説明

逆オパールの孔系中への発光性物質のガス相浸透

本発明は、揮発性リン光体を逆オパールの孔系中に、ガス相浸透により導入するための方法および対応する発光体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン光体を逆オパールの孔系中に、ガス相浸透(またガス相負荷として知られている)により導入するための方法、および対応する発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色線を発光する高度に有効なリン光体がある。例えば、ルミネセンス活性イオンとしてEu3+を含むY:Eu3+またはこの誘導体である。
このようなリン光体は、蛍光ランプおよび他の照明系において用いられており、ここでリン光体は、300nm未満の波長において励起される。励起は、特に254nm(Hgプラズマ)以下の波長において強度である。これらのリン光体はまた、例えばCRT(陰極線管、即ち受像管)における電子ビームにおいて極めて有効に励起され得る。
【0003】
しかし、このようなリン光体を青色波長において、例えば450〜470nmにおいて有効に励起することが可能であったとすると、これらをまた、存在する緑色ないしオレンジ色の光を発光するリン光体に加えて、白色LEDに加えることができ、これにより極めて高い効率(>150lm/W)および極めて良好な色品質(CRI>90)を有する温暖な白色光が促進されたであろう。
【発明の開示】
【0004】
驚異的なことに、ここで、前述のリン光体を、逆オパールの構造を有するフォトニック結晶の内部に導入することができ、この中に位置するリン光体を、青色光で有効に励起することができることが、見出された。これは、逆オパール中に侵入する青色光(即ち、通常GaNもしくはInGaNもしくはAlInGaNもしくはZnO物質を含む、またはOLEDもしくはPLEDの場合においては、青色エレクトロルミネセントポリマーを含む、エレクトロルミネセント半導体により発生した光)が、この中で往復して反射され、したがって逆オパール中で極めて長い滞留時間を有するという事実から生じている。これにより、純粋なリン光体の場合におけるよりも数桁高い、逆オパール中にリン光体を有するオパール中の青色光の相互作用周波数が生じ、即ち、ガーネットまたはケイ酸塩リン光体と組み合わせて青色LEDにおいて高効率であり高品質の白色光を生じさせるために、逆オパール中のリン光体を用いることができる。
【0005】
このタイプの光特性は、2010年から在来の光技術、例えば白熱電球、ハロゲン電球または蛍光ランプに替わるLED(およびOLED)についての必要条件である。
【0006】
リン光体を、逆オパールの内部中に、種々の技術的プロセスにより導入することができる。
DE 102006008879.4には、リン光体の逆オパール中への導入を、溶液含浸または分散浸透により行う2種の方法が記載されている。しかし、例えば低い装置の複雑さの利点に加えて、これらの方法はまた、不純物または妨害物質が、溶媒を介して逆オパール中に導入され得るという事実により生じる欠点を有する。さらに、分解または不溶性のために、数種のリン光体前駆体は、溶液含浸により逆オパール中に導入することが完全にできない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、前述の方法の欠点を回避する、逆オパール中にリン光体を導入するためのさらなる方法を提供することにあった。
驚異的なことに、この目的は、いわゆるガス相浸透に基づく方法により達成された。
【0008】
したがって、本発明は、少なくとも1種のリン光体を含む規則的に配列した空洞を有するフォトニック材料の製造方法であって、
a)オパール鋳型球体を規則的な方式で配列し、
b)球体の隙間を1種または2種以上の壁材料前駆体で満たし、
c)壁材料を形成し、オパール鋳型球体を取り除き、
d)リン光体を空洞中に導入し、揮発性リン光体前駆体を逆オパールの空洞中に、細孔拡散を用いたガス相浸透により導入し、
e)揮発性前駆体を、その後の工程においてリン光体に変換する
前記方法に関する。
【0009】
本発明の意味で本質的に単分散のサイズ分布を有する空洞の配列を含むフォトニック材料は、三次元フォトニック構造を有する材料である。三次元フォトニック構造は、一般的に、誘電率(およびしたがってまた屈折率)の規則的な三次元変調を有する系を意味するものと解釈される。周期的な変調の長さが(可視)光線の波長にほぼ相当する場合には、当該構造は、三次元回折格子の方式で光と相互作用し、これは、角度依存性発色現象から明らかである。
【0010】
オパールの構造と逆の構造(=本質的に単分散のサイズ分布を有する空洞の配列)は、規則的な球形の中空容積が固体材料中に最密充填で配列されることにより形成されると考えられる。通常の構造に対するこの型の逆構造の利点は、すでに顕著に低い誘電率コントラストを有するフォトニックバンドギャップの形成である(K. Busch et al. Phys. Rev. Letters E, 198, 50, 3896)。
【0011】
空洞を有するフォトニック材料は、したがって固体の壁を有しなければならない。本発明において好適なのは、誘電特性を有し、それ自体各リン光体の吸収帯の波長に対し本質的に非吸収性作用を有し、かつ吸収波長によって刺激され得るリン光体の発光波長に対し本質的に透明な壁材料である。フォトニック材料の壁材料は、それ自体リン光体の吸収帯の波長を有する放射線の少なくとも95%が通過できるようにしなければならない。
【0012】
