説明

透明電極形成用光硬化性樹脂組成物及び透明電極の製造方法

【課題】PDP、SED等の透明電極を形成する際にハレーションの影響を防止することが可能な透明電極形成用光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた透明電極の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る透明電極形成用光硬化性樹脂組成物は、360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤(a)と、酸基を有する樹脂(b)と、エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)と、300〜355nmの波長の光を実質的に透過し、かつ、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極形成用光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた透明電極の製造方法に関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイパネルの透明電極を形成するのに好適な透明電極形成用光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた透明電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電現象を利用して多数の微細なセルを自己発光させることにより表示画像を形成するプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)は、大画面、薄型、軽量、フラットという、従来のディスプレイパネルでは実現できなかった優れた特徴を有しており、その普及が図られている。
【0003】
このPDPは、透明電極とバス電極とからなる複合電極が互いに平行に配線形成された前面板と、上記複合電極と直交するようにアドレス電極が互いに平行に配線形成された背面板とが対向して配設され、これら電極形成基板間に発光部が形成されるようにして、一体化されてなる表示素子である。
【特許文献1】特開2006−276791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、PDPの透明電極を形成する方法としては、リフトオフ法やエッチング法等があり、エッチング法が一般的であった。このエッチング法では、例えば、ガラス基板上に透明導電性膜をスパッタや蒸着により形成した後、光硬化性樹脂組成物を塗布し、光硬化性樹脂層を形成する。そして、光硬化性樹脂層が形成されたガラス基板を露光装置のステージ上に真空吸着し、マスクを介して超高圧水銀灯等により露光する。その後、現像液により現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして透明導電性膜をエッチングすることにより、透明電極を形成する。
【0005】
しかしながら、リフトオフ法、エッチング法ともに、露光時に露光光がガラス基板上或いは露光装置のステージ上で反射し、ハレーションを起こす問題があった(特許文献1参照)。透明電極の形成においては、透明電極を形成するための光硬化性樹脂組成物も基板も透明なので、ハレーションによる線幅変化の影響を受け易く、特に、露光装置のステージには真空吸着用の溝や穴パターンが設けられているため、これらの溝パターン等により、形成されるパターンの線幅が変わったり、パターン形状が悪くなったりしていた。
【0006】
このようなハレーションの問題は、PDPに限らず表面電界ディスプレイ(以下、「SED」ともいう。)等の透明電極を形成する際にも生じ得る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、PDP、SED等の透明電極を形成する際にハレーションの影響を防止又は軽減し、かつ高感度化を実現することが可能な透明電極形成用光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた透明電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の組成物によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
本発明の第一の態様は、360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤(a)と、酸基を有する樹脂(b)と、エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)と、300〜355nmの波長の光を実質的に透過し、かつ、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)と、を含有する透明電極形成用光硬化性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第二の態様は、透明導電性膜が形成されたガラス基板上に、本発明に係る透明電極形成用光硬化性樹脂組成物を塗布し、選択的に露光した後、現像してレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記透明導電性膜を選択的にエッチングする工程と、前記レジストパターンを剥離する工程と、を含む透明電極の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PDP、SED等の透明電極を形成する際にハレーションの影響を防止又は軽減することが可能な透明電極形成用光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた透明電極の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を示す。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を示す。
【0013】
≪光硬化性樹脂組成物≫
本発明に係る透明電極形成用光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」という。)は、360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤(a)と、酸基を有する樹脂(b)と、エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)と、300〜355nmの波長の光を実質的に透過し、かつ、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)と、を含有する。以下、本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
