説明

透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材

【課題】導電性無機酸化物微粒子の配合量が少なくても高い導電性を有し、透明性が高く、着色および干渉縞が抑制され、経済性にも優れた透明被膜付基材を形成可能な透明被膜形成用塗布液を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理された導電性無機酸化物微粒子が非凝集でかつ高分散しており、固形分としての濃度が0.01〜6質量%であり、ケトン類を分散媒として含み、全固形分の濃度が1〜60質量%、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.1〜59.4質量%である透明被膜形成用塗布液。Rn-SiX4-n(1)(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された導電性無機酸化物微粒子が透明被膜中で鎖状構造をとるとともに高分散しており、このため導電性無機酸化物微粒子の配合量が少なくても高い導電性を有し、且つ、透明性が高く、着色および干渉縞が抑制され、経済性にも優れた透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、表示装置等に使用する場合、ハードコート性に加えてゴミ、埃等の静電付着を防止するために導電性を透明被膜に付与して帯電防止を図ることも行われている。
このような導電性を付与するために導電性酸化物粒子を配合することが知られている。
【0004】
導電性酸化物粒子としては、酸化錫、Sb、FまたはPドープ酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFドープ酸化インジウム、五酸化アンチモン、低次酸化チタン等が知られている。(特許文献1:特開2002−79616号公報)
【0005】
本願出願人は、導電性酸化物粒子を含む被膜付基材として、パイロクロア構造を有する五酸化アンチモン微粒子を含む透明帯電防止膜付基材(特許文献2:特開2001−72929号公報)、五酸化アンチモン微粒子を含むハードコート膜付基材(特許文献3:特開2004−50810号公報)、さらに鎖状五酸化アンチモン微粒子を含むハードコート膜付基材(特許文献4:特開2005−139026号公報)をそれぞれ提案しており、さらに、導電性微粒子を有機珪素化合物の加水分解物で連結させた鎖状導電性微粒子(ATO他種々の)を含む透明導電性被膜付基材(特許文献5:特開2006−339113号公報)も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−79616号公報
【特許文献2】特開2001−72929号公報
【特許文献3】特開2004−50810号公報
【特許文献4】特開2005−139026号公報
【特許文献5】特開2006−339113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の導電性酸化物粒子を用いた被膜付基材では、例えば、五酸化アンチモン微粒子を用いた場合、透明性には優れるものの導電性が低く帯電防止性能が不充分であった。このため五酸化アンチモン微粒子の含有量を多くすると干渉縞を生じたり、経済性が低下する問題があった。
【0008】
また、Pドープ酸化錫(PTO)を用いた場合は、五酸化アンチモン微粒子を用いた場合に比較して帯電防止性能は向上するものの透明性が不充分となり、Sbドープ酸化錫(ATO)を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性が低下したり、着色して透過率が低下する場合があった。さらに、Snドープ酸化インジウム(ITO)を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性、着色性に問題があった。
【0009】
酸化錫、酸化インジウムについては、上記したようにドーピング剤をドープすることによって導電性が向上することが知られていた。しかしながら、Pドープ酸化錫微粒子(PTO)、Snドープ酸化インジウム微粒子(ITO)、Sbドープ酸化錫微粒子(ATO)は導電性の高いものの、透明性が低下したり着色する問題があり、さらに基材、マトリックス成分の屈折率によっては干渉縞を生じる場合があり、着色を抑制するために含有量を減少させると帯電防止性能が不充分となる場合があった。
【0010】
そこで、導電性を向上するために、特許文献4にあるように、微粒子を鎖状に連結させて、粒界抵抗を少なくすることで、粒子自体の使用量を少なくしても、充分な帯電防止性能を維持し、着色、干渉縞のない透明被膜を得ることは困難であった。
【0011】
さらに、従来、ハードコート性能、帯電防止性能の双方が求められる場合は、ハードコート層上に、別途帯電防止層を形成することが行われているが、一度の塗布でハードコート性能と帯電防止性能とを有する透明被膜を形成できる塗布液および透明被膜付基材が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、ケトン類の分散媒と、マトリックス形成成分として例えばエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂を用いると、表面処理した導電性無機酸化物粒子が、透明被膜中で高分散した鎖状粒子の形で存在し、少量用いても高い導電性を有するとともに透明性が高く、着色および干渉縞が抑制された、ハードコート性に優れた透明被膜が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
[1]導電性無機酸化物微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含み、導電性無機酸化物微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、分散媒がケトン類を含み、全固形分の濃度が1〜60質量%の範囲にあり、表面処理された導電性無機酸化物微粒子が非凝集でかつ高分散しており、固形分としての濃度が0.01〜6質量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.1〜59.4質量%の範囲にあり、得られる透明被膜中で導電性無機酸化物微粒子が鎖状構造を形成しうるものである透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0014】
[2]前記導電性無機酸化物微粒子がSbドープ酸化錫(ATO)微粒子および/またはPドープ酸化錫(PTO)微粒子であり、平均粒子径が5〜10nmの範囲にある[1]の透明被膜形成用塗布液。
【0015】
[3]前記導電性無機酸化物微粒子が、導電性無機酸化物微粒子の一次粒子が3個以上鎖状に連結した鎖状導電性無機酸化物微粒子である[1]または[2]の透明被膜形成用塗布液。
[4]前記マトリックス形成成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)である[1]〜[3]の透明被膜形成用塗布液。
【0016】
[5]前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂である[4]の透明被膜形成用塗布液。
[6]前記マトリックス形成成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)とともに、さらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、非変性アクリル系樹脂(B)とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)との固形分としての重量比((B):(A))が5:95〜50:50の範囲にある[1]〜[5]の透明被膜形成用塗布液。
【0017】
[7]前記分散媒のケトン類がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルから選ばれる1種以上である[1]〜[6]の透明被膜形成用塗布液。
[8]前記分散媒のケトン類が、アセトンおよび/またはメチルエチルケトンである[7]の透明被膜形成用塗布液。
【0018】
[9]基材と基材表面に形成された透明被膜とを含み、
透明被膜が、導電性無機酸化物微粒子とマトリックス成分とを含み、導電性無機酸化物微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、該導電性無機酸化物微粒子が透明被膜中で鎖状構造を構成し、かつ高分散してなり、
透明被膜中の該導電性無機酸化物微粒子の含有量が1〜12質量%の範囲にあり、
透明被膜の表面抵抗値が108〜1011Ω/□の範囲にあり、ヘーズが0.3%以下であり、全光線透過率が90%以上であり、
基材の屈折率(NS)と前記透明被膜の屈折率(NH)との差が0.02以下である透明被膜付基材。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0019】
[10]前記導電性無機酸化物微粒子がSbドープ酸化錫(ATO)微粒子および/またはPドープ酸化錫(PTO)微粒子であり、鎖状構造を構成する一次粒子の平均粒子径が5〜10nmの範囲にあり、連結数が3以上である[9]の透明被膜付基材。
【0020】
[11]前記マトリックス成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)である[9]または[10]の透明被膜形成用塗布液。