マトリックスは、ここでは、本質的に放射に安定な有機ポリマーからなり、好ましくは架橋されており、例えばエポキシ樹脂である。本発明の別の変形において、マトリックスは空洞の周囲で本質的に無機材料、好ましくは金属カルコゲナイドまたは金属プニクタイドからなり、ここで特に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化チタン、二酸化セリウム、窒化ガリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素および窒化リン、またはそれらの混合物を挙げることができる。本発明によれば、フォトニック材料の壁が、本質的にケイ素、チタン、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物または混合酸化物、好ましくは二酸化ケイ素からなることが、特に好ましい。
【0013】
3次元逆構造、即ち、規則的な配列の空洞を有する本発明において用いるべき微小光学的系は、例えば、鋳型合成により製造することができる。
【0014】
逆オパールを構築するために用いられる一次的な基礎的要素は、均一なコロイド状球体である(図1中のポイント1)。他の特徴に加えて、当該球体は、最も狭い可能なサイズ分布に従わなければならない(5%のサイズ偏差が耐容可能である)。好ましいのは、本発明において、サブミクロンの範囲の直径を有し、水性エマルジョン重合により製造された単分散のPMMA球体である。第2の段階において、均一なコロイド状球体が、単離および遠心分離または沈降の後に、3次元の規則的なオパール構造に配列される(図1中のポイント2)。この鋳型構造は、最密球状充填に相当する。即ち、空間の74%が球体で満たされ、空間の26%が空である(隙間または中空容積)。次にこれを、状態調節により固化させることができる。
【0015】
次の作業段階において(図1中のポイント3)、鋳型の空洞を、後に逆オパールの壁を形成する物質で満たす。当該物質を、例えば、前駆体(好ましくはテトラエトキシシラン)の溶液とすることができる。次に、前駆体を、か焼により固化させ、鋳型球体を、同様にか焼により除去する(図1中のポイント4)。これは、球体がポリマーであり、前駆体が例えば、ゾル−ゲル反応(例えばケイ酸エステルのSiOへの変換)を行うことが可能である場合に、可能である。完全なか焼の後に、鋳型のレプリカ、いわゆる逆オパールが、得られる。
【0016】
本発明において用いるための空洞構造の作成のために用いることができるこのような方法の多くは、文献において知られている(例えば、S.G. Romanov et al., Handbook of Nanostruc tured Materials and Nanotechnology, 第4巻、2000, 231頁以降; V. Colvin et al. Adv. Mater. 2001, 13, 180; De La Rue et al. Synth. Metals, 2001, 116, 469; M. Martinelli et al. Optical Mater. 2001, 17, 11; A. Stein et al. Science, 1998, 281, 538)。そのシェルがマトリックスを形成し、そのコアが基本的に固体であり、かつ基本的に単分散サイズ分布を有するコア/シェル粒子は、DE-A-10145450に記載されている。そのシェルがマトリックスを形成し、そのコアが基本的に固体であり、かつ基本的に単分散サイズ分布を有するコア/シェル粒子の、逆オパール構造を製造するための鋳型としての使用、およびこのようなコア/シェル粒子を使用する逆オパール様構造を製造するための方法は、国際特許出願WO2004/031102に記載されている。均一で規則的に配列した空洞を有する、記載された成形物は、好ましくは金属酸化物またはエラストマーの壁を有する。記載された成形物は、結果として硬く脆弱であるか、またはエラストマーの特徴を示すかのいずれかである。
【0017】
規則的に配列した鋳型コアの除去を、種々の方法により行うことができる。コアが好適な無機材料からなる場合には、これらをエッチングにより除去することができる。二酸化ケイ素コアは、例えば、好ましくはHF、特に希HF溶液を用いて除去することができる。
【0018】
コア/シェル粒子において、コアがUV照射により分解され得る材料、好ましくはUV分解性有機ポリマーから形成されている場合には、コアを、UV照射により除去する。この方法においても、シェルの架橋をコアの除去の前または後に行うのが好ましい場合がある。好適なコア材料はしたがって、特に、ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)またはこれらのポリマーの1つを含有するコポリマーである。
【0019】
さらに、分解性コアが熱分解性であり、かつ熱解重合性である、即ち熱に曝されるとこれらのモノマーに分解するポリマーからなるか、または当該コアが、分解してモノマーとは異なる低分子量の成分に減成するポリマーからなるのが、特に好ましい場合がある。好適なポリマーは、例えば、Brandrup, J. (Ed.): Polymer Handbook. Chichester Wiley 1966, pp. V-6〜V-10の表「Thermal Degradation of Polymers」中に示されており、ここで揮発性分解生成物を与えるすべてのポリマーが適している。この表の内容は、明示的に本願の開示内容中に導入される。
【0020】
好ましいのは、ここで、ポリ(スチレン)および誘導体、例えば、芳香環に置換基を担持するポリ(α−メチルスチレン)またはポリ(スチレン)誘導体、例えば、特に、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化された誘導体、ポリ(アクリレート)およびポリ(メタクリレート)誘導体並びにそれらのエステル、特に好ましくはポリ(メチルメタクリレート)もしくはポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、または他の分解性ポリマーとこれらのポリマーとのコポリマー、例えば、好ましくはスチレン−エチルアクリレートコポリマーもしくはメチルメタクリレート−エチルアクリレートコポリマー、並びにポリオレフィン、酸化ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリホルムアルデヒド、ポリアミド類、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルまたはポリビニルアルコールを用いることである。
【0021】
得られた成形物および成形物の製造方法の記載について、WO2004/031102を参照し、その開示内容を明示的に本出願中に導入する。
本発明に従えば、フォトニック材料中の空洞の平均直径は、約150〜600nmの範囲内、好ましくは250〜450nmの範囲内であるのが、特に好ましい。
【0022】
逆オパールの成形物を、対応する方法において粉末形態で直接製造するか、または製粉により粉末状にすることができる。得られた粒子を、次に本発明の意味においてさらに加工することができる。
【0023】
すでに述べたように、逆オパールの構造は、74%の空隙率を有し、他の物質で容易に負荷されることが可能である。逆オパールの孔系は、球状空洞(鋳型の球体に相当する)からなり、これは、互いに3次元の方式でチャネル系(鋳型球体の互いの接触の前の点に相当する)により互いに連結されている。次に、連絡チャネル(図2)を通過することができるリン光体またはリン光体前駆体を、オパール構造の内部に導入することができる。
【0024】
リン光体またはリン光体前駆体を、逆オパール粉末の孔系中に、毛細管効果を用いるガス相浸透により導入する。
【0025】
空洞をリン光体またはリン光体前駆体で負荷させるかまたは満たす程度は、ここでは重要な基準である。本発明において、負荷工程を多数回繰り返すのが、好ましい。ここで、過度に高い程度の空洞の充填により、フォトニック特性が影響されることが、見出された。したがって、本発明において、フォトニック材料の空洞が、最低で1容量%および最高で50容量%の程度で、当該少なくとも1種のリン光体で満たされ、ここで当該空洞が、特に好ましくは最低で3容量%および最高で30容量%の程度で、少なくとも1種のリン光体で満たされているのが、好ましい。
【0026】
したがって、好ましくは本発明において用いるべきであり、約4g/cmの密度を有するリン光体について、当該少なくとも1種のリン光体は、フォトニック材料の5〜75重量%を構成し、ここで当該少なくとも1種のリン光体は、好ましくはフォトニック材料の25〜66重量%を構成する。
【0027】
リン光体粒子の粒子サイズが逆オパールの空洞間の連絡チャネルの直径よりも小さい場合には、ナノスケールのリン光体を、上記の逆オパール中に浸透させることができる。
【0028】
好ましい方法の変法において、オパール鋳型球体を除去した後に、リン光体を、ガス相浸透により空洞中に導入することができる。規則的に配置された空洞を有するフォトニック材料または逆オパールを揮発性リン光体前駆体、例えば希土類元素のアセチルアセトネート類またはフルオロアセチルアセトネート類で充填し、またリン光体に依存して、対応する揮発性化合物(あるいはまた担体ガスを有する)を、熱乾燥した、排気した逆オパール中の逆オパールの内部孔系から、動的真空において、および高温にて吸着させることにより、これを行う。次に、前駆体をリン光体に、ガス(例えば窒素またはアルゴン)を導入することにより、続いて加熱分解および/または光分解により変換する。ここでの好適なガスの選択は、当業者に知られ、精通されているように、リン光体および逆オパールのタイプおよび化学的組成に依存する。
【0029】
本発明において、逆オパールの浸透を、前駆体のタイプに依存して、系、好ましくは加熱乾燥した逆オパールおよび前駆体からなる閉鎖系を加熱することにより、前駆体がガス相に変換され、孔拡散により逆オパールの孔に進入するように、静的真空において行う。所要の程度の負荷に到達した際に、当該系に通気し、高温における、また所要に応じて反応性ガス雰囲気(例えば酸素、フォーミングガスまたはCO)中または不活性ガス雰囲気(アルゴンもしくは窒素)中での熱処理により、リン光体を負荷させた逆オパールに変換する。
【0030】
基板を機能性材料でコーティングするためのガス相技術(例えばLED用のGaNをベースとするチップおよびさらにLED用のZnOをベースとするチップの製造)において、CVD(=化学蒸着)、MOCVD(=金属有機化学蒸着)、MOVPE(=有機金属気相エピタキシー)およびPVD(=物理蒸着)の間で、区別がなされる。
【0031】
薄層または粒子を製造するためのCVDガス相蒸着において、PVDプロセスとは対照的に化学的プロセスが発生する。このプロセスにおける温度は、200℃〜2000℃である。エネルギー供給のタイプに依存して、熱、プラズマ、光子またはレーザーにより活性化されたガス相蒸着の用語を、用いる。個別のガス成分を、不活性キャリヤーガス、例えばアルゴンと共に、10mbar〜1barの圧力にて、化学反応が起こる反応チャンバーに通じ、当該プロセスにおいて生成した固体成分は、薄層または粒子として堆積する。揮発性副産物を、キャリヤーガスと共に排出する。ガス相蒸着により、基板(これらが当該温度において安定である場合)を、多種の金属、半導体、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物および酸化物でコーティングすることができる。
【0032】
PVD方法は、薄層または粒子を製造するための真空コーティングプロセスを包含し、ここでコーティング材料をガス相に、純粋に物理的な方法により変換し、次に基板上に堆積させる。3種のプロセス手法の間で、本質的に区別がなされる:
【0033】
1.蒸着において、コーティング材料を、これが固体状態から液体状態を介してガス状態に変換されるまで、高度の真空中で加熱する。材料に依存して、直接的な固体−気体変換(昇華)がまた起こり得る。必要な加温は、電気抵抗加熱により、高エネルギー電子により、またはレーザー衝突により供給される。これらの実績のある加熱手法に加えて、電極材料を2つの電極間の電気アークの点火により蒸発させるアーク蒸発のプロセスは、重要性が絶えず増大している。
【0034】
