説明

通信制御装置及び路側通信機

【課題】エラーの発生を抑制して所定の無線通信成功率を確保することができる通信制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】路側通信機2が無線送信を行う路側用タイムスロットTaで送信する送信情報を、複数のパケットに分割して路側通信機2から送信させる。パケット長と、当該パケット長のパケットで送信した場合の無線通信成功率との関係を示す参照情報を記憶する記憶部24と、前記送信情報が有するデータ長と前記参照情報とに基づいて、当該送信情報を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長Lを決定する決定部23Eとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に用いられる通信制御装置及びこの通信制御装置を備えた路側通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる高度道路交通システムは、主として、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である複数の車載通信機とによって構成される。
【0003】
この場合、各通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高度道路交通システムにおいては、路車間通信と車車間通信との共存を図るに当たって、帯域を有効利用してどのような通信制御を行うかが問題となる。高度道路交通システムの場合、その通信帯域として、700MHz帯で概ね10MHz幅とする規格が検討されている。このような比較的狭い帯域幅の場合に、路側通信機の電波が到達する通信エリアにおいて、通信帯域を如何に有効利用するかが特に問題となる。
そこで、このような限られた周波数帯域内で路車間及び車車間の各通信を行うために、マルチアクセス(Multiple Access)が用いられることが検討されている。
【0006】
このマルチアクセス方式としては、周波数分割多重(FDMA:Frequency Division Multiple Access)や符号分割多重(CDMA:Code Division Multiple Access)があるが、山間部などで少数の車載通信機のみでの通信も想定される車車間通信としてのマルチアクセス方式としては、例えばCSMA(Carrier Sense Multiple Access)に代表される自律的なランダムアクセス方式を採用するのが好ましい。
【0007】
しかし、路側通信機が存在するエリアでは、路車間通信と車車間通信とが共存することから、インフラ側である路側通信機の取り扱う情報の優先度を高くするためには、車車間通信よりも路車間通信が優先的に行われる仕組みが必要となる。
そこで、路側通信機の情報送信を優先的に行うために、通信に用いる周波数を、一定時間ごとに時分割して路側通信機の送信専用のタイムスロットを設ける、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access)によるマルチアクセスが有効となる。
【0008】
従って、例えば、交差点ごとに設置された複数の路側通信機群で構成される通信システムを想定すると、各路側通信機が送信するタイムスロットをTDMA方式で割り当て、残ったタイムスロットをCSMA方式による車車間通信に使用させるのが、合理的な通信システムになると考えられる。
【0009】
ここで、路側通信機が自身のタイムスロットで送信する情報には、交差点に設置された交通信号灯器の灯色の予定時間を示す信号現示情報や、ある対象地点までの道路の長さや傾斜等の道路構造を示す道路線形情報等があり、路側通信機からはこのような様々な情報が送信される。
そして、前記高度道路交通システムでは、このような様々な情報を複数のパケットに分割して路側通信機から送信させる方式が提案されている。
【0010】
このような通信方式を用いた路車間通信では、パケットの始めの部分の信号を用いて伝搬路の推定を行い、伝搬路によるデータ部分の影響を補償する処理を行うことが可能である。しかし、パケット長が長くなると、当該パケットの後ろ部分では、推定した伝搬路との差が大きくなっていることがあり、この場合、当該パケットを受信した車載通信機は上手く復調できず、エラーが発生することがある。
そこで、本発明は、エラーの発生を抑制して所定の無線通信成功率を確保することができる通信制御装置及びこの通信制御装置を備えた路側通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)前記目的を達成するための本発明は、路側通信機が無線送信を行う路側用タイムスロットで送信する送信情報を、複数のパケットに分割して前記路側通信機から送信させる通信制御装置であって、パケット長と、当該パケット長のパケットで送信した場合の無線通信成功率との関係を示す参照情報を記憶する記憶部と、前記送信情報が有するデータ長と前記参照情報とに基づいて、当該送信情報を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長を決定する決定部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、路側用タイムスロットで送信する送信情報が有するデータ長と、記憶部に記憶されている参照情報とに基づいて、前記決定部は、当該送信情報を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長を決定する。このため、分割する単位となる単位パケット長が無線通信成功率を考慮して求められる。当該単位パケット長で送信情報を分割してパケット送信すれば、所定の無線通信成功率を確保することが可能となる。
【0013】
(2)すなわち、前記参照情報には、複数種類のパケット長それぞれで前記送信情報を分割してパケット送信した場合のパケット単位での無線通信成功率の情報が含まれ、前記決定部は、前記送信情報を前記複数種類のパケット長それぞれで分割してパケット送信した場合において、当該複数種類のパケット長の中で、当該送信情報単位での無線通信成功率が最も高くなるパケット長を前記単位パケット長として決定することができる。
