説明

透明導電性フィルム、タッチパネル用電極板およびタッチパネル

【課題】 透明なフィルム基材の一方の面に、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜が積層されている透明導電性フィルムであって、ニュートリングの発生を抑えることができ、かつ耐久性、特にペン入力耐久性、さらにはギラツキ等の表示特性を満足することができる透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】 透明なフィルム基材の一方の面に、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜が積層されている透明導電性フィルムであって、透明導電性薄膜の表面は、中心線平均粗さ(Ra)が0.11〜0.18μm、最大高さ(Ry)が0.9〜1.6μm、かつ、局部山頂の平均間隔(S)が0.05〜0.11mm、であることを特徴とする透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。また本発明は、前記透明導電性フィルムを用いたタッチパネル用電極板に関する。さらには、本発明は前記タッチパネル用電極板を用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光線領域で透明でかつ導電性を有する薄膜は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの新しいディスプレイ方式やタッチパネルなどの透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断などのために用いられている。
【0003】
従来、このような透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成したいわゆる導電性ガラスがよく知られているが、基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては使用できない場合がある。
【0004】
このため、近年では、可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であるなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材に透明導電性薄膜を設けた透明導電性フィルムが使用されている。
【0005】
しかし、前記透明導電性フィルムを用いたタッチパネルでは、タッチパネルを指押等した場合に、縞状にニュートリングが発生する問題がある。かかるニュートリングの発生を防止することに関しては、例えば、透明プラスチックと透明導電層薄膜との間に、平均粒径1〜4μmのフィラーを数平均密度500〜3000個/mm2含む膜厚1〜3μmのコーティング層を設けた透明導電性フィルム(特許文献1)や、透明樹脂フィルムに、膜厚20〜55nmの酸化ケイ素薄膜層と透明薄膜電極層とを順次に形成し、透明薄膜電極層の表面を、中心線平均粗さ(Ra)を0.05〜2μm、その最大高さ(Rmax)を0.6〜2.5μmにした透明導電性フィルム(特許文献2)を用いることが提案されている。前記透明導電性フィルムをタッチパネル用電極板として用いたタッチパネルでは、ニュートリングの発生を抑えることができる。
【0006】
一方、透明導電性フィルムは、導電性薄膜の耐擦傷性や耐屈曲性に劣り、使用中に傷がついて電気抵抗が増大したり断線を生じたりする問題があった。特にタッチパネル用の導電性薄膜においては、スペーサを介して対向させた一対の薄膜同士がその一方のパネル板側からの押圧打点で強く接触するものであるため、これに抗しうる良好な耐久性、つまり打点特性、特にペン入力耐久性を有していることが望まれる。しかし、上記特許文献の開示のように、ニュートリングの発生を防止するために透明導電層薄膜の凹凸形状を制御した透明導電性フィルムでは、耐久性を満足することはできない。そのため、透明導電性フィルムについてニュートリングの発生を抑えた場合には、耐久性に劣る結果として、その分、タッチパネルとしての寿命が短くなる問題があった。
【0007】
また、透明導電性フィルムは、薄膜表面の光線反射率が大きいため、透明性に劣る問題がある。しかし、前記のように透明導電層薄膜の凹凸形状を制御したとしても、ギラツキ、写像性等の表示特性ついても十分に満足しているとはいえなかった。
【特許文献1】特開平10−323931号公報
【特許文献2】特開平11−250764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透明なフィルム基材の一方の面に、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜が積層されている透明導電性フィルムであって、ニュートリングの発生を抑えることができ、かつ耐久性、特にペン入力耐久性、さらにはギラツキ等の表示特性を満足することができる透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は当該導電性積層フィルムを用いたタッチパネル用電極板を提供すること、さらには当該タッチパネル用電極板を用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記透明導電性フィルムを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、透明なフィルム基材の一方の面に、少なくとも、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜が積層されている透明導電性フィルムであって、
透明導電性薄膜の表面は、
中心線平均粗さ(Ra)が0.11〜0.18μm、
最大高さ(Ry)が0.9〜1.6μm、かつ、
局部山頂の平均間隔(S)が0.05〜0.11mm、
であることを特徴とする透明導電性フィルム、に関する。
【0012】
前記透明導電性フィルムにおいて、透明導電性薄膜の表面は、十点平均表面粗さ(Rz)が、0.6〜1μmであることが好ましい。
【0013】
前記透明導電性フィルムにおいて、微細凹凸形状を有する樹脂層は、微粒子を含有させることにより、当該微粒子によって微細凹凸形状を形成することができる。
【0014】