2.スパッタリングにおいて、所望のコーティング材料からなる標的の高エネルギー希ガスイオンでの衝突の結果、表面のスパッタリングが生じる。用いるイオン供給源は、通常希ガスプラズマである。これが直流電場により刺激されるか、交流電場により刺激されるかに依存して、用語DCスパッタリングまたはRFスパッタリングを用いる。また、RFスパッタリングにより、非導電性材料をスパッタリングすることが可能になる。
【0035】
3.またイオンビームを用いて、標的材料の表面を腐食することができる。この手法により、基板上の極めて正確な腐食およびしたがって正確な成長速度が可能になる。
【0036】
上記の方法は、しばしば組み合わされる。最も一般的な手法は、ここでは、プラズマ支持蒸着またはイオン注入を含み、ここで表面に、層の成長の間希ガスイオンが衝突する。
【0037】
材料の薄層または粒子を基板上に作成するための一層現代的なMOCVD法は、特にエピタクチック(epitactic)半導体層を作成するために数年にわたり用いられている。この方法において、ガス形態の有機金属化合物および水素化物を、反応容器(例えばGaMeおよびAsHまたはZnEtおよびTe(C)中に通じ、半導体材料がこの上に堆積する(例えばGaAsまたはZnTe)ように、加熱した基板上で分解させる。材料の分解をさらにUV光の影響の下で行う場合には、用語光MOCVDを用いる。
【0038】
一般的に、前述のすべてのコーティング方法を、本発明において用いることができる。しかし、好ましいのは、本発明においてMOCVDプロセスであり、即ちリン光体前駆体をガス相に、化学的プロセスにより変換し、したがってリン光体として逆オパール中に導入する。
【0039】
本発明のガス相負荷の利点は、特に、従来技術からの前述の方法(例えば溶液含浸)と比較して、逆オパールの孔系中への蒸気または揮発性前駆体の一層単純な拡散にある。
【0040】
本発明において、1種または2種以上のリン光体前駆体および/またはナノ粒子リン光体をさらに、フォトニック材料を調製するための方法の工程b)において、壁材料前駆体に加えて球体隙間中に導入することが、好ましい。
さらに、本発明の方法の工程c)を、好ましくは200℃超、特に好ましくは400℃超でのか焼とするのが、好ましい。
【0041】
さらに、ガス、好ましくは反応性ガスをまた、好ましくは200℃超、特に好ましくは400℃超でのか焼に加えて、本発明の方法の工程e)において加えるのが、特に好ましい場合がある。用いることができる反応性ガスは、用いるリン光体粒子に依存して、例えばHS、H/N、O、COなどである。ここでの好適なガスの選択は、リン光体および逆オパールのタイプおよび化学的組成に依存し、これは、当業者に知られており、精通されている。
【0042】
本発明によるリン光体は、好ましくはナノスケールのリン光体粒子である。ここでリン光体は、一般的に母材および1種または2種以上のドーパントの化学的観点において、構成されている。
【0043】
母材は、好ましくは硫化物、セレン化物、スルホセレン化物、酸硫化物、ホウ酸塩、アルミン酸塩、没食子酸塩、ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、リン酸塩、ハロリン酸塩、酸化物、ヒ酸塩、バナジウム酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、ハロゲン化アルカリ金属、窒化物、ニトリドケイ酸塩、酸ニトリドケイ酸塩、フッ化物、酸フッ化物および他のハロゲン化物の群からの化合物を含有することができる。母材は、ここでは好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類化合物である。
【0044】
ここでリン光体は、好ましくはナノ粒子の形態である。ここで好ましい粒子は、動的光散乱による流体力学的直径として測定して50nm未満の平均粒子サイズを示し、特に好ましくは平均粒子直径が25nm未満である。
【0045】
本発明の変形において、青色光源からの光は赤色成分で補足されるべきものである。この場合において、リン光体は、本発明の好ましい態様において、550nm〜700nmの範囲内の放射のための放射体である。ここでの好ましいドーパントには、特に、ユウロピウム、サマリウム、テルビウムまたはプラセオジム、好ましくは3価に陽荷電されたユウロピウムイオンでドープされた希土類化合物が含まれる。
【0046】
本発明の1つの観点において、使用されるドーパントはさらに、主族1a、2aからの元素、またはAl、Cr、Tl、Mn、Ag、Cu、As、Nb、Ni、Ti、In、Sb、Ga、Si、Pb、Bi、Zn、Coおよび/またはいわゆる希土類金属の元素を含む群からの1種または2種以上の元素である。
【0047】
相互に整合させたドーパント対、例えばセリウムおよびテルビウムを、所望の蛍光色ごとに必要に応じて良好なエネルギー転移を伴って好ましく用いることができ、ここで一方はエネルギー吸収剤、特にUV光吸収剤として作用し、他方は蛍光放射体として作用する。
【0048】
一般的に、ドープされたナノ粒子のために選択された材料は、下記の化合物であってもよく、ここで、以下の表記法において、ホスト化合物はコロンの左に示され、また1種または2種以上のドーピング元素はコロンの右に示される。化学元素がコンマにより互いに分離され、括弧内に入れられている場合には、それらの使用は随意である。ナノ粒子の所望の蛍光特性に依存して、選択に有用である化合物の1種または2種以上を使用することができる:
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
さらなる選択リストにおいて、リン光体は、好ましくは少なくとも1種の化合物M:MIIであり、ここでM=Y、Sc、La、Gd、LuおよびMII=Eu、Pr、Ce、Nd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybである。