【0014】
(3)なお、パケット数(分割数)が増えるとDIFS(distributed inter frame space)も多くなって、所定のスロット長に割り当てられた路側用タイムスロットを、通信のために有効活用できなくなるおそれがある。
そこで、前記決定部は、前記単位パケット長で分割して前記送信情報を送信するために必要となる時間が、規定されたスロット長を有する前記路側用タイムスロット内に収まるようにして前記単位パケット長を決定するのが好ましい。この場合、分割数が多くなりすぎるのを制限することができ、路側用タイムスロットを通信のために有効活用できる。
【0015】
(4)また、前記無線通信成功率は、送信側となる路側通信機と受信側の無線通信機との相対位置によって変わることから、前記無線通信成功率は、前記路側通信機と受信位置との相対位置に関する情報と対応付けられたものであるのが好ましい。
この場合、路側通信機と受信位置との相対位置に応じて前記単位パケット長を決定することができる。なお、前記路側通信機と受信位置との相対位置に関する情報は、路側通信機と受信位置との距離の情報の他に、当該距離と相関が強い情報であってもよく、例えば受信信号強度とすることができる。
【0016】
(5)また、前記記憶部は、前記路側通信機の通信特性に影響を与える通信パラメータ毎の前記参照情報を記憶している場合、路側通信機が、例えば変調方式や符号誤り率等の通信パラメータを変更して送信情報を送信する場合であっても、当該通信パラメータ毎の参照情報を用いることができ、当該通信パラメータの変更に対応した単位パケット長を求めることができる。この結果、通信パラメータの変更に応じて送信情報を分割してパケット送信させることが可能となる。
【0017】
(6)また、前記通信制御装置は、前記路側通信機の通信エリア内に存在する複数の他の無線通信機間の送信信号に基づいて当該通信エリアの通信環境を取得し、当該通信環境に基づいて前記参照情報を補正する補正部を更に備えているのが好ましい。
この場合、通信エリアの通信環境が変化して無線通信成功率が変化していても、他の無線通信機間の送信信号から通信環境を取得し、当該通信環境に基づいて参照情報を補正すればよい。
【0018】
(7)また、送信情報には様々な種類の情報が含まれているが、当該送信情報の中に、周囲の無線通信機に確率よく取得させるべき情報と、それ以外の情報とが含まれている場合、前記決定部は、前記単位パケット長を決定する基準を、前記送信情報の種類に応じて異ならせるのが好ましい。
【0019】
(8)また、本発明は、前記通信制御装置を備えた路側通信機であり、この路側通信機は、前記通信制御装置と同じ作用を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分割する単位となる単位パケット長を、無線通信成功率を考慮して求めることができ、当該単位パケット長で送信情報を分割してパケット送信すれば、所定の無線通信成功率を確保することが可能となる。このように、適した分割方式によってパケット送信することで、通信性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】高度道路交通システムの実施の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
【図3】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】タイムスロットの一例を示す概念図である。
【図5】パケットの構造を説明する説明図である。
【図6】参照情報の説明図であり、(a)は第一の実施例であり、(b)は第二の実施例であり、(c)は参照情報を用いた単位パケット長の決定方法を説明する図である。
【図7】路側用タイムスロットにおける送信パケットを説明する説明図である。
【図8】参照情報の他の例(第三の実施例)を説明する説明図である。
【図9】補正部の機能を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔システムの全体構成〕
図1は、高度道路交通システム(ITS)の実施の一形態を示す概略斜視図である。本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号灯器1、路側通信機2、車載通信機3(図2及び図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、路側センサ6を含む。
交通信号灯器1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
【0023】
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号灯器1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4と各交通信号灯器1と各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0024】
路側センサ6は、障害物や車両を超音波等を用いて感知する感知器や監視カメラ等よりなり、例えば各交差点Jiに流入する車両台数を感知して渋滞の状況を把握したり、各交差点Jiに存在する障害物(例えば停車車両)の存在を把握したり、走行している車両の位置を把握(車両の位置情報を取得)したりする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。路側センサ6が取得したセンサ情報は、通信回線7を介して、中央装置4に送信され、また、路側通信機2へ直接送信される。なお、走行している車両の位置を示す車両の位置情報は、路側通信機2から車載通信機2に送信されることで、後にも説明するが、車両の衝突回避のために利用される。
【0025】
図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに交通信号灯器1が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの交通信号灯器1が設置されている。各交差点Jiに設置されている一群の交通信号灯器1は、信号制御器を有していて、この信号制御器から、交通信号灯器1の灯色の予定時間を示す信号現示情報が、通信回線7を介して、中央装置4に送信され、また、路側通信機2へ直接送信される。
