説明

追尾処理装置

【課題】追尾処理装置において、予測経路上の等高線本数に基づく簡便な方法で予測位置への移動可否を判定する。
【解決手段】開示される追尾処理装置は、観測員用端末装置等1から提供される目標の種類と位置情報をもとに、目標の位置情報と航跡の予測位置とを位置相関する相関処理部2と、現在の平滑化位置・平滑化速度を算出する平滑化処理部4と、次の目標の位置情報入力時に得られる位置を予測する予測処理部5と、監視区域の地勢情報を提供する地勢情報発生部6と、目標が予測された位置へ到達可能か否かを目標の種類ごとに判定する予測判定部8と、判定結果が到達不可能の場合に予測の変更を行う予測変更部9とを有する追尾処理装置において、地勢情報発生部から提供される監視対象領域の等高線情報に基づいて、目標の現在位置と予測位置との間の等高線密度により傾斜の度合いを算定し、算定結果に基づいて、目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は追尾処理装置に関し、特に観測員等から手動入力される目標の種類の情報と地勢情報発生部から提供される等高線情報等の地勢情報を用いて、目標の種類に応じて目標の予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な領域の範囲内であるか否かによって、目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定し、予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な位置の場合のみ予測位置の更新を行わずに相関ゲートを拡大して、地勢に対応した目標の進路変更に追随する追尾処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、監視覆域の地勢情報を提供する地勢情報発生部から提供される地勢情報に基づいて、目標が予測位置に到達可能か否かの判定を予測判定部で行い、予測判定結果、目標が予測位置に到達不可能の場合に、予測位置および平滑化速度の変更を行う予測変更部で、予測位置の更新は行わずに、代わりに相関ゲートを拡大することによって、追尾継続を可能にするものが知られている。
【0003】
しかしながら、この従来の技術では、標高情報の差分に基づいて傾斜の度合いによる目標移動の制約を考慮しているが、本発明のように予測経路上の等高線本数に基づいた簡便な方法での算定は行っていない。
【0004】
これに対して特許文献1においては、走行路検出装置は車両位置を検出し、地図データから車両周辺の走行路情報を検出し、予定される走行経路の標高を地形図の等高線データから標高推定値を検出する。道路環境判定部は走行路情報を入力し交差点位置から自車近傍一定範囲内の交差点間の距離平均値を演算する。周波数決定部は距離平均値に対応し、ローパスフィルタのカットオフ周波数を反比例に設定する。道路情報抽出部は標高推定値をローパスフィルタに通して、標高情報を抽出する。これによって市街地ではカットオフ周波数が高く、峠道では、カットオフ周波数が低く設定され、切り通しなどによる標高推定値と実際の標高とのずれを効果的に取り除いた標高データが得られるので、等高線データから精度よく走行路の標高情報を抽出する、車両用情報抽出装置が開示されている。
【0005】
しかしなから特許文献1記載の技術では、観測員等から手動入力される目標の種類の情報と地勢情報発生部から提供される等高線情報等の地勢情報を用いて、目標の種類に応じて目標の予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な領域の範囲内であるか否かによって目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定し、予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な位置の場合のみ予測位置の更新は行わずに、相関ゲートを拡大して地勢に対応した目標の進路変更に追随することはできない。
【0006】
また、特許文献2においては、予測判定部は、地形標高情報発生部から読み込まれる地形標高情報に基づいて、目標の今回平滑化位置から次回予測位置までの間の勾配を求め、この勾配を当該目標が登坂又は降坂可能か否かを判定する。この判定の結果が登坂又は降坂不可能のときは、予測変更部は、目標の次回予測位置及び今回平滑化速度の更新を行わず、相関処理部は、次回の追尾処理時に、相関ゲートを拡大して、目標の今回実位置と、今回予測位置との差が、所定値以内であるか否かの相関判定を行うことによって、地形上の事情から、目標が、急に進路変更する場合にも追従できるようにする、追尾処理装置及び追尾処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が開示されている。
【0007】
