説明

透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法

【課題】少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することである。
【解決手段】光が通過可能な貫通孔6が形成され、該貫通孔6の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体8が配置された測定用セル10と、該測定用セル10の被付着媒体8に付着された被測定試料に単色光を照射させる発光部12と、該発光部12から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記被付着媒体8に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部14と、を備えた透過光量測定装置であって、前記被付着媒体8は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量な化学物質の透過光量を測定する透過光量測定装置、及びその相対吸光度を測定する相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学物質による環境汚染問題の深刻化に伴い、大気中、水中あるいは土壌中の微量な化学物質を定性又は定量することが必要とされる機会が多くなっている。このような微量な化学物質の定性や定量は、発色処理された被測定試料について基準色に対する相対吸光度を測定することによって行なうことができる。
【0003】
化学物質の相対吸光度を測定する方法として、反射法と透過法があり、反射性の高い試料の場合、反射法が用いられ、透過性の高い試料の場合、透過法が用いられる(特許文献1)。透過法は、一般に透明な測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算することによって行なわれている。そして、この透過法は、測定用セルの透過方向の長さを長くすることによって、その感度を向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−160280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測定用セルの透過方向の長さを長くすると、測定装置が大型化するだけでなく、それに必要な被測定試料の量が増加し、このため微量な化学物質の定性又は定量を行なうのが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に単色光を照射させる発光部と、該発光部から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
以上のように、本発明に係る透過光量測定装置によれば、前記被付着媒体は、照射された単色光を乱反射させるよう構成されているので、照射された単色光は、乱反射しながら透過する。このため、測定用セルの透過方向の長さを長くしなくても、照射光の透過距離を十分に保つことができ、その感度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る透過光量測定装置によれば、光が通過可能な貫通孔が測定用セルに形成されているので、測定用セルを透光性素材で構成する必要はなく、測定用セルに傷が付いたり、汚れたりしても、光の通過路に影響を与えることはなく、測定誤差が生じることはない。本発明に係る透過光量測定装置は、測定用セルを非透光性素材で構成することにより、透光性素材で構成されたものと異なり遮光性を有するので、蓋などによって遮光する必要はない。非透光性素材としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル) 、ナイロンなどPA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、エラストマー、PF(フェノール樹脂)、MF(メラミン樹脂)、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)等があるが、これらに限定されない。
【0010】
また、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に向けて複色光を発光させる発光部と、該発光部から発光された複色光のうち、一の単色光のみを選択して前記被付着媒体に付着された被測定試料に照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とし、さらに、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に複色光を照射させる発光部と、該発光部から前記被測定試料に照射され透過される複色の透過光のうち、一の単色光のみを選択するとともに、その選択される単色の透過光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択され透過された単色の透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とし、またさらに、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、互いに異なる単色光を発光させる二以上の発光部と、該二以上の発光部から発光された二以上の単色光のうち、一の単色光のみを選択して該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
以上のように、本発明に係る透過光量測定装置によれば、複色光のうち、一の単色光のみを被測定試料に照射させるとともに、その単色光を変更することができるので、被測定試料中に混在する少なくとも二以上の発色物質の透過光量を測定することができる。
【0012】
さらに、上記目的を達成するため、本発明は、上記いずれかの透過光量測定装置と、前記透過光量測定装置によって測定された被測定試料の光量と基準試料の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部と、を備え、前記測定用セルには、発色処理された被測定試料が収容されていることを特徴とする相対吸光度測定装置である。
【0013】
本発明に係る相対吸光度測定装置において、前記複色光又は二以上の単色光を発光する透過光量測定装置を備えた場合、被測定試料中に混在する少なくとも二以上の発色物質の透過光量を測定することができるので、被測定試料の吸収色以外の単色光を基準光とすることにより、基準光と測定光の測定を連続して行なうことができる。
【0014】