[12]前記アルコキシ変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂である[11]の透明被膜付基材。
【0021】
[13]前記マトリックス成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、非変性アクリル系樹脂(B)とアルコキシ変性アクリル系樹脂(A)との固形分としての重量比((B):(A))が5:95〜50:50の範囲にある[9]〜[12]の透明被膜付基材。
[14]前記透明被膜の膜厚が1〜20μmの範囲にある[9]〜[13]の透明被膜付基材。
【0022】
[15]前記基材がトリアセチルセルロースである[9]〜[14]の透明被膜付基材。
[16]前記透明被膜が、請求項1〜8に記載の透明被膜形成用塗布液を使用して得られたものである[9]〜[15]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、導電性無機酸化物微粒子の配合量が少なくても高い導電性能を有し、透明性に優れるとともに着色、干渉縞が無く、帯電防止性能に優れ、且つ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れ、経済性にも優れた透明被膜付基材の形成に用いる透明被膜形成用塗布液と透明被膜付基材を提供することができる。
【0024】
この理由は明確でないものの、特定の溶媒とマトリックス形成成分を使用しているので、塗布液中の単分散粒子が、透明被膜中で鎖状粒子を構成し、また、鎖状粒子を使用した場合、鎖状粒子が凝集することなく高分散した状態となり、帯電防止性能が向上し、さらに基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度を高めるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の粒子の分散状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1の粒子の分散状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
透明被膜形成用塗布液
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、導電性無機酸化物微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含む。
【0027】
導電性無機酸化物微粒子
本発明に用いる導電性無機酸化物微粒子としては、導電性を有する従来公知の無機酸化物微粒子を用いることができるが、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。このような導電性無機酸化物微粒子を用いると帯電防止性能有する透明被膜を得ることができる。
【0028】
なかでも、Sbドープ酸化錫(ATO)微粒子、Pドープ酸化錫(PTO)微粒子は導電性が高く、このため導電性無機酸化物微粒子の使用量を少なくすることができ、しかも着色が抑制されるため、厚膜を形成しても透明性に優れた透明被膜付基材を得ることができる。
【0029】
塗布液中の導電性無機酸化物微粒子は、一次粒子であっても、予め鎖状に連結した鎖状粒子(二次粒子)であってもよい。塗布液中では一次粒子に分散していても、本発明の塗布液では、特定の溶媒とマトリックス成分を使用しているので、透明被膜形成時には、連結して鎖状粒子となる。
【0030】
導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の平均粒子径は5〜10nm、さらには5〜8nmの範囲にあることが好ましい。
導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の平均粒子径が小さいと、結晶構造が充分に発達してない場合があり、加えて凝集粒子を形成する傾向があり、導電性を向上させる効果が不充分となる場合がある。また、凝集すると透明性が低下したり、ヘーズが高くなる場合がある。導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の平均粒子径が大きすぎても、透明被膜中で鎖状化する傾向が小さく、鎖状化しても導電性パスが効果的に形成されにくいために導電性の向上効果が不充分となる場合がある。
【0031】
なお、本発明における「一次粒子」とは、単分散した無機酸化物微粒子をいう。また鎖状粒子とは、上記一次粒子が3個以上連結したものをいう。
導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を測定し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として求める。
【0032】
また、本発明で用いる導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の屈折率の測定方法は、標準屈折液としてCARGILL製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
(1)導電性無機酸化物微粒子分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを80℃で12時間乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を導電性無機酸化物微粒子の屈折率とする。

本発明で使用する鎖状導電性無機酸化物微粒子における導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の連結数は3以上、さらには5、特に10以上であることが好ましい。
【0033】
導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の連結数が少ないと、導電性の向上効果が充分得られず、このため、所望の導電性を得るためには導電性無機酸化物微粒子の使用量を低減させることができないため、着色抑制効果が不充分となる場合がある。
【0034】
予め鎖状化した鎖状導電性無機酸化物微粒子(二次粒子)は、特許文献4に開示した方法に準拠して製造することができる。
導電性無機酸化物微粒子(二次粒子)については、導電性無機酸化物微粒子(二次粒子)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を測定し、100個の一次粒子について粒子径を測定し、その平均値として求め、連結数は一次粒子が連結した鎖状粒子のみについて50個の連結数を求めその平均値として連結数を求める。
【0035】
透明被膜形成用塗布液中の導電性無機酸化物微粒子の濃度は、固形分として0.01〜6質量%、さらには0.02〜4.8質量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中の導電性無機酸化物微粒子の濃度が少ないと、導電性能が不充分となり、得られる透明被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合がある。また、導電性無機酸化物微粒子が多すぎても、得られる透明被膜の着色が顕著になり、透過率が低下したり、透明被膜の屈折率が高くなるために基材の屈折率によっては干渉縞を生じる場合がある。
【0036】
このような導電性無機酸化物微粒子は、下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されている。
n−SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0037】
このような式(1)で表される有機珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
なかでも、前記式(1)におけるn=0の有機珪素化合物で表面処理されていると、導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)を用いた場合に導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)が透明被膜形成時に鎖状化するとともに鎖状化した粒子が高分散する傾向があり、あらかじめ鎖状化した導電性無機酸化物微粒子(二次粒子)を用いた場合は透明被膜形成時に鎖状化した粒子が高分散する傾向がある。
【0039】
導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の表面処理は、例えば、導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)のアルコール分散液に前記有機ケイ素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機ケイ素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加え、有機ケイ素化合物を加水分解する。この時の有機ケイ素化合物の使用量は導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の大きさにもよるが、Rn−SiO(4-n)/2として導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の概ね2〜30質量%、さらには3〜10質量%の範囲にあることが好ましい。
【0040】
