説明

近赤外線カットフィルターおよび近赤外線カットフィルターを用いた装置

【課題】視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。
【解決手段】透過率が下記(A)〜(D)を満たすことを特徴とする近赤外線カットフィルター;
(A)波長430〜580nmの範囲において、透過率の平均値が75%以上。(B)波長800〜1000nmにおいて、透過率の平均値が20%以下。(C)800nm以下の波長領域において、透過率が70%となる最も長い波長と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長との差の絶対値が75nm未満。(D)波長560〜800nmの範囲において、垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値と、垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値の差の絶対値が15nm未満。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カットフィルターに関する。詳しくは、本発明は、十分な視野角を持ち、特にCCD、CMOS等の固体撮像素子用視感度補正フィルターとして好適に用いることができる近赤外線カットフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマデイスプレイパネル(PDP)を搭載したテレビが商品化され、一般家庭にも広く普及するようになってきた。このPDPは、プラズマ放電を利用して作動するディスプレイであるが、プラズマ放電の際に近赤外線(波長:800〜1000nm)が発生することが知られている。
【0003】
一方、家庭内においては、テレビ、ステレオあるいはエアコン等の家電製品のリモコン、さらには、パーソナルコンピューターの情報のやり取りに近赤外線を利用することが多くなっており、PDPの発する近赤外線がこれら機器の誤作動の原因になる可能性が高いことが常々指摘されている。
【0004】
そこで、市販されているPDPの多くは、その前面板に、自らが発する近赤外線をカットするためのフィルター機能を備えるようになっている。
【0005】
また、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサが使用されているが、これら固体撮像素子はその受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルターを用いることが多い。
【0006】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、ガラスなど透明基材の表面に銀等の金属を蒸着して近赤外線を反射するようにしたもの、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に近赤外線吸収色素を添加したものなどが実用に供されている。
【0007】
しかしながら、ガラス基材に金属を蒸着した近赤外線カットフィルターは製造コストがかかるだけでなく、カッティング時に異物として基材のガラス片が混入してしまうという問題があった。さらに、基材として無機質材料を用いる場合は、近年の固体撮像装置の薄型化・小型化に対応していくためには限界があった。
【0008】
また、特開平6−200113号公報(特許文献1)には、基材として透明樹脂を用い、透明樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線吸収能が必ずしも十分ではない場合があった。
【0010】
また、本出願人は、特開2005−338395号公報(特許文献2)にて、ノルボルネン系樹脂製基板と近赤外線反射膜を有する近赤外線カットフィルターを提案している。
【0011】
特許文献2に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線カット能、耐吸湿性、耐衝撃性に優れるが、十分な視野角の値をとることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−200113号公報
【特許文献2】特開2005−338395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置用に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。さらに、前記近赤外線カットフィルターを具備することにより、薄型で耐衝撃性に優れた固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る近赤外線カットフィルターは、透過率が下記(A)〜(D)を満たすことを特徴とする。
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上であり、
(B)波長800〜1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下であり、
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満であり、
(D)波長560〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満である。
【0015】
本発明の近赤外線カットフィルターは、波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値が75nm未満である吸収剤を含有した透明樹脂製基板と、近赤外線反射膜とを有することが好ましい。
【0016】
本発明の近赤外線カットフィルターは、前記透明樹脂製基板が下記(E)および(F)を満たすことが好ましい。
(E)波長600〜800nmに吸収極大があり、
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値が75nm未満である。
【0017】
また、本発明の近赤外線カットフィルターは前記透明樹脂製基板が、ノルボルネン系樹脂製基板であることが好ましく、前記吸収剤が前記透明樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部含まれていることが好ましく、前記近赤外線反射膜が誘電体多層膜であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る近赤外線カットフィルターは固体撮像装置用として好適に用いることができる。
本発明に係る固体撮像装置、カメラモジュールは前記近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の波長に吸収極大を持つ吸収剤を含有した透明樹脂製基板と近赤外線反射膜とを組みわせて用いることにより、吸収(透過)波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを製造することができる。
【0020】
本発明によれば、前記近赤外線カットフィルターを具備することにより固体撮像装置、カメラモジュールを薄型化、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、従来のカメラモジュールを示すものである。図1(b)は、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'を用いた場合のカメラモジュールの一例を示すものである。
【図2】図2は、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率を測定する方法を示すものである。
【図3】図3は、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率を測定する方法を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0023】
〔近赤外線カットフィルター〕
本発明の近赤外線カットフィルターは、その透過率が、下記(A)〜(D)を満たすことを特徴とする。
【0024】
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上、好ましくは78%以上、さらに好ましくは80%以上の値をとることが望ましい。本発明では、厚さ0.1mmでの全光線透過率が高い透明樹脂および当該波長領域に吸収を持たない吸収剤を用いることで、このような波長430〜580nmにおいて、高い透過率を有する近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0025】
近赤外線カットフィルターを固体撮像装置やカメラモジュール等のレンズユニットにおける視感度補正用フィルター等に用いる場合、波長430〜580nmの透過率の平均値が上記範囲であり、一定であることが好ましい。
【0026】