さらに、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルの該被付着媒体に付着された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とし、この場合、前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であることが好ましい。また、本発明は、光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルの該被付着媒体に付着された被測定試料に複色光を照射し、前記被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した単色の透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とし、この場合、前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法において、前記被付着媒体は、前記被測定試料を通液させることによって付着させることが可能に形成されていることが好ましく、このように構成することにより、貫通孔に液体の被測定試料を流すだけで容易に被測定試料を被付着媒体に付着させることができる。被付着媒体への被測定試料の通液方法としては、被測定試料を均一に流すために、液体の被測定試料を加圧又は引圧によって貫通孔を流すことがある。例えば、前記貫通孔に連通する流路を形成し、その流路にしシリンジ、ポンプなどを接続することによって行なうことができる。
【0016】
前記被付着媒体は、前記貫通孔から脱落されないように、貫通孔内に収容され固定されていることが好ましく、前記貫通孔の内壁を付勢するそれ自体の付勢力によって、前記貫通孔に固定されても良く、また貫通孔の内壁に溝を形成して、その溝に被付着媒体の外周を当接することによって固定しても良い。
【0017】
前記被付着媒体の材質は、上記機能を備えているものであれば、特に限定されないが、繊維状物質であることが好ましい。繊維状物質としては、例えば微細な網目構造を有するものがあり、その材質としては、例えば綿、絹、麻等の天然素材、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィンなどの合成ないし半合成素材、あるいはこれらの混合体、例えばポリエステルおよびポリオレフィンの混合体などが挙げられるが、特にこれらに限定されものではない。繊維状物質としては、織物、編物、不織布等の布が測定用セルへの収容操作が容易なため好ましいが、ファイバないしフィラメントを一定容積内に収容したものないし単に絡合させたものであっても良い。繊維状物質の繊維径は、0.1〜1000μmであることが好ましく、繊維状物質の厚み、及び密度そしては、対象となる被測定試料の粘度などに応じて適宜選択することができるが、例えば、均一な流速及び高い固定化効率を得るためには、50〜200cm/cm/sec程度の通気性が得られる密度に調整されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置において、前記発光部と受光部の間に設けられ、照射光の照射方向に貫通するとともに、内面が被付着媒体によって反射された光を反射するように構成されている反射筒をさらに備えていることが好ましい。このように反射筒を備えることにより、被付着媒体によって反射された光を収束させることができ、感度をより向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法において、発色処理は、被測定試料を測定用セルに収容する前に行なっても良く、被付着媒体に影響を与えないのであれば、収容された後に行なっても良い。発色処理は、例えばメチルレッド、DPD、ナフチルエチレンジアミン、ジチゾンなどを被測定試料に滴下することによって行なうことができる。また、抗原抗体反応において未反応の抗体を擬似抗原の固定処理が施された被付着媒体に吸着させることによって発色処理を行なっても良い。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に係る透過光量測定装置が含まれた相対吸光度測定装置の実施例について、図面に基づいて説明する。先ず、本実施例に係る相対吸光度測定装置に用いられる測定用セル10について説明する。この測定用セル10の基本的な構造は、以下説明する本発明に係る透過光量測定装置が含まれた相対吸光度測定装置の第1実施例乃至第5実施例において使用される。図1は、第1実施例に係る相対吸光度測定装置に用いられる測定用セル10の側面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【0022】
測定用セル10は、非透光性素材、例えばABS樹脂から構成されており、略立方体状に形成されている。測定用セル10の上面10aには、平面方向全域に突出するフランジ2が形成されており、さらにその中央には、摘み4が設けられている。また、測定用セル10には、その一の側面の中心から他の側面の中心まで貫通する貫通孔6が円柱状に形成されている。この貫通孔6の内径は、3mmであり、貫通孔6には、被測定試料が付着可能な被付着媒体8が装着される。
【0023】
本実施例において、被付着媒体8は、例えば、ポリプロピレン繊維(通気性92cc/cm・sec)からなる不織布によって構成されており、直径が貫通孔6の内径により大きい円形シート状(例えば、直径5mm)に形成されている。このため、図3に示すように、被付着媒体8を貫通孔6に詰め込むと、それ自体の付勢力によって貫通孔6の内壁を付勢するので、これにより、被付着媒体8を貫通孔6内に固定することができる。
【0024】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第1実施例について説明する。図4は、第1実施例に係る相対吸光度測定装置の概念図である。第1実施例に係る相対吸光度測定装置は、上述した測定用セル10と、測定用セル10に収容された被測定試料に単色光を照射させる発光部12と、発光部12から被測定試料に照射された単色光のうち、測定用セル10に収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部14と、受光部14によって測定された透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部18と、測定用セル10を発光部12と受光部14の間に固定するセルホルダ20と、発光部12、受光部14及びセルホルダ20を遮光状態で収容するハウジング22と、を備えている。
【0025】
発光部12は、中心波長530nmの緑色LED28と、緑色LED28から発された光を並行光として、セルホルダ20に固定された測定用セル10内の被測定試料に照射させる光学レンズ30と、を備えている。また、発光部12は、緑色LED28を制御する制御部32に接続され、この制御部32は、ハウジング22の外に設けられている。
【0026】
受光部14は、ハウジング22の外に設けられた相対吸光度計算部18に接続されており、相対吸光度計算部18は、受光部14により受光された光量を電気信号の信号強度として変換して出力するように構成されている。