このように、有機ケイ素化合物で表面処理されていると透明被膜形成用塗布液中では均一に高分散するとともに安定性が向上し、透明被膜中では鎖状化し、鎖状化した粒子が高分散し、少量の導電性無機酸化物微粒子の使用で導電性が高く、透明性、透過率、硬度等に優れた透明被膜を得ることができる。
【0041】
なお、鎖状導電性無機酸化物微粒子(二次粒子)の表面処理については、鎖状導電性無機酸化物微粒子の製造過程で前記式(1)で表される有機珪素化合物を加水分解して使用しており、導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)の連結とともに表面処理がされている。
【0042】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としてはアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)が好適に用いられる。
【0043】
アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)としては、エチレンオキサイド変性アクリル樹脂、プロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂等が挙げられる。
このようなアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を用いると、後述する分散媒がケトン系の分散媒の場合、前記表面処理した導電性無機酸化物微粒子(一次粒子)を用いた場合であっても得られる透明被膜中で鎖状構造をとるとともに高分散し、導電性無機酸化物微粒子の使用量が少なくても導電性に優れた透明被膜を得ることができる。特にエチレンオキサイド変性アクリル樹脂はこれらの点において優れている。なお、マトリックス形成成分は、このようなアクリル樹脂の重合反応前のものをいう。
【0044】
本発明では前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)に加えて非変性アクリル系樹脂(B)を含むことが好ましい。このように非変性アクリル樹脂(B)を使用することで得られる透明被膜の強度、硬度、耐擦傷性を向上することができる。
【0045】
非変性アクリル系樹脂(B)としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘ、サンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
非変性アクリル系樹脂(B)を含む場合、非変性アクリル系樹脂(B)とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)との固形分としての重量比((B):(A))が0:95〜50:50、さらには5:95〜40:60の範囲にあることが好ましい。
【0047】
非変性アクリル系樹脂(B)が少ないと、非変性アクリル系樹脂(B)を用いる効果、すなわち得られる透明被膜の強度、硬度、耐擦傷性を向上させる効果が不充分となり、多すぎても導電性無機酸化物微粒子が鎖状化する傾向が小さくなり、また導電性無機酸化物微粒子、または導電性無機酸化物微粒子が少ない使用量で導電性を向上させる効果が充分得られない場合がある。
【0048】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は固形分として0.1〜59.4質量%、さらには0.2〜47.8質量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度が少ないと、導電性無機酸化物微粒子が鎖状化する傾向が小さくなり、また導電性無機酸化物微粒子、または導電性無機酸化物微粒子が少ない使用量で導電性を向上させる効果が充分得られない場合がある。また、マトリックス形成成分が少なくなるので、得られる透明被膜の耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0049】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分が多すぎても、導電性無機酸化物微粒子が少なくなるために導電性が不充分となり、得られる透明被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0050】
分散媒
本発明に用いる分散媒としてはケトン類が好適に用いられる。
具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類およびこれらの混合分散媒が挙げられる。
【0051】
なかでも、特に、アセトン、メチルエチルケトンおよびこれらの混合物が好ましい。
分散媒にはケトン類以外の分散媒を含んでいてもよく、ケトン類以外の分散媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
これらの混合分散媒を前記アルコキシ変性アクリル系樹脂(A)と併用して用いると、導電性酸化物微粒子(一次粒子)を用いた場合、透明被膜形成時に導電性酸化物微粒子(一次粒子)が鎖状化する傾向があり、また鎖状導電性酸化物微粒子が互いに凝集することなく高分散し、このため導電性が向上し、少ない導電性酸化物微粒子を用いても導電性、透明性、透過率、硬度に優れ、干渉縞の抑制された透明被膜を得ることができる。
【0053】
分散媒中のケトン類の割合は30質量%以上、さらには40質量%以上であることが好ましい。ケトン類の割合が少ないと、透明被膜形成時に導電性酸化物微粒子が鎖状化しない場合があり、また鎖状導電性酸化物微粒子が互いに凝集する場合があり、透明被膜中で鎖状化導電性酸化物微粒子が高分散した透明被膜が得られない場合がある。また、基材がTACの場合、ケトン類が塗布液に含まれているとTACの表面が膨潤あるいは溶解して透明被膜成分と相互進入し、境界における光学界面が不鮮明になるためか、干渉縞を抑制できる場合があるが、ケトン類の割合が少ないとこのような干渉縞を抑制する効果が得られない場合がある。
【0054】
また、上記した分散媒を用いると、基材にTACフィルムを用いた場合、特に干渉縞の抑制された透明被膜を得ることができる。
透明膜形成用塗布液の濃度は、全固形分として1〜60質量%、さらには2〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
【0055】
透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度が低すぎると、導電性酸化物微粒子が鎖状化する傾向が無くなり導電性を向上させる効果が得られない場合があり、1回の塗布で厚膜の透明導電性被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥を繰り返すと、膜の強度が低下したり、経済性が低下する問題がある。
【0056】
また、全固形分濃度が多すぎても、塗布液の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、前記導電性酸化物微粒子が鎖状化した粒子や鎖状化導電性酸化物微粒子が凝集する傾向があり、充分な導電性が得られない場合があり、また、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0057】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。この加熱・紫外線照射などによってマトリックス形成成分が重合して硬化する。
つぎに、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0058】
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と基材表面に形成された透明被膜とを含む。
【0059】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができる。
【0060】
なかでもTAC、ポリカーボネート、アクリル樹脂基材等が好適に用いられる。特にTACは、本発明の透明被膜形成用塗布液の分散媒にケトン類を用いるため、TAC基材が膨潤あるいは溶解し、TACと透明被膜成分とが相互進入して境界における光学界面が不鮮明になったり、屈折率が傾斜を有するようになるためか干渉縞を抑制できるので好ましい。
【0061】
本発明に用いる基材の屈折率(NS)は1.49〜1.59、さらには1.49〜1.56、特に1.49〜1.52の範囲にあることが好ましい。
基材の屈折率(NS)が前記範囲にない場合は、透明被膜の屈折率の調整が困難で、基材の屈折率(NS)との屈折率差を0.2以下とすることができず、干渉縞を抑制できない場合がある。
【0062】
透明被膜
透明被膜は、導電性無機酸化物微粒子とマトリックス成分とを含む。
導電性無機酸化物微粒子
透明被膜中では、前記塗布液に用いられている表面処理された導電性無機酸化物微粒子が鎖状構造をとるとともに高分散している。
【0063】
なお、上記した鎖状導電性無機酸化物微粒子は、塗布液中の前記一次粒子が被膜形成過程で連結したもの、予め連結した粒子、さらには予め連結していた粒子同士または一次粒子と連結したものをいう。
【0064】
ここで、「高分散」とは導電性無機酸化物微粒子の含有量によっても異なるが、前記導電性酸化物微粒子が鎖状化した粒子、鎖状化導電性酸化物微粒子が互いに交絡したり、凝集して偏在することなく、透明被膜中で鎖状構造が視認できるように高分散した状態にあることを意味している。なお、鎖状粒子同士がさらに連結することもある。