[光重合開始剤(a)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤(a)(以下、「(a)成分」ともいう。)を含有する。
PDP、SED等の透明電極を形成する場合、光硬化性樹脂層の露光時に露光光が露光装置のステージ上で反射し、ハレーションを起こす場合がある。すなわち、露光光がガラス基板を透過し、露光装置のステージ上で反射されることにより、露光箇所以外にも光(反射光)が到達してしまい、所望の形状のパターンを形成することが困難となる場合がある。本発明者らが確認したところ、360nmよりも短波長の光はガラス基板によって吸収されるため、反射光に含まれる波長は360nm以上が大半である。そこで、本発明に係る光硬化性樹脂組成物では、後述する360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)を含有させることで、ハレーションの影響を軽減している。
【0015】
光吸収剤(d)によってハレーションの影響が軽減されるため、光重合開始剤としては原理的に従来の一般的な光重合開始剤が使用可能であるが、本発明に係る光硬化性樹脂組成物ではハレーションの影響を抑えつつ感度を向上させるために、360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤を用いている。360nmの波長の光に対する透過率は70%以下がより好ましい。透過率の下限値の好ましい値は0%である。
なお、本明細書において、光重合開始剤の360nmの波長の光に対する透過率は、以下のようにして求められる値とする。すなわち、下記比較例1の組成において、光重合開始剤(配合する質量部数は同じとする)を適宜選択し、評価用樹脂組成物1とする。この評価用樹脂組成物1を、ITOを1500Å蒸着したガラス基板(旭硝子社製、PD200)上にスリットコーターを用いて塗布した後、ホットプレート上で65℃、180秒間の条件で乾燥させ、2.5μmの膜厚を有する光硬化性樹脂層を得る。そして、この光硬化性樹脂層について、吸光光度計(島津製作所製、UV−2500PC)を用いて360nmの波長の光に対する透過率を測定し、測定された値を光重合開始剤の透過率と見なす。これは、光重合開始剤を含まない組成物の360nmの波長の光に対する透過率はほぼ100%と見なせるためである。
【0016】
このような360nmの波長の光に対する透過率が80%未満である光重合開始剤としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。市販の光重合開始剤の中では、KAYACURE DETX−S(日本化薬社製)、IRGACURE 651、IRGACURE 127、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 379EG、IRGACURE 819DW、IRGACURE OXE01(IRGACUREシリーズは全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等を用いることができる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、2,4−ジエチルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンの中から選ばれる少なくとも1種が、感度等の点から好ましい。
【0017】
(a)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0018】
[酸基を有する樹脂(b)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、酸基を有する樹脂(b)(以下、「(b)成分」ともいう。)を含有する。この(b)成分としては、エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂を好ましく用いることができる。
エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等を重合させて得られる樹脂;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を用いることもできる。
【0019】
特に2.0〜5.0μmという比較的薄膜の光硬化性樹脂層を形成する場合には、エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂の中でも、ベンジル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するモノマーと(メタ)アクリル酸等の酸基を有するモノマーとを重合させて得られる樹脂を用いることが好ましい。この樹脂におけるベンゼン環を有するモノマーの割合は、10〜90モル%が好ましく、30〜85モル%がより好ましい。上記範囲とすることで、光硬化性樹脂組成物を用いて形成されるレジストパターンのエッチング耐性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル酸等の酸基を有するモノマーの割合は、1〜40モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましい。上記範囲とすることで、光硬化性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。
【0020】
エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂の質量平均分子量は、100〜500000が好ましく、3000〜250000がより好ましく、5000〜100000がさらに好ましい。また、エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂のガラス転移点(Tg)は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。このような質量平均分子量、ガラス転移点に調整することにより、光硬化性樹脂組成物を用いて形成されるレジストパターンのエッチング耐性を向上させることができる。
また、エチレン性不飽和基及び酸基を有する樹脂の酸価は、50〜200mgKOH/gが好ましく、60〜150mgKOH/gがより好ましい。このような酸価に調整することにより、光硬化性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。
【0021】
(b)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとり易くなる。
【0022】
[エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)(以下、「(c)成分」ともいう。)を含有する。この(c)成分と上記(b)成分とを組み合わせることにより、硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。この(c)成分には、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
【0023】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマー、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
特に2.0〜5.0μmという比較的薄膜の光硬化性樹脂層を形成する場合には、エチレン性不飽和基を有するモノマーの中でも、3官能モノマーと2官能モノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。3官能モノマーと2官能モノマーとの質量比は、10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30がより好ましく、40:60〜60:40がさらに好ましい。このようなモノマーを用いることにより、光硬化性樹脂組成物を用いて形成されるレジストパターンのエッチング耐性を向上させることができる。
【0026】
(c)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとり易くなる。
【0027】
[光吸収剤(d)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、300〜355nmの波長の光を実質的に透過し、かつ、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)(以下、「(d)成分」ともいう。)を含有する。
上述したように、PDP、SED等の透明電極を形成する場合、光硬化性樹脂層の露光時に露光光が露光装置のステージ上で反射し、ハレーションを起こす場合がある。ここで、360nmよりも短波長の光はガラス基板によって吸収されるため、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤を含有させることで、上述した360nmの波長の光に対する透過率が80%未満である光重合開始剤を用いた場合であっても、ハレーションの影響を軽減することができる。また、光吸収剤が300〜355nmの波長の光を実質的に透過するため、感度の低下を抑えることができる。
300〜355nmの波長の光に対する透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、360〜400nmの波長の光に対する透過率は(特に360nmの波長の光に対する透過率は)、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0028】
ここで、本明細書において、光吸収剤の360nmの波長の光に対する透過率は、以下のようにして求められる値とする。すなわち、上記評価用組成物1に光吸収剤を加えて評価用組成物2を調製する。光吸収剤の配合量は、(b)成分100質量部に対して1質量部とする。そして、上記評価用組成物1で測定した360nmの波長の光に対する透過率をIA360とし、上記評価用組成物2で測定した360nmの波長の光に対する透過率をIB360としたとき、下記式(1)で得られた値を光吸収剤の360nmの波長の光に対する透過率と見なす。
透過率=100−{(IA360−IB360)/IA360}×100・・・(1)
なお、300〜355nmの波長の光に対する透過率については、例えば下記比較例2の組成に対して光吸収剤(質量部数は同じとする)を加えた組成物の320nmの波長の光に対する透過率を測定し、上記式(1)の関係に対応させて求めればよい。
【0029】
このような光吸収剤としては、クルクミン、キサントン等の天然化合物や、市販されている黄色染料、アゾベンゼン誘導体、アゾナフタレン誘導体、アリールピロリドンのアゾベンゼン又はアゾナフタレン置換体等のアゾ化合物等が挙げられる。アゾ化合物は、吸収波長を所望の領域に設定するために、共役系の長さや置換基を適宜選択することができる。例えば、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン基、カルボキシル基、シアノ基、置換アリール又はアルキルカルボニル基、ハロゲン原子等の電子吸引基で置換することにより、吸収領域を短波長領域に設定することができる。また、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の電子供与基で置換することにより、吸収波長を長波長領域に設定することもできる。これらの光吸収剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ハレーションの影響を軽減する効果の点からクルクミンが好ましい。
【0030】
(d)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の(b)成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.3〜5質量部であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ハレーションの影響を効果的に軽減することができる。
【0031】
[増感剤(e)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、感度、残膜率を向上させるため、増感剤(e)(以下、「(e)成分」ともいう。)を含有していてもよい。この(e)成分としては、チオール系連鎖移動剤やその他の増感剤が使用できる。
【0032】
チオール系連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸メチルエステル、β−メルカプトプロピオン酸エチルエステル、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、β−メルカプトプロピオン酸n−オクチルエステル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル、β−メルカプトプロピオン酸ステアリルエステル、β−メルカプトプロピオン酸イソノニルエステル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等のメルカプト有機酸(プロピオン酸)誘導体;チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオール・ビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等のチオグリコール酸誘導体等が挙げられる。これらのチオール系連鎖移動剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