前記透明導電性フィルムにおいて、微粒子は、平均粒径2±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子と、平均粒径3±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子との混合物であることが好ましい。
【0015】
前記透明導電性フィルムにおいて、樹脂層の塗工厚みが、0.5〜2μmであることが好ましい。
【0016】
前記透明導電性フィルムにおいて、樹脂層と透明導電性薄膜の間に、透明誘電体薄膜を有するものを用いることができる。
【0017】
前記透明導電性フィルムにおいて、透明なフィルム基材の透明誘電体薄膜を設けていない側の面に、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わすことができる。透明基体は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層を介して積層した積層透明基体を用いることができる。
【0018】
また本発明は、前記透明導電性フィルムを用いたタッチパネル用電極板、に関する。
【0019】
また本発明は、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、タッチパネル用電極板の少なくとも一方が、前記本発明のタッチパネル用電極板からなることを特徴とするタッチパネル、に関する。
【0020】
前記タッチパネルにおいて、本発明のタッチパネル用電極板は、少なくともディスプレイ側のタッチパネル用電極板に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の透明導電性フィルムは、微細凹凸形状を有する樹脂層によって、透明導電性薄膜の表面凹凸形状を制御したものであり、当該表面形状は、中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、局部山頂の平均間隔(S)によって特定される。本発明では、これらの値を、非常に狭い範囲内に制御することで、ニュートリングの発生を抑え、かつ耐久性、特にペン入力耐久性、さらには、ギラツキ、写像性等の表示特性についても満足することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の透明導電性フィルムを、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示したものであり、透明なフィルム基材1の一方の面に、微細凹凸形状を有する樹脂層2を介して、透明導電性薄膜3が積層されている。図1では、微粒子4が、樹脂層2中に含有されており、樹脂層2の表面において、微細凹凸形状を形成しており、これにより透明導電性薄膜3の表面にも微細凹凸形状を形成させている。
【0023】
透明導電性薄膜の表面形状は、中心線平均粗さ(Ra)が0.11〜0.18μm、最大高さ(Ry)が0.9〜1.6μm、かつ、局部山頂の平均間隔(S)が0.05〜0.11mm、に制御されている。
【0024】
前記Raは、ニュートリングの発生を抑える点、耐久性を満足させる点から制御された値であり、前記Raは、さらには、0.12〜0.17μmであるのが好ましく、さらには0.13〜0.16μmであるのが好ましい。前記Ryは、ニュートリングの発生を抑える点、耐久性を満足させる点から制御された値であり、前記Ryは、さらには、1〜1.5μmであるのが好ましく、さらには1.1〜1.5μmであるのが好ましい。また、前記Sは、ギラツキを抑える点から制御された値であり、前記範囲は、さらには、0.06〜0.10mmであるのが好ましく、さらには0.07〜0.10mmであるのが好ましい。
【0025】
また透明導電性薄膜の表面形状は、十点平均表面粗さ(Rz)が、0.6〜1μmであることが好ましい。前記Rzは、さらには、0.7〜1μmであるのが好ましく、さらには0.8〜1μmであるのが好ましい。
【0026】
また、本発明の透明導電性フィルムは、透明性の観点からヘイズ値は、2.5%、さらには、2%であるのが好ましい。
【0027】
本発明における透明なフィルム基材は、その材質に特に限定はなく、適宜に選択して使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に好ましいものは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などである。
【0028】
これらのフィルム基材の厚さは、特に制限されないが、2〜300μmの範囲にあることが好ましい、特に好ましくは10〜130μmの範囲にあるのがよい。厚さが2μm未満では、フィルム基材としての機械的強度が不足するおそれがあり、この基材をロール状にして透明導電性薄膜などの薄膜を連続的に形成する操作が難しくなる。また、厚さが300μmを超えると、巻き取り性に問題が生じやすく、透明導電性薄膜のロール加工が難しくなるおそれがある。
【0029】
このようなフィルム基材は、その表面にあらかじめスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や、下塗り処理を施して、この上に設けられる、微細凹凸形状を有する樹脂層のフィルム基材に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、微細凹凸形状を有する樹脂層を設ける前に、必要に応じて、溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化を行うようにしてもよい。
【0030】
本発明においては、このように構成されるフィルム基材の一方の面に、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜を設ける。
【0031】
微細凹凸形状を有する樹脂層の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記樹脂層の形成に用いたフィルムの表面を、予め、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に微細凹凸形状を付与する方法等により、樹脂層を形成する材料そのものの表面を微細凹凸系形状に形成する方法があげられる。また、樹脂層上に別途樹脂層を塗工付加し、当該樹脂層表面に、金型による転写方式等により微細凹凸形状を付与する方法があげられる。また、図1のように樹脂層に微粒子を分散含有させて微細凹凸形状を付与する方法などがあげられる。これら微細凹凸形状の形成方法は、二種以上の方法を組み合わせ、異なる状態の微細凹凸形状表面を複合させた層として形成してもよい。前記樹脂層の形成方法のなかでも、微細凹凸形状表面の形成性等の観点より、微粒子を分散含有する樹脂層を設ける方法が好ましい。
