説明

通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケット

【課題】設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供する。
【解決手段】中空の容器を上下に分割した形状で、それぞれの分割面に互いに対向する上下対称の溝31、32を備えた上スリーブ11及び下スリーブ12と、溝31、32の中に装着されるガスケット21とから構成される通信ケーブル等接続部用気密性収納容器であって、ガスケット21が、下スリーブ12側の溝への装着が圧入となるように、その長手方向に垂直な断面の幅として下スリーブ12側の溝32の溝幅よりも大である部分を含み、ガスケット21が、下スリーブ12側の溝32の側壁との間の面圧によって保持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケットに関する。更に詳しくは、設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信ケーブルの接続部分を気密状態で収納するため、中空容器を上下二つに分割した形状を有する上下容器(例えば、通信ケーブルの接続の場合における上下スリーブ)を接続して組み立てる際、その分割面に形成した溝にガスケットを介在させることによって気密性を確保する通信ケーブル等の接続部用気密性収納容器が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
図4に示すように、通信ケーブル等接続部用気密性収納容器10は、中空の容器を上下に分割した形状で、それぞれの分割面に互いに対向する上下対称の溝31、32を備えた上下スリーブ11、12と、溝31、32の中に装着されるガスケット21とから構成され、内部に通信用ケーブル41を接続、収納した後、下スリーブ12側の溝32の中にガスケット21を装着した状態で、上下スリーブ11、12をボルトによって締め付けることによって、内部に気密空間を形成する構成からなっている。なお、図4において、通信用ケーブル41は、端面板33によって支持されるとともに、閉塞栓34によって密閉される。また、端面板33の外周には粘着シール材35が設けられるとともに、ガスケット21の両端に粘着シール材(図示せず)が設けられ、上下スリーブ11、12の接続時の密封性を向上させている。ここで、気密性収納容器10の気密性は、上下スリーブ11、12に上下から押圧されて装着されるガスケット21の上下面と、溝32の底面との間の面圧で気密空間を実現することによって達成される。
【特許文献1】実開平2−33532号公報
【特許文献2】実開平2−33530号公報
【特許文献3】特開2000−170917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5(a)に示すように、上下スリーブ11、12に上下から押圧されて装着されるガスケット21の形状は、その長手方向に垂直な断面の幅W21(断面の任意の位置における幅)が下スリーブ12側の溝32の側壁間の幅W32(W21と同じ位置における幅)よりも小であるため、ガスケット21は溝32の中で動きの自由度が大であり、図5(b)に示すように、下スリーブ12側の溝32に装着された場合に、溝32の中で左右のいずれか側に倒れた状態で上方から上スリーブ11を押圧すると、上下スリーブ11、12側の溝31、32の中の所望の位置に装着されることなく、上下スリーブ11、12における溝31、32からはみ出した状態で挟持される場合があり、上下スリーブ11、12間に隙間を生じさせ、気密性を維持できない場合があった。
【0005】
特許文献1及び特許文献2によれば、ガスケットの断面形状を楕円にしたり突起を設けた上下対称の形状のものが開示されている。しかし、前述した図5(a)のように溝の側壁間の幅がガスケットの前記断面の幅よりも広くなると、ガスケットが溝の中での動きの自由度が大になってしまい上記問題を解決できない。また、特許文献3のクロージャのパッキン取り付け用溝部に装着するパッキンはここでいうガスケットに相当するが、パッキンの断面形状が前述した図5(a)のように楕円の場合、ガスケットが溝の中での動きの自由度が大になってしまい上記問題を解決できない。
【0006】
この問題は、気密性収納容器の設置場所が、架空など良い作業条件が得られにくい場合、上下スリーブの溝にガスケットを装着する際、ガスケットが適性に装着されたか否かガスケットの収まりの確認が困難であった。十分な確認をしないと、ガスケットが溝からはみ出して気密性を維持できない場合がある。
【0007】
また、設置場所が、通信ケーブルを収納するための埋設したコンクリート溝の上で、ケーブルの接続と気密性収納容器の組み立てを行う場合、ケーブルが数100m程度と長い場合、地上の高い位置に持ち上げて作業をすることが困難であった。ケーブルを無理に持ち上げると、接続し組み立てた気密性収納容器を元に収納することができなくなる場合がある。従って、ケーブルの接続と気密性収納容器の組み立ては、地上からわずかに上の低い位置で行わざるを得ないことになり、ガスケットの収まりを十分確認することが困難であった。