透過率の平均値としては高い方が好ましい。透過率の平均値が高いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保され、上記用途に好適に用いることができる。
【0027】
一方、透過率の平均値が低いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保されず、上記用途に好適に用いることができないおそれがある。
【0028】
(B)波長800〜1000nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下の値をとることが望ましい。本発明では、透明樹脂基板上に高い近赤外線反射能を有する所定の近赤外線反射膜を有することで、このような波長800〜1000nmにおいて、十分に低い透過率を有する近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0029】
本発明の近赤外線カットフィルターは近赤外線の波長(800nm以上)を選択的に低減させるものであるため、透過率の平均値は低い方が好ましい。透過率の平均値が低いと、近赤外線カットフィルターは、近赤外線を十分にカットすることができる。
【0030】
一方、波長800〜1000nmの範囲において透過率の平均値が高いと、フィルターは、近赤外線を充分カットすることができず、該フィルターをPDPに用いた場合には、家庭内において、PDP周辺にある電子機器の誤作動を防ぐことができないおそれがある。
【0031】
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa−Xb|)が75nm未満、好ましくは72nm未満、さらに好ましくは70nm未満の値をとることが望ましい。本発明では、透明樹脂に下記の特定の吸収剤を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が上記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0032】
近赤外線カットフィルターの(Xa)と(Xb)との差の絶対値が上記範囲にあると、近赤外線の波長領域付近の波長(Xa)と(Xb)の間で透過率が急変することとなるため、近赤外線を効率よくカットすることができ、また、下記(Ya)と(Yb)の差の絶対値が小さくなり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0033】
(D)波長560〜800nm、好ましくは580〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya−Yb|)が15nm未満、好ましくは13nm未満、さらに好ましくは10nm未満の値をとることが望ましい。
本発明では、透明樹脂に下記の特定の吸収剤を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が上記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0034】
このように、波長560〜800nmの範囲において、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が上記範囲にあると、このようなフィルターをPDP等に用いた場合には、ディスプレイを斜め方向から見た場合にも、垂直方向から見た場合と同等の明るさ及び色調を示し、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0035】
一方、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が15nm以上である近赤外線カットフィルターをPDP等に用いると、ディスプレイを見る角度により明るさが著しく減じたり、色調が反転したり、特定の色が見えにくくなったりするおそれがあり、上記用途に好適に用いることができない場合がある。
【0036】
ここで、「視野角」とは、ディスプレイなどを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことである。
【0037】
本発明においては、近赤外線カットフィルターを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことをいう。
【0038】
正常に見ることができるかどうかの判断として、本発明では、波長560〜800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満となることを一つの基準とする。
【0039】
上記近赤外線カットフィルターの厚みは、該フィルターの透過率が上記(A)〜(D)を満たせば制限はないが、50〜250μm、好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは、80〜150μmであることが望ましい。
【0040】
近赤外線カットフィルターの厚みが上記範囲にあると、フィルターを、小型化、軽量化することができ、固体撮像装置等さまざまな用途に好適に用いることができる。特にカメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0041】
本発明の近赤外線カットフィルターは、波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値が75nm未満である吸収剤を含有した透明樹脂製基板と、近赤外線反射膜とを有することが好ましい。
【0042】
≪透明樹脂製基板≫
本発明に用いられる透明樹脂製基板は、透明樹脂と吸収極大が波長600〜800nmであり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値が75nm未満である少なくとも1種の吸収剤を含むことを特徴とする。
【0043】
前記透明樹脂製基板の透過率は下記(E)および(F)を満たすことが好ましい。
(E)吸収極大が波長600〜800nmの値をとることが望ましい。
基板の吸収極大波長がこのような範囲にあれば、該基板は、近赤外線を選択的に効率よくカットすることができる。
【0044】
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値(|Za−Zb|)が75nm未満、好ましくは50nm未満、さらに好ましくは30nm未満の値をとることが望ましい。
【0045】
透明樹脂製基板の吸収極大波長と(Za)と(Zb)の差の絶対値が上記範囲にあると、該基板に光を入射したときに近赤外線の波長領域付近の波長(Za)と(Zb)の間で透過率が急変することとなる。
【0046】
このような基板は、近赤外線を効率よくカットすることができ、また、このような基板を近赤外線カットフィルターに用いた場合には、そのフィルターの(Ya)と(Yb)の差の絶対値が小さくなり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0047】
また、このような基板を用いた近赤外線カットフィルターを、カメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0048】
上記透明樹脂製基板の厚みは、該基板が上記(E)および(F)を満たせば制限はないが、250〜50μm、好ましくは200〜50μm、さらに好ましくは、150〜80μmであることが望ましい。
【0049】
透明樹脂製基板の厚みが上記範囲にあると、該基板を用いた近赤外線カットフィルターを小型化、軽量化することができ、固体撮像装置等さまざまな用途に好適に用いることができる。特にカメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。
【0050】
<透明樹脂>
本発明で用いる透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度での高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、110〜380℃、好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂を用いることができる。また、透明樹脂のガラス転移温度が、120℃以上、好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である場合には、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため望ましい。
【0051】
また、厚さ0.1mmでの全光線透過率が、75〜94%であり、好ましくは78〜93%であり、更に好ましくは80〜92%である樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲であれば、透明樹脂から得られる基材フィルムが、光学フィルムとして良好な透明性を示す。
【0052】
