透明導電性基板、色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池
ITO膜の耐酸性に優れた透明導電性基板は、透明基材とこの透明基材上に形成されたITO膜とを備える。ITO膜の酸化スズの含有割合が30重量%以上である。色素増感型太陽電池用電極は、この透明導電性基板と、そのITO膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有する。この色素増感型太陽電池用電極を色素増感型半導体電極として用いた色素増感型太陽電池が提供される。SnO2の割合を30重量%以上に増加させると耐酸性が大幅に向上する。ITO膜上に、交互吸着法により形成した交互吸着膜を酸処理により凹凸化してレプリカ層を形成し、このレプリカ層上に半導体膜を形成して色素増感型太陽電池用色素増感型半導体電極が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能な透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
本発明は、半導体電極の下部に位置する透明電極及び電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される対向電極用透明導電材として好適な透明導電材と、この透明導電材よりなる色素増感型太陽電池用電極及びこの電極を対向電極として備える色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
増感色素を吸着させた酸化物半導体を電極に用いて太陽電池を構成することは既に知られている。図1は、このような色素増感型太陽電池の一般的な構造を示す断面図である。図1に示す如く、ガラス基板等の基板1上にFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電膜2が設けられ、この透明導電膜2上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜(色素吸着半導体膜)3が形成され、色素増感型半導体電極4が設けられている。この色素増感型半導体電極4と対向して間隔をあけて対向電極5が配置されており、図示しない封止材により色素増感型半導体電極4と対向電極5との間に電解質6が封入されている。7は、半導体電極4と対向電極5との間隔を維持するために周縁部に設けられた絶縁性のスペーサである。
【0004】
色素吸着半導体膜3は、通常、色素を吸着させた酸化チタン薄膜よりなり、この酸化チタン膜はゾルゲル法により成膜される。この酸化チタン薄膜に吸着されている色素が可視光によって励起され、発生した電子を酸化チタン微粒子に渡すことによって発電が行われる。対向電極5は、ガラス又はプラスチック等の基板上にITOやFTO等の透明導電膜が形成され、この透明導電膜上に、透明導電膜と増感色素との間の電子の授受を促進させるための触媒としての白金膜又は炭素膜が、透過率を低下させない程度の膜厚に形成されたものである。また、電解質6としては、酸化還元性物質、例えば、LiI、NaI、KI、CaI2などの金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせ、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2などの金属臭化物と臭素の組み合わせ、好ましくは、金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせよりなる酸化還元性物質をプロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物等の溶媒に溶解してなる電解液が用いられている。
【0005】
色素増感型太陽電池において、発電効率を高く、かつ安定した特性を出すためには色素吸着半導体膜3の酸化チタン膜は、色素を十分に吸着できるような高比表面積かつ多孔質であることが要求される。従来、この酸化チタン膜は、ゾルゲル法で成膜されているが、高温処理が必要とされるゾルゲル法での成膜のためには、基板1としてガラスのような耐熱性の高いものしか用いることができず、熱に弱い高分子フィルム等の適用は不可能であった。そして、このことが色素増感型太陽電池のフレキシブル化、および軽量、薄肉化を阻む原因となっていた。
【0006】
高分子フィルムは、耐熱性が低く、その上にFTO膜をCVD(化学的蒸着法)により成膜することは不適当である。ITO等の酸化インジウム系材料はFTO等の酸化スズ系材料に比べて耐酸性に劣る。
【0007】
色素増感型太陽電池の対向電極や半導体電極の基板上に設ける透明導電膜として、ITO等の金属酸化物膜よりも抵抗値の低い金属又は合金膜を形成すると、電解液中のヨウ素等により、この膜が腐食を受けるため、このような膜を形成することはできない。このため、従来においては、対向電極や半導体電極の透明導電膜としては、ITO等の金属酸化物膜が採用されているが、このような金属酸化物膜よりなる透明導電膜は、抵抗値が十分に低いものではなく、このことが色素増感型太陽電池の光電変換効率を下げる原因となっている。
【0008】
[発明の概要]
本発明の第1−第3アスペクトは、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能なITO膜を備える透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0009】
第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、透明基材と該透明基材上に形成されたITO膜とを備える透明導電性基板において、該ITO膜の酸化スズの含有割合が30重量%以上であることを特徴とする。
【0010】
第2アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第1アスペクトの透明導電性基板と、該透明導電性基板のITO膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有するものであり、基板として高分子フィルムを用いたフレキシブル化が可能である。
【0011】
第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、耐酸性に優れ、耐酸性が必要とされる用途に極めて有効である。第2アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、そのITO膜上に、交互吸着法により形成した交互吸着膜を酸処理により凹凸化してレプリカ層を形成し、このレプリカ層上に半導体膜を形成して色素増感型太陽電池用色素増感型半導体電極を形成するための透明導電性基板として有用である。
【0012】
第3アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極として第2アスペクトの色素増感型太陽電池用電極を用いたものである。
【0013】
本発明の第4−第6アスペクトも、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能な透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0014】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、透明基材と該透明基材上に形成された透明導電膜とを備える透明導電性基板において、該透明導電膜上に酸化チタン薄膜が形成されていることを特徴とする。
【0015】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、第5アスペクトの色素増感型太陽電池用電極として好適である。
【0016】
第5アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第4アスペクトの透明導電性基板と、該透明導電性基板の酸化チタン薄膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有するものであり、基板として高分子フィルムを用いたフレキシブル化が可能である。
【0017】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、耐酸性に優れ、耐酸性が必要とされる用途に極めて有効である。第5アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、そのITO膜等の透明導電膜上に、交互吸着法により形成した交互吸着膜を酸処理により凹凸化してレプリカ層を形成し、このレプリカ層上に半導体膜を形成して色素増感型太陽電池用色素増感型半導体電極を形成するための透明導電性基板として有用である。
【0018】
第6アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極としてこのような本発明の色素増感型太陽電池用電極を用いたものである。
【0019】
本発明の第7−第9アスペクトは、抵抗値が十分に低く、しかも電解液によって腐食されず、色素増感型太陽電池の光電変換効率の向上に有効な色素増感型太陽電池用電極用透明導電材として有用な透明導電材と、この透明導電材よりなる色素増感型太陽電池用電極と、この電極を用いた色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0020】
第7アスペクトの透明導電材は、基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を設けた透明導電材であって、該メッシュ状導電体が、該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、及び該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程により形成されてなることを特徴とするものである。
【0021】
第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第7のアスペクトの透明導電材を備える。
【0022】
第9の色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極が請求項22に記載の電極であることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は色素増感型太陽電池の一般的な構成を示す断面図である。
【図2】図2a−2dは先願の半導体膜の形成方法を示す模式的な断面図である。
【図3】図3は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図4】図4は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図5】図5は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図6】図6は第8アスペクトの色素増感型太陽電池用対向電極の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図7】図7は別の実施の形態を示す色素増感型太陽電池用電極の断面図である。
【図8】図8は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】図9は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図10】図10は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図11】図11は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図12】図12は従来の問題点を示す色素増感型太陽電池の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板のITO膜について説明する。
【0025】
第1アスペクトに係るITO膜は、SnO2含有割合が30重量%以上と、従来のITO膜に比べてSnO2含有割合が多いものである。ITO膜のSnO2含有割合が30重量%未満では十分な耐酸性を得ることができない。ITO膜のSnO2含有割合は多い程耐酸性が向上するが、SnO2含有割合が過度に多いと抵抗値が増大するために、DCスパッタリングによる成膜が困難となる。形成されるITO膜の抵抗値も高くなることにより導電性が劣るものとなり、好ましくない。
【0026】
従って、ITO膜のSnO2含有割合は30重量%以上、特に30〜80重量%、とりわけ35〜70重量%とすることが好ましい。
【0027】
ITO膜が形成される透明基材としては、珪酸塩ガラス等のガラス板であっても良いが、特に高分子フィルム等のフレキシブル透明基材を用いたフレキシブルな透明導電性基板が好適である。高分子フィルムとしては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常75μm〜2mm程度である。ガラス基板を用いる場合、その厚さは通常0.5〜5mm程度である。
【0028】
透明基材上へのSnO2含有割合30重量%以上のITO膜の成膜は、低温成膜が可能であることから、スパッタリングによる成膜が好ましい。スパッタリングによるITO膜の成膜は、SnO2含有割合30重量%以上のITO膜ターゲットを用いるものであっても良く、金属又は合金よりなるターゲットを用いて酸素雰囲気中で行う反応性スパッタリングであっても良い。
【0029】
ITO膜は好ましくは100〜1000nm程度の厚さに形成される。
【0030】
第1アスペクトの透明導電性基板は、その耐酸性に優れるところから、酸処理を行う工程を有する、ITO膜上に半導体膜を形成する方法に適用するのに好適である。