しかしなから特許文献2記載の技術では、観測員等から手動入力される目標の種類の情報と地勢情報発生部から提供される等高線情報等の地勢情報を用いて、目標の種類に応じて目標の予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な領域の範囲内であるか否かによって目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定し、予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な位置の場合のみ予測位置の更新を行わずに、相関ゲートを拡大して地勢に対応した目標の進路変更に追随することはできない。
【0008】
また、特許文献3においては、GPS信号を受信し、当該受信位置の位置情報を受信時刻を付加して算出する位置情報解析部、地図の地名と地理的な位置情報と等高線データと付随情報を格納する地形情報格納部、入力された登山予定ルートを格納する経路情報格納部、入力された登山予定ルートを格納する経路情報格納部、タイマ,位置情報解析部からの位置情報を受け、地形情報格納部から供給される当該位置に基づく地形の斜度と、当該斜度位置の通過所要時間をタイマで計測した通過速度との相関を算出し、未経過な斜度の通過時間を付随情報に基づいて予測する斜度と速度の相関作成部、相関作成部による斜度速度の相関を用い予定経路の通過所要時間を予測する所要時間計算部とから構成された、登山の目的地までの所要時間を予測し、表示する登山用ナビゲーション装置に関し、登山路における所要時間を経過してきた現在地までの実績値を利用し、到達目標点までの残りの所要予定時間を予測できる手段を提供することを課題とする、登山用ナビゲーション装置が開示されている。
【0009】
しかしなから特許文献3記載の技術では、観測員等から手動入力される目標の種類の情報と地勢情報発生部から提供される等高線情報等の地勢情報を用いて、目標の種類に応じて目標の予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な領域の範囲内であるか否かによって目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定し、予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な位置の場合のみ予測位置の更新を行わずに、相関ゲートを拡大して地勢に対応した目標の進路変更に追随することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−123292号公報
【特許文献2】特開平11−014740号公報
【特許文献3】特開平11−271086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術では、地上を監視する観測員等からの情報に基づく追尾処理において、目標の予測進路が急勾配である場合に、現在位置と予測位置の標高情報に基づいて当該目標の当該予測位置への移動可否を判定しており、簡便な方法で移動可否の判定を行っていないため、処理負荷が増大するという問題があった。
その理由は、従来の追尾処理装置では、目標の地勢情報から標高情報に基づいた計算を行っており、三角関数等を用いた複雑な計算を必要とするためである。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、目標の種類と地勢情報を参照して、追尾処理により算出された目標の予測位置が、当該種類の目標が到達可能な位置であるか否かを判定して相関ゲートを拡大するか否かを決定することによって、目標の種類に応じた迂回行動を予測し、目標が傾斜を移動する場合と迂回する場合のいずれの場合にも、簡便な方法で目標の進路変更に追随する追尾処理を可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明は追尾処理装置に係り、地上を監視する観測員等から提供される目標の種類及び位置情報をもとに、目標の位置情報と追尾している航跡の予測位置とを位置相関する相関処理部と、相関した位置情報と航跡の予測位置・平滑化速度から現在の平滑化位置・平滑化速度を算出する平滑化処理部と、現在の平滑化位置・平滑化速度から次の目標の位置情報入力時に得られる位置を予測する予測処理部と、監視区域の地勢情報を提供する地勢情報発生部と、地勢情報発生部からの地勢情報と観測員等からの目標の種類の情報を用いて目標が予測処理部で予測された位置へ到達可能か否かを目標の種類ごとに判定する予測判定部と、予測判定部での判定結果が到達不可能の場合に予測の変更を行う予測変更部を有する追尾処理装置において、地勢情報発生部から提供される監視対象領域の等高線情報に基づいて、目標の現在位置と予測位置との間の等高線密度により傾斜の度合いを算定し、該算定結果に基づいて、目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の追尾処理装置によれば、目標の予測進路上の等高線間隔が密になっている場合に、目標の種類に応じた迂回行動を予測し、目標が急な傾斜を移動する場合と迂回する場合とのいずれの場合にも、目標の進路変更に追随する追尾処理が可能になる。これによって追尾処理の継続性を確保し、目標の正確な位置情報を提供できるようになる。
