説明

近赤外反射フィルム、その製造方法及び近赤外反射体

【課題】近赤外反射率及び可視光透過率が高く、膜厚均一性、ヘイズに優れた近赤外反射フィルム及び該近赤外反射フィルムを有する近赤外反射体を提供することにある。
【解決手段】基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、及び下記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外反射性、可視光透過性及び耐久性に優れた近赤外反射フィルム、その製造方法及び近赤外反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する近赤外反射フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
近赤外反射フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法等のドライ製膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
【0004】
上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて近赤外反射フィルムを形成する方法が知られている。
【0005】
例えば、金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を有機溶媒中に分散させた屈折率層塗布液を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照)や、ルチル型の酸化チタン、複素環系窒素化合物(例えば、ピリジン)、熱硬化型バインダー及び有機溶剤から構成される屈折率塗膜形成用組成物を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0006】
しかしながら、有機溶剤系で粘度が低く、さらに積層塗布する際に濡れ広がって乾くために目的の膜厚が均一に得られないという問題があった。
【0007】
さらに酸化チタン微粒子と有機ケイ素化合物と多官能アクリル化合物を主成分とする組成物で光照射等により膜を形成する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。上記構成では、UV照射等により固い膜が作製されるため、さらに積層塗布する場合には表面処理等が必要になり界面が乱れてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2004−123766号公報
【特許文献3】特開2001−164117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、膜厚均一性、ヘイズに優れた近赤外反射フィルム及び該近赤外反射フィルムを有する近赤外反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、及び下記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−、または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子またはアルキル基を表し、Aは置換もしくは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)x−CHCHRb−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。)
2.前記金属酸化物粒子の表面を被覆する化合物が、コラーゲンペプチドまたは低分子ゼラチンであることを特徴とする前記1に記載の近赤外反射フィルム。
【0014】
3.さらに、反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる水溶性ポリマーBを含有することを特徴とする前記1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【0015】
4.さらに、カチオン系界面活性剤を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルム。
【0016】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムの製造方法であって、少なくとも2つの層を同時重層塗布することを特徴とする近赤外反射フィルムの製造方法。
【0017】
6.基体の少なくとも一方の面側に、前記1〜4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムまたは前記5に記載の近赤外反射フィルムの製造方法で得られた近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、膜厚均一性、ヘイズに優れた近赤外反射フィルム及び該近赤外反射フィルムを有する近赤外反射体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、及び前記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有する近赤外反射フィルムにより、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、膜厚均一性、ヘイズに優れた近赤外反射フィルム及び該近赤外反射フィルムを有する近赤外反射体を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
すなわち、前記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを、表面を被覆した金属酸化物粒子に添加することで、塗布液の状態では微粒子等は凝集せず、温度を変化させたり、水が揮発していく段階で反応し、ゲル状態へ変化することにより塗布膜厚が均一化できることが分かった。
【0021】
以下、本発明の近赤外反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0022】
《近赤外反射フィルム》
本発明の近赤外反射フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、及び前記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有することを特徴とする近赤外反射フィルムであるが、近赤外反射フィルムの基本光学特性としては、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とする。
【0023】
また、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては、50%以上で、かつ、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0024】
一般に、近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つが、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とし、好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0025】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を越える層数が必要となり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0026】
《近赤外反射フィルムの構成》
次いで、本発明の近赤外反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成について説明する。
【0027】
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成され、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であるユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0028】
また、本発明の近赤外反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0029】
本発明の近赤外反射フィルムにおいては、基材に隣接する層が、酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
【0030】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0031】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。
