説明

迅速崩壊固体経口投与形態

【課題】貧可溶性ナノ粒子活性成分を含む迅速崩壊または溶解固体経口投与形態の提供。
【解決手段】投薬形態中に含入前に約2000nm未満の有効平均粒子サイズを有する貧可溶性活性剤、および当該活性剤の表面に吸着される少なくとも1つの表面安定剤を含む経口固体投与形態迅速崩壊ナノ粒子処方物が、糖、糖アルコール、デンプン、天然ゴム、天然ポリマー、天然ポリマーの合成誘導体、合成ポリマーおよびそれらの混合物から成る群から選択される水溶性または水分散性賦形剤を含む固体投与形態マトリックス内に存在する処方物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
産業上の利用分野
本発明は、貧可溶性ナノ粒子活性成分を含む迅速崩壊または溶解固体経口投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許第5,145,684号(「’684特許」)に最初に記載されたナノ粒子組成物は、非架橋化表面安定剤をその表面に吸着された貧可溶性活性剤からなる粒子である。’684特許は、このようなナノ粒子組成物の製造方法も記載する。ナノ粒子組成物は、粒子サイズ低減とその結果としての表面積増大により、組成物が投与後迅速に溶解され、吸収されるために望ましい。このような組成物の製造方法は、ともに「製剤物質の粉砕方法」に関する米国特許第5,518,187号および第5,862,999号、「製剤物質の連続粉砕方法」に関する米国特許第5,718,388号、ならびに「ナノ粒子を含有する治療用組成物の製造方法」に関する米国特許第5,510,118号に記載されている。
【0003】
ナノ粒子組成物は、例えば「医療用画像形成に有用なX線造影組成物」に関する米国特許第5,318,767号、「表面改質抗癌ナノ粒子」に関する米国特許第5,399,363号および第5,494,683号、「ナノ粒子安定剤としてのチロキサポールの使用」に関する米国特許第5,429,824号、「ナノ粒子NSAID処方物」に関する米国特許第5,518,738号、「表面改質NSAIDナノ粒子」に関する米国特許第5,552,160号、ならびに「ベクロメタソンナノ粒子分散液を含有するエーロゾル」に関する米国特許第5,747,001号にも記載されている。これらの参考文献、あるいはナノ粒子組成物を記載する任意のその他の参考文献の中で、ナノ粒子活性成分を含有する迅速崩壊または溶解固体経口投与形態に関するものはない。
【0004】
迅速崩壊または溶解固体投与形態経口処方物の一般的メーカーとしては、Cima Labs、Fuisz Technologies Ltd.、Prographarm、R.P. SchererおよびYamanouch-Shakleeが挙げられる。これらのメーカーはすべて、異なる種類の迅速溶解固体経口投与形態を販売する。
Cima Labsは、5〜30秒の口中溶解時間を有する泡起性直接圧縮錠剤であるオラソルブOraSolv(登録商標)、ならびに味遮蔽性活性剤を有し、15〜45秒の口中溶解時間を有する直接圧縮錠剤であるデュラソルブDuraSolv(登録商標)を販売する。「経口投与形態のための味遮蔽微小粒子」に関するCimaの米国特許第5,607,697号は、口中で崩壊する被覆微小粒子からなる固体投与形態を記載する。微小粒子コアは、製剤、ならびにマンニトール、ソルビトール、人工甘味料とメントールの混合物、糖とメントールの混合物およびメチルサリチレートから成る群から選択される溶液の負熱(negative heat of solution)を有する1つまたはそれ以上の甘味化合物を含有する。微小粒子コアは、少なくとも一部は、口中での溶解を遅延する物質で被覆され、製剤の味を遮蔽する。次に微小粒子は圧縮されて錠剤を形成する。他の賦形剤も錠剤処方物に付加され得る。
【0005】
Cima Labsに譲渡された「迅速溶解性ロバスト投与形態」に関するWO98/46215は、活性成分ならびに少なくとも1つの非直接圧縮充填剤および滑剤のマトリックスを有する硬質圧縮迅速溶融処方物に向けられる。非直接圧縮充填剤は、直接圧縮(DC等級)充填剤と対照して、典型的には易流動性でなく、通常は易流動性顆粒を生成するためには付加的加工処理を要する。
【0006】
Cimaは、泡起性投与形態に(米国特許第5,503,846号、第5,223,264号および第5,178,878号)、ならびに迅速溶解投与形態のための錠剤成形助剤に(米国特許第5,401,513号および第5,219,574号)、そして水溶性薬のための迅速溶解投与形態(「味遮蔽性マイクロカプセル組成物および製造方法」に関するWO98/14179)に向けられる米国特許および国際特許出願も有する。
【0007】
現在、Bio Vailの一部であるFuisz Technologiesは、シェアフォームShearform(登録商標)と呼ばれる加工賦形剤を含有する直接圧縮錠剤であるフラッシュドーズFlash Dose(登録商標)を販売する。フラッシュドーズFlash Dose(登録商標)は、非晶質繊維に転化された混合多糖の綿菓子様物質である。この技術を記載する米国特許としては、「迅速溶解投与ユニットの製造装置」に関する米国特許第5,871,781号、「高速/高圧条件下で生成される迅速溶解食用ユニット」に関する米国特許第5,869,098号、すべてが「迅速溶解投与ユニットの製造のための方法および装置ならびにそれからの生成物」に関する米国特許第5,866,163号、第5,851,553号および第5,622,719号、「制御放出系の送達」に関する米国特許第5,567,439号、ならびに「迅速分散食用ユニットの生成方法およびそれからの生成物」に関する米国特許第5,587,172号が挙げられる。
【0008】
Prographamは、カルボキシメチルセルロースのような崩壊剤、変性デンプンのような膨潤剤、および味遮蔽性活性剤を有する迅速溶融錠剤であるフラッシュタブFlashtab(登録商標)を販売する。錠剤は、1分以下の口中崩壊時間を有する(米国特許第5,464,632号)。
R.P Schererは、2〜5秒の口中溶解時間を有する凍結乾燥錠剤であるザイジスZydis(登録商標)を販売する。凍結乾燥錠剤は、湿度および温度に対する錠剤感受性のために、製造に経費が掛かり、包装が難しい。米国特許第4,642,903号(R.P. Scherer Corp.)は、凍結乾燥される溶液または懸濁液全体にガスを分散することにより調製される迅速溶融投与処方物に言及する。米国特許第5,188,825号(R.P. Scherer Corp.)は、水溶性活性剤をイオン交換樹脂と結合または錯化して実質的に水不溶性の錯体を生成し、これを次に適切な担体と混合し、そして凍結乾燥することにより調製される凍結乾燥投与形態に言及する。米国特許第5,631,023号(R.P. Scherer Corp.)は、キサンタンゴムをゼラチンおよび活性剤の懸濁液に付加することにより製造される凍結乾燥薬剤投与形態に言及する。米国特許第5,827,541号(R.P. Scherer Corp.)は、疎水性物質の固体製剤投薬形態の製造方法を開示する。当該方法は、非水性相中に疎水性活性成分および界面活性剤を、そして水性相中に担体物質を含有する分散液を凍結乾燥することを包含する。
【0009】
Yamanouchi-Shakleeは、低成形適性および高成形適性糖の組合せを有する錠剤であるワウタブWowtab(登録商標)を販売する。この技術を論じる米国特許としては、「頬内溶解性圧縮成形品およびその製造方法」に関する米国特許第5,576,014号、ならびに「頬内崩壊製剤およびその製造」に関する米国特許第5,446,464号が挙げられる。
【0010】
迅速溶解技術を所有するその他の会社としては、Janssen Pharmaceuticaが挙げられる。Janssenに譲渡された米国特許は、2つのポリペプチド(またはゼラチン)構成成分および増量剤を有する迅速溶解錠剤を記載するが、この場合、2つの構成成分は同一符号の正味電荷を有し、そして第一構成成分は第二構成成分より水性溶液中でより可溶性である(「迅速溶解錠剤」に関する米国特許第5,807,576号、「迅速溶解錠剤の製造方法」に関する米国特許第5,635,210号、「迅速溶解錠剤を製造するための粒状支持マトリックス」に関する米国特許第5,595,761号、「迅速溶解錠剤を製造するための粒状支持マトリックスの製造方法」に関する米国特許第5,587,180号、ならびに「迅速溶解投与形態」に関する米国特許第5,776,491号参照)。
【0011】
Eurand America, Inc.は、重炭酸ナトリウム、クエン酸およびエチルセルロースの混合物を有する迅速溶解泡起性組成物に向けられる米国特許を有する(米国特許第5,639,475号および第5,709,886号)。
L.A.B. Pharmaceutical Researchは、泡起性酸および泡起性塩基の泡起性一組を有する泡起剤ベース迅速溶解処方物に向けられる米国特許を所有する(米国特許第5,807,578号および第5,807,577号)。
【0012】
Schering Corporationは、活性剤、賦形剤(界面活性剤であり得る)あるいはスクロース、ラクトースまたはソルビトールのうちの少なくとも1つ、およびステアリン酸マグネシウムまたはドデシル硫酸ナトリウムを有する頬錠剤に関する技術を有する(米国特許第5,112,616号および第5,073,374号)。
Laboratories L. LaFonは、2つの相のうちの少なくとも1つが界面活性剤を含有する水中油型エマルションの凍結乾燥により製造される慣用的投与形態に向けられる技術を所有する(米国特許第4,616,047号)。この種類の処方物に関しては、このような方法は活性剤に損害を与え得るので、活性成分は凍結懸濁液中に保持され、そして微小化または圧縮なしで錠剤成形される。
【0013】
最後に、Takeda Chemicals Inc., Ltd.は、活性剤および加湿可溶性炭水化物が錠剤に圧縮成形され、その後錠剤が乾燥される迅速溶解錠剤の製造方法に向けられる技術を所有する。
【0014】
記載した従来技術はいずれも、貧可溶性活性成分がナノ粒子形態である迅速崩壊または溶解あるいは「迅速溶融」投与形態を教示しない。これは、従来技術の迅速溶融処方物が貧可溶性薬剤の生物利用能に関連した問題を取り扱わないため、意義がある。従来技術の迅速溶融投与形態は薬剤の迅速提示を提供し得るが、一方、薬剤の貧溶解性および関連緩徐溶解速度のためにしばしば、治療作用の開始の望ましくない遅延が認められる。したがって従来技術の迅速溶融投与形態は薬剤担体マトリックスの迅速崩壊を示し得るが、しかしこれは投与形態内に含入された貧可溶性薬剤の迅速溶解および吸収を生じない。
【0015】