このような透明樹脂としては例えば、ノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリサルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリパラフェニレン樹脂(PPP)、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂(PEPO)、ポリイミド樹脂(PPI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、(変性)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、有機−無機ナノハイブリッド材料をあげることができる。
上記透明樹脂のうち、透明性の高いノルボルネン系樹脂が好ましい。
【0053】
<ノルボルネン系樹脂>
本発明に用いられる透明樹脂として、特にノルボルネン系化合物を少なくとも1種含む単量体組成物を重合し、また必要に応じてさらに水素添加して得られた樹脂が好ましい。
【0054】
《単量体組成物》
前記単量体組成物に用いるノルボルネン系化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表されるノルボルネン系化合物を挙げることができる。
【0055】
【化1】

【0056】
〔式(1)中、xは、0または1〜3の整数を表し、yは、0または1を表す。
【0057】
1〜R4は、それぞれ独立に、下記(i)〜(v)より選ばれるものを表すか、(vi)、または(vii)を表す。
【0058】
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)極性基、
(iv)酸素原子、窒素原子、イオウ原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基、
(v)置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基、
(vi)R1とR2と、またはR3とR4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に、該(i)〜(v)より選ばれるものを表す、
(vii)R1とR2と、R3とR4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭素環または複素環を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に、該(i)〜(v)より選ばれるものを表す。〕
上記(ii)ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0059】
上記(iii)極性基としては、例えば、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜10のアルコキシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;アミノ基;アシル基;スルホ基;カルボキシル基などが挙げられる。
【0060】
上記酸素原子、窒素原子、イオウ原子またはケイ素原子を含む連結基としては、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホニル基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)およびシロキサン結合(−OSi(R)−)(式中、Rはメチル、エチル等のアルキル基))等が挙げられ、これらを複数含む連結基であってもよい。これらの中でも赤外線反射膜層との接着性や密着性に優れるといった点、および吸収剤の分散性、あるいは溶解性の点でカルボニルオキシ基(*−COO−)、およびシロキサン結合(−OSi(R)−)が好ましい。但し*が式(1)の環に結合するものとする。
【0061】
上記炭化水素基としては、炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。これらの基の中でも、メチル基、エチル基が耐熱安定性の点で好ましい。
【0062】
また、R1およびR2、またはR3およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1またはR2と、R3またはR4とで互いに結合して単環構造または多環構造を形成してもよい。
【0063】
xは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。yは0または正の整数を示し、好ましくは0〜3の整数を示す。また、より好ましくはx+yが0〜4の整数、特に好ましくはx+yが0〜2の整数である。最も好ましくはx=0、y=1である。x=0、y=1である環状オレフィン化合物を用いると、ガラス転移温度が高く、かつ機械的強度にも優れた重合体が得られるため好ましい。
【0064】
一般式(1)で表されるノルボルネン系単量体の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が例示できるが、これらの例示に限定されるものではない。
・ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)
・5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−トリエトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
・トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン
・8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
なお、これらノルボルネン系化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明で用いるノルボルネン系化合物の種類および量は、得られる樹脂に求められる特性により適宜選択される。
【0066】
これらのうち、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という。)を有する化合物を用いると、吸収剤の分散性に優れ、また、他素材との接着性や密着性に優れるなどの利点がある。特に、前記式(1)中、R1およびR3が水素原子、または炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくは水素原子、またはメチル基であり、R2またはR4のいずれか一つが極性構造を有する基であって他が水素原子または炭素数1〜3炭化水素基である化合物は、樹脂の吸水(湿)性が低く好ましい。さらに、極性構造を有する基が下記一般式(2)で表わされる基であるノルボルネン系化合物は、得られる樹脂の耐熱性と吸水(湿)性とのバランスがとりやすく、好ましく用いることができる。
【0067】
−(CH2zCOOR …(2)
(式(2)中、Rは置換又は非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基を表し、zは0または1〜10の整数を表す。)
前記一般式(2)において、zの値が小さいものほど得られる水素添加物のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れるので、zが0または1〜3の整数であることが好ましく、更に、zが0である単量体はその合成が容易である点で好ましい。また、前記一般式(2)におけるRは、炭素数が多いほど得られる重合体の水素添加物の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、耐熱性を保持する観点からは炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、特に炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。
【0068】
なお、前記一般式(1)において、前記一般式(2)で表される基が結合した炭素原子に炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合していると、耐熱性と吸水(湿)性のバランスの点で好ましい。さらに、前記一般式(1)において、xが0でありyが0または1である化合物は、反応性が高く、高収率で重合体が得られること、また、耐熱性が高い重合体水素添加物が得られこと、さらに工業的に入手しやすいことから好適に用いられる。
【0069】
本発明に用いるノルボルネン系樹脂を得るにあたっては、本発明の効果を損なわない範囲で前記ノルボルネン系化合物と共重合可能な単量体を単量体組成物に含ませて重合することができる。
【0070】
これら共重合可能な単量体として、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの環状オレフィンや1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエンなどの非共役環状ポリエンを挙げることができる。