一方、その他の増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルグリシン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。これらのその他の増感剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(e)成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。上記の範囲とすることにより、感度が適度に向上する傾向があるとともに、残膜率を向上させることができ、好ましい。
【0035】
[有機溶剤(s)]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、塗布性の改善、粘度調整のため、有機溶剤(s)(以下、「(s)成分」ともいう。)を含有することが好ましい。
この有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
(s)成分の含有量は、特に限定されず、ガラス基板に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。光硬化性樹脂組成物の粘度は、5〜500cpが好ましく、10〜50cpの範囲がより好ましく、20〜30cpの範囲がさらに好ましい。また、固形分濃度は、5〜100質量%が好ましく、20〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0037】
[その他の成分]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて熱重合禁止剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
上記熱重合禁止剤としては、従来公知のものであってよく、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられる。
上記界面活性剤としては、従来公知のものであってよく、シリコーン系、フッ素系等の化合物が挙げられる。
【0038】
[光硬化性樹脂組成物の調製方法]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、上記各成分を撹拌機で混合し、必要に応じてメンブランフィルタ等で濾過して調製することができる。このようにして調製した光硬化性樹脂組成物は、2.5μm膜厚の光硬化性樹脂層を形成したときの360nmの波長の光に対する透過率が30%以下であることが好ましく、5〜28%であることがより好ましい。
なお、光硬化性樹脂層の透過率は、光硬化性樹脂組成物をガラス基板(旭硝子社製、PD200)上に塗布した後、60℃で90秒間乾燥して得られた2.5μm膜厚の光硬化性樹脂層について、吸光光度計(島津製作所製、UV−2500PC)を用いて測定するものとする。
【0039】
≪透明電極の製造方法≫
本発明に係る透明電極の製造方法は、透明導電性膜が形成されたガラス基板上に、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を塗布し、選択的に露光した後、現像してレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクとして透明導電性膜を選択的にエッチングする工程と、レジストパターンを剥離する工程と、を含む。
【0040】
すなわち、まず、透明導電性膜が形成されたガラス基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させることにより、光硬化性樹脂層を形成する。
【0041】
次いで、光硬化性樹脂層が形成されたガラス基板を露光装置のステージ上に真空吸着し、ネガ型のマスクを介して、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。照射するエネルギー線量は、光硬化性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば5〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0042】
次いで、露光後の樹脂層を現像液で現像することにより、レジストパターンを形成する。現像方法は特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。なお、現像後のレジストパターンにポストベークを施して加熱硬化することもできる。ポストベークの温度は150〜250℃が好ましい。
【0043】
次いで、形成されたレジストパターンをマスクとして、透明導電性膜を選択的にエッチングする。エッチングは、一般的にはウェットエッチングであるが、ドライエッチングであってもよい。そして、剥離液でレジストパターンを除去することにより、透明電極が形成される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
光重合開始剤としては、(a−1)2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「IRGACURE 369」)を用いた。この光重合開始剤は、360nmの波長の光に対する透過率が40%であった。
樹脂としては、(b−1)ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=80/20の共重合体(質量平均分子量60000、ガラス転移点70℃)を用いた。
モノマーとしては、(c−1)トリメチロールプロパントリアクリレートと、(c−2)トリシクロデカンジメタノールジアクリレートとを用いた。
光吸収剤としては、(d−1)クルクミンを用いた。この光吸収剤は、320nmの波長の光に対する透過率が80%以上であり、360nmの波長の光に対する透過率が58%であった。
増感剤としては、(e−1)トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)を用いた。
界面活性剤としては、(f−1)「グラノール440」(共栄社化学社製)を用いた。
【0046】
各成分に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分濃度が30%となるように混合し、撹拌機で2時間撹拌した後、5μmメンブランフィルタで濾過して光硬化性樹脂組成物を調製した。各成分の配合量は表1の通りである。なお、表中の数値は、特に明記しない限り質量部数を表す。
【0047】
<実施例2〜4>
各成分の配合量を表1のように代えたほかは、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0048】
