説明

近接検知センサ及び近接検知方法

【課題】パルス幅の差分を演算出力する回路構成で高精度な検知を行う近接検知センサを提供する。
【解決手段】近接検知センサは、検知電極2と、検知電極2と接地との間の静電容量変化を検知パルス信号Pに変換して出力する第1検知回路4と、所定の時間でチャージされる参照コンデンサ6と、この参照コンデンサ6の静電容量変化を参照パルス信号Pに変換して出力する第2検知回路8と、検知電極2及び参照コンデンサ6を一定の時間間隔でチャージするトリガ信号TGを生成するトリガ信号生成回路10と、第1検知回路4から入力される検知パルス信号Pと第2検知回路8から入力される参照パルス信号Pとから差分パルス信号Pを算出する演算回路12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知物体の近接を検知電極と接地との間の静電容量変化によって検出する近接検知センサ及び近接検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から静電容量によって被検知物体の近接を検知するセンサが知られている。この種のセンサは、センサ部である検知電極と接地との間の静電容量によって変化する周波数やデューティ比を検出することにより、物体の近接を検知している(特許文献1)。しかし、このような近接検知センサは、温度、湿度、外来ノイズといった周囲環境要素に検出値が影響を受けやすいという問題がある。このため、特許文献1に開示されたセンサには、アナログ回路の温度依存性を補償するため、所定の温度特性を示すサーミスタや半導体温度センサが設けられている。
【特許文献1】特開2002−14174(段落0082〜0089、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1に示すような近接検知センサでは、サーミスタや半導体温度センサを搭載すると高コストになるという問題だけでなく、温度特性をアナログ回路の温度特性と適合させるための設計が難しいという問題点を有する。また、検知電極の静電容量変化を検出する上記のセンサでは、検知電極やアナログ回路によって付加される初期静電容量値に重畳して変化分が出力される。さらに、検知回路の検知出力電圧値は電源電圧に依存して有限であるため、出力値の上限を仮に電源電圧までとすると、電源電圧から初期静電容量の値を差し引いた電圧幅分の値しか取ることができない。つまり、ダイナミックレンジを大きくすることができないため、高精度の検出ができないという問題もある。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、パルス幅の差分を演算出力する回路構成で高精度な検知が可能な近接検知センサ及び近接検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る近接検知センサの第1の態様は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極と、前記検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力する第1検知回路と、参照コンデンサと、前記参照コンデンサの静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する第2検知回路と、前記第1のパルス信号から前記第2のパルス信号を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る近接検知センサの第1の態様によれば、検知電極と同等の環境特性を有する参照コンデンサを具備することで簡易な回路構成で高精度な環境特性補償を行うことができる。
【0007】
本発明に係る近接検知センサの第2の態様は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極と、前記検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力する第1検知回路と、参照電極と、前記参照電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する第2検知回路と、前記第1のパルス信号から前記第2のパルス信号を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る近接検知センサの第2の態様によれば、検知電極と参照電極を近傍に配置することで外来の影響を等しく排除可能になり簡易な回路構成で高精度な環境特性補償を行うことが可能となる。
【0009】
第2の態様の近接検知センサにおいて、前記参照電極は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する構成とすることができる。このように構成することにより、参照電極を第2の検知電極として利用することも可能である。
【0010】
第1及び第2の態様の近接検知センサにおいて、前記第2検知回路から出力される前記第2のパルス信号の初期値は、前記第1検知回路から出力される前記第1のパルス信号の初期値とほぼ等しい値であるように構成してもよい。このように構成することにより、第1の検知回路が持つ初期の静電容量も合わせて減算して変化分だけを取り出すことができる。電源電圧を上限とする有限な値をとることしか出来ない電気回路においても、変化分だけを取り出すことにより後段での信号処理を容易にすることができる。
【0011】
第1及び第2の態様の近接検知センサにおいて、前記第1のパルス信号及び前記第2のパルス信号の立ち上がりを同期させるトリガ信号生成回路を更に備えるように構成することができる。パルス信号を同期させることにより、検知信号波形と参照信号波形の同期を取ることが出来る。これによりパルスレベルでの減算動作を容易に得ることができる。
【0012】