【0032】
以下、微粒子を分散含有させて樹脂層を設ける方法について説明する。当該樹脂層を形成する樹脂としては微粒子の分散が可能で、樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0033】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0034】
樹脂層の形成材料には、前記材料に加えて、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、微細凹凸形状表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、15重量部以下程度、好ましくは0.1〜15重量部、とするのが好適である。
【0035】
微粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などがあげられる。前記微粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系微粒子が好ましい。有機系微粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0036】
微粒子の平均粒子径は、前記Ra、Ry、S等の微細凹凸形状の表面を形成できるものであれば特に制限されず、通常、1〜10μm程度、好ましくは1〜4μm程度の範囲を有するものを用いることができる。また、微粒子は、異なる粒子径のものを組み合わせて用いることができる。特に、標準偏差が平均粒径の20%以内の単分散の微粒子を組み合わせて用いるのが好ましい。本発明では、特に、微粒子として、平均粒径2±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子と、平均粒径3±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子との混合物を組み合わせて用いるのが好ましい。前記平均粒径2±0.4μmの微粒子は、平均粒径2±0.3μm、さらには2±0.2μm、さらには2±0.1μmであるのが好ましい。前記平均粒径3±0.4μmの微粒子は、平均粒径3±0.3μm、さらには3±0.2μm、さらには3±0.1μmであるのが好ましい。前記標準偏差は、いずれの場合にも、平均粒径の15%以内、さらには平均粒径の10%以内あるのが好ましい。また、前記平均粒径2±0.4μmの微粒子と、平均粒径3±0.4μmの微粒子との混合物の割合(重量比)は、通常、前者:後者=50:50〜99:1、さらには、80:20〜99:1とするのが好ましい。
【0037】
微粒子を含有する樹脂層の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記透明なフィルム基材上に、微粒子を含有する樹脂(たとえば、紫外線硬化型樹脂:塗工液)を塗工し、乾燥後、硬化処理して表面に凹凸形状を呈するような樹脂層により形成することにより行う。なお、塗工液は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。
【0038】
前記塗工液に含まれる微粒子の割合は特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、さらには0.1〜10重量部とするのが、前記Ra、Ry、S等の微細凹凸形状の表面を形成するうえで好ましい。
【0039】
樹脂層の厚さは特に制限されないが、0.5〜7μm程度、特に0.5〜2μmとするのが、クラック、カール特性の点から好ましい。樹脂層の厚さは、樹脂層の形成に用いた材料と塗工面積から算出した値である。なお、樹脂層の形成に塗工液を用いる場合には、塗工液を塗工する前後の重量差から樹脂層の膜厚が求められる。
【0040】
透明導電性薄膜の形成は、上記樹脂層上に設けられる。透明導電性薄膜の形成は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法またはこれらの組み合わせ法などの各種薄膜形成法を適宜に選択することができる。透明導電性薄膜の形成速度や大面積膜の形成性、生産性などの点から、前記薄膜形成法としては真空蒸着法やスパッタリング法を採用するのが好ましい。
【0041】
前記透明導電性薄膜の形成材としては、透明な導電性の膜を形成しうるものを適宜に選択して用いる。好ましくは、例えば、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫およびこれらの合金等からなる金属、また酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムおよびこれらの混合物等からなる金属酸化物、ヨウ化銅等からなる他の金属化合物などが用いられる。これらのなかでも酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。特に、酸化スズを含有する酸化インジウムが好ましい。
【0042】
透明導電性薄膜の厚さは、使用目的に応じて適宜に決定することができる。厚さは通常10〜300nm、好適には10〜200nmであるのがよい。厚さが10nmより薄いと、表面電気抵抗が103Ω/□以下となる良好な導電性を有する連続被膜となりにくく、厚すぎると、透明性の低下などをきたしやすい。
【0043】
本発明の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材1の一方の面に、少なくとも、微細凹凸形状を有する樹脂層2を介して、透明導電性薄膜3が積層されていればよく、これら以外の層を有することができる。図2に示すように、例えば、樹脂層2と透明導電性薄膜3の間には、透明誘電体薄膜(透明誘電層)5を少なくとも1層用いることができる。また、透明なフィルム基材1において、樹脂層2および透明導電性薄膜3を設けない側にはハードコート層や視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層等を設けることができる。