【0027】
セルホルダ20は、発光部12から受光部14への光路が形成されるように孔が形成されているか、若しくは透明素材によって構成され、その光路を測定用セル10の貫通孔6に一致させて測定用セル10を収容するように構成されている。また、セルホルダ20は、上方が開口されており、その開口から測定用セル10が収容され、フランジ2がその開口の蓋として機能するように構成されている。
【0028】
第1実施例に係る相対吸光度測定装置は、以下のような手順により相対吸光度を測定することができる。先ず、被測定試料にメチルレッドなどの試薬を添加することによって発色させ、発色させた被測定試料を測定用セル10に注入する。なお、被測定試料の発色反応は、被付着媒体26に影響を与えない場合は、測定用セル10内で行なっても良い。次に、測定用セル10をセルホルダ20に固定し、受光部12から測定用セル10内の被測定用セルに光を照射して、受光部14は、透過光を受光して、その透過光の光量を測定する。受光部14によって測定された光量は、相対吸光度計算部18に記憶される。次に、測定用セル10をセルホルダ20から取り外して、被測定試料を捨てて、セル内を洗浄した後、基準液を注入する。その後、同様に透過光の光量を測定して、相対吸光度計算部18に基準液の光量を記憶させる。次いで、相対吸光度計算部18は、記憶された被測定試料と基準液の光量の比から被測定試料の相対吸光度を計算する。なお、相対吸光度計算部18には、予め基準液の光量を記憶させておいても良く、このように予め記憶されている基準液の光量を利用することによって、測定光の光量を測定するだけで相対吸光度を計算することができる。
【0029】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第2実施例について図5に基づいて説明する。第2実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部12と受光部14の間に反射筒34を備えている。反射筒34は、発光部12から受光部14の光路を包むように筒状に構成されており、測定用セル10の蓋部材24が反射筒34の一部を形成している。また、反射筒34は、被付着媒体26によって反射された光を反射するように内面が鏡面状に構成されている。したがって、被付着媒体26によって反射された光を収束させることができ、感度をより向上させることができる。
【0030】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第3実施例について図6に基づいて説明する。第3実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部12から単色光でなく、複色光を発光するように構成されており、この発色光12とセルホルダ20の間には、異なる種類の複数の光学フィルタ36A、36B・・・を保持する光学フィルタホルダ37が設けられている。この光学フィルタホルダ37は、円盤状に形成されており、光学フィルタ制御部(図示省略)によってその中心部を中心に回転可能に構成されている。複数の光学フィルタ36A、36B・・・は、光学フィルタホルダ37の周方向に等間隔を置いて配置されている。これら光学フィルタ36は、それぞれ発光部12から発光される複色光のうち、いずれか一つの単色光のみを透過させるよう構成されており、透過させる単色光は、それぞれ波長が異なるように選択されている。
【0031】
第3実施例に係る相対吸光度測定装置は、光学フィルタホルダ37を回転させて、発光部12と測定用セル10の間にいずれかの光学フィルタ36A、36B・・・を位置させると、これら光学フィルタ36A、36B・・・を透過する単色光のみを測定用セル10に照射することができる。これにより、例えば一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過させた単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。なお、第3実施例においては、光学フィルタホルダ37を発光部12と測定用セル10間に設けたが、測定用セル10と受光部14の間に設けても良い。
【0032】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第4実施例について図7に基づいて説明する。第4実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部及び発光制御部を一組でなく二組、すなわち第1及び第2発光部12A、12B及びそれぞれの発光を制御する第1及び第2発光制御部32A、32Bを備えている。第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれ異なる波長の単色光を発光するよう構成されている。これら第1及び第2発光部12A、12Bは、互いに照射方向を対向させ、それら照射方向と垂直方向に測定用セル10が位置するように配置されている。また、これら第1及び第2発光部12A、12Bの間には、両面に単色光を反射させることが可能な鏡面を有する反射鏡38が設けられている。この反射鏡38は、反射鏡制御部(図示省略)によってその向きを変更することができ、反射鏡38の向きを変更することによって、第1発光部12Aから発光された単色光を測定用セル10に照射させたり、また第2発光部12Bから発光された単色光を測定用セル10に照射させることができる。第4実施例に係る相対吸光度測定装置は、このように二種類の単色光を測定用セル10に照射させることができるので、第3実施例と同様に一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過した単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。
【0033】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第5実施例について図8に基づいて説明する。第5実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部、発光制御部、及び受光部を一組でなく二組、すなわち第1及び第2発光部12A、12B、それぞれの発光を制御する第1及び第2発光制御部32A、32B、及びそれぞれから発光する光を受光する第1及び第2受光部14A、14Bを備えている。第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれ異なる波長の単色光を発光するよう構成されている。これら第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれが測定用セル10に向かって照射するように配置されており、それらの測定用セル10に対する反対側に第1及び第2受光部14A、14Bが配置されている。第5実施例においては、照射方向が垂直に交わるように配置されている。第1及び第2発光制御部32A、32Bは、いずれか一つの発光部のみから単色光を照射させるように第1及び第2発光部12A、12Bを制御する。第1及び第2受光部14A、14Bは、いずれも相対吸光度計算部18に接続されている。第5実施例に係る相対吸光度測定装置は、このように二種類の単色光を測定用セル10に照射させることができるので、第3実施例と同様に一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過した単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。