第1及び第2の態様の近接検知センサにおいて、前記第1のパルス信号を前記第2のパルス信号に対して遅延させる遅延回路を更に備えるように構成してもよい。更に、前記差分パルスを直流信号に変換するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタによって生成された直流信号を増幅する直流増幅器とを更に備えるように構成することもできる。パルス信号を意図的に遅延させる回路を挿入することにより、論理減算時におけるグリッジの発生を防ぐことが出来る。また、差分値を直流化することにより、変化分だけを取り出すことが可能になる。後段での増幅や信号処理を可能にすることができ、微小な変化を検知することが可能となる。
【0013】
第1及び第2の態様の近接検知センサにおいて、前記差分パルスのパルス幅をしきい値と比較し、その大小関係に基づいてON/OFF信号を出力するように構成してもよい。差分値を直流化することにより、変化分だけを取り出すことが可能になる。後段で増幅等を行うことで検知信号の微小な変化でもON/OFF出力が可能となる。
【0014】
第1及び第2の態様の近接検知センサにおいて、前記検知電極は複数の電極からなり、前記複数の電極からの信号を選択して前記第1検知回路に入力するセレクタ回路を更に備えるように構成することもできる。
【0015】
本発明に係る近接検知方法の第1の態様は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第1パルス幅計測ステップと、参照コンデンサの静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第2パルス幅計測ステップと、前記第1のパルス信号のパルス幅から前記第2のパルス信号のパルス幅を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算ステップとを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る近接検知方法の第2の態様は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第1パルス幅計測ステップと、参照電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第2パルス幅計測ステップと、前記第1のパルス信号のパルス幅から前記第2のパルス信号のパルス幅を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の近接検知センサ及び近接検知方法によれば、パルス幅の差分を演算出力する回路構成で高精度な検知を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、添付した図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0020】
この近接検知センサは、被検知物体の近接に応じてデューティ比が変化するパルス信号を生成するパルス信号生成部1Aと、生成されたパルス信号の信号処理を行ってデューティ比に応じた出力値を出力すると共に、外部にON/OFF出力を行う信号処理部3Aとを備えて構成されている。
【0021】
パルス信号生成部1Aは、検知電極2と、この検知電極2と接地との間の静電容量に応じたパルス幅の検知パルス信号Pを出力する第1検知回路4と、参照コンデンサ6と、この参照コンデンサ6の静電容量に応じたパルス幅の参照パルス信号Pを出力する第2検知回路8と、第1検知回路4及び第2検知回路8にトリガ信号TGを出力し検知パルス信号P及び参照パルス信号Pの立ち上がりを同期させるトリガ信号生成回路10と、第1検知回路4から入力される検知パルス信号Pと第2検知回路8から入力される参照パルス信号Pとから差分パルス信号Pを算出する演算回路12とを備えて構成されている。
【0022】
検知電極2は、人体等の被検知物体の近接を検知可能なエリアに設置される。検知電極2と接地との間の静電容量Cxは、被検知物体の近接に応じて変化する。第1検知回路4は、トリガ信号生成回路10から入力されるトリガ信号TGに同期し、検知電極2と接地との間の静電容量Cxに応じてデューティ比が変化する検知パルス信号Pを生成するように構成されている。生成された検知パルス信号Pは、演算回路12に出力される。
【0023】
参照コンデンサ6の静電容量Crefは、被検知物体の近接によっては変化しない。第2検知回路8は、トリガ信号生成回路10から入力されるトリガ信号TGに同期し、参照コンデンサ6の静電容量Crefに対応するデューティ比の参照パルス信号Pを生成するように構成されている。生成された参照パルス信号Pは、演算回路12に出力される。
【0024】
演算回路12は、入力された検知パルス信号Pから参照パルス信号Pを減じ、差分パルス信号P(=P−P)を出力するように構成されている。この差分パルス信号Pは、信号処理部3Aに出力される。
【0025】
信号処理部3Aは、パルス信号をデジタル値に変換して外部に出力すると共に、このデジタル値に基づいてON/OFF出力を行うCPU13を備えて構成されている。CPU13は、入力された差分パルス信号Pをデューティ比に応じたデジタル値に変換し、デジタル信号として出力すると共に、このデジタル信号に基づいた近接検知センサのON/OFF状態を切り替えるON/OFF出力を行う。なお、CPU13は論理回路として構成することもできる。
【0026】
このように構成された近接検知センサにおいて、検知電極2に被検知物体が近接すると、検知電極2の被検知物体を介した対接地静電容量Cxが変化し、検知パルス信号Pのデューティ比が変化する。また、検知パルス信号Pのデューティ比は、温度、湿度、外来ノイズ等の環境変化によっても変動する。一方、第2検知回路8から出力される参照パルス信号Pのデューティ比は、被検知物体の近接によっては変化せず、温度や湿度等の周囲環境にのみ依存性を有する。演算回路12は、検知パルス信号Pから参照パルス信号Pを減じることによって、検知パルス信号Pに含まれる温度や湿度等の周囲環境による影響を取り除き、被検知物体の近接のみによって変化する差分パルス信号Pを出力する。
【0027】
