説明

透明性樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルム

【課題】 負の複屈折性を示し、透明性、耐熱性、機械強度に優れた樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルムを提供する。
【解決手段】 一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型水素添加ブロック共重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤0.001〜2重量部を配合してなる透明性樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルム。


(Rは、水素、C1〜12のアルキル基を表わす。)


(R〜Rは、水素、C1〜6のアルキル基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性等に優れ、高温加工時の熱安定性にも優れた負の複屈折性を示す透明性樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(以下、LCDと述べる。)は低電圧、低消費電力、軽量化である特徴を活かし、携帯機器、移動体通信機器、移動体搭載機器、パーソナルコンピュータ、テレビ、家庭用電気製品、オーディオ製品、産業機器等の表示装置として広く採用されている。LCDは、2枚の偏光板で液晶分子を挟み込み、偏光板の光フィルター機能と液晶分子の複屈折特性を利用して白黒表示を行う光学素子として知られ、LCDには偏光フィルム及び偏光フィルムの保護フィルム(以下、偏光膜保護フィルムと述べる。)からなる偏光板、位相差フィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルムなどの光学フィルムが用いられている。
【0003】
光学フィルムに用いることができる樹脂には、使用環境に応じて、耐熱性等の諸特性が優れていることが要求される材料であり、種々の添加剤を用いることにより、材料の特性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−143945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学フィルムの外観を悪化させる要因の一つとして、造粒工程、フィルム製造工程、延伸成形、貼り合せ、LCDの組立て等の後加工工程等にて起こり得る樹脂の熱劣化が挙げられる。樹脂の熱劣化は、ヤケやゲルの発生、黄変、透明性の低下、分解ガスの発生等を引き起こし、フィルムの外観を悪化させる恐れがあるため、光学フィルム用途に使用される透明性樹脂には高い熱安定性が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、透明性、耐熱性、柔軟性、靭性等に優れ、溶融フィルムを成膜可能な熱安定性に優れる透明性樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に関し、本発明者は鋭意検討した結果、ナフチル基を側鎖に有し、ジエン類残基単位が水素添加されたブロック共重合体にフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤を特定の割合で配合してなる透明性樹脂組成物が、負の複屈折性を示し、透明性、耐熱性、柔軟性、靭性等に優れ、高温成形時の熱安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量が70〜99重量%であり、ジエン類残基単位が水素添加されている数平均分子量が40000〜300000である水素添加ブロック共重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤0.001〜2重量部を配合してなり、負の複屈折性を有することを特徴とする透明性樹脂組成物及びそれよりなる光学フィルムに関するものである。
【0009】
【化1】

(ここで、Rは、水素、炭素数1から12のアルキル基を表わす。)
【0010】
【化2】

(ここで、R〜Rはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から6のアルキル基を表わす。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の透明性樹脂組成物は、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量が70〜99重量%であり、ジエン類残基単位が水素添加されたブロック共重合体と、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤からなる透明性樹脂組成物である。
【0012】
本発明に用いる水素添加ブロック共重合体を得るために用いるビニルナフタレン類における一般式(I)中のRは、水素、炭素数1から12のアルキル基を表わし、炭素数1から12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等を挙げることができ、具体的な一般式(I)で示されるビニルナフタレン類としては、例えば1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、α−エチル−1−ビニルナフタレン、α−プロピル−1−ビニルナフタレン、α−ヘキシル−1−ビニルナフタレン、α−メチル−2−ビニルナフタレン、α−エチル−2−ビニルナフタレン、α−プロピル−2−ビニルナフタレン、α−ヘキシル−2−ビニルナフタレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらビニルナフタレン類の中でも工業的に入手が容易であることから2−ビニルナフタレンが好ましい。
【0013】
また、水素添加ブロック共重合体を得るために用いるジエン類における一般式(II)中のR〜Rはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から6のアルキル基を表わし、炭素数1から6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等を挙げることができ、具体的な一般式(II)で示されるジエン類としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。これらジエン類の中でも、透明性、耐熱性に優れた透明性樹脂組成物となることから、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0014】
さらに、水素添加ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量は、70〜99重量%の範囲である。ビニルナフタレン類残基単位の含有量が70重量%より少ないと、透明性樹脂組成物の剛性が低く、99重量%を超えると脆くなり、靭性が発現しにくくなるため好ましくない。また、水素添加ブロック共重合体中のポリビニルナフタレン類残基単位の数平均分子量は、透明性樹脂組成物が機械的強度、成形加工性に優れることから10000〜200000の範囲にあることが好ましい。
