説明

通信装置、通信システム及び通信方法

【課題】ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる通信装置、通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】無線通信部40と無線通信タグ70との間で無線通信を行う場合に、無線通信タグ70は、無線通信部40に対して、複数の異なる周波数(第1周波数、第2周波数)の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、無線通信部40は、無線通信タグ70から複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う通信装置、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置には、メンテナンスを容易にするために、トナーを収容する容器が装置本体に対して着脱可能なトナーカートリッジとして構成されたものがある。このような画像形成装置では、トナーカートリッジ内から全てのトナーが排出されると、ユーザによりトナーカートリッジが新しいものに交換され、トナー補給が行われる。このとき、画像形成装置から取り外された使用済みトナーカートリッジは、多くの場合、ユーザから画像形成装置のメーカーへ返却され、メーカーにより検査、清掃、消耗部品の交換、トナーの再充填等のリサイクル工程を経て、ユーザへ再出荷される。
【0003】
さらに、上記のような画像形成装置には、感光体にトナーを付着させる現像器、感光体からのトナー像の転写完了後に残留トナーを回収するクリーニング器、感光体の像担持面を所定電位に帯電する帯電器等のプロセス部品の少なくとも1個以上が感光体と共に一体的に支持されるカートリッジ部品、所謂、プロセスカートリッジとして構成され、これらを装着することで画像を形成するものもある。プロセスカートリッジを構成する各種部品のうち何れかの耐用期間が経過した場合には、プロセスカートリッジが新しいものに交換される。このようなプロセスカートリッジも、多くの場合、ユーザからメーカーへ返却され、メーカーにより検査、清掃、耐用期間が経過した部品の交換等のリサイクル工程を経て、画像形成装置を使用するユーザへ再出荷される。
【0004】
近年、トナーカートリッジやプロセスカートリッジ等のカートリッジ部品にカートリッジ固有の情報や使用履歴等を記憶するための記憶手段(不揮発性メモリ)及び通信機能を有するタグ(無線通信タグ)を取り付け、このタグと無線通信装置を備えた画像形成装置本体との間で通信を行って、カートリッジの装填状態を確認したり、カートリッジの使用履歴を管理することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照。)。画像形成装置本体とカートリッジに取り付けられた無線通信タグとの間の無線通信では、本体側とカートリッジ側との間の通信に使用される搬送波の周波数は予め定められており、この予め定められた周波数の搬送波を使用して相互に通信が行われる。
【0005】
しかしながら、通信中に画像形成装置内部や画像形成装置外部から電磁ノイズが混入し、該電磁ノイズの周波数が上記予め定められた周波数と同一か、あるいは接近している場合には、通信が混信してしまい、画像形成装置とカートリッジの無線通信タグとの間で通信ができなくなる場合がある。
【0006】
従来、通信エラーが生じた場合には、通信タイミングをずらし、再度通信を行って、時間軸方向にノイズを回避するようにしている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開2003−242467号公報
【特許文献2】特開2003−300359号公報
【特許文献3】特開2004−029557号公報
【特許文献4】特開2001−215849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノイズの混入が一過性のものであれば、上記方法で混信の問題を回避することができるが、ノイズの混入が長時間継続している場合には、いつまでも通信が成功しない状態が継続したり、あらかじめ設定されているリトライ回数を越えてしまい、正常に通信を行うことができないまま通信終了となるような事態が生じる。通信エラーが回避できないと、カートリッジを使用した正常な画像形成動作を行うことができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる通信装置、通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明の通信装置は、外部装置との間で無線通信を行う通信装置であって、前記外部装置から複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調して送信された複数の被変調波を各周波数毎に受信する受信手段と、前記受信手段で受信された被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行う処理手段と、を含んで構成されている。
【0010】
このように、複数の異なる周波数の搬送波を変調して送信された被変調波が示す情報のうち、通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うようにしたため、複数の異なる周波数にノイズの周波数に一致または近接した周波数が含まれている場合であっても、その周波数以外の、ノイズの影響を受けない他の周波数の搬送波で送信された情報を用いることができる。従って、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0011】
なお、前記受信手段を、前記複数の被変調波の各々を異なるタイミングで受信するか、または同一のタイミングで受信するように構成することができる。
【0012】
また、前記受信手段は、前記複数の被変調波を受信する受信回路を前記異なる複数の周波数に対応して複数個備え、該複数個の受信回路のうち一部の受信回路を外付けの回路で構成することもできる。
【0013】
このように、受信回路を外付け回路で構成することによって、必要に応じて通信装置本体に外付け回路を接続すればよいため、例えば、通信装置本体がノイズが生じにくい環境に設置される場合は、外付け回路無しで通信装置本体を使用することができ、複数の受信回路を予め備えた構成とするよりも、コストを低く抑えることができる。
【0014】
なお、前記複数の異なる周波数は、下記の2式の少なくとも一方を用いて算出した周波数fであってもよい。
f=f0/n
および
f=m×f0±f0/n
ただし、f0は通信装置本体から前記外部装置へ送信する搬送波の周波数、nは2以上の整数、mは1以上の整数である。
【0015】
これにより、受信手段の回路の製造が容易になる。
【0016】
また、第2の発明の通信装置は、外部装置との間で無線通信を行う通信手段と、前記通信手段による所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合に、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信が行われるように前記通信手段を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0017】