【0071】
これらの共重合性単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0072】
《重合方法》
前記ノルボルネン系化合物を含む単量体組成物の重合方法については、単量体組成物の重合が可能である限り特に制限されるものではないが、例えば、開環重合、もしくは付加重合によって重合することができる。
【0073】
《水素添加反応》
前記開環重合反応により得られる重合体は、その分子中にオレフィン性不飽和結合を有している。また、前記付加重合反応においても、重合体がその分子中にオレフィン性不飽和結合を有する場合がある。このように、重合体分子中にオレフィン性不飽和結合が存在すると、係るオレフィン性不飽和結合が経時着色やゲル化等劣化の原因となる場合があるので、このオレフィン性不飽和結合を飽和結合に変換する水素添加反応を行うことが好ましい。
【0074】
水素添加反応は、通常の方法、すなわちオレフィン性不飽和結合を有する重合体の溶液に公知の水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行うことができる。
【0075】
水素添加重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定した値が通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、成形体として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができるため好ましい。
【0076】
<ポリイミド樹脂>
本発明に用いることができる透明樹脂として、ポリイミド樹脂を挙げることができる。本発明で用いることができるポリイミド樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子であれば良く、たとえば特開2008−163107にあげられている方法で合成することができる。
【0077】
本発明に用いることができる透明樹脂の市販品としては、以下の市販品を挙げることができる。ノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂の市販品としては、たとえば、JSR株式会社製アートン、日本ゼオン株式会社製ゼオノア、三井化学株式会社製APEL、ポリプラスチックス株式会社製TOPASなどを挙げることができる。さらに、ポリエーテルサルホン樹脂の市販品として、住友化学株式会社製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド樹脂の市販品として三菱ガス化学株式会社製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート樹脂の市販品として帝人株式会社製ピュアエースなどを挙げることができる。有機−無機ナノハイブリッド材料の市販品として新日鐵化学株式会社製シルプラスなどを挙げることができる。
【0078】
<吸収剤>
本発明に用いられる透明樹脂には、波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値(|Aa−Ab|)が75nm未満、好ましくは65nm未満である吸収剤を少なくとも1種含有させて使用する。この吸収剤としては、例えば、近赤外線を吸収する染料や顔料、金属錯体系化合物を用いることができる。
【0079】
このような吸収剤は、吸収剤を含有する基板を製造する際に、基板として、透明樹脂、特にノルボルネン系樹脂を用いることが好ましい。これは、該吸収剤のノルボルネン系樹脂への分散性が良好であること、吸収剤を含有する基板の成形加工性に優れること等の理由からである。
【0080】
なお、従来の近赤外線カットフィルターでは、上記のような吸収剤は、その透過率曲線が急峻な傾きを有するため、近赤外線領域の吸収領域が狭いことや、ガラス等の基板に混ぜて近赤外線カットフィルターを製造する際に、該吸収剤がガラスの成形温度に耐えることができないなどの理由から用いられてこなかった。そのため、本発明のように可視光領域(430〜580nm)での高い透過率と、入射角依存性の小さいこと等を両立した近赤外線カットフィルターは得られなかった。
【0081】
本発明において用いられる吸収剤とは、600〜800nmに吸収極大を持つ吸収剤を良溶媒に溶解したとき、係る溶液の光路長1cmで測定された吸収極大の分光透過率が30%以下となる濃度範囲を有する化合物が望ましい。
【0082】
また、PDP用前面板など用途によっては、波長400〜700nmのいわゆる可視光領域において、前記条件で測定された全光線透過率が50%以上、好ましくは65%以上であることが必要な場合もある。
【0083】
このような吸収剤を含有してなる透明樹脂基板は上記(F)の特徴を有するため、本発明の近赤外線カットフィルターは、特に上記(A)、(C)および(D)の特徴を有することになる。そのため、入射角依存性の小さい、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0084】
また、後述する近赤外線反射膜を、蒸着などにより透明樹脂基板に設ける場合、近赤外線カットフィルターの視野角が狭くなる等の性能が劣化する場合があったが、本発明では、上記吸収剤を用いているため、近赤外線反射膜を設けることで生じる近赤外線カットフィルターの性能の劣化を防ぐことができる。このような吸収剤を用いことで、近赤外線反射膜に寄らず入射光の入射角に依存することなく安定した吸収波長領域を有する近赤外線カットフィルターが得られる。
【0085】
このような吸収剤としては、近赤外線を吸収する色素として作用する金属錯体系化合物や染料、顔料を用いることができ、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物などを挙げることができる。具体的には、たとえば、Lumogen IR765、Lumogen IR788(BASF製)、ABS643、ABS654、ABS667、ABS670T、IRA693N、IRA735(Exciton製)、SDA3598、SDA6075、SDA8030、SDA8303、SDA8470、SDA3039、SDA3040、SDA3922、SDA7257(H.W.SANDS製)、TAP−15、IR−706(山田化学工業製)などの市販品を用いることもできる。
また、本願の吸収剤としては金属を含有せずC,H,O,Nのみからなるシアニン系色素を用いると|Aa−Ab|が特に小さくなるため好ましい。この様な吸収剤としては、ABS643、ABS654、ABS667、ABS670Tなどを挙げることができる。これらの吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
本発明において、前記吸収剤は所望の特性に応じて適宜選択されるが、本発明に用いる透明樹脂100重量部に対して、通常0.01〜10.0重量部、好ましくは0.01〜8.0重量部、さらに好ましくは0.01〜5.0重量部含有されていることが好ましい。
【0087】
吸収剤の使用量が上記範囲内にあると、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角が広く、近赤外線カット能、430〜580nmの範囲における透過率および強度に優れた近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0088】
吸収剤の使用量が上記範囲より多いと、吸収剤の特性がより強く表れる近赤外線カットフィルターを得ることができる場合もあるが、430〜580nmの範囲における透過率が所望の値より低下する恐れや、透明樹脂製基板や近赤外線カットフィルターの強度が低下する恐れがあり、吸収剤の使用量が上記範囲より少ないと、430〜580nmの範囲における透過率が高い近赤外線カットフィルターを得ることができる場合もあるが、吸収剤の特性(性質)が表れにくく、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角が広い透明樹脂製基板や近赤外線カットフィルターを得ることが困難になる場合がある。
【0089】
<その他成分>
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、透明樹脂にさらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0090】
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0091】
紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。また、後述する溶液キャスティング法により透明樹脂製基板を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂基板の製造を容易にすることができる。
