説明

透明固形石鹸組成物

【課題】洗浄後のしっとり感、透明性および泡立ちが良好であり、保存条件下においては、白化しにくく良好な透明性を維持でき、乾燥による石鹸量の減量も少なく、使用条件下においては、白濁しにくく良好な透明性を維持でき、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化に起因する石鹸量の減量も少ない固形石鹸組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の透明固形石鹸組成は、脂肪酸石鹸(A)と、透明化剤として糖類(B)と、白濁防止剤としてグルコピラノシルグリセロール(C)と、水(D)と、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明固形石鹸組成物に関する。より詳しくは、洗浄後のしっとり感、透明性および泡立ちが良好であり、保存条件下においては、白化しにくく良好な透明性を維持でき、乾燥による石鹸量の減量も少なく、使用条件下においては、白濁しにくく良好な透明性を維持でき、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化に起因する石鹸量の減量も少ない、グルコピラノシルグリセリールを含む透明固形石鹸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸アルカリ塩と、水と、透明化剤としてグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールおよび/または白糖、ソルビット等の糖類とを含む固形石鹸組成物が知られている。該石鹸組成物は、主に、脂肪酸アルカリ塩に、水や透明化剤成分を添加し、攪拌しながら加熱して成分を溶解・分散させて石鹸素地を調製する工程、調製された石鹸素地を所定の枠型に流し込んで冷却固化、枠抜き、所望の形状に切断する工程を経て製造されている(枠練り法)。また、この石鹸組成物は、透明性が高いために透明固形石鹸組成物と称される(以下、便宜上「透明固形石鹸組成物」を単に「石鹸組成物」と称する場合もある)。
【0003】
一般に市販されている透明固形石鹸組成物は、製造直後から出荷時点までにおいては、石鹸組成物100重量%あたり、15〜27重量%程度の水分を含む。石鹸組成物の水分含有量が、この範囲にある場合、透明化剤である糖類が水分中に溶解しているために、石鹸組成物は良好な透明性を維持している。
【0004】
しかしながら、長期間の保存等によって、石鹸組成物中の水分量は徐々に減少し、透明化剤である糖類が再結晶化してしまうことがある。この糖類の再結晶化によって、石鹸組成物表面が白化して、透明性が悪化してしまう問題があった。さらには、この水分量が減少し続けると、水分量の減少に伴う糖類の再結晶化が亢進するために、一層、透明性が悪化するとともに、場合によっては、石鹸組成物に割れなどの破損が生じることもある。
【0005】
一方で、石鹸組成物は、使用条件下において(高湿条件下に曝されると)、吸湿してしまうために、白濁が発生して、石鹸組成物の透明性が悪化することがある。さらには、この吸湿によって、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化も発生することがある。特に、枠練り法で製造された場合、製造過程において、石鹸組成物は高湿条件に曝されるために、これらの問題は一層発生し易くなる。
【0006】
このように、従来の透明石鹸組成物は、保存条件下での透明性の維持、使用条件下における透明性の維持および外観変化の低減という点で改善の余地があった。
また、このような問題点を解決すべく、特許文献1には、脂肪酸ナトリウム/カリウムの混合塩、特定の両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、グリセリンおよびグリセリン誘導体を含有する透明固形石鹸組成物が開示されている。この透明固形石鹸組成物は、保存条件下における透明性の維持という点では改善できるが、水への溶融速度が速すぎるため、使用条件下において溶け崩れ等の著しい外観変化が生じ、さらには、泡立ち性が悪い等の、いわゆる使用感の低下といった石鹸組成物としての基本的特性も悪化してしまう。
【0007】
また、通常の透明石鹸組成物に含まれる多価アルコール、糖類の含有量は、それぞれ、20〜35量%、10〜30重量%であるが、保存条件下における透明性の維持(白化の発生の低減)という課題を解決するために、石鹸組成物中の、糖類の含有量に対して、多価アルコールの含有量の比率を大きくすることが知られている。しかしながら、このような石鹸組成物は、保存条件下における透明性を維持するものの、多価アルコールの含有量が著しく大きいために、使用条件下において、白濁の発生による透明性の低下、べたつき、発汗、溶け崩れ等といった著しい外観変化の発生、泡立ちの悪化といった問題点を招来してしまう。
【0008】
透明石鹸組成物に、牛脂、馬油、ヤシ油、ヒマシ油、オリ−ブ油、パーム油などの油分を含ませて、保存条件下や使用条件下における石鹸組成物の透明性をある程度維持できることが知られている。しかしながら、油分の存在に起因して、たとえば泡立ちなどの、石鹸組成物としての基本的特性が損なわれてしまう。すなわち、このような透明石鹸組成物は、保存条件下や使用条件下における石鹸組成物の透明性と石鹸組成物としての基本的特性とを両立するものではない。
【0009】
