説明

通信端末及び移動体通信システム

【課題】 無線基地局の漏洩伝送路が曲線部分や曲折部分などを有していても、システム構成を複雑とすることなく、しかも、簡単なシステムの構築作業によって、無線基地局との良好な通信を保証し得る移動通信端末を提供する。
【解決手段】 本発明の移動通信端末は、無線基地局の漏洩伝送路の一部又は全ての部分の輻射方向と、輻射方向が正対する漏洩伝送路を、少なくとも一部のアンテナ要素として通信端末本体に接続している。ここで、両輻射方向の方向差が180±7.5度の範囲内にあることを正対と見なすことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末及び移動体通信システムに関し、特に、無線基地局のアンテナとして漏洩伝送路が適用されているシステムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、移動通信端末の移動経路が定まっている移動体通信システムにおいて、移動通信端末が漏洩伝送路を介してデータ通信を行うシステムが検討されている。例えば、列車と路側装置との通信や、無人搬送車とその制御局との通信には、路側装置や制御局などの無線基地局に繋がっている漏洩伝送路が利用可能である。
【0003】
漏洩伝送路を懸架して布設する場合、漏洩伝送路の固定箇所が飛び飛びであるため、自重によって曲線状に布設される。また、漏洩伝送路を、障害物を避けるように布設し、曲線状に布設された部分が生じることがある。移動通信端末が漏洩伝送路に沿って移動したとき、このような曲線部分で、移動通信端末のアンテナと、漏洩伝送路との結合が劣化する。
【0004】
このような不都合を解決する従来技術として、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1の記載技術では、図15に示すように、線路6内の所定の箇所毎にそれぞれ位置検出用地上子8を設置し、移動体3は、位置検出用地上子8で検出した移動体の位置情報を移動局アンテナ4の指向性切替装置7で受信する。そして、指向性切替装置7は、移動体の位置情報に応じ、移動局アンテナ4のビーム方向を切り替えることにより、漏洩伝送路(LCX)1の曲折箇所においても、移動体の受信電界の落ち込みを防止する。
【特許文献1】特開平4−230131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記載技術では、漏洩伝送路1が曲折されている場所の全てに位置検出用地上子8を設置しなければならず、位置検出用地上子8の設置作業が発生してしまう。また、移動体側にも、位置情報を受信し移動局アンテナ4のビーム方向を切り替える指向性切替装置7が必要である。すなわち、移動体通信システムの構成が複雑であると共に、システムを構築する際の作業性が悪いものであった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、漏洩伝送路が曲線部分や曲折部分などを有していても、システム構成を複雑とすることなく、しかも、簡単なシステムの構築作業によって、通信端末との良好な通信を保証し得る通信端末及び移動体通信システムを提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、曲線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路、又は、延長方向が異なる2つの直線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路をアンテナとして適用している基地局と通信を行う通信端末において、当該通信端末が上記基地局の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動するものであり、上記基地局の上記漏洩伝送路の一部又は全ての部分の輻射方向と、輻射方向が正対する漏洩伝送路を、少なくとも一部のアンテナ要素として通信端末本体に接続していることを特徴とする。
【0008】
第2の本発明は、曲線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路、又は、延長方向が異なる2つの直線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路をアンテナとして適用している第1の通信端末と、この第1の通信端末と通信する第2の通信端末とを備え、上記第2の通信端末が上記第1の通信端末の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動する移動体通信システムであって、上記第2の通信端末として、第1の本発明の通信端末を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基地局の漏洩伝送路が曲線部分や曲折部分などを有していても、システム構成を複雑とすることなく、しかも、簡単なシステムの構築作業によって、基地局との良好な通信を保証し得る通信端末や、この通信端末を含む移動体通信システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示している。