【0065】
透明被膜中での導電性無機酸化物微粒子の連結数は、通常、連結数は3以上、さらには5、特に10以上であることが好ましい。
鎖状導電性無機酸化物微粒子の連結数が少ないと、導電性の向上効果が充分得られないことがある。なお、予め鎖状粒子を使用した場合、連結数はさらに多くなる場合、あるいは単分散粒子と鎖状粒子とが連結することもある。
【0066】
本発明の透明被膜中で鎖状化導電性酸化物微粒子が高分散する理由については明らかではないが、上記したように、本発明に用いる特定の分散媒、特定の樹脂および前記塗布液の濃度が寄与していると考えられる。
【0067】
また、透明被膜中の導電性無機酸化物微粒子の含有量は、固形分として1〜12質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲にある。
透明被膜中の導電性無機酸化物微粒子が少なすぎると、前記鎖状化した導電性微粒子が高分散したとしても導電性が不充分となる場合がある。導電性無機酸化物微粒子が多すぎても、導電性は向上するものの、ATO、PTOなど無機酸化物に由来する着色が認められるようになり、全光線透過率が不充分となったり、屈折率が高くなり、基材によっては干渉縞が生じる場合がある。
【0068】
マトリックス成分
マトリックス成分としては前記したアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)が硬化した樹脂が相当する。また、かかるアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)とともに非変性アクリル系樹脂(B)が含まれていてもよい。
非変性アクリル系樹脂(B)とアルコキシ変性アクリル系樹脂(A)とを併用する場合、前記マトリックス形成成分と同様に、重量比((B):(A))が0:95〜50:50、さらには5:95〜40:60の範囲にあることが好ましい。
【0069】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は、固形分として88〜99質量%、さらには90〜99質量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中のマトリックス成分が少ないと、前記導電性無機酸化物微粒子が相対的に多くなることになり、着色の問題が生じる場合がある。透明被膜中のマトリックス成分が多すぎても、導電性無機酸化物微粒子が少なくなるために導電性が不充分となり、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
【0070】
基材の屈折率(NS)と前記透明被膜の屈折率(NH)との差が0.02以下、好ましくは0.01以下である。
前記屈折率差が0.02を越えると鮮明な干渉縞を生じ、外観上の問題となったり、表示装置に用いる場合は画像の視認性が低下する場合がある。
【0071】
本発明では、透明被膜の屈折率(NH)が1.49〜1.59、さらには1.49〜1.56、特に1.49〜1.52の範囲にあることが好ましい。
透明被膜の屈折率(NH)が前記範囲にない場合は、使用する基材の屈折率(NS)との屈折率差0.02より大きくなる場合があり、干渉縞を生じる場合がある。
【0072】
透明被膜の表面抵抗値は108〜1011Ω/□、好ましくは108〜1010Ω/□の範囲にある。
透明被膜の表面抵抗値が低すぎると、前記導電性無機酸化物微粒子の含有量を12質量%以上とする必要があり、この場合、着色の問題が生じる場合がある。
【0073】
透明被膜の表面抵抗値が大きすぎると、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
透明被膜のヘーズは0.3%以下、好ましくは0.2%以下である。ヘーズが高いものは、透明性が不充分であり、所望の光学特性、例えば、コントラスト、視認性が得られない場合がある。
【0074】
また、透明被膜の全光線透過率は90%以上、好ましくは92%以上である。
全光線透過率が低いと、前記所望の光学特性が得られないばかりか、着色して全光線透過率が低い場合には光学部材の設計や意匠性に悪影響を与える場合がある。
【0075】
透明被膜の膜厚は1〜20μm、さらには4〜15μmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が薄すぎると、充分な硬度、耐擦傷性が得られない場合があり、透明被膜の膜厚が厚すぎても、膜が厚いために着色が助長されたり、透過率が不充分となる場合がある。
【0076】
本発明では、前記透明被膜の上に、該透明被膜の屈折率よりも低い屈折率を有する透明被膜を反射防止膜として形成することができる。反射防止膜としては従来公知の反射防止膜を形成することができ、例えば、本願出願人の出願による特開2006−339113号公報に開示した反射防止膜形成用塗布液、反射防止膜は好適に用いることができる。
【0077】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
鎖状導電性無機酸化物粒子(1)分散液の調製
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gを溶解し、水酸化カリウムを用いてpH10.5に調製した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH10.5に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20質量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。
【0079】
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得た。
【0080】
この粉末60gを濃度4.3質量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
次にこのゾルに純水を添加して濃度8質量%に希釈した。このゾルのpHは5.2であった。続いてこのゾルを陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製;ダイヤイオンSANUPC)で処理して、pH5.5とした。次に200℃で24時間水熱処理した。続いて陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製;ダイヤイオンSANUPC)で処理した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製;ダイヤイオンSK1BH)で処理してpH2.7、濃度8質量%のゾルを得た。これを限外濾過膜にて濃縮し、固形分濃度20質量%のSbドープ酸化錫粒子からなる導電性無機酸化物微粒子(1)分散液を調製した。導電性無機酸化物微粒子(1)の平均粒子径は8nmであった。
【0081】
次いで、濃度20質量%の導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)5.2gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は10質量%であった。
【0082】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で鎖状化および表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液を調製した。鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)を構成する一次粒子の平均連結数は10個であった。また、鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)の屈折率は1.75であった。
【0083】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートTMP−3EO−A、樹脂濃度100質量%)480gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)38.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを658g、メチルエチルケトン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0084】
透明被膜付基材(1)の調製
透明被膜形成用塗布液(1)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0085】
この透明被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態および耐擦傷性を表に示す。全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により、反射率は分光光度計(日本分光社、Ubest-55)により夫々測定した。表面抵抗値は、表面抵抗計(三菱化学(株)製:ハイレスタ)にて測定した。
【0086】
なお、未塗布のTACフィルムは全光線透過率が93.2%、ヘーズが0.2%、波長550nmの光線の反射率が6. 0%であった。
また、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、および耐擦傷性は以下の方法および評価基準で評価し、結果を表に示した。また、鎖状粒子の分散状態を評価した際の走査型電子顕微鏡写真を図1に示した。