【0044】
透明誘電体薄膜の形成は、樹脂層と透明導電性薄膜との密着性を向上させるとともに、透明導電性薄膜の耐擦傷性や耐屈曲性を向上させ、タッチパネル用としての打点特性の向上に有効である。また、透明誘電体薄膜を2層以上用いる場合には、各透明誘電体薄膜の屈折率を制御して、さらに、前記特性を向上させることができる。
【0045】
透明誘電体薄膜は、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。無機材料としては、例えば、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の()内の数値は光の屈折率である〕などが好ましく用いられる。また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物があげられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0046】
透明誘電体薄膜は、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテフィング法、塗工法などにより形成できる。透明誘電体薄膜の各層の厚さは、適宜設定できるが、通常、10〜200nm程度であり、好ましくは15〜100nm、好ましくは20〜60nmであるのがよい。
【0047】
前記透明誘電体薄膜5を2層用いる場合には、樹脂層の側から、下記の第一透明誘電体薄膜および第二透明誘電体薄膜を、この順に形成することが好ましい。すなわち、当該第一透明誘電体薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーディング法により形成し、かつ第一透明誘電体薄膜は、酸化インジウム100重量部に対して、酸化錫を0〜20重量部、酸化セリウムを10〜40重量部含む複合酸化物からなり、第一透明誘電体薄膜の屈折率をn1、第二透明誘電体薄膜の屈折率をn2、透明導電性薄膜の屈折率をn3としたとき、n2<n3≦n1の関係を満たすものが好ましい。
【0048】
第一透明誘電体薄膜は、酸化インジウムに対して、特定量の酸化錫、酸化セリウムを含む複合酸化物により形成している。当該複合酸化物は、透明導電性材料である、酸化インジウムと酸化錫の複合体に、さらに酸化セリウムを添加したものであり、これにより、透明導電性薄膜の屈折率以上の高屈折率の実現できる。その結果、第一透明誘電体薄膜と第二透明誘電体薄膜との屈折率の差が大きくなり、光学的な調整を容易に行うことができ、透明性等の光学特性が良好な透明導電性フィルムが得られる。
【0049】
また、前記複合酸化物により形成された第一透明誘電体薄膜は、その表面抵抗値が高く、透明導電性薄膜の導電性に影響を及ぼさない程度の高抵抗値に制御することができる。第一透明誘電体薄膜の表面抵抗値は、透明導電性薄膜の導電性に影響を及ぼさないように、絶縁性(高抵抗値)であることが好ましく、1×106(Ω/□)以上であることが好ましく、さらには、1×108(Ω/□)以上であることが好ましい。
【0050】
また、第一透明誘電体薄膜および第二透明誘電体薄膜の二層の透明誘電体薄膜を有する場合には、耐擦傷性、屈曲性も良好であり、しかも、上記のように、第一透明誘電体薄膜に、特定成分を特定割合で含有する高屈折率で、高抵抗値を有する複合酸化物を用い、かつ第一透明誘電体薄膜をドライプロセスによって形成しているため、透過光の着色を抑えることができ、また生産性がよく、光学調整を容易に行うことができる。
【0051】
前記第一透明誘電体薄膜および第二透明誘電体薄膜を設ける場合、第一透明誘電体薄膜の光の屈折率n1、第二透明誘電体薄膜の光の屈折率n2、透明導電性薄膜3の光の屈折率n3は、n2<n3≦n1、の関係を満足することが好ましい。通常、透明導電性薄膜3の光の屈折率n3は約2程度(通常1.9〜2.1)であるため、その場合には第一透明誘電体薄膜の光の屈折率n1は、通常、1.9〜2.3程度、さらには2.0〜2.2であるのが好ましく、第二透明誘電体薄膜の光の屈折率n2は、通常、1.3〜1.7程度、さらには1.4〜1.6であるのが好ましい。
【0052】
前記第一透明誘電体薄膜は、酸化インジウム100重量部に対して、特定量の酸化錫および酸化セリウムを含む複合酸化物により形成されている。形成材料としては、各酸化物成分の混合物の焼結体を使用することが好ましい。前記複合酸化物において、酸化錫の割合は、光学特性の点から、酸化インジウム100重量部に対して、0〜20重量部である。さらには、3〜15重量部であるのが好ましい。酸化錫の割合が20重量部を超える場合には、形成材料として焼結体を用いる場合、その焼結密度が低下するため、膜形成時の放電を安定に保ち難い(放電安定性が悪い)。また酸化セリウムの割合は、高抵抗値(絶縁性)および光学特性の点から、酸化インジウム100重量部に対して、10〜40重量部である。さらには、15〜30重量部であるのが好ましい。酸化セリウムの割合が10重量部未満では、第一透明誘電体薄膜の表面抵抗値が低くなって、導電性を有するようになる。一方、酸化セリウムの割合が40重量部を超える場合には、生産性(製膜スパッタレート)が低下する。
【0053】
前記第一透明誘電体薄膜の厚さは、特に制限されないが、10〜200nmであるのが好ましい。さらには15〜60nmである好ましい。10nm未満では連続被膜とするのが困難である。一方、200nm以下とするのが、光学的な調整の点から好ましい。
【0054】
第二透明誘電体薄膜の材料としては、たとえば、前記例示の透明誘電体薄膜で例示した無機材料や、光の屈折率が1.4〜1.6程度のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系ポリマー、アルキド樹脂、メラミン樹脂などの有機物があげられる。これらのなかから材料を適宜に選択し、または組み合わせて、前記屈折率n2を満足する第二透明誘電体薄膜を形成する。
【0055】
第二透明誘電体薄膜の厚さは、特に制限されるものではないが、連続被膜とし、透明性や耐殺傷性を向上させるためには10nm以上とするのが好ましく、より好ましくは10〜200nm、特に好ましくは20〜120nmである。なお、第一透明誘電体薄膜の厚さと第二透明誘電体薄膜の厚さを合わせた総厚が、厚くなりすぎると透明性の向上が期待できなくなり、またクラックを生じるおそれがあるため、前記総厚は、300nm以下、さらには200nm以下とするのが好ましい。