【0012】
図1において、第1の実施形態に係る移動体通信システム10は、無線基地局(AP)20及び移動体30を備えている。
【0013】
無線基地局20は、アンテナとして漏洩伝送路21を備え、漏洩伝送路21は終端器(終端抵抗器)22によって終端されている。この第1の実施形態の場合、漏洩伝送路21は、2箇所の曲折点P1、P2によって、3個の部分21−1〜21−3に分かれており、両端側の漏洩伝送路部分21−1及び21−3はそれぞれ、移動体30の直線状の移動経路RTに対して平行に延びており、中間の漏洩伝送路部分21−2は、移動体30の移動経路RTに対して傾いて延びている。
【0014】
移動体30は、移動経路RTに沿って直線状に移動するものであり、無線基地局20と適宜通信を行う通信端末31と、その第1のアンテナとして機能する漏洩伝送路32と、漏洩伝送路32を終端する終端器(終端抵抗器)33と、第2のアンテナとして機能する送受信アンテナ34とを有する。
【0015】
漏洩伝送路32は、通信端末31側からの延長方向が、無線基地局20からの漏洩伝送路21(特に漏洩伝送路部分21−1及び21−3)の延長方向の逆方向になっている。延長方向は逆であるが、漏洩伝送路32及び漏洩伝送路部分21−1及び21−3は平行である。従って、漏洩伝送路32の輻射方向は、両端側の漏洩伝送路部分21−1及び21−3の輻射方向とは正対しているが、中間の漏洩伝送路部分21−2の輻射方向とは正対していない。例えば、漏洩伝送路32と漏洩伝送路21とには、長さなどは異なるが、特性が同じ漏洩同軸ケーブルを適用する。
【0016】
送受信アンテナ34は、漏洩伝送路以外の種類のアンテナで構成されている。例えば、送受信アンテナ34は、ダイポールアンテナや八木アンテナや面状アンテナなどでなる。送受信アンテナ34は、中間の漏洩伝送路部分21−2の輻射方向に対応する指向性(強指向性、弱指向性、無指向性のいずれであっても良い)を有している。すなわち、送受信アンテナ34は、移動体30が、中間の漏洩伝送路部分21−2の近傍にいる場合において、漏洩伝送路32より結合が強くなる指向性を有するものであれば良い。
【0017】
通信端末31は、データ通信処理を実行する構成に加え、内部にダイバーシティ回路を有する。ダイバーシティ回路は、受信レベルなどに応じて、漏洩伝送路32及び送受信アンテナ34の一方を有効とする選択ダイバーシティ回路であっても良く、また、漏洩伝送路32及び送受信アンテナ34の受信レベルに対して所定比率(例えば1/2ずつ)で合成する合成ダイバーシティ回路であっても良い。
【0018】
移動体30が、漏洩伝送路21の第1の部分21−1の近傍NB1に位置しているとする。この場合、移動体30においては、漏洩伝送路部分21−1の輻射方向に正対する漏洩伝送路32が有効に機能する。漏洩伝送路部分21−1と送受信アンテナ34とも結合し得るが、輻射方向が正対している漏洩伝送路部分21−1と漏洩伝送路32との結合より劣る。
【0019】
また、移動体30が、漏洩伝送路21の第2の部分21−2の近傍NB2に位置しているとする。この場合、移動体30において、漏洩伝送路32の輻射方向は漏洩伝送路部分21−2の輻射方向に正対していないため、漏洩伝送路部分21−2と送受信アンテナ34との結合の方が有効に機能する。
【0020】
さらに、移動体30が、漏洩伝送路21の第3の部分21−3の近傍NB3に位置しているとする。この場合、移動体30においては、漏洩伝送路部分21−3の輻射方向に正対する漏洩伝送路32が有効に機能する。漏洩伝送路部分21−3と送受信アンテナ34とも結合し得るが、輻射方向が正対している漏洩伝送路部分21−3と漏洩伝送路32との結合より劣る。
【0021】
図2は、通信に供する漏洩伝送路21−1若しくは21−3、及び、32の輻射方向が逆方向になっている場合(正対している場合)について(図2(B))、結合損失(図2(A))を示している。図3は、通信に供する漏洩伝送路21−2及び32の輻射方向が逆方向になっていない場合(正対していない場合)について(図3(B))、結合損失(図3(A))を示している。
【0022】
通信に供する漏洩伝送路の輻射方向が逆方向になっている場合(指向方向が正対している場合)には、通信端末31での受信レベルは高く、しかも、無線基地局20からの距離の変化に対する変動も小さなものとなっている。これに対して、通信に供する漏洩伝送路の輻射方向が逆方向になっていない場合(指向方向が正対していない場合)には、通信端末31での受信レベルは低く、しかも、無線基地局20からの距離の変化に対する変動も大きく外来ノイズも受けやすいものとなっている。
【0023】