さらなる選択リストにおいて、リン光体は、好ましくは少なくとも1種の化合物MIIIIVOFまたはMIIIIVであり、ここでMIII、MIV=Eu、Gd、Tbである。
【0054】
このタイプのリン光体は、市販であるかまたは文献から知られている調製方法により得ることができる。フッ化物および酸フッ化物含有リン光体の調製は、例えば、G. Malandrino et al. Synthesis, characterisation, and mass-transport properties of two novel gadolinium(III) hexafluoroacetylacetonate polyether adducts: promising precursors of MOCVD of GdF3 films. Chem. Mater. 1996, 8, 1292-1297に記載されている。
【0055】
好ましい方法の変法において、特にフッ化物および/または酸フッ化物含有リン光体の場合において、リン光体は、ジケトナート類MLLIIの群からの錯体化合物からなる揮発性前駆体を介して用いられ、ここでM=Eu、Gd、TbおよびL、L、LII=一般式I
【化1】

式中、
L、LおよびLIIは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
R、RおよびRIIは、−H、−アルキル、−フェニル、−ベンジル、−ナフチル、−ピリジル、−フリル、−チエニル、−フルオロアルキルまたは−パーフルオロアルキルを示し、
R、RおよびRIIは、互いに同一であっても異なっていてもよく、ただし、これらは一緒に−Hであってはならない、
で表されるジケトナトリガンドおよびさらにコリガンド(co-ligand)であり、これは、好ましくは多座配位子である。
【0056】
これらの、好ましくはフッ素含有ジケトナト錯体をリン光体前駆体として用いることは、第一に対応するフッ化物を生成するために、また対応する温度およびガス雰囲気(例えばO、HO飽和空気)の選択の場合において酸フッ化物を生成するために、加熱分解的に、もしくは光分解的に、または以下の段階における2種の方法の組み合わせにより完全に分解することができるという利点を有する。特に、酸フッ化物および酸フッ化物とフッ化物との混合物は、これらの光学的特性に関して有利であることが明らかである。
【0057】
式Iにおいて用いるジケトナトリガンドL、L、LIIは、ヘキサフルオロアセチルアセトン、フェニルトリフルオロアセチルアセトンまたはチエニルトリフルオロアセチルアセトンであるのが、特に好ましい。
【0058】
本発明において、ジケトナト錯体はさらに、配位原子として酸素および/または窒素を含む多座コリガンドを含むのが、さらに好ましい。
これらのコリガンドは、錯体の増大した蒸気圧およびしたがって一層大きい揮発性に関与し、したがってこれを、良好に定義された前駆体として逆オパールの空洞中に導入することができる。
【0059】
特に好ましいのは、ここで、二座コリガンドまたは三座コリガンド、例えばビピリジン、ビピリジンN−オキシド、フェナントロリンまたはポリエーテルを用いることである。
次に、ジケトナト錯体からなるリン光体前駆体を、完全に、または部分的に、希土類元素のフッ化物または酸フッ化物に、加熱分解および/または光分解により変換する。純粋な加熱分解と比較して、光分解と加熱分解との組み合わせは、本発明において好ましい。その理由は、後者の方法の結果、励起されたリン光体の一層高い発光強度が得られるからである。
【0060】
加熱分解温度は、逆オパールの構造が崩壊する温度よりも低くなければならない。この温度は、例えば二酸化ケイ素を含む逆オパールの場合において600〜800℃であり、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムを含む対応する材料の場合において>1000℃である。
【0061】
この目的に従って、本発明はさらに、少なくとも1つの光源を含む発光体であって、本発明の方法により調製された少なくとも1種のフォトニック材料を含有することを特徴とする発光体に関する。
本発明の好ましい態様において、発光体は発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)または蛍光ランプである。
【0062】
発光ダイオードにおける本発明において好ましい用途のために、250〜500nmの波長範囲から選択される放射がフォトニック材料に貯蔵されるのが、有利である。
【0063】
ここで述べる本発明に特に好適な青色から紫色の発光ダイオードは、GaN(InAlGaN)をベースとする半導体成分を含む。発光成分を製造するための好適なGaN半導体材料は、一般式InGaAlN(式中、0≦i、0≦j、0≦kかつi+j+k=1)により表される。したがって、これらの窒化物半導体材料は、インジウム・ガリウム窒化物およびGaN等の物質も含む。これらの半導体材料は、例えば、強度を増大させるため、または発光色を調整するために微量の他の物質がドープされていてもよい。
【0064】
酸化亜鉛、セレン化亜鉛および炭化ケイ素をベースとする発光ダイオードもまた、本発明において用いることができる。
レーザーダイオード(LD)は、同様の方法においてGaN層の配列により構成されている。LEDおよびLDの製造方法は、この分野の当業者によく知られている。
【0065】
フォトニック構造を発光ダイオードまたは発光ダイオードの配列と連結することができる可能な構成は、保持枠中または表面上に取り付けられたLEDである。
この型のフォトニック構造は、放電ランプ、蛍光ランプ、LED、LD(レーザーダイオード)、OLEDおよびX線管を含むがこれらには限定されない一次放射源を含む照明系のすべての構成において、有用である。用語「放射」は、本明細書において、電磁スペクトルのUVおよびIR領域、並びに可視領域における放射を包含する。OLEDの中でも、PLED−高分子エレクトロルミネセント化合物を含有するOLED−の使用が、特に好ましい場合がある。