【0008】
また、気密性収納容器やガスケットの材料は、耐久性を向上させるためにカーボンを含有させてあり、外観が黒色であるため、夜間においては気密性収納容器やガスケットのコントラストが不鮮明となる場合もあり、上下スリーブ締結時のガスケットの収まりを確認することが困難であった。
【0009】
上述のような作業環境や設置環境によってガスケットの収まりを確認することの困難さを更に増大させている。このように、気密性収納容器のガスケットの溝からのはみ出しは気密性収納容器の気密性を損なう大きな要因となる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、ガスケットの形状を、下スリーブの溝に圧入することが可能な形状とすることにより、上記目的を達成することができることを知見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供するものである。
【0012】
[1] 中空の容器を上下に分割した形状でそれぞれの分割面に互いに対向する溝を備えた上スリーブ及び下スリーブとから構成された気密性収納容器の内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に装着された状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結することによって、前記通信ケーブル等接続部用気密性収納容器の内部に気密空間を形成するガスケットであって、両端部を有し、前記下スリーブ側の溝への装着が圧入によるものとなるように、その長手方向に垂直な断面の幅として前記下スリーブ側の溝の側壁間の幅よりも大である部分を含み、前記下スリーブ側の溝へ装着するときに、前記下スリーブ側の溝の側壁間に圧入によって装着される部分と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の面圧によって保持され、前記下スリーブ側の溝の側壁間の幅よりも大である部分が、突起部を備えた部分であり、前記突起部が、長手方向の中央部に少なくとも一つ、及び前記中央部以外の領域に複数配設され、前記中央部の突起部と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の保持力が、前記中央部以外の領域の突起部と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の保持力より大きいことを特徴とするガスケット。
【0013】
[2] 前記中央部以外の領域に配設される突起部が、両端部のそれぞれに少なくとも一つずつ配設された突起部である[1]に記載のガスケット。
【0014】
[3] 前記突起部の長手方向に垂直な断面の前記下スリーブの溝に装着される側半分の面積が、前記中央部の突起部の部分における面積より、前記中央部以外の領域の突起部の部分における面積が小さい[1]又は[2]に記載のガスケット。
【0015】
[4] 中空の容器を上下に分割した形状で、それぞれの分割面に互いに対向する上下対称の溝を備えた上スリーブ及び下スリーブと、前記溝の中に装着されるガスケットとから構成され、内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に前記ガスケットを装着した状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結することによって、内部に気密空間を形成する通信ケーブル等接続部用気密性収納容器であって、前記ガスケットが、[1]〜[3]のいずれかに記載のガスケットであり、前記ガスケットの前記下スリーブ側の溝への装着が、圧入によるものであり、前記ガスケットが、前記下スリーブ側の溝の側壁間に圧入によって装着される部分と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の面圧によって保持される通信ケーブル等接続部用気密性収納容器。
【0016】
[5] 内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に前記ガスケットを装着した状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結し、長手方向中央部から順次外側に向かって締め付けて[4]に記載の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器を組み立てる、通信ケーブル等接続部用気密性収納容器の組み立て方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガスケットは、突起部により、下スリーブの分割面に形成された溝に保持され、取り付け時に下スリーブを傾けたり、装着場所が暗くて見難い場合等でも、ガスケットが溝から外れることなく装着され、確実に上スリーブと下スリーブとの接合面の気密性を保持することができる。これにより、設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