このように、所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合に、通信エラーが検出された搬送波の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信を行うようにしたため、ノイズの周波数に一致または近接した周波数の搬送波を用いて通信した場合であっても、その周波数以外の、ノイズの影響を受けない他の周波数の搬送波を用いて再度通信することができる。従って、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0018】
なお、第2の発明の通信装置は、前記通信手段で通信エラーが検出されなかった通信に用いられた搬送波の周波数を記憶する記憶手段を更に備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された周波数の搬送波を用いて次回以降の通信が行われるように前記通信手段を制御することができる。
【0019】
これにより、次回以降の通信を円滑に行うことができる。
【0020】
前記通信手段は、互いに異なる周波数の搬送波を用いて通信する通信回路を複数個備え、該複数個の通信回路のうち一部の通信回路を外付けの回路で構成することができる。
【0021】
このように、通信回路を外付け回路で構成することによって、必要に応じて通信装置本体に外付け回路を接続すればよいため、例えば、通信装置本体がノイズが生じにくい環境に設置される場合は、外付け回路無しで通信装置本体を使用することができ、複数の通信回路を予め備えた構成とするよりも、コストを低く抑えることができる。
【0022】
前記所定の周波数及び前記所定の周波数とは異なる周波数は、下記の2式の少なくとも一方を用いて算出した周波数fであってもよい。
f=f0/n
および
f=m×f0±f0/n
ただし、f0は通信装置本体から前記外部装置へ送信する搬送波の周波数または前記外部装置から通信装置本体へ送信する搬送波の周波数、nは2以上の整数、mは1以上の整数である。
【0023】
これにより、通信手段の回路の製造が容易になる。
【0024】
なお、第1及び第2の発明の通信装置は、前記外部装置に対して着脱可能な部材に設けることができる。
【0025】
例えば、外部装置を画像形成装置とした場合には、該画像形成装置に対して着脱可能なトナーカートリッジやプロセスカートリッジ等のカートリッジ部品等に設けることができる。
【0026】
また、第1及び第2の発明の通信装置は、通信装置本体に対して着脱可能な部材に設けられた外部装置との間で無線通信を行うことができる。
【0027】
例えば、通信装置を画像形成装置とした場合には、該画像形成装置に対して着脱可能なトナーカートリッジやプロセスカートリッジ等のカートリッジ部品等に設けられた外部装置との間で無線通信を行うことができる。
【0028】
第3の発明の通信システムは、第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信システムであって、前記第1の装置は、前記第2の装置に対し複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うものである。
【0029】
このように、第2の装置において、第1の装置から受信した複数の被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うようにしたため、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0030】
第4の発明の通信システムは、第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信システムであって、前記第1の装置と前記第2の装置との間で所定の周波数の搬送波を用いて無線通信を行い、該所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合には、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信を行うものである。
【0031】
このように、第1及び第2の装置において通信エラーが検出された場合に、通信エラーが検出された搬送波の周波数とは異なる周波数の搬送波で再度無線通信を行うようにしたため、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0032】
第5の発明の通信方法は、第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信方法であって、前記第1の装置は、前記第2の装置に対し複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うものである。
【0033】
第5の発明の通信方法も、第3の発明の通信システムと同様に作用するため、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0034】
第6の発明の通信方法は、第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信方法であって、前記第1の装置と前記第2の装置との間で所定の周波数の搬送波を用いて無線通信を行い、該所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合には、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信を行うものである。
【0035】
第6の発明の通信方法も、第4の発明の通信システムと同様に作用するため、ノイズが継続的に混入する環境にあっても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、ノイズが継続的に混入する環境にあってもノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる、という優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置10は、公知の電子写真プロセスにより、入力画像情報に基づいて画像(トナー像)を形成し、この画像を記録紙等に記録するものである。ここで、電子写真プロセスとは、電子写真感光体に対する帯電、レーザー露光による静電潜像の形成、トナーによる静電潜像の現像を経て電子者写真感光体上に形成されたトナー像を記録材に転写し、これを加熱定着することで記録材に画像を記録する一連のプロセスのことであり、本実施形態に係る画像形成装置10は、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及びシアン(C)のトナーを用いたカラー画像形成が可能に構成されている。
【0039】
画像形成装置10には、装置の外殻部として筐体12が設けられており、この筐体12内には、装置を構成する各種部品を支持するためのメインフレーム14が設けられている。メインフレーム14には、装置の幅方向(矢印W方向)に沿った一端部(図1では左端部)にプロセスユニット16が配置されている。このプロセスユニット16には、メインフレーム14により装置の奥行方向に沿ってスライド可能に支持されたスライドフレーム18が設けられており、このスライドフレーム18には、中間転写ベルト、転写器、クリーニング器等の所定のプロセス部品(図示省略)が搭載されている。これにより、メンテナンス時には、プロセスユニット16をメインフレーム14内から外部へ引き出し、スライドフレーム18に搭載されたプロセス部品の交換や点検作業等が簡略化できる。