【0087】
屈折率
透明被膜形成用塗布液(1)をシリコーンウェハー上に塗布し、乾燥し、硬化して透明被膜を形成し、透明被膜の屈折率をエリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)で測定した。
【0088】
着色
透明被膜付基材(1)に蛍光灯の光をあて、目視で透過での着色の有無を観察した。結果を表1に示す。
評価基準:
無色透明で着色が全く認められない :◎
ごく薄く着色が僅かに認められる :○
薄く着色が認められる :△
濃く着色が認められる :×
【0089】
密着性
透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
【0090】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる :○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0091】
干渉縞
透明被膜付基材(1)の背景を黒にした状態で蛍光灯の光を透明被膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様の発生を目視観察し、以下の基準で評価した。
虹模様が全く認められない :◎
虹模様がわずかに認められる :○
虹模様が明らかに認められる :△
虹模様が鮮明に認められる :×
【0092】
鎖状粒子の分散状態
透明被膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、鎖状導電性無機酸化物微粒子の分散状態を観察し、以下の基準で評価した。
鎖状粒子が互いに交絡することなく概ね均等間隔で分散している :◎
鎖状粒子が一部交絡しているが概ね均等間隔で分散している :○
鎖状粒子の多くが交絡しており、不均一に分散している :△
単分散粒子が鎖状化することなく単分散または凝集して分散しているか、鎖状粒子が凝集粒子となり、不均一に分散している :×
【0093】
[実施例2]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL40、樹脂濃度100質量%)384g、非変性アクリル系樹脂としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)96g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)38.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを568g、メチルエチルケトン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0094】
透明被膜付基材(2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(2)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、および耐擦傷性を表に示す。
【0095】
[実施例3]
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)288g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)192gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)38.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを568g、メチルエチルケトン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0096】
透明被膜付基材(3)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(3)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0097】
[実施例4]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液50gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)294g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)196gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)39.2gおよびケトン系溶媒としてアセトンを600g、メチルエチルケトン169gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0098】
透明被膜付基材(4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(4)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0099】
[実施例5]
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)108g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)72gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)14.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを188g、メチルエチルケトン53gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0100】
透明被膜付基材(5)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(5)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0101】
[実施例6]
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例3において、アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂としてプロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4P、樹脂濃度100質量%)288gを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0102】
透明被膜付基材(6)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(6)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0103】
[実施例7]
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20質量%の表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)288g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)192gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)38.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを568g、メチルイソブチルケトン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0104】
透明被膜付基材(7)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(7)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0105】
[実施例8](実施例3でPTO粒子に変更、粒子:樹脂=10:90)
鎖状導電性無機酸化物粒子(3)分散液の調製
錫酸カリウム150gを純水430gに溶解して溶液を調製した。この溶液を12時間かけて、60℃、撹拌下の純水800gと硝酸アンモニウム1.3gと水酸化カリウム水溶液を加えてpH10.0に調製した溶液に添加して加水分解した。このとき、濃度10質量%の硝酸水溶液をpH10.0に保つように同時に添加した。生成した沈殿を濾別・洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20質量%の水酸化錫分散液200gを調製した。
【0106】
この分散液に濃度85質量%のリン酸水溶液3.2gを添加し30分間撹拌を行った後、温度100℃で噴霧乾燥してリンドープ酸化錫前駆体の水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、650℃で2時間加熱処理することによりリンドープ酸化錫粉末を得た。
この粉末60gを濃度4.3質量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
【0107】
次いで、このゾルをイオン交換樹脂でpHが3.3になるまで脱アルカリ処理し、純水を加えて濃度20質量%のリンドープ酸化錫微粒子からなる導電性微粒子(3)分散液を調製した。
この導電性無機酸化物微粒子(3)分散液のpHは3.6であった。また導電性無機酸化物微粒子(3)の平均粒子径は8nmであった。
