説明

透光性管状物体の厚さ測定装置

【課題】 透光性管状物体の厚さを全域にわたって短時間で精度よく測定する。
【解決手段】 対物レンズ57が、ガラス管Gに照射されるレーザ光を集光させて、その反射光を回折格子35及びラインセンサ36で受光してガラス管Gの厚さを測定する。対物レンズ57をX軸線方向の焦点距離Fxと、Y軸線周りに回転するガルバノミラー52から対物レンズ57までの光学的距離aと、対物レンズ57からガラス管Gの表面までの光学的距離bとの関係が、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係になるようにする。レーザ光の光軸がガラス管Gの中心軸に垂直になるようにY軸線周り角度のサーボ制御を行っても、X軸線方向におけるレーザ光のガラス管Gへの照射位置を変化させないように1点に固定することができて、ガラス管GのZ軸線周りの傾きの度合によりサーボが不安定になることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光をガラス管などの透光性管状物体の表面に照射し、透光性管状物体の表面からの反射光を受光することで、透光性管状物体の厚さを測定する透光性管状物体の厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス製品のような透光性物体の厚さが規格通りに作製されているかを検査するために、透光性物体の厚さを測定することが行われている。このような測定は透光性物体の表面を傷つけないため、非接触で行われることが多く、この測定方法として、例えば下記特許文献1に記載されているように、透光性物体の表面に対して斜めにレーザ光を照射し、表面と裏面で反射した反射光を受光センサで受光し、受光位置の差から透光性物体の厚さを求める方法がある。この方法は、透光性物体がガラス管などのような管状物体であっても適用することができ、例えば下記特許文献2には、特許文献1に記載された方法により管状物体の厚さを測定する装置が記載されている。しかしながら、この方法は設定された照射角度で透光性物体にレーザ光が照射されるように調整する必要があり、調整精度が悪いと測定精度が悪くなるという問題がある。
【0003】
これに対し、透光性物体に対して垂直にレーザ光を照射して透光性物体の厚さを測定する方法であれば、反射光が照射したレーザ光と同じ光路で戻り、受光器の所定の箇所で受光するように調整すればよいので、調整精度は良好となる。この方法としては、例えば特許文献3に記載されているように、スーパー・ルミネッセント・ダイオード光源(SLD光源)のような広波長帯域のレーザ光が異なった箇所で反射した光を干渉させるとともに、回折格子等で波長ごとに分光することで変位を求める方法がある。すなわち、透光性物体に広波長帯域のレーザ光を照射し、透光性物体の表面と裏面での反射光を干渉させるとともに回折格子等で波長ごとに分光してCCD等の撮像素子で受光し、受光位置ごとの光強度を取得する。この受光位置ごとの光強度(すなわち、受光曲線)は、反射光の干渉の仕方が異なると異なるため、透光性物体の表面と裏面間の距離(すなわち厚さ)により異なる。よって、受光曲線を解析することで、透光性物体の厚さを求めるというものである。この方法は、透光性物体がガラス管などのような管状物体であっても、レーザ光を透光性物体の中心軸と垂直に交差するように照射して、反射光が照射したレーザ光と同じ光路で戻るようにすればよいので適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−222428号公報
【特許文献2】特開平09−504875号公報
【特許文献3】特開2010−121977号公報
【発明の概要】
【0005】
透光性物体が管状物体の場合、レーザ光を透光性物体の全域にわたって中心軸と垂直に交差するように照射するには、管状物体の中心軸が設定された位置になるようにセット機構にセットし、レーザ光を設定された経路で管状物体と相対的に移動させればよい。しかしながら、管状物体の中心軸がランダムに直線からずれている場合には、レーザ光を設定された経路で移動させただけでは、レーザ光の光軸を常に管状物体の中心軸と垂直に交差するようにすることができず、反射光を受光器で受光できずに厚さを測定できない箇所が存在するという問題がある。
【0006】
また、管状物体を回転させながらその全域の厚さ測定を行う場合であって、管状物体の直径が小さい場合には、管状物体の中心軸が常に設定位置にあるように管状物体を回転させることは困難であり、この場合もレーザ光を設定された経路で移動させただけでは、レーザ光の光軸を常に管状物体の中心軸と垂直に交差するようにすることはできず、厚さを測定できない箇所が存在するという問題がある。また、管状物体を何らかの工程上の理由(管状物体が高温又は管状物体への異物付着を避ける等の理由)で、セット機構にセットすることができず、管状物体の一端を掴むのみの場合には、管状物体の中心軸を常に設定された位置にすることができず、レーザ光を設定された経路で移動させただけでは、レーザ光の光軸を常に管状物体の中心軸と垂直に交差するようにすることができず、厚さを測定できない箇所が存在するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、透光性管状物体の中心軸にレーザ光が垂直に交差するようにレーザ光を透光性管状物体に照射するとともに、この中心軸方向に透光性管状物体と相対的にレーザ光を移動して透光性管状物体の全域の厚さを測定する際、透光性管状物体の中心軸が所定位置からずれている箇所がある場合でも、常に反射光を所定位置(解析処理をするための光学機器の受光器)に戻るようにすることができ、短時間で透光性管状物体の全域の厚さを測定することができる透光性管状物体の厚さ測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、中心軸を所定の第1軸線方向(X軸線方向)に延設させて透光性管状物体(G)を支持する透光性管状物体支持装置(10,15)と、第1軸線方向に垂直な第2軸線方向(Z軸線方向)からレーザ光を透光性管状物体に照射するレーザ光照射手段(30,31,40,57)と、透光性管状物体の外周面で反射するレーザ光の反射光と、透光性管状物体の内周面で反射するレーザ光の反射光とを受光する受光手段(35,36)と、受光手段で受光した反射光の受光状態に対応する信号から、レーザ光が照射された位置における透光性管状物体の厚さを検出する厚さ検出手段(117)と、レーザ光照射手段によって照射されるレーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を、第1軸線方向に移動させるレーザ光照射位置移動手段(11,12,13)とを備えた透光性管状物体の厚さ測定装置において、透光性管状物体に照射されるレーザ光の位置を第1軸線方向及び第2軸線方向の両方向に互いに直交する第3軸線方向に変更する第3軸線方向位置変更手段(54,55,25)と、透光性管状物体に照射されるレーザ光の透光性管状物体の中心軸に対する第3軸線周りの角度を変更する第3軸線周り角度変更手段(52,53)と、透光性管状物体からの反射光の一部を分割して入射して、透光性管状物体に対するレーザ光の照射方向の、透光性管状物体の中心軸に対する第3軸線方向位置のずれ量を検出する第3軸線方向位置ずれ量検出手段(51,60,118)と、透光性管状物体からの反射光の一部を分割して入射して、透光性管状物体に対するレーザ光の照射方向の、透光性管状物体の中心軸の第3軸線周りの垂線に対する第3軸線周り角度のずれ量を検出する第3軸線周り角度ずれ量検出手段(51,60,121)と、第3軸線方向位置ずれ量検出手段によって検出された第3軸線方向位置のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が透光性管状物体の中心軸位置に一致するように第3軸線方向位置変更手段をサーボ制御する第3軸線方向位置サーボ制御手段(119,120)と、第3軸線周り角度ずれ量検出手段によって検出された第3軸線周り角度のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が前記透光性管状物体の中心軸に垂直になるように第3軸線周り角度変更手段をサーボ制御する第3軸線周り角度サーボ制御手段(122,123)とを設け、レーザ光照射手段は、レーザ光を集光する対物レンズを含み、対物レンズの第1軸線方向の焦点距離Fxと、第3軸線周り角度変更手段から対物レンズまでの光学的距離aと、対物レンズから透光性管状物体の表面までの光学的距離bとの関係が、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係になるように、対物レンズと第3軸線周り角度変更手段を配置したことにある。
【0009】
