の大きさを演算し、ライト値からダーク値を減算記1602で減算しデジタルイメージの大きさを演算する。そして、除算器1604を用いて調整目標値の大きさをデジタルイメージの大きさで除算する事で調整値を演算する。この様な構成で次のデジタルイメージの大きさを調整するための第1のゲインは演算される。デジタルイメージの輝度が全体的に小さくAD変換手段1004でのダイナミックレンジが大きく取れない場合には性能の悪化を招く。よって、前のデジタルイメージの輝度情報からアンプ1002のゲインを調整し、次のイメージを読み出すことで、この性能の悪化を防ぐことができる。
【0085】
なお、以上の説明では、入力されるイメージデータが1−4符号を用いて符号化されたものとしたが、“0”と“1”が特定の比率になっている符号であれば適用可能であり、例えば1−4符号より“1”が少なくなる3−16符号等を用いてもよい。
【0086】
また、イメージセンサー1001としてCCDセンサーを用いるものとして説明したが、CMOS素子イメージセンサーを利用してもよい。
【0087】
また、第2の実施の形態のデータ再生装置の各要素は、所定の回路要素を用いて実現してもよいし、所定のプログラムをインストールしたコンピュータを用いて実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の輝度値演算装置は、コントラストがはっきりせず、S/Nが悪いイメージであっても、正確な輝度値を演算できこのようなイメージの画像処理に有用である。
【0089】
また、本発明のデータ再生装置は、正確にイメージの輝度の輝度値を求めることのできる輝度値演算装置を用いることにより、デジタルイメージの2値化が正確に行うことができ、そ2次元符号が適用されたイメージからデータを読み出すストレージ機器等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置の概略構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージにおける符号を説明する図
【図3】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージにおける輝度のばらつきを説明する図
【図4】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージの一例を示す図
【図5】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージの一例に対応する2次元データを示す図
【図6】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージの一例の輝度ヒストグラムを示す図
【図7】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置におけるダーク値演算手段の概略構成を示す図
【図8】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置におけるライト値演算手段の概略構成を示す図
【図9】本発明の第1の実施の形態の輝度値演算装置に入力されるデジタルイメージの一例の輝度値を示す図
【図10】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置の概略構成を示す図
【図11】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置における第2のゲイン調整手段の概略構成を示す図
【図12】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置における階調補正手段の概略構成を示す図
【図13】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置におけるフィルタの概略構成を示す図
【図14】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置におけるフィルタ特性演算手段の概略構成を示す図
【図15】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置における2値化手段の概略構成を示す図
【図16】本発明の第2の実施の形態のデータ再生装置における第1のゲイン調整手段の概略構成を示す図
【図17】2次元コードの中心画素輝度のイメージを小領域に分割する様子を表す図
【図18】従来の2次元コードを2値化するための処理の一例のフローチャート
【図19】従来の2次元コードを2値化するための処理の別の例のフローチャート
【図20】従来の輝度補正処理部の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0091】
101 デジタルイメージ
102 範囲設定手段
103 第1の範囲記憶手段
104 第2の範囲記憶手段
105 ヒストグラム生成手段
106 平均値生成手段
107 ダーク値演算手段
108 ライト値演算手段
701 ローパスフィルタ
702 最多輝度演算手段
801 比率記憶手段
802 加算器
803 乗算器
804 乗算器
805 減算器
806 除算器
1001 イメージセンサー
1002 アンプ
1003 第1のゲイン調整手段
1004 AD変換手段
1005 メモリI/F
1006 メモリ
10061 デジタルイメージ領域
10062 ワーク領域
10063 2値データ領域
1007 画像処理手段
10071 輝度値演算手段
10072 第2のゲイン調整手段
10073 階調補正手段
10074 リサンプリング手段
10075 フィルタ
10076 フィルタ特性演算手段
1008 調整目標値設定手段
1009 2値化手段
1101 減算器
1102 減算器
1103 除算器
1201 減算器
1202 乗算器
1203 加算器
1301 遅延素子
1302 遅延素子
1303 遅延素子
1304 遅延素子
1305 乗算器
1306 乗算器
1307 乗算器
1308 乗算器
1309 乗算器
1310 加算器
1401 等化目標演算手段
14011 仮2値化手段