【0026】
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有している。この制御部は、各種情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御、及び、各路側通信機2や各交通信号灯器1への各種情報の提供を統括的に行う。
すなわち、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、交通信号灯器1から受けた前記信号現示情報、交通信号灯器1の切り替えタイミングに関する信号制御指令、路側センサ6から受けた前記センサ情報等の各種の提供情報D1を、交通信号灯器1及び路側通信機2に送信する(図1参照)。
【0027】
〔無線通信の方式等〕
図2は、高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。なお、道路構造はこれに限られるものではない。本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機(移動通信機)の一種である車載通信機3とを備えている。
【0028】
路側通信機2それぞれは、路側の交差点Jiに設置されていて、図2では交通信号灯器1の支柱に取り付けられている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5に搭載されている。
各路側通信機2は、その周囲に広がる通信エリアA(路側通信機2の送信信号が十分に届く範囲)を有し、自身の通信エリアAを走行する車両5の車載通信機3との無線通信が可能である。また、各路側通信機2は、通信エリアAが重複(一部重複でも全部重複でもよい。)する他の路側通信機2とも無線通信が可能である。
【0029】
本実施形態の高度道路交通システムでは、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)の通信(路車間通信)と、車載通信機3同士の通信(車車間通信)とについて、無線通信が用いられている。また、路側通信機2同士(路路間通信)も無線通信が用いられている。そして、路車間通信と車車間通信とは、同一の周波数チャネルを共用している。
交通管制センターに設けられた前記中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0030】
路側通信機2は、自身が無線送信するための路側用タイムスロットをTDMA方式で割り当てており、この路側用タイムスロット以外の時間帯には無線送信を行わない。従って、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
さらに、路側通信機2は、後にも説明するが、自身の路側用タイムスロットで送信する提供情報(送信情報)D1を、複数のパケットに分割して自身の通信エリアA内に送信する。
また、各路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0031】
本実施形態では、複数の路側通信機2の中から1つの親機が予め選定されていて、後述する決定部23E、さらには情報分類部23Cと情報割り当て部23D等を含む本発明の「通信制御装置」を、親機及び子機となる複数の路側通信機2それぞれに搭載させた場合を例示するが、その通信制御装置を親機にのみ設け、当該親機の決定部23E等が、他の子機のためにも機能するように構成してもよく、また、通信制御装置を中央装置4に設け、決定部23E等が、親機及び子機のために機能するように構成してもよい。また、決定部23Eと情報分類部23Cと情報割り当て部23Dとがそれぞれ別々の装置に設けられた構成であってもよく、又は、この内の一つのみが別の装置に設けられた通信システムが構成されてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、親機が備えている「通信制御装置」が、後述のスロット割り当て部23Aを有し、自装置に対するスロット割り当てを自律的に行うと共に、この親機が、管理する複数の子機を含めて電波干渉が生じない送信タイミングとなるように、総括的なタイムスロットの割り当てを行う場合を説明する。なお、このスロット割り当て部23A及び後述の通知部23Bの所在についても、前記と同様に、子機も備えていてもよく、また、中央装置4が備えていてもよい。
【0033】
〔路側通信機の構成〕
図3は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20が接続された無線通信部21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、これらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
【0034】
路側通信機2の記憶部24は、制御部23が実行する通信制御等のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID、及び、後述する参照情報を記憶している。路側通信機2の制御部23は、上記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部として、スロット割り当て部23Aと通知部23Bと情報分類部23Cと情報割り当て部23Dと決定部23Eと補正部23Fとを備えている。
【0035】
このうち、通知部23Bは、有線通信部22が中央装置4等から受信した前記信号現示情報、センサ情報及び後述の道路線形情報等の提供情報D1、及び、後に説明するスロット割り当て部23Aが生成したスロット情報D2を、記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21から車載通信機3に対してブロードキャスト送信させる。
また、通知部23Bは、無線通信部21が受信した車載通信機3の車両情報(車両5の位置、速度及び方向等)を、記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22から中央装置4に転送させる。