このように、従来の透明固形石鹸組成物は、保存条件下や使用条件下における、良好な透明性の維持、使用条件下での小さい外観変化(べたつき、溶け崩れ、発汗等)、および良好な泡立ちを両立して発揮することができず、依然として改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−352997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者は、長期保存における乾燥(石鹸組成物中の水分量減少)に起因する白化等の発生や、使用条件下における吸湿に起因するべたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化、白濁の発生を防ぐべく、少量の糖類とともに使用しても、充分な透明性を発揮する特性と吸湿性が少ない特性とを併せ持つ成分の検討を重ねた。その結果、石鹸組成物において、糖類とグルコピラノシルグリセロールとを併用することで、従来の問題点を解決できるという知見が得られた。
【0012】
本発明は、この知見に基づいて完成されたものであって、洗浄後のしっとり感、透明性および泡立ちが良好であり、保存条件下においては、白化しにくく良好な透明性を維持でき、乾燥による石鹸量の減量も少なく、使用条件下においては、白濁しにくく良好な透明性を維持でき、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化に起因する石鹸量の減量も少ない透明固形石鹸組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の透明固形石鹸組成物は、脂肪酸石鹸(A)と、透明化剤として糖類(B)と、白濁防止剤としてグルコピラノシルグリセロール(C)と、水(D)と、を含有することを特徴とする。
【0014】
透明化剤として、前記糖類(B)の他に、さらにアルコール類(E)(グルコピラノシルグリセロール(C)を除く。)を含有することを特徴とすることが好ましい。
前記グルコピラノシルグリセリール(C)の含有量が、石鹸組成物100重量%あたり、0.1〜25重量%であることが好ましい。
【0015】
前記糖類(B)と前記グルコピラノシルグリセリール(C)との含有量比((B)/(C))が、0.4〜400であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明固形石鹸組成物は、洗浄後のしっとり感、透明性および泡立ちが良好であり、保存条件下においては、白化しにくく良好な透明性を維持でき、乾燥による石鹸量の減量も少なく、使用条件下においては、白濁しにくく良好な透明性を維持でき、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化に起因する石鹸量の減量も少ないといった効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は、「使用条件下での石鹸組成物」を調製する際に使用される石鹸トレイを示す図である。図1(b)は、石鹸組成物が中底上に載置された石鹸トレイを示す図である。図1(c)は、図1(b)の破線AA´での断面図であって、蓋体、中底および下底が分離している状態を示す図である。図1(d)は、図1(b)の破線AA´での断面図であって、蓋体、中底および下底が組み付けられた状態を示す図である。
【図2】図2(a)は、実施例または比較例に用いた固形石鹸組成物を示す図である。図2(b)〜(d)は、実施例または比較例に用いた固形石鹸組成物を用いる評価4の手順を説明するために供される図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の透明固形石鹸組成物について具体的に説明する。
本発明の透明固形石鹸組成物は、脂肪酸石鹸(A)と、透明化剤として糖類(B)と、白濁防止剤としてグルコピラノシルグリセロール(C)と、水(D)と、必須成分として含むが、各種物性を改良するために、必要に応じ他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
なお、以下、便宜上、前記の脂肪酸石鹸(A)、糖類(B)、グルコピラノシルグリセロール(C)、水(D)を、それぞれ、(A)成分、(B)成分、(C)成分(またはGG)、(D)成分と称し、透明固形石鹸組成物を、単に、石鹸組成物と称する場合がある。
【0020】
本発明の透明固形石鹸組成物に含まれる脂肪酸石鹸(A)は、脂肪酸を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムで中和する中和法、油脂を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムでけん化するけん化法、脂肪酸メチルエステルや脂肪酸エチルエステルを水酸化ナトリウム、水酸化カリウムでけん化するエステルけん化法等の公知の製造方法によって得られる、脂肪酸ナトリウム塩および/または脂肪酸カリウム塩である。
【0021】
脂肪酸石鹸(A)を製造する際に用いる脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸の炭素原子数が、8〜22であることが好ましく、2〜18であることがより好ましい。該脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよく、さらに、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0022】