【0015】
その理由は、監視区域の地勢情報を検索して算出された予測位置が急な傾斜等のような目標が到達不可能な座標であるか否かを判定し、不可能な場合には予測位置の更新を行わずに次回相関処理時の相関ゲートを拡大することによって、目標が到達し得ない位置に予測位置を設定することを防止できるからである。
特に、予測位置に目標が到達可能か否かを判定する際に、目標の種類に応じて、急な傾斜を移動可能な目標については、予測進路上の等高線密度が密になっている場合でも、目標は予測位置に到達可能と判定して、不必要に相関ゲートを拡大することを防止できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示ものであって、観測員用端末装置等1と、相関処理部2と、トラックファイル3と、平滑化処理部4と、予測処理部5と、地勢情報発生部6と、目標移動能力登録部7と、予測判定部8と、予測変更部9とからなる構成が示されている。これらのうち、二重線で囲んで示す部分は、本発明の特徴的な構成要素を示すものである。
以下、図1を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
観測員用端末装置等1は、目標の位置情報(Xi,Yi)を入力する。観測員用端末装置等1から入力された目標の位置情報は、時刻ti,目標の速度(X’i,Y’i)とともに、相関処理部2へ入力され、トラックファイル3から入力された、前回の追尾処理で算出された予測位置(Xpi,Ypi)との間の距離が、一定値以内であるか否の相関判定が行われる。
【0019】
相関処理部2で相関ありと判定された目標の位置情報(Xi,Yi)は、平滑化処理部4へ入力され、トラックファイル3から入力される、前回算出した今回の目標の予測位置(Xpi,Ypi)および平滑化速度(X’si-1,Y’si-1)を使用して、追尾平滑化処理が行われる。
ここで、追尾平滑化処理は、前回予測した目標の予測位置および速度と、今回、観測員用端末装置等1から入力された目標の位置および速度との分散を抑圧するために行われる処理を指すものであって、この処理によって算出された位置および速度を、平滑化位置および平滑化速度という。
【0020】
平滑化処理部4から出力された、今回算出した平滑化位置(Xsi,Ysi)および平滑化速度(X’si,Y’si)は、予測処理部5へ入力されて、次回の予測処理が行われる。
【0021】
地勢情報発生部6は、監視区域の等高線情報を記録したレイヤーを含む地勢情報を有し、等高線情報を線分の集合として、予測判定部8に提供する。
【0022】
目標移動能力登録部7は、目標の登坂/降坂能力を目標の種類ごとに予め登録していて、予測判定部8に対して追尾対象の目標が急な傾斜を移動可能か否かの情報を提供する。
隣り合う等高線の標高差は一定であるため、単位距離あたりの等高線本数によって目標の登坂/降坂能力を表現することが可能であり、登坂/降坂能力を単位距離あたりに通過可能な等高線本数として提供する。
【0023】
予測判定部8は、予測処理部5から入力された、今回算出した次回の目標の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)、および地勢情報発生部6から入力された等高線情報から、予測位置までの傾斜が当該目標の登坂/降坂能力の範囲内であるか否かを判定する。
当該目標の登坂/降坂能力の範囲内であれば、目標移動能力登録部7の情報をもとに、当該目標が当該傾斜を移動可能であると判定し、当該目標の登坂/降坂能力の範囲外であれば、目標は当該予測位置に到達不可能であると判定する。
【0024】
予測変更部9は、予測判定部8から入力された判定結果により、到達可能な場合は特に処理は行わずに、今回算出した次回の目標の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)と、平滑化速度(X’si,Y’si)をトラックファイル3に出力する。
到達不可能な場合は、今回算出した予測位置(Xpi+1,Ypi+1)および平滑化速度(X’si,Y’si)の変更を行う。
【0025】
トラックファイル3は、予測変更部9から出力された、今回算出した次回の目標の予測位置(Xpi+1,Ypi+1),平滑化速度(X’si,Y’si)、および予測判定部8から出力された予測判定結果が入力される。
【0026】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態の動作について詳細に説明する。
図1に示された観測員用端末装置等から入力された目標の位置情報(Xi,Yi),速度(X’i,Y’i),観測時刻tiおよび目標の種類は、相関処理部に入力される。