図4は、漏洩伝送路21−2及び送受信アンテナ34が通信に供する場合(正対している場合)について(図4(B))、結合損失(図4(A))を示している。
【0024】
この場合を、通信に供する漏洩伝送路21−1若しくは21−3、及び、32の輻射方向が正対している場合(図2参照)と比較すると、通信端末31での受信レベルは、同程度若しくは若干悪い程度であり、その変動も多少悪い程度である。一方、通信に供する漏洩伝送路21−2及び32の輻射方向が正対していない場合(図3参照)と比較すると、通信端末31での受信レベルは、かなり良くなっており、しかも、その変動も小さくなっている。
【0025】
これらの特性図からも、移動体30が、漏洩伝送路21の第1又は第3の部分21−1、21−3の近傍NB1、NB3に位置している場合には、移動体30において、送受信アンテナ34より漏洩伝送路32が有効に機能し、移動体30が、漏洩伝送路21の第2の部分21−2の近傍NB2に位置している場合には、移動体30において、漏洩伝送路32より送受信アンテナ34が有効に機能することが分かる。
【0026】
上記では、漏洩伝送路部分21−1若しくは21−3と、漏洩伝送路32とが平行と説明したが、この第1の実施形態における「平行」は、漏洩伝送路部分21−1若しくは21−3と、漏洩伝送路32とがなす角度が180度(延長方向を考慮して180度と表現している)に限定されず、角度が180±7.5度の範囲にあるものを言う。言い換えると、漏洩伝送路部分21−2と漏洩伝送路32とのなす角度は、この範囲外の角度である。以下では、上述した角度範囲を「平行」と見なすことにした理由を説明する。なお、平行な漏洩伝送路部分と漏洩伝送路との輻射方向は、「正対」しているということとする。つまり、平行な漏洩伝送路部分と漏洩伝送路から輻射される電波の輻射方向の方向差が180±7.5度の範囲内にあれば「正対」していることとする。
【0027】
図5(A)は、無線基地局20の漏洩伝送路21に対して、通信端末31の漏洩伝送路32が平行状態を保って移動する場合を示している。このときの電磁波の通信のし易さを現す結合損失を、横軸を移動距離で現したものが図5(B)である。なお、図5(A)において、符号21b及び32bは電磁ビームを表している。結合損失Lcは、例えば、無線基地局20の漏洩伝送路21への入射パワーをPinとし、通信端末31の漏洩伝送路32からの出力電力をPoutとすると、(1)式で計算される。
【0028】
Lc=10Log(Pout/Pin) …(1)
漏洩伝送路(LCX)21、32は、指向性の半値幅が5度であるように急峻な指向性を有する。従って、この指向性以外の角度から到来する電磁ビームなど(例えば、不要ノイズ)は除去できる。その結果、通信端末31の位置に対する結合損失は、図5(B)の実線に示すよう、60dB程度で安定している。仮に、通信端末31のアンテナが無指向性のダイポールアンテナであれば、壁面などからの不要な反射ビームが到来する位置では、結合損失が乱れて安定した通信ができない。この状態では、例えば、結合損失が80dB程度に劣化する(図5(B)の破線参照)。
【0029】
次に、無線基地局20の漏洩伝送路21に対して、通信端末31の漏洩伝送路32の平行度合いが劣化した掲合を検討する。
【0030】
図6(A)は、両漏洩伝送路21及び32の平行度合いが一部で7.5度だけずれた場合を示している。平行度が劣化している部分では、双方の電磁ビーム方向も正対しないので、結合損失は大きくなると推定できる。両漏洩伝送路21及び32の平行度合いが一部で7.5度だけずれた場合における、通信端末31の位置に対して結合損失を測定した結果を図6(B)に示している。図6(B)から、平行度が劣化すると、結合損失が約10dBほど大きくなること、すなわち、通信品質が劣化することが分かる。
【0031】
図7は、あるLCX(漏洩伝送路)について、周波数2.4GHzでの指向性を測定した結果を示している。これは、図7に示すように、長さ1mのLCX40を水平において回転させ、その位置から3m離れた位置においた標準ダイポールアンテナを仕様してLCX40の指向性を測定したものである。
【0032】
この図7からは、LCX40の最大放射電力の10dBダウン角度が15度であることが分かり、図6(B)の測定結果は当然と考えられる。
【0033】
図8(A)は、両漏洩伝送路21及び32の平行度合いが一部でさらに劣化した場合を示している。図8(A)は、平行度合いが一部で12.5だけずれた場合を示している。この場合における、通信端末31の位置に対して結合損失を測定した結果を図8(B)に示している。図8(B)から、平行度が劣化した部分では、結合損失が約20dBほど大きくなること、すなわち、通信品質が大きく劣化することが分かる。上述した図7からは、LCX40の最大放射電力の20dBダウン角度が25度であることが分かり、図8(B)の測定結果は当然と考えられる。
【0034】