【0015】
水素添加ブロック共重合体は、一般式(II)で示されるジエン類から誘導されるポリ(1,2−ジエン)、ポリ(cis−1,4ジエン)及びポリ(trans−1,4ジエン)等のポリジエン類残基単位中の炭素−炭素二重結合を水素添加したものであり、その中でも耐熱性、耐候性に優れる透明性樹脂組成物となることから、水素添加率は、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、更に好ましくは98%以上である。
【0016】
本発明に用いる水素添加ブロック共重合体の数平均分子量は40000〜300000の範囲であり、好ましくは50000〜200000の範囲である。数平均分子量が40000より小さい場合、透明性樹脂組成物の強度、伸度が低く実用上問題となる場合がある。また、300000を超えると溶融、或いは溶液粘度が高くなり成形加工性に問題がある。
【0017】
本発明に用いる水素添加ブロック共重合体は、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のジエン類残基単位が水素添加されたものであり、例えば[ビニルナフタレン類−ジエン類−ビニルナフタレン類]ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加したものが挙げられる。なお、本発明に用いる水素添加ブロック共重合体には、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B型ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加した水素添加ブロック共重合体を含んでいても良い。
【0018】
水素添加ブロック共重合体の具体例としては、例えば[(1−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(1−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−メチル−1−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−メチル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−メチル−1−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−メチル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−メチル−2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−メチル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−メチル−2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−メチル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−エチル−1−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−エチル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−エチル−1−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−エチル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−エチル−2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−エチル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−エチル−2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−エチル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−プロピル−1−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−プロピル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−プロピル−1−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−プロピル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−プロピル−2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−プロピル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−プロピル−2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−プロピル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−ヘキシル−1−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−ヘキシル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−ヘキシル−1−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−ヘキシル−1−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−ヘキシル−2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(α−ヘキシル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(α−ヘキシル−2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(α−ヘキシル−2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体等のA−B−A型ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加したものが挙げられ、その中でも[(2−ビニルナフタレン)−(ブタジエン)−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体、[(2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体等のA−B−A型ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加したものが好ましく用いられる。
【0019】