【0031】
以下にこの酸処理を行う工程を有する、ITO膜上に半導体膜を形成する方法の一例の方法について図2a−2dを参照して説明する。
【0032】
この方法では、基板1上に透明導電膜(図2a−2dでは、構成を明瞭とするため、図示略)を形成しており、この透明導電膜上にまず交互吸着法により平坦なプリレプリカ層を形成し、このプリレプリカ層を凹凸化処理して凹凸レプリカ層を形成する。図2aの通りこの交互吸着法により形成された平坦な交互吸着膜11によりプリレプリカ層を形成し、これを酸を用いて凹凸化処理して図2bの通り凹凸状のレプリカ層を形成している。
【0033】
なお、この交互吸着法自体は公知の方法である。即ち、交互吸着法は、複合有機薄膜を作成する方法として、1992年にG.デッカーらによって発表された(Decher.G,Hong.J.D.and J.Schmit:Thin Solid Films,210/211,p.831(1992))方法であり、その作成プロセスにおいて、交互吸着(Layer−by−Layer Electrostatic Self−Assembly)の手法が利用される。G.デッカーらによって発表された基本的な方法によれば、まず、正の電解質ポリマー(カチオン性ポリマー)の水溶液と、負の電解質ポリマー(アニオン性ポリマー)の水溶液とが別々の容器に用意される。そして、これらの容器に、初期表面電荷を与えた基板(被成膜材料)を交互に浸すことにより、基板上に多層構造を有する複合有機超薄膜(交互吸着膜)が得られる。たとえば、被成膜材料としてガラス基板を用いた場合、このガラス基板の表面を親水処理して表面にOH−基を導入して、初期表面電荷として負の電荷を与える。そして、この表面が負に帯電した基板を、正の電解質ポリマー水溶液に浸せば、クーロン力により、少なくとも表面電荷が中和されるまで正の電解質ポリマーが表面に吸着し、1層の超薄膜が形成される。こうして形成された超薄膜の表面部分は、正に帯電していることになる。そこで、今度はこの基板を負の電解質ポリマー水溶液に浸せば、クーロン力により負の電解質ポリマーが吸着し、1層の超薄膜が形成されることになる。このようにして、基板を2つの容器に交互に浸すことにより、正の電解質ポリマーからなる超薄膜層と負の電解質ポリマーからなる超薄膜層とを交互に成膜することができ、多層構造をもった複合有機薄膜を形成することができる。
【0034】
図2a−5の方法の場合、正の電解質ポリマーとしてはポリアクリルアミン塩酸塩が好適であるが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン(+)、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチルイミンなどを用いることもできる。負の電解質ポリマーとしては、ポリアクリル酸が好適であるが、ポリパラフェニレン(−)、ポリスチレンスルホン酸、ポリチオフェン−3−アセティックアシド、ポリアミック酸、ポリメタクリル酸などを用いることもできる。
【0035】
これらの正のポリマー及び負のポリマーは適度な粘性の水溶液となるように別々に溶解され、別々の槽に収容される。透明導電膜付きの基板1を交互にこの槽内のポリマー水溶液に浸漬することにより交互吸着膜が形成される。1層の膜の厚さは0.1〜0.4μm程度が好適であり、層の数は5〜30特に10〜15程度が好ましい。
【0036】
1層を形成する場合、槽中に浸漬した後、引き上げ、純水でリンスし、これを複数回、例えば2〜10回程度繰り返すことにより所定膜厚の層を形成するようにしても良い。
【0037】
形成された交互吸着膜よりなるプリレプリカ層を凹凸化処理するための酸としては、塩酸、硫酸、硝酸など、好ましくは塩酸を用いることができるが、これに限定されない。酸の濃度はpH2.0〜2.8程度の酸が好適である。常温の場合、この酸に0.5〜10分程度浸漬することが好ましい。
【0038】
この酸処理により形成されたレプリカ層は、必要に応じ、好ましくは50〜90℃にて真空乾燥等により乾燥された後、図2cの通り、その上に半導体膜3Aが成膜される。半導体膜としては酸化チタン膜が好適であり、その膜厚は1〜20μm特に5〜15μm程度が好適である。
【0039】
この半導体膜の成膜方法としては、化学溶液析出法などの湿式法や、反応性スパッタ法などの乾式法など種々の成膜方法を採用することができる。
【0040】
成膜された半導体膜は、その後、水熱処理(例えば100〜150℃にて5〜15時間)あるいは焼成処理(例えば500〜700℃にて0.5〜2時間)しても良い。焼成時の雰囲気は空気もしくは酸素ガス中が好ましい。酸化チタンの場合、この水熱処理あるいは焼成処理により、微細結晶化する。
【0041】
この酸化チタン等の半導体膜を成膜した後、レプリカ層が残っている場合には、図2dの如くレプリカ層の除去を行う。上記の焼成処理を空気などの酸化性雰囲気で行ったときには、この焼成処理によってレプリカ層が除去されている。
【0042】
このレプリカ層の除去は、上記ポリマーを溶解除去させるためのアルカリ処理のほか、500〜700℃の温度で焼成することによって焼成除去するのが好適である。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。例えば、pH10〜12のアルカリ溶液に6〜12時間浸漬することにより、交互吸着膜が除去される。
【0043】
このようにして、凹凸に富み、比表面積が大きい半導体膜を基板の透明導電膜上に形成することができる。この方法によれば、表面粗さRMSが10〜100nm程度の高表面積の半導体膜を成膜することができる。
【0044】
図2a−2dでは、透明導電膜(図示せず)の上に凹凸を有した1層の半導体膜3Aを形成しているが、図3のように、透明導電膜の上に上記の湿式法や乾式法等の成膜方法によって平坦な半導体膜3Bを形成してから上記のプロセスを実行して凹凸半導体膜3Aを形成しても良い。
【0045】
「交互吸着膜の形成→凹凸化処理→半導体膜の成膜→レプリカ層の除去」を1セットとし、これを複数回繰り返すことにより、図4の通り多層の半導体膜3Aを形成しても良い。
【0046】
図5の通り、予め透明導電膜(図示せず)の上に平坦な半導体膜3Bを形成した後、複数層の半導体膜3Aを図4の如くして形成しても良い。
【0047】
第3アスペクトの色素増感型太陽電池は、半導体膜が好ましくは上記の方法により成膜された第2アスペクトに係る色素増感型半導体電極を備えるものであり、その他の構成は、図1に示すような従来の色素増感型太陽電池と同様の構成とされる。
【0048】
色素増感型半導体電極4の分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3の金属酸化物半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化インジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体の1種又は2種以上を用いることができる。特に、安定性、安全性の点から酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしてはアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の酸化チタン或いは水酸化チタン、含水酸化チタンが含まれるが、特にアナターゼ型酸化チタンが好ましい。また金属酸化物半導体膜は微細な結晶構造を有することが好ましい。
【0049】
酸化物半導体膜に吸着させる有機色素(分光増感色素)は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素の1種又は2種以上を用いることができる。分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが半導体への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れているため、金属錯体が好ましい。金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、特開平1−220380号公報、特表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体を用いることができる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。シアニン系色素としては、具体的には、NK1194、NK3422(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。メロシアニン系色素としては、具体的には、NK2426、NK2501(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。キサンテン系色素としては、具体的には、ウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセインが挙げられる。トリフェニルメタン色素としては、具体的には、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレットが挙げられる。
【0050】
有機色素(分光増感色素)を半導体膜に吸着させるこのためには、有機色素を有機溶媒に溶解させて調製した有機色素溶液中に、常温又は加熱下に酸化物半導体膜を基板ととも浸漬すれば良い。前記の溶液の溶媒としては、使用する分光増感色素を溶解するものであれば良く、具体的には、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドを用いることができる。
【0051】
対向電極5としては、導電性を有するものであれば良く、任意の導電性材料が用いられるが、電解質のI3−イオン等の酸化型のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン、コバルト、ニッケル、クロム等が挙げられる。
【0052】
色素増感型半導体電極4は、基板(透明基材)1上に、透明性導電膜2としてSnO2含有割合が30重量%以上のITO膜2を好ましくはスパッタリングにより形成し、その上に上記のようにして半導体膜3を形成し、上述のように色素を吸着して形成される。
【0053】
この色素を吸着させた半導体膜を有する半導体電極4に対向電極5として別の透明性導電膜をコートしたガラス板又は高分子フィルムなどの基板を対面させ、これらの電極間に電解質6を封止材により封入することにより色素増感型太陽電池が得られる。
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて第1−第3アスペクトをより具体的に説明する。
【実施例1】
【0055】
マグネトロンDCスパッタ装置にITOターゲット(SnO2含有割合:36重量%)をセットし、真空チャンバーに厚さ188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、Arガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した。その後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、PETフィルム上に約300nmの膜厚のITO膜を成膜して透明導電性フィルムを得た。
【0056】
この透明導電性フィルムをpH2.0の塩酸水溶液に浸漬させて経時毎に表面抵抗値を計測することにより耐酸性を評価し、結果を表1に示した。
【0057】
比較例1
実施例1において、ITOターゲットとしてSnO2含有割合10重量%のものを用いたこと以外は同様にして透明導電性フィルムを得、同様に耐酸性の評価を行って、結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より明らかなように、ITO膜のSnO2含有割合が10重量%の比較例1では、120分後の抵抗値は初期値に対して約3倍となったが、ITO膜のSnO2含有割合が36重量%の実施例1では、120分後の抵抗値の増加は初期値に対して15%以内であり、大幅な耐酸性の向上効果が認められる。
【0060】
以下に第4−第6アスペクトを詳細に説明する。
【0061】
第4−第6アスペクトにおいて、透明基材としては、珪酸塩ガラス等のガラス板であっても良いが、特に高分子フィルム等のフレキシブル透明基材を用いたフレキシブルな透明導電性基板が好適である。高分子フィルムとしては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常75μm〜2mm程度である。ガラス基板を用いる場合、その厚さは通常0.5〜5mm程度である。
【0062】
透明基材上に形成される透明導電膜としては、ITO、InTiO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、及びAZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)より選ばれる透明導電膜が挙げられるが、好ましくは透明導電膜はITO膜である。なお、透明導電膜としては、これらの2種以上の透明導電膜を積層しても良く、また、2種以上の材料を混合して用いても良い。
【0063】
ITO膜等の透明導電膜は通常100〜1000nm程度の厚さに形成される。
【0064】
透明導電膜上に形成される酸化チタン薄膜は、TiOx(x=1.7〜2.0、好ましくは1.8〜2.0)で表されるものであり、この酸化チタン薄膜の膜厚が薄過ぎると酸化チタン薄膜を設けたことによる耐酸性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎるとコストアップや、基材がフィルムの場合にはその柔軟性を損なうこととなる。従って、酸化チタン薄膜の膜厚は1〜500nm、特に10〜300nmであることが好ましい。