図1は本発明の気密性収納容器及びガスケットの実施形態を示す説明図である。
【0020】
図1に示す本発明の気密性収納容器10は、円筒状の中空の容器であり、その中空の容器は、円筒状の中空の容器を円筒の回転軸を含む平面で2分割した上側を構成する上容器(上スリーブ)11と、下側を構成する下容器(下スリーブ)12とからなっている。上下スリーブ11、12の材質は、軽量で耐久性に優れ、強度に優れたプラスチックであることが好ましい。より好ましくは、ガラス繊維を補強材とした熱硬化性樹脂(主として不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂)で、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)と呼ばれるものであるが、収納する電線ケーブルと同等以上の耐用年数をもたせるため、最も好ましくはFRPP(ガラス繊維強化ポリプロピレン)である。耐久性を高めるためにFRPPはカーボンを含有してもよい。上下スリーブは一般に射出成形、プレス成形等によって形成される。下スリーブ12の長手方向両端部より通信用ケーブルが、端面板33及び粘着シール材により気密性が保持されるようにして挿入され、気密性収納容器10の内部に通信用ケーブル41の端部が収納されるように形成されている。上スリーブ11と下スリーブ12のそれぞれの分割面36には、分割面の長手方向に沿ってそれぞれ互いに対向する上下対称の溝31、32が形成されている。そして溝32に沿ってガスケット21が装着され、上スリーブ11と下スリーブ12とを分割面36で接合し、締付具37により固定することにより、円筒状の気密性収納容器10を形成する際に、ガスケット21により接合部分の気密性が確保される。ここで、気密性は、ガスケット21が、上スリーブ11の溝31及び下スリーブ12の溝32の底部に押圧され、その接する面の面圧により確保されている。図1に示す気密性収納容器10は、ケーブルの端部同士を気密に接続するために使用する気密性クロージャを形成している。
【0021】
ガスケット21には、中央部に2箇所、両端部に2箇所ずつ突起部22が形成されている。ガスケット21はこの突起部22により、下スリーブ12の分割面36に形成された溝32に保持され、取り付け時に下スリーブ12を傾けたり、装着場所が暗くて見難い場合等でも、ガスケット21が溝32から外れることなく装着され、確実に上スリーブ11と下スリーブ12との接合面の気密性を保持することができる。これにより、設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供することができる。
【0022】
ガスケット21の材質には一般にゴム弾性体が使用できるが、具体的には、EPDM(エチレンプロピレンゴム)を使用するのが最も好ましい。その理由は、EPDMは耐久性(耐熱性、耐水性、耐候性、耐寒性、耐オゾン性、永久圧縮歪み等を含む)がバランスよく良好だからである。上下スリーブ11、12の溝の開口部の幅(溝の開口部は下スリーブ12の分割面36上に存在するが、溝の開口部の幅とは溝の長手方向に対して垂直な方向の開口部の長さをいう)が溝内部の幅(溝内部の幅とは開口部の幅方向と同じ方向の長さをいう)以下の場合、シリコーンゴムやフッ素ゴムもガスケットの材質として使用することができる。その理由はシリコーンゴムやフッ素ゴムは溝の側壁との摩擦力がEPDMに比べ著しく小さいため、たとえば図2(b)に示すように溝の側壁の形状がテーパー状(溝の底部から溝の開口部の方に向かって溝の側壁間の幅が広くなっている形状)の場合、ガスケットを下スリーブ12に圧入しても同図の上方向に押し戻されることがあるからである。開口部の幅が溝内部の幅以下の場合、たとえば図2(b)の溝のテーパーが上下逆になっている形状(溝の開口部の方に向かって溝幅が狭くなっている形状)や、同図のテーパーがない場合即ち図の上下方向に対して平行である溝の形状の場合ならば、ガスケットの圧入後にガスケットが上方向に押し戻されることはない。なおこのとき上スリーブ11の溝にガスケットがはまりにくくならないように溝の開口部の幅は上スリーブ11の溝内に挿入されるガスケット21の断面幅よりも大きいことが好ましい。ガスケット21は一般に射出成形等によって形成される。
【0023】
図2(a)はガスケット21の突起部22が形成されている部分の長手方向に垂直な断面を示す。ガスケット21の断面形状は、突起部22を除いた部分が楕円形であり、突起部22は楕円の中心から長径方向片側に位置し、短径方向両側に形成されている。図2(b)に示すように、ガスケット21は長径方向の突起部22が配置される側が下スリーブ12に装着される。このとき、ガスケット21の突起部における幅W21(断面の突起部にかかる任意の位置の幅)が、対応する溝32の幅W32(W21と同じ位置における幅)より大きく形成されている。そのため、ガスケット21が、下スリーブ12の溝32の側壁間に、突起部22により圧入によって装着され、溝32の側壁と突起部22との面圧によって保持される。
【0024】