【0066】
このタイプの照射系の構造の例は、EP 050174853 (Merck Patent GmbH)に詳細に記載されており、この開示内容を、本出願中に明示的に導入する。
【0067】
以下の例は、本発明を明らかにすることを意図する。しかし、これらは、いかなる様式においても限定的であると見なすべきではない。組成物において用いることができるすべての化合物または成分は、知られており、市販であるか、または既知の方法により合成することができる。
【0068】

例1:SiO壁およびスペクトルの青−緑色領域中のストップバンドを有するフォトニック空洞構造の製造
先ず、単分散PMMAナノ粒子を製造する。これは乳化剤なしの水性乳化重合の補助により行う。この目的のため、アンカー撹拌器(300rpmの撹拌速度)および還流冷却器を備えた2Lの二重壁の撹拌容器に、1260mlの脱イオン水および236mlのメチルメタクリレートを充填し、混合物を80℃にて恒温にする。還流冷却器の過圧バルブから逃すことができる窒素の緩やかな流れを混合物中に1時間通し、次いで1.18gのアゾジイソブチルアミジン二塩酸塩をフリーラジカル開始剤として加える。当該ラテックス粒子の形成は、直ちに生じる濁りにより明らかである。重合反応を熱的にモニタリングし、反応エンタルピーによる温度のわずかな上昇が観察される。2時間後、温度は80℃で再度安定化し、これは反応の終了を示す。冷却後、混合物をグラスウールに通してろ過する。SEMを用いて乾燥した分散物を調査して、317nmの平均直径を有する均一な球状粒子が示される。
【0069】
これらの球体を、フォトニック構造を作製するための鋳型として用いる。この目的のため、10gの乾燥PMMA球体を脱イオン水中に懸濁させ、ブフナー漏斗により吸引しながら濾過する。
【0070】
変形:代わりに、乳化重合から得られる分散物を直接回転または遠心分離して、粒子を規則的様式で沈降させ、上清液を除き、残留物を以下に記載するようにさらに加工する。
【0071】
他の変形:あるいはまた、エマルジョン重合から得られた分散物または分散物中の球体沈降物を、ゆっくりと蒸発させることもできる。さらなる加工は、以下に記載する通りである。
【0072】
フィルターケークを、真空吸引を維持しながら、2mlの脱イオン水中の3mlのエタノール、4mlのテトラエトキシシラン、0.7mlの濃HClからなる10mlの前駆体溶液で湿潤させる。真空吸引を停止した後、フィルターケークを1h乾燥し、次いで管状加熱炉内のコランダム容器中で、空気中でか焼する。か焼は、以下の温度勾配に従って実施する:
a)2hでRTから100℃の温度にし、100℃で2h保持し、
b)4hで100℃から350℃の温度にし、350℃で2h保持し、
c)3hで350℃から550℃の温度にし、
d)さらに14日間材料を550℃で処理し、その後
e)10℃/分で550℃からRTへ冷却する(550℃からRTまで1h)。
【0073】
得られた逆オパール粉末は、約275nmの平均細孔直径を有する(図1を参照)。逆オパールの粉末粒子は、100〜300μmの球体相当直径を有する不規則な形状を有する。空洞は約300nmの直径を有し、約60nmのサイズを有する開口部により互いに連絡している。
【0074】
例2:逆オパールのY:Eu3+でのガス相負荷
>200℃の温度に加熱することができるエバポレーターチャンバー(窒素不活性ガス入口を有する)、および逆オパール粉末を収容するためのボートが配置された、石英管を有する管状炉、および炉の後の2つの液体窒素冷却コールドトラップ、および下流の真空ポンプ(油回転式の回転翼ポンプ)からなるMOCVDユニットを、用いる。
【0075】
エバポレーターユニットを、2種の前駆体で充填する:2g(0.052mol)のイットリウム(III)アセチルアセトナートおよび0.02g(10−5mol)のユウロピウム(III)アセチルアセトナート(99:1の比率)。次に、SiOを含む200mgの乾燥逆オパール粉末をボート中に配置した管状炉を、500℃の温度に加熱し、真空ポンプを始動させる。その後、揮発性前駆体混合物を逆オパール中に、静的または動的真空において浸透させ、この中でY:Euに熱的に変換する。
【0076】
最終的なプロセス工程に関して、あるいはまた、揮発性前駆体混合物を逆オパール中に、窒素キャリヤーガスの導入と共に動的真空において浸透させ、この中でY:Euに熱的に変換することができる。
【0077】
例3:希土類元素のβ−ジケトナト錯体(例えば混合Eu3+/Gd3+錯体)での逆オパールのガス相負荷
EuGd(1-x)(hfa)・digly(x=0〜1、hfa=ヘキサフルオロアセチルアセトン、digly=ジエチレングリコールジメチルエーテル)を、[1](Gd(hfa)・digly)と同様にして調製する。
0.05〜0.2gの逆オパールを、3時間250℃で真空(10−3mbar)において乾燥し、次にガラスアンプル(容積25ml)中でアルゴンの下で0.25〜1gの量のEuGd(1-x)(hfa)・diglyと混合する。次に、アンプルを、真空(10−3mbar)において溶融密封し、120℃で15時間加熱する。
【0078】
このようにして得られた生成物を、例としてEu0.1Gd0.9(hfa)・diglyの比較のために、図1に示す。
錯体の最大の量を、次式から計算する:ρcomplexfree、式中ρcomplex=1.912g/ml[1]、Vfree=検量した逆オパールの自由体積
[1] G. Malandrino et al. Synthesis, characterisation, and mass-transport properties of two novel gadolinium(III) hexafluoroacetylacetonate polyether adducts: promising precursors of MOCVD of GdF3 films. Chem. Mater. 1996, 8, 1292-1297.