このような第1の実施形態に係る近接検知センサの回路構成例について説明する。図2は、第1の実施形態に係る近接検知センサのパルス信号生成部1Aの回路構成例を示す図である。
【0028】
検知電極2と接地との間の静電容量Cxに応じた検知パルス信号Pを生成する第1検知回路4と、参照コンデンサ6の静電容量に応じた参照パルス信号Pを生成する第2検知回路8とはほぼ同一構成である。
【0029】
第1検知回路4は、2つのコンパレータ14、16と、これらコンパレータ14、16の出力がそれぞれリセット端子R、セット端子Sに入力されるRSフリップフロップ回路(以下、「RS−FF」と呼ぶ)18と、このRS−FF18の出力DISを出力するバッファ20と、RS−FF18の出力DISでON/OFF制御されるトランジスタ22とを備えて構成されている。
【0030】
コンパレータ16は、トリガ信号生成回路10から出力される図3に示すようなトリガ信号TGを、分圧抵抗RA1、RB1、RC1によって生成された所定のしきい値VthB1と比較して、トリガ信号TGに同期したセットパルスを出力する。このセットパルスは、RS−FF18のQ出力をセットする。このQ出力は、ディスチャージ信号DISとしてトランジスタ22をOFF状態にする。トランジスタ22がオフ状態において、検知電極2とグランドとの間は、検知電極2の対接地静電容量Cx及び入力端と電源ラインとの間に接続された抵抗RD1による時定数で決まる速度で充電される。これにより、図3に示すように、入力信号Vin1の電位が静電容量Cxによって決まる速度で上昇する。ここで、入力信号Vin1が分圧抵抗RA1、RB1、RC1で決まるしきい値VthA1を超えると、コンパレータ14の出力が反転してRS−FF18の出力を反転させる。この結果、トランジスタ22がON状態となり、検知電極2のチャージされた電荷がトランジスタ22を介して放電される。したがって、第1検知回路4は、検知電極2とグランドとの間の静電容量Cxに基づくデューティ比で発振する検知パルス信号Pを出力する。このように生成された検知パルス信号Pは、演算回路12に出力される。
【0031】
同様に、第2検知回路8は、2つのコンパレータ24、26と、これらコンパレータ24、26の出力がそれぞれリセット端子R、セット端子Sに入力されるRS−FF28と、このRS−FF28の出力DISを出力するバッファ30と、RS−FF28の出力DISでON/OFF制御されるトランジスタ32とを備えたタイマー回路である。
【0032】
コンパレータ26は、トリガ信号生成回路10から出力されるトリガ信号TGを、分圧抵抗RA2、RB2、RC2によって生成された所定のしきい値VthB2と比較して、トリガ信号TGに同期したセットパルスを出力する。このセットパルスは、RS−FF18のQ出力をセットし、ディスチャージ信号DISとしてトランジスタ22をOFF状態にする。これにより、入力信号Vinの電位が静電容量Cref及び入力端と電源ラインとの間に接続された抵抗RD2によって決まる速度で上昇する。ここで、入力信号Vinがしきい値VthA2を超えると、トランジスタ32がON状態となり、参照コンデンサ6のチャージされた電荷が放電される。したがって、検知回路8は、参照コンデンサ6の静電容量Crefに基づくデューティ比で発振する参照パルス信号Pを出力する。このように生成された参照パルス信号Pは、演算回路12に出力される。
【0033】
演算回路12は、入力された検知パルス信号Pから参照パルス信号Pを減じ、図3に示すような差分パルス信号Pを出力する。なお、差分パルス信号Pは、例えば、検知パルス信号Pと、参照パルス信号Pの反転パルスとの論理積によって得られる。
【0034】
このように、2つの検知回路4、8の周囲環境特性がほぼ等しいとすれば、周囲環境のみに依存性を有する第2検知回路8からの参照パルス信号Pを検知パルス信号Pから減じることにより、温度や湿度などの影響を取り除くことができる。これによって、簡易な構成により高精度な静電容量検出を行うことができる。
【0035】
ここで、第1の実施形態に係る近接検知センサを用いて、本発明の効果を検証するために行った検証実験について説明する。第1の実施形態に係る近接検知センサにおいて、検知電極2として20pFのコンデンサ、及び参照コンデンサ6として15pFのコンデンサを接続した。このように構成された近接検知センサの周囲温度を−40℃から90℃に変化させ、CPU13から出力されるデジタル信号の変化量を調べた。図4は、10℃ごとに周囲温度を変化させたときの周囲温度と出力値の変化量との関係を示した図である。なお、変化量は25℃におけるデジタル信号値を基準とした。この結果、−40℃から90℃でのデジタル信号の値のバラつきは±1%以内であった。また、デジタル信号値は温度に応じて変化していないことから、温度依存性による影響が取り除かれることが確認された。
【0036】
なお、被検知物体の非検知状態での第1検知回路4から出力された検知パルス信号Pのパルス幅の初期値を、第2検知回路8から出力される参照パルス信号Pのパルス幅の初期値と等しい値とするために、参照コンデンサ6の静電容量Crefを調整することができる。
【0037】
図5は、検知電極2の静電容量と検出されるパルス信号のパルス幅の関係を示すグラフである。横軸は検知電極2と接地との間の静電容量Cxを示す。縦軸は第1検知回路4により出力されるパルス信号Pのパルス幅を示す。
【0038】
検知電極2に被検知物体が接近しておらず、検知電極2とグランドの間の初期静電容量がCoである場合、検出されるパルス信号のパルス幅はP(Co)である。ここで、検知電極2に被検知物体が接近した場合、静電容量Cxの変化分ΔCxに従い検知パルス信号Pの値が増加する。即ち検知パルス信号Pのパルス幅はP(Co+ΔCx)となる。検知電極2の初期静電容量によるパルス幅P(Co)が大きく、静電容量変化によるパルス幅の変化P(ΔCx)が小さいときには、増幅回路のダイナミックレンジを大きくとることができず増幅回路により増幅を行ったとしても、パルス幅の変化を高精度に検出することができない。
【0039】
