説明

農業用トラクタ

【課題】 トラクタのキャビンにおける後方視界性の向上を図る。
【解決手段】操縦席(17)等を囲うキャビン(7)を備え、該リヤガラス(27)を左右の後縦フレーム(22)との間にダンパー(36,36)を介在して連結し、リヤガラス(27)上部のヒンジ(38,38)を支点に上下開放自在に設け、該リヤガラス(27)の車内側上コーナ部に電動モータを内蔵するワイパー装置(39)を取り付け、ワイパ非駆動時には、機体背面視において、ワイパーブレード(40)部を前記ダンパー(36)に重ねて停止するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用トラクタに関する。特にリヤガラスを開放可能に設け、ワイパー装置を備える構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用トラクタはリヤガラスを開放可能に構成して後作業機の操作を可能とし、リヤガラス開閉の容易化を図るためダンパーを備える。一方雨天の作業を伴うときはワイパー装置によって視界の確保を図っている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−119070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のワイパー装置と、ダンパーとで後方視界を妨げていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記課題を鑑みて以下のように構成した。即ち、操縦席(17)等を囲うキャビン(7)を備え、該リヤガラス(27)を左右の後縦フレーム(22)との間にダンパー(36,36)を介在して連結し、リヤガラス(27)上部のヒンジ(38,38)を支点に上下開放自在に設け、該リヤガラス(27)の車内側上コーナ部に電動モータを内蔵するワイパー装置(39)を取り付け、ワイパ非駆動時には、機体背面視において、ワイパーブレード(40)部を前記ダンパー(36)に重ねて停止する構成とした農業用トラクタとした。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成したため、ワイパー被駆動時に車体後方の視界を極力広く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施の形態として、農業用トラクタについて説明する。トラクタ10は、図4乃至図6に示すように、ボンネット11内部にディーゼルエンジン12を備え、このエンジン12の回転動力をミッションケース1内の各種変速装置にて適宜減速した後、後輪13、または前後輪14,13へ伝達して走行する構成となっている。
【0007】
またミッションケース1上方には、ステアリングハンドル15を突出するハンドルポスト16や、操縦席17を支持するフロア18を設けると共に、このフロア18上をキャビン7によって取り囲む構成となっている。キャビン7は、フロア18の左右前部に立設する前縦フレーム19と、左右のフェンダー20中部に立設する中縦フレーム21と、フェンダー20後部間に立設する後縦フレーム22、そして、前記左右夫れ夫れの前縦フレーム19、中縦フレーム21、後縦フレーム22の上端部同士を連結する横水平フレーム23,23、及び、後縦フレーム22の上端部同士を連結する後水平フレーム24などによって略直方体状に枠組すると共に、横水平フレーム23,23及び後水平フレーム24上にルーフ25を支持する構成となっている。
【0008】
また、前記左右の前縦フレーム19,19間にフロントガラス26を、後縦フレーム22,22間にリヤガラス27を、左右夫れ夫れの前縦フレーム19と中縦フレーム21間に1枚ガラス状のドア(以下、ドアガラス28)を設けると共に、中縦フレーム21と後縦フレーム22との間にサイドガラス29を設ける構成となっている。
【0009】
前記前縦フレーム19は、図4に示すように、正面視、外側に突出して屈折する「く」の字型フレームとなっており、このフレームに沿ってパイプ状のハンドキャッチャー30を溶接する構成となっている。また、前記屈折部には、プレート31を溶接して設け、このプレート31にウインカ32を取り付ける構成となっている。これにより、前縦フレーム19の屈曲部の強度を補強することができと共に、車外の者に対してウインカ32の視界性を良好に維持することができる。
【0010】
また前記サイドガラス29は、図7に示すように、前記ドアガラス28面からリヤガラス27面に連続する湾曲形状となっており、ガラス後部は、後縦フレーム22の車内側に取り付けた板ばね式のヒンジ33によって支持する一方、同ガラス29の前部は前記中縦フレーム21との間を屈折アーム34によって連結する構成となっている。これにより、サイドガラス29は、前記ヒンジ33を支点に前方に向って開放することができる。尚、図中符号35は、ウェザートリップを示す。
【0011】
また前記リヤガラス27は、前記左右夫れ夫れの後縦フレーム22との間にダンパー36,36を介在して連結し、ガラス下部のフック37を係脱することで、上部のヒンジ38,38を支点に上下開放自在に設けている。そして、ガラス27の車内側上コーナ部には、電動モータを内蔵するワイパー装置39を取り付け、ワイパー被駆動時には、トラクタ10の背面視において、ワイパーブレード40部を前記ダンパー36に重ねて停止する構成となっている。これにより、ワイパー被駆動時に車体後方の視界を極力広く維持することができる。