この場合、前記第3軸線方向位置変更手段を、透光性管状物体に対するレーザ光の照射経路に介装されて、第1軸線周りに回転してレーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を第3軸線方向に変更する回転光学部品(54,55)で構成するとよい。また、前記第3軸線方向位置変更手段を、レーザ光照射手段を第3軸線方向に移動して、レーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を第3軸線方向に変更する第3軸線方向アクチュエータ(25)で構成してもよい。また、前記第3軸線周り角度変更手段を、透光性管状物体に対するレーザ光の照射経路に介装されて、第3軸線周りに回転する回転光学部品(52,53)で構成するとよい。
【0010】
上記のように構成した本発明においては、第3軸線方向位置サーボ制御手段が、第3軸線方向位置ずれ量検出手段によって検出された第3軸線方向位置のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が透光性管状物体の中心軸位置に一致するように第3軸線方向位置変更手段をサーボ制御する。また、第3軸線周り角度サーボ制御手段が、第3軸線周り角度ずれ量検出手段によって検出された第3軸線周り角度のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が透光性管状物体の中心軸に垂直になるように第3軸線周り角度変更手段をサーボ制御する。これにより、透光性管状物体の中心軸が設定された位置からずれている場合でも、レーザ光の光軸を常に透光性管状物体の中心軸と垂直に交差させることができ、厚さ測定ができない箇所が生じないようにすることができる。さらに、対物レンズの第1軸線方向の焦点距離Fxと、第3軸線周り角度変更手段から対物レンズまでの光学的距離aと、対物レンズから透光性管状物体の表面までの光学的距離bとの関係が、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係になるように、対物レンズと第3軸線周り角度変更手段とが配置されている。これにより、第3軸線周り角度のサーボ制御を行っても、第1軸線方向におけるレーザ光の透光性管状物体への照射位置を変化させないように、対物レンズの光軸が透光性管状物体の表面と交差する1点に固定することができるので、精度よく設定された位置の測定結果を得ることができる。また、透光性管状物体の第2軸線周りの傾きの度合によりサーボが不安定となることがない。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前述のように、前記第3軸線方向位置変更手段を、透光性管状物体に対するレーザ光の照射経路に介装されて、第1軸線周りに回転してレーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を第3軸線方向に変更する回転光学部品で構成し、かつ対物レンズの第3軸線方向の焦点距離Fyが、第1軸線周りに回転する回転光学部品から対物レンズまでの光学的距離cに等しくなるように、前記回転光学部品を配置したことにある。
【0012】
これによれば、レーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を第3軸線方向に変更する回転光学部品を、第1軸線周りに回転させて第3軸線方向位置のサーボ制御を行っても、レーザ光の光軸は常に第2軸線方向に平行になるので、透光性管状物体の位置が第2軸線方向に多少変化しても、透光性管状物体の第3軸線方向位置に対する反射光の受光位置の関係はほとんど変化なく、安定した第3軸線方向位置のサーボ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る透光性管状物体の厚さ測定装置の全体構成図である。
【図2A】図1の分光ユニットの構造を詳細に示す構成図である。
【図2B】X軸線方向から見た図1の光ヘッドの構造を詳細に示す構成図である。
【図2C】図2BのC−C線に沿って見た光ヘッドの構造を詳細に示す構成図である。
【図3】(a)は対物レンズ(トロイダルレンズ)のX軸方向の焦点距離を説明するための説明図であり、(b)は対物レンズ(トロイダルレンズ)のY軸方向の焦点距離を説明するための説明図である。
【図4A】ガラス管のY軸方向の変位と、光ヘッドの4分割フォトディテクタにおける反射光の受光状態とを示す図である。
【図4B】ガラス管のY軸周りの傾きの変化と、光ヘッドの4分割フォトディテクタにおける反射光の受光状態を示す図である。
【図5A】図1のコントローラによって実行される厚さ測定プログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図5B】前記厚さ測定プログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る透光性管状物体の厚さ測定装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る透光性管状物体の厚さ測定装置の全体構成図である。この厚さ測定装置は、ガラス管などのような透光性管状物体の厚さを、レーザ光を透光性管状物体に照射して、透光性管状物体からの反射光を受光することにより測定するものである。透光性管状物体は、本実施形態では、細いガラス管Gである。厚さ測定装置は、ガラス管Gを保持して移動させるワーク駆動装置10と、分光ユニット100Aと協働してガラス管Gの厚さを測定するための光ヘッド100Bと、ワーク駆動装置10及び光ヘッド100Bを支持する支持装置20を備えている。
【0015】
支持装置20は、水平部20a及び垂直部20bからなるL字型に一体形成されている。水平部20aの図示左端部側には、X軸方向フィードモータ11が組み付けられている。X軸方向フィードモータ11は、その出力回転軸をX軸方向(図面の上下方向)に延設されたスクリューロッド12の下端に連結させて、回転によりスクリューロッド12をX軸線周りに回転させる。なお、Y軸方向は紙面の垂直方向とし、Z軸方向は図面の左右方向とする。スクリューロッド12の上端は、垂直部20bの上端にて突出させた突出部に回転可能に支持されている。スクリューロッド12には、移動体13がナットを介して螺合されている。移動体13は、スクリューロッド12に対する回転が規制され、スクリューロッド12の回転によりスクリューロッド12の軸線方向に移動する。すなわち、移動体13は、スクリューロッド12との組み合わせによりねじ送り機構を構成している。
【0016】
X軸方向フィードモータ11内には、エンコーダ11aが組み込まれている。このエンコーダ11aは、X軸方向フィードモータ11が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、その出力がハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号ΦA,ΦBを出力する。なお、パルス列信号ΦA,ΦBは互いにπ/2だけ位相のずれた信号であり、この位相ずれによりX軸方向フィードモータ11の回転方向が判別される。エンコーダ11aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBは、X軸方向フィードモータ制御回路110と移動位置検出回路111に入力される。移動位置検出回路111は、後述するコントローラ200からの指示により作動開始し、作動開始後、エンコーダ11aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBが入力されなくなると移動限界位置を意味する信号をX軸方向フィードモータ制御回路110に出力し、カウント値を「0」として、以後、エンコーダ11aが出力するパルス列信号ΦA,ΦBのパルス数をX軸方向フィードモータ11の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンする。そして積算したカウント数から移動体13の移動位置を計算してコントローラ200及びX軸方向フィードモータ制御回路110に出力する。このカウント値が「0」となる移動限界位置が、移動体13の移動位置を制御する原点位置(本実施形態では上側の移動限界位置)となる。
【0017】
X軸方向フィードモータ制御回路110は、コントローラ200からの指示により作動開始し、コントローラ200から移動位置の設定値を入力すると、移動位置検出回路111から所定時間間隔で出力される移動位置を入力し、入力した移動位置がコントローラ200から入力した設定値になるまでX軸方向フィードモータ制御回路110を駆動して移動体13を移動させる。なお、作動開始直後において移動位置の設定値が入力されると、X軸方向フィードモータ11を駆動して移動体13を移動限界位置方向に移動させ、移動位置検出回路111から移動限界位置を表す信号を入力するとX軸方向フィードモータ11への駆動信号の出力を停止する。その後、移動位置検出回路111から出力される移動位置がコントローラ200から入力した移動位置の設定値になるまでX軸方向フィードモータ11を駆動して移動体13を移動させる。
【0018】