ガスケット21は、下スリーブ12の溝32に装着する際に、溝32の幅W32より幅広の部分を形成するが、それは突起部である必要はなく、なだらかに幅が大きくなる部分を形成してもよい。ガスケット21の幅W21が、対応する溝32の溝幅W32より大きい部分が突起部である場合、ガスケット21の長手方向中央部に少なくとも一つ配置されることが好ましい。中央部を保持することにより、より安定的にガスケットを保持することができるからである。また、図1に示すように、突起部22が、ガスケット21の長手方向中央部に少なくとも一つ及び中央部以外の領域に複数配設されることが好ましく、この中央部以外の領域の複数の突起部が両端部にそれぞれ少なくとも一つずつ配設されると更に好ましい。これにより、ガスケット21が溝32から外れやすい部分を有効に保持することができるため、ガスケットが施工中に溝から外れることもなく、気密性収納容器10の気密性を確保することができる。
【0025】
ガスケット21の突起部は、端部の突起部の高さの方が中央部の突起部の高さよりも小であることが好ましい。突起部22の高さH22については図2(a)に示す。これによって、ガスケット21を下スリーブ12の溝32に圧入により装着したときの、ガスケット21の突起部22と溝32の側壁との間の面圧(保持力)が、ガスケット21の長手方向の中央部に配設されたものは大きく、端部に配設されたものは小さくなる。あるいは別の形状としては、中央部から端部に向かっていくほど突起部の高さが小である形状が好ましい。これによって、ガスケット21を下スリーブ12の溝32に圧入により装着したときの、ガスケット21の突起部22と溝32の側壁との間の面圧(保持力)が、ガスケット21の長手方向の中央部に配設されたものほど大きく、中央部から端部へと距離が離れるほど小さくなる。これらの形状を取る結果、気密性収納容器を組み立てる際に、上スリーブ11と下スリーブ12とをガスケット21を介して締結し、締付具37により締め付けて固定する際に、ガスケット21の長手方向中央部から締め付け、順次外側に向かって締め付けていくため、端部側の突起部は締め付けられるに従い、更に端部側へと位置がずれることになり、端部側の突起の保持力を小さくすることにより、この移動をスムーズにするのである。これにより、ガスケットに応力歪みが生じ難くなり、気密性も向上する。
【0026】
下スリーブ12の溝32の、長手方向に垂直な断面の溝空間面積S1に対する、ガスケット21の突起部22の部分の長手方向に垂直な断面の、下スリーブ12の溝32に装着される側半分の面積S2(図2(b)の斜線部)の割合((S2/S1)×100)(%)が、100〜130%であることが好ましい。ガスケット21の中央部に配設された突起については、115〜120%が更に好ましい。また、両端部に配設された突起については、100〜115%が更に好ましく、105〜110%が最も好ましい。これにより、下スリーブ12の溝32の溝壁とガスケット21の突起部22との面圧をより適正にすることができる。前記割合が100%より小さいと、溝32の側壁と接する突起部22の接触面が小さくなり、所望の保持力が得られないことになる。前記割合が130%より大きいと、ガスケット21が溝31、32に入りきれなくなる場合がある。
【0027】
図3は本発明の気密性収納容器及びガスケットを示す他の実施形態を示す説明図である。図3に示すように、本発明の気密性収納容器の他の実施形態は、四角柱状の中空の容器であり、その中空の容器は、四角柱の軸方向を含み一対の側面に平行な面で2分割され、分割した上側を構成する上容器(上スリーブ11)と、下側を構成する下容器(下スリーブ12)とからなっている。下スリーブ12の長手方向両端部より通信用ケーブルが、端面板33及び粘着シール材により気密性が保持されるようにして挿入され、気密性収納容器10の内部に通信用ケーブル41の端部が収納されるように形成されている。また、長手方向両端部のもう一つの穴が閉塞栓34により気密に塞がれている。上スリーブ11と下スリーブ12のそれぞれの分割面36には、分割面の長手方向に沿ってそれぞれ互いに対向する上下対称の溝31、32が形成されている。そして溝32に沿ってガスケット21が装着され、上スリーブ11と下スリーブ12とを分割面36で接合し、分割面36から上下スリーブの外側に向かって板状に突き出した部分(突出部)にボルト14をねじ込むことにより気密性収納容器10を固定している。そして、気密性収納容器10の気密性は、ガスケット21が、上スリーブ11の溝31及び下スリーブ12の溝32の底部に押圧され、その接する面の面圧により確保されている。図3に示した、本発明の気密性収納容器及びガスケットの他の実施形態におけるガスケットも、上述の、図1に示した本発明の気密性収納容器及びガスケットの実施形態におけるガスケットと同様のものが使用される。