【0040】
メインフレーム14には、プロセスユニット16に隣接するように4個の感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kが支持されると共に、これらの感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kにそれぞれ接するように4台の現像器22Y、22M、22C、22Kが配置されている。これら4台の現像器22Y、22M、22C、22Kは、それぞれYMCK各色のトナーに対応しており、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの外周面(像担持面)に形成された静電潜像を各色のトナーによりそれぞれ現像する。
【0041】
4個の感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kにそれぞれ形成されたトナー像は、プロセスユニット16側に配置された中間転写ベルト上に転写、重畳されてフルカラーのトナー像を形成する。このフルカラーのトナー像は、中間転写ベルトから、例えば筐体12下部の給紙トレイ24や筐体12に突設された手差しトレイ26から搬送された記録用紙に転写された後、加熱定着され記録材に記録される。また画像形成装置10では、Kトナーのみで形成されたモノクロのトナー像を記録材へ記録することも可能とされている。トナー像が記録された記録材は、筐体12の上面部に形成された排紙トレー部28上又は、筐体12の側面部に側方へ延出するように取り付けられた排紙トレー30,32上へ排紙される。
【0042】
画像形成装置10には、幅方向に沿ってメインフレーム14に隣接するようにカートリッジホルダ34が設けられている。このカートリッジホルダ34には、それぞれ略円柱状に形成された4個のトナーカートリッジ36Y、36M、36C、36Kが着脱可能に装着されている。これらのトナーカートリッジ36Y、36M、36C、36K内には、それぞれ内部に異なる色のトナー(イエロー(Y)トナー、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー及びブラック(K)トナー)が充填されている。
【0043】
以下、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kは同一構成であるため、これらを特に区別しないで説明する場合は、符号末尾の添字を省略し、感光体ドラム20と称する。同様に、現像器22Y、22M、22C、22Kは現像器22と称し、トナーカートリッジ36Y、36M、36C、36Kはトナーカートリッジ36と称す。
【0044】
また、筐体12には、片側(図1の紙面手前側)の側面部にプロセスユニット16及びカートリッジホルダ34に対向してメンテナンス用の開閉扉13が開閉可能に設けられている。これにより、ユーザ等は、開閉扉13を開放させ、プロセスユニット16及びカートリッジホルダ34を外部に露出させることで、プロセスユニット16をメインフレーム14内から外側へ引き出し、またカートリッジホルダ34に対してトナーカートリッジ36をそれぞれ着脱することが可能になる。
【0045】
カートリッジホルダ34に装着されたトナーカートリッジ36はトナーを一時的に収容するための容器として構成されている。画像形成装置10では、現像器22の作動時に、トナーカートリッジ36内からトナーを排出させ、トナー給送管38(38Y、38M、38C、38K)を介してこのトナーを現像器22に供給し、またトナーカートリッジ36内に充填されたトナーが全て排出されると、そのトナーカートリッジ36が新しいものに交換される。トナーはトナーカートリッジ36内に密封されていることから、画像形成装置10に対するトナー補給を簡単な作業で行え、またトナー補給時におけるトナー飛散による装置内外の汚染も効果的に防止できる。
【0046】
カートリッジホルダ34に装着される各トナーカートリッジ36には、不揮発性メモリを有する無線通信タグがそれぞれ取り付けられている。トナーカートリッジ36がカートリッジホルダ34に装着された状態で、画像形成装置10に設けられた無線通信部とトナーカートリッジ36の無線通信タグの各々との間で無線通信が行われる。
【0047】
図2は、画像形成装置10に設けられた無線通信部と、トナーカートリッジ36の各々に設けられた無線通信タグの概略構成図である。なお、各トナーカートリッジ36(36Y、36M、36C、36K)に設けられた各無線通信タグは全て同一構成であるため、ここでは1つを代表し、無線通信タグ70として説明する。
【0048】
図2に示すように、画像形成装置10に設けられた無線通信部40は、カートリッジホルダ34に配置されたアンテナ44を備え、アンテナ44には送信回路50、第1周波数受信回路62、第2周波数受信回路64が接続されている。送信回路50は、予め定められた周波数f0の搬送波を送信すべき情報を示す信号により変調して、アンテナ44へ出力する。これにより、アンテナ44からは、情報を示す信号に対応する被変調波が出力される。第1周波数受信回路62は、第1周波数f1の搬送波が変調された被変調波を受信するための回路であり、該被変調波を受信したときに、該受信した被変調波を復調した後、CPU42に出力する。第2周波数受信回路64は、第2周波数f2の搬送波が変調された被変調波を受信するための回路であり、該被変調波を受信したときに、該受信した被変調波を復調した後、CPU42に出力する。
【0049】
第1周波数f1と第2周波数f2とは、互いに異なる周波数である。具体的には、一方の周波数がノイズの干渉を受けても、他方の周波数はそのノイズの影響をほとんど受けないように、第1周波数f1と第2周波数f2はある程度離しておくことが望ましい。
【0050】
なお、第1周波数f1及び第2周波数f2は、送信回路50で送信される搬送波の周波数f0を基準の周波数として、以下に示す数式(1)及び数式(2)の少なくとも一方を用いて算出された2つの異なる周波数fを用いることができる。
f=f0/n ・・・(1)
f=m×f1±f1/n ・・・(2)
ただし、nは2以上の整数、mは1以上の整数である。
【0051】
周波数f0が100Hzの場合の、数式(1)を用いた算出結果の具体例は以下のとおりである。
n=2の場合: f=f0/2=50Hz
n=4の場合: f=f0/4=25Hz
また、周波数f0が100Hzの場合の、数式(2)を用いた算出結果の具体例は以下のとおりである。
n=2、m=1の場合:
f=f0−(f0/2)=50Hz、f=f0+(f0/2)=150Hz
n=4、m=1の場合:
f=f0−(f0/4)=75Hz、f=f0+(f0/4)=125Hz
なお、トナーカートリッジ36側の無線通信タグ70で本来通信に使用する送信周波数は、画像形成装置側の無線通信部40の送信周波数f0をnで除した値を用いることが多いが、上記数式により算出した周波数fを使用すれば、通信時に副次的に発生してしまう周波数(スプリアスやイメージ等)を利用することができる。
【0052】
また、上記数式により算出した周波数fを使用することにより、受信回路や送信回路の製造が容易になる。
【0053】
なお、高い周波数は電波が微弱になることから、比較的低めの周波数(例えば、f0±(f0/2)の2つの周波数等)を第1周波数f1及び第2周波数f2として使用することが好ましい。
【0054】