【0036】
前記スロット割り当て部23Aは、所定の周期(例えば100ミリ秒の一定の周期)で繰り返されるフレーム(時間領域)それぞれの中に、路側通信機2が無線送信を行う路側用タイムスロットを時分割で割り当て、所定のタイムスロットを生成する。図4は、スロット割り当て部23Aが割り当てるタイムスロットの一例を示す概念図である。スロット割り当て部23Aは、フレームΔt毎に、自身の路側通信機2(親機R1)及び他の路側通信機2(子機R2〜R8)が無線送信するためのタイムスロットTaを生成する。
【0037】
さらに、前記スロット割り当て部23Aによって、複数の路側通信機2それぞれの路側用タイムスロットTaは、所定(一定)のスロット長となるように設定されている。すなわち、ある路側通信機2のスロット長と、他の路側通信機2のスロット長とは異なっていてもよいが、一つの路側通信機2のスロット長は、どのフレームΔtにおいても同じとなるように設定されている。例えば、図4の場合、親機R1のスロット長は、どのフレームΔtにおいても4ミリ秒に設定されていて、子機R2のスロット長は、どのフレームΔtにおいても3ミリ秒に設定されている。
【0038】
そして、各路側用タイムスロットTaでは、この時間帯において路側通信機2による無線送信が許容される。路側通信機2用のタイムスロットTa以外の時間帯は、車載通信機3用のタイムスロットTbであり、この車載用タイムスロットTbの時間帯は、車載通信機3による無線送信用として開放されるため、路側通信機2は車載用タイムスロットTbでは無線送信を行わない。
【0039】
スロット割り当て部23Aが、このようなスロットの割り当て処理を実行するために、フレームΔt毎に含まれる各路側用タイムスロットTaの時間を示すスロット情報D2が、当該スロット割り当て部23によって生成される。このスロット情報D2には、複数の路側通信機2それぞれの路側用タイムスロットTaの開始時間及びスロット長に関する情報が含まれている。
【0040】
スロット情報D2が生成されると、前記通知部23B(図3参照)は、当該スロット情報D2を車載通信機3に取得させるために機能する。すなわち、通知部23bはスロット情報を無線通信部21から送信させる。
そして、各路側用タイムスロットTaでは送信情報がパケットとして送信される。すなわち、前記提供情報D1は、路側用タイムスロットTa毎の複数のパケットに割り当てられて送信される。
なお、図5は、無線通信部21から送信されるパケットの構造を説明する説明図である。標準ヘッダにはアドレスの情報等が含まれていて、拡張ヘッダに前記スロット情報D2が含まれる。そして、データ部分に前記提供情報D1が含まれる。
【0041】
このような送信の際、路側用タイムスロットで送信する情報を、どのようにしてパケットに割り当てる(詰める)かを決定するために、各路側通信機2の前記情報分類部23C及び前記情報割り当て部23D(図3参照)が機能する。
すなわち、情報分類部23Cは、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1を、第一情報と第二情報とに分類する機能を有している。この分類は、情報を更新して送信する頻度の高低を判断基準として行われる。
【0042】
ここで、路側通信機2から送信させる提供情報D1として前記第一情報及び前記第二情報があり、第一情報は、例えば100ミリ秒に設定されたフレームΔt毎のように、更新頻度を高くして送信すべき情報(以下、高頻度更新情報ともいう)であり、第二情報は、例えば1秒(以上)毎のように、高頻度更新情報よりも更新頻度を低くして送信してもよい情報(以下、低頻度更新情報ともいう)である。
【0043】
路側通信機2は、提供情報D1を中央装置4から取得する他に、他の通信装置から直接取得することができる。提供情報D1は、車載通信機3を搭載した車両5に対して安全運転支援制御のために有用となる情報である。
具体的には、提供情報D1には、前記信号現示情報や前記センサ情報がある。信号現示情報やセンサ情報による車両の位置情報は、刻々と変化する時間的に動的な情報であり、このような情報は、更新頻度を高くして送信すべき高頻度更新情報となる。
特に、信号現示情報は、信号制御器又は中央装置4の制御によって、交通信号灯器1が設置されている道路の渋滞状況に応じて変化させることがあるため、このような信号現示情報は、更新頻度を高くして送信すべき情報である。
【0044】
さらに、信号現示情報は、交通信号灯器1の灯色の予定時間を示す情報であるため、当該交通信号灯器1の設置位置(近傍)の路側通信機2から送信することに意義がある。また、センサ情報も同様に、検出対象領域(近傍)の路側通信機2から送信することに意義がある。なお、前記車両の位置情報は、前記センサ情報に基づく情報であってもよいが、車載通信機2から送信され路側通信機2が受信した情報であってもよい。
【0045】
また、他の提供情報D1としては、道路の形状を示す道路線形情報がある。道路線形情報は、情報提供地点からある対象地点やある対象区間までの道路構造を示す情報であり、例えば、道路の長さ、傾斜、カーブの度合い等の情報である。この道路線形情報は、予め路側通信機2が記憶し又は中央装置4から取得できる情報である。
道路線形情報は、その道路のある対象地点(交差点やカーブ)を通過するまでは、その情報は有効であることから、更新し続ける必要はない。このため、このような道路線形情報は時間的に静的な情報であり、更新頻度を低くして送信してもよい低頻度更新情報である。
さらに、道路線形情報は、ある対象地点やある対象区間までの道路構造を示す情報であることから、当該対象地点や対象区間までに存在している路側通信機2から送信すればよい。
【0046】
そして、このような信号現示情報、車両の位置情報及び道路線形情報それぞれには、例えば固有の識別子が予め設定され付与されている。
そこで、前記情報分類部23Cは、提供情報D1が高頻度更新情報であるか低頻度更新情報であるかについて、前記識別子に基づいて判定することができ、この判定により、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1を、高頻度更新情報と低頻度更新情報とに分類することができる。