また、X軸方向フィードモータ制御回路110には、移動体13の移動速度の設定値(設定速度)がコントローラ200により入力される。そして、コントローラ200から移動開始の指示を入力すると、エンコーダ11aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBのX軸方向フィードモータ11の回転方向を含む単位時間当たりのパルス数から移動体13の移動方向を含む移動速度を計算し、計算した移動速度が設定速度になるようにX軸方向フィードモータ11を駆動制御する。
【0019】
移動体13には、スピンドルモータ14が組み付けられている。スピンドルモータ14の出力回転軸の先端には、ガラス管Gの一端(上端)を固定するための固定具15が組み付けられている。したがって、固定具15にガラス管Gを固定した状態で、スピンドルモータ14を回転させることにより、ガラス管Gは軸線周りに回転する。
【0020】
スピンドルモータ14内には、エンコーダ14aが組み込まれている。エンコーダ14aは、X軸方向フィードモータ11の場合と同様に、スピンドルモータ14の回転方向の情報を含むパルス列信号ΦA,ΦBを出力する。また、エンコーダ14aは、基準回転位置ごとにインデックス信号Indexも出力する。エンコーダ14aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBは、スピンドルモータ制御回路112に入力される。スピンドルモータ制御回路112は、コントローラ200からの指示により作動開始し、エンコーダ14aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBの単位時間当たりのパルス数からスピンドルモータ14の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ200によって設定された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ14の回転を制御する。
【0021】
エンコーダ14aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦB及びインデックス信号Indexは、回転角度検出回路113に入力される。回転角度検出回路113は、インデックス信号Indexの到来によりカウント値を「0」にリセットし、パルス列信号ΦA又はΦBの到来ごとにカウント値をアップさせて、カウント値をスピンドルモータ14の回転角度を表す信号としてコントローラ200に出力する。
【0022】
支持装置20の水平部20aの図示右端部には、Z軸方向フィードモータ21が組み付けられている。Z軸方向フィードモータ21は、その出力回転軸をZ軸方向に延設されたスクリューロッド22の右端に連結させて、回転によりスクリューロッド22をZ軸線周りに回転させる。スクリューロッド22の左端は、水平部20aの上面にて突出させた突出部に回転可能に支持されている。スクリューロッド22には、テーブル23がナットを介して螺合されている。テーブル23は、スクリューロッド22に対する回転が規制され、スクリューロッド22の回転によりスクリューロッド22の軸線方向に移動する。すなわち、テーブル23は、スクリューロッド22との組み合わせによりねじ送り機構を構成している。
【0023】
Z軸方向フィードモータ21内には、エンコーダ21aが組み込まれている。このエンコーダ21aも、X軸方向フィードモータ11と同様なパルス列信号ΦA,ΦBを出力する。エンコーダ21aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBは、移動位置検出回路115に入力される。移動位置検出回路115は、コントローラ200からの指示により作動開始し、作動開始後、エンコーダ21aから出力されるパルス列信号ΦA,ΦBが入力されなくなると移動限界位置を意味する信号をZ軸方向フィードモータ制御回路114に出力し、カウント値を「0」として、以後、エンコーダ21aが出力するパルス列信号ΦA,ΦBのパルス数をZ軸方向フィードモータ21の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンする。そして積算したカウント数からテーブル23の移動位置を計算してコントローラ200及びZ軸方向フィードモータ制御回路114に出力する。このカウント値が「0」となる移動限界位置が、テーブル23の移動位置を制御する原点位置(本実施形態では右側の移動限界位置)となる。
【0024】
Z軸方向フィードモータ制御回路114は、コントローラ200からの指示により作動開始し、コントローラ200から移動位置の設定値を入力すると、移動位置検出回路115から所定時間間隔で出力される移動位置を入力し、入力した移動位置がコントローラ200から入力した設定値になるまでZ軸方向フィードモータ21を駆動してテーブル23を移動させる。なお、作動開始直後において移動位置の設定値が入力されると、Z軸方向フィードモータ21を駆動してテーブル23を移動限界位置方向に移動させ、移動位置検出回路115から移動限界位置を表す信号を入力するとX軸方向フィードモータ21への駆動信号の出力を停止する。その後、移動位置検出回路115から出力される移動位置がコントローラ200から入力した移動位置の設定値になるまでZ軸方向フィードモータ21を駆動してテーブル23を移動させる。
【0025】
分光ユニット100Aは、図2Aに詳細に示すように、広波長帯域のレーザ光を出射するスーパー・ルミネセント・ダイオード光源30(以下、SLD(Super Luminescent Diode)光源30という)を有する。SLD光源30から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ31で平行光に変換され、リレーレンズ32,33で断面径が小さくされて、偏光ビームスプリッタ34に導かれる。偏光ビームスプリッタ34は、リレーレンズ32,33からの入射光をそのまま透過し、光ファイバー40を介して光ヘッド100Bに導く。SLD光源30には、レーザ駆動回路116が接続されている。レーザ駆動回路116は、コントローラ200に指示されて、SLD光源30を駆動制御する。なお、SLD光源30の光量は実際にはフィードバック制御されるが、このフィードバック制御は図示省略されている。
【0026】
また、光ヘッド100Bから光ファイバー40を介して偏光ビームスプリッタ34に導かれたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ34で反射されて、反射型の回折格子35に導かれて一連のスペクトルに分散されてラインセンサ36に導かれる。ラインセンサ36は、CCD、CMOS等で形成されている。なお、前記反射型の回折格子35に代えて透光型の回折格子を用い、偏光ビームスプリッタ34からの反射光を透光型の回折格子を介してラインセンサ36に導くようにしてもよい。
【0027】
ラインセンサ36には、データ処理装置117が接続されている。データ処理装置117は、コントローラ200の指示により、設定された頻度でラインセンサ36の各画素が出力する信号を信号の大きさを表すディジタル形式の大きさデータにA/D変換して、A/D変換した大きさデータを画素位置に対応させて記憶する。そして、データ処理装置117は、この記憶した大きさデータ(すなわち、受光曲線)を処理することでガラス管Gの厚さを計算し、計算した厚さを表す厚さデータをコントローラ200に出力することを繰り返す。
【0028】
このガラス管Gの厚さの計算について簡単に説明しておく。後述する対物レンズ57によってガラス管Gに照射されたレーザ光は、ガラス管Gの表面と裏面との両面で反射して、前記両面での反射光は互いに干渉する。この場合、SLD光源30から出射されてガラス管Gに導かれたレーザ光は広波長帯域のレーザ光(すなわち波長の異なる成分を含むレーザ光)であり、前記干渉は同じ波長のレーザ光同士でのみ行われて、この干渉による波長ごとのレーザ光の強度はガラス管Gの厚さに依存する。なお、対物レンズ57の開口数(NA)は小さく、具体的にはX軸方向及びY軸方向とも0.2以下(例えば、0.05)であり、焦点深度はガラス管Gの厚さ以上である。よって、ガラス管Gの表面と裏面とでのレーザ光の反射光は、元の光路を戻って干渉する。
【0029】
一方、回折格子35は、入射するレーザ光の波長によって回折の仕方を異ならせるので、ラインセンサ36の受光位置とレーザ光の波長とは対応関係にある。すなわち、回折格子35は、前記ガラス管Gの厚さに依存する干渉によって強度の大きさが異なるレーザ光の反射角を異ならせることになるので、ラインセンサ36の位置と受光強度との関係を表す受光曲線は、ガラス管Gの厚さに関係する。その結果、ガラス管Gの厚さが異なれば、干渉の結果としての波長ごとの光強度が異なるため、ラインセンサ36による受光曲線も異なり、受光曲線を解析することでガラス管Gの厚さを計算することができる。したがって、データ処理装置117からコントローラ200には、ガラス管Gの厚さを表す厚さデータが供給される。なお、受光曲線からガラス管Gの厚さを計算できない場合には、データ処理装置117からコントローラ200に「測定不可」を表すデータが供給される。
【0030】