【0079】
例4:希土類元素のフッ化物の逆オパールの空洞における調製
例3に記載したようにして調製したβ−ジケトナート錯体を負荷させた逆オパールを、400〜600℃に予備加熱した管状炉中に収納し、この温度の型で0.5〜2時間、乾燥酸素下で加熱する。また、分解を、550℃に加熱したチャンバー炉中で、同等の結果を伴って達成することができる。しかし、空気の下での分解の結果、顕著に低い発光強度がもたらされる(図2bを参照)。
【0080】
グラムのSiO・nHOあたり5.5mmolのEu0.1Gd0.9(hfa)・diglyから600℃で分解した生成物は、エネルギー分散X線蛍光分析(EDX)により分析した後に、以下の組成を有する。LnF・6.4SiO・nHO(Ln:Si=1:6.4)に相当する組成。関連するX線回折パターン(XRD)により、六方晶系LnFが示される。XRDの所見に加えて、フッ化物の生成が、さらに酸フッ化ユウロピウムに典型的である化合物の発光スペクトルから明らかである(図2を参照)。
【0081】
例5:希土類元素の酸フッ化物の逆オパールの空洞における調製
例3に記載したβ−ジケトナート錯体を負荷させた逆オパールを、700℃に予備加熱したチャンバー炉中に収納し、この温度で0.5〜2時間にわたり予備加熱し、600℃でさらに3〜20時間にわたり後か焼する。
変換を、対応するフッ化物から同様に行うことができる(例4を参照)。
【0082】
XRDにおいて、LnOFとLnFとの混合物は、予備加熱段階(700℃)の後に明らかである。正方晶LnOFは、5時間の後か焼の後に見出され、菱面体晶LnOFは、15時間の後か焼の後に見出された(XRD)。XRDの所見に加えて、酸フッ化物の生成は、さらに酸フッ化ユウロピウムに典型的である化合物の発光スペクトルから、明らかである(図3a)。
分析(EDX)により、生成物は、LnOF*3.2SiO*nHO(Ln:Si=1:3.2;初期組成は1gのSiO*nHOあたり5.5mmolのEu0.1Gd0.9(hfa)diglyである)の組成を有する(図5)。
【0083】
例6:比較的高い酸フッ化物含量を有する希土類金属酸フッ化物の、逆オパールの多重負荷による調製
高温炉から直接例5のようにして得られた0.1gの酸フッ化物試料(Ln:Si=1:3.2)を、0.1616g(5.53×10−4mol)のEu0.1Gd0.9(hfa)diglyと混合して、例3の下に記載したようにして、溶融密封したアンプル中で再水和を防止し、再負荷させる。錯体の分解を、例5の下に記載したようにして行う。多重の負荷を、同様に対応するフッ化物から行うことができる(例4を参照)。
分析(XRD)において、LnOF*2.3SiO*nHO(Ln:Si=1:2.3)の組成が得られる。酸フッ化物含量の増大は、さらに生成物の増大した発光強度から明らかである(図3bを参照)。
【0084】
例7:比較的高い酸フッ化物含量を有する逆オパール中の希土類元素酸フッ化物の、光分解支持による調製
例3で記載したように調製した0.5〜1mmの錯体含有逆オパールを、乳鉢(0.5〜1mm)中で注意深く粉末状にし、約1mmの薄層を生成し、これを、UV放射(TQ−150 150W UVランプ)下で5時間にわたり光分解する。さらなる分解を、700℃で予備加熱した炉中で1〜20時間にわたり行う。
光分解支持による含量の増大を、例3〜5に記載した手順を繰り返すことにより、達成することができる。分析により、生成物は、LnOF*2SiO*nHO(Ln:Si=1:2)に相当する組成を有する。酸フッ化物含量の増大は、生成物の増大した発光強度から明らかである(図3cを参照)。
【0085】
例8:比較的高い酸フッ化物含量を有する逆オパール中の希土類金属酸フッ化物の、従来のリガンド交換による調製
酸素のトリフルオロ酢酸で飽和した流れを、ガラス管中のβ−ジケトナート錯体含有逆オパール(0.5〜1.5g)上に、80℃で5時間にわたり通じ、希土類トリフルオロアセテートLn(tfa)への変換を生じさせる(リガンド交換)。変換を、IRスペクトル、発光スペクトルおよびDTG分析によりモニタリングする。このようにして得られたフッ化物または酸フッ化物を生成するLn(tfa)錯体の分解を、前述のように、500℃〜600℃にて20時間にわたり予備加熱せずに、チャンバー炉中で行う。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】逆オパールの調製のスキームである。
【図2】逆オパールの揮発性前駆体での浸透および吸着した前駆体のリン光体(粒子または層)への(熱)変換を示す図である。
【図3】錯体Eu0.1Gd0.9(hfa)・diglyについての励起および発光スペクトルを示す図である。
【図4】フッ化物含有(Eu0.1Gd0.9)逆オパールの発光スペクトルを示す図である。
【図5】酸フッ化物含有(Eu0.1Gd0.9OF)逆オパールの発光スペクトルを示す図である
【図6】SiOを含むフォトニック空洞構造(オパール構造)のSEM写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のリン光体を含む規則的に配列した空洞を有するフォトニック材料の製造方法であって、
a)オパール鋳型球体を規則的な方式で配列し、
b)球体の隙間を1種または2種以上の壁材料前駆体で満たし、
c)壁材料を形成し、オパール鋳型球体を取り除き、
d)リン光体を空洞中に導入し、揮発性リン光体前駆体を逆オパールの空洞中に、細孔拡散を用いたガス相浸透により導入し、
e)揮発性前駆体を、その後の工程においてリン光体に変換する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
1種または2種以上のリン光体前駆体および/またはナノ粒子リン光体を、工程b)において、壁材料前駆体に加えて球体隙間中にさらに導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、好ましくは200℃超、特に好ましくは400℃超でのか焼であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