【0032】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0033】
《近赤外反射フィルムの構成要素》
以下、本発明の近赤外反射フィルムの各構成要素の詳細に付いて説明する。
【0034】
〔基材〕
本発明の近赤外反射フィルムに適用する基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。
【0035】
ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0036】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0037】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0038】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性等の点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0039】
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明のフィルム支持体は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0040】
〔金属酸化物粒子〕
本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層は、表面を被覆した金属酸化物粒子を含有することを特徴とするが、好ましくは、高屈折率層及び低屈折率層が表面を被覆した金属酸化物粒子を含有することが好ましい態様である。
【0041】
本発明に係る金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
【0042】
高屈折率層及び低屈折率層中の金属酸化物の含有量は、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。金属酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、近赤外反射フィルムを形成することが容易となる。
【0043】
また、各屈折率層において、金属酸化物粒子と各層を構成するバインダーの一つである一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAとの質量比としては、0.1〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10である。
【0044】
本発明に係る高屈折率層の形成に用いる金属酸化物粒子の金属酸化物としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiOがより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
【0045】
本発明では高屈折率層を形成する塗布液の調製に二酸化チタンゾルを用いることが望ましいが、その二酸化チタンゾルの調製法方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、同9−165218号公報、同11−43327号公報等参照にすることができる。
【0046】
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、同9−165218号公報、同11−43327号公報等参照にすることができる。
【0047】
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、4〜50nmであり、より好ましくは4〜30nmである。
【0048】
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素粒子を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0049】
本発明に係る二酸化ケイ素粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0050】
本発明に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する酸化チタン粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0051】
本発明においては、金属酸化物微粒子は表面を被覆することを特徴とする。
【0052】
金属酸化物微粒子の表面を被覆する化合物としては、例えば電荷を調整する場合にはポリ塩化アルミニウム、ジルコニウム塩等の多価金属化合物でもよいし、アミノカルボン酸類、アミノポリカルボン酸、ピリジン誘導体及びコラーゲンペプチド、低分子ゼラチン等も好ましい。
【0053】
本発明においては、重量平均分子量が3万以下である低分子量ゼラチンまたはコラーゲンペプチドが最も好ましいが、低分子量ゼラチン等を添加する際のショックを軽減するために、あらかじめ金属酸化物微粒子の表面をポリ塩化アルミニウム等で被覆するというように2種以上の化合物で被覆することも可能である。
【0054】
〈低分子量ゼラチン、コラーゲンペプチド〉
本発明に係る低分子量ゼラチンまたはコラーゲンペプチドは、重量平均分子量が3万以下であることが好ましい。
【0055】
本発明でいうコラーゲンペプチドとは、ゼラチンに低分子化処理を施して、ゾルゲル変化を発現させなくしたタンパク質であると定義する。
【0056】
本発明に係る低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドは、重量平均分子量が3万以下のものであるが、より好ましくは2,000〜30,000であり、特に好ましくは5,000〜25,000である。
【0057】
低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドの重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンあるいはコラーゲンペプチドは、通常用いられる重量平均分子量10万程度の高分子ゼラチンの水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0058】
より具体的には、本発明に係る低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドは、次のようにして調製することができる。
【0059】
通常用いられる重量平均分子量が10万以上の高分子ゼラチンを水に溶かし、ゼラチン分解酵素を加えて、ゼラチン分子を酵素分解する。この方法については、R.J.Cox.Photographic Gelatin II,Academic Press,London,1976年、P233〜251、P335〜P346の記載を参考にすることができる。この場合、酵素が分解する結合位置は決まっているため、比較的分子量分布の狭い低分子量ゼラチンが得られ、好ましい。この場合、酵素分解時間を長くする程、より低分子量化する。その他、低pH(pH1〜3)もしくは高pH(pH10〜12)雰囲気下で加熱し、加水分解する方法もある。重量平均分子量が3万以下で、本発明の効果が大きくなる。重量平均分子量2000以上のゼラチンやコラーゲンペプチドが製造しやすい。
【0060】
本発明に係る低分子ゼラチンやコラーゲンペプチドにおいては、上記低分子ゼラチンやコラーゲンペプチドの調製工程において、原料として用いる重量平均分子量が10万以上の高分子ゼラチンの分解を十分に行い、その含有量が1.0質量%以下となるように高分子ゼラチン分子の酵素分解を最適に行うため、ゼラチン分解酵素の種類、添加量や、酵素分解時の温度や時間等の条件を適宜設定することが好ましい。
【0061】
〈金属酸化物微粒子の表面被覆方法〉
金属酸化物微粒子の表面被覆方法としては、金属酸化物微粒子の分散液に、表面被覆材料を添加し、必要に応じて加温したり、酸またはアルカリを加えたりして調製する方法が挙げられる。具体的には、例えば酸化チタン粒子ゾル(金属酸化物微粒子)を攪拌しながら50℃まで昇温した後、低分子ゼラチン(表面被覆材料)を添加して30分間攪拌し、酸化チタン粒子表面を低分子ゼラチンで被覆する。
【0062】
[一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーA]
本発明は、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、前記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有することを特徴とする。
【0063】
本発明において水溶性ポリマーAとは、水溶性で、かつ、25℃の水100gに0.001g以上溶解するポリマーを意味する。前記溶解は、ヘイズメーターや濁度計で測定することができる。
【0064】