光ヘッド100Bは、テーブル23に固定されており、図1では平面内に全ての部品を網羅した概念図により示されている。図2B及び図2Cは、この光ヘッド100Bを詳細に示しており、図2Bは光ヘッド100Bをガラス管Gの中心軸方向(X軸方向)から見た図であり、図2Cは図2Bの光ヘッド100Bを図2BのC−C線に沿って(Z軸方向から)見た図である。なお、図2Bにおいては、分かり易くするために、見た方向に重なっている部品に関しては適宜省略されている。具体的には、図2Bでは、ビームスプリッタ51及びビームスプリッタ51で反射したレーザ光の光路上にある部品が省略されている。
【0031】
光ヘッド100Bは、光ファイバー40によって伝播されたレーザ光を入射するビームスプリッタ51を有する。ビームスプリッタ51は、入射したレーザ光を透過してガルバノミラー52に導く。ガルバノミラー52は、モータ53によってY軸線に平行な直線周りに回転駆動される。この場合のY軸は後述するガルバノミラー54による反射後の座標軸で見た場合であり、以降、ガルバノミラー52の回転駆動を説明する場合のY軸も同様である。ガルバノミラー52で反射されたレーザ光はガルバノミラー54に導かれる。ガルバノミラー54は、モータ55によってX軸線に平行な直線周りに回転駆動される。ガルバノミラー54に導かれたレーザ光はガルバノミラー54で反射され、1/4波長板56及び対物レンズ57を介してガラス管Gの表面に照射される。なお、対物レンズ57に入射するレーザ光はリレーレンズ32,33で断面径が小さくされて光ファイバー40を介して導かれたものであるので、その光束径は小さい。
【0032】
対物レンズ57は、Y軸方向とX軸方向とで焦点距離が異なるトロイダルレンズで構成されている。なお、この場合のY軸方向の焦点距離とは、光軸上(Z軸方向)における対物レンズ57の中心位置から、光軸に平行に入射したレーザ光がY軸方向において集光する位置までの距離である。また、X軸方向の焦点距離とは、光軸上における対物レンズ57の中心位置から、光軸に平行に入射したレーザ光がX軸方向において集光する位置までの距離である。図3(a)に示すように、Y軸方向の焦点距離Fyは、X軸周りの角度を変化させるガルバノミラー54の反射点から対物レンズ57までの光学的距離cに等しく、すなわちFy=cに設定されている。なお、光学的距離とは、レーザ光の進行する合計距離である。これにより、対物レンズ57に入射したレーザ光は、ガルバノミラー54がX軸周りに回転しても、Y−Z平面で見ると、Z軸方向に平行なレーザ光となる。また、図3(b)に示すように、X軸方向の焦点距離Fxは、Y軸周りの角度を変化させるガルバノミラー52の反射点から対物レンズ57までの光学的距離をaとし、対物レンズ57からガラス管Gの表面までの光学的距離をbとすると、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係を満たすように設定されている。この関係は、Y軸周りの角度を変化させるガルバノミラー52の反射点を物点としたとき、ガラス管Gの表面が像点となる関係である。これにより、対物レンズ57に入射したレーザ光は、ガルバノミラー52がY軸周りに回転しても、X−Z平面で見ると、対物レンズ57の光軸がガラス管Gの表面と交差する一点に向かうレーザ光となる。また、前述のように、対物レンズ57の開口数(NA)はX軸方向及びY軸方向ともに0.2以下(例えば、0.05)の小さな値に設定され、対物レンズ57の焦点深度が長くかつ焦点距離も長い。なお、図3においては、1/4波長板56は省略されている。
【0033】
レーザ光のガラス管Gからの反射光は、ガラス管Gに照射されたレーザ光の光路と略等しい光路で対物レンズ57及び1/4波長板56を介してガルバノミラー54に入射し、ガルバノミラー54で反射されてガルバノミラー52に導かれる。ガルバノミラー52に導かれたレーザ光はガルバノミラー52で反射されて、ビームスプリッタ51に導かれる。ガルバノミラー52で反射されてビームスプリッタ51に入射したレーザ光の一部はビームスプリッタ51を透過して、光ファイバー40内に導かれ、光ファイバー40を介して分光ユニット100Aに導かれて厚さ測定に用いられる。また、ガルバノミラー52で反射されてビームスプリッタ51に入射したレーザ光の一部は、ビームスプリッタ51で反射されてサーボ制御に用いられる。
【0034】
ビームスプリッタ51で反射されたレーザ光は、リレーレンズ58,59によって断面径が大きくされて適当な直径に設定され、4分割フォトディテクタ60で受光される。4分割フォトディテクタ60は、図4A及び図4Bに示すように、受光領域がX−Y平面において上下左右に4分割された4つの受光素子を備え、その受光領域A,B,C,Dに入射したレーザ光の強度に比例した検出信号を受光信号a,b,c,dとしてそれぞれ出力する。
【0035】
図4Aは、ガラス管GのY軸方向の変位と、光ヘッド100Bの4分割フォトディテクタ60における反射光の受光状態とを示した図である。なお、ガラス管GはX軸方向から見た図であり、4分割フォトディテクタ60はZ軸方向から見た図である。ガラス管GがY軸方向の中立位置にあれば、図4A(b)に示すように、レーザ光はガラス管Gの表面のY軸方向中心位置に照射され、4分割フォトディテクタ60上に形成される光スポットは4分割フォトディテクタ60の4分割領域の少なくとも図示左右方向中心に位置する。そして、少なくとも受光信号a,bの和(a+b)と受光信号c,dの和(c+d)とは等しくなる。一方、ガラス管Gが前記中立位置からY軸方向にずれると、図3A4(a)(c)に示すように、レーザ光はガラス管Gの表面のY軸方向中心位置からY軸方向にずれた位置に称される。そして、4分割フォトディテクタ60上に形成される光スポットは、図4A(a)(c)に示すように、中心位置から図示左右方向にずれて、受光信号a,bの和(a+b)が受光信号c,dの和(c+d)より大きくなるか、受光信号c,dの和(c+d)が受光信号a,bの和(a+b)より大きくなる。
【0036】
図4Bは、ガラス管GのY軸周りの傾きの変化と、光ヘッド100Bの4分割フォトディテクタ60における反射光の受光状態を示した図である。なお、ガラス管GはY軸方向から見た図であり、4分割フォトディテクタ60はZ軸方向から見た図である。ガラス管GがY軸周りに中立位置にあれば、すなわちガラス管GがX軸方向に平行であれば、図4B(b)に示すように、レーザ光はガラス管Gの延設方向に垂直に入射するとともに垂直に反射される。そして、4分割フォトディテクタ60上に形成される光スポットは、図4B(b)に示すように、4分割フォトディテクタ60の4分割領域の少なくとも図示上下方向中心に位置し、少なくとも受光信号a,dの和(a+d)と受光信号b,cの和(b+c)とは等しくなる。一方、ガラス管Gが前記中立位置からY軸方向周りに傾くと、図4B(a)(c)に示すように、レーザ光はガラス管Gの延設方向に対して傾いて入射し、かつ反対方向に傾いて反射される。そして、4分割フォトディテクタ60上に形成される光スポットは、図4B(a)(c)に示すように、中心位置から図示上下方向にずれて、受光信号b,cの和(b+c)が受光信号a,dの和(a+d)より大きくなるか、受光信号a,dの和(a+d)が受光信号b,cの和(b+c)より大きくなる。
【0037】
4分割フォトディテクタ60から出力される受光信号a,b,c,dは、Y軸方向エラー信号生成回路118及びY軸周り角度エラー信号生成回路121に入力される。Y軸方向エラー信号生成回路118は、受光信号a,b,c,dを増幅した後、Y軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)を演算によって生成する。このY軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)は、ガラス管Gの測定箇所におけるY軸方向の中立位置からのずれ量を表している(図4A(a)〜(c)参照)。このY軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)は、Y軸方向サーボ回路119に供給される。Y軸方向サーボ回路119は、前記Y軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)が「0」になるようにY軸方向サーボ信号を生成して、Y軸方向ドライブ回路120に出力する。Y軸方向ドライブ回路120は、このY軸方向サーボ信号に基づいてモータ55をサーボ制御して、ガルバノミラー54をX軸周りに回転させる。したがって、Y軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)が「0」になるように、ガルバノミラー54がX軸周りに回転制御される。これにより、レーザ光のガラス管Gに対する照射位置がY軸方向にサーボ制御される。なお、このY軸方向のサーボ制御は、モータ55によりガルバノミラー54がX軸周りに回転駆動されるので、X軸周り角度のサーボ制御と見ることもできる。
【0038】