【0047】
そして、前記情報割り当て部23Dは、高頻度更新情報と低頻度更新情報とを路側用タイムスロットTa毎に含まれる複数のパケットに割り当てて送信するために、当該高頻度更新情報を当該低頻度更新情報よりも優先してパケットに割り当て、余りの部分に当該低頻度更新情報を割り当てる機能を有している。
すなわち、前記のとおり、信号現示情報等の高頻度更新情報は、所定の交通信号灯器1の設置位置(近傍)に存在する所定の路側通信機2(例えば親機R1)から送信することに意義があるため、その高頻度更新情報は、当該所定の路側通信機2(親機R1)の路側用タイムスロットTaに含まれるパケットに割り当て、しかも、この高頻度更新情報は低頻度更新情報よりも優先して割り当てられる。
【0048】
そして、高頻度更新情報を優先させて割り当てるこの路側用タイムスロットTaに余裕があれば、道路線形情報等の低頻度更新情報が、余りの部分(パケット)に割り当てられる。低頻度更新情報である道路線形情報は、前記のとおり対象地点や対象区間までに存在している路側通信機2から送信すればよいので、当該低頻度更新情報は、その全部又は一部を、前記所定の路側用タイムスロットTaで送信できなくても、後の(別の)路側用タイムスロットTaで送信すればよい。
【0049】
前記情報割り当て部23Dによって、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1が各パケットに割り当てられ、路側通信機2から送信されるが、この処理を実行するにあたり、前記決定部23Eは、この提供情報D1が有する総データ長と、後述する参照情報とに基づいて、当該提供情報D1を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長を決定している。すなわち、決定部23Eは、路側用タイムスロットTaに含まれる複数のパケットのパケット長を決定する処理を行う。
なお、情報割り当て部23Dによる情報の割り当て、決定部23Eによる単位パケット長の決定の具体例については後に説明する。
【0050】
〔参照情報〕
図6は前記参照情報の説明図である。参照情報は、前記記憶部24(図3参照)に記憶されていて、前記提供情報D1を送信するためのパケットのパケット長と、当該パケット長のパケットを通信エリアA内に送信した場合のパケット単位での無線通信成功率(パケット到達率)との関係を示す情報である。なお、前記パケットのパケット長は、当該パケットに含まれるデータ長と同じ意味であり、無線通信成功率は、このデータ長のパケットを送信した場合の値である。
【0051】
図6(a)に示している参照情報(第一の実施例)は、複数種類(図例では3種類)のパケット長の値と、各パケット長のパケットを送信した場合のパケット到達率との関係についての情報である。この参照情報によれば、例えば、パケット長を500バイトとして送信した単一のパケットの車載通信機3におけるパケット到達率は、0.95となることを意味している。
【0052】
図6(b)に示している参照情報(第二の実施例)には、路側通信機2と車載通信機3の受信位置との相対位置に関する情報も含まれている。なお、図6(b)に示している前記相対位置に関する情報は、路側通信機2と受信位置との距離と相関が強い受信信号強度(RSSI)である。すなわち、この参照情報は、複数種類(図例では3種類)のパケット長の値と、各パケット長のパケットを送信した場合における受信信号強度と対応付けられているパケット到達率との関係を示す情報である。
【0053】
図6(b)の参照情報によれば、例えば、通信エリアA中で受信信号強度が−80以上であるエリアでは、パケット長を500バイトとして送信した単一のパケットの車載通信機3におけるパケット到達率は0.95となることを意味している。この参照情報は、通信エリアA内で事前に無線通信成功率(パケット到達率)が測定されることによって取得される。なお、無線通信成功率は、車載通信機3が受信して復調することができる確率であり、パケット到達率以外であってもよく、パケット誤り率であってもよい。
【0054】
前記のとおり、参照情報は、路側通信機(通信制御装置)2を設置する際に予め作成され、記憶部24に記憶させているが、例えば周囲の建物の増減等により、時間の経過に伴って通信エリアAの通信環境が変化することがある。この場合、参照情報のパケット到達率が当初と比べて変化することがある。
そこで、前記補正部23Fは、路側通信機2の通信エリアA内に存在する複数の車載通信機3間の送信信号に基づいて当該通信エリアAの通信環境を取得し、当該通信環境に基づいて参照情報を補正する機能を有している。
【0055】
この補正部23Fの機能を具体的に説明する。
路側通信機2の通信エリアA内で複数の車載通信機3同士が車載用タイムスロットで車車間通信を行っている。車載通信機3が送信する情報には、自身の現在位置についての車両情報が含まれている。このため、路側通信機2が車両情報を受信(傍受)することで、車載通信機3(車両)の位置を把握することができる。すなわち、車載通信機3の位置から送信された無線情報が、受信できたことを把握することができる。
【0056】
車載通信機3が送信する情報も、複数のパケットに分割して送信されていて、そのパケット長は、路側通信機2が送信するパケットのパケット長と異なっていてもよく、例えば、車載通信機3から送信されるパケットのパケット長は200バイトに固定されているとする。この場合、車載通信機3のパケット長と同じパケット長についてのパケット到達率が予め求められていて、その関係(運用開始時の関係)を示す情報を前記参照情報に含ませて記憶部24は記憶している。
【0057】
図9に示しているように、例えば路側通信機2から25m離れている位置で、10台の車載通信機3からのパケットを、当該路側通信機2が受信できているにもかかわらず、これら10台の車載通信機3が路側通信機2から50m離れている位置では、10台すべてではなく9台からパケットを、路側通信機2が受信できた場合、路側通信機2から50m離れた位置でのパケット到達率は、90%であると推定することができる。
【0058】