送信回路50、第1周波数受信回路62、第2周波数受信回路64は、各々CPU42に接続されている。CPU42は、無線通信部40に設けられた不図示のROMに記憶されたプログラムを実行することにより、これら回路を制御して、無線通信タグ70と無線通信を行う。
【0055】
一方、トナーカートリッジ36に取り付けられる無線通信タグ70は、アンテナ76を備え、アンテナ76には受信回路80、第1周波数送信回路92、第2周波数送信回路94が接続されている。受信回路80は、画像形成装置10側の無線通信部40の送信回路50から周波数f0の搬送波が変調された被変調波をアンテナ76を介して受信し、該受信した情報を復調して、CPU72に出力する。
【0056】
第1周波数送信回路92は、前述の第1周波数f1の搬送波を用いて情報を送信するための回路であり、第1周波数f1の搬送波を送信すべき情報を示す信号で変調して、アンテナ76へ出力する。また、第2周波数送信回路94は、前述の第2周波数f2の搬送波を用いて情報を送信するための回路であり、第2周波数f2の搬送波を送信すべき情報を示す信号で変調して、アンテナ76へ出力する。
【0057】
受信回路80、第1周波数送信回路92、第2周波数送信回路94は、各々CPU72に接続されている。CPU72は、無線通信タグ70に設けられた不図示のROMに記憶されたプログラムを実行することにより、これら回路を制御して、無線通信部40と無線通信を行う。
【0058】
CPU72には、不揮発性メモリ74が接続されている。不揮発性メモリ74は、CPU72により任意の情報を書き込むと共に、書き込まれた情報から任意のものを読み出すことができる。例えば、トナーカートリッジ36についてのロット番号、製造日、種類、保存期間、認識番号、リサイクル回数、リサイクル回数の上限値、カートリッジの構成部品の交換時期等が書き込まれ、必要に応じて書き込まれた情報の内容が更新される。不揮発性メモリ74からの情報の読み出しや、不揮発性メモリ74に対する情報の書き込み、内容の更新は、画像形成装置10の無線通信部40からの要求に応じて行われる。
【0059】
なお、無線通信タグ70では、電磁誘導によって生じた起電力が無線通信に利用され、電池、バッテリ等の電源が不要な構成となっている。
【0060】
また、上述した無線通信部40や無線通信タグ70で行われる変調や復調は、周知の技術を用いることができ、例えば、デジタル信号を送信する際に一般的な位相変調方式や振幅変調方式等を用いることができる。
【0061】
本実施の形態において、画像形成装置10の無線通信部40とトナーカートリッジ36に取り付けられた無線通信タグ70との間では、以下のように無線通信が行われる。
【0062】
画像形成装置10側の無線通信部40からトナーカートリッジ36側の無線通信タグ70に情報を送信するときには、従来行われている無線通信と同様に行われる。前述したように無線通信部40の送信回路50から、f0の周波数の搬送波を、送信すべき情報を示す信号により変調して送信する。該変調されて送信された被変調波は、無線通信タグ70の受信回路80により受信されて復調され、情報が取り出される。
【0063】
一方、トナーカートリッジ36側の無線通信タグ70から画像形成装置10側の無線通信部40に情報を送信するときには、無線通信タグ70の第1周波数送信回路92から、第1周波数f1の搬送波を送信すべき情報を示す信号により変調した被変調波を送信すると共に、第2周波数送信回路94から、第2周波数f2の搬送波を第1周波数送信回路92で送信する情報と同一の情報を示す信号により変調した被変調波を送信する。すなわち、ここでは、略同一タイミングで第1周波数送信回路92と第2周波数送信回路94から同一の情報を示す信号により変調された被変調波が送信される。また、受信側でパリティチェックを行うことができるように、送信する信号にはパリティビットを付加する。
【0064】
情報の受け側の無線通信部40では、第1周波数送信回路92と第2周波数送信回路94から送信された被変調波のそれぞれが、各周波数に対応した第1周波数受信回路62と第2周波数受信回路64とで受信される。この受信時の処理を、図3を用いて以下に詳細に説明する。
【0065】
図3は、無線通信部40のCPU42で実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
ステップ100では、第1周波数受信回路62と第2周波数受信回路64で被変調波(情報)を受信したか否かを判断する。ここで受信したと判断した場合には、ステップ102に移行し、第1周波数f1の搬送波を用いた通信でエラーが発生しているか否かを判断する。エラーが発生しているか否かは、具体的には次のように判断することができる。
【0067】
まず、受信した2つの被変調波から取り出した情報同士を照合して、一致しているか否かを判断する。一致していれば、第1周波数f1及び第2周波数f2での双方の搬送波を用いた通信でエラーは生じていないものと判断することができる。一方、双方の情報が不一致だった場合には、どちらかでエラーが発生しているものと判断し、第1周波数受信回路62で受信された信号のパリティチェックを行う。これにより正しく伝送された信号であるか否かを判断することができる。パリティチェックの結果、エラーが検出された場合には、第1周波数f1の搬送波を用いた通信でエラーが発生したと判断し、ステップ104に移行し、第2周波数受信回路で受信した情報を用いて処理する。
【0068】
ノイズは通常、特定の周波数にピークを持つスペクトルをなしている。例えば、図4に示すように、通信中に混入したノイズが第1周波数f1に接近した周波数である場合には、混信が生じ、送信された情報にエラーが生じてしまう。一方、第2周波数f2は、第1周波数f1と異なる周波数であり、ノイズから離れた周波数であるためその影響をほとんど受けない。従って、第2周波数f2の搬送波を用いて送信された情報はエラーが無い正しい情報であると判断して、第2周波数受信回路64で受信した情報を用いて処理する。
【0069】
一方、第1周波数f1の搬送波を用いて送信された情報と第2周波数f2の搬送波を用いて送信された情報とが一致していた場合(第1周波数f1及び第2周波数f2ともに通信エラーが発生しなかった場合)、或いはパリティチェックで第1周波数f1の搬送波を用いて送信された情報にエラーが検出されなかった場合には、第1周波数f1の搬送波を用いた通信でエラーが発生しなかったと判断して、ステップ106で、第1周波数受信回路62で受信した情報を用いて処理する。
【0070】
なお、ここでいう受信した情報を用いた処理は、特に限定されないが、例えば、受信した情報にトナーカートリッジ36の種類の情報が含まれていれば、この情報からカートリッジホルダ34にトナーカートリッジ36が誤装着されていないか否かを判断することができ、エラー処理等の必要な制御を行うことができる。また、受信した情報にリサイクル回数が含まれていれば、該リサイクル回数を1インクリメントした値を新たなリサイクル回数として、上記と同様に無線通信を介して、無線通信タグ70の不揮発性メモリ74に記録させる、等の処理を行うこともできる。
【0071】
以上説明したように、トナーカートリッジ36に設けられた無線通信タグ70から、複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、画像形成装置10の無線通信部40は、無線通信タグ70から送信された複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うようにしたため、ノイズが継続的に混入しても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。これにより、画像形成装置10で、ノイズの影響なく画像形成動作を行うことができる。