貧可溶性薬剤の作用の迅速開始を示す迅速崩壊または溶解投与形態に対する必要が当業界には存在する。
【発明の概要】
【0016】
発明の要約
本発明は、貧可溶性薬剤のナノ粒子組成物の新規の迅速崩壊または溶解固体投与形態経口処方物の意外なそして予期せぬ発見に向けられる。迅速崩壊または溶解固体投与形態経口処方物は、約3分未満での処方物の実質的に完全な崩壊または溶解と組合された治療活性の予期せぬ迅速な開始を提供する。
【0017】
ナノ粒子組成物の迅速崩壊または溶解固体投与形態処方物は、約2000 nm未満の有効平均粒子サイズを有する貧可溶性ナノ粒子薬剤または投与されるその他の作用物質、ならびにその表面に吸着される表面安定剤を含む。ナノ粒子薬剤は、結晶形態、半結晶形態、非晶質形態またはそれらの組合せであり得る。さらに迅速崩壊または溶解固体投与形態ナノ粒子組成物は、少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を含み、これは唾液との接触時にナノ粒子活性剤を取り囲む固体投与形態マトリックスを迅速に崩壊または溶解し、それにより吸収のためのナノ粒子活性剤を提示するよう機能する。
【0018】
好ましくは、組成物中のナノ粒子活性剤の有効平均粒子サイズは、約約2000 nm未満、約1500 nm未満、約1000 nm未満、600 nm、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満または約50 nm未満である。
本発明の別の局面では、迅速崩壊または溶解ナノ粒子固体投与形態経口処方物の製造方法が提供される。当該方法は、(1)投与されるべき活性剤、および表面安定剤を含むナノ粒子組成物を生成し、(2)少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を付加し、そして(3)経口投与のための固体投与形態形態の組成物を生成することを包含する。付加的な製薬上許容可能な賦形剤も投与のために組成物に付加され得る。機械的粉砕、沈降または任意のその他の適切なサイズ低減法を包含し得るナノ粒子組成物の製造方法は当業界で既知であり、例えば‘684特許に記載されている。
【0019】
本発明のさらに別の局面は、本発明の迅速崩壊ナノ粒子組成物による治療活性の迅速開始を要する哺乳類例えばヒトの治療方法を提供する。
【0020】
前記の一般的説明および以下の詳細な説明はともに例示的および説明的なものであり、特許請求されたような本発明のさらなる説明を提供するよう意図される、と理解されるべきである。その他の目的、利点および新規の特徴は、本発明の下記の説明から当業者には容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】抗炎症、鎮痛および解熱活性を有するCOX−2阻害剤型非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である化合物Aの3つの迅速崩壊または溶解ナノ粒子投与形態に関する経時的溶解率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の詳細な説明
A.迅速崩壊または溶解ナノ粒子組成物
本発明は、薬剤活性の迅速開始を示す貧可溶性薬剤の新規の固体投与形態迅速崩壊または溶解ナノ粒子組成物の意外なそして予期せぬ発見に向けられる。本発明の迅速崩壊または溶解固体経口投与形態は、迅速崩壊の結果としての貧可溶性活性剤の迅速提示ならびに薬剤のナノ粒子サイズの結果としての口腔中での貧可溶性薬剤の迅速溶解の併有という利点を有する。
【0023】
迅速崩壊および迅速溶解のこの組合せは、貧可溶性薬剤の従来の既知の迅速溶解投与形態に関連した治療作用の開始の遅延を低減する。さらに貧可溶性活性成分の頬吸収の機会は、本発明により強化される。ナノ粒子迅速崩壊または溶解固体投与形態形態のさらに別の利点は、ナノ粒子薬剤粒子の使用が、貧可溶性薬剤の従来技術の迅速溶融処方物を用いて見出されるジャリジャリ感を排除するかまたは最小限にすることである。
【0024】
急速溶解、急速または迅速溶融ならびに素早い崩壊投与形態としても既知である迅速崩壊または溶解投与形態は、短時間内に咀嚼することも水を必要とすることもなく、患者の口中で迅速に溶解または崩壊する。それらの易投与性のために、このような組成物は、小児科学、老人医学の特定の要求にならびに嚥下障害患者に特に有用である。迅速溶解投与形態は、それらの易投与性、便利性および患者に優しい性質のために、有益であり得る。集団の35%〜50%が、特に小児科および老人医学的患者が、錠剤および硬質ゼラチンカプセルを嚥下するのが難しいとみなしていると概算される。迅速崩壊または溶解投与形態は、錠剤またはカプセルを嚥下する必要性を排除する。さらに迅速崩壊または溶解投与形態は、水の付加または咀嚼を要しない。
【0025】
迅速溶融投与形態に典型的に関連する一利点は、用量の投与と活性成分の物理的提示との間の時間差の低減である。この遅延時間は、通常は投与形態の解体およびその後の活性成分の分布に関連する。急速溶融投与形態の第二の利点は、投与時の口中の薬剤の迅速提示が直接的な血流への活性成分の頬吸収を促し、したがって単位用量からの活性成分の全体的生物利用能に及ぼす肝臓の一次通過作用を低減する、ということである。この第二の利点は、活性剤のナノ粒子サイズが口腔中での迅速溶解を可能にするので、本発明の急速溶融処方物に関して劇的に強化される。
【0026】
本発明の固体投与形態迅速崩壊ナノ粒子処方物は、約2000 nm未満の投与形態中に含入される前に有効平均粒子サイズを有する投与さるべき貧可溶性ナノ粒子活性剤、その表面に吸着された少なくとも1つの表面安定剤、ならびに唾液との接触時に固体投与形態形態のマトリックスを迅速に崩壊し、それにより吸収のためにナノ粒子活性剤を提示するよう機能する少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を含む。貧可溶性ナノ粒子活性剤は、結晶形態、半結晶形態、非晶質形態またはそれらの組合せであり得る。
【0027】
好ましくは、投与形態中に含入される前のナノ粒子活性剤の有効平均粒子サイズは、約1500 nm未満、約1000 nm未満、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満または約50 nm未満である。ナノ粒子組成物は、‘684特許に最初に記載された。
【0028】
本発明の迅速崩壊ナノ粒子固体経口投与形態は、水性媒質中への付加時に約3分未満の崩壊時間を有する。さらに好ましくは、急速溶融ナノ粒子固体経口投与形態は、約2分未満、約90秒未満、約60秒未満、約45秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約15秒未満、約10秒未満または約5秒未満の水性媒質への付加時の崩壊または溶解時間を有する。
【0029】
意外にも、迅速崩壊または溶解ナノ粒子投与形態は、相対的に高度の引張強さを有し得る。引張強さは、固体投与形態の硬度、サイズおよび幾何学により決定される。これは、固体投与形態(即ち錠剤)が脆すぎると、ほろほろに崩れるかまたはばらばらになるため、意義がある。このような脆弱錠剤は、包装も難しく、経費も掛かり得る。したがって理想的迅速崩壊固体経口用量は、投与時に迅速に崩壊する一方で、包装を容易にするようある程度の引張強さを有する必要がある。迅速崩壊または溶解固体投与形態ナノ粒子組成物は、活性剤の不快な味を遮蔽するよう処方され得る。このような味遮蔽は、例えば1つまたはそれ以上の甘味賦形剤の付加により、甘味賦形剤で貧可溶性ナノ粒子活性剤および安定剤を被覆することにより、および/または甘味賦形剤で貧可溶性ナノ粒子活性剤、安定剤および賦形剤の投与形態を被覆することにより成し遂げられ得る。
【0030】
1.ナノ粒子組成物
出発ナノ粒子組成物(急速溶融投与形態への処方前)は、投与去るべき貧可溶性活性剤、ならびにその表面に吸着される少なくとも1つの表面安定剤を含む。
a.貧可溶性活性剤
本発明のナノ粒子は、貧可溶性治療剤、診断剤または活性の迅速開始のために投与されるその他の活性剤を含む。治療剤は薬剤または製剤であり得るし、診断剤は典型的には造影剤、例えばX線造影剤または任意のその他の種類の診断物質である。
【0031】
本発明は、広範な種々の貧可溶性薬剤または診断剤を用いて実行され得る。薬剤または診断剤は、好ましくは本質的純粋形態で存在し、貧水溶性であり、そして少なくとも1つの液体媒質中で分散可能である。「貧水溶性」とは、薬剤または診断剤が約30 mg/ml未満、好ましくは約10 mg/ml未満、さらに好ましくは約1 mg/ml未満の液体分散媒質中での溶解度を有することを意味する。
【0032】
貧可溶性活性剤は、種々の既知の種類の薬剤または診断剤、例えば鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質(例えばペニシリン)、抗凝固薬、抗欝薬、抗糖尿病薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗腫瘍薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安性鎮静薬(催眠薬および神経弛緩薬)、収斂薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、血液産物および代用血液、心臓変力薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳薬(去痰薬および粘液溶解薬)、診断薬、画像診断薬、利尿薬、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、止血薬、免疫学的作用物質、脂質調節剤、筋弛緩薬、副交感神経作動薬、上皮小体カルシトニンおよびビホスノネート、プロスタグランジン、放射性製剤、性ホルモン(例えばステロイド)、抗アレルギー薬、刺激剤および食欲抑制薬、交感神経作動薬、甲状腺薬、血管拡張薬およびキサンチンから選択され得る。
【0033】
これらの種類の薬剤および診断剤の説明、ならびに各種類内の種の一覧は、Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Twenty-ninth Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1989)(この記載内容は参照により本明細書中に特定的に含まれる)に見出され得る。薬剤または診断剤は市販されており、および/または当業界で既知の技法により調製され得る。
【0034】
貧可溶性活性成分は、治療効果を引き出すのに十分な任意の量で存在し、そして適用可能な場合には、実質的には光学的に純粋なエナンチオマーの形態で、あるいはエナンチオマーの混合物、ラセミ体またはその他として存在し得る。