具体的な脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸など脂肪酸の他に、牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、馬油脂肪酸、羊脂脂肪酸、鶏脂脂肪酸などの動物性油脂由来の混合脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、コーン油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、などの植物油脂由来の混合脂肪酸、これらの水素添加脂肪酸などが挙げられる。
【0023】
また、これらの脂肪酸は、一種単独で用いられてもよいし、二種以上組み合わされて用いられてもよい。
上記アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられ、これらのアルカリ剤は一種単独で用いられてもよいし、二種以上で用いられてもよい。アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが使用され、必要に応じて、水酸化ナトリウムとともに水酸化カリウム併用されてもよい。
【0024】
また、脂肪酸石鹸(A)は、脂肪酸ナトリウム塩単独であってもよいが、脂肪酸ナトリウムとともに脂肪酸カリウムを含むことが好ましい。
脂肪酸石鹸(A)の含有量は、石鹸組成物100重量%あたり、30〜75重量%であることが好ましく、35〜60重量%であることがより好ましく、40〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の透明固形石鹸組成物に含まれる糖類(B)は、石鹸組成物に透明性を付与する透明化剤(糖系透明化剤)として機能し、グルコピラノシルグリセロール(C)を除く糖類であれば、特に限定されるものではない。
【0026】
糖類(B)としては、例えば、フルクトース、グルコール、ガラクトース、キシロース、リボース、ソルボース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の単糖及びそれらの糖アルコール、シュークロース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース、ラフィノース、マルチトール、ラクチトール、パラチノース等の2糖・3等およびそれらの糖アルコール、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、カップリングシュガー(登録商標)、ネオシュガー(イヌリン)等のオリゴ糖が挙げられる。これらは、単独または2種以上組み合わされて使用されてもよい。この中でも、透明石鹸組成物の泡立ちと、生じた石鹸泡の安定性が良好である(石鹸泡が、微細なために崩れにくい)という観点から、シュークロース(蔗糖)が好ましい。
【0027】
糖類(B)の含有量は、石鹸組成物100重量%あたり、10〜40重量%であることが好ましい。20〜40重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることがさらに好ましい。糖類(B)の含有量をこのような範囲内に設定すると、透明性に優れた製品製造が可能になる。
【0028】
また、本発明の透明固形石鹸組成物は、透明化剤(アルコール系透明化剤)として、前記糖類(B)の他に、さらにアルコール類(E)(グルコピラノシルグリセロール(C)を除く。)を含有することが好ましい。
【0029】
アルコール類(E)としては、グルコピラノシルグリセロール(C)を除くアルコール類であれば特に限定されないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のポリオール類(多価アルコール)や、エタノール等の1価アルコール類等が挙げられ、一種単独または数種を組み合わせて用いてもよい。この中でも、価格が安く、無色、無臭であり、さらには他の成分との相溶性が高いという観点からは、グリセリン、エタノールがより好ましく、グリセリンがさらに好ましい。
【0030】
アルコール類(E)の含有量は、石鹸組成物100重量%あたり、5〜35重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0031】
また、前記糖類(B)と前記アルコール類(E)との含有量比((B)成分の重量/(E)の成分の重量)が、0.28〜8.0であることが好ましく、0.67〜4.0であることがより好ましく、0.67〜1.5であることがさらに好ましい。糖類(B)と前記アルコール類(E)との含有量比をこのような範囲に設定すると、得られる透明固形石鹸組成物の透明性および泡立ちが良好になる。
【0032】
本発明の透明固形石鹸組成物に含まれるグルコピラノシルグリセロール(C)は、透明化剤である糖類の析出を防ぐ白濁防止剤として機能する。
グルコピラノシルグリセロール(C)は、(イ)(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(1)),(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(2)),2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(3))などのα−D−グルコピラノシルグリセロール、(ロ)(2R)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(4)),(2S)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(5)),2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(下記化学式(6))などのβ−D−グルコピラノシルグリセロールが挙げられ、さらには、(ハ)付加糖が、1分子のグルコースであることに限定されず、2分子のグルコースであってもよい。付加糖が2分子のグルコースである場合、グルコース間の結合様式はα-1,4結合、β-1,4結合、α-1,6結合、β-1,6結合さらには、α-1,2結合、β-1,2結合の何れであっても良い。これらの誘導体が挙げられ、これらの1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