また、Y軸周り角度エラー信号生成回路121は、受光信号a,b,c,dを増幅した後、Y軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)を演算によって生成する。このY軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)は、ガラス管GのY軸線周りにおける中立位置からのずれ量(ずれ角度)を表している(図4B(a)〜(c)参照)。このY軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)は、Y軸周り角度サーボ回路122に供給される。Y軸周り角度サーボ回路122は、前記Y軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)が「0」になるようにY軸周り角度サーボ信号を生成して、Y軸周り角度ドライブ回路123に出力する。Y軸周り角度ドライブ回路123は、このY軸周り角度サーボ信号に基づいてモータ53をサーボ制御して、ガルバノミラー52をY軸周りに回転させる。したがって、Y軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)が「0」になるように、ガルバノミラー52がY軸周りに回転制御される。これにより、レーザ光のガラス管Gに対する照射方向がY軸周りにサーボ制御される。このようなY軸方向サーボ制御及びY軸周り角度サーボ制御により、レーザ光がガラス管Gの中心軸に垂直に照射されるようになる。
【0039】
ここで、前述したように、対物レンズ57をトロイダルレンズで構成したことによるサーボ制御の特殊性について説明しておく。対物レンズ57のY軸方向の焦点距離Fyは、前述のように、X軸周りの角度を変化させるガルバノミラー54の反射点から対物レンズ57までの光学的距離cに等しく、すなわちFy=cに設定されており対物レンズ57に入射したレーザ光は、ガルバノミラー54がX軸周りに回転しても、Y−Z平面で見ると、Z軸方向に平行なレーザ光となる(図3(a)参照)。したがって、ガラス管Gの表面位置がZ軸方向に多少変化しても、レーザ光の光軸位置をY軸方向に変化させてレーザ光の光軸位置を基準に見たときのガラス管GのY軸方向位置に対するレーザ光の反射角度の関係は変化しないため、ガラス管GのY軸方向位置と後述する4分割フォトディテクタ60での受光位置の関係はほとんど変わらない。これにより、Y軸方向エラー信号が「0」になるようにレーザ光の光軸位置をY軸方向に変化させる量は、ガラス管Gの表面位置がZ軸方向に多少変化してもほとんど変わらず、安定したY軸方向サーボ制御(X軸周り角度サーボ制御)を行うことができる。
【0040】
また、前述したように、X軸方向の焦点距離Fxは、Y軸周りの角度を変化させるガルバノミラー52の反射点から対物レンズ57までの光学的距離をaとし、対物レンズ57からガラス管Gの表面までの光学的距離をbとすると、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係を満たすように設定されているため、Y軸周りの角度を変化させるガルバノミラー52の反射点を物点としたとき、ガラス管Gの表面が像点となる(図3(b)参照)。したがって、X−Z平面で見ると、対物レンズ57の光軸がガラス管Gの表面と交差する一点に向かうレーザ光となる。したがって、後述するY軸周り角度サーボ制御のためにガルバノミラー52をY軸周りに回転させても、レーザ光はガラス管Gの中心軸に垂直に照射されるとともに、X軸方向におけるレーザ光のガラス管Gへの照射位置は変化しないので、高精度で設定した位置の厚さを測定することができるとともに、ガラス管GのZ軸周りの傾きの度合によらず、ガラス管Gの表面を平面とみなしてY軸周り角度サーボ制御を精度よく行うことができるので、安定したサーボ制御を行うことができる。
【0041】
この場合、対物レンズ57の開口数(NA)は小さく、前述のように、具体的にはX軸方向及びY軸方向とも0.2以下に設定するとよい。これにより、焦点深度が長くなるとともに、レーザ光の焦点距離も長くなり、レーザ光の光束径の変化を小さくして、光束径が変化しないと見做すことができるようになる。このようにすることで、前述のように、ガラス管Gの表面位置がZ軸方向に多少変化しても安定したY軸方向サーボ制御(X軸周り角度サーボ制御)を行うことができ、かつY軸周り角度サーボ制御を精度よく行うことができる。この開口数(NA)が0.2以下であれば、ほぼ満足する結果を実験により得ているが、好ましくは0.05程度とするとよい。なお、図3においては、1/4波長板56は省略されている。
【0042】
また、この透光性管状物体の厚さ測定装置は、コントローラ200、入力装置202及び表示装置204も備えている。コントローラ200は、CPU、ROM、RAM、タイマ及びハードディスクなどの大容量の不揮発性メモリを有するコンピュータ装置によって構成され、図4A及び図4Bに示す厚さ測定プログラムの実行により、各種回路を制御してガラス管Gの厚さを測定する。入力装置202は、キーボードからなり、作業者が種々の情報を入力するとともに、コントローラ200の作動に対して指示をする。表示装置204は、コントローラ200によって制御された各種情報を表示する。
【0043】
次に、上記のように構成した厚さ測定装置の動作を説明する。まず、作業者は、ガラス管Gの上端部を固定具15に固定し、入力装置202を操作してガラス管Gの長さを入力する。そして、作業者は、入力装置202を操作することにより、コントローラ200に図5A及び図5Bの厚さ測定プログラムを実行させる。
【0044】
コントローラ200は、この厚さ測定プログラムの実行を図5AのステップS100にて開始して、ステップS102にて変数nを「0」に設定する。この変数nは、データ処理装置117からの厚さデータ、回転角度検出回路113からの回転角度データ、及び移動位置検出回路111からのX軸方向位置データの取込みタイミングを規定するものである。
【0045】
前記ステップS102の処理後、コントローラ200は、ステップS104にて、X軸方向フィードモータ制御回路110に対してガラス管Gを測定開始位置まで移動するように指示する。具体的には、レーザ光のX軸方向中心位置がガラス管Gの測定開始点に照射されるようなX軸方向位置を測定開始位置としてX軸方向フィードモータ制御回路110に出力する。測定開始位置は、以下のA,B,CからA−B+Cの計算を行うことで求められる。なお、A,Cは予めコントローラ200に記憶されている。
A:移動体13のX軸方向位置が原点位置にある状態(すなわち移動体13の上側移動限界位置にある状態)で、固定具15にガラス管Gを固定したときに固定具15内でガラス管Gの上側の先端位置からレーザ光のX軸方向中心位置までのX軸方向距離
B:入力装置202を用いて入力されたガラス管Gの長さ(B<A)
C:ガラス管Gにおける下側の先端位置から測定開始点までの距離
【0046】
X軸方向フィードモータ制御回路110は、X軸方向フィードモータ11を回転させることにより、スクリューロッド12を軸線周りに回転させて移動体13をX軸方向に移動させ、ガラス管GをX軸線方向に測定開始位置に向かって移動させる。このガラス管GのX軸方向への移動中、X軸方向フィードモータ制御回路110は、移動位置検出回路111から移動体13(すなわちガラス管G)のX軸方向位置を表すX軸方向位置データを入力している。そして、入力したX軸方向位置データがコントローラ200から入力された測定開始位置を示すと、X軸方向フィードモータ制御回路110は、X軸方向フィードモータ11の回転を停止させて、移動体13及びガラス管GのX軸方向への移動を停止させる。
【0047】
一方、コントローラ200も、前記ステップS104の処理後、ステップS106にて、移動位置検出回路111からX軸方向位置データを入力して、入力したX軸方向位置データが測定開始位置以上になったかを判定する。X軸方向位置データが測定開始位置以上にならなければ、コントローラ200はステップS106にて「No」と判定し続けて、ステップS106の処理を繰り返し実行する。そして、X軸方向位置データが測定開始位置以上になった時点で、コントローラ200は、ステップS106にて「Yes」と判定して、ステップS108に進む。
【0048】
ステップS108においては、コントローラ200は、Z軸方向フィードモータ制御回路114に対して光ヘッド100Bを測定用設定位置まで移動するように指示する。具体的には、ガラス管Gの外周面上にレーザ光が集光されるようなZ軸方向位置を測定用設定位置としてZ軸方向フィードモータ制御回路114に出力する。Z軸方向フィードモータ制御回路114は、Z軸方向フィードモータ21を回転させることにより、スクリューロッド22を軸線周りに回転させてテーブル23をZ軸方向に移動させ、テーブル23及び光ヘッド100BをZ軸方向に測定用設定位置に向かって移動させる。このテーブル23及び光ヘッド100BのZ軸方向への移動中、Z軸方向フィードモータ制御回路114は、移動位置検出回路115からテーブル23(すなわち光ヘッド100B)のZ軸方向位置を表すZ軸方向位置データを入力している。そして、入力したZ軸方向位置データがコントローラ200から入力された測定用設定位置を示すと、Z軸方向フィードモータ制御回路114は、Z軸方向フィードモータ21の回転を停止させて、テーブル23及び光ヘッド100BのZ軸方向への移動を停止させる。