相関処理部には図1に示されたトラックファイルから、前回算出した、今回の目標の予測位置(Xpi,Ypi),平滑化速度(X’si-1,Y’si-1),当該目標の前回観測時刻(ti-1)および当該目標の前回の予測判定結果が入力される。
相関処理部においては、まず前回の予測判定結果により処理が分岐し(ステップS1)、それぞれの場合に応じた相関処理が行われて、今回入力された目標が追尾の対象としている目標と同一目標か否かの判定が行われる(ステップS2,ステップS3)。
【0027】
具体的には、前回の予測位置(Xpi,Ypi)と、今回入力された目標の位置座標(Xi,Yi)との位置差分が、追尾処理装置の特性を考慮して設定される相関ゲートの範囲内か否かによって判定を行う。
ここで、相関ゲートとは、相関評価尺度としての、目標の予測存在領域を示すものとする。また、同一目標と判定された場合を相関ありとし、同一目標ではないと判定された場合を相関なしとする。
【0028】
ステップS2:前回の予測判定結果が到達可能の場合
相関ありの条件:((Xi−Xpi)+(Yi−Ypi))1/2≦G
相関なしの条件:上記以外
ここで、Gは追尾処理装置の特性を考慮して設定される相関ゲートの大きさである。
【0029】
ステップS3:前回の予測判定結果が到達不可能の場合
相関ありの条件:((Xi−Xpi)+(Yi−Ypi))1/2
≦((X’si-1)+(Y’si-1) )1/2
・ (ti−ti-1)+G
相関なしの条件:上記以外
ここで、Gは追尾処理装置の特性を考慮して設定される相関ゲートの大きさである。
すなわち、相関処理部は前回の予測判定結果が不可能の場合は、相関ゲートを拡大して相関処理を行う。
【0030】
相関なしの場合、目標の位置座標(Xi,Yi),観測時刻tiはトラックファイルに出力され、新規目標として、(Xsi,Ysi)=(Xi,Yi),(X’si,Y’si)=(X’i,Y’i)と登録される(ステップS4)。
相関ありの場合、相関処理部から出力された目標の位置座標(Xi,Yi)および観測時刻tiは平滑化処理部に入力され、前回の予測判定結果に応じた平滑化処理が行われる(ステップS5,ステップS6)。
【0031】
ステップS5:前回の予測判定結果が到達可能の場合
Xsi=Xpi+αi(Xi−Xpi)、Ysi=Ypi+αi(Yi−Ypi)
X’si=X’si-1+βi(Xi−Xpi)/ (ti−ti-1)
Y’si=Y’si-1+βi(Yi−Ypi)/ (ti−ti-1)
【0032】
ステップS6:前回の予測判定結果が到達不可能の場合
Xsi=Xi、Ysi=Yi
X’si=(Xi−Xpi)/ (ti−ti-1)
Y’si=(Yi−Ypi)/ (ti−ti-1)
ここで、αi,βiは平滑化定数である。
予測処理部では、平滑化処理部から入力された、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と平滑化速度(X’si,Y’si)とを用いて、予測処理が行われる(ステップS7)。
【0033】
ステップS7:予測処理
Xpi+1=Xsi+X’si・ (ti−ti-1)
Ypi+1=Ysi+Y’si・ (ti−ti-1)
予測判定部では、予測処理部から入力された、今回算出した次回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)と、地勢情報発生部から線分の集合として提供される等高線情報(ステップS11)、および目標移動能力登録部から入力された目標の登坂/降坂能力の情
報(ステップS12)を用いて、目標が予測位置に到達可能か否かを判定し(ステップS8)、判定結果によって予測変更を行うか行わないかの分岐を行う(ステップS9)。
到達可能の場合は次回の目標情報の入力待ちとし、到達不可能の場合は予測変更処理部で予測変更の処理を行う。
【0034】
なお、到達可能か否かの判定は、予測位置までの間に、予測進路が交差する等高線の本数を、予測位置までの距離で除算した値が一定値以上である場合には、到達不可能とし、それ以外の場合は到達可能とする。
ここで、判定基準とする一定値は、目標移動能力登録部から提供される当該目標の登坂/降坂能力であり、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と、今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が、何本の等高線と交差するかによって判定することを基本とし、予測位置までの距離で除算することによって、実際に目標が相対することとなる傾斜に即した判定結果を得ることができる。
以下に、このような判定方法の一例を説明する。
【0035】