【0028】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その他の実施形態としては、前記突起部が、前記ガスケットの長手方向の中央部に一つのみ又は三つ以上配設されてなるガスケット、又は前記ガスケットを装着した通信ケーブル等接続部用気密性収納容器であってもよい。更にその他の実施形態として、前記中央部以外の領域に複数配設されてなる前記突起部が、前記ガスケットの長手方向の両端部にそれぞれ少なくとも二つずつ配設されてなるものを含むガスケット又は前記ガスケットを装着した通信ケーブル等接続部用気密性収納容器であってもよい。更にその他の実施形態として、ガスケットの突起部はガスケットの長手方向に帯状に延びる形状でかつ中央部から端部に向かって突起部の高さが小さくなる形状でもよい。更にガスケットの形状及びスリーブの溝の形状について、図6及び図7に示すように種々の形状があり得る。詳しくいえばガスケットとスリーブの溝がそれぞれ長手方向に直線的な形状をとったり、ガスケットの長手方向に垂直な断面(突起のない部分)が楕円形の他に円形、多角形である場合がある。なお、ガスケットを下スリーブに圧入して収納した図を図8に示す。
【実施例】
【0029】
上述の、図1に示す気密性収納容器について、ガスケット保持力を、ガスケット中央部で3N、両端部で2.5Nとし、気密性収納容器内圧を0.1MPaとしてヒートサイクル試験を行った結果、内圧が初期値の80%以上を保持することができ、気密性が良好であることが確認された。ヒートサイクル試験は、−20〜+60℃の間を8時間で1サイクルとなるように温度変化させ、合計100サイクルの試験の後、内圧を測定した。
【0030】
以下に請求項に記載した以外に本発明を記載する。なお以下の発明は前述した実施形態及びその他実施形態から把握できるものである。
【0031】
(1)本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器において、上述の中央部以外の領域に複数配設されてなる上述の突起部が、上述のガスケットの長手方向の両端部のそれぞれに少なくとも一つずつ配設されてなるものを含む通信ケーブル等接続部用気密性収納容器。
【0032】
(2)本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器において、上述の中央部以外の領域に複数配設された上述の突起部の高さが、上述のガスケットの長手方向の中央部に配設された突起部の高さよりも小である通信ケーブル等接続部用気密性収納容器。
【0033】
(3)本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器において、上述の下スリーブ側の溝の長手方向に垂直な断面の溝空間面積(S1)に対する、上述のガスケットの下半分における、上述の下スリーブ側の溝の中に圧入して装着する前の長手方向に垂直な断面の面積(S2)の割合((S2/S1)×100)(%)が、100〜130%である通信ケーブル等接続部用気密性収納容器。
【0034】
(4)本発明のガスケットにおいて、上述の中央部以外の領域に複数配設されてなる上述の突起部が、長手方向の両端部のそれぞれに少なくとも一つずつ配設されてなるものを含むガスケット。
【0035】
(5)本発明のガスケットにおいて、上述の中央部以外の領域に複数配設された上述の突起部の高さが、長手方向の中央部に配設された上述の突起部の高さよりも小であるガスケット。
【0036】
(6)本発明のガスケットにおいて、上述の下スリーブ側の溝の長手方向に垂直な断面の溝空間面積(S1)に対する、下半分における、上述の下スリーブ側の溝の中に圧入されて装着される前の長手方向に垂直な断面の面積(S2)の割合((S2/S1)×100)(%)が、100〜130%であるガスケット。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明によって、設置環境に影響されることなく確実に気密性を保持することが可能であるとともに、組み立て時における作業性を向上させた気密性収納容器及びそれに用いられるガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケットを示す説明図である。
【図2】本発明のガスケットの突起部の長手方向に垂直な断面を示す説明図であり、図2(a)はガスケットの断面図であり、図2(b)はガスケットを下容器の溝に圧入したときの断面図である。
【図3】本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケットの他の実施形態を示す説明図である。
【図4】通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケットの従来例を示す説明図である。
【図5】従来のガスケットを下容器の溝に装着したときの長手方向に垂直な断面を示す説明図であり、図5(a)は装着直後を示し、図5(b)はガスケットが溝内で傾いたところを示す図である。
【図6】本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器及びガスケットの他の実施形態を示す説明図である。
【図7】本発明のガスケットの他の実施形態を示す説明図であり、ガスケットの突起部とその周辺部を示し、図7(a)は断面形状が多角形のものを示し、図7(b)は断面形状が楕円形のものを示し、図7(c)は断面形状が円形のものを示す図である。