結合損失の大きさは小さいことが望ましい。しかし、それは漏洩伝送路(LCX)を布設する精度や、漏洩伝送路自身での減衰量や、漏洩伝送路と機器とのコネクタ接続損失などの存在で不可能である。一般的に、結合損失の急激な変動は10dB程度であれば、安定な通信が可能と考えられる。そこで、この第1の実施形態では、平行からのずれが±7.5の範囲内を「平行」と見なすことにした。
【0035】
上記第1の実施形態によれば、無線基地局における漏洩伝送路が曲折箇所などを有するため、移動体の移動経路に平行でない部分を含んでいても、移動通信端末のアンテナとして、無線基地局の漏洩伝送路と平行関係にあるときに通信に有効に機能する漏洩伝送路と、移動通信端末の漏洩伝送路が無線基地局の漏洩伝送路と平行と見なせないときに通信に有効に機能する送受信アンテナとを設けているので、システム構成を複雑とすることなく、しかも、簡単なシステムの構築作業によって、無線基地局と通信端末との良好な通信を保証し得る。
【0036】
すなわち、無線基地局と通信端末との良好な通信を保証するために、特許文献1の記載技術とは異なり、無線基地局の漏洩伝送路側に新たな構成要素を設ける必要はなく、システムの構築作業を簡単なものとすることができる。また、移動通信端末の指向方向を制御して切り替えるようなことも不要とすることができる。
【0037】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第2の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0038】
図9は、第2の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0039】
図9において、第2の実施形態に係る移動体通信システム10Aも、無線基地局20及び移動体30Aを備え、移動体30Aの内部構成が第1の実施形態のものと異なっている。
【0040】
第2の実施形態の移動体30Aは、第1の実施形態の送受信アンテナ34に代えて、漏洩伝送路34Aを有し、この漏洩伝送路34Aは終端器35によって終端されている。
【0041】
漏洩伝送路34Aは、無線基地局20の漏洩伝送路21のうち、中間の漏洩伝送路部分21−2と平行関係を確立できるように延びている。但し、漏洩伝送路34Aは、無線基地局20の漏洩伝送路21のうち、両端の漏洩伝送路部分21−1、21−3との平行関係を確立することはできない。
【0042】
従って、この第2の実施形態では、移動体30Aが、漏洩伝送路21の第2の部分21−2の近傍NB2に位置している場合、移動体30Aの漏洩伝送路34Aの輻射方向が漏洩伝送路部分21−2の輻射方向に正対し、漏洩伝送路部分21−2と漏洩伝送路34Aとの結合の方が有効に機能する。
【0043】
上記第2の実施形態によれば、送受信アンテナ34に代えて、そのアンテナと同様に機能する漏洩伝送路34Aを移動体30Aが有するので、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0044】
(C)第3の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第3の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0045】
図10は、第3の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第2の実施形態に係る図9との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0046】
図10において、第3の実施形態に係る移動体通信システム10Bも、無線基地局20及び移動体30Bを備え、移動体30Bの内部構成が既述した実施形態のものと異なっている。
【0047】
図10及び図9の比較から明らかなように、第3の実施形態に係る移動体30Bは、通信端末31Bから1本の漏洩伝送路36Bが延びており、この漏洩伝送路36Bは終端器37によって終端されている。通信端末31Bから延びている漏洩伝送路36Bが1本であるので、第3の実施形態の場合、通信端末31Bの内部にはダイバーシティ回路は設けられていない。
【0048】
漏洩伝送路36Bは、1箇所の曲折点P3を有し、曲折点P3から通信端末31Bに近い方の部分36B−1と、曲折点P3から終端器37に近い方の部分36B−2とで延長方向が異なっている。漏洩伝送路部分36B−1は、無線基地局20の漏洩伝送路21のうち、両端の漏洩伝送路部分21−1、21−3との平行関係を確立できるように延びており、漏洩伝送路部分36B−2は、無線基地局20の漏洩伝送路21のうち、中間の漏洩伝送路部分21−2との平行関係を確立できるように延びている。
【0049】