【0049】
一方、コントローラ200も、前記ステップS108の処理後、ステップS110にて、移動位置検出回路115からZ軸方向位置データを入力して、入力したZ軸方向位置データが測定用設定位置以上になったかを判定する。Z軸方向位置データが測定用設定位置以上にならなければ、コントローラ200はステップS110にて「No」と判定し続けて、ステップS110の処理を繰り返し実行する。そして、Z軸方向位置データが測定用設定位置以上になった時点で、コントローラ200は、ステップS110にて「Yes」と判定して、ステップS112に進む。ステップS112においては、コントローラ200は、レーザ駆動回路116を作動させて、SLD光源30を駆動することにより測定用及びサーボ用を兼用した広波長帯域のレーザ光を出射させる。この場合、レーザ光の強度に関するフィードバック制御が省略されている。
【0050】
SLD光源30から出射された測定用レーザ光は、コリメートレンズ31で平行光に変換され、リレーレンズ32,33によって断面径が小さくされて、光ファイバー40を伝播して、分光ユニット100Aから光ヘッド100Bに導かれる。光ヘッド100Bにおいては、光ファイバー40によって伝播されたレーザ光は、ビームスプリッタ51を介してガルバノミラー52に入射する。ガルバノミラー52は、この入射レーザ光を反射してガルバノミラー54に入射させる。ガルバノミラー54は、入射されたレーザ光を反射して1/4波長板56を介して対物レンズ57に入射させる。対物レンズ57は、入射したレーザ光を集光して、ガラス管Gの表面にレーザ光を照射する。ガラス管Gに照射されたレーザ光の一部は、まずガラス管Gの外周面で反射され、対物レンズ57に入射する。また、ガラス管Gに照射されたレーザ光の一部は、ガラス管Gの肉厚部分に侵入し、ガラス管Gの内周面で反射してガラス管Gの肉厚部を介して対物レンズ57に入射する。したがって、ガラス管Gの外周面で反射したレーザ光と、ガラス管Gの内周面で反射したレーザ光は干渉し合って、対物レンズ57に入射する。したがって、ガラス管Gの厚さにより、波長に応じて強度が異なる干渉レーザ光が対物レンズ57に入射することになる。
【0051】
対物レンズ57に入射したレーザ光は、進行方向が変えられ、ガラス管Gに照射されるレーザ光の光路と略等しい光路で、1/4波長板56を介してガルバノミラー54に導かれて、ガルバノミラー54で反射してガルバノミラー52に入射する。ガルバノミラー52は、入射したレーザ光を反射してビームスプリッタ51に導く。ビームスプリッタ51は、光ファイバー40を介して分光ユニット100Aに測定用レーザ光として導く。分光ユニット100Aにおいては、光ファイバー40によって伝播された測定用レーザ光を、偏光ビームスプリッタ34で反射させて、回折格子35に入射させる。回折格子35は、入射した測定用レーザ光を、波長に応じて反射角を異ならせてラインセンサ36に入射させる。
【0052】
一方、ビームスプリッタ51は、ガルバノミラー52から入射したレーザ光の一部を反射して、リレーレンズ58,59によって断面径を大きくした後、4分割フォトディテクタ60にサーボ用レーザ光として導く。4分割フォトディテクタ60で受光されたサーボ用レーザ光の受光量を表す受光信号a,b,c,dはY軸方向エラー信号生成回路118及びY軸周り角度エラー信号生成回路121に供給される。Y軸方向エラー信号生成回路118は、Y軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)を生成する。Y軸周り角度エラー信号生成回路121は、Y軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)を生成する。
【0053】
前記ステップS112の処理後、コントローラ200は、ステップS114にてY軸方向サーボ回路119に作動開始を指示する。これに応答して、Y軸方向サーボ回路119は、作動を開始して、Y軸方向エラー信号生成回路118から入力したY軸方向エラー信号(a+b)−(c+d)に基づいてY軸方向サーボ信号を作成し、Y軸方向ドライブ回路120を介してモータ55を駆動制御して、ガルバノミラー54のX軸方向に平行な直線周りの回転をサーボ制御する。したがって、4分割フォトディテクタ60に受光されたサーボ用レーザ光の反射光が、受光面の少なくとも左右方向の中央に維持されるようにガルバノミラー54のX軸方向に平行な直線周りの回転角がサーボ制御されることとなり、ガラス管GがY軸方向に変位しても、その変位に応じてガルバノミラー54がX軸方向に平行な直線周りに回転制御され、レーザ光の光軸がガラス管Gの中心軸と交差するように維持される。
【0054】
次に、コントローラ200は、ステップS116にて、Y軸周り角度サーボ回路122に作動開始を指示する。これに応答して、Y軸周り角度サーボ回路122は、作動を開始して、Y軸周り角度エラー信号生成回路121から入力したY軸周り角度エラー信号(a+d)−(b+c)に基づいてY軸周り角度サーボ信号を作成し、Y軸周り角度ドライブ回路123を介してモータ53を駆動制御して、ガルバノミラー52のY軸方向に平行な直線周りの回転をサーボ制御する。したがって、4分割フォトディテクタ60に受光されたサーボ用レーザ光の反射光が、受光面の少なくとも上下方向の中央に維持されるようにガルバノミラー52のY軸方向に平行な直線周りの回転角がサーボ制御されることとなり、ガラス管GがY軸周りに傾いても、その傾き角度に応じてガルバノミラー52がY軸方向に平行な直線周りに回転制御され、レーザ光の光軸がガラス管Gの中心軸と垂直に交差するように維持される。
【0055】
前記ステップS116の処理後、コントローラ200は、ステップS118にて、データ処理装置117に対して作動開始を指示する。これに応答して、データ処理装置117は、設定された頻度でラインセンサ36の各画素が出力する信号の大きさを表す信号を入力して、この入力した信号に基いてガラス管Gの厚さを計算し、計算した厚さを表す厚さデータを予め決められた周期でコントローラ200に出力し始める。
【0056】
次に、コントローラ200は、ステップS120にて、スピンドルモータ制御回路112にガラス管Gの軸線周りの回転開始を指示するとともに、回転速度も指示する。スピンドルモータ制御回路112は、エンコーダ14aからのパルス列信号ΦA,ΦBに基づいて計算したスピンドルモータ14の回転速度を用いて、ガラス管Gが前記指示された回転速度で回転するように、スピンドルモータ14を回転させ始める。これにより、ガラス管Gは、前記指示された回転速度で軸線周りに回転し始める。次に、コントローラ200は、ステップS122にて、回転角度検出回路113に作動開始を指示する。これにより、回転角度検出回路113は、スピンドルモータ14の回転角度(ガラス管Gの軸線周りの回転角度)を表す回転角度データをコントローラ200に出力し始める。
【0057】
前記ステップS122の処理後、コントローラ200は、ステップS124にて、X軸方向フィードモータ制御回路110にガラス管GのX軸方向への移動開始を指示するとともに、移動速度も指示する。X軸方向フィードモータ制御回路110は、エンコーダ11aからのパルス列信号ΦA,ΦBに基づいて計算したX軸方向フィードモータ11の回転速度を用いて、ガラス管Gが前記指示された移動速度でX軸方向(図示下方向)に移動するように、X軸方向フィードモータ11を回転させ始める。これにより、ガラス管Gは、前記指示された移動速度でX軸方向に移動し始める。
【0058】
次に、コントローラ200は、図5BのステップS130にて、タイマによる時間計測を開始させる。そして、コントローラ200は、ステップS132にて計測時間が所定の短時間Tに変数nを乗算した乗算結果nT以上であるかを判定する。いま、変数nは「0」であるので、コントローラ200は、ステップS132にて「Yes」と判定して、ステップS134にてデータ処理装置117からガラス管Gの厚さを表す厚さデータを取込み、この取込んだ厚さデータをメモリに記憶する。次に、コントローラ200は、ステップS136にて回転角度検出回路113から回転角度データを取込み、ステップS138にて移動位置検出回路111からX軸方向位置データを取込む。そして、これらの取込んだ回転角度データ及びX方向位置データを、前記厚さデータと対応付けてメモリに記憶しておく。
【0059】
前記ステップS138の処理後、コントローラ200は、ステップS140にて、前記取込んだX軸方向位置データによって表されたX軸方向位置が測定終了位置以上を示しているか、すなわちガラス管Gの長さから設定される測定終了位置以上にガラス管Gが既に移動されたかを判定する。また、コントローラ200は、ステップS142において、データ処理装置117から「測定不可」を表す信号を入力したかを判定する。X軸方向位置が測定終了位置以上を示しておらず、かつデータ処理装置117からも「測定不可」を表す信号を入力していなければ、コントローラ200は、ステップS140,S142にて共に「No」と判定して、ステップS144にて変数nに「1」を加算して、ステップS132に戻る。そして、計測開始されてからの時間がnT以上になるごとに、コントローラ200は、前述したステップS134〜S144の処理を繰り返し行う。これにより、メモリには、回転角度データによって表されたガラス管Gの軸線周りの角度及びX方向位置データによって表されたガラス管Gの軸線方向位置ごとに、ガラス管Gの厚さを表すデータが記憶されていく。