【0092】
なお、これら添加剤は、本発明に用いる透明樹脂製基板を製造する際に、透明樹脂などとともに混合してもよいし、透明樹脂を製造する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、透明樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であることが望ましい。
【0093】
<吸収剤を含有した透明樹脂製基板の製造方法>
本発明に用いる吸収剤を含有した透明樹脂製基板は、例えば、透明樹脂と吸収剤とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法、透明樹脂、吸収剤、および溶媒を含む液状樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法、または、上述の液状樹脂組成物をキャスティング(キャスト成形)する方法により製造することができる。
【0094】
(A)溶融成形
本発明に用いる透明樹脂製基板は、透明樹脂と吸収剤とを含有する樹脂組成物を溶融成形することにより製造することができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形あるいはブロー成形などを挙げることができる。
【0095】
(B)キャスティング
本発明に用いる透明樹脂製基板は、透明樹脂、吸収剤、および溶媒を含む液状樹脂組成物を適切な基材の上にキャスティングして溶剤を除去することにより製造することもできる。例えば、スチールベルト、スチールドラムあるいはポリエステルフィルム等の基材の上に、上述の液状樹脂組成物を塗布して溶剤を乾燥させ、その後基材から塗膜を剥離することにより、透明樹脂製基板を得ることができる。また、ガラス、石英あるいは透明プラスチック製の光学部品に上述の液状組成物をコーティングして溶剤を乾燥させることにより、元の光学部品上に透明樹脂製基板を形成することができる。
【0096】
前記方法で得られた透明樹脂製基板中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよく、通常3重量%以下、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶剤量が3重量%を超える場合、経時的に樹脂基板が変形したり特性が変化したりして所望の機能が発揮できなくなることがある。
【0097】
≪近赤外線反射膜≫
本発明に用いられる近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。このような近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜などを用いることができる。
【0098】
本発明の近赤外線カットフィルターは、このような近赤外線反射膜を有しているため、特に上記(B)の特徴を有することになる。そのため、近赤外線を十分にカットすることのできるフィルターを得ることができる。
【0099】
本発明において、近赤外線反射膜は透明樹脂製基板の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0100】
これら近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を好適に用いることができる。
【0101】
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。
【0102】
これら材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウムなどを少量含有させたものなどが挙げられる。
【0103】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。
【0104】
これら材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
【0105】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成し、これを透明樹脂製基板に接着剤で張り合わせたり、前記透明樹脂製基板上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することにより得ることができる。
【0106】
これら高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、通常、遮断しようとする赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなってしまう傾向になる。
【0107】
また、誘電体多層膜における積層数は、5〜50層、好ましくは10〜40層であることが望ましい。
【0108】
さらに、誘電体多層膜を蒸着した際に基板にソリが生じてしまう場合には、これを解消するために、基板両面へ誘電体多層膜を蒸着し、基板の誘電体多層膜を蒸着した面に紫外線等の放射線を照射する等の方法をとる事ができる。なお、放射線を照射する場合、誘電体多層膜の蒸着を行いながら照射してもよいし、蒸着後別途照射してもよい。
【0109】
<近赤外線カットフィルターの用途>
これら本発明で得られる近赤外線カットフィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能をする。したがってカメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子用視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボット、おもちゃ等に有用である。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0110】
ここで、本発明で得られる近赤外線カットフィルターをカメラモジュールに用いる場合について具体的に説明する。
【0111】
図1に、カメラモジュールの略図を示す。
【0112】
図1(a)は、従来のカメラモジュールの構造の略図であり、図1(b)は、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'を用いた場合の、とり得ることができるカメラモジュールの構造の一つを表す略図である。
【0113】
図1(b)では、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'をレンズ5の上部に用いているが、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'は、図1(a)に示すようにレンズ5とセンサー7の間に用いることもできる。
【0114】
従来のカメラモジュールでは、近赤外線カットフィルター6に対してほぼ垂直に光が入射する必要があった。そのため、フィルター6は、レンズ5とセンサー7の間に配置する必要があった。
【0115】
ここで、センサー7は、高感度であり、5μ程度のちりやほこりが触れるだけで正確に作動しなくなるおそれがあるため、センサー7の上部に用いるフィルター6は、ちりやほこりの出ないものであり、異物を含まないものである必要があった。また、上記センサー7の特性から、フィルター6とセンサー7の間には、所定の間隔を設ける必要があり、このことがカメラモジュールの低背化を妨げる一因となっていた。
【0116】
これに対し、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'では、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が15nm以下である。つまり、フィルター6'の垂直方向から入射する光と、フィルター6'の垂直方向に対して30°から入射する光の透過波長に大きな差はないため(吸収(透過)波長の入射角依存性が小さい)、フィルター6'は、レンズ5とセンサー7の間に配置する必要がなく、レンズの上部に配置することもできる。
【0117】
このため、本発明で得られる近赤外線カットフィルター6'をカメラモジュールに用いる場合には、該カメラモジュールの取り扱い性が容易になり、また、フィルター6'とセンサー7の間に所定の間隔を設ける必要がないため、カメラモジュールの低背化が可能となる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味する。
【0119】
まず、各物性値の測定方法および物性の評価方法について説明する。
【0120】
(1)分子量:
東ソ−製のHタイプカラムが装着された、ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型)を用い、o−ジクロロベンゼン溶媒、120℃の条件で、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0121】
(2)ガラス転移温度(Tg):