14012 目標選択手段
1402 等化誤差演算手段
1403 係数演算手段
1501 しきい手段
1502 重み記憶手段
1503 乗算器
1504 乗算器
1505 加算器
1601 減算器
1602 減算器
1603 除算器
1604 乗算器
1605 ゲイン記憶手段
2001 被写体像
2002 光学系
2003 CCD
2004 アンプ
2005 クランプ回路
2006 レベル検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体を撮影して得た多値デジタルイメージから前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算装置であって、
前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成手段と、
前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算手段と、
前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算手段とを備える輝度値演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輝度値演算装置であって、
前記ライト値演算手段の出力は、前記存在頻度の高いデータと前記存在頻度が低いデータとの存在比率をA対Bとし、前記ライト値をLight_Valとし、前記ダーク値をDark_Valとし、前記平均値をAve_Valとしたとき、(式)Light_Val=((A+B)*Ave_Val−A*Dark_Val)/Bに基づいて決定される輝度値演算装置。
【請求項3】
第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体のイメージを取得するイメージセンサーと、
前記イメージの輝度を増幅するアンプと、
前記アンプのゲインを調整する第1のゲイン調整手段と、
前記アンプによって増幅されたイメージをサンプリングしてデジタル値に変換するAD変換手段と、
前記AD変換手段によって得られたデジタルイメージの輝度の補正と平面座標の補正との少なくとも一方を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段によって補正されたデジタルイメージを2値化する手段を備え、
前記画像処理手段は、前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算手段を備え、
前記輝度値演算手段は、
前記AD変換手段によって得られた前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成手段と、
前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算手段と、
前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算手段とを備えるデータ再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ再生装置であって、
前記第1のゲイン調整手段は、前記輝度値演算手段で演算された前記ダーク値と前記ライト値に基づいて前記アンプのゲインを調整するデータ再生装置。
【請求項5】
請求項3に記載のデータ再生装置であって、
前記画像処理手段は、
前記デジタルイメージの輝度を補正する階調補正手段と、
前記輝度値演算手段で演算された前記ダーク値と前記ライト値に基づいて前記階調補正手段のゲインとDCオフセットの少なくとも一方を調整する第2のゲイン調整手段と
を備えるデータ再生装置。
【請求項6】
請求項5のいずれか1項に記載のデータ再生装置であって、
前記画像処理手段は、
前記階調補正手段によって補正されたデジタルイメージを適切な平面座標でリサンプリングするリサンプリング手段と、
前記リサンプリング手段によって、リサンプリングされたデジタルイメージを望みの特性にフィルタリングするフィルタと、
前記第2のゲイン調整手段の調整目標値と、前記フィルタの入出力デジタルイメージから、前記フィルタの特性を演算するフィルタ特性演算手段と
を備えるデータ再生装置。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載のデータ再生装置であって、
前記ライト値演算手段の出力は、前記存在頻度の高いデータと前記存在頻度が低いデータとの存在比率をA対Bとし、前記ライト値をLight_Valとし、前記ダーク値をDark_Valとし、前記平均値をAve_Valとしたとき、(式)Light_Val=((A+B)*Ave_Val−A*Dark_Val)/Bに基づいて決定されるデータ再生装置。
【請求項8】
第1のデータと第2のデータの存在比率が特定の比率である2値データが2次元記録された媒体を撮影して得た多値デジタルイメージから前記2値データを得るために利用する基準輝度値を演算する輝度値演算方法であって、
前記デジタルイメージの所定の範囲における輝度のヒストグラムを生成するヒストグラム生成ステップと、
前記デジタルイメージの所定の範囲における前記デジタルイメージの輝度の平均値を生成する平均値生成ステップと、
前記ヒストグラムに基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が高いデータに対応する相対的に低い輝度値であるダーク値を求めるダーク値演算ステップと、
前記ダーク値と前記平均値と前記比率に基づいて、前記第1のデータと前記第2のデータのうちの存在頻度が低いデータに対応する相対的に高い輝度値であるライト値を求めるライト値演算ステップとを備える輝度値演算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−238354(P2006−238354A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53693(P2005−53693)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】