本発明に用いる水素添加ブロック共重合体の製造方法としては、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のジエン類残基単位が水素添加されたブロック共重合体が得られる限り、如何なる方法にても製造することが可能であり、例えばA−B−A型ブロック共重合体を製造した後に、ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加する方法により製造することができる。その際の、A−B−A型ブロック共重合体の製造方法としては、例えばアルキルリチウム化合物を開始剤として、ビニルナフタレン類を重合した後、更にジエン類を重合させてA−B型ブロック共重合体を製造した後に、カップリング剤によりカップリングすることによりA−B−A型ブロック共重合体を製造する方法を挙げることができる。
【0020】
本発明で用いる水素添加ブロック共重合体における水素添加する前のA−B−A型ブロック共重合体(以下、未水素添加ブロック共重合体と略す)の製造の際に用いるアルキルリチウム化合物としては、例えばアルキル基の炭素数が1〜10のアルキルリチウム化合物が挙げられ、その中でも特にメチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、n―ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムが好ましく、更に好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムである。また、未水素添加ブロック共重合体の製造の際に用いるカップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、ジクロロジメチルシラン等の2官能性のカップリング剤が例示される。
【0021】
未水素添加ブロック共重合体の製造する際のアルキルリチウム化合物、カップリング剤の使用量は、未水素添加ブロック共重合体の分子量により決定され、好ましくはビニルナフタレン類とジエン類の合計100重量部に対し、アルキルリチウム化合物は0.01〜0.2重量部、カップリング剤は0.04〜0.8重量部であることが好ましい。
【0022】
未水素添加ブロック共重合体の製造に用いる重合溶媒としては開始剤に対し不活性なものが用いられ、特に炭素数が6〜12の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましく、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等が例示される。
【0023】
また、未水素添加ブロック共重合体の製造時の重合温度は−78〜80℃の温度範囲が好ましく、重合時間は0.5〜50時間が好ましい。
【0024】
そして、未水素添加ブロック共重合体中のジエン類残基単位を水素添加することにより、本願発明に用いる水素添加ブロック共重合体となる。その際の水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加触媒を用いることができ、例えばパラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等をカーボン、シリカ、アルミナ、チタニアに坦持させた坦持触媒;ナフテン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、オクテン酸コバルト、チタノセンジクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等の均一触媒が例示される。また、水素添加反応を促進するために、触媒と共に助触媒を用いることが可能であり、該助触媒としては、例えばトリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類;n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム類等を使用することができる。用いる触媒の形態は特に制限を受けず、粉末状でも粒状でも問題なく用いることができる。水素添加触媒の使用量は水素添加する重合体に対して重量比で0.5〜2ppmが好適に用いられる。
【0025】
水素添加反応の際の圧力は、好ましくは常圧〜300気圧、特に好ましくは3〜200気圧である。また、水素添加反応の際の温度は、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは20〜180℃である。
【0026】
水素添加反応の際に用いる溶剤は特に制限を受けず、水素添加反応条件において水素添加されないものであれば如何なる溶剤を用いても良く、その中でも経済性、作業性の点から、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等の未水素添加ブロック共重合体を製造する際に用いる溶媒と共通の溶媒を用いることが好ましい。
【0027】
また、水素添加ブロック共重合体には、目的とする物性を損なわない範囲で他の単量体を共重合することができ、他の単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等を挙げることができる。
【0028】
本発明の透明性樹脂組成物は、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量が70〜99重量%であり、ジエン類残基単位が水素添加されたブロック共重合体と、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤からなる負の複屈折性を有する透明性樹脂組成物である。
【0029】
本発明に用いるフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤は、透明性樹脂組成物の造粒工程、一次成形加工工程、二次成形加工工程等における熱劣化、ヤケやゲルの発生、黄変、透明性の低下、分解ガスの発生等を抑制するものであり、水素添加ブロック共重合体100重量部に対して0.001〜2重量部の範囲で配合され、その中でも0.01〜1重量部の範囲であることが好ましく、特に0.02〜0.5重量部の範囲であることが好ましい。ここで、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤の配合量が0.001重量部未満である場合は、得られる透明性樹脂組成物は高温加工時における熱安定性が乏しくなり、配合量が2重量部を超える場合、透明性樹脂組成物の透明性を低下させる場合がある。また、これら酸化防止剤はそれぞれ単独で用いても良く、併用しても良く、その中でも相乗的に酸化防止作用が向上するため、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を併用するすることが好ましく、その際の添加量は、例えばフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部であることが好ましい。
【0030】
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられ、その中でも、透明性樹脂組成物が着色し難く極めて透明性に優れたものとなることから、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)等が好ましい。
【0031】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイト等が挙げられ、その中でも透明性樹脂組成物が着色し難く極めて透明性に優れたものとなることから、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト等が好ましい。