従って、この第3の実施形態では、移動体30Bが、漏洩伝送路21の第1の部分21−1の近傍NB1や漏洩伝送路21の第3の部分21−3の近傍に位置している場合(後者の図示は省略している)、移動体30Bにおいて、漏洩伝送路部分21−1、21−3の輻射方向に、輻射方向が正対する漏洩伝送路部分36B−1が有効に機能する。
【0050】
また、移動体30Bが、漏洩伝送路21の第2の部分21−2の近傍NB2に位置している場合、移動体30Bにおいて、漏洩伝送路部分21−2の輻射方向に、輻射方向が正対する漏洩伝送路部分36B−2が有効に機能する。
【0051】
第2の実施形態では、無線基地局20の漏洩伝送路21の異なる延長方向の漏洩伝送路部分と輻射方向が正対するように複数の漏洩伝送路32及び34Aが通信端末31Aに対して並列的に設けられ、一方、第3の実施形態では、無線基地局20の漏洩伝送路21の異なる延長方向の漏洩伝送路部分と輻射方向が正対するように複数の漏洩伝送路36B−1、36B−2が通信端末31Aに対して直列的に設けられているが、第3の実施形態によっても、第2の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0052】
(D)第4の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第4の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0053】
図11は、第4の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第2の実施形態に係る図9との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0054】
図11において、第4の実施形態に係る移動体通信システム10Cも、無線基地局20及び移動体30Cを備えている。
【0055】
第4の実施形態に係る移動体通信システム10Cの場合、無線基地局20からの漏洩伝送路21Cの布設曲線形状が第2の実施形態のものと異なっており、また、移動体30Cの内部構成も第2の実施形態のものと異なっている。
【0056】
漏洩伝送路21Cは、無線基地局20から直線状に延びている第1の部分21C−1と、この第1の部分21C−1に続く、半径(曲率半径)がR1の中心角がπ/4の円弧状の第2の部分21C−2と、この第2の部分21C−2に続く、直線状に延びている第3の部分21C−3とに分かれている。なお、第2の部分21C−2の形状が円弧以外の形状であっても良い。
【0057】
移動体30Cの移動経路RTCも、漏洩伝送路21Cの漏洩伝送路部分21C−1及び21C−3にそれぞれ平行な直線部分RTC−1、RTC−3と、漏洩伝送路部分21C−2に平行な半径(曲率半径)がR2の円弧部分RTC−2とに分かれている。例えば、移動経路RTCには、レール(案内路)が布設されており、レールによる案内移動により、移動体30Cの向きが自然に変化するようになされている。
【0058】
第4の実施形態の移動体30Cは、漏洩伝送路21Cの直線部分21C−1及び21C−3の輻射方向と正対する漏洩伝送路32と、漏洩伝送路21Cの円弧部分21C−2の輻射方向と正対する漏洩伝送路34Cとを並列的に有する。
【0059】
移動体30Cが漏洩伝送路21Cの円弧部分21C−2の近傍に位置するときに、漏洩伝送路34Cの指向方向(輻射方向)と、漏洩伝送路21Cの円弧部分21C−2における各部の指向方向とのずれが、上述した平行とみなせる±7.5度以内に収まるように、漏洩伝送路34Cの曲線形状が選定されている。例えば、漏洩伝送路34Cを、半径が(R1+R2)/2の円弧状に形成する。
【0060】
以上の点を除けば、第4の実施形態も第2の実施形態と同様であり、第4の実施形態によっても、第2の実施形態と同様な効果を奏することができる。第4の実施形態によれば、無線基地局20からの漏洩伝送路21Cが曲線形状を有する場合にも、対応することができる。
【0061】
(E)第5の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第5の実施形態を、図面を参照して簡単に説明する。
【0062】
図12は、第5の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第3の実施形態に係る図10との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0063】
図12において、漏洩伝送路21Dは、無線基地局20から直線状に延びている第1の部分21D−1と、この第1の部分21D−1に続く、半径(曲率半径)がR3の中心角がπ/4の円弧状の第2の部分21D−2と、この第2の部分21D−2に続く、半径(曲率半径)が−R3の中心角がπ/4の円弧状の第3の部分21D−3と、この第3の部分21D−3に続く、直線状に延びている第4の部分21D−4とに分かれている。
【0064】