その際に、検知電極2の初期静電容量によるパルス幅P(Co)と参照パルス信号Pのパルス幅が等しくなるように参照コンデンサ6の静電容量を調整する。すなわちP(Cref)=P(Co)となるようなCrefを選択する。ここで、第1検知回路4と第2検知回路8にも初期静電容量が存在するので、これらも見積もってCrefの値を設定する。
【0040】
このような状態では、検知パルス信号Pと参照パルス信号Pとの差をとった差分パルス信号PはP=P(Co+ΔCx)−P(Cref)即ちP=P(ΔCx)(∵P(Co)=P(Cref))となる。
【0041】
このように、生成される差分パルス信号Pは、検知電極2における被検知物体の接近による静電容量変化のみを反映したものとなる。この場合、増幅回路のダイナミックレンジを大きくして、これを増幅することにより、検知パルス信号Pの変化が微小であっても、これを確実に検出することができる。微小な信号強度の変化を高精度に測定するための高額な素子を必要とせず、簡易な回路構成で高精度な検知を行うことができる。
【0042】
また、検知電極2において、被検知物体との関係によって決まる所定区間だけの静電容量変化を検出したい場合がある。例えば、図5におけるCxのCaからCbまでの間の変化量を検出したい場合である。この場合、Caまでの静電容量変化を検出させないように、参照コンデンサの静電容量の値としてP(Cref)=P(Ca)となるようなCrefを選べばよい。検知電極2の静電容量の値がCoからCaまでの間にあるとき、検知パルス信号Pから参照パルス信号Pを減じた差分パルス信号Pは検出されない。また、検知電極2の静電容量がCaより大きいとき、検知パルス信号Pから参照パルス信号Pを減じた差分パルス信号PはCaからの変化を反映した値をとる。上限値Cbは、例えば被検知物体が検知電極2に接触したときの静電容量に相当する。
【0043】
このように構成することにより、検知電極のある区間の変化量のみを高精度に計測することができる。また、CoからCaまでの容量変化をノイズマージンとし、検知電極に混入する外来ノイズと同等の静電容量変化を参照コンデンサに付加することでノイズ耐性を向上させることもできる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図6は、第2の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る近接検知センサは、パルス信号生成部1Bと、信号処理部3Bとを備えて構成されている。
【0045】
パルス信号生成部1Bは、演算回路12を有さない点で第1の実施形態におけるパルス信号生成部1Aと異なる。パルス信号生成部1Bは、第1検知回路4により生成された検知パルス信号P及び第2検知回路8により生成された参照パルス信号Pを信号処理部3Bに出力する。
【0046】
信号処理部3Bは、CPU15を備えて構成されている。ここで、CPU15は、入力された検知パルス信号P及び参照パルス信号Pをデジタル値に変換すると共に、2つのデジタル値の差分値を演算する処理を行う点で第1の実施形態に係るCPU13と異なる。CPU15は、この差分値をデジタル値として外部に出力すると共に、このデジタル値に基づいてON/OFF出力を行う点では第1の実施形態に係るCPU13と同様である。
【0047】
信号処理部3Bにおける処理について図7を用いて説明する。図7は、CPU15において、ON/OFF出力を行う処理の例を示すフローチャートである。CPU15には、パルス信号生成部1Bにより生成された検知パルス信号P及び参照パルス信号Pが入力される。ステップS1において、CPU15は入力された検知パルス信号Pのパルス幅を計測し、検知デジタル信号Dを生成する。ステップS2において、同様に入力された参照パルス信号Pのパルス幅を計測し、参照デジタル値Dを生成する。ステップS3において、CPU15は検知デジタル値Dから参照デジタル値Dを減じ、差分パルスの幅である差分デジタル値Dを生成し、デジタル値として出力する。ステップS4において、CPU15は生成された差分デジタル値Dとあらかじめ定められているしきい値とを比較する。本実施の形態では、差分デジタル値Dが設定されたしきい値を上回っている場合にはステップS5に進みON出力を行い、下回っている場合にはステップS6に進みOFF出力を行うこととしている。近接検知センサが作動している間はCPU15はこの処理を繰り返す。
【0048】
このように、信号処理部3Bにおいて、検知パルス信号P及び参照パルス信号PをCPU15を用いて処理することにより、パルス信号生成部に演算回路を設ける必要がなく、パルス信号生成部の構成をよりシンプルにすることができる。また、差分デジタル値の正負を識別でき、しきい値についても上限下限を含めて柔軟に設定することができる。
【0049】
なお、トリガ信号生成回路10において生成されるトリガ信号TGの代わりにCPUからの出力信号を用いることもできる。CPU15において、検知パルス信号P及び参照パルス信号Pのパルス幅を計測するほかに、ADコンバータ等を用いて検知パルス信号P及び参照パルス信号Pを計測しデジタル値として出力するよう構成することも可能である。
【0050】
次に、本発明の第3の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図8は、第3の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。第3の実施形態に係る近接検知センサは、パルス信号生成部1Cと、信号処理部3Cとを備えて構成されている。
【0051】
この実施形態では、信号処理部3CがCPU13の前段にローパスフィルタ(LPF)40と直流増幅器42とを備え、生成された差分パルス信号Pを一旦アナログ値に変換している。図1のトリガ信号生成回路10は、発振回路35とこの発振回路35の出力を分周してトリガ信号TGを生成する分周回路34とにより構成されている。発振回路35は内部発振可能なもので、外部に水晶やセラミックの発振子を接続したものでも良い。図1の演算回路12は、第2検知回路8から出力される参照パルス信号Pを反転させるインバータ38と、第1検知回路4から出力される検知パルス信号P及びインバータ38の出力を論理積するAND回路36により構成されている。