リン光体前駆体が、室温より高い温度にて、減圧下で揮発性であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程d)における化学的プロセスにより、リン光体前駆体をガス相に変換する(MOCVDプロセス)ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程e)が、好ましくは200℃超、特に好ましくは400℃超でのか焼であり、ここでガスをまたさらに加えてもよいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
フォトニック材料の壁が、本質的にケイ素、チタン、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物または酸化混合物、好ましくは二酸化ケイ素からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
フォトニック材料の空洞が、150〜600nmの範囲内の直径を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
フォトニック材料の空洞が、最低で1容量%および最高で50容量%の程度まで、少なくとも1種のリン光体で満たされ、ここで該空洞が、好ましくは最低で3容量%および最高で30容量%の程度まで、少なくとも1種のリン光体で満たされていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種のリン光体が、フォトニック材料の5〜75重量%を構成し、ここで当該少なくとも1種のリン光体が、好ましくはフォトニック材料の25〜66重量%を構成することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
用いるフォトニック材料が、550〜700nmの範囲内の放射のための放射体からなるリン光体であり、ここで該放射体が、ユウロピウム、サマリウム、テルビウムまたはプラセオジムでドープされた希土類化合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
逆オパール中に導入されるリン光体が、少なくとも1種の化合物M:MIIであり、ここでM=Y、Sc、La、Gd、LuおよびMII=Eu、Pr、Ce、Nd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
逆オパール中に導入されるリン光体が、少なくとも1種の化合物MIIIIVOFまたはMIIIIVであり、ここでMIII、MIV=Eu、Gd、Tbであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
用いる揮発性リン光体前駆体が、ジケトナート類MLLIIの群からの錯体を有する少なくとも1種の化合物であり、ここでM=Eu、Gd、TbおよびL、L、LII=一般式I
【化1】

式中、
L、LおよびLIIは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
R、RおよびRIIは、−H、−アルキル、−フェニル、−ベンジル、−ナフチル、−ピリジル、−フリル、−チエニル、−フルオロアルキルまたは−パーフルオロアルキルを示し、
R、RおよびRIIは、互いに同一であっても異なっていてもよく、ただし、これらは一緒に−Hであってはならない、
で表されるジケトナトリガンドおよびさらにコリガンドであり、これは、好ましくは多座配位子であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
用いるジケトナトリガンドL、LおよびLIIが、ヘキサフルオロアセチルアセトン、フェニルトリフルオロアセチルアセトンまたはチエニルトリフルオロアセチルアセトンであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
用いる多座コリガンドが、ビピリジン、ビピリジンN−オキシド、フェナントロリンおよびポリエーテルの群からの二座配位子または三座配位子であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
リン光体前駆体のジケトナト錯体を、完全に、または部分的に、希土類元素のフッ化物または酸フッ化物に、加熱分解および/または光分解により変換することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法により製造された少なくとも1種のフォトニック材料を含有することを特徴とする、少なくとも1つの光源を含む発光体。
【請求項19】
光源が、インジウム・アルミニウム・ガリウム窒化物、特に式InGaAlN(式中、0≦i、0≦j、0≦k、かつi+j+k=1)で表されるインジウム・アルミニウム・ガリウム窒化物であることを特徴とする、請求項18に記載の発光体。
【請求項20】
光源が、ZnOをベースとする化合物であることを特徴とする、請求項18または19に記載の発光体。
【請求項21】
発光体が、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)または蛍光ランプであることを特徴とする、請求項18〜20のいずれかに記載の発光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530452(P2009−530452A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500723(P2009−500723)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001733
【国際公開番号】WO2007/107226
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】