【化1】

グルコピラノシルグリセロール(C)を得る方法としては、カビ類のα−グルコシダーゼまたはシクロマルトデキストリングルコシルトランスフェラーゼをグリセロール溶液中で糖類の基質に作用させる方法、清酒,味噌,みりん等の醸造物から抽出・精製する方法、イソマルトース,マルチトールなどを四酢酸鉛や過ヨウ素酸塩でグリコール開裂したものを還元する方法、Koenigs−Knorr反応により合成したβ−グルコシドをアノメリゼーションした後、β−グルコシダーゼでβ−グルコシドを加水分解する方法、さらにグリセロール溶液中にグルコースと触媒を加えて加熱し、化学的にグリセロールに糖を付加する方法などが挙げられる。この中でも、低コストで効率良く得られるという観点から、グリセロール溶液中にグルコースと触媒を加えて加熱し、化学的にグリセロールに糖を付加する方法が特に好ましい。
【0034】
前記(C)成分の含有量は、石鹸組成物100重量%あたり、0.1〜25重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、2〜10重量%であることがさらに好ましい。(C)成分の含有量をこのような範囲内に設定すると、使用時における石鹸組成物の減少を低減することができ、保存条件下および使用条件下における透明性を良好に維持することができる。
【0035】
また、前記(B)成分と前記(C)成分との含有量比((B)成分の重量/(C)成分の重量)が、0.1〜400であることが好ましく、0.1〜40であることがより好ましく、0.1〜25であることがさらに好ましく、2〜15であることが特に好ましい。(B)成分と前記(C)成分との含有量比をこのような範囲に設定すると、透明固形石鹸組成物の、使用時の減少の低減と透明性を良好に維持することができる。
【0036】
水(D)は、本発明の透明固形石鹸組成物に含まれるが、その含有量は、石鹸組成物100重量%とした場合、15〜27重量%であることが好ましく、17〜22重量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量をこのような範囲に設定すると、透明性の良好な透明固形石鹸組成物を得ることができる。
【0037】
本発明の石鹸組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上述の(A)〜(E)成分ではない、他の成分(F)が適宜配合されていてもよい。
(F)成分としては、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル、加水分解コラーゲン等の保湿剤、アルキルアミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アルキルベタイン等の両性界面活性剤、アルキルグルコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、アシルメチルタウリン塩等のアニオン界面活性剤、トリメチルアルキルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤、アラントインやグリチルリチン酸ジカリウム等の消炎剤、油分、香料、色素、エデト酸塩等のキレ―ト剤、紫外線吸収剤、グリチルリン酸ジカリウム、オオバコエキス、シソエキス、サボン草エキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ等の天然抽出物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、乳酸エステル等の使用性向上剤、アルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ジナトリウム、アルキルイセチオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルグリコール酢酸ナトリウム等の起泡性向上剤、塩化ナトリウム等のふやけ防止剤、クエン酸等のpH調整剤等が挙げられる。
【0038】
本発明の石鹸組成物が(F)成分を含む場合、(F)成分の含有量は、適宜調整されるものであるが、石鹸組成物100重量%あたり、たとえば20〜40重量%程度である。
また、本発明の透明固形石鹸組成物における「透明」とは、調製直後の固形石鹸組成物を黒色台紙の上に置き、色彩色差計(規格:CR−300、製造元:ミノルタカメラ株式会社)を用いて測定されたL***におけるL*値(明度)が、40以下の値を有することで定義される。なお、市販の固形石鹸(資生堂「ザボンドール」)のL値は、95.2であった。
【0039】
また、本発明の透明固形石鹸組成物における「固形」とは、調製直後の固形石鹸組成物の硬度を、JIS K 7312に準拠して、硬度計(規格:アスターゴム硬度計 タイプC)を用いて測定された硬度値が80以上であることで定義される。
【0040】