まず、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と、今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ直線を監視領域内に設定し、地勢情報発生部から線分の集合として提供される等高線のうちで、線分の始点と終点の双方が、監視領域内に設定した直線によって二つに区切られる領域における同一の側に含まれるものは、平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ直線と交差することはないので、処理の対象外とし、それ以外のものを処理の対象とする。
【0036】
次に、処理対象とした等高線を構成する線分のすべてについて、その始点と終点を結ぶ直線を設定し、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1, Ypi+1)とを結ぶ直線との交点の座標を算出したのち、交点の座標が平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)を結ぶ線分中に含まれるか否かを判定する。
【0037】
等高線を用いて算出した交点が、平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分中に含まれる場合には、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が等高線と交差すると判定し、その交点の数を求める。
この交点の数を平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)の間の距離で除算した値が、目標移動能力登録部から提供される当該目標の登坂/降坂能力を超える値である場合に、予測位置は急な斜面であると判定し、到達不可能と判定する。
【0038】
上記以外の場合、すなわち今回の平滑化距離(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が、当該線分の長さで示される移動距離中において一定数の等高線と交差しない場合、または今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)を結ぶ線分が、当該線分の長さで示される移動距離中において交差する等高線の本数が一定数未満である場合には、目標は今回の予測位置に到達可能であると判定する。
【0039】
ステップS8:予測判定処理
(1) 処理対象とする等高線を構成する線分の抽出
まず、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ直線を求める。今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ直線は、次の式で表される。
y=A・x+B
ただし、A=(Ysi−Ypi+1)/(Xsi−Xpi+1)
B=(Xsi・Ypi+1−Xpi+1・Ysi)/(Xsi−Xpi+1)
【0040】
次に、等高線を構成する線分の始点を(Xm,Ym)とし、終点を(Xm+1,Ym+1)として、以下の条件により処理対象とする線分を抽出する。
処理対象外の条件:
(i) Ym<A・Xm+B かつ Ym+1<A・Xm+1+B
(ii) Ym>A・Xm+B かつ Ym+1>A・Xm+1+B
処理対象の条件:上記以外
【0041】
(2) 目標の予測位置への到達可能性の判定
まず、等高線の始点(Xm,Ym)と終点(Xm+1,Ym+1)とを結ぶ直線を求め、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1) とを結ぶ直線との交点を算出する。
等高線の始点(Xm,Ym)と終点(Xm+1,Ym+1)を結ぶ直線は、以下の式で表される。
y=E・x+F
ただし、E=(Ym−Ym+1)/(Xm−Xm+1)
F=(Xm・Ym+1−Xm+1・Ym)/(Xm−Xm+1)
【0042】
等高線の始点(Xm,Ym)と終点(Xm+1,Ym+1)とを結ぶ直線と、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ直線との交点(Xd,Yd)は以下の通りとなる。
Xd=(F−E)/(A−E)、Yd=(FA−BE)/(A−E)
【0043】
次に、交点(Xd,Yd)の座標が平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分中に含まれるか否かを判定することによって、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が等高線と交差するか否かを判定する。
【0044】
上記交点の算出を繰り返して、今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)までの間に存在する等高線との交点の数を算出したのち、当該交点の数を今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)までの距離で除算した値Sを求める。