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。
【0122】
(3)飽和吸水率:
ASTM D570に準拠し、試験片を23℃の水中に1週間浸漬させた後、試験片の重量変化より吸水率を測定した。
【0123】
(4)分光透過率:
日立製作所社製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。
【0124】
ここで、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率は、図2のようにフィルターに対し垂直に透過した光を測定した。
【0125】
また、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率は、図3のようにフィルターの垂直方向に対して30°の角度で透過した光を測定した。
【0126】
尚、この透過率は、(Yb)を測定する場合を除き、光が基板、フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。(Yb)を測定する場合には、光がフィルターの垂直方向に対して30°の角度で入射する条件で該分光光度計を使用して測定したものである。
【0127】
[合成例1]
下記式(2)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)300部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0128】
【化2】

【0129】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
【0130】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。樹脂Aの分子量は数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)は165℃であった。
【0131】
[合成例2]
十分に乾燥し、窒素置換した1リットルのステンレス製オートクレーブに水分6ppmの脱水されたシクロヘキサン;420.4g、p−キシレン;180.2g、5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;48.75ミリモル(10.43g)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;1,425ミリモル(134.1g)を仕込み、ガス状のエチレンをオートクレーブ内圧が0.1MPaになるように仕込んだ。
【0132】
オートクレーブを75℃に加温して、触媒成分である2−エチルヘキサン酸パラジウム(Pd原子として);0.003ミリグラム原子とトリシクロヘキシルホスフィン;0.0015ミリモルとをトルエン;10ml中25℃で1時間反応させた溶液全量、トリフェニルカルベニウムペンタフルオロフェニルボレート;0.00315ミリモル、の順に添加して重合を開始した。
【0133】
重合開始90分後に5−トリメトキシトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン;11.25ミリモル(2.41g)、その後30分毎に7.5ミリモル(1.61g)、3.75ミリモル(0.80g)、3.75ミリモルと計4回添加した。
【0134】
重合反応を75℃で4時間行った後、トリブチルアミン;1mlを添加して重合を停止し、固形分19.9重量%の付加重合体Bの溶液を得た。付加重合体Bの溶液の一部をイソプロパノールに入れ、凝固し、さらに乾燥することにより、付加重合体B(以下「樹脂B」ともいう。)を得た。
【0135】
この重合体Bの270MHz−核磁気共鳴分析(1H−NMR分析)の結果、重合体B中の5−トリメトキシシリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン由来の構造単位の割合は4.8モル%で、分子量は数平均分子量(Mn)が74,000、重量平均分子量(Mw)が185,000であり、ガラス転移温度(Tg)は360℃、飽和吸水率は0.35%であった。
【0136】
[合成例3]
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル 10.0重量部(0.05モル)と、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 85重量部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物 11.2重量部(0.05モル)を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。
【0137】
次に、共沸脱水溶剤としてキシレン 30.0重量部を添加して180℃に昇温して3時間反応を行い、ディーンスタークでキシレンを還流させて、共沸してくる生成水を分離した。3時間後、水の留出が終わったことを確認し、1時間かけて190℃に昇温しながらキシレンを留去し29.0重量部を回収した後、内温が60℃になるまで空冷してポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(以下、ポリイミド溶液Cという)105.4重量部を得た。
【0138】
[実施例1]
合成例1で得た樹脂A100重量部に、BASF社製の吸収剤「Lumogen IR765、(吸収極大;765nm、|Aa−Ab|=62nm)」を0.12重量部加え、さらにトルエンを加えて溶解し、固形分が30%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間、100℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0139】
この基板の分光透過率曲線を測定し、吸収極大波長と、(Za)、(Zb)を求めた。
この結果を表1に示す。
【0140】
この基板の吸収極大波長は759nmであった。また、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値(|Za−Zb|)は65nmであった。
【0141】
続いて、係る基板の一面に、蒸着温度150℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70〜120nm )層とが交互に積層されてなるもの,積層数40〕を形成し厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。この近赤外線カットフィルターの分光透過率曲線を測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。この結果を表1に示す。
【0142】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は86%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0143】
波長800nm以下の波長領域において、透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa−Xb|)は60nmであった。
【0144】
また、波長560〜800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して 30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya−Yb|)は5nmであった。
【0145】
[実施例2]
吸収剤をABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)0.04重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0146】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は668nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は38nmであった。この結果を表1に示す。
【0147】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定した。
【0148】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は90%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0149】
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は31nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は3nmであった。この結果を表1に示す。
【0150】
[実施例3]