本発明の透明固形石鹸組成物の用途としては、特に制限はなく、例えば、全身洗浄用、手指洗浄用、顔洗浄用、髭剃り用などが挙げられる。特に、洗浄後のしっとり感が良好であることから、本発明の透明固形石鹸組成物は、髭剃り用として使用されることが好ましい。
【0041】
本発明の石鹸組成物の製造方法としては、公知の製造方法で製造され得るが、たとえば、通常の枠練り製造法が挙げられる。
枠練り製造法の一例としては、脂肪酸をアルカリ水溶液で中和して脂肪酸石鹸(A)を調製し、調製された脂肪酸石鹸(A)に、(B)成分、(C)成分、(D)成分、必要に応じて、(E)成分、(F)成分を添加してこれらの成分を、必要に応じて加温しながら、溶解または分散させて、溶融状態の石鹸組成物を調製し、調製された溶融状態の石鹸組成物を枠に流し込み、冷却固化し、必要に応じて切断し、乾燥し、所望の形状に成形する製造法が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1:石鹸組成物1の調製および特性評価]
混合脂肪酸(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:イソステアリン酸:ベヘン酸(含有比(重量比)20:35:15:20:5:5)、鹸化価228.37)100kgに、34%苛性ソーダ液48.2kg(苛性ソーダ量:16.4kg、水:31.8kg)とを徐々に添加しながら攪拌し、さらに液温が70〜80℃である条件下で、完全に中和させて、石鹸素地1を得た。
【0043】
得られた石鹸素地1の液温を、65〜75℃に保ちつつ、石鹸素地1に、糖(糖系透明化剤)として白糖25kgおよびソルビット10kgと、水10kgと、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム液0.5kgとを添加しながら攪拌して、これらを溶解させた後、さらに、グルコピラノシルグリセロール(GG)10kgを添加しながら、均一になるように混合して、液状の石鹸組成物1を得た。
【0044】
この液状の石鹸組成物1を、型(7.0cm×20cm×1.0cm)に流し込み、室温(25℃)で冷却固化させた後に、切断・乾燥し、さらに、直径6.4cm×厚さ1cmの円板状に成形して、図1(a)の付け番10aに示されるような、円板状の固形石鹸組成物1を調製した。
【0045】
得られた石鹸組成物1中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、4.9重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、3.5である。
【0046】
次いで、後述する各評価方法・基準に基づいて、固形石鹸組成物1の特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、表1では、各成分の含有量を、重量部で示している。
【0047】
[実施例2:石鹸組成物2の調製および特性評価]
混合脂肪酸とともに、アルコール類(アルコール系透明化剤)としてエタノール50kgを加えたこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物2を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、石鹸組成物2中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、3.9重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、3.5である。
【0048】
[実施例3:石鹸組成物3の調製および特性評価]
混合脂肪酸とともに、アルコール系透明化剤としてエタノール50kgおよびグリセリン16kgを加え、GGの添加量を10kgから26kgに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物3を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、石鹸組成物3中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、9.1重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、1.3である。
【0049】
[実施例4:石鹸組成物4の調製および特性評価]
GGの添加量を10kgから0.1kgに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物4を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、石鹸組成物4中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、0.05重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、350である。
【0050】
[実施例5:石鹸組成物5の調製および特性評価]
GGの添加量を10kgから60kgに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物5を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、石鹸組成物5中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、23.7重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、0.58である。