【0065】
透明導電膜及び酸化チタン薄膜は、低温成膜が可能であることから、スパッタリングにより成膜することが好ましい。スパッタリングによる透明導電膜及び酸化チタン薄膜の成膜は、金属酸化物ターゲットを用いるものであっても良く、金属又は合金よりなるターゲットを用いて酸素雰囲気中で行う反応性スパッタリングであっても良い。透明導電膜及び酸化チタン薄膜を共にスパッタリングで成膜する場合、これらの成膜を連続して行うことができ、効率的である。
【0066】
第4アスペクトの透明導電性基板は、耐酸性に優れるところから、酸処理を行う工程を有する。ITO膜等の透明導電膜上の酸化チタン薄膜上に更に半導体膜を形成する方法に適用するのに好適である。
【0067】
酸処理を行う工程を有する、ITO等の透明導電膜上に半導体膜を形成する好適な方法は、図2a−2d及び図3−5を参照しながら記述された前述の通りであるので、第4−第6アスペクトに援用される。
【0068】
第6アスペクトの色素増感型太陽電池は、半導体膜が好ましくはこの方法により成膜された第5アスペクトに係る色素増感型半導体電極を備えるものであり、その他の構成は、図1に示すような従来の色素増感型太陽電池と同様の構成とされる。
【0069】
色素増感型半導体電極4の分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3の金属酸化物半導体の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0070】
酸化物半導体膜に吸着させる有機色素(分光増感色素)の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0071】
有機色素(分光増感色素)を半導体膜に吸着させる方法の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0072】
対向電極5の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0073】
色素増感型半導体電極4は、基板(透明基材)1上に、ITO等の透明導電膜2と酸化チタン薄膜を好ましくはスパッタリングにより形成し、その上に上記のようにして半導体膜3を形成し、上述のように色素を吸着して形成される。
【0074】
この色素を吸着させた半導体膜を有する半導体電極4に対向電極5として別の透明性導電膜をコートしたガラス板又は高分子フィルムなどの基板を対面させ、これらの電極間に電解質6を封止材により封入することにより色素増感型太陽電池が得られる。
【0075】
以下に実施例及び比較例を挙げて第4−第6アスペクトをより具体的に説明する。
【実施例2】
【0076】
マグネトロンDCスパッタ装置にITOターゲット(SnO2含有割合:10重量%)とTiターゲットとをセットし、真空チャンバーに厚さ188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、Arガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した。その後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、PETフィルム上に約300nmの膜厚のITO膜を成膜した。次いで、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、再度チャンバー内にArガスを170sccm、O2ガスを30sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Tiターゲットに6kWの電力を印加し、反応性スパッタによりITO膜上に膜厚約30nmのTiO2薄膜を成膜して、透明導電性フィルムを得た。
【0077】
この透明導電性フィルムをpH2.0の塩酸水溶液に浸漬させて経時毎に表面抵抗値を計測することにより耐酸性を評価し、結果を表2に示した。
【0078】
比較例2
実施例2において、酸化チタン薄膜を成膜しなかったこと以外は同様にして透明導電性フィルムを得、同様に耐酸性の評価を行って、結果を表2に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
表2より明らかなように、ITO膜のみの比較例2では、120分後の抵抗値は初期値に対して約3倍となったが、ITO膜上に酸化チタン薄膜を成膜した実施例2では、360分後も抵抗値の変化は殆どなく、大幅な耐酸性の向上効果が認められる。
【0081】
次に第7−第9アスペクトについて説明する。
【0082】
第7アスペクトの透明導電材は、基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を有する。該メッシュ状導電体は、該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、及び該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程により形成されている。
【0083】
基材と透明導電膜との間に、この透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状導電体を設けることにより、このメッシュ状導電体(以下、この導電体を「補助電極」と称す場合がある。)で電極の低抵抗化を図ることができる。この補助電極は、透明導電膜により保護されているため、電解液により腐食を受けることはない。
【0084】
しかも補助電極としてのメッシュ状導電体は、基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程と、次いで基材面に溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程と、その後、基材面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去する第3の工程とを経て形成するため、光の透過率が高く、導電性の高いメッシュ状導電体を、低温にて容易かつ効率的に形成することができる。即ち、溶剤に対して可溶性の材料として、低粘性の材料によってドットを印刷、形成することができる。このため、ドット間の間隔を著しく小さくするように微細で精微な印刷を施すことができる。このドット同士の間の細い領域は、後に導電性材料が残存してメッシュ状導電体となる領域であるから、第7アスペクトによると、著しく細い導電性メッシュパターンを高精度にて形成することができる。この線幅を小さくすることにより、メッシュの開口率を大きくとることができる。
【0085】
第7アスペクトの透明導電材は、基材が高分子フィルムよりなる透明導電フィルムであることが好ましい。
【0086】
透明導電膜はスパッタ法により形成されたものであることが好ましく、透明導電膜は、特に反応性スパッタ法により形成されたものであることが好ましい。スパッタ法であれば、透明樹脂フィルム等の耐熱性の低い基板にも、良好な低抵抗膜を低温成膜することができる。更に、メッシュ状導電体上には湿式メッキ処理を施してより一層の低抵抗化を図ることが好ましい。
【0087】
第7アスペクトの透明導電材は、第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極、特に透明導電膜上に白金薄膜が設けられた第9アスペクトの色素増感型太陽電池の対向電極に好適であり、この白金薄膜もスパッタ法により形成されたものであることが好ましい。
【0088】
この対向電極においては、電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される際に半導体電極と対向する面の少なくとも非周縁部に、半導体電極との接触防止用の、絶縁性材料よりなるスペーサが設けられていることが好ましい。
【0089】
即ち、色素増感型太陽電池において、半導体電極4と対向電極5との間に電解液を注入したユニットは、図12に示す如く、対向電極5のそり等の変形により、対向電極5と半導体電極4との間隔がばらつき、場合によっては、対向電極5と半導体電極4とが接触して短絡に到ることがある。この対向電極5の変形は、色素増感型太陽電池が大面積化した場合、スペーサ7による電極間隔の保持が困難となり、特に著しい。また、近年、色素増感型太陽電池の薄肉、軽量化等の要望から、対向電極5として基材フィルム上に導電膜を形成したものが適用されるようになってきているが、このようなフィルムタイプの対向電極にあっては、そり等の変形が起こり易く、しかもその変形量も大きいため、スペーサ7,7間の電極間隔を一定に保つことが難しい。このような電極間隔のばらつきは、色素増感型太陽電池の光電変換効率のばらつきにつながり、著しい場合には、短絡のために発電不良となる。
【0090】
対向電極の半導体電極と対向する面の非周縁部にも、半導体電極との接触防止用の絶縁性材料よりなるスペーサが設けられることにより、このスペーサにより対向電極の変形を防止し、対向電極と半導体電極との間隔を一定に保つことが可能となる。
【0091】
また、このスペーサの高さを制御することにより、電極間距離の微調整も可能となり、これにより光電変換効率の向上を図ることもできる。
【0092】
しかも、対向電極にスペーサが設けられていることから、別途スペーサを用いることなく太陽電池の組み立てを行うこともでき、組み立てに必要な部品点数が減ることにより、太陽電池を容易に組み立てることができるようになる。
【0093】
このスペーサはドット状のスペーサ(以下「ドットスペーサ」と称す。)であることが好ましく、また、このスペーサは透明絶縁性材料よりなることが好ましい。
【0094】
第9アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極として、第8アスペクトの電極を用いたものであり、低抵抗で耐久性に優れた電極により、良好な光電変換効率で発電することができる。
【0095】
従って、第7−第9アスペクトによれば、低抵抗で耐久性に優れた透明導電材及び色素増感型太陽電池用電極により、光電変換効率に優れた色素増感型太陽電池が提供される。
【0096】
以下に図面を参照して第7−第9アスペクトの透明導電材、色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下においては、第7アスペクトの透明導電材を色素増感型太陽電池用電極に適用する場合を例示して説明するが、第7アスペクトの透明導電材は、色素増感型太陽電池用電極に限らず、電極面に耐腐食性が要求され、しかも透明性と薄肉、軽量性、更にはフレキシブル性が要求される様々な用途に好適に使用される。
【0097】
図6は、第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極の実施の形態を示す斜視図であり、図7は別の実施の形態を示す断面図である。
【0098】
図6の色素増感型太陽電池用電極10は、基材フィルム11上に金属又は合金のメッシュよりなる補助電極12が設けられ、この上に透明導電膜13が形成されている。また、図2の色素増感型太陽電池用対向電極10Aは、基材フィルム11上に補助電極12が設けられ、この上に透明導電膜13が形成され、この透明導電膜13上に白金(Pt)薄膜14が形成され、更に、このPt薄膜14上に絶縁性材料よりなるドットスペーサ15が形成されている。
【0099】
基材フィルム11としては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常12μm〜2mm程度である。
【0100】
補助電極12を形成する金属又は合金としては、透明導電膜13よりも抵抗値の低い材料であれば良く、特に制限はないが、一般的には、Ag、Ag合金(Ag/Pd、Ag/Nd、Ag/Au等)、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ni、Cr合金等の1種又は2種以上が用いられる。
【0101】
補助電極12は、透明性を損なわない程度に薄膜状に形成することも考えられるが、そのような薄膜状に形成した膜状補助電極では、十分な低抵抗化の効果を得ることができないことから、図6に示す如く、メッシュ状に形成する。このメッシュ状補助電極12の線形や目開きについては特に制限はないが、線径が過度に細く、目開きが過度に大きいと十分な低抵抗化効果を得ることができず、逆に線径が過度に太く、目開きが過度に小さいと電極の透明性が損なわれる。従って、メッシュ状補助電極12の線径は10〜1000μm、目開き(電極面積に対する開口部の面積割合)は80%以上とすることが好ましい。
【0102】
以下に、このようなメッシュ状導電体よりなる補助電極12の形成方法について、図8−11を参照して説明する。図8−11は第7に係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【0103】
まず図8,9のように高分子フィルム21上に水等の溶剤に対して可溶な材料を用いてドット22を印刷する。次いで、図10の通り、この高分子フィルム21のドット22上及びドット22間のフィルム露出面のすべてを覆うように導電材料層23を形成する。次に、このフィルム21を水等の溶剤によって洗浄する。この際、必要に応じ、超音波照射やブラシ、スポンジ等で擦るなどの溶解促進手段を併用してもよい。
【0104】
これにより、図11の通り、可溶性のドット22が溶解し、このドット22上の導電材料もフィルム21から剥れて除去される。そして、ドット同士の間の領域に形成された導電材料よりなるメッシュ状導電体パターン24がフィルム21上に残る。このメッシュ状導電体パターン24は、ドット22間の領域を占めるものであるから、全体としてはメッシュ状となる。