樹脂Aの代わりに合成例2で得た樹脂Bを用い、トルエンの代わりにシクロヘキサンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
この基板の分光透過率曲線を測定した。
【0151】
この基板の吸収極大波長は759nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は65nmであった。この結果を表1に示す。
【0152】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0153】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は86%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は60nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は5nmであった。この結果を表1に示す。
【0154】
[実施例4]
JSR株式会社製のノルボルネン系樹脂「アートン G」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.04重量部加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0155】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は668nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は38nmであった。この結果を表1に示す。
【0156】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0157】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は90%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は31nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は4nmであった。この結果を表1に示す。
【0158】
[実施例5]
日本ゼオン株式会社製のノルボルネン系樹脂「ゼオノア 1400R」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.20重量部加え、さらにシクロヘキサンとキシレンの7:3混合溶液を加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間、80℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で24時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0159】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は664nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は31nmであった。この結果を表1に示す。
【0160】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0161】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は90%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は25nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は4nmであった。この結果を表1に示す。
【0162】
[実施例6]
三井化学株式会社製のノルボルネン系樹脂「APEL #6015」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.12重量部加え、さらにシクロヘキサンと塩化メチレンの99:1混合溶液を加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、40℃で4時間、60℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0163】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は666nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は32nmであった。この結果を表1に示す。
【0164】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0165】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は89%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は24nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は4nmであった。この結果を表1に示す。
【0166】
[実施例7]
帝人株式会社製のポリカーボネート樹脂「ピュアエース」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.04重量部加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0167】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は680nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は46nmであった。この結果を表1に示す。
【0168】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0169】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は85%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は42nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は4nmであった。この結果を表1に示す。
【0170】
[実施例8]
住友ベークライト株式会社製のポリエーテルサルホン「FS−1300」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.02重量部加え、さらにN-メチル−2−ピロリドンを加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で4時間、80℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0171】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は684nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は47nmであった。この結果を表1に示す。
【0172】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0173】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は85%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は41nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は5nmであった。この結果を表1に示す。
【0174】
[実施例9]
合成例3で得たポリイミド溶液C100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.2重量部加え、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で4時間、80℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0175】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は683nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は48nmであった。この結果を表1に示す。
【0176】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0177】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は85%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は42nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は5nmであった。この結果を表1に示す。