【0056】
第一透明誘電体薄膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着気相蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があげられ、材料の種類および必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することができるが、これらのなかでもスパッタリング法が一般的である。また、第二透明誘電体薄膜の形成方法としては、上記の方法の他に、塗工法などを採用することができる。
【0057】
ハードコート層は、フィルム基材の片面にハードコート処理を施すことにより得られる。ハードコート処理は、例えばアクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂を塗布して硬化処理する方法などにより行うことができる。ハードコート処理に際しては、前記アクリル・ウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂にシリコーン樹脂等を配合して表面を粗面化して、タッチパネル等として実用した際に鏡作用による写り込みを防止しうるノングレア面を同時に形成することもできる。
【0058】
ハードコート層の厚さは、これが薄いと硬度不足となり、一方厚すぎるとクラックが発生する場合がある。また、カールの防止特性等も考慮すれば、好ましいハードコート層の厚さは0.1〜30μm程度である。
【0059】
また、図3、図4に示すように、前記フィルム基材1の透明導電性薄膜3を設けない側の片面に、前記フィルム基材1とは別の透明基体6を、粘着剤層7を介して貼り合わせることができる。この貼り合わせは、透明基体6の方に粘着剤層7を設けておき、これにフィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆にフィルム基材1の方に上記の粘着剤層7を設けておき、これに透明基体6を貼り合わせてもよい。後者の方法では、粘着剤層7の形成を、フィルム基材1をロール状にして連続的に行うことができ、生産性の面でより有利である。
【0060】
粘着剤層は、透明性を有するものであればよく、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが用いられる。粘着剤層は、透明基体の接着後そのクッション効果により、フィルム基材の一方の面に設けられた導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させるため、粘着剤層の弾性係数を1〜100N/cm2の範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。
【0061】
粘着剤層の弾性係数が1N/cm2未満となると、粘着剤層は非弾性となるため、加圧により容易に変形してフィルム基材ひいては導電性薄膜に凹凸を生じさせ、また加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすく、さらに導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネルとしての打点特性の向上効果が低減する。また、100N/cm2を超えると、粘着剤層が硬くなり、そのクッション効果を期待できなくなり、導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネルとしての打点特性を向上できない。
【0062】
粘着剤層の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果を期待できなくなるため、導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネルとしての打点特性の向上を望めない。また、粘着剤層を厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層の形成や透明基体の貼り合わせ作業性、さらにコストの面で好結果が得られにくい。
【0063】
このような粘着剤層を介して貼り合わされる透明基体は、フィルム基材に対して良好な機械的強度を付与し、特にカールなどの発生防止に寄与するものである。
【0064】
図3に示すように、透明基体6は、単層構造にすることができるほか、2枚以上の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層により貼り合わせた複合構造として、積層体全体の機械的強度などをより向上させることができうる。図4では、透明基体6として、2枚の透明な基体フィルム61、62を透明な粘着剤層63により貼り合わせたものが記載されている。透明基体6を複合構造とする場合には、面圧に対する耐久性を向上することができる。なお、図3、4では、図1に記載のものに透明基体が貼り合わされているが、図2に記載のものについても同様に透明基体を貼り合せことができる。
【0065】
前記透明基体として単層構造を採用する場合について説明する。単層構造の透明基体を貼り合わせたのちでも透明導電性フィルムが、可撓性であることが要求される場合は、透明基体の厚さは、通常、6〜300μm程度のプラスチックフィルムが用いられる。可撓性が特に要求されない場合は、透明基体の厚さは、通常、0.05〜10mm程度のガラス板やフィルム状ないし板状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質としては、前記したフィルム基材と同様のものが挙げられる。
【0066】
一方、前記透明基体として複数構造を採用する場合にも、透明基体の厚さは、前記と同様である。複数構造の透明基体の厚さは、2枚以上の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層により貼り合わせた合計厚さである。すなわち、複数構造の透明基体を貼り合わせたのちでも透明導電性フィルムが、可撓性であることが要求される場合は、複数構造の透明基体の厚さは、通常、6〜300μm程度である。この場合、2枚以上の透明な基体フィルムとしては、フィルム基材と同様のプラスチックフィルムが用いられる。可撓性が特に要求されない場合の透明基体の厚さは、通常、0.05〜10mm程度である。この場合、2枚以上の透明な基体フィルムとしては、ガラス板やフィルム状ないし板状のプラスチックが用いられる。これらは組み合わせることもできる。プラスチックの材質としては、前記したフィルム基材と同様のものが挙げられる。