【0052】
AND回路36から出力される差分パルス信号Pは、LPF40によって直流電圧に変換され、直流増幅器42によって増幅されてCPU13に入力される。CPU13は、この信号に基づいてデジタル値出力及びON/OFF出力を行う。
【0053】
このように、差分パルス信号Pを直流化するため、電圧初期値を小さくすることができ、後段の直流増幅器42の増幅度を初期静電容量を含んだパルスを直流化するよりも高くすることができ、ダイナミックレンジの大きな高精度の検知が可能になる。また、信号処理部3Cにおいて、LPF40を用いて差分パルス信号Pを平滑化することにより、検知パルス信号P及び参照パルス信号Pの立ち上がりの時間差から生じるグリッジを除去することができる。
【0054】
本発明の第4の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図9は、本発明の第4の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0055】
第4の実施形態に係る近接検知センサは、パルス信号生成部1Dと、信号処理部3Aとを備えて構成されている。
【0056】
パルス信号生成部1Dは、グリッジを除去するための遅延回路44が設けられている。遅延回路44は、第1検知回路4から出力される検知パルス信号Pを第2検知回路8から出力される参照パルス信号Pに対して僅かに遅延させる。
【0057】
これによって、検知パルス信号P及び参照パルス信号Pの立ち上がりの時間差から生じるグリッジを除去することができる。
【0058】
また、グリッジを除去する他の手段としては、フリップフロップ回路を設け、このフリップフロップ回路にサンプルクロックを入力することにより同期型のサンプリング回路を構成して各パルス信号P、Pをサンプリングするようにしてもよい。或いは、第1検知回路4及び第2検知回路8からの出力を同期させて出力するよう構成することも可能である。
【0059】
本発明の第5の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図10は、本発明の第5の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0060】
第5の実施形態は、パルス信号生成部1Cと、信号処理部3Dとを備えて構成されている。なお、パルス信号生成部1Cは、第3の実施形態と同一構成である。信号処理部3Dは、パルス信号生成部1Cから入力された差分パルス信号Pのパルス幅をデジタル値に変換して出力するパルス幅計測回路46と、しきい値を生成するしきい値設定回路48と、デジタル値としきい値とを入力して大小関係を比較し、その大小関係に基づいてON/OFF出力を行う比較回路50とを備えている。
【0061】
パルス信号生成部1Cによって生成された差分パルス信号Pは、パルス幅計測回路46によってそのパルス幅に応じたデジタル値に変換される。このデジタル値は外部に出力されると共に、比較回路50に出力される。比較回路50は、一方にこのデジタル値を入力し、他方にしきい値設定回路48によって設定されたしきい値を入力し、その大小関係に応じてON/OFF出力を行う。
【0062】
本発明の第6の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図11は、第6の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0063】
第6の実施形態は、パルス号生成部1C及び信号処理部3Eを備えて構成されている。なお、パルス信号生成部1Cは、第3の実施形態と同一構成である。
【0064】
信号処理部3Eは、パルス信号生成部1Cによって生成された差分パルス信号Pを直流化するLPF40と、このLPF40から出力された信号をGain設定部54によって設定された増幅度で増幅する直流増幅器42と、しきい値設定回路52と、直流増幅器42によって増幅された信号としきい値設定回路52によって生成されたしきい値との大小関係を比較し、その大小関係に応じてON/OFF出力を行うヒステリシスコンパレータ56と、このヒステリシスコンパレータ56のヒステリシス特性を設定するヒステリシス設定回路58とを備えている。
【0065】
パルス信号生成部1Cによって生成された差分パルス信号Pは、LPF40によって直流化された後、直流増幅器42においてGain設定部54によって設定されたゲインで増幅される。増幅された直流信号は、アナログ値として外部に出力されると共に、ヒステリシスコンパレータ56によってしきい値と比較され、その大小関係に応じてON/OFF出力に変換される。この実施形態では、ヒステリシスコンパレータ56を使用しているため、耐ノイズ特性が、さらに向上する。
【0066】
ここで、第6の実施形態に係る近接検知センサを用いて、本発明の効果を検証するために行った検証実験について説明する。第6の実施形態に係る近接検知センサにおいて、パルス信号生成部1C及び信号処理部3Eは電子回路により構成される。その検知電極2として5pFのコンデンサ、参照コンデンサ6として3pFのコンデンサを接続した。このように構成された近接検知センサの周囲温度を−40℃、25℃及び85℃に変化させ、直流増幅器42から出力されるアナログ信号の変化量を調べた。この温度特性の測定を、第2検知回路8を停止させ第1検知回路4のみの信号を通過させるようにした場合と、第2検知回路8を動作させ第1検知回路4の信号との差分値を演算した場合との2通り行った。実験には、温度特性等の環境特性が同じコンデンサを用いた。表1は、周囲温度を変化させたときの周囲温度と出力値の変化量との関係を示した表である。なお、変化量は25℃におけるアナログ信号値を基準とした。
【表1】

【0067】