移動体30Dの移動経路RTDは、漏洩伝送路21Dに平行なように選定されている。第5の実施形態の移動体30Dは、漏洩伝送路21Dの直線部分21D−1及び21D−4の輻射方向と正対する漏洩伝送路部分36D−2と、漏洩伝送路21Dの一方の円弧部分21D−2の輻射方向と正対する漏洩伝送路部分36D−1と、漏洩伝送路21Dの他方の円弧部分21D−3の輻射方向と正対する漏洩伝送路36D−3とを直列的に接続した漏洩伝送路36Dとを有している。各漏洩伝送路部分36D−1、36D−2、36D−3はそれぞれ、移動体30Dが、漏洩伝送路21Dの輻射方向が正対する部分の近傍に位置するときに、平行とみなせる±7.5度以内の正対を達成できる形状に選定されており、これにより有効な通信を実現させる。
【0065】
第5の実施形態によっても、第3の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0066】
(F)第6の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第6の実施形態を、図面を参照して簡単に説明する。
【0067】
図13は、第6の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示しており、第3の実施形態に係る図10との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0068】
図13において、無線基地局20からの漏洩伝送路21Eは、例えば、直線状の布設を意図したものであるが、障害物の回避などによって、基準となる直線形状に対して種々の凹凸形状を含むように布設される。そのため、指向方向(輻射方向)も、直線部分での指向方向DRだけでなく、直線部分での指向方向DRより大きい方にずれた指向方向や、直線部分での指向方向DRより小さい方にずれた指向方向が生じる。図13において、指向方向DRmaxは、直線部分での指向方向DRより大きい方にずれた指向方向の中の最大値を示しており、指向方向DRminは、直線部分での指向方向DRより小さい方にずれた指向方向の中の最小値(小さい方向へ最もずれているときの指向方向)を示している。
【0069】
第6の実施形態の場合、移動体30Eは、無線基地局20からの漏洩伝送路21Eの基準直線に平行に移動するものである。
【0070】
移動体30Eの漏洩伝送路36Eは、漏洩伝送路21Eにおける直線部分での指向方向DRより大きい方にずれた指向方向に正対する部分36E−1と、漏洩伝送路21Eにおける直線部分での指向方向DRに正対する部分36E−2と、漏洩伝送路21Eにおける直線部分での指向方向DRより小さい方にずれた指向方向に正対する部分36E−3とを有している。
【0071】
漏洩伝送路部分36E−1は、最大指向方向DRmaxから直線部分での指向方向DRまで正対する部分を有するように、最大指向方向DRmax(若しくはこれより多少大きい指向方向)と正対する指向方向を実現する曲率半径から、直線部分での指向方向DRと正対する指向方向を実現する曲率半径へ、徐々に曲率半径が変化していく曲線形状を有している。
【0072】
また、漏洩伝送路部分36E−3は、直線部分での指向方向DRから最小指向方向DRminまで正対する部分を有するように、直線部分での指向方向DRと正対する指向方向を実現する曲率半径から、最小指向方向DRmin(若しくはこれより多少小さい指向方向)と正対する指向方向を実現する曲率半径へ、徐々に曲率半径が変化していく曲線形状を有している。
【0073】
従って、移動体30Eの直線移動により、移動体30Eに近い位置の漏洩伝送路21Eの指向方向が、最大指向方向DRmax〜最小指向方向DRminの範囲内で変化しても、移動体30Eの漏洩伝送路36Eのいずれかの部分の指向方向が正対し、通信を有効に実行することができる。
【0074】
以上のように、第6の実施形態によっても、第3の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0075】
(G)第7の実施形態
次に、本発明による通信端末及び移動体通信システムの第7の実施形態を、図面を参照して簡単に説明する。
【0076】
第7の実施形態の場合、移動体30Fの構成が第6の実施形態のものと異なっている。図14は、第7の実施形態に係る移動体30Fの概略構成を示す説明図である。無線基地局の構成については、第6の実施形態と同様であるので、上述した図13での符号を適用する。
【0077】
移動体30Fの漏洩伝送路36Fが布設された面と、無線基地局20からの漏洩伝送路21Eが布設された面とが、共に平面であって同一面であることは好ましい。しかしながら、実際上、無線基地局20からの漏洩伝送路21Eはあらゆる方向に曲がっている可能性が高い。図13は、無線基地局20からの漏洩伝送路21Eについて、紙面上での曲がりだけを示しているが、紙面の垂直方向の曲がりなどもあり得る。
【0078】