【0051】
[実施例6:石鹸組成物6の調製および特性評価]
GGの添加量を10kgから20kgに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物6を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。石鹸組成物6中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、9.4重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、1.75である。
【0052】
[実施例7:石鹸組成物7の調製および特性評価]
GGの添加量を10kgから40kgに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物7を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、石鹸組成物7中のGGの含有量は、組成物100重量%あたり、17.1重量%であり、糖系透明化剤とGGとの重量比(糖系透明化剤の添加量/GGの添加量)は、0.88である。
【0053】
[比較例1:石鹸組成物8の調製および特性評価]
GGを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物8を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2:石鹸組成物9の調製および特性評価]
GGを加えなかったこと以外は、実施例3と同様にして、石鹸組成物9を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3:石鹸組成物10の調製および特性評価]
GGおよび糖系透明化剤を加えなかったこと以外は、実施例3と同様にして、石鹸組成物10を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4:石鹸組成物11の調製および特性評価]
糖系透明化剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物11を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例5:石鹸組成物12の調製および特性評価]
糖系透明化剤を加えなかったこと以外は、実施例3と同様にして、石鹸組成物12を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例6:石鹸組成物13の調製および特性評価]
糖系透明化剤およびGGを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、石鹸組成物13を調製し、各種特性を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0059】
[評価方法・基準]
以下、石鹸組成物の各特性の評価方法を示す。また、下記評価にて使用される「石鹸組成物(調製直後)」、「石鹸組成物(保存条件下)」、「石鹸組成物(使用条件下)」は、以下に定義される。
【0060】
[各石鹸組成物の処理]
(i)「調製直後の石鹸組成物」
調製後の経過時間が24時間未満の石鹸組成物を「調製直後の石鹸組成物」とした。
【0061】
(ii)「保存条件下での石鹸組成物」
「調製直後の石鹸組成物」を恒温槽(45℃、湿度 35%RH)内に3ケ月間放置して得られた石鹸組成物。
【0062】
(iii)「使用条件下での石鹸組成物」
1日あたり、下記操作1を朝夕2回(朝1回、夕方1回)実施し、操作1を実施する時を除いては、下記操作2を実施して石鹸を保管した。この操作1〜2を3週間継続して得られた石鹸組成物を、「使用条件下での石鹸組成物」とした。
【0063】
「操作1」:石鹸組成物を40℃の温水で濡らし、両手で包むようにして20回程度手のひらに擦り付け、泡立てた後、石鹸表面の泡を軽く洗い流し、簡単に水を切る操作
「操作2」:図1(a)に示されるような、蓋体(図示せず。)と、水抜き用開孔部12を有する中底11と、下底13とからなる石鹸トレイ20の中底11上に、「操作1」を経た石鹸組成物15を載置し(図1(b)、(c))、石鹸組成物が載置された中底11を下底13に、さらに蓋体14を中底11に組み付けて、該石鹸組成物の水切りをするとともに、水が被らないようにして、保管した((図1(d))(操作2)。なお、図(c)〜(d)は、図(b)の破線AA´部分での断面図を示す。
【0064】
なお、各実施例および比較例の石鹸組成物(上記(i)〜(iii))の硬度を、JIS K 7312に準拠して、硬度計(規格:アスターゴム硬度計 タイプC)を用いて測定したところ、何れも硬度値が80以上であった。
【0065】
評価1(しっとり感)
15名により、通常の洗顔において、「調製直後の石鹸組成物」を使用し、以下の基準にて、洗顔後の肌の状態(しっとり感)を評価した。
[評価基準]
◎:しっとり感が非常に高い。
○:しっとり感がある。
△:しっとり感がない。
【0066】
評価2(起泡性)
MgCl2を使用して調製した4度硬水を用いて、「調製直後の石鹸組成物」1重量%含む水溶液(水溶液全体100重量%)を調製した。調製された水溶液を200mLのメスシリンダーに5g充填し、30℃で、50回振盪し、生じた泡の高さ(mm)を測定し、以下の基準で泡質を評価した。
なお、下記○および◎の評価を示す固形石鹸組成物では、泡質が良好である(泡立ちが良好である。)。
【0067】