【0032】
また、本発明の透明性樹脂組成物は、特に高温加工時における酸化劣化が抑制され、熱安定性が更に向上した透明性樹脂組成物となることから、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤に加えて、水素添加ブロック共重合体100重量部に対して、さらにラクトン系酸化防止剤0.001〜2重量部添加することが好ましく、特に0.005〜1重量部が好ましく、さらに0.01〜0.5重量部添加することが好ましい。
【0033】
該ラクトン系酸化防止剤としては、例えば3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−t−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オンが挙げられる。
【0034】
本発明の透明性樹脂組成物は、イオウ系酸化防止剤及びその他の酸化防止剤を含有しても良く、イオウ系酸化防止剤としては、例えばジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。その他の酸化防止剤としては、例えば6−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ)−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール等が挙げられる。
【0035】
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法としては、水素添加ブロック共重合体、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤を一般的な混合、混練を行うことにより製造することができ、その際の混合、混練装置としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の溶融混練装置を挙げることができる。例えば、二軸押出機を用いる場合には、150〜300℃の温度にて行うことができる。また、溶媒中にそれぞれの成分を溶解、あるいは分散させて混合する方法であっても良い。
【0036】
さらに、本発明の透明性樹脂組成物には透明性を損なわない範囲で、可視光線、紫外線、近赤外線などの光の照射による熱着色や光劣化を防止する目的で、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤等を必要に応じて含有しても良い。また、流動性、靱性を付与する目的で、可塑剤を必要に応じて含有しても良い。更に、顔料、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、染料、オイル等を必要に応じて含有しても良い。
【0037】
そして、本発明に用いる水素添加ブロック共重合体は、ナフチル基を側鎖に有するために、より効率的に負の複屈折性を発現させることができるため、本発明の透明性樹脂組成物は高い負の複屈折性を示すものとなる。
【0038】
本発明の透明性樹脂組成物は、従来公知の成形方法により成形体とすることができ、例えば射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト法射出成形、押出成形、多層押出成形、回転成形、熱プレス成形、ブロー成形、発泡成形等の方法により、射出成形体、チューブ、シート、フィルム、パイプ、ボトルなどに成形することができる。その中でも特に、透明性、耐熱性、外観の優れることから光学フィルムとすることが好ましい。該光学フィルムとしては、高い透明性が要求されるLCDなどの表示装置に用いることが可能となることから、JIS K7136に準拠したヘイズが1%以下且つJIS K7105に準拠した黄色度が2%であることが好ましく、特にヘイズが0.7%以下且つ黄色度が1%以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の透明性樹脂組成物は高い負の複屈折性を示し、耐熱性、加工性、機械強度に優れることから、光学フィルムの中でもさらに負の複屈折性を示す位相差フィルムとすることが好ましい。該位相差フィルムの製造方法としては、例えばキャスティング法(溶液流延法)、二軸押出機等を用いた溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等の公知公用の方法により原反フィルムとした後、該原反フィルムを延伸成形加工することにより得られる。
【0040】
二軸押出機を用いて原反フィルムを製造する際には、例えばTダイ温度200〜300℃、冷却ロール温度100〜200℃で行うことができる。
【0041】
また、延伸成形加工工程は、原反フィルムを成形する工程内で連続して行う工程;原反フィルムを一旦巻き取った後、該フィルムを延伸加工装置に供して延伸加工する工程;等が可能である。また、フィルムの延伸方法は、一般的にフィルム面内方向に延伸するフラット法延伸とチューブ状に膨らませて延伸するチューブラ法延伸に大分類されるが、厚み及び延伸倍率の精度の高いフラット法延伸が特に好ましい。またフラット法延伸は、一軸延伸法と二軸延伸法に分類され、一軸延伸法としては、例えば自由幅一軸延伸法と一定幅一軸延伸法等がある。一方、二軸延伸法としては、例えば二段階自由幅二軸延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等があり、さらに逐次二軸延伸には、例えば全テンター方式とロールテンター方式等がある。本発明の透明性樹脂組成物から位相差フィルムを製造するための延伸方法は、上記延伸方法のいずれを用いても良く、要求される3次元屈折率および位相差量を得るために最も適した方法を選択することができる。
【0042】
さらに、本発明の透明性樹脂組成物を延伸成形加工する際には、高い負の複屈折性を示し、位相差の精度に優れることから、示差走査熱量計により昇温速度10℃/分で測定した透明性樹脂組成物のガラス転移温度−20℃〜ガラス転移温度+20℃の温度範囲で延伸することが好ましい。
【0043】
負の複屈折性を示す該位相差フィルムは、LCD用の光学補償部材として好適に用いることができ、例えばSTN型LCD、TFT−TN型LCD、OCB型LCD、VA型LCD、IPS型LCDなどのLCD用の位相差フィルム;1/2波長板;1/4波長板;逆波長分散特性フィルム;偏光板の視野角補償フィルムなどの光学補償部材を挙げることができる。また、その他の光学フィルムとして、例えば有機EL、PDP、複写機、プリンター、ファクシミリ、タッチパネル、光ファイル等の情報機器に使用される位相差フィルム、反射防止フィルム;LCDばどのフラットパネルディスプレイに使用される偏光膜保護フィルム、リフレクターフィルム、セパレーターフィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルム基板、ディスプレイ表面の保護フィルム、アンチグレアフィルム、アンチリフレクションフィルム、電磁波遮蔽フィルム、紫外線吸収フィルム、遠赤外線吸収フィルム等に好適に用いることができる。
【0044】