【0105】
従って、ドット22間の間隙を狭くしておくことにより、線幅の小さいメッシュ状のメッシュ状導電体パターン24が形成される。また、各ドット22の面積を広くすることにより、開口率の大きなメッシュ状導電体パターン24が形成される。ドット22を形成するための前記水等に対して可溶な印刷材料は、微粒子を分散させる必要のないものであり、低粘性のもので足りる。この低粘性の印刷材料によれば、微細なドットパターンとなるようにドットを印刷することができる。
【0106】
なお、上記図11の工程の後、必要に応じ仕上げ洗浄(リンス)し、乾燥を行う。
【0107】
高分子フィルム21上に形成するドット22は印刷により形成されることが好ましい。印刷材料としては、ドット22を除去させる溶剤に対して可溶な材料の溶液が用いられる。このドット22を除去させる溶剤としては、有機溶剤であってもよいが、安価であると共に、環境への影響の点からして水が好ましい。水は、通常の水のほか、酸、アルカリ又は界面活性剤を含んだ水溶液であってもよい。この印刷材料には、印刷仕上り状況を確認し易くするために顔料や染料を混ぜてもよい。
【0108】
溶剤をこのように水とする関係からして、ドット22の形成材料としては水溶性の高分子材料が好ましくは、具体的にはポリビニルアルコールなどが好適である。
【0109】
ドット22は、それらの間のフィルム露出領域がメッシュ状となるように印刷される。好ましくは、このフィルム露出領域の線幅が30μm以下となるように印刷される。印刷手法としてはグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷が好適であるが、細線化のためにはグラビア印刷が好適である。
【0110】
ドット22の形状は、円、楕円、角形など任意であるが、角形特に正方形であることが好ましい。ドット22の印刷厚みは、特に限定されるものではないが、通常は0.1〜5μm程度とされる。
【0111】
ドット22の印刷後、好ましくは乾燥し、次いで前述の補助電極形成材料により導電材料層23を形成する。
【0112】
この導電材料層23の厚さは、薄過ぎるとメッシュ状導電体を形成することによる低抵抗化を十分に図れず、厚過ぎると得られる色素増感型太陽電池用電極の厚さに影響を及ぼすと共に、光透過性を低減してしまうことから、0.1〜100μm程度とするのが好ましい。
【0113】
導電材料層23の形成手法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着などの気相メッキ法や、液相メッキ(電解メッキ、無電解メッキ等)、印刷、塗布などが例示されるが、広義の気相メッキ(スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着)又は液相メッキが好適である。
【0114】
この導電材料層23の形成後、前記の通り、溶剤好ましくは水を用いてドット22を除去し、必要に応じ乾燥して補助電極としてのメッシュ状導電体が形成される。
【0115】
なお、形成されたメッシュ状導電体に更に湿式メッキを行って湿式メッキ層を形成することにより、より一層の低抵抗化を図ることも可能である。
【0116】
このようにして形成された補助電極12上に形成する透明導電膜13は、ITO、FTO、ATO、SnO2の透明導電膜であって、その膜厚は、通常100〜1000nm程度であることが好ましい。特に、I2に対する腐食に強いSnO2系の透明導電膜が好ましい。
【0117】
この透明導電膜13は、スパッタ法により形成することが好ましく、特に酸素雰囲気ガスを用いた反応性スパッタ法で形成することが好ましい。スパッタ法であれば、基材フィルム11の耐熱温度以下の低温で、補助電極12及び透明導電膜13を連続的に形成することができ、効率的である。
【0118】
図6に示す電極10は、透明導電膜上に更に色素吸着半導体膜を形成して色素増感型太陽電池の半導体電極とすることもできる。また、図7に示す如く、更にPt薄膜14を形成して色素増感型太陽電池の対向電極とすることもできる。
【0119】
図7の対向電極10Aにおいて、この透明導電膜13上に形成されるPt薄膜14は、透明性を損なうことがないように、通常0.1〜10nm程度の厚さに形成される。なお、このPt薄膜の代りに炭素膜を形成しても良い。
【0120】
このPt薄膜14もスパッタ法により形成することにより、透明導電膜13及びPt薄膜14を連続的に低温成膜することができ効率的である。
【0121】
図7の対向電極10Aにおける絶縁性ドットスペーサ15は、透明絶縁性材料より形成されることが好ましく、このような透明絶縁性ドットスペーサ15を形成する透明絶縁性材料としては、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0122】
絶縁性ドットスペーサ15は、色素増感型太陽電池において、半導体電極と対向電極との間に確保すべき電極間隔と同程度の高さに形成される。
【0123】
個々の絶縁性ドットスペーサ15の形状には特に制限はなく、図7に示すような円錐台形状の他、角錐台形状、円柱形状、角柱形状であっても良い。
【0124】
絶縁性ドットスペーサ15の形成割合が少な過ぎるとドットスペーサ15を形成したことによる対向電極の変形防止、電極間隔の維持効果を十分に得ることができず、多過ぎると対向電極10Aの有効電極面積が減少し、光電変換効率を低下させる原因となる。従って、絶縁性ドットスペーサの形成割合は、対向電極10Aに用いた基材フィルム11の種類による変形のし易さや、対向電極10Aの面積による変形のし易さ等によっても異なるが、対向電極10Aの電極面積に対するドットスペーサ15の底面積(電極面への投影面積)の合計の割合が1%以下となるように形成することが好ましい。
【0125】
なお、個々のドットスペーサ15の高さは、必ずしも同一である必要はなく、部分的に異なる高さのドットスペーサ15を形成することも可能である。また、個々のドットスペーサ15の形状や大きさ(電極面への投影面積)も必ずしも同一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
【0126】
前述の透明絶縁性材料を用いて、このようなドットスペーサ15を形成する方法としては、例えば補助電極12、透明導電膜13及びPt薄膜14を形成した基材フィルム11に対して、スクリーン印刷で形成する方法が挙げられる。
【0127】
なお、本発明において、対向電極10Aに形成するスペーサは、対向電極の導電性を大きく低減することなく、半導体電極との接触を防止し得るようなものであれば良く、図2に示すようなドットスペーサの他、線状(直線状又は曲線状)、或いは、格子状、或いは、これらを組み合わせたスペーサであっても良い。この場合においても、スペーサの形成割合(面積割合)は、前述の範囲とすることが好ましい。
【0128】
このようなドットスペーサ15等のスペーサは、対向電極の電極面の全面にわたって設けられても良く、電極面の非周縁部のみに設けられても良い。即ち、ドットスペーサ15等のスペーサを電極面の非周縁部のみに設け、周縁部には、図1に示すような従来のスペーサ7を設けても良い。
【0129】
周縁部に従来と同様のスペーサを設ける場合、非周縁部に設けるスペーサは必ずしも保持すべき電極間隔と同等の高さである必要はなく、その高さよりも若干低くしても、電極同士の接触は十分に防止することができる。また、本発明に係るスペーサを対向電極の電極面に全面的に設ける場合には、周縁部に設ける従来の別部品のスペーサが不要となり、太陽電池の組み立てが容易となる。
【0130】
第9アスペクトの色素増感型太陽電池は、このような本発明の電極を用いて常法に従って容易に組み立てられる。特に図7に示す対向電極を用いた場合には、上述の如く、別部品としてのスペーサを不要とすることもでき、組み立て作業性に優れる。
【0131】
なお、第7−第9アスペクトは、特に変形し易い基材フィルムを用いたフィルムタイプの透明導電フィルムに好適であるが、何らこれに限定されず、ガラス基板を用いた透明導電基板にも適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能な透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
本発明は、半導体電極の下部に位置する透明電極及び電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される対向電極用透明導電材として好適な透明導電材と、この透明導電材よりなる色素増感型太陽電池用電極及びこの電極を対向電極として備える色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
増感色素を吸着させた酸化物半導体を電極に用いて太陽電池を構成することは既に知られている。図1は、このような色素増感型太陽電池の一般的な構造を示す断面図である。図1に示す如く、ガラス基板等の基板1上にFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電膜2が設けられ、この透明導電膜2上に分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜(色素吸着半導体膜)3が形成され、色素増感型半導体電極4が設けられている。この色素増感型半導体電極4と対向して間隔をあけて対向電極5が配置されており、図示しない封止材により色素増感型半導体電極4と対向電極5との間に電解質6が封入されている。7は、半導体電極4と対向電極5との間隔を維持するために周縁部に設けられた絶縁性のスペーサである。
【0004】
色素吸着半導体膜3は、通常、色素を吸着させた酸化チタン薄膜よりなり、この酸化チタン膜はゾルゲル法により成膜される。この酸化チタン薄膜に吸着されている色素が可視光によって励起され、発生した電子を酸化チタン微粒子に渡すことによって発電が行われる。対向電極5は、ガラス又はプラスチック等の基板上にITOやFTO等の透明導電膜が形成され、この透明導電膜上に、透明導電膜と増感色素との間の電子の授受を促進させるための触媒としての白金膜又は炭素膜が、透過率を低下させない程度の膜厚に形成されたものである。また、電解質6としては、酸化還元性物質、例えば、LiI、NaI、KI、CaI2などの金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせ、LiBr、NaBr、KBr、CaBr2などの金属臭化物と臭素の組み合わせ、好ましくは、金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせよりなる酸化還元性物質をプロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物等の溶媒に溶解してなる電解液が用いられている。
【0005】
色素増感型太陽電池において、発電効率を高く、かつ安定した特性を出すためには色素吸着半導体膜3の酸化チタン膜は、色素を十分に吸着できるような高比表面積かつ多孔質であることが要求される。従来、この酸化チタン膜は、ゾルゲル法で成膜されているが、高温処理が必要とされるゾルゲル法での成膜のためには、基板1としてガラスのような耐熱性の高いものしか用いることができず、熱に弱い高分子フィルム等の適用は不可能であった。そして、このことが色素増感型太陽電池のフレキシブル化、および軽量、薄肉化を阻む原因となっていた。
【0006】
高分子フィルムは、耐熱性が低く、その上にFTO膜をCVD(化学的蒸着法)により成膜することは不適当である。ITO等の酸化インジウム系材料はFTO等の酸化スズ系材料に比べて耐酸性に劣る。
【0007】
色素増感型太陽電池の対向電極や半導体電極の基板上に設ける透明導電膜として、ITO等の金属酸化物膜よりも抵抗値の低い金属又は合金膜を形成すると、電解液中のヨウ素等により、この膜が腐食を受けるため、このような膜を形成することはできない。このため、従来においては、対向電極や半導体電極の透明導電膜としては、ITO等の金属酸化物膜が採用されているが、このような金属酸化物膜よりなる透明導電膜は、抵抗値が十分に低いものではなく、このことが色素増感型太陽電池の光電変換効率を下げる原因となっている。
【0008】
[発明の概要]
本発明の第1−第3アスペクトは、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能なITO膜を備える透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0009】
第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、透明基材と該透明基材上に形成されたITO膜とを備える透明導電性基板において、該ITO膜の酸化スズの含有割合が30重量%以上であることを特徴とする。
【0010】
第2アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第1アスペクトの透明導電性基板と、該透明導電性基板のITO膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有するものであり、基板として高分子フィルムを用いたフレキシブル化が可能である。
【0011】
第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、耐酸性に優れ、耐酸性が必要とされる用途に極めて有効である。第2アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、そのITO膜上に、交互吸着法により形成した交互吸着膜を酸処理により凹凸化してレプリカ層を形成し、このレプリカ層上に半導体膜を形成して色素増感型太陽電池用色素増感型半導体電極を形成するための透明導電性基板として有用である。