【0067】
複数構造の透明基体において、2枚以上の透明な基体フィルムの貼り合せに用いる透明な粘着剤層には、透明基体とフィルム基材の貼り合わせで説明したものと同様の材料が好適に用いられる。
【0068】
なお、必要により、上記した透明基体の外表面(粘着剤層とは反対側の面)に、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けたり、外表面の保護を目的としたハードコート層を設けるようにしてもよい。後者のハードコート層としては、例えば、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。
【0069】
本発明の透明導電性フィルムは、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの種々の装置の形成などにおいて用いられる。特に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。
【0070】
タッチパネルは、透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなり、本発明の透明導電性フィルムからなるタッチパネル用電極板は、タッチ側、ディスプレイ側のいずれのタッチパネル用電極板にも用いることができる。特に、本発明の透明導電性フィルムからなるタッチパネル用電極板は、ニュートリングの発生を抑えること、耐久性、表示特性を満足させこと、タッチパネルの薄型化の点から、ディスプレイ側のタッチパネル用電極板として用いることが好ましい。
【0071】
図5は、図1に示す本発明の透明導電性フィルムからなるタッチパネル用電極板を、ディスプレイ側のタッチパネル用電極板として用いた場合のタッチパネルの例を示したものである。すなわち、透明導電性薄膜3a、3bを有する一対のパネル板(タッチパネル用電極板)P1、P2を、互いに直交するように設けた透明導電性薄膜3a、3b同士が対向するように、スペーサsを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、ディスプレイ側(下側)のパネル板P1として、上記した図1に示す透明導電性フィルムを使用したものである。なお、図5において、図1に示す透明導電性フィルムの樹脂層2中の微粒子4は省略している。
【0072】
このタッチパネルにおいては、パネル板P2側より、入力ペンにて押圧打点したとき、透明導電性薄膜3a、3b同士が接触して、電気回路のON状態となり、上記押圧を解除すると、元のOFF状態に戻る、透明スイッチとして機能する。その際、パネル板P1が上記の透明導電性フィルムからなるため、ニュートリングの発生を抑えることができ、耐久性、表示特性を満足させることができる。
【0073】
なお、上記の図2において、パネル板P2は、プラスチックフィルムやガラス板などからなる透明基体8に透明導電性薄膜3bを設けたものであるが、上記のパネル板P1と同様の図1に示す透明導電性フィルムを使用してもよい。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の実施例を、比較例と対比して記載し、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
【0075】
実施例1
(塗工液の調製)
微粒子として、平均粒子径2.2μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.22μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.5部および平均粒子径3μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.3μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.1部の混合物を用いた。当該微粒子の混合物、紫外線硬化型樹脂(アクリル・ウレタン系樹脂,大日本インキ化学工業(株)製の商品名ユニディック17‐806)100重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア184)5重量部及びその固形分が50重量%となるように計量された溶剤(トルエン)とを混合した溶液を調製した。
【0076】
(樹脂層の形成)
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透明なフィルム基材の一方の面に、上記塗工液を、ワイヤーバーにより、乾燥後の塗工厚さが1.1μmになるように塗布した後、100℃で3分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、微細凹凸形状の表面の樹脂層を形成した。
【0077】
(透明導電性フィルムの作成)
次いで、上記樹脂層上に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる4×10-1Paの雰囲気中で、酸化インジウムおよび酸化スズの混合物の焼結体(酸化インジウム97重量%,酸化スズ3重量%)を用いたスパッタリング法により、厚さが20nmの酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物からなる透明導電性薄膜(ITO薄膜:屈折率2.0)を形成して、透明導電性フィルムを作成した。
【0078】
実施例2
実施例1で調製した塗工液を用いた。実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを1.4μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0079】
実施例3
実施例1で調製した塗工液を用いた。実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを1.8μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0080】