[評価基準]
◎:泡の高さが25mm以上である。
○:泡の高さが20mm以上25mm未満である。
△:泡の高さが15mm以上20mm未満である。
×:泡の高さが15mm未満である。
【0068】
評価3(透明性)
目視検査により、以下基準で、「石鹸組成物(調製直後)」および「石鹸組成物(使用条件下)」の透明性を評価した。
【0069】
[評価基準]
◎:全く白化が見られず、透明である。
○:若干白化が見られるが、概ね透明である。
△:白化が見られ、部分的に不透明である。
×:著しく白化が見られ、全体的に著しく不透明である。
【0070】
なお、上記「△」〜「◎」の評価が得られた石鹸組成物においては、該石鹸組成物を
を黒色台紙の上に置き、色彩色差計(規格:CR−300、製造元:ミノルタカメラ株式会社)を用いて測定されたL***におけるL*値(明度)は、何れも40以下の値をしていた。
【0071】
評価4(石鹸組成物(使用条件下)の白濁層の厚さ(mm))
石鹸組成物(調製直後)(図2で示される付け番20a)を用いて、上記[各石鹸組成物の処理]に記載の条件にて石鹸組成物(使用条件下)(図2で示される付け番20b)を調製する。次いで、図2(b)および(c)に示されるように、円板状の石鹸組成物20bの中心21を通り、両端点21´が円周上にある線分22上にて、石鹸組成物20bを切断して、2つの、切断された石鹸組成物20b´を得る。図(d)に示されるように、白濁層23a(白濁した石鹸組成物からなる層)と透明層23b(白濁していない石鹸組成物からなる層)とを形成している、石鹸組成物20b´の切断面23を観察し、白濁層23aの厚さd(mm)を測定する。
【0072】
評価5(石鹸組成物(使用条件下)の減量率(%))
石鹸組成物(調製直後)(A0(g))を用いて、上記[各石鹸組成物の処理]に記載の条件にて石鹸組成物(使用条件下)を調製し、該石鹸組成物の重量(A1(g))を測定して、以下の式により、「使用条件下での石鹸組成物の減量率(%)」を算出した。なお、この場合の石鹸組成物の減量が小さいほど、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化も小さいことが言える。
【0073】
【数1】

評価6(石鹸組成物(保存条件下)の減量率(%))
石鹸組成物(調製直後)(A0(g))を用いて、上記[各石鹸組成物の処理]に記載の条件にて石鹸組成物(保存条件下)を調製し、該石鹸組成物の重量(A2)(g)を測定して、以下の式により、「石鹸組成物(保存条件下)の減量率(%)」を算出した。なお、この場合の石鹸組成物の減量は、主に乾燥による水分の蒸発量に起因する。また、石鹸組成物中の水分量の減少(蒸発量の増大)は、石鹸組成物に白化が発生し、透明性を低下させることが言える。
【0074】
【数2】

【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、洗浄後のしっとり感、透明性および泡立ちが良好であり、保存条件下においては、白化しにくく良好な透明性を維持でき、乾燥による石鹸量の減量も少なく、使用条件下においては、白濁しにくく良好な透明性を維持でき、べたつき、発汗、溶け崩れ等の外観変化に起因する石鹸量の減量も少ない透明固形石鹸組成物を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
10:石鹸トレイ(上面図)
10´、10´´:石鹸トレイ(図1(b)の破線AA´での断面図)
11:中底
12:水抜き用開孔部
13:下底
14:蓋体
15:操作1を経た石鹸組成物
20a:石鹸組成物(調製直後)
20b:石鹸組成物(使用条件下)
20b´:切断された石鹸組成物(使用条件下)
21:中心
21´:両端点
22:円板状の石鹸組成物の中心を通り、両端点が円周上にある線分
23:切断面
23a:白濁層
23b:透明層
d:白濁層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸石鹸(A)と、透明化剤として糖類(B)と、白濁防止剤としてグルコピラノシルグリセロール(C)と、水(D)と、を含有することを特徴とする透明固形石鹸組成物。
【請求項2】
透明化剤として前記糖類(B)の他に、さらにアルコール類(E)(グルコピラノシルグリセロール(C)を除く。)を含有することを特徴とする請求項1に記載の透明固形石鹸組成物。
【請求項3】
前記グルコピラノシルグリセリール(C)の含有量が、石鹸組成物100重量%あたり、0.1〜25重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明固形石鹸組成物。
【請求項4】
前記糖類(B)と前記グルコピラノシルグリセリール(C)との含有量比((B)/(C))が、0.1〜25であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の透明固形石鹸組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82408(P2012−82408A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203068(P2011−203068)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(596012685)三和化学工業株式会社 (1)
【出願人】(510251556)株式会社BEDARING−JAPAN (2)
【出願人】(591061068)東洋精糖株式会社 (17)
【Fターム(参考)】