【0012】
第3アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極として第2アスペクトの色素増感型太陽電池用電極を用いたものである。
【0013】
本発明の第4−第6アスペクトも、耐酸性が高く、耐酸性が求められる用途においても十分に適用可能な透明導電性基板と、この透明導電性基板を備える色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0014】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、透明基材と該透明基材上に形成された透明導電膜とを備える透明導電性基板において、該透明導電膜上に酸化チタン薄膜が形成されていることを特徴とする。
【0015】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、第5アスペクトの色素増感型太陽電池用電極として好適である。
【0016】
第5アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第4アスペクトの透明導電性基板と、該透明導電性基板の酸化チタン薄膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有するものであり、基板として高分子フィルムを用いたフレキシブル化が可能である。
【0017】
第4アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、耐酸性に優れ、耐酸性が必要とされる用途に極めて有効である。第5アスペクトの耐酸性透明導電性基板は、そのITO膜等の透明導電膜上に、交互吸着法により形成した交互吸着膜を酸処理により凹凸化してレプリカ層を形成し、このレプリカ層上に半導体膜を形成して色素増感型太陽電池用色素増感型半導体電極を形成するための透明導電性基板として有用である。
【0018】
第6アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極としてこのような本発明の色素増感型太陽電池用電極を用いたものである。
【0019】
本発明の第7−第9アスペクトは、抵抗値が十分に低く、しかも電解液によって腐食されず、色素増感型太陽電池の光電変換効率の向上に有効な色素増感型太陽電池用電極用透明導電材として有用な透明導電材と、この透明導電材よりなる色素増感型太陽電池用電極と、この電極を用いた色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0020】
第7アスペクトの透明導電材は、基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を設けた透明導電材であって、該メッシュ状導電体が、該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、及び該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程により形成されてなることを特徴とするものである。
【0021】
第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極は、第7のアスペクトの透明導電材を備える。
【0022】
第9の色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極が請求項22に記載の電極であることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は色素増感型太陽電池の一般的な構成を示す断面図である。
【図2】図2a−2dは先願の半導体膜の形成方法を示す模式的な断面図である。
【図3】図3は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図4】図4は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図5】図5は図2a−2dの方法により成膜された半導体膜の模式的な断面図である。
【図6】図6は第8アスペクトの色素増感型太陽電池用対向電極の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図7】図7は別の実施の形態を示す色素増感型太陽電池用電極の断面図である。
【図8】図8は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】図9は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図10】図10は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図11】図11は第7アスペクトに係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【図12】図12は従来の問題点を示す色素増感型太陽電池の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、第1アスペクトの耐酸性透明導電性基板のITO膜について説明する。
【0025】
第1アスペクトに係るITO膜は、SnO2含有割合が30重量%以上と、従来のITO膜に比べてSnO2含有割合が多いものである。ITO膜のSnO2含有割合が30重量%未満では十分な耐酸性を得ることができない。ITO膜のSnO2含有割合は多い程耐酸性が向上するが、SnO2含有割合が過度に多いと抵抗値が増大するために、DCスパッタリングによる成膜が困難となる。形成されるITO膜の抵抗値も高くなることにより導電性が劣るものとなり、好ましくない。
【0026】
従って、ITO膜のSnO2含有割合は30重量%以上、特に30〜80重量%、とりわけ35〜70重量%とすることが好ましい。
【0027】
ITO膜が形成される透明基材としては、珪酸塩ガラス等のガラス板であっても良いが、特に高分子フィルム等のフレキシブル透明基材を用いたフレキシブルな透明導電性基板が好適である。高分子フィルムとしては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常75μm〜2mm程度である。ガラス基板を用いる場合、その厚さは通常0.5〜5mm程度である。
【0028】
透明基材上へのSnO2含有割合30重量%以上のITO膜の成膜は、低温成膜が可能であることから、スパッタリングによる成膜が好ましい。スパッタリングによるITO膜の成膜は、SnO2含有割合30重量%以上のITO膜ターゲットを用いるものであっても良く、金属又は合金よりなるターゲットを用いて酸素雰囲気中で行う反応性スパッタリングであっても良い。
【0029】
ITO膜は好ましくは100〜1000nm程度の厚さに形成される。
【0030】
第1アスペクトの透明導電性基板は、その耐酸性に優れるところから、酸処理を行う工程を有する、ITO膜上に半導体膜を形成する方法に適用するのに好適である。
【0031】
以下にこの酸処理を行う工程を有する、ITO膜上に半導体膜を形成する方法の一例の方法について図2a−2dを参照して説明する。
【0032】
この方法では、基板1上に透明導電膜(図2a−2dでは、構成を明瞭とするため、図示略)を形成しており、この透明導電膜上にまず交互吸着法により平坦なプリレプリカ層を形成し、このプリレプリカ層を凹凸化処理して凹凸レプリカ層を形成する。図2aの通りこの交互吸着法により形成された平坦な交互吸着膜11によりプリレプリカ層を形成し、これを酸を用いて凹凸化処理して図2bの通り凹凸状のレプリカ層を形成している。
【0033】
なお、この交互吸着法自体は公知の方法である。即ち、交互吸着法は、複合有機薄膜を作成する方法として、1992年にG.デッカーらによって発表された(Decher.G,Hong.J.D.and J.Schmit:Thin Solid Films,210/211,p.831(1992))方法であり、その作成プロセスにおいて、交互吸着(Layer−by−Layer Electrostatic Self−Assembly)の手法が利用される。G.デッカーらによって発表された基本的な方法によれば、まず、正の電解質ポリマー(カチオン性ポリマー)の水溶液と、負の電解質ポリマー(アニオン性ポリマー)の水溶液とが別々の容器に用意される。そして、これらの容器に、初期表面電荷を与えた基板(被成膜材料)を交互に浸すことにより、基板上に多層構造を有する複合有機超薄膜(交互吸着膜)が得られる。たとえば、被成膜材料としてガラス基板を用いた場合、このガラス基板の表面を親水処理して表面にOH−基を導入して、初期表面電荷として負の電荷を与える。そして、この表面が負に帯電した基板を、正の電解質ポリマー水溶液に浸せば、クーロン力により、少なくとも表面電荷が中和されるまで正の電解質ポリマーが表面に吸着し、1層の超薄膜が形成される。こうして形成された超薄膜の表面部分は、正に帯電していることになる。そこで、今度はこの基板を負の電解質ポリマー水溶液に浸せば、クーロン力により負の電解質ポリマーが吸着し、1層の超薄膜が形成されることになる。このようにして、基板を2つの容器に交互に浸すことにより、正の電解質ポリマーからなる超薄膜層と負の電解質ポリマーからなる超薄膜層とを交互に成膜することができ、多層構造をもった複合有機薄膜を形成することができる。
【0034】
図2a−5の方法の場合、正の電解質ポリマーとしてはポリアクリルアミン塩酸塩が好適であるが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン(+)、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチルイミンなどを用いることもできる。負の電解質ポリマーとしては、ポリアクリル酸が好適であるが、ポリパラフェニレン(−)、ポリスチレンスルホン酸、ポリチオフェン−3−アセティックアシド、ポリアミック酸、ポリメタクリル酸などを用いることもできる。
【0035】
これらの正のポリマー及び負のポリマーは適度な粘性の水溶液となるように別々に溶解され、別々の槽に収容される。透明導電膜付きの基板1を交互にこの槽内のポリマー水溶液に浸漬することにより交互吸着膜が形成される。1層の膜の厚さは0.1〜0.4μm程度が好適であり、層の数は5〜30特に10〜15程度が好ましい。
【0036】
1層を形成する場合、槽中に浸漬した後、引き上げ、純水でリンスし、これを複数回、例えば2〜10回程度繰り返すことにより所定膜厚の層を形成するようにしても良い。
【0037】
形成された交互吸着膜よりなるプリレプリカ層を凹凸化処理するための酸としては、塩酸、硫酸、硝酸など、好ましくは塩酸を用いることができるが、これに限定されない。酸の濃度はpH2.0〜2.8程度の酸が好適である。常温の場合、この酸に0.5〜10分程度浸漬することが好ましい。
【0038】
この酸処理により形成されたレプリカ層は、必要に応じ、好ましくは50〜90℃にて真空乾燥等により乾燥された後、図2cの通り、その上に半導体膜3Aが成膜される。半導体膜としては酸化チタン膜が好適であり、その膜厚は1〜20μm特に5〜15μm程度が好適である。
【0039】
この半導体膜の成膜方法としては、化学溶液析出法などの湿式法や、反応性スパッタ法などの乾式法など種々の成膜方法を採用することができる。
【0040】
成膜された半導体膜は、その後、水熱処理(例えば100〜150℃にて5〜15時間)あるいは焼成処理(例えば500〜700℃にて0.5〜2時間)しても良い。焼成時の雰囲気は空気もしくは酸素ガス中が好ましい。酸化チタンの場合、この水熱処理あるいは焼成処理により、微細結晶化する。
【0041】
この酸化チタン等の半導体膜を成膜した後、レプリカ層が残っている場合には、図2dの如くレプリカ層の除去を行う。上記の焼成処理を空気などの酸化性雰囲気で行ったときには、この焼成処理によってレプリカ層が除去されている。
【0042】
このレプリカ層の除去は、上記ポリマーを溶解除去させるためのアルカリ処理のほか、500〜700℃の温度で焼成することによって焼成除去するのが好適である。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。例えば、pH10〜12のアルカリ溶液に6〜12時間浸漬することにより、交互吸着膜が除去される。
【0043】
このようにして、凹凸に富み、比表面積が大きい半導体膜を基板の透明導電膜上に形成することができる。この方法によれば、表面粗さRMSが10〜100nm程度の高表面積の半導体膜を成膜することができる。
【0044】
図2a−2dでは、透明導電膜(図示せず)の上に凹凸を有した1層の半導体膜3Aを形成しているが、図3のように、透明導電膜の上に上記の湿式法や乾式法等の成膜方法によって平坦な半導体膜3Bを形成してから上記のプロセスを実行して凹凸半導体膜3Aを形成しても良い。
【0045】
「交互吸着膜の形成→凹凸化処理→半導体膜の成膜→レプリカ層の除去」を1セットとし、これを複数回繰り返すことにより、図4の通り多層の半導体膜3Aを形成しても良い。
【0046】
図5の通り、予め透明導電膜(図示せず)の上に平坦な半導体膜3Bを形成した後、複数層の半導体膜3Aを図4の如くして形成しても良い。
【0047】
第3アスペクトの色素増感型太陽電池は、半導体膜が好ましくは上記の方法により成膜された第2アスペクトに係る色素増感型半導体電極を備えるものであり、その他の構成は、図1に示すような従来の色素増感型太陽電池と同様の構成とされる。
【0048】