そこで、この第7の実施形態では、移動体30Fに、漏洩伝送路36Fの回転機構38を設け、通信端末32が回転機構38の回転を制御できるようにした(なお、漏洩伝送路36Fと通信端末31Fとが一体となって回転するようにしても良い)。例えば、通信端末32は、漏洩伝送路36Fを前後にごく僅か回転させて受信レベルの極大値を探索し、このような制御動作を継続させることにより、常時、受信レベルが良好になるように制御する。
【0079】
第7の実施形態によれば、移動体が、その漏洩伝送路の回転機構を設け、指向方向が良好な回転位置を探索するようにしたので、既述した実施形態以上に安定した通信を期待できる。
【0080】
(H)他の実施形態
本発明は、上記各実施形態のものに限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0081】
上記各実施形態の技術思想で組み合わせ可能なものは組み合わせて適用するようにしても良い。例えば、第7の実施形態の技術思想と、いずれかの他の実施形態の技術思想とを組み合わせるようにしても良い。
【0082】
上記各実施形態の説明では、無線基地局側が固定のものを示したが、逆に、上記各実施形態の無線基地局が移動し、上記各実施形態の移動体が固定のものであっても良い。また、上記各実施形態における無線基地局及び移動体が共に移動するものであっても良い。
【0083】
上記各実施形態では、無線基地局から1本の漏洩伝送路が延びているものを示したが、無線基地局を中心とし、左右のそれぞれに漏洩伝送路が延びている場合にも、本発明を適用することができる。この場合、例えば、移動体も、通信端末から両方向に、無線基地局の各漏洩伝送路の輻射方向に正対する構成を設けるようにすれば良い。
【0084】
上記各実施形態では、無線基地局からの漏洩伝送路と、移動体の漏洩伝送路とが同種類のものであることを想定していたが、輻射方向が同じ(平行)であれば、直径などが異なっていても良い。
【0085】
上記第7の実施形態では、移動体に1個の回転機構を設けたものを示したが、2個以上の回転機構を設け、複数の回転軸を中心として回転可能としても良い。例えば、図14の紙面の法線方向を回転軸とする回転機構を追加するようにしても良い。さらには、XYθステージやXYZθステージなどに、移動体の漏洩伝送路を取り付け、回転だけでなく、平行にも移動制御できるようにしても良い。
【0086】
図11に示したような移動体が向きを変更しながら移動する場合において、上述した回転機構によって、移動体の向きを変更するようにしても良い。例えば、移動体が、天井のレールから吊されている場合には、回転機構による向きの制御は有効である。
【0087】
上記各実施形態の説明では、無線基地局からの漏洩伝送路におけるある部分に輻射方向が正対する移動体の漏洩伝送路部分(又は送受信アンテナ)は、無線基地局からの漏洩伝送路における他の部分とは平行度が満足しない(平行ではない)ように説明したが、他の部分との平行度を満足していても良い。
【0088】
上記各実施形態においては、複数の漏洩伝送路部分を、通信端末に対し直列的又は並列的に接続したものを示したが、直列及び並列を組み合わせて通信端末に接続させるようにしても良い。例えば、移動体における漏洩伝送路の部分数が4個の場合であれば、2つずつを直列に接続させ、そのような2つの直列体を通信端末に並列に接続させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図2】通信に供する2つの漏洩伝送路の指向方向が正対している場合の通信特性を示す説明図である。
【図3】通信に供する2つの漏洩伝送路部分の指向方向が正対していない場合の通信特性を示す説明図である。
【図4】漏洩伝送路及び送受信アンテナが通信に供する場合の通信特性を示す説明図である。
【図5】通信に供する2つの漏洩伝送路部分が平行状態である場合の結合損失の説明図である。
【図6】通信に供する2つの漏洩伝送路部分が平行状態から7.5度だけずれている場合の結合損失の説明図である。
【図7】任意の漏洩伝送路について所定周波数での指向性を測定した結果を示す特性図である。
【図8】通信に供する2つの漏洩伝送路部分が平行状態から12.5度だけずれている場合の結合損失の説明図である。
【図9】第2の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図10】第3の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図11】第4の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図12】第5の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図13】第6の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【図14】第7の実施形態に係る移動体の概略構成を示す説明図である。