このように、様々な受信位置にある車載通信機3からの送信情報を路側通信機2が取得することで、パケット長が200バイトである場合の当該パケット長と、当該パケット長のパケットで送信した場合のパケット到達率との関係(システム運用中の関係)を、補正部23Fは求めることができる。
そこで、補正部23Fは、前記システム運用中の関係を示す情報と、記憶部23に記憶させた前記運用開始時の関係を示す情報を含む前記参照情報とを比較し、無線通信成功率の増減の傾向を取得する。
【0059】
この無線通信成功率の増減の傾向は、同じ通信エリアA内で他のパケット長によるパケット通信と共通していると考えられることから、当該傾向に基づいて、補正部23Fは、例えば図6(b)に示している参照情報を補正する。
すなわち、補正部23Fは、車載通信機3からの送信パケットを傍受することで推定した通信環境の変化の傾向に応じて、図6(b)に示している無線通信成功率を補正する。
このように、通信エリアAの通信環境が変化することでパケット到達率が変化していても、その変化に応じて参照情報を補正することができ、前記決定部23Eによる単位パケット長の決定の精度を維持することができる。
【0060】
〔車載通信機〕
図3に戻り、車載通信機3は、前記路側通信機2(通信制御装置)と無線通信可能な構成であり、このために、無線通信のためのアンテナ30に接続され前記提供情報D1や前記スロット情報D2等を含む情報を受信する通信部31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信装置2,3の通信機ID等を記憶している。
【0061】
車載通信機3の制御部32は、上記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部として、通信制御部32Aと送信部32Bと復元部32Cとを備えている。
【0062】
通信制御部32Aは、路側通信機2から直接受信した前記スロット情報D2又は他の車載通信機3から通知された前記スロット情報D2に基づいて、路側用タイムスロットTaと車載用タイムスロットTb(図4参照)とを判別することができ、自己の無線送信の実行と停止との制御を行う機能を有している。
また、車載用タイムスロットTbでは、通信制御部32Aは、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせることができ、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、通信制御部32Aは、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0063】
また、通信制御部32Aは、車両5(車載通信機3)の現時の位置、速度及び方向等を含む車両情報を、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信させることができる。車両5の位置や方向は、通常は、GPS等の車両5側のセンサ類が自律的に測定した情報であるが、光ビーコン等のインフラ側から取得可能な場合もある。速度は、車両5の速度センサに基づいた情報である。
そして、送信部32Bは、通信部31が受信した前記スロット情報D2や前記提供情報D1を、他の移動通信機3に対して、通信部31を介して通知(転送)する機能を有している。
【0064】
前記通信部31は、他の車両5が送信した当該車両5の速度や位置についての車両情報や、路側通信機2が送信した前記提供情報D1及び前記スロット情報D2を受信する。通信部31がこれら情報を受信すると、通信制御部32Aは、これら各情報に基づいて安全運転支援制御のための処理を実行することができる。すなわち、このような情報を車載通信機3が受信することで、当該情報に基づき、車載通信機3は、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御のための処理を、車両5の機構と共同して行う。
【0065】
また、後に説明するが、高頻度更新情報と低頻度更新情報との内の一方又は双方が、パケット毎に分割されて割り当てられる場合、前記通信部31は、高頻度更新情報が分割された分割情報又は低頻度更新情報が分割された分割情報を受信可能であり、この通信部31が前記分割情報を受信すると、前記復元部32Cが、当該分割情報を元の高頻度更新情報及び元の低頻度更新情報に復元する機能を備えている。
【0066】
〔情報割り当て部による情報の割り当ての具体例〕
図7は、路側通信機2(親機R1)の路側用タイムスロットTa(図4参照)における送信パケットを説明する説明図である。この路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1には、前記高頻度更新情報と前記低頻度更新情報とがある。この高頻度更新情報と低頻度更新情報との分類は、前記のとおり情報分類部23Cによって行われる。
図7では、高頻度更新情報を「高」と示し、低頻度更新情報を「低」と示している。
【0067】
情報分類部23Cによって、高頻度更新情報と低頻度更新情報とが分類されると、前記情報割り当て部23Dは、低頻度更新情報よりも高頻度更新情報を優先して先ずパケットに割り当てる。
この割り当て処理を行うにあたり、所定の決定ロジックに基づいて、前記決定部23Eは、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長L(図7参照)を決定する。この決定は、前記提供情報D1が有する総データ長と、記憶部24に記憶されている前記参照情報とに基づいて行われる。
図7では、単位パケット長Lが決定されることで、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1は三分割となっている。なお、単位パケット長Lを決定するための決定ロジックについては、後に説明する。
【0068】
単位パケット長Lが決定されると、情報割り当て部23Dは、路側用タイムスロットTaで送信する情報(高頻度更新情報及び低頻度更新情報)を、当該単位パケット長L毎に分割する。