【0072】
なお、上記実施の形態では、無線通信タグ70から複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を、無線通信部40で同一タイミングで受信する例について説明したが、受信回路を切り替えて異なるタイミングで受信するようにしてもよい。
【0073】
図5は、無線通信部40が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、受信回路を切り替えて異なるタイミングで受信する場合の構成図である。
【0074】
無線通信部40の第1周波数受信回路62及び第2周波数受信回路64とCPU42との間に、切り替えスイッチ46を設け、CPU42は切り替えスイッチ46を切り替えて、第1周波数受信回路62及び第2周波数受信回路64で受信された情報を異なるタイミングで入力する。
【0075】
このような構成の場合には、画像形成装置10の無線通信部40とトナーカートリッジ36に取り付けられた無線通信タグ70との間で、以下のように無線通信が行われる。
【0076】
画像形成装置10側の無線通信部40からトナーカートリッジ36側の無線通信タグ70に情報を送信する場合は、前述と同様に周波数f0の搬送波を用いて送受信が行われる。
【0077】
トナーカートリッジ36側の無線通信タグ70から画像形成装置10側の無線通信部40に情報を送信する場合には、無線通信タグ70の第1周波数送信回路92から、第1周波数f1の搬送波を送信すべき情報を示す信号により変調した被変調波を送信すると共に、第2周波数送信回路94から、第2周波数f2の搬送波を第1周波数送信回路92で送信する情報と同一の情報を示す信号により変調した被変調波を送信する。更に所定時間経過後に、第1周波数送信回路92と第2周波数送信回路94からそれぞれ再度同一の被変調波を送信する。
【0078】
情報の受け側の無線通信部40では、第1周波数送信回路92と第2周波数送信回路94から同一のタイミングで2度送信された2つの被変調波を、第1周波数受信回路62と第2周波数受信回路64とを切り替えスイッチ46により排他的に切り替えて受信する。以下、この受信時の処理を、図6を用いて詳細に説明する。
【0079】
図6は、無線通信部40のCPU42で実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
ステップ200では、切り替えスイッチ46を第1周波数受信回路62に切り替える。
【0081】
ステップ202では、第1周波数受信回路62で被変調波(情報)を受信したか否かを判断する。ここで受信したと判断した場合には、ステップ204に移行し、所定時間経過するまで待機する。所定時間経過後、ステップ206に移行し、切り替えスイッチ46を第2周波数受信回路64に切り替える。
【0082】
ステップ208では、第2周波数受信回路64で被変調波(情報)を受信したか否かを判断する。ここで受信したと判断した場合には、ステップ210に移行し、第1周波数の搬送波を用いた通信でエラーが発生しているか否かを判断する。エラーが発生しているか否かは、前述と同様に判断する。
【0083】
ステップ210で肯定判断した場合には、ステップ212に移行し、第2周波数受信回路64で受信した情報を用いて処理する。
【0084】
ステップ210で否定判断した場合には、ステップ214に移行し、第1周波数受信回路62で受信した情報を用いて処理する。
【0085】
このような構成によっても、上記実施の形態と同様に、複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーの発生していない情報を用いて処理することができるため、ノイズが継続的に混入しても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0086】
また、上記実施の形態では、無線通信タグ70は複数の異なる周波数の搬送波を用いて同一の情報を同一タイミングで送信する例について説明したが、受信回路の切り替えに合わせ、送信する送信回路を切り替えて異なるタイミングで送信するようにしてもよい。
【0087】
図7は、無線通信タグ70が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、送信回路を切り替えて異なるタイミングで送信する場合の構成図である。
【0088】
無線通信タグ70の第1周波数送信回路92及び第2周波数送信回路94とCPU72との間に、切り替えスイッチ78を設け、CPU72は切り替えスイッチ78を切り替えて、第1周波数送信回路92及び第2周波数送信回路94から異なるタイミングで同一の情報を送信させる。
【0089】
このような構成の場合には、画像形成装置10の無線通信部40とトナーカートリッジ36に取り付けられた無線通信タグ70との間で、以下のように無線通信が行われる。
【0090】
画像形成装置10側の無線通信部40からトナーカートリッジ36側の無線通信タグ70に情報を送信する場合は、前述と同様に周波数f0の搬送波を用いて送受信が行われる。
【0091】
トナーカートリッジ36側の無線通信タグ70から画像形成装置10側の無線通信部40に情報を送信する場合には、無線通信タグ70では図8のフローチャートに示す処理の流れで送信する。
【0092】
ステップ300では、切り替えスイッチ78を第1周波数送信回路92に切り替える。
【0093】
ステップ302では、第1周波数送信回路92により、第1周波数f1の搬送波を、送信すべき情報の信号により変調した被変調波を送信する
ステップ304では、所定時間経過したか否かを判断する。所定時間経過したときには、ステップ306に移行し、切り替えスイッチ78を第2周波数送信回路94に切り替える。
【0094】
ステップ308では、第2周波数送信回路94により、第2周波数f2の搬送波を、第1周波数送信回路92で送信した情報と同一の情報を示す信号により変調した被変調波を送信する
情報の受け側の無線通信部40では、異なるタイミングで無線通信タグ70から送信された2つの被変調波を、切り替えスイッチ46により受信回路を切り替えて受信する。受信処理の流れは、前述の図6のフローチャートの通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
このような構成によっても、上記実施の形態と同様に、複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーの発生していない情報を用いて処理することができるため、ノイズが継続的に混入しても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0096】
また、上記実施の形態では、第1周波数受信回路62と第2周波数受信回路64とが、無線通信部40に予め組み込んで構成した場合を例に挙げて説明したが、いずれか一方の受信回路を外付け回路として設けてもよい。
【0097】
図9は、無線通信部40の第2周波数受信回路64を外付け回路として設けた場合の構成図である。同図に示すように、無線通信部40は、無線通信部本体40aと、外付け回路40bとで構成されている。外付け回路40aの第2周波数受信回路64は、切り替えスイッチ46a、46bが第2周波数受信回路64側に切り替えられたときに、CPU42及びアンテナ44に接続される。これにより、必要に応じて無線通信部本体40aに外付け回路40b(第2周波数受信回路64)を接続すればよいため、例えば、画像形成装置10がノイズが生じにくい環境に設置される場合は、該第2周波数受信回路64無しで画像形成装置10を使用することができ、2つの受信回路を予め備えた構成とするよりも、コストを低く抑えることができる。