【0108】
次いで、濃度20質量%の導電性無機酸化物微粒子(3)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)3.5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、60℃に30分間で昇温、12時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は10質量%であった。
【0109】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水とエタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で鎖状化および表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(3)分散液を調製した。鎖状導電性無機酸化物微粒子(3)を構成する一次粒子の平均連結数は5個であった。また、鎖状導電性無機酸化物微粒子(3)の屈折率は1.74であった。
【0110】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(3)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)108g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)72gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)14.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを188g、メチルエチルケトン53gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0111】
透明被膜付基材(8)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(8)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0112】
[実施例9]
透明被膜付基材(9)の調製
実施例3と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(3)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(9)を調製した。透明被膜の膜厚は2μmであった。
得られた透明被膜付基材(9)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0113】
[実施例10]
透明被膜付基材(10)の調製
実施例3と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(3)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#20)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(10)を調製した。透明被膜の膜厚は10μmであった。
得られた透明被膜付基材(10)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0114】
[実施例11]
反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)の調製
シリカ系微粒子分散液(日揮触媒化成(株)製:スルーリア4320、粒子屈折率=1.30、固形分濃度20質量%、分散媒=メチルイソブチルケトン)6.5gにメチルイソブチルケトン5.9gを加えて稀釈し、ついで、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A、固形分濃度100質量%)1.03gと撥水化材用反応性シリコンオイル(信越化学(株);X−22−174DX、固形分濃度100質量%)0.08gと1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリレート1.6HX−A)0.09gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184:IPAで固形分濃度10質量%に溶解)0.76gとイソプロピルアルコール70.66g、イソプロピルグリコール15.00gを混合して、固形分濃度2.5質量%の反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0115】
透明被膜付基材(11)の調製
実施例3と同様にして透明被膜付基材(3)を調製し、ついで、反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(バー#3)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止膜を設けた透明被膜付基材(11)を調製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
得られた透明被膜付基材(11)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0116】
[実施例12]
導電性無機酸化物粒子(12)分散液の調製
実施例1と同様にして調製した濃度20質量%の導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)4.9gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、20時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は15質量%であった。
【0117】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水とエタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で表面処理した導電性無機酸化物微粒子(12)分散液を調製した。導電性無機酸化物微粒子(12)の平均粒子径は8nmであった。また、導電性無機酸化物微粒子(11)の屈折率は1.74であった。
【0118】
透明被膜形成用塗布液(12)の調製
実施例3において、固形分濃度15質量%の有機ケイ素化合物で表面処理した導電性無機酸化物微粒子(12)分散液100gを用いた以外は同様にして固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(12)を調製した。
【0119】
透明被膜付基材(12)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(12)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(12)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0120】
得られた透明被膜付基材(12)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。透明被膜中の鎖状導電性無機酸化物微粒子は、平均粒子径は8nm、連結数は3であった。
【0121】
[比較例1]
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニディック17−824−9、固形分濃度77質量%)623g、ケトン系溶媒としてアセトンを430g、メチルエチルケトンを121gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0122】
透明被膜付基材(R1)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0123】
得られた透明被膜付基材(R1)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。また、鎖状粒子の分散状態を評価した際の走査型電子顕微鏡写真を図2に示した。図2に示されるように粒子は凝集していた。
【0124】
[比較例2]
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
比較例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(R1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートTMP−3EO−A、樹脂濃度100質量%)288g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)192gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)38.4gおよびイソプロピルアルコール568g、トルエン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0125】
透明被膜付基材(R2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#20)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を調製した。透明被膜の膜厚は10μmであった。