【0035】
b.表面安定剤
当業界で既知であり、そして‘684特許に記載されている有用な表面安定剤は、活性剤の表面に物理的に付着するが、しかし活性剤と化学的に結合しないかまたは相互作用しないものを包含すると考えられる。表面安定剤は、活性剤に関して約2000 nm未満の有効平均粒子サイズを保持するのに十分な量で活性剤の表面に吸着される.さらに、表面安定剤の個々の吸着分子は、本質的には分子内架橋を含有しない。2つまたはそれ以上の表面安定剤が、本発明の組成物中および方法に用いられ得る。
【0036】
適切な表面安定剤は、好ましくは既知の有機および無機製剤賦形剤から選択され得る。このような賦形剤としては、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然生成物および界面活性剤が挙げられる。好ましい表面安定剤としては、非イオン性およびイオン性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
表面安定剤の代表例としては、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばマクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば市販のトゥイーンTween(登録商標)、例えばトゥイーン20(登録商標)およびトゥイーン80(登録商標)(ICI Speciality Chemicals))、ポリエチレングリコール(例えばカーボワックスCarbowax 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを伴う4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオンおよびトリトンとしても既知)、ポロキサマー(例えばプルロニックPluronic F68(登録商標)およびF108(登録商標)。これらはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーである)、ポロキサミン(例えばテトロニックTetronic 908(登録商標)。ポロキサミン908(登録商標)としても既知である。これはエチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次付加に由来する四官能価ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation, Parsippany, N.J.))、テトロニック1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、ナトリウムスルホコハク酸のジアルキルエステル(例えばエーロゾルOT(登録商標)。これはナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステルである(American Cyanamid))、デュポノールDuponol P(これはラウリル硫酸ナトリウム(DuPont)である)、トリトンX−200(登録商標)(これはアルキルアリールポリエーテルスルホネート(Rohm and Haas)である)、クロデスタスCrodestasF−110(これはスクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物である(Croda Inc.))、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)(Olin−1OG(登録商標)または界面活性剤10−G(登録商標)(Olin Chemicals, Stamford, CT)としても既知である)、クロデスタスCrodestasSL−40(登録商標)(Croda Inc.)、お呼びSA9OHCO(これはC1837CH2(CON(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2)(Eastman Kodak Co.)である)、デカノイル−N−メチルグルカミド、n−デシルβ−D−グルコピラノシド、n−デシルβ−D−マルトピラノシド、n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド、n−ドデシルβ−D−マルトシド、ヘプタノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、n−ヘプチルβ−D−チオグルコシド、n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド、ノナノイル−N−メチルグルカミド、n−ヘプチルβ−D−グルコピラノシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、オクチルβ−D−チオグルコピラノシド等が挙げられる。
【0038】
これらの表面安定剤のほとんどが既知の製剤賦形剤であり、Handbook of Pharmaceutical Exsipients, published jointly by the American Pharmaceutical Association and The Pharmaceutical Society of Great Britain (The Pharmaceutical Press, 1986)(この記載内容は参照により本明細書中に特定的に含まれる)に詳細に記載されている。
【0039】
c.粒子サイズ
本明細書中で用いる場合、粒子サイズは、当業者に周知の慣用的粒子サイズ測定技法により測定した場合の重量平均粒子サイズに基づいて確定される。このような技法としては、例えば沈降場流動分別、光子相関分光分析、光散乱およびディスク遠心分離が挙げられる。
【0040】
「約2000 nm未満の有効平均粒子サイズ」とは、前記の技法により測定した場合に、活性剤粒子の少なくとも50%が約2000 nm未満の平均粒子サイズを有することを意味する。好ましくは少なくとも70%の粒子が有効平均即ち約2000 nm未満の平均粒子サイズを有し、さらに好ましくは少なくとも約90%の粒子が有効平均未満の平均粒子サイズを有する。好ましい実施態様では、有効平均粒子サイズは、約1500 nm未満、約1000 nm未満、約600 nm未満、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満または約50 nm未満である。
【0041】
2.製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤
製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤は、典型的には糖、例えばスクロース、マルトース、ラクトース、グルコースまたはマンノース;糖アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ラクチトールまたはマルチトール;デンプンまたは変性デンプン、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはトウモロコシデンプン;天然ポリマーまたは天然ポリマーの合成誘導体、例えばゼラチン、カラジーナン、アルジネート、デキストラン、マルトデキストラン、デキストレート、デキストリン、ポリデキストロースまたはトラガカント;天然ゴム、例えばアラビアゴム、グアーゴムまたはキサンタンゴム;合成ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンコポリマー、ポリオキシプロピレンコポリマーまたはポリエチレンオキシドあるいはこれらの化合物の混合物である。その他の有用な化合物としては、カルボマーおよびセルロースベースのポリマーが挙げられる。製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤は、直接圧縮または非直接圧縮崩壊剤であり得る。
【0042】
3.その他の製剤賦形剤
本発明の製剤組成物は、1つまたはそれ以上の結合剤、充填剤、滑剤、沈殿防止剤、甘味剤、風味剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、泡起剤およびその他の賦形剤も含み得る。このような賦形剤は、当業界で既知である。
充填剤の例は、ラクトース一水和物、ラクトース無水物および種々のデンプンであり;結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微晶質セルロース、例えばアビセルAvicel(登録商標)PH101およびアビセル(登録商標)PH102、微晶質セルロース、ならびにケイ化微晶質セルロース(SMCC)である。
【0043】
圧縮される粉末の流動性に作用する作用物質を含めた適切な滑剤は、コロイド二酸化ケイ素、例えばエーロシル(登録商標)200;タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびシリカゲルである。
甘味剤の例は、任意の天然または人工甘味剤、例えばスクロース、キシリトール、ナトリウムサッカリン、シクラメート、アスパルテームおよびアクスルフェームである。風味剤の例は、マグナスイート(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガム風味剤および果実風味剤等である。
【0044】
防腐剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸のその他のエステル、例えばブチルパラベン、アルコール、例えばエチルまたはベンジルアルコール、フェノール系化合物、例えばフェノールまたは第四級化合物、例えば塩化ベンズアルコニウムである。
【0045】
適切な希釈剤としては、製薬上許容可能な不活性充填剤、例えば微晶質セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、糖および/または前記のいずれかの混合物が挙げられる。希釈剤の例としては、微晶質セルロース、例えばアビセルAvicel(登録商標)PH101およびアビセル(登録商標)PH102;ラクトース、例えばラクトース一水和物、ラクトース無水物およびファルマトースPharmatose(登録商標)DCL21;二塩基性リン酸カルシウム、例えばエンコンプレスEmcompress(登録商標);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロースおよびグルコースが挙げられる。
【0046】