この結果、−40℃と85℃での本実施形態に係る近接検知センサのアナログ出力値は、第1検知回路4のみの信号に基づくアナログ出力値に比べ、変化量にして約半分程度までの改善が確認された。また、アナログ信号値のバラつきは、ほぼ±1%以内であり、温度による近接検知センサへの影響が取り除かれることが確認された。
【0068】
本発明の第7の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図12は、第7の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0069】
第7の実施形態は、パルス号生成部1E及び信号処理部3Eを備えて構成されている。なお、信号処理部3Eは、第6の実施形態と同一構成である。
【0070】
パルス信号生成部1Eにおいて、検知電極61はセレクタ回路60を介して第1検知回路4に接続されている。セレクタ回路60には、chセレクト信号を出力するCPU62が接続されている。また、CPU62には、ON/OFF出力に基づいてCPU62により点灯が制御されるLED64が接続されている。
【0071】
パルス信号生成部1Eは、更に、オペアンプ65を備えている。オペアンプ65は、利得1のバッファを構成するもので、検知電極61とその周りのガード電極及びシールド線等とを同電位に保つことにより、両者の間での充放電を防止するものである。オペアンプ65は、ON/OFF信号によって選択的に動作する。
【0072】
本実施形態において、CPU62は、chセレクト信号をセレクタ回路60に出力する。セレクタ回路60はchセレクト信号に基づいて、検知電極61が備える複数の電極を順番にスキャンする。検知電極61の複数の電極からの信号は、それぞれ順番に第1検知回路4に入力され、検知パルス信号Pとして出力される。この検知パルス信号Pと第2検知回路8から出力される参照パルス信号Pに基づいて生成された差分パルス信号Pは信号処理部3EのLPF40及び直流増幅器42により直流変換され、アナログ値として出力される。また、このアナログ値出力はヒステリシスコンパレータ56においてしきい値と比較される。セレクタ回路60によりスキャンされた検知電極61のあるチャンネルの電極について、その信号に基づくアナログ値出力がしきい値を超えた場合にON/OFF出力を行う。本実施形態においては、アナログ出力がしきい値よりも高い場合にON出力を行うものとする。
【0073】
このON/OFF出力は、CPU62に入力される。CPU62は、ONになっているチャンネルに応じた出力でLED64を点灯させる。これにより検知電極の各チャンネルの検知に応じた表示を行うことができる。
【0074】
また、ON/OFF出力はオペアンプ65に入力される。オペアンプ65は、ON/OFF信号によって検知電極61の周囲のガード電極に対してガード出力を行う。
【0075】
この発明の第7の実施形態において、本発明の効果を検証するために行った検証実験について説明する。
【0076】
図13は、検証実験に用いた検知電極61を示す平面図である。図13(a)は検知電極61の表面部、図13(b)は検知電極61の裏面部を示す。検知電極61は、表面部に4行4列に配置された16個のリング状の電極部66を有する。電極部66の各電極間の間隔は2.5mmである。この電極部66はスルーホール68を介して検知電極の裏面部に接続され、配線70により接続端子72へと配線されている。この検知電極61の16個のチャンネルの電極がそれぞれセレクタ回路60に接続される。また、電極部66の周囲にはガード電極74が配置されている。ガード電極74には、オペアンプのガード出力が入力される。
【0077】
本検証実験において、第1検知回路4及び第2検知回路8に用いられる検知用の抵抗はいずれも75kΩのものを用いた。参照コンデンサ6には56pFのコンデンサを使用した。また、Gain設定部54による直流増幅器42のGainは2倍とし、しきい値設定回路52におけるしきい値は2.5Vとした。
【0078】
この検証実験では、検知電極61の指で触れた状態の一つの電極と、指で触れていない状態の別の電極のアナログ値出力を測定した。また、第2検知回路8を停止させ、第1検知回路4のみの信号を通過させるようにした場合と、第2検知回路8を動作させ、第1検知回路4の信号との差分値を演算した場合との2通りについて上記測定を行った。表2は、指で接触した電極と、接触していない電極との間の、LPF及び直流増幅器の出力電圧の関係を示した表である。
【表2】

【0079】
第1検知回路4のみの信号に基づく直流増幅器42のアナログ値出力は、指で触れた電極と触れていない電極とが、ともにしきい値である2.5Vを越えており両方ともON出力がされる。このため、この状態では近接検知センサとしては動作しないこととなる。
【0080】
第2検知回路8を動作させ、参照コンデンサ6の出力に基づく参照パルス信号Pとの減算を行った場合、直流増幅器42のアナログ値出力は互いに異なる値を示している。ここで、検知電極61のch16の電極に指で触れている場合には、出力電圧はしきい値である2.5Vを越えているためON出力がなされる。一方、検知電極61のch12の電極に指で触れていない場合には、出力電圧はしきい値を超えていないためOFF出力がなされる。この状態では、所定の電極に指が触れた際に、その出力電圧に基づくON出力で所定のLEDを点灯することが可能である。よって、被検知物体の近接を検知する近接検知センサとして動作する。
【0081】
検証実験の第1検知回路4のみで動作させた近接検知センサにおいて、しきい値を4.4V以上の値に設定し、Gain設定部におけるGainを1倍とすれば、指の接触の弁別は可能である。しかし、信号処理部における回路の測定上限値は電源電圧の5Vであり、これに近い値を使用することは、設計マージンを確保することを困難にさせる。信号処理部での増幅度を上げることが困難であるため、これ以上感度の小さい検知は測定不能となる。
【0082】
一方、第2検知回路8を動作させた近接検知センサにおいて、アナログ値出力は測定上限値である電源電圧の3分の2程度である。このため、感度の小さい検知であっても減算値を大きくしたり、増幅度を上げたりすることにより検知が可能である。