色素増感型半導体電極4の分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3の金属酸化物半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化インジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体の1種又は2種以上を用いることができる。特に、安定性、安全性の点から酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしてはアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の酸化チタン或いは水酸化チタン、含水酸化チタンが含まれるが、特にアナターゼ型酸化チタンが好ましい。また金属酸化物半導体膜は微細な結晶構造を有することが好ましい。
【0049】
酸化物半導体膜に吸着させる有機色素(分光増感色素)は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つものであり、種々の金属錯体や有機色素の1種又は2種以上を用いることができる。分光増感色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基の官能基を有するものが半導体への吸着が速いため、好ましい。また、分光増感の効果や耐久性に優れているため、金属錯体が好ましい。金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、特開平1−220380号公報、特表平5−504023号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛の錯体を用いることができる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。シアニン系色素としては、具体的には、NK1194、NK3422(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。メロシアニン系色素としては、具体的には、NK2426、NK2501(いずれも日本感光色素研究所(株)製)が挙げられる。キサンテン系色素としては、具体的には、ウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセインが挙げられる。トリフェニルメタン色素としては、具体的には、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレットが挙げられる。
【0050】
有機色素(分光増感色素)を半導体膜に吸着させるこのためには、有機色素を有機溶媒に溶解させて調製した有機色素溶液中に、常温又は加熱下に酸化物半導体膜を基板ととも浸漬すれば良い。前記の溶液の溶媒としては、使用する分光増感色素を溶解するものであれば良く、具体的には、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドを用いることができる。
【0051】
対向電極5としては、導電性を有するものであれば良く、任意の導電性材料が用いられるが、電解質のI3−イオン等の酸化型のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン、コバルト、ニッケル、クロム等が挙げられる。
【0052】
色素増感型半導体電極4は、基板(透明基材)1上に、透明性導電膜2としてSnO2含有割合が30重量%以上のITO膜2を好ましくはスパッタリングにより形成し、その上に上記のようにして半導体膜3を形成し、上述のように色素を吸着して形成される。
【0053】
この色素を吸着させた半導体膜を有する半導体電極4に対向電極5として別の透明性導電膜をコートしたガラス板又は高分子フィルムなどの基板を対面させ、これらの電極間に電解質6を封止材により封入することにより色素増感型太陽電池が得られる。
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて第1−第3アスペクトをより具体的に説明する。
【実施例1】
【0055】
マグネトロンDCスパッタ装置にITOターゲット(SnO2含有割合:36重量%)をセットし、真空チャンバーに厚さ188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、Arガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した。その後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、PETフィルム上に約300nmの膜厚のITO膜を成膜して透明導電性フィルムを得た。
【0056】
この透明導電性フィルムをpH2.0の塩酸水溶液に浸漬させて経時毎に表面抵抗値を計測することにより耐酸性を評価し、結果を表1に示した。
【0057】
比較例1
実施例1において、ITOターゲットとしてSnO2含有割合10重量%のものを用いたこと以外は同様にして透明導電性フィルムを得、同様に耐酸性の評価を行って、結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より明らかなように、ITO膜のSnO2含有割合が10重量%の比較例1では、120分後の抵抗値は初期値に対して約3倍となったが、ITO膜のSnO2含有割合が36重量%の実施例1では、120分後の抵抗値の増加は初期値に対して15%以内であり、大幅な耐酸性の向上効果が認められる。
【0060】
以下に第4−第6アスペクトを詳細に説明する。
【0061】
第4−第6アスペクトにおいて、透明基材としては、珪酸塩ガラス等のガラス板であっても良いが、特に高分子フィルム等のフレキシブル透明基材を用いたフレキシブルな透明導電性基板が好適である。高分子フィルムとしては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常75μm〜2mm程度である。ガラス基板を用いる場合、その厚さは通常0.5〜5mm程度である。
【0062】
透明基材上に形成される透明導電膜としては、ITO、InTiO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、及びAZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)より選ばれる透明導電膜が挙げられるが、好ましくは透明導電膜はITO膜である。なお、透明導電膜としては、これらの2種以上の透明導電膜を積層しても良く、また、2種以上の材料を混合して用いても良い。
【0063】
ITO膜等の透明導電膜は通常100〜1000nm程度の厚さに形成される。
【0064】
透明導電膜上に形成される酸化チタン薄膜は、TiOx(x=1.7〜2.0、好ましくは1.8〜2.0)で表されるものであり、この酸化チタン薄膜の膜厚が薄過ぎると酸化チタン薄膜を設けたことによる耐酸性の向上効果を十分に得ることができず、厚過ぎるとコストアップや、基材がフィルムの場合にはその柔軟性を損なうこととなる。従って、酸化チタン薄膜の膜厚は1〜500nm、特に10〜300nmであることが好ましい。
【0065】
透明導電膜及び酸化チタン薄膜は、低温成膜が可能であることから、スパッタリングにより成膜することが好ましい。スパッタリングによる透明導電膜及び酸化チタン薄膜の成膜は、金属酸化物ターゲットを用いるものであっても良く、金属又は合金よりなるターゲットを用いて酸素雰囲気中で行う反応性スパッタリングであっても良い。透明導電膜及び酸化チタン薄膜を共にスパッタリングで成膜する場合、これらの成膜を連続して行うことができ、効率的である。
【0066】
第4アスペクトの透明導電性基板は、耐酸性に優れるところから、酸処理を行う工程を有する。ITO膜等の透明導電膜上の酸化チタン薄膜上に更に半導体膜を形成する方法に適用するのに好適である。
【0067】
酸処理を行う工程を有する、ITO等の透明導電膜上に半導体膜を形成する好適な方法は、図2a−2d及び図3−5を参照しながら記述された前述の通りであるので、第4−第6アスペクトに援用される。
【0068】
第6アスペクトの色素増感型太陽電池は、半導体膜が好ましくはこの方法により成膜された第5アスペクトに係る色素増感型半導体電極を備えるものであり、その他の構成は、図1に示すような従来の色素増感型太陽電池と同様の構成とされる。
【0069】
色素増感型半導体電極4の分光増感色素を吸着させた金属酸化物半導体膜3の金属酸化物半導体の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0070】
酸化物半導体膜に吸着させる有機色素(分光増感色素)の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0071】
有機色素(分光増感色素)を半導体膜に吸着させる方法の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0072】
対向電極5の好適例は、第1−第3アスペクトに関してなされた前記記述が援用される。
【0073】
色素増感型半導体電極4は、基板(透明基材)1上に、ITO等の透明導電膜2と酸化チタン薄膜を好ましくはスパッタリングにより形成し、その上に上記のようにして半導体膜3を形成し、上述のように色素を吸着して形成される。
【0074】
この色素を吸着させた半導体膜を有する半導体電極4に対向電極5として別の透明性導電膜をコートしたガラス板又は高分子フィルムなどの基板を対面させ、これらの電極間に電解質6を封止材により封入することにより色素増感型太陽電池が得られる。
【0075】
以下に実施例及び比較例を挙げて第4−第6アスペクトをより具体的に説明する。
【実施例2】
【0076】
マグネトロンDCスパッタ装置にITOターゲット(SnO2含有割合:10重量%)とTiターゲットとをセットし、真空チャンバーに厚さ188μmのPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、Arガスを197sccm、O2ガスを3sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した。その後、ITOターゲットに4kWの電力を印加し、PETフィルム上に約300nmの膜厚のITO膜を成膜した。次いで、チャンバー内を一度Arガスで完全に置換した後に、再度チャンバー内にArガスを170sccm、O2ガスを30sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Tiターゲットに6kWの電力を印加し、反応性スパッタによりITO膜上に膜厚約30nmのTiO2薄膜を成膜して、透明導電性フィルムを得た。
【0077】
この透明導電性フィルムをpH2.0の塩酸水溶液に浸漬させて経時毎に表面抵抗値を計測することにより耐酸性を評価し、結果を表2に示した。
【0078】
比較例2
実施例2において、酸化チタン薄膜を成膜しなかったこと以外は同様にして透明導電性フィルムを得、同様に耐酸性の評価を行って、結果を表2に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
表2より明らかなように、ITO膜のみの比較例2では、120分後の抵抗値は初期値に対して約3倍となったが、ITO膜上に酸化チタン薄膜を成膜した実施例2では、360分後も抵抗値の変化は殆どなく、大幅な耐酸性の向上効果が認められる。
【0081】
次に第7−第9アスペクトについて説明する。
【0082】
第7アスペクトの透明導電材は、基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を有する。該メッシュ状導電体は、該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、及び該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程により形成されている。
【0083】
基材と透明導電膜との間に、この透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状導電体を設けることにより、このメッシュ状導電体(以下、この導電体を「補助電極」と称す場合がある。)で電極の低抵抗化を図ることができる。この補助電極は、透明導電膜により保護されているため、電解液により腐食を受けることはない。
【0084】
しかも補助電極としてのメッシュ状導電体は、基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程と、次いで基材面に溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程と、その後、基材面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去する第3の工程とを経て形成するため、光の透過率が高く、導電性の高いメッシュ状導電体を、低温にて容易かつ効率的に形成することができる。即ち、溶剤に対して可溶性の材料として、低粘性の材料によってドットを印刷、形成することができる。このため、ドット間の間隔を著しく小さくするように微細で精微な印刷を施すことができる。このドット同士の間の細い領域は、後に導電性材料が残存してメッシュ状導電体となる領域であるから、第7アスペクトによると、著しく細い導電性メッシュパターンを高精度にて形成することができる。この線幅を小さくすることにより、メッシュの開口率を大きくとることができる。
【0085】
第7アスペクトの透明導電材は、基材が高分子フィルムよりなる透明導電フィルムであることが好ましい。
【0086】
透明導電膜はスパッタ法により形成されたものであることが好ましく、透明導電膜は、特に反応性スパッタ法により形成されたものであることが好ましい。スパッタ法であれば、透明樹脂フィルム等の耐熱性の低い基板にも、良好な低抵抗膜を低温成膜することができる。更に、メッシュ状導電体上には湿式メッキ処理を施してより一層の低抵抗化を図ることが好ましい。