得られた透明被膜付基材(R2)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0126】
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
比較例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(R1)分散液100gとOH基を有する紫外線硬化樹脂ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート(新中村化学工業(株)製:NKオリゴEA−5821)480gに、光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)38.4gおよびイソプロピルアルコールを568g、エチルセロソルブ160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0127】
透明被膜付基材(R3)の調製
比較例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R3)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0128】
[比較例4]
透明被膜形成用塗布液(R4)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液10gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)229g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)159gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)31.8gおよびケトン系溶媒としてアセトンを499g、メチルエチルケトン141gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R4)を調製した。
【0129】
透明被膜付基材(R4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R4)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0130】
[比較例5]
透明被膜形成用塗布液(R5)の調製
実施例1と同様にして調製した表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)48g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)32gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)6.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを62g、メチルエチルケトン18gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
【0131】
透明被膜付基材(R5)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R5)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R5)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R5)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0132】
[比較例6]
導電性無機酸化物粒子(R1)分散液の調製
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gと15%アンモニア水12gを溶解した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH8.8に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20質量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。
【0133】
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得た。この粉末60gを濃度4.3質量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
【0134】
次に、このゾルをイオン交換樹脂でPHが3.0になるまで脱アルカリの処理を行い、濃度20質量%のSbド−プ酸化錫微粒子からなる導電性無機酸化物微粒子(1)分散液を調製した。この導電性無機酸化物微粒子(1)分散液のPHは3.2であった。また導電性無機酸化物微粒子(R1)の平均粒子径は20nmであった。
【0135】
次いで、濃度20質量%の導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)4.9gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は15質量%であった。
【0136】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水とエタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換するとともに濃縮して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で鎖状化および表面処理した導電性無機酸化物微粒子(R1)分散液を調製した。導電性無機酸化物微粒子(R1)に鎖状の連結は認められなかった。導電性無機酸化物微粒子(R1)の屈折率は1.74であった。
【0137】
透明被膜形成用塗布液(R6)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理導電性無機酸化物微粒子(R1)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)48g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)32gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)6.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを62g、メチルエチルケトン18gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R6)を調製した。
【0138】
透明被膜付基材(R6)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R6)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R6)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。得られた透明被膜付基材(R6)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0139】
[比較例7]
鎖状導電性無機酸化物粒子(R2)分散液の調製
純水800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85質量%)25gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(住友鉱山(株)製:KN、純度98.5質量%)50gを懸濁した。この懸濁液を95℃に加熱し、ついで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、濃度35質量%)15gを純水50gで稀釈した水溶液9時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後、11時間熟成した。ついで、冷却後、得られた溶液から800gをとり、この溶液を純水4800gで稀釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:pk−216)でpHが3.5になるまで処理して脱イオンを行った。脱イオンして得られた溶液を温度70℃で10時間熟成した後、限外濾過膜で濃縮して固形分濃度14質量%の五酸化アンチモンからなる導電性微粒子分散液を調製した。この導電性微粒子分散液のpHは4.0、導電性微粒子の平均粒子径は20nmであった。
【0140】
ついで、導電性微粒子分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)2.5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7質量%であった。
【0141】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水とエタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換するとともに濃縮して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で鎖状化および表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(R2)分散液を調製した。鎖状導電性無機酸化物微粒子(R2)を構成する一次粒子の平均連結数は5個であった。また、鎖状導電性無機酸化物微粒子(R2)の屈折率は1.65であった。