【図8】本発明の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器の下スリーブに本発明のガスケットを収納した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10:気密性収納容器、11:上スリーブ、12:下スリーブ、13:突出部、14:ボルト、21:ガスケット、22:突起部、23:ガスケットの長手方向に垂直な断面、31:溝、32:溝、33:端面板、34:閉塞栓、35:粘着シール材、36:分割面、37:締付具、41:通信用ケーブル、W21:ガスケット21の幅、W32:溝32の幅、S1:下スリーブの溝の断面の溝空間面積、S2:ガスケットの断面において下スリーブ装着側の面積、H22:突起部22の高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の容器を上下に分割した形状でそれぞれの分割面に互いに対向する溝を備えた上スリーブ及び下スリーブとから構成された気密性収納容器の内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に装着された状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結することによって、前記通信ケーブル等接続部用気密性収納容器の内部に気密空間を形成するガスケットであって、
両端部を有し、
前記下スリーブ側の溝への装着が圧入によるものとなるように、その長手方向に垂直な断面の幅として前記下スリーブ側の溝の側壁間の幅よりも大である部分を含み、前記下スリーブ側の溝へ装着するときに、前記下スリーブ側の溝の側壁間に圧入によって装着される部分と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の面圧によって保持され、
前記下スリーブ側の溝の側壁間の幅よりも大である部分が、突起部を備えた部分であり、
前記突起部が、長手方向の中央部に少なくとも一つ、及び前記中央部以外の領域に複数配設され、前記中央部の突起部と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の保持力が、前記中央部以外の領域の突起部と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の保持力より大きいことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記中央部以外の領域に配設される突起部が、両端部のそれぞれに少なくとも一つずつ配設された突起部である請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記突起部の長手方向に垂直な断面の前記下スリーブの溝に装着される側半分の面積が、前記中央部の突起部の部分における面積より、前記中央部以外の領域の突起部の部分における面積が小さい請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
中空の容器を上下に分割した形状で、それぞれの分割面に互いに対向する上下対称の溝を備えた上スリーブ及び下スリーブと、前記溝の中に装着されるガスケットとから構成され、内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に前記ガスケットを装着した状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結することによって、内部に気密空間を形成する通信ケーブル等接続部用気密性収納容器であって、
前記ガスケットが、請求項1〜3のいずれかに記載のガスケットであり、
前記ガスケットの前記下スリーブ側の溝への装着が、圧入によるものであり、
前記ガスケットが、前記下スリーブ側の溝の側壁間に圧入によって装着される部分と前記下スリーブ側の溝の側壁との間の面圧によって保持される通信ケーブル等接続部用気密性収納容器。
【請求項5】
内部に物品を収納した後、前記下スリーブ側の溝の中に前記ガスケットを装着した状態で、前記上スリーブ及び下スリーブを締結し、長手方向中央部から順次外側に向かって締め付けて請求項4に記載の通信ケーブル等接続部用気密性収納容器を組み立てる、通信ケーブル等接続部用気密性収納容器の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−99547(P2008−99547A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264322(P2007−264322)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【分割の表示】特願2002−26165(P2002−26165)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(000183255)住友スリーエム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】