本発明の透明性樹脂組成物は、光学フィルム以外のフィルムとしても好適に使用することができ、例えば下記の用途を挙げることができる。
記録分野:静電記録基板、OHP、第2原図、スライドフィルム、マイクロフィルム、X線フィルム
光・磁気メモリー分野:サーモ・プラスチック・レコーディング、強誘電体メモリー、磁気テープ、IDカード、バーコード
帯電防止分野分野:メータ類の窓、テレビのブラウン管、クリーンルーム窓、半導体包装材料、フォトマスク用防塵フィルム
電磁波遮蔽分野:計測器、医療機器、放射線検出器、IC部品、CRT
光電変換素子分野:太陽電池の窓、光増幅器、光センサー
熱線反射分野:窓(建築、自動車等)、白熱電球、調理オーブンの窓、炉の覗き窓、選択透過膜
面状発熱体分野:デフロスタ、航空機、自動車、冷凍庫、保育器、ゴーグル、医療機器、液晶表示装置
電子部品・回路材料分野:コンデンサ、抵抗体、薄膜複合回路、リードレスLSIチップキャリアの実装、ドライフィルムレジスト
電極分野:ペーパーバッテリー用電極
光透過フィルター分野:紫外線カットフィルター、紫外線透過フィルター、紫外線透過可視光吸収フィルター、色分解フィルター、色温度変換フィルター、ニュートラルデンシティフィルター、コントラストフィルター、波長校正フィルター、干渉フィルター、赤外線透過フィルター、赤外線カットフィルター、熱線吸収フィルター、熱線反射フィルター
ガス選択透過性膜分野:酸素/窒素分離膜、二酸化炭素分離膜、水素分離膜
電気絶縁分野:絶縁粘着テープ、モーターのスロットライナ、変圧機の相間絶縁、リード線の絶縁、高電圧ケーブルの絶縁被覆
高分子センサ分野:光センサ、赤外線センサ、音波センサ、圧力センサ
表面保護分野:CRT、家具、システムキッチン、自動車内外装、塗装保護フィルム
摺動材分野:ホッパー・シュートの内張り、ベルトコンベアのすべり材、ガイドレールのすべり材、複写機の紙送りローラー、コンピュータ−マウス
多孔質フィルム分野:透湿防水材、精密濾過膜用のフィルター材
その他分野:通電熱転写、プリンターリボン、電線ケーブルシールド、漏水防止フィルム、電池用セパレートフィルム
また、本発明の透明性樹脂組成物はフィルム以外の用途にも好適に使用することができ、例えば電気・電子機器に使用されるリレー、バーンインソケット、コネクター、センサーハウジング、可変抵抗器、ポリバリコンケース、エアレーション用ボビン、トランジスタ、IC、LSI、LED等の封止材、ICカードのICメモリーの封止材、モーター、コンデンサー、スイッチ、センサー等の封止材;カメラ、VTR、プロジェクター等の映像機器に使用される撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、ボディ材等;CDプレーヤー、DVDプレーヤー、MDプレーヤー、ゲーム機器等の光記録機器に使用されるカード、ディスク、ピックアップレンズ等;光通信分野で使用される光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等;LCD、有機EL、PDP、複写機、プリンター、ファクシミリ、タッチパネル、光ファイル等の情報機器に使用される導光板、ライトガイド、フレネルレンズ、プリズムシート、光拡散シート、透明電極シート基板、ディスプレイの表面保護シート、インクタンク、カバー類、ボディ材等;自動車、電車などの車両分野で使用されるメーター類、ランプ類、レンズ類、ソケット、ヒューズケース、計器カバー等;医療機器分野で使用される眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、内視鏡レンズ、注射器、人口透析器、薬液容器、義歯、アンプルカッター容器等;建材分野における採光窓、ドア、監視カメラレンズ、カーポート、テラス、照明部品等;日用品分野で使用される照明部品、玩具、サングラス、文房具、化粧品容器、釣り具、食品用容器、飲料水用容器等が挙げられる。
【発明の効果】
【0045】
本発明により得られる透明性樹脂組成物は、負の複屈折性を有し、透明性、耐熱性等に優れ、高温加工時の熱安定性に優れることから、光学フィルムなどとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0047】
合成例及び実施例で用いたリチウム化合物、溶媒、モノマー等は全て試薬として和光純薬から購入して用いた。なお、水素添加触媒としては、エヌ・イーケムキャット(株)製の炭素に5%のPdを担持した触媒(以下、Pd−C(Pd 5%)と略す)を用いた。
【0048】
合成例及び実施例に示された諸物性は以下の方法により測定した。
【0049】
〜数平均分子量〜
水素添加ブロック共重合体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0050】
〜水素添加率〜
水素添加ブロック共重合体を核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、60℃重トルエン中にてH−NMRを測定することにより、水素添加率を算出した。
【0051】
〜ビニルナフタレン類残基単位〜
水素添加ブロック共重合体を核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、60℃重トルエン中にてH−NMRを測定することにより、ビニルナフタレン類残基単位の含有量を算出した。
【0052】
〜ガラス転移温度〜
実施例により得られた樹脂組成物を示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC2000)を用い、10℃/分の昇温速度にて測定した。
【0053】
〜ヘイズ、及び光線透過率の測定〜
実施例により得られたフィルムをJIS K7136に準拠して測定した。
【0054】
〜黄色度〜
実施例により得られたフィルムをJIS K7105に準拠して測定した。
【0055】
〜複屈折の正負〜
実施例により得られたフィルムを高分子素材の偏光顕微鏡入門(粟屋裕著、アグネ技術センター版、2001年、第5章、78〜82頁)に記載されている、偏光顕微鏡を用いたλ/4板による加色判定法により複屈折の正負判定を行った。
【0056】
〜位相差〜
実施例により得られたフィルムを高分子素材の偏光顕微鏡入門(粟屋裕著、アグネ技術センター版、2001年、第5章、78〜82頁)に記載されている、セルモナン・コンペンセーターを用いた偏光顕微鏡(セルモナン干渉法)により位相差の測定を行った。
【0057】
〜180度折曲げ試験〜
実施例により得られたフィルムを25℃の環境下、フィルムを180度に1度手で折り曲げ、その破壊、非破壊により判定した。
【0058】
合成例1
(ビニルナフタレン類の重合)
乾燥し、窒素で置換された耐圧反応器に、溶媒としてテトラヒドロフラン500ml、重合触媒としてsec−ブチルリチウム0.58mmolを添加した後、2−ビニルナフタレン30gを添加して30℃で2時間重合反応を行った。重合反応終了後、重合液を1mlサンプリングし、大量のメタノール中に注ぎポリ(2−ビニルナフタレン)を得た。得られたポリ(2−ビニルナフタレン)のGPC測定を行ったところ、数平均分子量は51000であった。
【0059】
(ビニルナフタレン類とジエン類との共重合)