実施例4
実施例1で調製した塗工液を用いた。実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを0.8μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0081】
実施例5
(透明誘電体層の形成)
実施例1で形成した樹脂層の上に、アルゴンガス95%と酸素ガス5%とからなる4×10-1Paの雰囲気中で、酸化インジウムと酸化スズと酸化セリウムの混合物焼結体(酸化インジウム68重量%,酸化スズ2重量%,酸化セリウム30重量%)のターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ23nmの酸化インジウムと酸化スズと酸化セリウムとの複合酸化物からなる高屈折率薄膜(屈折率2.2)を形成した。この高屈折率薄膜の上に、シリカゾル(コルコート(株)製のコルコートP)を固形分濃度2%となるようにエタノールで希釈したものを塗布し、150℃で2分間乾燥、硬化させ、厚さ約50nmのSiO2薄膜(屈折率1.45)を形成した。なお、上記屈折率の測定は、アタゴ社製のアッベ屈折率計(DR−M2/1550)を用い、589nmの波長で測定した値である。
【0082】
(透明導電性フィルムの作成)
上記SiO2薄膜上に、実施例1と同様にして透明導電性薄膜(ITO薄膜)を形成して、透明導電性フィルムを作成した。
【0083】
比較例1
実施例1の塗工液の調製において、微粒子として、平均粒子径3μmの単分散のフィラーを0.6部用いたこと以外は実施例1と同様にして塗工液を調製した。また、当該塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0084】
比較例2
実施例1で調製した塗工液を用いた。実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを2.1μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0085】
比較例3
実施例1の塗工液の調製において、微粒子として、さらに平均粒子径4μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.4μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.1部を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗工液を調製した。当該塗工液を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成し、また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0086】
比較例4
実施例1の塗工液の調製において、微粒子として、さらに平均粒子径4μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.4μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.1部を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗工液を調製した。また、実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを1.4μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0087】
比較例5
実施例1の塗工液の調製において、微粒子として、さらに平均粒子径4μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.4μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.1部と平均粒子径5μmの単分散のフィラー(材料:架橋アクリル系樹脂,標準偏差0.5μm,綜研化学(株)製の商品グレード:MX‐タイプ)0.1部用いたこと以外は実施例1と同様にして塗工液を調製した。また、実施例1の樹脂層の形成において、樹脂層の塗工厚さを1.4μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂層を形成した。また実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作成した。
【0088】
上記の実施例1〜4および比較例1〜5の各透明導電性フィルムについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(透明導電性フィルムの透明導電性薄膜の表面の形状)
JIS1994‐B0601に準じ、触針式表面粗さ測定機として(株)小阪研究所製のET‐4000を用いて測定した。なお、測定はダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定することにより行い、それを記録した表面粗さ曲線から、中心線平均表面粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、局部山頂の平均間隔(S)および十点平均表面粗さ(Rz)を算出した。
【0090】
(透明導電性フィルムのヘイズの測定)
JIS−K7105に準じ、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHMG‐2DPを用いて測定した。
【0091】
(透明導電性フィルムの光の透過率の測定)
(株)島津製作所製の分光分析装置UV−240を用いて、光波長550nmにおける可視光線透過率を測定した。
【0092】
(タッチパネルの作成)
各例の透明導電性フィルムを一方(ディスプレイ側)のパネル板とし、他方のパネル板として、ガラス坂上に厚さが30nmのITO薄膜を上記同様の方法で形成したものを用い、この両パネル板を、ITO薄膜同士が対向するように、厚さが20μmのスペーサを介して両パネル板のギャップが150μmとなるように対向配置させ、スイッチ構体としてのタッチパネルを作製した。なお、両パネル板の各ITO薄膜は、上記の対向配置に先立って、あらかじめ互いに直交するように形成した。
【0093】
≪ニュートリングの発生≫
3:ニュートリングの発生が認められない。