【0060】
また、前記ステップS132〜S144からなる循環処理中、X軸方向位置が測定終了位置以上を示し、又はデータ処理装置117から「測定不可」を表す信号を入力した場合には、コントローラ200は、ステップS140又はステップS142にて「Yes」と判定してステップS146以降へ進む。
【0061】
コントローラ200は、ステップS146にてスピンドルモータ制御回路112にスピンドルモータ14の作動停止を指示する。これにより、スピンドルモータ制御回路112はスピンドルモータ14の回転を停止させ、ガラス管Gの軸線周りの回転が停止する。次に、コントローラ200は、ステップS148にてX軸方向フィードモータ制御回路110にX軸方向フィードモータ11の作動停止を指示する。これにより、X軸方向フィードモータ制御回路110はX軸方向フィードモータ11の回転を停止させ、ガラス管Gの軸線方向(X軸方向)の移動が停止する。次に、コントローラ200は、ステップS150にてY軸方向サーボ回路119に作動停止を指示し、ステップS152にてY軸周り角度サーボ回路122に作動停止を指示する。これらの処理により、ガルバノミラー54のX軸方向に平行な直線周りの回転角のサーボ制御(Y軸方向サーボ制御)及びガルバノミラー52のY軸方向に平行な軸線周りの回転角のサーボ制御(Y軸周り角度サーボ制御)も停止する。
【0062】
前記ステップS152の処理後、コントローラ200は、ステップS154にてレーザ駆動回路116にSLD光源30の駆動停止を指示する。これにより、SLD光源30によるレーザ光のガラス管Gに対する照射が停止する。次に、コントローラ200は、ステップS156にて回転角度検出回路113の作動停止を指示し、ステップS158にてデータ処理装置117の作動停止を指示する。これにより、回転角度検出回路113が作動停止して角度データがコントローラ200に入力されなくなるとともに、データ処理装置117も作動停止して厚さデータがコントローラ200に入力されなくなる。
【0063】
前記ステップS158の処理後、コントローラ200は、ステップS160にてX軸方向フィードモータ制御回路110に移動体13のX軸方向駆動限界位置への移動を指示し、ステップS162にてZ軸方向フィードモータ制御回路114にテーブル23のZ軸方向駆動限界値への移動を指示する。これらの移動指示により、X軸方向フィードモータ制御回路110は移動体13をX軸方向駆動限界位置まで移動させ、Z軸方向フィードモータ制御回路114がテーブル23をZ軸方向駆動限界値まで移動させる。これにより、ガラス管Gの厚さ測定開始前と同じ状態になるので、作業者は固定具15からガラス管Gを取外し、次に測定したいガラス管Gをセットして前述した厚さ測定をふたたび行うことができる。そして、コントローラ200は、ステップS164にて前述したガラス管Gの厚さの測定結果を表示装置204に表示して、ステップS166にて厚さ測定プログラムの実行を終了する。
【0064】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態に係る透光性管状物体の厚さ測定装置によれば、分光ユニット100AのSLD光源30から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ31で平行光に変換されて、光ファイバー40を介して光ヘッド100Bに導かれる。そして、光ヘッド100Bにおいて、前記導かれたレーザ光が対物レンズ(トロイダルレンズ)57でガラス管Gの表面に集光され、ガラス管Gからの反射光が光ヘッド100B及び光ファイバー40を介して分光ユニット100Aに戻される。分光ユニット100Aにおいては、回折格子35を介してラインセンサ36に導かれ、ラインセンサ36に接続されたデータ処理装置117により、ガラス管Gの厚さが測定される。
【0065】
この場合、4分割フォトディテクタ60は、ビームスプリッタ51を介してガラス管Gからの反射光の一部を分割して入射する。そして、Y軸方向エラー信号生成回路118は、4分割フォトディテクタ60によって検出された受光量を用いて、ガラス管Gに照射されるレーザ光の、ガラス管Gの中心軸に対するY軸線方向のずれ量を、Y軸方向エラー信号として検出する。また、Y軸周り角度エラー信号生成回路121は、4分割フォトディテクタ60によって検出された受光量を用いて、ガラス管Gに照射されるレーザ光の、ガラス管Gの中心軸とY軸線方向とに直交する垂線に対するY軸線周りの回転角のずれ量を、Y軸周り角度エラー信号として検出する。Y軸方向サーボ回路119及びY軸方向ドライブ回路120は、前記検出されたY軸方向エラー信号を用いて、ガラス管Gに照射されるレーザ光がガラス管Gの中心軸に照射されるようにガルバノミラー54を回転駆動するモータ55をサーボ制御する。また、Y軸周り角度サーボ回路122及びY軸周り角度ドライブ回路123は、前記検出されたY軸周り角度エラー信号を用いて、ガラス管Gに照射されるレーザ光がガラス管Gの中心軸に垂直に照射されるようにガルバノミラー52を回転駆動するモータ53をサーボ制御する。これにより、ガラス管Gの中心軸が設定された位置からずれている場合でも、レーザ光の光軸を常にガラス管Gの中心軸と垂直に交差させることができる。その結果、上記実施形態によれば、短時間でガラス管Gの全域の厚さを的確に測定することができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、対物レンズ57のX軸線方向の焦点距離Fxと、Y軸線周りに回転する回転光学部品であるガルバノミラー52から対物レンズ57までの光学的距離aと、対物レンズ57からガラス管Gの表面までの光学的距離bとの関係が、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係になるように、対物レンズ56とガルバノミラー52とが配置されている。すなわち、Y軸周りの角度を変化させるガルバノミラー52の反射点を物点としたとき、ガラス管Gの表面が像点となる。これにより、Y軸線周り角度のサーボ制御を行っても、X軸線方向におけるレーザ光のガラス管Gへの照射位置を変化させないように1点に固定することができるので、精度よく設定された位置の測定結果を得ることができる。また、ガラス管GのZ軸線周りの傾きの度合によりサーボが不安定となることがない。
【0067】
また、上記実施形態においては、対物レンズ57のY軸線方向の焦点距離Fyが、X軸線周りに回転する回転光学部品であるガルバノミラー54から対物レンズ57までの光学的距離cに等しくなるように、対物レンズ57及びガルバノミラー54を配置した。これにより、X軸線周りのサーボ制御を行っても、レーザ光の光軸は常にZ軸線方向に平行になるので、ガラス管Gが回転しながらX軸方向に移動することで、ガラス管Gの表面位置がZ軸線方向に多少変化しても、ガラス管GのY軸線方向位置に対する反射光の受光位置の関係はほとんど変化なく、安定したX軸線周りのサーボ制御を行うことができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0069】
上記実施形態においては、トロイダルレンズで構成した対物レンズ57のY軸方向の焦点距離Fyをガルバノミラー54の反射点から対物レンズ57までの光学的距離cに等しくして、ガルバノミラー54が回転しても、対物レンズ57に入射するレーザ光はY−Z平面で見てZ軸方向に平行なレーザとなるようにした。しかし、対物レンズ57のY軸方向の焦点距離Fyと前記光学的距離cとが近似していれば、必ずしも前記焦点距離Fyと光学的距離cとが一致していなくてもよい、すなわちガルバノミラー54が回転したときガラス管Gの表面に入射するレーザ光がZ軸方向に常に平行でなくてZ軸方向から僅かにずれてもよい。この場合は、前述のようにガラス管Gの表面の位置がZ軸方向に多少変化しても、変化の度合いが小さければ、Y軸方向のサーボ制御にはほとんど影響しない。
【0070】
上記実施形態では、2つのガルバノミラー52,54を駆動することでY軸方向サーボとY軸周り角度サーボ制御を行った。しかし、これに代えて、ガルバノミラー54の駆動によるY軸方向サーボ制御を、光ヘッド100BをY軸方向に変位させるアクチュエータを用いたサーボ制御に変更してもよい。この場合、図6に示すように、光ヘッド100Bをテーブル23にY軸方向に変位可能に組み付け、テーブル23にリニアアクチュエータ25(例えば、圧電アクチュエータで構成したリニアアクチュエータ)を設けて、リニアアクチュエータ25により光ヘッド100BをY軸方向に変位させるようにすればよい。なお、この場合、リニアアクチュエータ25をY軸方向ドライブ回路120により制御するようにし、ガルバノミラー54及びモータ55を省略する。この場合には、ガラス管Gに照射されるレーザ光の光軸は常にZ軸方向に平行となるので、前述のように、ガラス管Gが回転しながらX軸方向に移動することで、ガラス管Gの表面位置がZ軸線方向に多少変化しても、ガラス管GのY軸線方向位置に対する反射光の受光位置の関係はほとんど変化なく、安定したX軸線周りのサーボ制御を行うことができる。