2−ビニルナフタレンの重合を行った後、続いて、イソプレン1.58gを添加しさらに30℃で2時間重合を行い、[(2−ビニルナフタレン)−(イソプレン)]ブロック共重合体を得た。その後、ジブロモブタン0.1gを加え、30℃で3時間カップリング反応を行った。重合液を大量のメタノールに注いで沈殿させ共重合体を得た。得られた共重合体をシクロヘキサン500mlに溶解し、水素添加触媒としてPd−C(Pd 5%)を1.58g添加し、水素圧20kg/cm、反応温度150℃で3時間イソプレン残基単位の水素添加反応を行った。反応後、濾過により触媒を除去することにより水素添加ブロック共重合体(ブロックI)を得た(水素添加率:95%)。ブロックIのGPC測定を行ったところ、2峰性のGPC曲線を示し、各々の数平均分子量は54000と109000であった。また、面積強度よりそれぞれの割合を求めたところ、各々10重量%と90重量%であった。したがって、ブロックIは、数平均分子量109000の水素添加[(2−ビニルナフタレン)−イソプレン−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体90重量%に、10重量%の数平均分子量54000の水素添加[(2−ビニルナフタレン)−イソプレン]ブロック共重合体を含む混合物であった。なお、ブロックI中の2−ビニルナフタレン残基単位の含有量は97.4重量%であった。
【0060】
合成例2
sec−ブチルリチウムを0.76mmolとした以外は合成例1と同様な条件で、2−ビニルナフタレンの重合を行った。得られたポリ(2−ビニルナフタレン)の数平均分子量は39000であった。
【0061】
続いて、2−ビニルナフタレンの重合終了後、ブタジエン11.1gとした以外は実施例1と同様な条件でさらに共重合を行い、実施例1と同様に、サンプリング、ブタジエン残基単位の水素添加反応を行い、水素添加ブロック共重合体(ブロックII)を得た(水素転化率:96%)。ブロックIIを実施例1と同様にGPC測定を行ったところ、実施例1と同様に2峰性のGPC曲線を示し、その面積強度より、ブロックIIは、数平均分子量113000の水素化[(2−ビニルナフタレン)−ブタジエン−(2−ビニルナフタレン)]ブロック共重合体88重量%に、12重量%の数平均分子量57000の水素化[(2−ビニルナフタレン)−ブタジエン]ブロック共重合体12重量%を含む混合物であった。なお、ブロックII中の2−ビニルナフタレン残基単位の含有量は71.5重量%であった。
【0062】
実施例1
合成例1により得られたブロックI 100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.05重量部、リン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.15重量部をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して270℃で押出し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は150℃であった。
【0063】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度116℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0064】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度145℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、負の複屈折性を示しており、透明性、色調、外観に優れる光学フィルムであった。該光学フィルムは位相差フィルムに適したものであった。
【0065】
実施例2
合成例1により得られたブロックI 100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]0.06重量部、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.2重量部をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して270℃で押出し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は150℃であった。
【0066】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度116℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0067】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度145℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、負の複屈折性を示しており、透明性、色調、外観に優れる光学フィルムであった。該光学フィルムは位相差フィルムに適したものであった。
【0068】
実施例3
合成例1により得られたブロックI 100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.085重慮部、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.17重量部、ラクトン系酸化防止剤として3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−t−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン0.045重量部をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して270℃で押出し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は150℃であった。
【0069】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度116℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0070】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度145℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、負の複屈折性を示しており、透明性、色調、外観に優れる光学フィルムであった。該光学フィルムは位相差フィルムに適したものであった。
【0071】
実施例4
合成例1により得られたブロックI 100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.06重量部、リン系酸化防止剤としてビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜りん酸0.18重量部、ラクトン系酸化防止剤として3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−t−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン0.09重量部をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して270℃で押出し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は150℃であった。