2:ニュートリングの発生が認められるが、問題のないレベル。
1:ニュートリングの発生が顕著に認められる。
【0094】
≪ギラツキ≫
3:ギラツキが全くない。
2:ギラツキが小さく実用上問題はない。
1:ギラツキがある。
【0095】
<耐久性>
各例のタッチパネルについて、下記の方法により、ペン入力耐久性を測定した。
【0096】
≪高荷重ペン入力耐久性≫
(A):透明導電性フィルムで構成したパネル板側から、ポリアセタールからなるペン(ペン先R0.8mm)を用いて、荷重500gで30万回の摺動を行った。摺動後、以下のようにリニアリティーを測定し、高荷重ペン入力耐久性を評価した。
【0097】
[リニアリティーの測定方法]
透明導電積層体に5Vの電圧を印加し、透明導電積層体における、電圧を印加する端子A(測定開始位置)および端子B(測定終了位置)の間の出力電圧を測定した。
リニアリティーは、測定開始位置Aでの出力電圧をEA、測定終了位置Bでの出力電圧をEB、各測定点Xでの出力電圧をEX、理論値をEXXとすると、以下の計算から、求めることができる。
XX(理論値)={X・(EB−EA)/(B−A)}+EA
リニアリティー(%)=〔(EXX−EX)/(EB−EA)〕×100
【0098】
なお、リニアリティー測定の概略は、図6に示すとおりである。タッチパネルを用いる画像表示装置では、ペンで押さえられることにより上部パネルと下部パネルの接触部分の抵抗値から画面上に表示されるペンの位置が決定されている。上部および下部パネル表面の出力電圧分布が理論線(理想線)のようになっているものとして抵抗値は決められる。すると、電圧値が、図3の実測値のように理論線からずれると、実際のペン位置と抵抗値によって決まる画面上のペン位置がうまく同調しなくなる。理論線からのずれがリニアリティーであり、その値が大きいほど、実際のペン位置と画面上のペンの位置のずれが大きくなる。
【0099】
(B):また、透明導電性フィルムで構成したパネル板側から、ポリアセタールからなるペン(ペン先R0.8mm)を用いて、各荷重で10万回の摺動を行った。摺動後のリニアリティーが1.5%以下である最大荷重を求めた。この荷重が重いほど、ペン入力耐久性の特性が優れていることを意味する。
【0100】
【表1】

【0101】
上記実施例は、ニュートリングとギラツキの評価をいずれも2以上であり、また、ヘイズも2.0%以下と小さく設定でき、かつペン耐久性にも優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【図5】本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルを示す断面図である。
【図6】リニアリティー測定の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1 透明なフィルム基材
2 微細凹凸形状を有する樹脂層
3 透明導電性薄膜
4 微粒子
5 透明誘電性薄膜
6 透明基体
7 粘着剤層
P1 パネル板
P2 パネル板
s スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム基材の一方の面に、少なくとも、微細凹凸形状を有する樹脂層を介して、透明導電性薄膜が積層されている透明導電性フィルムであって、
透明導電性薄膜の表面は、
中心線平均粗さ(Ra)が0.11〜0.18μm、
最大高さ(Ry)が0.9〜1.6μm、かつ、
局部山頂の平均間隔(S)が0.05〜0.11mm、
であることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
透明導電性薄膜の表面は、十点平均表面粗さ(Rz)が、0.6〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
微細凹凸形状を有する樹脂層は、微粒子を含有しており、当該微粒子によって微細凹凸形状を形成していることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
微粒子は、平均粒径2±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子と、平均粒径3±0.4μmであり、かつ標準偏差が平均粒径の20%以内の微粒子との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
樹脂層の塗工厚みが、0.5〜2μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
樹脂層と透明導電性薄膜の間に、透明誘電体薄膜を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
透明なフィルム基材の透明誘電体薄膜を設けていない側の面に、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
透明基体は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層を介して積層した積層透明基体であることを特徴とする請求項7記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性フィルムを用いたタッチパネル用電極板。
【請求項10】
透明導電性薄膜を有するタッチ側のタッチパネル用電極板と透明導電性薄膜を有するディスプレイ側のタッチパネル用電極板を、透明導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、タッチパネル用電極板の少なくとも一方が、請求項9記載のタッチパネル用電極板からなることを特徴とするタッチパネル。
【請求項11】
請求項9記載のタッチパネル用電極板は、少なくともディスプレイ側のタッチパネル用電極板に用いられることを特徴とする請求項10記載のタッチパネル。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−103348(P2007−103348A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225493(P2006−225493)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】