本発明に係る水溶性ポリマーAは、前記一般式(I)で表される構造単位を含む構造を有し、前記一般式(I)で表されるホモポリマーであってもよいし、他の成分が共重合されていてもよい。他の成分を共重合する場合は、前記一般式(I)で表される構造単位を10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
【0065】
また、水溶性ポリマーAは、層中に40〜80質量%含まれていることが好ましく、50〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0066】
一般式(I)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−、または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子またはアルキル基を表し、Aは置換もしくは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)x−CHCHRb−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。
【0067】
Raで表されるアルキル基としては、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていてもよい。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち好ましくは、水酸基、アルキルオキシ基である。
【0068】
前記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0069】
前記アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0070】
前記シクロアルキル基の炭素原子数は3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0071】
前記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が挙げられ、好ましくはエトキシ基である。
【0072】
前記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
【0073】
前記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が挙げられる。
【0074】
前記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が挙げられる。
【0075】
前記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0076】
前記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が挙げられる。
【0077】
前記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が挙げられる。
【0078】
前記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が挙げられる。
【0079】
前記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が挙げられる。
【0080】
前記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が挙げられる。
【0081】
前記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が挙げられる。
【0082】
前記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が挙げられる。
【0083】
前記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。
【0084】
前記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が挙げられる。
【0085】
前記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が挙げられる。
【0086】
前記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が挙げられる。
【0087】
前記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0088】
前記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0089】
前記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が挙げられる。
【0090】
前記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が挙げられる。
【0091】
前記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が挙げられる。
【0092】
前記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が挙げられる。
【0093】
前記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が挙げられる。
【0094】
前記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が挙げられる。
【0095】
前記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0096】
前記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が挙げられる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基がさらに置換されてもよい。
【0097】
一般式(I)において、Aは置換もしくは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)x−CHCHRb−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。
【0098】
アルキレン基としては、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていてもよい。
【0099】
また、Rbは水素原子、アルキル基を表し、アルキル基としては、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていてもよい。さらに、xは平均繰り返しユニット数を表し、0〜100が好ましく、より好ましくは0〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記してもよい。
【0100】
以下に、一般式(I)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
【化2】

【0102】
〔水溶性ポリマーB〕
本発明においては、高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、前記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAの他に、さらに、反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる水溶性ポリマーBを含有することが好ましい。水溶性ポリマーBとしては、ゼラチンであることが特に好ましい。
【0103】
本発明に係る水溶性ポリマーBとは、水媒体に対し25℃で1質量%以上溶解する高分子化合物をいい、好ましくは3質量%以上溶解する高分子化合物である。その重量平均分子量は1,000〜200,000が好ましい。さらには、3,000〜40,000がより好ましい。
【0104】
本発明に係る高屈折率層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液における水溶性高分子Bの濃度としては、0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.35〜2.0質量%の範囲であることがより好ましい。
【0105】
以下、各水溶性ポリマーBの詳細について説明する。
【0106】
(反応性官能基を有するポリマー)