【0142】
透明被膜形成用塗布液(R7)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(R2)分散液100gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100質量%)288g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100質量%)192gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184)38.4gおよびケトン系溶媒としてアセトンを568g、メチルエチルケトン160gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R7)を調製した。
【0143】
透明被膜付基材(R7)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R7)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R7)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R7)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0144】
[比較例8]
鎖状導電性無機酸化物粒子(R3)分散液の調製
実施例1と同様にして調製した濃度20質量%の導電性無機酸化物微粒子(1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8質量%)6.9gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は15質量%であった。
【0145】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水とエタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換するとともに濃縮して固形分濃度20質量%の有機ケイ素化合物で鎖状化および表面処理した鎖状導電性無機酸化物微粒子(R3)分散液を調製した。鎖状導電性無機酸化物微粒子(R3)を構成する一次粒子は一部連結が認められたがほぼ単分散の状態であった。また、鎖状導電性無機酸化物微粒子(R3)の屈折率は1.73であった。
【0146】
透明被膜形成用塗布液(R8)の調製
固形分濃度20質量%の表面処理鎖状導電性無機酸化物微粒子(R3)分散液100gと紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニディック17−824−9、固形分濃度77質量%)623g、ケトン系溶媒としてアセトンを430g、メチルエチルケトン121gを充分に混合して固形分濃度40質量%の透明被膜形成用塗布液(R8)を調製した。
【0147】
透明被膜付基材(R8)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R8)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R8)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0148】
得られた透明被膜付基材(R9)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態、耐擦傷性を表に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性無機酸化物微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含み、導電性無機酸化物微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、分散媒がケトン類を含み、全固形分の濃度が1〜60質量%の範囲にあり、表面処理された導電性無機酸化物微粒子が非凝集でかつ高分散しており、固形分としての濃度が0.01〜6質量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.1〜59.4質量%の範囲にあり、得られる透明被膜中で導電性無機酸化物微粒子が鎖状構造を形成しうるものであることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【請求項2】
前記導電性無機酸化物微粒子がSbドープ酸化錫(ATO)微粒子および/またはPドープ酸化錫(PTO)微粒子であり、平均粒子径が5〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記導電性無機酸化物微粒子が、導電性無機酸化物微粒子の一次粒子が3個以上鎖状に連結した鎖状導電性無機酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記マトリックス形成成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記マトリックス形成成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)とともに、さらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、非変性アクリル系樹脂(B)とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)との固形分としての重量比((B):(A))が5:95〜50:50の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記分散媒のケトン類がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項8】
前記分散媒のケトン類が、アセトンおよび/またはメチルエチルケトンであることを特徴とする請求項7に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項9】
基材と基材表面に形成された透明被膜とを含み、
透明被膜が、導電性無機酸化物微粒子とマトリックス成分とを含み、導電性無機酸化物微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、該導電性無機酸化物微粒子が透明被膜中で鎖状構造を構成し、かつ高分散してなり、
透明被膜中の該導電性無機酸化物微粒子の含有量が1〜12質量%の範囲にあり、
透明被膜の表面抵抗値が108〜1011Ω/□の範囲にあり、ヘーズが0.3%以下であり、全光線透過率が90%以上であり、
基材の屈折率(NS)と前記透明被膜の屈折率(NH)との差が0.02以下であることを特徴とする透明被膜付基材。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【請求項10】
前記導電性無機酸化物微粒子がSbドープ酸化錫(ATO)微粒子および/またはPドープ酸化錫(PTO)微粒子であり、
鎖状構造を構成する一次粒子の平均粒子径が5〜10nmの範囲にあり、連結数が3以上であることを特徴とする請求項9に記載の透明被膜付基材。
【請求項11】
前記マトリックス成分がアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)であることを特徴とする請求項9または10に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項12】
前記アルコキシ変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の透明被膜付基材。
【請求項13】
前記マトリックス成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、非変性アクリル系樹脂(B)とアルコキシ変性アクリル系樹脂(A)との固形分としての重量比((B):(A))が0:95〜50:50の範囲にあることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項14】
前記透明被膜の膜厚が1〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項15】
前記基材がトリアセチルセルロースであることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項16】
前記透明被膜が、請求項1〜8のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を使用して得られたものであることを特徴とする特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の透明被膜付基材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−25793(P2012−25793A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162710(P2010−162710)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】