適切な崩壊剤としては、軽度架橋化ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび変性デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコレートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
泡起剤の例は、泡起性対、例えば有機酸および炭酸塩または重炭酸塩である。
適切な有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸およびアルギニン酸ならびに無水物および酸塩が挙げられる。適切な炭酸塩および重炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L−リシンおよび炭酸アルギニンが挙げられる。あるいは泡起性対の酸構成成分のみが存在し得る。
【0048】
4.ナノ粒子組成物および製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤の定量
本発明の迅速崩壊処方物中のナノ粒子組成物の相対量は広範に変わり得るし、例えば送達、化合物の融点、化合物の水溶解度、化合物の水溶液の表面張力等に関して選択された化合物により得る。貧可溶性活性剤またはその製薬上許容可能な塩は、治療効果を引き出すのに十分な任意の量で存在し得るが、適用可能な場合、実質的には光学的に純粋なエナンチオマーの形態で、あるいはエナンチオマーの混合物、ラセミ体またはその他として存在し得る。
【0049】
ナノ粒子活性剤組成物は、乾燥組成物の総重量を基礎にして、約0.1%〜約99.9%(w/w)、好ましくは約5%〜約70%(w/w)、最も好ましくは約15%〜約40%(w/w)の量で本発明の迅速崩壊処方物中に存在し得る。
1つまたはそれ以上の製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤は、乾燥組成物の総重量を基礎にして、約99.9%〜約0.1%(w/w)、好ましくは約95%〜約30%(w/w)、最も好ましくは約85%〜約60重量%(w/w)の量で存在し得る。
【0050】
B.迅速崩壊固体投与形態ナノ粒子組成物の製造方法
本発明の別の局面では、迅速崩壊または溶解ナノ粒子固体投与形態経口処方物の製造方法が提供される。当該方法は、(1)投与されるべき活性剤および少なくとも1つの表面安定剤を含むナノ粒子組成物を生成し、(2)1つまたはそれ以上の製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を付加し、そして(3)投与のための固体投与形態形態の組成物を生成することを包含する。製薬上許容可能な賦形剤も投与のために組成物に付加され得る。機械的粉砕、沈降または任意のその他の適切なサイズ低減法を包含し得るナノ粒子組成物の製造方法は当業界で既知であり、例えば‘684特許に記載されている。
【0051】
固体投与形態製剤処方物の製造方法は当業界で既知であり、このような方法が本発明に用いられ得る。本発明の例示的迅速崩壊または溶解固体投与形態処方物は、例えば1つまたはそれ以上の製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を、投与される作用物質のサイズ低減後に得られる生ナノ粒子分散液と組合せることにより調製され得る。その結果生じる組成物は、経口投与のために錠剤に処方され得る。あるいは、ナノ粒子分散液は噴霧乾燥され、その後、1つまたはそれ以上の製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤と配合され、錠剤成形され得る。ナノ粒子分散液および所望の賦形剤は凍結乾燥され、急速溶融処方物をも生成し得る氏、あるいはナノ粒子分散駅は造粒されて、粉末を生成し、その後錠剤成形され得る。
【0052】
1.ナノ粒子分散液の噴霧乾燥
ナノ粒子分散液の固体投与形態形態は、サイズ低減後にナノ粒子処方物を乾燥することにより調製され得る。好ましい乾燥方法は、噴霧乾燥である。噴霧乾燥法は、ナノ粒子サイズの粒子に活性剤を変換するために用いられるサイズ低減過程後に、ナノ粒子粉末を生成するために用いられる。このようなナノ粒子粉末は、経口投与のために錠剤に処方され得る。
【0053】
例示的噴霧乾燥法において、ナノ粒子活性剤懸濁液は、蠕動性ポンプを用いてアトマイザーに供給され、小滴の微細噴霧に噴霧される。噴霧は、乾燥小室中で熱空気と接触されて、小滴からの水分の蒸発を生じる。その結果生じる噴霧は、粉末が分離され、収集されるサイクロン中に通される。ナノ粒子分散液は、賦形剤の存在下または非存在下で噴霧乾燥されて、噴霧乾燥中間粉末を生じ得る。
【0054】
2.凍結乾燥
本発明の迅速崩壊固体経口投与形態は、貧可溶性活性剤および安定剤のナノ粒子分散液を凍結乾燥することにより調製され得る。適切な凍結乾燥条件としては、例えばEP 0,363,365(McNeil-PPC Inc.)、米国特許第4,178,695号(A. Erbeia)および米国特許第5,384,124号(Farmalyoc)(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中に含まれる)に記載されたものが挙げられる。典型的には、ナノ粒子分散液は適切な容器中に入れられて、約-5℃〜約-100℃の温度に凍結される.凍結分散液は次に、約48時間までの期間、減圧を施される。温度、圧力、分散媒質およびバッチサイズのようなパラメターの組合せは、凍結乾燥過程に必要とされる時間に影響を及ぼす。低減化温度および圧力条件下で、昇華により凍結溶媒は除去されて、全体に亘って分布された活性成分を有する固体多孔質迅速崩壊固体経口投与形態を生じる。
【0055】
3.造粒
あるいは、本発明の迅速崩壊固体経口投与形態は、流動床中で、活性剤および少なくとも1つの表面安定剤のナノ粒子分散液を含む、少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤との混和物を造粒して、顆粒を生成することにより調製され得る。この後、顆粒を錠剤成形して、固体経口投与形態を形成する。
【0056】
ナノ粒子組成物および少なくとも1つの水溶性または水分散性賦形剤の造粒は、流動床造粒機を用いて、または高剪断造粒を用いることにより成し遂げられ得る。流動床乾燥も、投与処方物に加工するためのナノ粒子乾燥粉末の製造に用いられ得る。
【0057】
4.錠剤成形
本発明の迅速崩壊ナノ粒子固体処方物は、経口投与のための錠剤の形態であり得る。このような錠剤の調製は、当業界で既知の製剤圧縮または成形技法により得る.本発明の錠剤は、平円盤状、円形、卵形、長円形、円筒形、三角形、六角形等のような任意の適切な形状をとり得る。
【0058】
錠剤成形のための粉末は、当業界で既知の任意の方法により錠剤に処方され得る。適切な方法としては、粉砕、流動床造粒、乾燥造粒、直接圧縮、球体化、噴霧凍結および噴霧乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。錠剤成形方法の詳細な説明は、Remington : The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed. Vol. 11(1995)(Mack Publishing Co., Pennsylvania)およびRemington’s Pharmaceutical Science, Chapter 89, pp. 1633-1658 (Mack Publishing Company, 1990)(これらの記載内容はともに、参照により本明細書中に含まれる)に提示されている。
【0059】
例示的一方法では、迅速崩壊投与形態は、貧可溶性活性剤および少なくとも1つの表面安定剤を含むナノ粒子組成物を、少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤と、ならびに任意にその他の賦形剤と配合して配合物を生成し、次にこれを錠剤に直接圧縮することにより調製され得る。例えば噴霧乾燥ナノ粒子粉末は、V−ブレンダー(登録商標)(Blend Master Lab Blender, Patterson Kelley Co.)または高剪断ミキサーを用いて錠剤賦形剤と配合され、その後、例えば自動Caverプレス(Carver Laboratory Equipment)、単一ステーションKorsch(登録商標)プレスまたは高速Fette(登録商標)錠剤プレスを用いて粉末は圧縮され得る。
【0060】
錠剤は被覆され得るし、あるいは被覆されないこともある。被覆される場合、それらは糖被覆(不快な味または臭いを覆うために、そして酸化に対して保護するために)または皮膜被覆(同様の目的のための水溶性物質の薄い皮膜)され得る。
【0061】
C.迅速崩壊または溶解固体投与形態ナノ粒子組成物の投与
本発明は、貧可溶性活性成分の迅速利用可能性を必要とするヒトを含めた哺乳類を治療する方法を提供する。本発明の投与迅速崩壊または溶解ナノ粒子組成物は、含入活性剤を迅速に放出して、活性の急速開始を生じる。
【0062】
概して、本発明の組成物は、所望の生理学的作用を提供するのに十分なレベルの薬剤または活性剤を用いて、それを必要とする哺乳類被験者に経口的に投与される。哺乳類被験者は、家畜またはペットであり得るが、しかし好ましくはヒト被験者である。所望の生理学的結果を生じるために必要とされる薬剤または活性剤のレベルは、Goodman and Gillmanおよびthe Physician’s Desk Referenceのような標準テキストを参照することにより、当業者により容易に決定される。
【0063】
以下の実施例は、本発明を説明するために示される。しかしながら、本発明はこれらの実施例に記載された特定条件または詳細に限定されない、と理解されるべきである。本明細書全体を通して、公的に利用可能な文書に対する任意のおよびすべての参照は、参照により本明細書中に特定的に含まれる。
【実施例】
【0064】
実施例1
本実施例の目的は、流動床造粒法を用いて、化合物Aの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。化合物Aは、抗炎症、鎮痛および解熱活性を有するCOX−2阻害剤型非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。
【0065】
流動床造粒法は、結合剤分散液および/または溶液を流動化し、その結果生じた組成物を流動化粉末床全体に噴霧して顆粒を形成することを包含する。流動床造粒機を用いて製剤を乾燥し、被覆することもできる。
例示的流動床造粒法を以下に示す:
【0066】
【表1】