【0098】
ここで、外付け回路の利点について更に詳細に説明する。RFIDタグやICタグとも呼ばれる無線通信タグ70からの情報を受信する受信回路は、通常の無線受信回路と異なり、画像形成装置10本体から無線通信タグ70へ電力を供給するためのキャリアを出力しながら無線通信タグ70からの微弱な受信信号を検出する必要がある。しかし、このキャリアは無線通信タグ70からの信号と比較してパワーが非常に大きく、これが無線通信タグ70からの信号と一緒に受信回路に入ってくるため、受信回路ではキャリアを抑えながら信号を増幅させなくてはならない。
【0099】
このため、互いに異なる周波数の信号を受信する回路を複数個製造するためには、単純に回路部品の定数を変化させるだけではなく、回路構成自体を変更する必要があり、回路が複雑になってしまうと共に、コストがかかっていた。しかしながら、第2周波数受信回路64を外付け回路とすることにより、簡単な構成で、必要な場合にのみ別途製造した回路を接続することができるため、コストも抑えられる。
【0100】
また、上記実施の形態では、通信エラーの有無に拘わらず、複数の異なる周波数の搬送波を用いて送信された情報を全て受信し、該受信した情報からエラーが検出されなかった情報を用いる例について説明したが、所定の周波数の搬送波で情報を送信し、この通信でエラーが発生した場合にのみ、該所定の周波数とは異なる周波数の搬送波で再度情報を送信するようにしてもよい。
【0101】
以下、図10及び図11を参照して、通信エラーが発生した場合に異なる周波数の搬送波で再送する場合の動作を説明する。なお、画像形成装置10側の無線通信部40と、トナーカートリッジ36に取り付けられた無線通信タグ70は、図7に示す構成とする。
【0102】
図10は、無線通信タグ70のCPU72で実行される送信処理の流れを示すフローチャートである。
【0103】
ステップ400では、切り替えスイッチ78を第1周波数送信回路92に切り替える。
【0104】
ステップ402では、第1周波数送信回路92により、第1周波数f1の搬送波を、送信すべき情報の信号により変調した被変調波を送信する
ステップ404では、通信エラーが発生したか否かを判断する。ここでは、無線通信部40から通信エラーを示す信号(通信エラー通知)を受信回路80で受信した場合に、通信エラーが発生したと判断する。通信エラーが発生したと判断した場合には、ステップ406に移行し、切り替えスイッチ78を第2周波数送信回路94に切り替える。
【0105】
ステップ408では、第2周波数送信回路94により、第2周波数f2の搬送波を、上記と同じ情報の信号により変調した被変調波を送信する
図11は、無線通信部40のCPU42で実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【0106】
ステップ500では、切り替えスイッチ46を第1周波数受信回路62に切り替える。
【0107】
ステップ502では、第1周波数受信回路62で被変調波(情報)を受信したか否かを判断する。ここで受信したと判断した場合には、ステップ504に移行し、第1周波数f1の搬送波を用いた通信でエラーが発生しているか否かを判断する。エラーが発生しているか否かは、前述と同様に判断する。
【0108】
ステップ504で否定判断した場合には、ステップ514に移行し、第1周波数受信回路62で受信した情報を用いて処理する。
【0109】
ステップ504で肯定判断した場合には、ステップ506で、通信エラーを示す信号(通信エラー通知)を送信回路50から送信する。
【0110】
続いて、ステップ508で、切り替えスイッチ46を第2周波数受信回路64に切り替える。
【0111】
ステップ510では、第2周波数受信回路64で被変調波(情報)を受信したか否かを判断する。ここで受信したと判断した場合には、ステップ512に移行し、第2周波数受信回路64で受信した情報を用いて処理する。
【0112】
以上説明したように、所定の周波数の搬送波を用いて通信した後、該所定の周波数の搬送波を用いた通信でエラーが発生した場合にのみ、該所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度通信するようにしたため、ノイズが継続的に混入しても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0113】
なお、無線通信部40のCPU42および無線通信タグ70のCPU72は、通信エラーが発生しなかったほうの周波数を、無線通信部40及び無線通信タグ70の所定の記憶手段(不図示)に記憶しておき、次回以降の通信は、記憶しておいた周波数の搬送波を用いて通信が行われるように制御することもできる。これにより、次回以降の通信を円滑に行うことができる。
【0114】
また、上記実施の形態では、トナーカートリッジ36に設けられた無線通信タグ70から、画像形成装置10の無線通信部40に対して、異なる複数の周波数の搬送波を用いて同一の情報を送信する場合を例に挙げて説明したが、反対に、画像形成装置10の無線通信部40から、トナーカートリッジ36に設けられた無線通信タグ70に対して、異なる複数の周波数の搬送波を用いて同一の情報を送信するようにしてもよい。
【0115】
図12は、画像形成装置10の無線通信部40から、トナーカートリッジ36に設けられた無線通信タグ70に対して、異なる複数の周波数の搬送波を用いて同一の情報を送信する場合の無線通信部40及び無線通信タグ70の構成図である。なお、図12において、図2と同一もしくは同等の部分には同じ記号を付し、その説明を省略する。
【0116】
無線通信部40には、1つの受信回路60及び2つの送信回路(第1周波数送信回路52、第2周波数送信回路54)を備えている。受信回路60は、無線通信タグ70の送信回路50から周波数f0の搬送波を用いて送信された情報をアンテナ44を介して受信し、該受信した情報を復調して、CPU42に送信する。第1周波数送信回路52は、第1周波数f1の搬送波を用いて情報を送信するための回路であり、第1周波数f1の搬送波を送信すべき情報を示す信号で変調して、アンテナ44へ出力する。また、第2周波数送信回路54は、第2周波数f2の搬送波を用いて情報を送信するための回路であり、第2周波数f2の搬送波を送信すべき情報を示す信号で変調して、アンテナ44へ出力する。
【0117】
一方、無線通信タグ70には、1つの送信回路90及び2つの受信回路(第1周波数受信回路82、第2周波数受信回路84)を備えている。送信回路90は、周波数f0の搬送波を、送信すべき情報を示す信号により変調して、アンテナ76へ出力する。第1周波数受信回路82は、第1周波数f1の搬送波が変調された被変調波を受信したときに、該受信した被変調波を復調した後、CPU72に送信する。第2周波数受信回路84は、第2周波数f2の搬送波が変調された被変調波を受信したときに、該受信した被変調波を復調した後、CPU42に送信する。なお、上述した実施の形態と同様に、第1周波数f1と第2周波数f2とは、互いに異なる周波数とする。
【0118】