【図15】従来公報の第1の実施形態に係る移動体通信システムの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0090】
10、10A〜10E…移動体通信システム、
20…無線基地局(AP)、
21、21C、21D、21E…漏洩伝送路、
21−1〜21−3、21C−1〜21C−3、21D−1〜21D−4…漏洩伝送路部分、
22、…終端器、
30、30A〜30F…移動体、
31、31B、31D…通信端末(通信端末本体)、
32、34A、36B、34C、36D〜36F…漏洩伝送路、
32−1〜32−3、36B−1、36B−2、36D−1〜36D−3、36E−1〜36E−3…漏洩伝送路部分、
33、35、37…終端器、
34…送受信アンテナ、
38…回転機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路、又は、延長方向が異なる2つの直線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路をアンテナとして適用している基地局と通信を行う通信端末において、
当該通信端末が上記基地局の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動するものであり、
上記基地局の上記漏洩伝送路の一部又は全ての部分の輻射方向と、輻射方向が正対する通信端末側漏洩伝送路を、少なくとも一部のアンテナ要素として通信端末本体に接続している
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
両輻射方向の方向差が180±7.5度の範囲内にあることを正対と見なすことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
上記通信端末側漏洩伝送路の延長方向は、輻射方向が正対する上記基地局の上記漏洩伝送路部分の布設角度に合致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項4】
上記通信端末側漏洩伝送路が有する曲率が、輻射方向が正対する上記基地局の上記漏洩伝送路部分の曲率と略一致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項5】
漏洩伝送路以外の形式のアンテナ要素でなる非漏洩アンテナ要素をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項6】
上記通信端末本体は、自己に並列接続されている、複数の上記アンテナ要素から択一的に1つを有効とする選択手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の通信端末。
【請求項7】
上記通信端末本体は、自己に並列接続されている、複数の上記アンテナ要素からの受信信号を合成処理する合成手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の通信端末。
【請求項8】
上記基地局の上記漏洩伝送路の輻射方向と正対する部分が異なる、複数の通信端末側漏洩伝送路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項9】
複数の上記通信端末側漏洩伝送路が、上記通信端末本体に並列接続されていることを特徴とする請求項8に記載の通信端末。
【請求項10】
複数の上記通信端末側漏洩伝送路が直列に接続され、この直列体が上記通信端末本体に接続されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の通信端末。
【請求項11】
全て又は一部の上記通信端末側漏洩伝送路が回転機構に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の通信端末。
【請求項12】
曲線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路、又は、延長方向が異なる2つの直線部分を少なくとも一部に含む漏洩伝送路をアンテナとして適用している第1の通信端末と、この第1の通信端末と通信する第2の通信端末とを備え、上記第2の通信端末が上記第1の通信端末の上記漏洩伝送路に沿って相対的に平行移動する移動体通信システムであって、
上記第2の通信端末として、請求項1〜11のいずれかに記載の通信端末を適用したことを特徴とする移動体通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−171458(P2009−171458A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9712(P2008−9712)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】