【0071】
また、上記実施形態では、レーザ光の光軸位置又は光軸方向の変化をガルバノミラー52,54を駆動することにより行ったが、レーザ光の光軸位置又は光軸方向を変化できれば、どのようなミラーを用いてもよい。例えば、マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム・ミラー(MEMSミラー)でもよいし、アクチュエータによって反射面の角度を変化させることができる立上げミラーでもよいし、ポリゴンミラーでもよい。また、ミラーでなくても、AOD(音響光学偏向器)又はEOD(電気光学偏光器)によってレーザ光の光軸位置を変化させてもよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、広波長帯域のレーザ光をガラス管Gに照射し、ガラス管Gからの反射光を回折格子で分光したときの受光曲線からガラス管Gの厚さを求める方法を採用した。しかし、レーザ光をガラス管Gの中心軸に垂直に照射したときに生じる反射光を用いてガラス管Gの厚さを計算することができれば、他のどのような方法を採用することともできる。例えば、レーザ光の波長を高速で変化させながらガラス管Gに照射し、レーザ光の波長に対するガラス管Gからの反射光の光強度を検出し、この波長と光強度の関係からガラス管Gの厚さを計算する方法を採用してもよい。
【0073】
また、低コヒーレント性で光路長が同一になったときにのみ干渉するレーザ光をビームスプリッタで分割し、一方をガラス管Gに照射して反射させ、他方を参照ミラーで反射させ、参照ミラーを駆動して双方が干渉して強度が大きくなる参照ミラーの2つの位置を検出することで、ガラス管Gの厚さを検出する方法を採用してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ガラス管Gを回転させながらX軸方向へ移動させ、ガラス管Gの全域の厚さを測定したが、中心軸方向の1ラインの測定のみでよければ、回転を伴わないで、ガラス管Gの厚さを測定するよういしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ガラス管GをX軸方向へ移動させたが、ガラス管Gを固定して光ヘッド100BをX軸方向に移動させるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、Z軸方向の移動機構を設けたが、Z軸方向の移動機構をなくし、X軸方向の駆動限界位置をさらに上側にしてガラス管Gをセットできるようにしてもよい。
【0077】
さらに、上記実施形態及び変形例では、レーザ光の照射及び入射のために、分光ユニット100Aと光ヘッド100Bの分割した測定ヘッドを用いるようにした。これによれば、テーブル23に配置させる光ヘッド100Bを小型化することができるが、この小型化の問題がなければ、分光ユニット100Aと光ヘッド100Bと一体的に構成して、テーブル23上に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…ワーク駆動装置、11…X軸方向フィードモータ、12,22…スクリューロッド、13…移動体、14…スピンドルモータ、20…支持装置、21…Z軸方向フィードモータ、23…テーブル、25…リニアアクチュエータ、30…SLD光源、34…偏光ビームスプリッタ、35…回折格子、36…ラインセンサ、40…光ファイバー、54,56…ガルバノミラー、57…対物レンズ、60…4分割フォトディテクタ、100A…分光ユニット、100B…光ヘッド、112…スピンドルモータ制御回路、114…Z軸方向フィードモータ制御回路、116…レーザ駆動回路、117…データ処理装置、118…Y軸方向エラー信号生成回路、119…Y軸方向サーボ回路、121…Y軸周り角度エラー信号生成回路、122…Y軸周り角度サーボ回路、200…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を所定の第1軸線方向に延設させて透光性管状物体を支持する透光性管状物体支持装置と、
前記第1軸線方向に垂直な第2軸線方向からレーザ光を透光性管状物体に照射するレーザ光照射手段と、
透光性管状物体の外周面で反射する前記レーザ光の反射光と、透光性管状物体の内周面で反射する前記レーザ光の反射光とを受光する受光手段と、
前記受光手段で受光した反射光の受光状態に対応する信号から、前記レーザ光が照射された位置における透光性管状物体の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記レーザ光照射手段によって照射されるレーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を、前記第1軸線方向に移動させるレーザ光照射位置移動手段とを備えた透光性管状物体の厚さ測定装置において、
透光性管状物体に照射されるレーザ光の位置を前記第1軸線方向及び前記第2軸線方向の両方向に互いに直交する第3軸線方向に変更する第3軸線方向位置変更手段と、
透光性管状物体に照射されるレーザ光の透光性管状物体の中心軸に対する前記第3軸線周りの角度を変更する第3軸線周り角度変更手段と、
透光性管状物体からの反射光の一部を分割して入射して、透光性管状物体に対するレーザ光の照射方向の、透光性管状物体の中心軸に対する前記第3軸線方向位置のずれ量を検出する第3軸線方向位置ずれ量検出手段と、
透光性管状物体からの反射光の一部を分割して入射して、透光性管状物体に対するレーザ光の照射方向の、透光性管状物体の中心軸の前記第3軸線周りの垂線に対する前記第3軸線周り角度のずれ量を検出する第3軸線周り角度ずれ量検出手段と、
前記第3軸線方向位置ずれ量検出手段によって検出された前記第3軸線方向位置のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が前記透光性管状物体の中心軸位置に一致するように前記第3軸線方向位置変更手段をサーボ制御する第3軸線方向位置サーボ制御手段と、
前記第3軸線周り角度ずれ量検出手段によって検出された前記第3軸線周り角度のずれ量を用いて、透光性管状物体に照射されるレーザ光の光軸が前記透光性管状物体の中心軸に垂直になるように前記第3軸線周り角度変更手段をサーボ制御する第3軸線周り角度サーボ制御手段とを設け、
前記レーザ光照射手段は、レーザ光を集光する対物レンズを含み、前記対物レンズの前記第1軸線方向の焦点距離Fxと、前記第3軸線周り角度変更手段から前記対物レンズまでの光学的距離aと、前記対物レンズから前記透光性管状物体の表面までの光学的距離bとの関係が、(1/a)+(1/b)=1/Fxの関係になるように、前記対物レンズと前記第3軸線周り角度変更手段を配置したことを特徴とする透光性管状物体の厚さ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載した透光性管状物体の厚さ測定装置において、
前記第3軸線方向位置変更手段を、前記透光性管状物体に対するレーザ光の照射経路に介装されて、前記第1軸線周りに回転して前記レーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を前記第3軸線方向に変更する回転光学部品で構成した透光性管状物体の厚さ測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載した透光性管状物体の厚さ測定装置において、
前記対物レンズの前記第3軸線方向の焦点距離Fyが、前記第1軸線周りに回転する回転光学部品から前記対物レンズまでの光学的距離cに等しくなるように、前記回転光学部品を配置したことを特徴とする透光性管状物体の厚さ測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載した透光性管状物体の厚さ測定装置において、
前記第3軸線方向位置変更手段を、前記レーザ光照射手段を前記第3軸線方向に移動して、前記レーザ光の透光性管状物体に対する照射位置を前記第3軸線方向に変更する第3軸線方向アクチュエータで構成した透光性管状物体の厚さ測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載した透光性管状物体の厚さ測定装置において、
前記第3軸線周り角度変更手段を、前記透光性管状物体に対するレーザ光の照射経路に介装されて、前記第3軸線周りに回転する回転光学部品で構成した透光性管状物体の厚さ測定装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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