すなわち、図7の場合では、高頻度更新情報の全データ長は、前記単位パケット長Lよりも大きいことから、高頻度更新情報は、一番目のパケットP1に入る情報「高(1/2)」と、それ以外「高(2/2)」とに分割されている。そして、パケット長が前記単位パケット長Lとなる「高(1/2)」が最初のパケットP1に割り当てられている。そして、残り「高(2/2)」が二番目のパケットP2に割り当てられる。このようにして、高頻度更新情報が優先して先ずパケットに割り当てられている。
【0069】
この二番目のパケットP2は、前記単位パケット長Lに対してまだ余裕があるため、この余裕分が一部となるようにして「低(1/2)」が分割されており、当該パケットP2に低頻度更新情報の前記一部である「低(1/2)」も割り当てられている。そして、残り「低(2/2)」が、パケットP3に割り当てられている。
このように、路側用タイムスロットTaのパケットの内の余りの部分に、低頻度更新情報が分割されて割り当てられる。
【0070】
本実施形態では、高頻度更新情報を優先してパケットに割り当てを行うことから、高頻度更新情報の情報量が多く、路側用タイムスロットTaに低頻度更新情報を送信するだけの余裕が無い場合、当該路側用タイムスロットTaでは、高頻度更新情報のみが送信されてもよい。この場合、当該路側用タイムスロットTaで送信するはずであった低頻度更新情報は、他の(後の)路側用タイムスロットTaで送信すればよい。
この実施形態によれば、各パケットが一定の単位パケット長Lに分割されているので、これらスロットを受信した車載通信機3は、例えばMAC層レベルでパケット長に影響されず処理が容易となる。
【0071】
〔決定ロジックについて〕
単位パケット長Lは、前記決定部23Eによって、提供情報D1が有する総データ長と、記憶部24が記憶している前記参照情報(図6参照)とに基づいて決定される。
すなわち、図6(b)に示しているように、参照情報には、複数種類(図例では三種類)のパケット長(500バイト、750バイト、1500バイト)それぞれのパケットを送信した場合のパケット到達率の情報が含まれている。そこで、決定部23Eは、提供情報D1を前記パケット長それぞれで分割して送信した場合において、これらパケット長の中で、提供情報D1単位(路側用タイムスロットTa単位)での無線通信成功率が最も高くなるパケット長を、単位パケット長として決定する処理を行う。なお、前記提供情報D1単位での無線通信成功率は、パケット到達率の総計であり、以下において、総パケット到達率と呼んで説明する。
【0072】
なお、決定される単位パケット長Lは上限が設定されていて、例えば最大パケット長(最大データ長)は、実用的な観点から1500バイトと設定されている。
また、単位パケット長Lは、高頻度更新情報を分割する場合と、低頻度更新情報を分割する場合との二種類とすることができ、これらで異なる値であってもよい。
【0073】
単位パケット長Lの決定処理を具体的に説明する。
提供情報D1の総データ長が1500バイトであるとする。この提供情報D1を、500バイトのパケット長で分割すると三分割となる。この場合、図6(b)によれば、単一のパケットの車載通信機3におけるパケット到達率は0.95であることから、三分割して送信する提供情報D1の全ての車載通信機3における総パケット到達率は、0.95×0.95×0.95=0.86となる(図6(c)参照)。
【0074】
一方、提供情報D1を、750バイトのパケット長で二分割すると、総パケット到達率は、0.9×0.9=0.81となり、1500バイトのパケット長とすると、総パケット到達率は0.8となる(図6(c)参照)。このように、「(総パケット到達率)=(パケット到達率)^(分割数)」となる。
【0075】
以上より、総パケット到達率が最も高いパケット長が、実際に分割する単位となる単位パケット長Lとして決定される。図6(c)の場合、500バイトが単位パケット長Lとして決定され、三分割となることが決定される。
【0076】
単位パケット長Lが短くなって分割数が増えると、図7において、DIFS(distributed inter frame space)も多くなり、路側用タイムスロットTaを通信のために有効活用できなくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、決定部23Eによる単位パケット長Lの決定は、次の条件を満たすのが好ましい。
すなわち、単位パケット長Lで分割して提供情報D1を送信するために必要となる時間が、規定されたスロット長を有する路側用タイムスロットTa内に収まるような分割数とすべく、単位パケット長Lを決定する。
【0077】
具体的に説明すると、単位パケット長Lによる分割数は、次式<1>の条件を満たすことが必要とされている。
<1>(分割数+1)×(DIFS)+(各パケットにおける送信時間の総数)<(路側用タイムスロットTaのスロット長ΔTL)
この式<1>によれば、DIFSが多くなって一定のスロット長ΔTLに収まらなくなるのを抑制することができる。
【0078】
また、前記のとおり提供情報D1には、高頻度更新情報と低頻度更新情報とがある。高頻度更新情報は、低頻度更新情報に比べて通信領域A内に存在している車載通信機3に確率よく取得させるべき情報である。
ここで、図6(c)に示しているように、単位パケット長Lを決定する基準として、さらに、総パケット到達率の最低基準を示す閾値αが設定されている。この場合、前記のとおり総パケット到達率が最も高いパケット長であっても、当該総パケット到達率がこの閾値αを超えていないと、決定部23Eは、当該パケット長を単位パケット長Lに決定しないで、パケット到達率を高めるために分割数をさらに増やす処理を行う。
【0079】
そこで、提供情報D1の中に、周囲の車載通信機3に確率よく取得させるべき情報と、それ以外の情報とが含まれているので、決定部23Eは、単位パケット長Lを決定する基準を、提供情報D1の種類に応じて異ならせるために、前記閾値αを二種類設定している。
例えば、ある路側用タイムスロットTaで高頻度更新情報のみを送信する場合、閾値αは高めの値が選択され、低頻度更新情報のみが送信される場合があれば、閾値αは低めの値が選択され、情報の種類に応じた閾値αが用いられ、前記実施例と同様の処理によって単位パケット長Lが決定される。
【0080】
また、図8は、記憶部24が記憶している参照情報の他の例(第三の実施例)を説明する説明図である。