S=Nd/L
ここで、Ndは算出された交点の数、Lは平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)間の距離である。
【0045】
上記除算した結果Sが、目標移動能力登録部の情報に基づく当該目標の登坂/降坂能力の範囲内か否かを検索して、移動不可能な場合は、目標は今回の予測位置に到達不可能とする。
今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が等高線と交差しない場合、または今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分が交差する等高線の数が、今回の平滑化位置(Xsi,Ysi)と今回の予測位置(Xpi+1,Ypi+1)とを結ぶ線分の長さに比べて、当該目標の登坂/降坂能力を下回る場合には、目標は今回の予測位置に到達可能とする。
【0046】
予測変更部では、予測判定部の判定結果が到達不可能の場合に、予測位置および平滑化速度の変更を行う(ステップS10)。
【0047】
ステップS10:予測変更処理
(Xpi+1,Ypi+1)=(Xsi,Ysi)
(X’si,Y’si)=(X’si-1,Y’si-1)
すなわち、予測判定部の判定結果が到達不可能の場合、予測位置および平滑化速度の更新を停止して次回の目標情報入力待ちの状態となり、ステップS3の説明で述べた通
り、次回相関処理時の相関ゲートを拡大する処理を待つ。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明の追尾処理装置は、登山を目的とする場合に限らず、標高が変化する地域を移動する必要がある状況の場合に、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 観測員用端末装置等
2 相関処理部
3 トラックファイル
4 平滑化処理部
5 予測処理部
6 地勢情報発生部
7 目標移動能力登録部
8 予測判定部
9 予測変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を監視する観測員等から提供される目標の種類及び位置情報をもとに、目標の位置情報と追尾している航跡の予測位置とを位置相関する相関処理部と、相関した位置情報と航跡の予測位置・平滑化速度から現在の平滑化位置・平滑化速度を算出する平滑化処理部と、現在の平滑化位置・平滑化速度から次の目標の位置情報入力時に得られる位置を予測する予測処理部と、監視区域の地勢情報を提供する地勢情報発生部と、地勢情報発生部からの地勢情報と観測員等からの目標の種類の情報を用いて目標が予測処理部で予測された位置へ到達可能か否かを目標の種類ごとに判定する予測判定部と、予測判定部での判定結果が到達不可能の場合に予測の変更を行う予測変更部を有する追尾処理装置において、
地勢情報発生部から提供される監視対象領域の等高線情報に基づいて、目標の現在位置と予測位置との間の等高線密度により傾斜の度合いを算定し、該算定結果に基づいて、目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定することを特徴とする追尾処理装置。
【請求項2】
目標の予測進路上の等高線間隔が密になっている場合に、目標の種類に応じた迂回
行動を予測して、目標が急な斜面を移動する場合と迂回する場合のいずれの場合にも、
目標の進路変更に追随する追尾処理を可能にすることを特徴とする請求項1記載の追尾処理装置。
【請求項3】
前記予測判定部において、目標の種類に応じて目標の予測位置が地勢の制限により当該目標の到達不可能な領域の範囲内であるか否かによって目標が当該予測位置に到達し得るか否かを判定することを特徴とする請求項1または2記載の追尾処理装置。
【請求項4】
前記予測変更部において、到達不可能の場合にのみ予測位置の更新を行わずに次回の相関処理時の相関ゲートを拡大するように予測変更を行う機能を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一記載の追尾処理装置。
【請求項5】
予測位置に目標が到達可能か否かを判定する際に、急な傾斜を移動可能な目標については、予測進路上の等高線間隔が密になっている場合でも、目標は予測位置に到達可能と判定して、不必要に相関ゲートを拡大するのを防止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一記載の追尾処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−203986(P2010−203986A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51398(P2009−51398)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】