本発明に適用可能な反応性官能基を有するポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0107】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0108】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0109】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0110】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0111】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0112】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違い等二種類以上を併用することもできる。
【0113】
本発明においては、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0114】
(無機ポリマー)
本発明に係る水溶性ポリマーBの1つとして、無機ポリマーを用いることが好ましい。中でもジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
【0115】
本発明に適用可能なジルコニウム原子含有化合物としては、酸化ジルコニウムを除くものであるが、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0116】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、さらに好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルが好ましく、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0117】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内の代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0118】
【化3】

【0119】
ただし、s、tは1以上の整数を表す。
【0120】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いてもよいし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0121】
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0122】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
【0123】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0124】
【化4】

【0125】
ただし、s、t、uは1以上の整数を表す。
【0126】
前記無機ポリマーの添加量は、金属酸化物粒子100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。
【0127】
(増粘多糖類)
本発明においては、水溶性ポリマーBとして、増粘多糖類を用いることが好ましい。
【0128】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類を挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0129】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0130】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β−1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。そのような多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロース等のペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトース等のヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0131】
本発明においては、さらには、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0132】
増粘多糖類の含有量としては、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。ただし、その他の水溶性高分子やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0133】
〈ゼラチン〉
本発明に係る各屈折率層においては、水溶性ポリマーBとして、ゼラチンを含有することが最も好ましい。
【0134】
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
【0135】
本発明においては、重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを用いることが好ましく、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等を挙げることができる。
【0136】
本発明において、ゼラチンの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。ゼラチンの分子量分布及び重量平均分子量についても、一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラ法(GPC法)によって測定することができる。
【0137】
ゼラチンの分子量については、D.Lorry and M.Vedrines,Proceedings of the 4th IAG Conference,Sept.1983,P.35、大野隆司,小林裕幸,水澤伸也,日本写真学会誌,47,237(1984)等に記載されているように、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分、単量体である高分子両性分、さらにはこれらの成分が不規則に切断された低分子量成分からなるのが一般的である。
【0138】
本発明に係る重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンとしては、上記各成分の中でも、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分が主体のゼラチンである。
【0139】
また、本発明に係る重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンの製法としては、例えば、下記の方法等が挙げられる。
【0140】
1)ゼラチン製造中の抽出操作で、抽出後期の抽出物を使用して抽出初期のもの(低分子量成分)は排除する。
【0141】
2)前記製法において、抽出以後乾燥までの工程において、処理温度を40℃未満とする。
【0142】
3)ゼラチンを冷水(15℃)透析する。
【0143】
上記の方法を単独または併用して用いることにより、重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを得ることができる。
【0144】
(硬化剤)
本発明においては、バインダーである水溶性ポリマーA及びBを硬化させるため、硬化剤を使用することが好ましい。
【0145】
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性ポリマーA及びBと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、一般的には水溶性ポリマーと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性ポリマーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性ポリマーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトV−02、V−02−L2、SV−02等)、オキサゾリン等が挙げられる。
【0146】
また、ホウ酸またはその塩を用いることができる。ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
【0147】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0148】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性ポリマーA及びB1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0149】
〔カチオン系界面活性剤〕