【0087】
第7アスペクトの透明導電材は、第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極、特に透明導電膜上に白金薄膜が設けられた第9アスペクトの色素増感型太陽電池の対向電極に好適であり、この白金薄膜もスパッタ法により形成されたものであることが好ましい。
【0088】
この対向電極においては、電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される際に半導体電極と対向する面の少なくとも非周縁部に、半導体電極との接触防止用の、絶縁性材料よりなるスペーサが設けられていることが好ましい。
【0089】
即ち、色素増感型太陽電池において、半導体電極4と対向電極5との間に電解液を注入したユニットは、図12に示す如く、対向電極5のそり等の変形により、対向電極5と半導体電極4との間隔がばらつき、場合によっては、対向電極5と半導体電極4とが接触して短絡に到ることがある。この対向電極5の変形は、色素増感型太陽電池が大面積化した場合、スペーサ7による電極間隔の保持が困難となり、特に著しい。また、近年、色素増感型太陽電池の薄肉、軽量化等の要望から、対向電極5として基材フィルム上に導電膜を形成したものが適用されるようになってきているが、このようなフィルムタイプの対向電極にあっては、そり等の変形が起こり易く、しかもその変形量も大きいため、スペーサ7,7間の電極間隔を一定に保つことが難しい。このような電極間隔のばらつきは、色素増感型太陽電池の光電変換効率のばらつきにつながり、著しい場合には、短絡のために発電不良となる。
【0090】
対向電極の半導体電極と対向する面の非周縁部にも、半導体電極との接触防止用の絶縁性材料よりなるスペーサが設けられることにより、このスペーサにより対向電極の変形を防止し、対向電極と半導体電極との間隔を一定に保つことが可能となる。
【0091】
また、このスペーサの高さを制御することにより、電極間距離の微調整も可能となり、これにより光電変換効率の向上を図ることもできる。
【0092】
しかも、対向電極にスペーサが設けられていることから、別途スペーサを用いることなく太陽電池の組み立てを行うこともでき、組み立てに必要な部品点数が減ることにより、太陽電池を容易に組み立てることができるようになる。
【0093】
このスペーサはドット状のスペーサ(以下「ドットスペーサ」と称す。)であることが好ましく、また、このスペーサは透明絶縁性材料よりなることが好ましい。
【0094】
第9アスペクトの色素増感型太陽電池は、色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極として、第8アスペクトの電極を用いたものであり、低抵抗で耐久性に優れた電極により、良好な光電変換効率で発電することができる。
【0095】
従って、第7−第9アスペクトによれば、低抵抗で耐久性に優れた透明導電材及び色素増感型太陽電池用電極により、光電変換効率に優れた色素増感型太陽電池が提供される。
【0096】
以下に図面を参照して第7−第9アスペクトの透明導電材、色素増感型太陽電池用電極及び色素増感型太陽電池の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下においては、第7アスペクトの透明導電材を色素増感型太陽電池用電極に適用する場合を例示して説明するが、第7アスペクトの透明導電材は、色素増感型太陽電池用電極に限らず、電極面に耐腐食性が要求され、しかも透明性と薄肉、軽量性、更にはフレキシブル性が要求される様々な用途に好適に使用される。
【0097】
図6は、第8アスペクトの色素増感型太陽電池用電極の実施の形態を示す斜視図であり、図7は別の実施の形態を示す断面図である。
【0098】
図6の色素増感型太陽電池用電極10は、基材フィルム11上に金属又は合金のメッシュよりなる補助電極12が設けられ、この上に透明導電膜13が形成されている。また、図2の色素増感型太陽電池用対向電極10Aは、基材フィルム11上に補助電極12が設けられ、この上に透明導電膜13が形成され、この透明導電膜13上に白金(Pt)薄膜14が形成され、更に、このPt薄膜14上に絶縁性材料よりなるドットスペーサ15が形成されている。
【0099】
基材フィルム11としては、透明性、複屈折の点で優れていることから、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルムが用いられ、その厚さは通常12μm〜2mm程度である。
【0100】
補助電極12を形成する金属又は合金としては、透明導電膜13よりも抵抗値の低い材料であれば良く、特に制限はないが、一般的には、Ag、Ag合金(Ag/Pd、Ag/Nd、Ag/Au等)、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ni、Cr合金等の1種又は2種以上が用いられる。
【0101】
補助電極12は、透明性を損なわない程度に薄膜状に形成することも考えられるが、そのような薄膜状に形成した膜状補助電極では、十分な低抵抗化の効果を得ることができないことから、図6に示す如く、メッシュ状に形成する。このメッシュ状補助電極12の線形や目開きについては特に制限はないが、線径が過度に細く、目開きが過度に大きいと十分な低抵抗化効果を得ることができず、逆に線径が過度に太く、目開きが過度に小さいと電極の透明性が損なわれる。従って、メッシュ状補助電極12の線径は10〜1000μm、目開き(電極面積に対する開口部の面積割合)は80%以上とすることが好ましい。
【0102】
以下に、このようなメッシュ状導電体よりなる補助電極12の形成方法について、図8−11を参照して説明する。図8−11は第7に係るメッシュ状導電体の製造手順の一例を示す模式的な断面図である。
【0103】
まず図8,9のように高分子フィルム21上に水等の溶剤に対して可溶な材料を用いてドット22を印刷する。次いで、図10の通り、この高分子フィルム21のドット22上及びドット22間のフィルム露出面のすべてを覆うように導電材料層23を形成する。次に、このフィルム21を水等の溶剤によって洗浄する。この際、必要に応じ、超音波照射やブラシ、スポンジ等で擦るなどの溶解促進手段を併用してもよい。
【0104】
これにより、図11の通り、可溶性のドット22が溶解し、このドット22上の導電材料もフィルム21から剥れて除去される。そして、ドット同士の間の領域に形成された導電材料よりなるメッシュ状導電体パターン24がフィルム21上に残る。このメッシュ状導電体パターン24は、ドット22間の領域を占めるものであるから、全体としてはメッシュ状となる。
【0105】
従って、ドット22間の間隙を狭くしておくことにより、線幅の小さいメッシュ状のメッシュ状導電体パターン24が形成される。また、各ドット22の面積を広くすることにより、開口率の大きなメッシュ状導電体パターン24が形成される。ドット22を形成するための前記水等に対して可溶な印刷材料は、微粒子を分散させる必要のないものであり、低粘性のもので足りる。この低粘性の印刷材料によれば、微細なドットパターンとなるようにドットを印刷することができる。
【0106】
なお、上記図11の工程の後、必要に応じ仕上げ洗浄(リンス)し、乾燥を行う。
【0107】
高分子フィルム21上に形成するドット22は印刷により形成されることが好ましい。印刷材料としては、ドット22を除去させる溶剤に対して可溶な材料の溶液が用いられる。このドット22を除去させる溶剤としては、有機溶剤であってもよいが、安価であると共に、環境への影響の点からして水が好ましい。水は、通常の水のほか、酸、アルカリ又は界面活性剤を含んだ水溶液であってもよい。この印刷材料には、印刷仕上り状況を確認し易くするために顔料や染料を混ぜてもよい。
【0108】
溶剤をこのように水とする関係からして、ドット22の形成材料としては水溶性の高分子材料が好ましくは、具体的にはポリビニルアルコールなどが好適である。
【0109】
ドット22は、それらの間のフィルム露出領域がメッシュ状となるように印刷される。好ましくは、このフィルム露出領域の線幅が30μm以下となるように印刷される。印刷手法としてはグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷が好適であるが、細線化のためにはグラビア印刷が好適である。
【0110】
ドット22の形状は、円、楕円、角形など任意であるが、角形特に正方形であることが好ましい。ドット22の印刷厚みは、特に限定されるものではないが、通常は0.1〜5μm程度とされる。
【0111】
ドット22の印刷後、好ましくは乾燥し、次いで前述の補助電極形成材料により導電材料層23を形成する。
【0112】
この導電材料層23の厚さは、薄過ぎるとメッシュ状導電体を形成することによる低抵抗化を十分に図れず、厚過ぎると得られる色素増感型太陽電池用電極の厚さに影響を及ぼすと共に、光透過性を低減してしまうことから、0.1〜100μm程度とするのが好ましい。
【0113】
導電材料層23の形成手法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着などの気相メッキ法や、液相メッキ(電解メッキ、無電解メッキ等)、印刷、塗布などが例示されるが、広義の気相メッキ(スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着)又は液相メッキが好適である。
【0114】
この導電材料層23の形成後、前記の通り、溶剤好ましくは水を用いてドット22を除去し、必要に応じ乾燥して補助電極としてのメッシュ状導電体が形成される。
【0115】
なお、形成されたメッシュ状導電体に更に湿式メッキを行って湿式メッキ層を形成することにより、より一層の低抵抗化を図ることも可能である。
【0116】
このようにして形成された補助電極12上に形成する透明導電膜13は、ITO、FTO、ATO、SnO2の透明導電膜であって、その膜厚は、通常100〜1000nm程度であることが好ましい。特に、I2に対する腐食に強いSnO2系の透明導電膜が好ましい。
【0117】
この透明導電膜13は、スパッタ法により形成することが好ましく、特に酸素雰囲気ガスを用いた反応性スパッタ法で形成することが好ましい。スパッタ法であれば、基材フィルム11の耐熱温度以下の低温で、補助電極12及び透明導電膜13を連続的に形成することができ、効率的である。
【0118】
図6に示す電極10は、透明導電膜上に更に色素吸着半導体膜を形成して色素増感型太陽電池の半導体電極とすることもできる。また、図7に示す如く、更にPt薄膜14を形成して色素増感型太陽電池の対向電極とすることもできる。
【0119】
図7の対向電極10Aにおいて、この透明導電膜13上に形成されるPt薄膜14は、透明性を損なうことがないように、通常0.1〜10nm程度の厚さに形成される。なお、このPt薄膜の代りに炭素膜を形成しても良い。
【0120】
このPt薄膜14もスパッタ法により形成することにより、透明導電膜13及びPt薄膜14を連続的に低温成膜することができ効率的である。
【0121】
図7の対向電極10Aにおける絶縁性ドットスペーサ15は、透明絶縁性材料より形成されることが好ましく、このような透明絶縁性ドットスペーサ15を形成する透明絶縁性材料としては、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0122】
絶縁性ドットスペーサ15は、色素増感型太陽電池において、半導体電極と対向電極との間に確保すべき電極間隔と同程度の高さに形成される。
【0123】
個々の絶縁性ドットスペーサ15の形状には特に制限はなく、図7に示すような円錐台形状の他、角錐台形状、円柱形状、角柱形状であっても良い。
【0124】
絶縁性ドットスペーサ15の形成割合が少な過ぎるとドットスペーサ15を形成したことによる対向電極の変形防止、電極間隔の維持効果を十分に得ることができず、多過ぎると対向電極10Aの有効電極面積が減少し、光電変換効率を低下させる原因となる。従って、絶縁性ドットスペーサの形成割合は、対向電極10Aに用いた基材フィルム11の種類による変形のし易さや、対向電極10Aの面積による変形のし易さ等によっても異なるが、対向電極10Aの電極面積に対するドットスペーサ15の底面積(電極面への投影面積)の合計の割合が1%以下となるように形成することが好ましい。
【0125】
なお、個々のドットスペーサ15の高さは、必ずしも同一である必要はなく、部分的に異なる高さのドットスペーサ15を形成することも可能である。また、個々のドットスペーサ15の形状や大きさ(電極面への投影面積)も必ずしも同一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
【0126】
前述の透明絶縁性材料を用いて、このようなドットスペーサ15を形成する方法としては、例えば補助電極12、透明導電膜13及びPt薄膜14を形成した基材フィルム11に対して、スクリーン印刷で形成する方法が挙げられる。
【0127】
なお、本発明において、対向電極10Aに形成するスペーサは、対向電極の導電性を大きく低減することなく、半導体電極との接触を防止し得るようなものであれば良く、図2に示すようなドットスペーサの他、線状(直線状又は曲線状)、或いは、格子状、或いは、これらを組み合わせたスペーサであっても良い。この場合においても、スペーサの形成割合(面積割合)は、前述の範囲とすることが好ましい。
【0128】
このようなドットスペーサ15等のスペーサは、対向電極の電極面の全面にわたって設けられても良く、電極面の非周縁部のみに設けられても良い。即ち、ドットスペーサ15等のスペーサを電極面の非周縁部のみに設け、周縁部には、図1に示すような従来のスペーサ7を設けても良い。