【0083】
この検証実験において、ガード電極74が用いられている。ガード電極74なしで検知を行うと、電極部66が互いに影響を与える可能性がある。そのため、電極部66や各電極から第1検知回路8への配線70をガード電極74を用いてシールドする。このガード電極には、GNDを用いることもでき、電極部66が離れて配置されている場合には、用いなくても良い。
【0084】
本実施形態における近接検知センサにおいて、有限の電源電圧内であっても、減算動作を行うことにより微小な静電容量の変化を検知することが可能となった。
【0085】
上記の全ての実施形態において、参照コンデンサ6の代わりに参照電極76を用いることができる。この場合、例えば図14に示すように、検知電極2の裏側にシールド78を介して参照電極76を配するように構成することができる。このような構成により、検知電極2は被検知物体の近接に伴って検出値を変化させるが、参照電極76は、被検知物体の近接に影響されずに参照値を出力させることができる。また、参照電極76の裏側から発生する参照電極76へのノイズの影響を除去するため、参照電極76の裏側に更にシールド78を配してもよい。
【0086】
本発明の第8の実施形態に係る近接検知センサについて説明する。図15は、本発明の第8の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【0087】
第8の実施形態は、パルス信号生成部1Fと、信号処理部3Fとを備えて構成されている。パルス信号生成部1Fは、第3の実施形態における参照コンデンサ6に変わって、被検知物体の接近により静電容量を変化させる検知電極76が参照電極として用いられている点において第3の実施形態に係るパルス信号生成部1Cと異なる。また、コンデンサ80が第1検知回路4に接続されている点においても第3の実施形態に係るパルス信号生成部1Cと異なる。信号処理部3Fは、第6の実施形態に係る信号処理部1Eにおけるアナログ値出力部分と同様の構成である。
【0088】
パルス信号生成部1Fにおいて、検知電極2は第1検知回路4に接続されており、第1検知回路4は検知パルス信号Pを出力する。ここで、検知電極2及び検知電極76に被検知物体が近接していない状態でもその出力がフルレンジの中間値を示すように第1検知回路4の入力端子に初期静電容量を増加させるためのコンデンサ80が接続される。
【0089】
パルス信号生成部1Fにおいて、検知電極76は、第2検知回路に接続されている。第2検知回路8は、第1検知回路4と同様に、検知電極76と接地との間の静電容量変化を参照パルス信号Pに変換して出力する。ここで、検知電極76は初期静電容量が第1検出回路4の初期静電容量とほぼ等しく、被検知物体の接近により接地との間の静電容量が変化する。静電容量の変化に伴い参照パルス信号Pのパルス幅も変化する。
【0090】
第8の実施形態に係る近接検知センサによれば、検知電極2に被検知物体が接近することにより、検知電極2の静電容量が変化し、アナログ値として出力される電圧値がフルレンジの中間値から増加する。また、検知電極76に被検知物体が接近することにより、検知電極76の静電容量が変化し、出力される電圧値がフルレンジの中間値から減少する。上述の第1〜第7の実施形態では、参照コンデンサ6の出力する参照値は、検出値を減ずる温度補正のために使用されていたが、本実施形態に示すように参照コンデンサ6を電極76に置き換えることにより、第2の検知電極として使用することも可能である。この場合、周囲環境変化は同相ノイズであるからキャンセルされる。
【0091】
ここで、第8の実施形態に係る近接検知センサの効果を検証するために行った検証実験について説明する。パルス信号生成部における、検知電極2及び検知電極76として50mm角の銅箔を用い、この2つの検知電極を20mmの間隔をあけて配置した。また、各検知電極上に厚さ1mmのアクリル板を配置した。そして、第1検知回路の入力端子に20pFのコンデンサを接続した。このように構成された近接検知センサの各検知電極に指を接触させていない状態と指を接触させた状態との出力電圧を計測した。
【0092】
この検証実験において、両電極に何も接触していない状態の出力電圧と検知電極に指で接触した状態の出力電圧との比較を以下の表3に示す。
【表3】

【0093】
この結果、検知電極2及び検知電極76にそれぞれ接触した状態の出力の変化は十分に計測できることが確認された。また、両電極に接触した場合の出力の変化はそれぞれの電極に接触した場合の出力の変化の差分値とほぼ一致している。従って、両検知電極に同時に接触した場合は、近接検知センサにおいて非検知状態を通知する構成とすることも可能である。また、このような近接検知センサは、初期静電容量を増加させるコンデンサを用いずに構成することも可能である。
【0094】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加等が可能である。
【0095】
例えば、トリガ信号生成回路10は、内部発振可能な発振回路を用いて構成したが、外部からサンプル同期信号を入力するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る近接検知センサの一部回路構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施形態に係る近接検知センサの回路構成例におけるタイミングチャートである。
【図4】周囲温度と変化量との関係を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る近接検知センサの検知電極の静電容量と検出されるパルス信号のパルス幅を示すグラフである。