本発明の近赤外反射フィルムを構成する高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層は、塗布性の観点からカチオン系界面活性剤を含有することが好ましい。カチオン系界面活性剤は少量で表面張力を下げることができ、高屈折率層及び低屈折率層の物性も向上する。特に、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0150】
(4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤)
本発明に適用可能な4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(TOAB)、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0151】
また、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤は市販品として入手することもでき、例えば、代表例としては、花王社製のコータミン24P(C1225+(CHCl)、同コータミン86P(C1837(CHCl)、日油社製のニッサンカチオン2−ABT(C18371837(CHCl)、同ニッサンカチオン2−OLR(C18351835(CHCl)、日光ケミカルズ社製のNIKKOL CA3475V(C18371837(CHCl)等を挙げることができる。
【0152】
本発明に係る高屈折率層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液における上記各界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.0010〜0.10質量%の範囲であることが好ましく、さらには0.0015〜0.05質量%であることが好ましい。
【0153】
本発明においては、上記4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤の中では、ジアルキル型の4級アンモニウム塩が好ましい。具体的な界面活性剤としては日油社製のニッサンカチオン2−ABT(C18371837(CHCl)、同ニッサンカチオン2−OLR(C18351835(CHCl)、同ニッサンカチオン2−DB−500E(C10211021(CHCl)、日光ケミカルズ社製のNIKKOL CA3475V(C18371837(CHCl)等を挙げることができるである。さらにはアルキルの炭素数はC17以下であることが少量でも効果が高く好ましい。
【0154】
(その他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能なその他の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号の各公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号の各公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号の各公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0155】
〔近赤外反射フィルムの製造方法〕
本発明の近赤外反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されユニットを積層して構成されるが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0156】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号の各明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0157】
本発明では、少なくとも2つの層を同時重層塗布することが好ましい。同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0158】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜80,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜80,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜80,000mPa・sである。
【0159】
塗布及び乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0160】
〔近赤外反射フィルムの応用〕
本発明の近赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0161】
特に、本発明に係る近赤外反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0162】
接着剤は、窓ガラス等に貼り合わせたとき、近赤外反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0163】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0164】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0165】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0166】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0167】
実施例1
《近赤外反射フィルムの作製》
〔近赤外反射フィルム1の作製〕
(低屈折率層用塗布液1の調製)
以下の液を45℃まで昇温して以下の順番に添加し、低屈折率層用塗布液1を調製した。
【0168】
はじめに、コロイダルシリカを攪拌しながら45℃まで昇温した後、低分子量ゼラチン水溶液を添加して30分間攪拌して、コロイダルシリカ粒子表面を低分子量ゼラチンで被覆した。次いで、構造単位I−4のホモポリマー水溶液と純水を添加し、90分間攪拌した後、界面活性剤水溶液を添加して、低屈折率層塗布液1を調製した。
【0169】
コロイダルシリカ(20質量%) 100g
低分子量ゼラチン水溶液(5質量%) 200g
構造単位I−4のホモポリマー水溶液(5質量%) 150g
純水 240g
界面活性剤水溶液(CA−3475V、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、5.0質量%日光ケミカルズ社製) 0.64g
上記低分子量ゼラチンはアルカリ処理により加水分解を施した重量平均分子量が2万の低分子量ゼラチンである。なお、下記の方法に従って基材上に低屈折率層用塗布液1を塗布する直前に、架橋剤として、カルボジライトV−02(日清紡社製)を0.1g添加した。
【0170】
(低屈折率層1の形成)
上記低屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、乾燥膜厚が170nmになるようにワイヤーバー塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に低屈折率層1を形成した。
【0171】
(高屈折率層用塗布液1の調製)
下記の液をこの順序で添加、混合して、高屈折率層塗布液1を調製した。
【0172】
はじめに、酸化チタン粒子ゾルを攪拌しながら50℃まで昇温した後、低分子ゼラチンを添加して30分間攪拌して、酸化チタン粒子表面を低分子ゼラチンで被覆した。次いで、高分子ゼラチンと純水を添加し、90分間攪拌した後、界面活性剤を添加して、高屈折率層塗布液1を調製した。この調製方法を、調製パターンAと称す。
【0173】
酸化チタン粒子ゾル(体積平均粒径35nm、ルチル型酸化チタン粒子、20質量%) 60g
低分子量ゼラチン(GelL1)水溶液(5.0質量%) 125g
高分子量ゼラチン(GelH1)水溶液(5.0質量%) 100g
純水 150g
界面活性剤水溶液(CA−3475V、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、5.0質量%、日光ケミカルズ社製) 0.45g
GelL1はアルカリ処理により加水分解を施した重量平均分子量が2万の低分子量ゼラチンであり、GelH1は重量平均分子量が13万の酸処理ゼラチン(高分子量ゼラチン)である。
【0174】
(高屈折率層1の形成)
上記高屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)に形成した低屈折率層1上に、乾燥膜厚が130nmになるようにワイヤーバー塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、高屈折率層1を形成した。
【0175】
(積層体の形成)