【0129】
周縁部に従来と同様のスペーサを設ける場合、非周縁部に設けるスペーサは必ずしも保持すべき電極間隔と同等の高さである必要はなく、その高さよりも若干低くしても、電極同士の接触は十分に防止することができる。また、本発明に係るスペーサを対向電極の電極面に全面的に設ける場合には、周縁部に設ける従来の別部品のスペーサが不要となり、太陽電池の組み立てが容易となる。
【0130】
第9アスペクトの色素増感型太陽電池は、このような本発明の電極を用いて常法に従って容易に組み立てられる。特に図7に示す対向電極を用いた場合には、上述の如く、別部品としてのスペーサを不要とすることもでき、組み立て作業性に優れる。
【0131】
なお、第7−第9アスペクトは、特に変形し易い基材フィルムを用いたフィルムタイプの透明導電フィルムに好適であるが、何らこれに限定されず、ガラス基板を用いた透明導電基板にも適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と該透明基材上に形成されたITO膜とを備える透明導電性基板において、該1TO膜の酸化スズの含有割合が30重量%以上であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項2】
請求項1において、該透明基材として高分子フィルムを用いた透明導電性フィルムであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項3】
請求項1において、該ITO膜がスパッタリングにより成膜されたことを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項4】
請求項1において、色素増感型太陽電池の電極用透明導電性基板であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電性基板と、該透明導電性基板のITO膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項6】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極が請求項5に記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項7】
透明基材と該透明基材上に形成された透明導電膜とを備える透明導電性基板において、該透明導電膜上に酸化チタン薄膜が形成されていることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項8】
請求項7において、該透明導電膜が、ITO、InTiO、IZO、GZO、及びAZOよりなる群から選ばれる透明導電膜であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項9】
請求項7において、該酸化チタン薄膜の膜厚が1〜500nmであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項10】
請求項7において、該透明基材として高分子フィルムを用いた透明導電性フィルムであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項11】
請求項7において、該透明導電膜及び酸化チタン薄膜がスパッタリングにより成膜されたことを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項12】
請求項7において、色素増感型太陽電池の電極用透明導電性基板であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項13】
請求項7に記載の透明導電性基板と、該透明導電性基板の酸化チタン薄膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項14】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極が請求項13に記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項15】
基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を設けた透明導電材であって、
該メッシュ状導電体が、
該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、
該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、
及び
該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程
により形成されてなることを特徴とする透明導電材。
【請求項16】
請求項15において、該基材が高分子フィルムよりなることを特徴とする透明導電材。
【請求項17】
請求項15において、該メッシュ状導電体が更に湿式メッキ処理されていることを特徴とする透明導電材。
【請求項18】
請求項15において、該透明導電膜がスパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項19】
請求項18において、該透明導電膜が反応性スパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項20】
請求項15において、該透明導電膜上に白金薄膜が設けられていることを特徴とする透明導電材。
【請求項21】
請求項20において、該白金薄膜がスパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項22】
請求項15に記載の透明導電材を備えてなる色素増感型太陽電池用電極。
【請求項23】
請求項22において、電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される対向電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項24】
請求項23において、該半導体電極と対向する面の少なくとも非周縁部に、該半導体電極との接触防止用の、絶縁性材料よりなるスペーサが設けられていることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項25】
請求項24において、該スペーサがドット状であることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項26】
請求項24において、該スペーサが透明絶縁性材料よりなることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項27】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極が請求項22に記載の電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項1】
透明基材と該透明基材上に形成されたITO膜とを備える透明導電性基板において、該1TO膜の酸化スズの含有割合が30重量%以上であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項2】
請求項1において、該透明基材として高分子フィルムを用いた透明導電性フィルムであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項3】
請求項1において、該ITO膜がスパッタリングにより成膜されたことを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項4】
請求項1において、色素増感型太陽電池の電極用透明導電性基板であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電性基板と、該透明導電性基板のITO膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項6】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極が請求項5に記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項7】
透明基材と該透明基材上に形成された透明導電膜とを備える透明導電性基板において、該透明導電膜上に酸化チタン薄膜が形成されていることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項8】
請求項7において、該透明導電膜が、ITO、InTiO、IZO、GZO、及びAZOよりなる群から選ばれる透明導電膜であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項9】
請求項7において、該酸化チタン薄膜の膜厚が1〜500nmであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項10】
請求項7において、該透明基材として高分子フィルムを用いた透明導電性フィルムであることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項11】
請求項7において、該透明導電膜及び酸化チタン薄膜がスパッタリングにより成膜されたことを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項12】
請求項7において、色素増感型太陽電池の電極用透明導電性基板であることを特徴とする耐酸性透明導電性基板。
【請求項13】
請求項7に記載の透明導電性基板と、該透明導電性基板の酸化チタン薄膜上に形成された色素吸着半導体膜とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項14】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該色素増感型半導体電極が請求項13に記載の色素増感型太陽電池用電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【請求項15】
基材上に透明導電膜が形成されてなる透明導電材において、該基材と透明導電膜との間に、該透明導電膜よりも抵抗値の低い金属又は合金よりなるメッシュ状の導電体を設けた透明導電材であって、
該メッシュ状導電体が、
該基材面に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成する第1の工程、
該基材面に該溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成する第2の工程、
及び
該基材面を該溶剤と接触させて該ドット及び該ドット上の導電材料層を除去する第3の工程
により形成されてなることを特徴とする透明導電材。
【請求項16】
請求項15において、該基材が高分子フィルムよりなることを特徴とする透明導電材。
【請求項17】
請求項15において、該メッシュ状導電体が更に湿式メッキ処理されていることを特徴とする透明導電材。
【請求項18】
請求項15において、該透明導電膜がスパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項19】
請求項18において、該透明導電膜が反応性スパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項20】
請求項15において、該透明導電膜上に白金薄膜が設けられていることを特徴とする透明導電材。
【請求項21】
請求項20において、該白金薄膜がスパッタ法により形成されたものであることを特徴とする透明導電材。
【請求項22】
請求項15に記載の透明導電材を備えてなる色素増感型太陽電池用電極。
【請求項23】
請求項22において、電解質を介して色素増感型半導体電極と対面配置される対向電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項24】
請求項23において、該半導体電極と対向する面の少なくとも非周縁部に、該半導体電極との接触防止用の、絶縁性材料よりなるスペーサが設けられていることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項25】
請求項24において、該スペーサがドット状であることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項26】
請求項24において、該スペーサが透明絶縁性材料よりなることを特徴とする色素増感型太陽電池用電極。
【請求項27】
色素増感型半導体電極と、この色素増感型半導体電極に対面して設けられた対向電極と、該色素増感型半導体電極と対向電極との間に配置された電解質とを有する色素増感型太陽電池において、該対向電極が請求項22に記載の電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【国際公開番号】WO2005/041216
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514966(P2005−514966)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015590
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/015590
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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