【図6】第2の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図7】CPUにおいて、ON/OFF出力を行う処理の例を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】第4の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図10】第5の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図11】第6の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図12】第7の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図13】検知電極の構成例を示す平面図である。
【図14】検知電極と参照電極との配置例を示す概略図である。
【図15】第8の実施形態に係る近接検知センサの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
2、61…検知電極、 4…第1検知回路、 6…参照コンデンサ、 8…第2検知回路、 10…トリガ信号発信回路、 12…演算回路、 14、16、24、26…コンパレータ、 18、28…RSフリップフロップ回路、 20、30…バッファ、 22、32…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極と、
前記検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力する第1検知回路と、
参照コンデンサと、
前記参照コンデンサの静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する第2検知回路と、
前記第1のパルス信号から前記第2のパルス信号を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算手段と
を備えたことを特徴とする近接検知センサ。
【請求項2】
被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極と、
前記検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を出力する第1検知回路と、
参照電極と、
前記参照電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を出力する第2検知回路と、
前記第1のパルス信号から前記第2のパルス信号を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算手段と
を備えたことを特徴とする近接検知センサ。
【請求項3】
前記参照電極は、被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化することを特徴とする請求項2記載の近接検知センサ。
【請求項4】
前記第2検知回路から出力される前記第2のパルス信号の初期値は、前記第1検知回路から出力される前記第1のパルス信号の初期値とほぼ等しい値であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項5】
前記第1のパルス信号及び前記第2のパルス信号の立ち上がりを同期させるトリガ信号生成回路を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項6】
前記第1のパルス信号を前記第2のパルス信号に対して遅延させる遅延回路を更に備えたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項7】
前記差分パルスを直流信号に変換するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタによって生成された直流信号を増幅する直流増幅器とを更に備えたことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項8】
前記差分パルスのパルス幅をしきい値と比較し、その大小関係に基づいてON/OFF信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項9】
前記検知電極は複数の電極からなり、前記複数の電極からの信号を選択して前記第1検知回路に入力するセレクタ回路を更に備えたことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項記載の近接検知センサ。
【請求項10】
被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第1パルス幅計測ステップと、
参照コンデンサの静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第2パルス幅計測ステップと、
前記第1のパルス信号のパルス幅から前記第2のパルス信号のパルス幅を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算ステップと
を備えたことを特徴とする近接検知方法。
【請求項11】
被検知物体の近接に伴いグランドとの間の静電容量が変化する検知電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第1のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第1パルス幅計測ステップと、
参照電極とグランドとの間の静電容量に応じたパルス幅の第2のパルス信号を入力しパルス幅を計測する第2パルス幅計測ステップと、
前記第1のパルス信号のパルス幅から前記第2のパルス信号のパルス幅を減じた差分パルスのパルス幅を演算出力する演算ステップと
を備えたことを特徴とする近接検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−275428(P2008−275428A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119009(P2007−119009)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】