【実施例】
【0034】
実験例1
次に、実験例1として上記第1実施例に係る相対吸光度測定器を用いて、相対吸光度の測定を行なった。先ず、被付着媒体の調製を行なった。ポリプロピレン不織布からなる直径5mmの円形シート状の被付着媒体8を10枚用意し、擬似抗原として化1に示すビタミン−牛血清アルブミンの複合体を100μg/mLの濃度で含む生理食塩水30mLにそれら10枚を入れ、一昼夜(12時間)振とうした。次いで、牛血清アルブミンを10mg/mLとなるように添加し、2時間振とうした。擬似抗原(ビタミン−牛血清アルブミン)が固定された被付着媒体8は、生理食塩水で洗浄した後、測定用セル10に設置した。測定用セル10の貫通孔6は、直径3mmであり、貫通孔6に接続された注射器等の通液手段から、被測定試料を供給し、流通させることができる。
【0035】
【化1】


ただし、Xは牛血清アルブミンを表す。
【0036】
次に、被測定試料の調製を行なった。抗ビタミン抗体(Jakson Immuno Research製)を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に0.8nM程度に溶解して抗体溶液を調製した。牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に粉末状ビタミン(和光純薬工業製)を溶解してビタミン溶液を調製した。前記抗体溶液を1mL分取し、ここに各濃度でビタミン溶液を加えて5種の濃度の被測定試料を調製した。基準液として、ビタミンを含まない被測定試料も調製した。
【0037】
次に、透過光量の測定を行なった。調製した前記被測定試料1mLを注射器にとり、0.2mL/minで測定用セル10の貫通孔6中に注射器からポンプによって一定流速で供給し、測定セル10内に収容された被付着媒体8に流通させた。次いで、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液した後、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に2nMの濃度で溶解した金コロイド標識二次抗体溶液の1mLを0.2mL/minで通液した。最後に、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液して、被付着媒体8からの透過光量を測定した。なお、被付着媒体に対し、波長530nmの緑色の光を照射した。受光した透過光量は、電気信号の信号強度として計測され、基準液による透過光量に対する信号強度を100として、各濃度の被測定試料における透過光量に対する信号強度の割合を算出し、前記被測定試料中のビタミン濃度との相関を求めた。捕捉される抗体量が多いほど、標識金コロイドに由来する膜上の赤色が濃くなり、信号値としては小さくなる。結果を図9に示す。
【0038】
実験例2
次に、実験例2として上記第1実施例に係る相対吸光度測定器を用いて、相対吸光度の測定を行なった。被付着媒体の調製は、実験例1と同様に行なった。次に、被測定試料の調製(抗PCB抗体の調製)を行なった。被検物質PCBに対する抗PCBモノクローナル抗体を調製するため、3塩素化物PCB(三塩化ビフェニル)を、リンカーを介してキャリアータンパク質(スカシガイ由来のヘモシアニン(以下、「KLH」と表す))に結合した複合体を合成した。前記複合体を抗原として、マウス(Bulb/c、メス、5週齢)に免疫した。初回免疫は、前記抗体調製用化合物(タンパク質量として約0.3mg)を完全アジュバントに混合後、皮下注射した。該初回免疫の2週間後と4週間後に、同量の前記抗体調製用化合物を、不完全アジュバントに混合後、皮下注射した。その後、1週間以上経過した後、同量の前記抗体調製用化合物を、腹腔又は尾部静脈に注射し、その4〜5日後に脾臓を摘出した。
【0039】
摘出した前記脾臓から調製した脾臓細胞を、ミエローマ細胞とともにポリエチレングリコール溶液中で2分間混合し、細胞融合を行った。
融合反応後の融合細胞を培養し、細胞融合から2週間以上経過したハイブリドーマの培養上清を用い、所望の抗PCBモノクローナル抗体の有無をスクリーニングし、抗PCBモノクローナル抗体を産生する安定なハイブリドーマを得た。該ハイブリドーマを培養し、培養上清を精製し、抗PCBモノクローナル抗体を得た。
【0040】
前記抗PCB抗体を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に0.5nM程度に溶解して抗体溶液を調製した。PCBの異性体混合物であるカネクロール−500(GLサイエンス社製)のジメチルスルホキシド溶液を、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に溶解してPCB溶液を調製した。前記抗体溶液を1mL分取し、ここに各濃度でPCB溶液を加えて4種の濃度の被測定試料を調製した。基準液として、PCBを含まない被測定試料も調製した。
【0041】
次に、透過光量の測定を行なった。調製した被測定試料1mLを注射器にとり、0.2mL/minで測定用セル10中に注射器からポンプによって一定流速で供給し、測定セル10内の被付着媒体8に流通させた。次いで、0.2mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液した後、牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に2nMの濃度で溶解した金コロイド標識二次抗体溶液の1mLを0.2mL/minで通液した。最後に、0.6mL/minで牛血清アルブミンを1g/L含む生理食塩水に1mLを通液して、被付着媒体8からの透過光量を測定した。なお、被付着媒体8に対し、波長530nmの緑色の光を照射した。受光した透過光量は、電気信号の信号強度として計測され、基準液による透過光量に対する信号強度を100として、各濃度の被測定試料における透過光量に対する信号強度の割合を算出し、前記被測定試料中のビタミン濃度との相関を求めた。捕捉される抗体量が多いほど、標識金コロイドに由来する膜上の赤色が濃くなり、信号値としては小さくなる。結果を図10に示す。
【0042】