このような構成の場合であっても、無線通信部40の第1周波数送信回路52及び第2周波数送信回路54から同一の情報を異なる周波数の搬送波を用いて送信し、無線通信タグ70では、前述の図3のフローチャートで示した処理手順で、第1周波数受信回路82及び第2周波数受信回路84で、無線通信部40から異なる周波数の搬送波を用いて送信された同一の情報を受信し、該受信した情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行うことができる。
【0119】
これにより、ノイズが継続的に混入しても、ノイズの影響を受けることなく正常に通信を行うことができる。
【0120】
また、図13は、無線通信タグ70が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波の各々を、受信回路を切り替えて異なるタイミングで受信する場合の構成図である。
【0121】
無線通信タグ70の第1周波数受信回路82及び第2周波数受信回路84とCPU72との間に、切り替えスイッチ77を設け、CPU72は切り替えスイッチ77を切り替えて、第1周波数受信回路82及び第2周波数受信回路84で受信された情報を異なるタイミングで入力する。
【0122】
このような構成の場合も、図5及び図6を用いて例示したように、無線通信部40の第1周波数送信回路52及び第2周波数送信回路54から異なる周波数の搬送波を同一の情報の信号で変調した被変調波を2度送信し、無線通信タグ70では、各被変調波の周波数に対応した受信回路である第1周波数受信回路82と第2周波数受信回路84とを切り替えスイッチ77により排他的に切り替えて受信する。
【0123】
また、図14は、無線通信部40が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波の各々を、送信回路を切り替えて異なるタイミングで送信する場合の構成図である。
【0124】
同図に示すように、無線通信部40の第1周波数送信回路52及び第2周波数送信回路54とCPU42との間に、切り替えスイッチ48を設け、CPU42は切り替えスイッチ48を切り替えて、第1周波数送信回路52及び第2周波数送信回路54から異なるタイミングで異なる周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波を送信させる。無線通信部40の送信処理の流れは図8のフローチャートで示した流れと同様に行い、無線通信タグ70の受信処理の流れは、図6のフローチャートで示した流れと同様に行うことができる。
【0125】
また、同様に、図10及び図11を用いて説明したように、図14の構成において、所定の周波数で通信した後、該所定の周波数の搬送波での通信でエラーが発生した場合にのみ、該所定の周波数とは異なる周波数で再度通信することもできる。
【0126】
さらにまた、上記実施の形態や変形例では、送信方向が、無線通信部40から無線通信タグ70への方向および無線通信タグ70から無線通信部40への方向のいずれか一方において、複数の異なる周波数の搬送波を用いて送信し、他方の方向では1つの周波数の搬送波を用いて送信することができる構成を例に挙げて説明したが、両方向の送信で、複数の異なる周波数の搬送波を用いて送信することができる構成としてもよい。
【0127】
具体的には、図15に示すように、無線通信部40に、第1周波数送信回路52、第2周波数送信回路54、第3周波数受信回路66、及び第4周波数受信回路68を設け、第1周波数送信回路52及び第2周波数送信回路54を、切り替えスイッチ48により排他的に切り替え、第3周波数受信回路66及び第4周波数受信回路68を、切り替えスイッチ49により排他的に切り替える。
【0128】
また、無線通信タグ70には、第1周波数受信回路82、第2周波数受信回路84、第3周波数送信回路96、及び第4周波数送信回路98を設け、第1周波数受信回路82及び第2周波数受信回路84を、切り替えスイッチ77により排他的に切り替え、第3周波数送信回路96及び第4周波数送信回路98を、切り替えスイッチ79により排他的に切り替える。
【0129】
このような構成によって、各送信回路及び各受信回路を切り替えて、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波を異なるタイミングで送受信することができる。また、図10及び図11を用いて説明したように、図15の構成において、所定の周波数で通信した後、該所定の周波数の搬送波での通信でエラーが発生した場合にのみ、該所定の周波数とは異なる周波数の搬送波で再度通信することもできる。また、このとき、無線通信部40から無線通信タグ70に対する送信および無線通信タグ70から無線通信部40に対する送信処理のいずれか一方の送信処理で通信エラーが発生して送信周波数を変更(送信回路、受信回路を切り替える)したときに、他方の送信処理でもそれに合わせて送信周波数を変更してもよい。
【0130】
なお、図15の構成において、切り替えスイッチを設けずに無線通信部40及び無線通信タグ70を構成すれば、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報で変調した被変調波を同一タイミングで送受信し、受信側は、通信エラーが生じていない情報を用いて処理を行うようにすることもできる。
【0131】
また、上記実施の形態および変形例では、通信エラーをパリティチェックにより検出する例について説明したが、これに限定されず、例えば、チェックサムやCRC等、他の周知の方式で通信エラーを検出してもよい。
【0132】
さらにまた、上記実施の形態では、第1周波数f1及び第2周波数f2ともに通信エラーが発生しなかった場合には、第1周波数f1で送信された情報を用いたが、第2周波数f2で送信された情報を用いてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態では、無線通信タグ70をトナーカートリッジ36に設けた例について説明したが、これに限定されず、例えばプロセスユニット16に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図2】画像形成装置に設けられた無線通信部と、トナーカートリッジの各々に設けられた無線通信タグの概略構成図である。
【図3】無線通信部のCPUで実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1周波数と第2周波数とノイズの関係を示した図である。
【図5】無線通信部が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、受信回路を切り替えて異なるタイミングで受信する場合の構成図である。
【図6】変形例における無線通信部のCPUで実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】無線通信タグが、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、送信回路を切り替えて異なるタイミングで送信する場合の構成図である。
【図8】変形例における無線通信タグのCPUで実行される送信処理の流れを示すフローチャートに示す処理の流れで送信する。
【図9】無線通信部の第2周波数受信回路を外付け回路として設けた場合の構成図である。