【0067】
20%の薬剤、4%のヒドロキシプロピルセルロースSL(HPC−SL)および0.12%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を有する化合物Aの分散液を、流動床造粒法のために用いた。100 gの分散液を、流動床造粒機(Aeromatic Fielder, Inc.、モデルSTREA−1)中の125.0 gの流動化ラクトース粉末上に噴霧した。化合物Aは、120 nmの平均粒子サイズを有した。
【0068】
流動床造粒機のための計器設定は以下のようであった:
入口温度: 49〜52℃
出口温度: 25〜34℃
噴霧圧: 1.5 bar
噴出圧: 3〜4 bar
吹戻し保圧設定: 2 bar
ファンの容量 1〜9
【0069】
流動化ラクトース上に分散液を噴霧して、ナノ粒子化合物A(化合物A、HPC−SLおよびSLSを含む)およびラクトースの顆粒を形成後、造粒機の管を約10 gの脱イオン水で洗浄した。洗液もナノ粒子化合物Aおよびラクトースの顆粒上に噴霧した。
【0070】
顆粒を約10分間乾燥し、その後、#16メッシュスクリーンを通して篩いに掛けた。篩に掛けた顆粒を、表1に示した組成を有する迅速崩壊錠剤の調製のために用いた。
【0071】
【表2】