【0178】
[実施例10]
JSR株式会社製のノルボルネン系樹脂「アートン G」100重量部に、ABS670T(Exciton社製、吸収極大;670nm、|Aa−Ab|=34nm)を0.02重量部加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形分が20%の溶液を得た。次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した樹脂をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0179】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は668nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は31nmであった。この結果を表1に示す。
【0180】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。
【0181】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は90%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は23nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は4nmであった。この結果を表1に示す。
【0182】
[比較例1]
樹脂Aをトルエンに溶解して得た固形分30%の樹脂溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0183】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板は吸収剤を含有しないため吸収極大波長は観測されなかった。この結果を表1に示す。
【0184】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0185】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は91%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0186】
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は10nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は25nmであった。この結果を表1に示す。
【0187】
[比較例2]
吸収剤をSIR159(三井化学株式会社製、吸収極大828nm、|Aa−Ab|=60nm)に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0188】
この基板の分光透過率曲線を測定した。
この基板の吸収極大波長は828nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は60nmであった。この結果を表1に示す。
【0189】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0190】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は85%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0191】
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は10nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は25nmであった。この結果を表1に示す。
【0192】
[比較例3]
吸収剤をSDB3535(H.W.SANDS社製、吸収極大1048nm、|Aa−Ab|=80nm)に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.1mm、一辺が60mmの基板を得た。
【0193】
この基板の吸収極大波長は1030nmであった。また、(Za)と(Zb)との差の絶対値は86nmであった。この結果を表1に示す。
【0194】
さらに、実施例1と同様にして厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを製造した。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を実施例1と同様に測定した。
【0195】
波長430〜580nmにおける透過率の平均値は85%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。
【0196】
(Xa)と(Xb)との差の絶対値は10nmであった。
また、(Ya)と(Yb)の差の絶対値は25nmであった。この結果を表1に示す。
【0197】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の近赤外線カットフィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボット、おもちゃ等に好適に用いることができる。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0199】
1:カメラモジュール
2:レンズ鏡筒
3:フレキシブル基板
4:中空パッケージ
5:レンズ
6:近赤外線カットフィルター
6':本発明で得られる近赤外線カットフィルター
7:CCDまたはCMOSイメージセンサー
8:近赤外線カットフィルター
9:分光光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過率が下記(A)〜(D)を満たすことを特徴とする近赤外線カットフィルター;
(A)波長430〜580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上。
(B)波長800〜1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下。
(C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満。
(D)波長560〜800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満。
【請求項2】
波長600〜800nmに吸収極大があり、かつ、波長430〜800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値が75nm未満である吸収剤を含有した透明樹脂製基板と、近赤外線反射膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項3】
前記透明樹脂製基板が下記(E)および(F)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の近赤外線カットフィルター;
(E)波長600〜800nmに吸収極大がある。
(F)波長430〜800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値が75nm未満。
【請求項4】
前記透明樹脂製基板が、ノルボルネン系樹脂製基板であることを特徴とする請求項2または3に記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項5】
前記吸収剤が前記透明樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部含有されてなる請求項2〜4のいずれかに記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項6】
前記近赤外線反射膜が誘電体多層膜であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項7】
前記近赤外線カットフィルターが固体撮像装置用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の近赤外線カットフィルター。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−100084(P2011−100084A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266077(P2009−266077)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】