【図10】変形例における無線通信タグのCPUで実行される送信処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】変形例における無線通信部のCPUで実行される受信処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】画像形成装置の無線通信部から、トナーカートリッジに設けられた無線通信タグに対して、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信する場合の無線通信部及び無線通信タグの構成図である。
【図13】無線通信タグが、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、受信回路を切り替えて異なるタイミングで受信する場合の構成図である。
【図14】無線通信部が、異なる複数の周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波の各々を、送信回路を切り替えて異なるタイミングで送信する場合の構成図である。
【図15】無線通信部から無線通信タグへの方向および無線通信タグから無線通信部への方向の両方向の送信において複数の異なる周波数の搬送波を用いて送信することができる場合の構成図である。
【符号の説明】
【0135】
10 画像形成装置
36 トナーカートリッジ
40 無線通信部
50 送信回路
52 第1周波数送信回路
54 第2周波数送信回路
60 受信回路
62 第1周波数受信回路
64 第2周波数受信回路
66 第3周波数受信回路
68 第4周波数受信回路
70 無線通信タグ
74 不揮発性メモリ
80 受信回路
82 第1周波数受信回路
84 第2周波数受信回路
90 送信回路
92 第1周波数送信回路
94 第2周波数送信回路
96 第3周波数送信回路
98 第4周波数送信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置との間で無線通信を行う通信装置であって、
前記外部装置から複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調して送信された複数の被変調波を各周波数毎に受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行う処理手段と、
を含む通信装置。
【請求項2】
前記受信手段を、前記複数の被変調波の各々を異なるタイミングで受信するか、または同一のタイミングで受信するように構成した請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記複数の被変調波を受信する受信回路を前記異なる複数の周波数に対応して複数個備え、該複数個の受信回路のうち一部の受信回路を外付けの回路で構成した請求項1または請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記複数の異なる周波数は、下記の2式の少なくとも一方を用いて算出した周波数fである請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の通信装置。
f=f0/n
および
f=m×f0±f0/n
ただし、f0は通信装置本体から前記外部装置へ送信する搬送波の周波数、nは2以上の整数、mは1以上の整数である。
【請求項5】
外部装置との間で無線通信を行う通信手段と、
前記通信手段による所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合に、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信が行われるように前記通信手段を制御する制御手段と、
を含む通信装置。
【請求項6】
前記通信手段で通信エラーが検出されなかった通信に用いられた搬送波の周波数を記憶する記憶手段を更に備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された周波数の搬送波を用いて次回以降の通信が行われるように前記通信手段を制御する請求項5記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信手段は、互いに異なる周波数の搬送波を用いて通信する通信回路を複数個備え、該複数個の通信回路のうち一部の通信回路を外付けの回路で構成した請求項5または請求項6記載の通信装置。
【請求項8】
前記所定の周波数及び前記所定の周波数とは異なる周波数は、下記の2式の少なくとも一方を用いて算出した周波数fである請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の通信装置。
f=f0/n
および
f=m×f0±f0/n
ただし、f0は通信装置本体から前記外部装置へ送信する搬送波の周波数または前記外部装置から通信装置本体へ送信する搬送波の周波数、nは2以上の整数、mは1以上の整数である。
【請求項9】
前記外部装置に対して着脱可能な部材に設けられた請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の通信装置。
【請求項10】
通信装置本体に対して着脱可能な部材に設けられた外部装置との間で無線通信を行う請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の通信装置。
【請求項11】
第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信システムであって、
前記第1の装置は、前記第2の装置に対し複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、
前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行う通信システム。
【請求項12】
第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信システムであって、
前記第1の装置と前記第2の装置との間で所定の周波数の搬送波を用いて無線通信を行い、該所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合には、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信を行う通信システム。
【請求項13】
第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信方法であって、
前記第1の装置は、前記第2の装置に対し複数の異なる周波数の搬送波を同一の情報を示す信号で変調した被変調波を送信し、
前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された複数の被変調波を受信し、該受信した被変調波が示す情報のうち通信エラーが発生していない情報を用いて処理を行う通信方法。
【請求項14】
第1の装置と第2の装置との間で無線通信を行う通信方法であって、
前記第1の装置と前記第2の装置との間で所定の周波数の搬送波を用いて無線通信を行い、該所定の周波数の搬送波を用いた通信で通信エラーが検出された場合には、前記所定の周波数とは異なる周波数の搬送波を用いて再度無線通信を行う通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−60435(P2007−60435A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244845(P2005−244845)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】