【0072】
ナノ粒子化合物A(化合物A、HPC−SLおよびSLS)ならびにラクトースの流動床顆粒を、約20分間、V−ブレンダー中でステアリン酸マグネシウム以外のすべての賦形剤と配合し、その後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合した。表2に示した条件下で1インチ仕上げを用いてCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮して、錠剤を生成した。
【0073】
【表3】

【0074】
実施例2
本実施例の目的は、実施例1で調製した化合物A錠剤の崩壊、硬度および溶解を試験することであった。
【0075】
錠剤A、BおよびCを先ず、硬度および崩壊に関して評価した。各処方物に関する2つの錠剤の平均を、データのために用いた。錠剤AおよびBは1 kP未満の硬度を有し、そして錠剤Cは1.7 kPの硬度を有した。
崩壊確定のために、710ミクロン篩を含有するHaake崩壊試験機を用いて、1000 ml脱イオン水浴中で37℃で錠剤A、BおよびCを試験した。崩壊および溶解測定は、USP20にしたがって実施した。崩壊結果を以下の表3に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
化合物A錠剤はすべて、2分未満で完全に崩壊したが、これは、ナノ粒子投与形態の迅速崩壊特徴を実証している。
【0078】
錠剤A、BおよびC(各々100 mg)を、Distek溶解系での37℃でのSLSの1%溶液中での溶解に関して評価した。Distek溶解系のパドルの回転速度は50 rpmであった。図1に示した結果は、すべての錠剤が10分後に少なくとも約80%溶解を示し、15〜20分で完全に溶解したことを示す。
【0079】
実施例3
本実施例の目的は、流動床造粒法を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。ケトプロフェンは、関節炎、日焼け処理、月経痛および発熱に起因する軽症〜中等度の疼痛を治療するために用いられる非ステロイド系抗炎症薬である。
【0080】
30%の薬剤、3%のポリビニルピロリドン(PVP)および0.15%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を有するケトプロフェンのナノ粒子分散液を調製した。ケトプロフェンは、約151 nmの平均粒子サイズを有した。ケトプロフェンのナノ粒子分散液200.0 gを、流動床造粒機(Aeromatic Fielder, Inc.、モデルSTREA−1)中の150.0 gの流動化噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)上に、Masterflexポンプ(Cole-Parmer Instrument Co., Chicago, Ill)を用いて噴霧した。噴霧乾燥マンニトール粉末は、直接圧縮等級粉末である。パーリトールPearlitol(登録商標)は噴霧乾燥マンニトールであり、これは易流動性直接圧縮物質である。
【0081】
流動床造粒機のための計器設定は以下のようであった:
入口温度: 49〜52℃
出口温度: 25〜34℃
噴霧圧: 1.5 bar
噴出圧: 4〜6 bar
吹戻し保圧設定: 2 bar
ファンの容量 1〜9
【0082】
流動化マンニトール上にケトプロフェンナノ粒子分散液を噴霧して、顆粒を形成後、約20 gの脱イオン水を供給管に通し、顆粒上に噴霧した。噴霧過程終了時に、約5〜7分間流動化することにより、顆粒を乾燥した。最後に、顆粒を収穫し、#35篩に通して、計量した。収量は186.7 gであった。
【0083】
ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を、以下に示したようにV−ブレンダー中でステアリン酸マグネシウムと約2分間併合して、粉末配合物を生成した。
【0084】
【表5】

【0085】
表5に示した条件下で5/8インチのトローチ仕上げを用いてCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮して、錠剤を生成した。トローチ仕上げとは、わずかに凹んだ中心を有する錠剤を意味する。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例4
本実施例の目的は、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。
【0088】
本実施例においては、実施例3で調製したナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いた。以下の表6に示した量で、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)と併合し、V−ブレンダー中で約20分間配合した後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合し、粉末配合物を生成した。
【0089】
【表7】

【0090】
表7に示した条件下で5/8インチのトローチ仕上げを有するCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮して、錠剤を生成した。
【0091】
【表8】

【0092】
実施例5
本実施例の目的は、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。
【0093】
本実施例においては、実施例3で調製したナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いた。以下の表8に示した量で、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)およびクロスカルメロースナトリウム(Ac−ジ−ゾル(登録商標))と併合し、V−ブレンダー中で約20分間配合した後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合し、粉末配合物を生成した。
【0094】
【表9】

【0095】
表9に示した条件下で5/8インチのトローチ仕上げを用いてCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮し、錠剤を生成した。
【0096】
【表10】

【0097】
実施例6
本実施例の目的は、実施例3、4および5で調製したケトプロフェン錠剤の硬度および崩壊を試験することであった。
【0098】
錠剤D〜Lを、まずそれらの硬度に関して評価した。各試料の2つの錠剤を試験した。硬度試験の結果を表10に示す。
【0099】
【表11】

【0100】
崩壊確定のために、Haake崩壊試験機(Haake, Germany)を用いて、1000 ml脱イオン水浴中で37℃で錠剤D〜Lの溶解速度を試験した。トローチ仕上げ(凹み中心を有する)を用いて製造した錠剤に関しては、完全崩壊および溶解は、小コアを取り囲む錠剤すべてが崩壊および溶解した場合であると確定された。崩壊結果を以下の表11に示す。
【0101】
【表12】

【0102】
流動床ケトプロフェン顆粒と配合された付加的噴霧乾燥マンニトールを有する錠剤J、KおよびLはもっとも迅速な崩壊を示し、完全崩壊は、1分をわずかに越えた後に得られたが、これは、ナノ粒子投与形態の迅速崩壊特徴を実証している。
【0103】
実施例7
本実施例の目的は、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。
本実施例においては、実施例3で調製したナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いた。以下の表12に示した量で、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)およびクロスカルメロースナトリウム(Ac−ジ−ゾル(登録商標))と併合し、V−ブレンダー中で約20分間配合した後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合し、粉末配合物を生成した。
【0104】
【表13】

【0105】
表13に示した条件下で5/8インチのトローチ仕上げを用いてCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮し、錠剤を生成した。
【0106】
【表14】

【0107】
実施例8
本実施例の目的は、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。
【0108】
本実施例においては、実施例3で調製したナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いた。以下の表14に示した量で、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)およびクロスカルメロースナトリウム(Ac−ジ−ゾル(登録商標))と併合し、V−ブレンダー中で約20分間配合した後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合し、粉末配合物を生成した。
【0109】
【表15】

【0110】
表15に示した条件下でCarverプレスおよび3/8インチのトローチ仕上げを用いて、粉末配合物を圧縮し、錠剤を生成した。
【0111】
【表16】

【0112】
実施例9
本実施例の目的は、実施例7および8で調製したケトプロフェン錠剤の硬度および崩壊を試験することであった。
【0113】
錠剤M〜Rを、まずそれらの硬度に関して評価した。各処方物の2つの錠剤を試験した。結果を以下の表16に示す。
【0114】
【表17】

【0115】
崩壊確定のために、Haake崩壊試験機を用いて、1000 ml脱イオン水浴中で37℃で錠剤M〜Rの溶解速度を試験した。崩壊結果を以下の表17に示す。
【0116】
【表18】

【0117】
すべての錠剤が90秒未満に完全崩壊を示したが、これは、ナノ粒子投与形態の迅速崩壊特徴を実証している。
【0118】
実施例10
本実施例の目的は、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いてケトプロフェンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。
本実施例においては、実施例3で調製したナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を用いた。以下に示した量で、ナノ粒子ケトプロフェンの流動床顆粒を噴霧乾燥マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)、アスパルテーム(登録商標)、無水クエン酸、オレンジ型天然風味剤およびクロスカルメロースナトリウム(Ac−ジ−ゾル(登録商標))と併合し、V−ブレンダー中で約20分間配合した後、ステアリン酸マグネシウムを付加して、2分間配合し、粉末配合物を生成した。
【0119】
【表19】

【0120】
表19に示した条件下でCarverプレスを用いて、粉末配合物を圧縮し、錠剤を生成した。
【0121】
【表20】

【0122】
実施例11
本実施例の目的は、実施例10で調製したケトプロフェン錠剤の硬度および崩壊を試験することであった。
【0123】
錠剤S−AAをまずそれらの硬度に関して評価した。各処方物に関して一錠剤を評価した。硬度結果を以下の表20に示す。
【0124】
【表21】

【0125】
崩壊確定のために、Haake崩壊試験機を用いて、1000 ml脱イオン水浴中で37℃で錠剤S−AAの溶解速度を試験した。崩壊結果を以下の表21に示す。
【0126】
【表22】