図9及び図10の結果から、本実施例に係る相対吸光度測定器は、被検試料中の被検物質を効率よく高感度に定量できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の実施例に用いられる測定用セルの正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】測定用セルの貫通孔に被付着媒体を収容させた状態を示す図2に対応する図である。
【図4】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第1実施例の概念図である。
【図5】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第2実施例の概念図である。
【図6】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第3実施例の概念図である。
【図7】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第4実施例の概念図である。
【図8】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第5実施例の概念図である。
【図9】第1実施例に係る相対吸光度測定装置によって測定された相対信号値のグラフである。
【図10】第1実施例に係る相対吸光度測定装置によって測定された相対信号値のグラフである。
【符号の説明】
【0044】
6 貫通孔
8 被付着媒体
10 測定用セル
12 発光部
14 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、
該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に単色光を照射させる発光部と、
該発光部から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項2】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、
該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に向けて複色光を発光させる発光部と、
該発光部から発光された複色光のうち、一の単色光のみを選択して前記被付着媒体に付着された被測定試料に照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項3】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、
該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に複色光を照射させる発光部と、
該発光部から前記被測定試料に照射され透過される複色の透過光のうち、一の単色光のみを選択するとともに、その選択される単色の透過光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択され透過された単色の透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項4】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルと、
互いに異なる単色光を発光させる二以上の発光部と、
該二以上の発光部から発光された二以上の単色光のうち、一の単色光のみを選択して該測定用セルの被付着媒体に付着された被測定試料に照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項5】
前記被付着媒体は、繊維状物質であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項6】
前記発光部と受光部の間に設けられ、照射光の照射方向に貫通するとともに、内面が被付着媒体によって反射された光を反射するように構成されている反射筒をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項7】
前記被付着媒体は、前記被測定試料を通液させることによって付着させることが可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項8】
前記被付着媒体は、前記貫通孔の内壁を付勢するそれ自体の付勢力によって、前記貫通孔に固定されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか記載の透過光量測定装置と、
前記透過光量測定装置によって測定された被測定試料の光量と基準試料の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部と、
を備え、前記測定用セルには、発色処理された被測定試料が収容されていることを特徴とする相対吸光度測定装置。
【請求項10】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルの該被付着媒体に付着された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記被付着媒体に付着された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定方法。
【請求項11】
前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であることを特徴とする請求項10記載の透過光量測定方法。
【請求項12】
光が通過可能な貫通孔が形成され、該貫通孔の一部には被測定試料が付着可能な被付着媒体が配置された測定用セルの該被付着媒体に付着された被測定試料に複色光を照射し、前記被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した単色の透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、
前記被付着媒体は、前記発光部から照射された単色光を乱反射させるよう構成されていることを特徴とする透過光量測定方法。
【請求項13】
前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることを特徴とする請求項11又は12記載の透過光量測定方法。
【請求項14】
前記被測定試料を前記被付着媒体に通液することによって、前記被付着媒体に前記被測定試料を付着することを特徴とする請求項10乃至13いずれか記載の透過光量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−271437(P2007−271437A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97022(P2006−97022)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】