【0012】
次に図1乃至図3に基づいて、前記フロア18下方に設ける燃料タンク2L,2Rについて説明する。前記トラクタ10のミッションケース1の下部には、ケース1の左右側方に突出する三本の水平フレーム44a,44b,44cを夫れ夫れ平行に取り付け、この前フレーム44aと中フレーム44bとの間に後述するジョイントバルブ戴置プレート45を溶接して設けると共に、三本の水平フレーム44a,44b,44cの張出部に略左右対称の燃料タンク2L,2Rを戴置して固定する構成となっている。燃料タンク2L,2Rは、平面視略台形状となっており、この前面はフロア前面と面を合わせ、内側面は前記ミッションケース1に沿い、更にこの後面はフェンダー20の前部内面に沿って車体内側の入り込む形状となってしている。
【0013】
また左右一方の燃料タンク2L上部には、燃料補給口46を突出して設け、この補給口46を前記フロア18の開口穴に臨ませ位置する構成となっている。また左右夫れ夫れのタンク2L,2R下面の中央部には、後述するジョイントバルブ4(左右のタンク接続部に相当)に連通する燃料取出穴47を開口し、これに金属製パイプ3aを接続する構成となっている。そして、金属性パイプ3aの先端部には、ゴム製パイプ3bを接続しジョイントバルブ4の屈曲部4a,4aの先端に接続する構成となっている。
【0014】
また更に、左右燃料タンク2L,2Rの前部下面同士は、連結ホース43によって接続して連通する構成となっている。前記ジョイントバルブ4は、左右両端に平面視「U」の字型の屈曲部4a,4aと、中央部の水平部4bとからなる平面視「S」型の金属製パイプ部材となっており、前記中央水平部4bには上方へ傾斜するエンジン12の燃料ポンプ5へ連通するパイプ接続部4cを備えている。また、前記ジョイントバルブ4の一側の屈曲部4aは、他側の屈曲部4aよりも先端部を下位に位置するよう捻じった構成(図中水平面X−X軸を基準)となっている。
【0015】
また、前記中央水平部4b内には、この内部径と略同径で燃料よりも比重の重いスチールボール6(スライド部材に相当)を収納して設け、トラクタ10の左右傾斜時には下位側の中央水平部4bと屈曲部4aとの連通状態を塞ぐ構成となっている。
【0016】
そして、燃料タンク2L,2Rをトラクタに取り付けるときには、まず、ジョイントバルブ4をジョイントバルブ戴置プレート45に取り付け、左右夫れ夫れの燃料タンク2L,2Rを水平フレーム44a,44b,44c上に固定する。そして次に、夫れ夫れの燃料取出穴47と、左右反対位置のジョイントバルブ4の屈曲部4aの先端部とを前記金属製パイプ3a及びゴム製パイプ3bを介して接続する。その後、これら燃料タンク2L,2R等を一体的に取り付けた水平フレーム44a,44b,44cをミッションケース下部に取り付ける。
【0017】
以上のように構成したトラクタ10の燃料タンク2L,2Rと燃料ポンプ5の接続構造では、車体が左右に傾斜して燃料が少なくなった状態でも、上位側の燃料タンク2L(2R)からジョイントバルブ4の屈曲部4a、またはスチールボール6が屈曲部4aへの連通を塞ぐ個所を最低位置として燃料が溜まるので、エンジン燃料ポンプ5へ燃料を送ることができる。
【0018】
また更に、一方の屈曲部4aを他方の屈曲部4aに対して捻じった状態としたので、例えば両屈曲部4a,4aを水平状に接続する構成と比較して、この捩じった屈曲部が下位位置にくるときに燃料を安定して保持し易く、下位側の燃料タンクから一定して燃料を取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)燃料タンクと水平フレームの平面図。 (B)燃料タンクと水平フレームの側面図。
【図2】燃料タンクの正面図。
【図3】(A)ジョイントバルブの平面図。 (B)ジョイントバルブの正面図。
【図4】トラクタの正面図。
【図5】トラクタの側面図。
【図6】トラクタの背面図。
【図7】サイドガラスのヒンジ部の水平断面図。
【符号の説明】
【0020】
7 キャビン
22 後縦フレーム
27 リヤガラス
36 ダンパー
39 ワイパー装置
40 ワイパーブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦席(17)等を囲うキャビン(7)を備え、該リヤガラス(27)を左右の後縦フレーム(22)との間にダンパー(36,36)を介在して連結し、リヤガラス(27)上部のヒンジ(38,38)を支点に上下開放自在に設け、該リヤガラス(27)の車内側上コーナ部に電動モータを内蔵するワイパー装置(39)を取り付け、ワイパ非駆動時には、機体背面視において、ワイパーブレード(40)部を前記ダンパー(36)に重ねて停止する構成とした農業用トラクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−102004(P2009−102004A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305755(P2008−305755)
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【分割の表示】特願2000−129749(P2000−129749)の分割
【原出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】