【0127】
すべての錠剤が迅速崩壊を示し、9つの処方物のうち7つが90秒未満に崩壊を示した。さらに錠剤S〜VおよびYは、60秒未満に完全崩壊を示したが、これは、ナノ粒子投与形態の迅速崩壊特徴を実証している。
【0128】
実施例12
本実施例の目的は、ナノ粒子ナプロキセンおよび賦形剤として噴霧乾燥ラクトース(ファーストフロFast Flo(登録商標)ラクトース、Foremost Whey Products, Baraboo, Wis. 53913)の流動床顆粒を用いて、ナプロキセンの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。噴霧乾燥ラクトース粉末は、直接圧縮(DC)等級粉末である。ナプロキセンは、周知の抗炎症、鎮痛および解熱剤である。
【0129】
138.9 gのナプロキセンナノ粒子結晶分散液(28.5%ナプロキセン(w/w)および5/7%HPC(w/w))を、流動床造粒機(Aeromatic Fielder, Inc.、モデルSTREA−1)中の150.0 gの噴霧乾燥ラクトース(ファーストフロFast Flo(登録商標)ラクトース)上に噴霧した。この後、その結果生じた顆粒を40#メッシュスクリーンに通して篩に掛けて、流動床顆粒(FBG)を得た。
【0130】
FBGを用いて、表22に示すように、2つの急速溶融錠剤処方物を調製した。5/8インチのトローチ仕上げおよび1300 lbsの圧縮力を用いて、錠剤を調製した。
【0131】
【表23】

【0132】
各処方物の錠剤を、前記のように硬度および崩壊(Haake崩壊試験機)に関して分析した。各試験に関する2つの読取値の平均を確定した。結果を表23に示す。
【0133】
【表24】

【0134】
実施例13
本実施例の目的は、ナノ粒子ニフェジピンの急速溶融処方物を調製することであった。ニフェジピンは、狭心症および高血圧を治療するために用いられるカルシウムチャンネル遮断薬である。それは、プロカルディアProcardia(登録商標)(Pfizer, Inc.)、アダラットAdalat(登録商標)(Latoxan)等の商品名で販売されている。
【0135】
10%(w/w)ニフェジピン、2%(w/w)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)および0.1%(w/w)ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を有する水中ニフェジピンのコロイド分散液を調製した。Malvern Mastersizer S2.14(Malvern Instruments Ltd., Malvern, Worcestershire, UK)を用いて実施した粒子サイズ分析は、以下の粒子サイズ特徴を示した;Dv,90=160 nm;Dv,50=290 nm;およびDv,90=510 nm。
【0136】
精製水で1:1に希釈し、その後均質化し、そして10%(w/w)マンニトールを付加した後、均質化することにより、噴霧乾燥のためにナノ粒子ニフェジピン分散液を調製した。Buchi Mini B-191噴霧乾燥機系(Buchi, Switzerland)を用いて、生成された混合物を噴霧乾燥した。
以下の表24は、噴霧乾燥ナノ粒子ニフィジピン粉末の圧縮により製造された10 mgニフィジピン錠剤処方物を示す。
【0137】
【表25】

【0138】
先ず、前記の表に示した成分を配合することにより、急速溶融10 mgニフィジピン錠剤を調製した。マンニトール、キシリトール、アスパルテーム(登録商標)、クエン酸の半分および重炭酸ナトリウムの半分を、Uni-glatt(Glatt GmbH, Dresden, Germany)中で混合した。PEG4000(約4000の分子量を有するポリエチレングリコール)の10%溶液を用いて、10 g/分の噴霧速度でミックスを造粒した。その結果生じた顆粒を約40℃で30分間乾燥し、その後、クエン酸および重炭酸ナトリウムの残り、噴霧乾燥ニフェジピンナノ結晶およびナトリウムステアリルフメレートを付加し、混合した。
【0139】
10.0 mm正規凹円仕上げを有するPiccalo RTS錠剤成形機(Piccola Industria, Argentina)を用いて、その結果生じた配合物を錠剤成形して、ニフェジピン10 mg錠剤を生成した。生成された錠剤は、304.2±3.9 mgの平均錠剤重量および53.55±6.85 Nの平均硬度を有した。
プレスされた錠剤の各バッチからの5つの代表的錠剤に関して、崩壊試験を実行した。32振動/分でVanKel崩壊装置(VanKel, Edison, New Jersey)を用いて、精製水中で崩壊試験を実行した。崩壊試験からの結果を、以下の表25に示す。
【0140】
【表26】

【0141】
*試験はすべて、37℃で実行したが、但し、錠剤3試験は38℃で実行した)
実施例14
本実施例の目的は、ナノ粒子グリピジドの急速溶融処方物を調製することであった。グリピジドは、非インスリン依存性(II型)糖尿病を有するヒトの血糖レベルを低下するために用いられるスルホニルウレア薬である。それは、グルコトロールGlucotrol(登録商標)(Pratt Pharmaceuticals, Inc.)の商品名で米国で販売されている。
【0142】
10%(w/w)グリピジドおよび2%(w/w)ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を有する水中グリピジドのコロイド分散液を調製した。Malvern Mastersizer S2.14(Malvern Instruments Ltd., Malvern, Worcestershire, UK)を用いて実施し、湿潤法により記録した粒子サイズ分析は、以下の粒子サイズ特徴を示した;Dv,10=270 nm;Dv,50=400 nm;およびDv,90=660 nm。
【0143】
精製水で1:1に希釈し、その後均質化することにより、噴霧乾燥のためにナノ粒子グリピジド分散液を調製した。次にマンニトール(10%(w/w))を付加した後、均質化した。Buchi Mini B-191噴霧乾燥機系(Buchi, Switzerland)を用いて、生成された混合物を噴霧乾燥した。
表26に詳述した処方にしたがって、配合物を調製した。
【0144】
【表27】

【0145】
マンニトール、キシリトール、アスパルテーム(登録商標)、クエン酸の半分および重炭酸ナトリウムの半分を、Uni-glatt(Glatt GmbH, Dresden, Germany)中で混合した。PEG4000の10%溶液を用いて、10 g/分の噴霧速度でミックスを造粒した。その結果生じた顆粒を約40℃で30分間乾燥し、その後、クエン酸および重炭酸ナトリウムの残り、噴霧乾燥ニフェジピンナノ結晶およびナトリウムステアリルフメレートを付加し、混合した。
【0146】
10.0 mm正規凹円仕上げを有するPiccalo RTS錠剤成形機(Piccola Industria, Argentina)を用いて、その結果生じた配合物を錠剤成形して、グリピジド5 mg錠剤を生成した。生成された錠剤は、287.91±11.14 mgの平均錠剤重量および39.4±8 Nの平均硬度を有した。37℃で、代表的錠剤に関して、実施例14に前記したように、崩壊試験を実行した。平均錠剤崩壊時間は43秒であることが判明した。
【0147】
実施例15
本実施例の目的は、流動床造粒法を用いて化合物Bの迅速崩壊ナノ粒子投与形態を調製することであった。化合物Bは、抗炎症、鎮痛および解熱活性を有する。
30%の薬剤、6%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および1.2%のドキュセートナトリウム(DOSS)を有する化合物Bのナノ粒子分散液を調製した。化合物Bは、約142 nmの平均粒子サイズを有した。
【0148】
化合物Bのナノ粒子分散液1332.42 gを、流動床造粒機(Vector Corporation、モデルFLM−1)中の506.5 gの流動化噴霧乾燥ラクトース粉末(ファスト−フロFast-Flo(登録商標)316、Foremost, Inc.)上に、Masterflexポンプ(Cole-Parmer Instrument Co., Chicago, Ill)を用いて噴霧した。噴霧乾燥ラクトース粉末は、直接圧縮等級粉末である。ファスト−フロFast-Flo(登録商標)は噴霧乾燥ラクトースであり、これは易流動性直接圧縮物質である。
【0149】
流動床造粒機のための計器設定は以下のようであった:
入口温度: 71〜75℃
出口温度: 36〜46℃
噴霧圧: 20 psi
工程空気 30 cfm
【0150】
流動化ラクトース上に化合物Bナノ粒子分散液を噴霧して、顆粒を形成後、顆粒を収穫し、0.018”スクリーンを装備したコーンミル(Quadro Corporation、モデルComil 193)に通した。
【0151】
ナノ粒子化合物Bの流動床顆粒を、クロスカルメロースナトリウム(Ac−ジ−ゾル(登録商標)、FMC, Inc.)と併合し、V−ブレンダー中で10分間、マンニトール粉末(パーリトールPearlitol(登録商標)SD200、Roquette, Inc.)を噴霧乾燥して、粉末予備配合物を生成した。ステアリン酸マグネシウムを30メッシュスクリーンに通して篩に掛けて、同一V−ブレンダーに付加し、2分間配合して、最終粉末配合物を生成した。
【0152】
【表28】