【0072】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度115℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0073】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度145℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、負の複屈折性を示しており、透明性、色調、外観に優れる光学フィルムであった。該光学フィルムは位相差フィルムに適したものであった。
【0074】
実施例5
合成例2により得られたブロックII 100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.06重量部、リン系酸化防止剤としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト0.18重量部、ラクトン系酸化防止剤として3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−t−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン0.09重量部をドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して250℃で押出し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は134℃であった。
【0075】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度115℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0076】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度145℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、負の複屈折性を示しており、透明性、色調、外観に優れる光学フィルムであった。該光学フィルムは位相差フィルムに適したものであった。
【0077】
比較例1
合成例1により得られたブロックIをTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度150℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0078】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度220℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、酸化防止剤を用いていないため、黄色度が大きくヤケ状異物を含み、光学フィルムには適さないものであった。
【0079】
比較例2
合成例2より得られたブロックIIをTダイスを設置した二軸押出機に供し、Tダイスの温度270℃、冷却ロールの温度150℃の条件で押出し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0080】
引き続き、得られたフィルムから50×50mmの小片を切り出し、二軸延伸装置((株)井元製作所製)を用いて、温度220℃、チャック間距離40mm、延伸速度100mm/分の条件で2倍に自由幅一軸延伸することによりフィルムを得た。得られたフィルムを用いた物性測定の結果を表1に示す。得られたフィルムは、酸化防止剤を用いていないため、黄色度が大きくヤケ状異物を含み、光学フィルムに適さないものであった。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示されるビニルナフタレン類と一般式(II)で示されるジエン類とを共重合反応させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量が70〜99重量%であり、ジエン類残基単位が水素添加されている数平均分子量が40000〜300000である水素添加ブロック共重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤0.001〜2重量部を配合してなり、負の複屈折性を示すことを特徴とする透明性樹脂組成物。
【化1】

(ここで、Rは、水素、炭素数1から12のアルキル基を表わす。)
【化2】

(ここで、R〜Rはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から6のアルキル基を表わす。)
【請求項2】
水素添加ブロック共重合体が、一般式(I)で示されるビニルナフタレン類とブタジエン、イソプレンから選ばれるジエン類とを共重合させて得られるA−B−A型ブロック共重合体であって、該ブロック共重合体中のビニルナフタレン類残基単位の含有量が70〜99重量%であり、ジエン類残基単位が水素添加されている水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載の透明性樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール系酸化防止剤がペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上のフェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明性樹脂組成物。
【請求項4】
リン系酸化防止剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のリン系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明性樹脂組成物。
【請求項5】
水素添加ブロック共重合体100重量部に対し、さらにラクトン系安定剤0.001〜2重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜4に記載の透明性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の透明性樹脂組成物からなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項7】
JIS K7136に準拠したヘイズが1%以下且つJIS K7105に準拠した黄色度が2%以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれかに記載の光学フィルムであって、負の複屈折性を有する位相差フィルム。

【公開番号】特開2006−143799(P2006−143799A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333118(P2004−333118)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】