この実施例では、記憶部24が記憶している参照情報には、路側通信機2の通信特性に影響を与える通信パラメータ毎の情報が含まれている。
すなわち、路側通信機2の制御部23は、通信環境に応じて、例えば変調方式や符号誤り率等の通信パラメータを変更して提供情報D1を送信するように構成されている。そこで、決定部23Eは、このような通信パラメータの変更に応じて提供情報D1を分割してパケット送信させることが可能となるように、記憶部24は、通信パラメータ毎の参照情報を記憶している。なお、図8では、変調方式毎の参照情報が記憶されている。
【0081】
そして、例えば路側通信機2における変調方式が変更されると、当該変更された変調方式に応じた参照情報が決定部23Eによって選択され、当該参照情報によって、前記実施例と同様の処理により、単位パケット長Lが決定される。
【0082】
以上のように、本発明の通信制御装置の機能を備えた路側通信機2によれば、路側用タイムスロットTaで送信する提供情報D1が有する総データ長と、記憶部24に記憶されている参照情報とに基づいて、当該提供情報D1を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長Lを決定することができる。この単位パケット長は、無線通信成功率が考慮されて求められたものであることから、当該単位パケット長で提供情報D1を分割してパケット送信すれば、所定の無線通信成功率を確保することが可能となる。
このように、通信エリアAの通信環境に応じて最善の分割方式が決定され、この分割奉仕によってパケット送信することで、路側通信機2の設置環境、通信環境に寄らず通信性能を向上させることが可能となる。
【0083】
また、通信制御装置の各機能を有している路側通信機2側において通信性能を高めることができるので、受信性能改善機能を有していない車載通信機3であっても、通信の信頼性を高めることが可能となる。この結果、車載通信機3は提供情報D1を取得することができ、しかも、その取得確率を向上させることができ、交通安全支援に役立てることができる。
【0084】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図6では、最適な単位パケット長を決定するために、500バイト、750バイト、1500バイトの三種類のパケット長を採用した場合を説明したが、これらの値は例示であり、三種類以上のパケット長についての参照情報が用いられていてもよい。
【0085】
また、図6(b)では、パケット長とパケット到達率との関係が、信号受信強度の変化に応じて連続している参照情報を示している。このような参照情報を予め取得しておくために、信号受信強度が例えば1増える毎の関係をすべて取得しなくてもよく、特定点を複数取得して、この取得した情報から他の点を推定することによって、参照情報を取得すればよい。
【符号の説明】
【0086】
2:路側通信機、 3:車載通信機(移動通信機)、23:制御部、 23A:スロット割り当て部、 23B:通知部、 23C:情報分類部、 23D:情報割り当て部、 23E:決定部、 23F:補正部、 24:記憶部、 L:単位パケット長、 Ta:路側用タイムスロット、 Tb:車載用タイムスロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側通信機が無線送信を行う路側用タイムスロットで送信する送信情報を、複数のパケットに分割して前記路側通信機から送信させる通信制御装置であって、
パケット長と、当該パケット長のパケットで送信した場合の無線通信成功率との関係を示す参照情報を記憶する記憶部と、
前記送信情報が有するデータ長と前記参照情報とに基づいて、当該送信情報を複数のパケットに分割する単位となる単位パケット長を決定する決定部とを備えていることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記参照情報には、複数種類のパケット長それぞれで前記送信情報を分割してパケット送信した場合のパケット単位での無線通信成功率の情報が含まれ、
前記決定部は、前記送信情報を前記複数種類のパケット長それぞれで分割してパケット送信した場合において、当該複数種類のパケット長の中で、当該送信情報単位での無線通信成功率が最も高くなるパケット長を前記単位パケット長として決定する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記単位パケット長で分割して前記送信情報を送信するために必要となる時間が、規定されたスロット長を有する前記路側用タイムスロット内に収まるようにして前記単位パケット長を決定する請求項1又は2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記無線通信成功率は、前記路側通信機と受信位置との相対位置に関する情報と対応付けられたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記路側通信機の通信特性に影響を与える通信パラメータ毎の前記参照情報を記憶している請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記路側通信機の通信エリア内に存在する複数の他の無線通信機間の送信信号に基づいて当該通信エリアの通信環境を取得し、当該通信環境に基づいて前記参照情報を補正する補正部を更に備えている請求項1〜5のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記単位パケット長を決定する基準を、前記送信情報の種類に応じて異ならせる請求項1〜6のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の通信制御装置を備えた路側通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−97352(P2011−97352A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249188(P2009−249188)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】