【0153】
表28に示した条件下で5/16インチの平坦表面はす縁仕上げを用いてRiva Piccolaプレスを用いて、粉末配合物を圧縮し、錠剤を生成した。
【0154】
【表29】

【0155】
実施例16
本実施例の目的は、実施例15で調製した化合物B錠剤の硬度、脆砕性および崩壊を試験することであった。
【0156】
錠剤A〜Dを、まずそれらの硬度に関して評価した。各処方物の5つの錠剤を試験した。結果を表29に示す。
【0157】
【表30】

【0158】
脆砕性確定のために、25 rpmに予備設定した脆砕機Vankelモデル45-2000を用いて、10個の錠剤を用いて錠剤A〜Dの脆砕率を試験し、回転の4分間後に結果を記録した。脆砕性結果を以下の表30に示す。
【0159】
【表31】

【0160】
崩壊確定のために、Haake崩壊試験機を用いて、900 ml脱イオン水浴中で37℃で錠剤A〜Dの溶解速度を試験した。崩壊結果を以下の表31に示す。
【0161】
【表32】

【0162】
錠剤AおよびBは約90秒またはそれ以下の時間で完全崩壊を示したが、これはナノ粒子投与形態の迅速崩壊特徴を実証する。
【0163】
本発明の精神または範囲を逸脱せずに本発明の方法および組成物において種々の修正および変更がなされ得る、ということは当業者には明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある場合には、本発明の修正および変更を網羅するということが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(a)少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を含む固体投与形態マトリックス、および
(b)固体投与形態マトリックス内の、以下の:
(i)投薬形態中に含入前に約2000 nm未満の有効平均粒子サイズを有する貧可溶性活性剤、および
(ii)活性剤の表面に吸着される少なくとも1つの表面安定剤
を含む経口固体投与形態迅速崩壊ナノ粒子処方物であって、ナノ粒子活性剤および少なくとも1つの表面安定剤を取り囲む固体投与形態マトリックスが唾液との接触時に約3分未満で実質的に完全に崩壊または溶解する処方物。
【請求項2】
活性剤粒子の有効平均粒子サイズが約1500 nm未満、約1000 nm未満、600 nm、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満からなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約2分未満、約90秒未満、約60秒未満、約45秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約15秒未満、約10秒未満および約5秒未満からなる群から選択される時間で唾液との接触時に固体投与形態マトリックスが実質的に完全に崩壊または溶解する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
活性剤の濃度が約0.1%〜約99.9%(w/w)である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
活性剤の濃度が約5%〜約70%(w/w)である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
活性剤の濃度が約15%〜約40%(w/w)である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤の濃度が約99.9%〜約0.1%(w/w)である請求項1記載の組成物。
【請求項8】
製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤の濃度が約95%〜約30%(w/w)である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤の濃度が約85%〜約60%(w/w)である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤が糖、糖アルコール、デンプン、天然ゴム、天然ポリマー、天然ポリマーの合成誘導体、合成ポリマーおよびそれらの混合物から成る群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤がスクロース、デキストレート、デキストリン、グアーゴム、ポリデキストロース、トラガカントゴム、カルボマー、セルロースベースポリマー、ラクトース、グルコース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、ラクチトール、マルチトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カラジーナン、アラビアゴム、キサンタンゴム、アルジネート、デキストラン、マルトデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンコポリマー、ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリエチレンオキシドおよびそれらの混合物から成る群から選択される請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記賦形剤が直接圧縮物質および非直接圧縮物質からなる群から選択される請求項10記載の組成物。
【請求項13】
前記賦形剤が噴霧乾燥マンニトールおよび噴霧乾燥ラクトースから成る群から選択される請求項12記載の組成物。
【請求項14】
固体投与形態処方物が流動床造粒、噴霧乾燥または高剪断造粒により製造される請求項1記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの泡起剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項16】
凍結乾燥された請求項1記載の組成物。
【請求項17】
貧可溶性活性剤が結晶粒子、半結晶粒子、非晶質粒子またはそれらの混合物の形態である請求項1記載の組成物。
【請求項18】
経口用量迅速崩壊ナノ粒子処方物の製造方法であって、以下の:
(a)(i)貧可溶性活性剤およびその表面に吸着される少なくとも1つの表面安定剤のナノ粒子組成物であって、活性剤が約2000 nm未満の有効平均粒子サイズを有する組成物、および(ii)ナノ粒子組成物を取り囲む固体投与形態マトリックスを形成する少なくとも1つの製薬上許容可能な水分散性または水溶性賦形剤を含み、そして
(b)固体投与形態処方物を生成する
ことを包含する方法であって、ナノ粒子活性剤および表面安定剤を取り囲む固体投与形態マトリックスが唾液との接触時に約3分未満で実質的に完全に崩壊または溶解する方法。
【請求項19】
活性剤粒子の有効平均粒子サイズが約1500 nm未満、約1000 nm未満、600 nm、約400 nm未満、約300 nm未満、約250 nm未満、約100 nm未満および約50 nm未満からなる群から選択される請求項18記載の方法。
【請求項20】
約2分未満、約90秒未満、約60秒未満、約45秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約15秒未満、約10秒未満および約5秒未満からなる群から選択される時間で唾液との接触時に固体投与形態マトリックスが実質的に完全に崩壊または溶解する請求項18記載の方法。
【請求項21】
ナノ粒子組成物および少なくとも1つの水分散性または製薬上許容可能な水溶性賦形剤が、以下の:
(i)ナノ粒子組成物および少なくとも1つの水溶性または水分散性賦形剤の粒子を形成するための流動床造粒、
(ii)ナノ粒子組成物および少なくとも1つの水溶性または水分散性賦形剤の粒子を形成するための噴霧乾燥、ならびに
(iii)ナノ粒子組成物および少なくとも1つの水溶性または水分散性賦形剤の粒子を形成するための高剪断造粒
からなる群から選択される方法を用いて過程(a)で併合され、次にこれらが過程(b)で圧縮されて固体投与形態処方物を形成する請求項18記載の方法。
【請求項22】
固体投与形態処方物を生成するための過程(b)における粒子の圧縮前に過程(a)において(i)、(ii)または(iii)で形成される顆粒または粒子に1つまたはそれ以上の付加的製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を付加することを包含する請求項21記載の方法。
【請求項23】
過程(b)が過程(a)で形成された組成物の圧縮を包含する請求項18記載の方法。
【請求項24】
過程(b)が過程(a)で形成された組成物の凍結乾燥を包含する請求項18記載の方法。
【請求項25】
過程(b)の前に組成物に少なくとも1つの泡起剤を付加することをさらに包含する請求項18記載の方法。
【請求項26】
有効量の固体投与形態迅速崩壊ナノ粒子処方物であって、以下の:
(a)少なくとも1つの製薬上許容可能な水溶性または水分散性賦形剤を含む固体投与形態マトリックス、および
(b)固体投与形態マトリックス内の、以下の:
(i)投薬形態中に含入前に約2000 nm未満の有効平均粒子サイズを有する貧可溶性活性剤、および
(ii)活性剤の表面に吸着される少なくとも1つの表面安定剤
を含むナノ粒子処方物であって、ナノ粒子活性剤および表面安定剤を取り囲む固体投与形態マトリックスが約3分未満での唾液との接触時に実質的に完全に崩壊または溶解する処方物を哺乳類に投与することを包含する哺乳類の治療方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−37876(P2011−37876A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227452(P2010−227452)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【分割の表示】特願2001−583733(P2001−583733)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】