<比較例1>
光吸収剤を配合しなかったほかは、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。各成分の配合量は表2の通りである。なお、表中の数値は、特に明記しない限り質量部数を表す。
【0049】
<比較例2>
光重合開始剤として、(a−2)「EAB−F」(保土谷化学社製)、及び(a−3)「B−CIM」(保土谷化学社製)を表2の配合量で用いたほかは、比較例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0050】
<比較例3>
光重合開始剤として、(a−4)2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「IRGACURE 907」)を表2の配合量で用いたほかは、比較例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0051】
【表1】

【表2】

PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0052】
<透過率の評価>
上記実施例1〜4、比較例1〜3で調製した光硬化性樹脂組成物を、ITOを1500Å蒸着したガラス基板(旭硝子社製、PD200)上にスリットコーターを用いて塗布した後、ホットプレート上で65℃、180秒間の条件で乾燥させ、2.5μmの膜厚を有する光硬化性樹脂層を得た。この光硬化性樹脂層について、吸光光度計(島津製作所製、UV−2500PC)を用いて320nm、360nm、400nm、440nmにおける透過率を測定した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
表3から分かるように、実施例1〜4の光硬化性樹脂組成物は、360nmにおける透過率がいずれも35%以下(特に実施例1〜3は30%以下)であり、露光装置のステージからのハレーションの影響を受けにくいということが言える。
【0055】
<感度、線幅変化量、残膜率の評価>
上記透過率の評価で得られた光硬化性樹脂層が形成されたガラス基板を、Cr基板上又はブラックポリエチレンシート上に載せ、光硬化性樹脂層から300μmのギャップをあけた上方のネガマスクを介して、露光量2〜200mJ/cmで紫外線を選択的に照射した。その後、25℃にて0.25%のNaCOで90秒間スプレー現像処理を行い、流水洗浄し、窒素ブローして100μmのラインアンドスペースパターンを得た。そして、そのときの必要露光量を求め、必要露光量が25mJ/cm以下の場合を◎、25mJ/cmを超え50mJ/cm以下の場合を○、50mJ/cmを超える場合を×として評価した。
【0056】
また、この必要露光量の場合に、Cr基板上で露光したときの線幅からブラックポリエチレンシート上で露光したときの線幅を減じて、線幅変化量を求めた。線幅変化量の評価は、線幅変化量が5.0μm以下の場合を○、5.0μmを超え10.0μm以下の場合を△、10.0μmを超える場合を×とした。
さらに、露光・現像前後における膜厚変化から残膜率(%)を算出した。残膜率の評価は、残膜率が80%以上の場合を○、70%以上80%未満の場合を△、70%未満の場合を×とした。結果を表4に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
表4から分かるように、実施例1,2の光硬化性樹脂組成物を用いて形成したラインアンドスペースパターンは、残膜率が比較的低かったものの、線幅変化量がそれぞれ1.2μm、1.6μmと小さく、ハレーションによる影響が効果的に抑えられた。実施例3,4のように光吸収剤の配合量を減らすと、残膜率が向上する反面、線幅変化量が大きくなったが、それでも6.0μm以下という比較的良好なものであった。
一方、比較例1,2のように光吸収剤を配合しなかった場合には、感度を上げようとすると線幅変化量が大きくなり(すなわち、ハレーションによる影響を大きく受け)、線幅変化量を抑えようとすると感度が低くなってしまっていた。また、比較例3のように、光吸収剤を含有させても、光重合開始剤として波長360nmにおける透過率が80%未満であるものを用いなかった場合には、線幅変化量は3.0μmと良好であったものの、感度は低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
360nmの波長の光に対する透過率が80%未満の光重合開始剤(a)と、酸基を有する樹脂(b)と、エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)と、300〜355nmの波長の光を実質的に透過し、かつ、360〜400nmの波長の光を実質的に吸収する光吸収剤(d)と、を含有する透明電極形成用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
2.5μm膜厚の光硬化性樹脂層を形成したときの360nmの波長の光に対する透過率が30%以下である請求項1記載の透明電極形成用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光吸収剤(d)の含有量が、前記酸基を有する樹脂(b)100質量部に対して0.3〜5質量部である請求項1又は2記載の透明電極形成用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光吸収剤(d)がクルクミンを含む請求項1から3のいずれか1項記載の透明電極形成用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤(a)が、2,4−ジエチルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1から4のいずれか1項記載の透明電極形成用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、増感剤(e)を含有する請求項1から5のいずれか1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
透明導電性膜が形成されたガラス基板上に、請求項1から6のいずれか1項記載の透明電極形成用光硬化性樹脂組成物を塗布し、選択的に露光した後、現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記透明導電性膜を選択的にエッチングする工程と、
前記レジストパターンを剥離する工程と、を含む透明電極の製造方法。

【公開番号】特開2010−156724(P2010−156724A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333308(P2008−333308)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】