上記形成した高屈折率層1上に、同様にして低屈折率層1/高屈折率層1から構成されるユニットを交互に積層し、計10ユニット(20層)積層した後、さらに最上層として低屈折率層1を形成して、21層からなる近赤外反射フィルム1を作製した。
【0176】
〔近赤外反射フィルム2〜4の作製〕
近赤外反射フィルム1の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを、構造単位I−1のホモポリマー、構造単位I−7のホモポリマー、構造単位I−16のホモポリマーに変更した以外は同様にして、それぞれ近赤外反射フィルム2〜4を作製した。
【0177】
〔近赤外反射フィルム5の作製〕
近赤外反射フィルム1の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを、構造単位I−1とスチレン=1:1(モル比)のコポリマーに変更した以外は同様にして、近赤外反射フィルム5を作製した。
【0178】
〔近赤外反射フィルム6の作製〕
近赤外反射フィルム1の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを30gとし、高屈折率層用塗布液1の高分子量ゼラチン(GelH1)を70gに変更した以外は同様にして近赤外反射フィルム6を作製した。
【0179】
〔近赤外反射フィルム7の作製〕
近赤外反射フィルム6の作製において、高屈折率層用塗布液1の低分子量ゼラチン(GelL1)を除いた以外は同様にして近赤外反射フィルム7を作製した。
【0180】
〔近赤外反射フィルム8の作製〕
近赤外反射フィルム6の作製において、高屈折率層用塗布液1の界面活性剤を除いた以外は同様にして近赤外反射フィルム8を作製した。
【0181】
〔近赤外反射フィルム9の作製〕
(積層体の形成)
21層同時重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、近赤外反射フィルム1の作製で調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1を用い、基材に近い側を低屈折率層1(175nm狙い)、その上に高屈折率層1(135nm狙い)を交互に形成し、最上層に低屈折率層1を形成し、低屈折率層は11層、高屈折率層は10層、計21層から構成となるようにして、45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、同時重層塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、近赤外反射フィルム5を作製した。なお、TEMにより塗布膜の断面を観察したところ、EDX分析にて低屈折率層と高屈折率層の混合膜厚を確認したところ、50nm以下であった。
【0182】
〔近赤外反射フィルム10の作製〕
近赤外反射フィルム1の作製において、高屈折率層用塗布液1の高分子量ゼラチン(GelH1)水溶液(5.0質量%)を70gに変更し、構造単位I−4のホモポリマー水溶液(5質量%)30gを追加した以外は同様にして近赤外反射フィルム10を作製した。
【0183】
〔近赤外反射フィルム11の作製〕
近赤外反射フィルム1の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを除いた以外は同様にして近赤外反射フィルム11を作製した。
【0184】
〔近赤外反射フィルム12の作製〕
近赤外反射フィルム6の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを除いた以外は同様にして近赤外反射フィルム12を作製した。
【0185】
〔近赤外反射フィルム13の作製〕
近赤外反射フィルム9の作製において、低屈折率層用塗布液1の構造単位I−4のホモポリマーを除いた以外は同様にして近赤外反射フィルム13を作製した。なお、TEMにより塗布膜の断面を観察したところ、EDX分析にて低屈折率層と高屈折率層の混合膜厚を確認したところ、100nmであった。
【0186】
以上の近赤外反射フィルム1〜13を構成する低屈折率層と高屈折率層の屈折率の差は0.1以上であった。
【0187】
《近赤外反射フィルムの評価》
上記作製した各近赤外反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0188】
(膜厚均一性)
試料の数か所を取り、断面TEMにより膜厚を測定し、下記基準で評価した。
【0189】
◎:膜厚のばらつきが3%未満
○:膜厚のばらつきが3%以上5%未満
△:膜厚のばらつきが5%以上10%未満(実技上問題なし)
×:膜厚のばらつきが10%以上
〈ヘイズ〉
ヘイズは、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定し、下記基準で評価した。
【0190】
○:ヘイズが1%以下
△:ヘイズが1%を超え〜3%以下
×:ヘイズが3%を超える
(近赤外透過率及び可視光透過率)
分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、300〜2000nmの領域における透過率を測定した。近赤外透過率は1200nmにおける透過率、可視光透過率は550nmにおける透過率の値を用いた。
【0191】
評価の結果を表1に示す。
【0192】
【表1】

【0193】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の近赤外反射フィルムは、近赤外反射率及び可視光透過率が高く、膜厚均一性、ヘイズに優れていることが分かる。
【0194】
実施例2
〔近赤外反射体の作製〕
実施例1で作製した近赤外反射フィルム1〜10を用いて近赤外反射体1〜10を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、試料1〜10の近赤外反射フィルムをそれぞれアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1〜10を作製した。
【0195】
〔評価〕
上記作製した近赤外反射体1〜10について、分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外反射フィルムの800〜1400nmの領域における反射率を測定し、その平均値を求め、これを近赤外反射率とした。その結果、近赤外反射体1〜10は、近赤外反射体のサイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の近赤外反射フィルムを利用することで、優れた近赤外反射性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である近赤外反射フィルムにおいて、該高屈折率層及び低屈折率層の少なくとも1層が、表面を被覆した金属酸化物粒子、及び下記一般式(I)で表される構造単位を含む水溶性ポリマーAを含有することを特徴とする近赤外反射フィルム。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−、または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子またはアルキル基を表し、Aは置換もしくは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)x−CHCHRb−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。)
【請求項2】
前記金属酸化物粒子の表面を被覆する化合物が、コラーゲンペプチドまたは低分子ゼラチンであることを特徴とする請求項1に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項3】
さらに、反応性官能基を有するポリマー、無機ポリマー、増粘多糖類及びゼラチンから選ばれる水溶性ポリマーBを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項4】
さらに、カチオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムの製造方法であって、少なくとも2つの層を同時重層塗布することを特徴とする近赤外反射フィルムの製造方法。
【請求項6】
基体の少なくとも一方の面側に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外反射フィルムまたは請求項5に記載の近赤外反射フィルムの製造方法で得られた近赤外反射フィルムを有することを特徴とする近赤外反射体。

【公開番号】特開2012−159762(P2012−159762A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20464(P2011−20464)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】