説明

通信装置、遅延通知方法およびプログラム

【課題】外部装置に特別な機能がなくても、通信の遅延を通知することが可能な通信装置を提供する。
【解決手段】通信部201は、通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う。制御部207は、通信装置の情報処理状況を評価し、その評価結果に基づいて、通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定し、所要時間が閾値より大きいか否かを判断する。表示部205は、所要時間が閾値より大きい場合、通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信の遅延を通知する通信装置、遅延通知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機のような端末装置における通信機能には、電話通話機能、電子メール機能、ショートメール機能およびインスタントメッセージ機能など様々なものがある。しかしながら、このような通信機能では、情報の送信者は、その情報が送信先に届くまでの所要時間を知ることができないことが多い。このため、ある通信機能において遅延が発生している場合でも、送信者は、その遅延を把握できないため、その遅延が発生している通信機能を用いて緊急の要件を連絡してしまい、緊急の要件の連絡に遅延が発生することがあった。
【0003】
例えば、電子メール機能の場合、送信者の端末装置から発信された電子メールは、送信者の電子メールを管理する送信者メールサーバを通り、その後インターネット上の不特定のメールサーバを経由して、受信者のメールを管理する受信者メールサーバで受信される。そして、受信者の端末装置において電子メールの受信動作が行われると、電子メールは、受信者メールサーバから受信者の通信装置に送信されて記憶される。
【0004】
上記の電子メール機能においては、送信者の端末装置から受信者の端末装置までの通信経路上に存在するメールサーバが正常に稼動している場合には、電子メールが通信経路を通過する時間はあまり長くなく、送信された電子メールは、数秒から数分程度で受信者の端末装置まで届くことが多い。しかしながら、通信経路上のメールサーバにおいて、故障が発生したり、負荷が一時的に大きくなったりして、処理速度が低下すると、電子メールが送信されてから受信者の端末装置に届くまでに長い時間がかかってしまう。
【0005】
これに対して特許文献1には、電子メールの遅延を通知する電子メール遅延監視システムが記載されている。この電子メール遅延監視システムでは、送信者の通信装置は、監視用IDを付けた電子メールを送信するとともに、電子メールの送信時刻を記録する。そして、送信者の通信装置は、送信先の通信装置またはメールサーバから監視用ID付きの返信メールを受信したか否かを確認し、監視用ID付きの返信メールの受信前に、送信時刻から所定時間が経過した場合、ユーザに電子メールの遅延を通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−058495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術を一般的な通信機能に適用すれば、電子メールを用いた通信に限らず様々な通信の遅延を通知することができる。しかしながら、特許文献1に記載の電子メール遅延監視システムでは、通信の遅延を通知するためには、送信先の端末装置やメールサーバなどの外部装置に、監視用ID付きの返信メールを自動的に返信する特別な機能が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、外部装置に特別な機能がなくても、通信の遅延を通知することが可能な通信装置および遅延通知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による通信装置は、通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う通信部と、前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定し、前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断する制御部と、前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う通知部と、を有する。
【0010】
また、本発明による遅延通知方法は、通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う端末装置の遅延通知方法であって、前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定し、前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断し、前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う。
【0011】
また、本発明によるプログラムは、通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う通信部と接続されたコンピュータに、前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定する処理と、前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断する処理と、前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部装置に特別な機能がなくても、通信の遅延を通知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の通信システムを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の電話機の構成例を示す図である。
【図3】アドレス帳の一例を示す図である。
【図4】メール遅延データベースの構造の一例を示す図である。
【図5】電子メールを受信した際の電話機の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】ユーザBの電話機から受信した電子メールのメールヘッダの一例である。
【図7】ユーザCの電話機から受信した電子メールのメールヘッダの一例である。
【図8】電子メールを送信する際の電話機の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態の電話機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同じ機能を有するものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態の通信システムを示す図である。図1において、通信システムは、電話機101〜104と、メールサーバ111〜113とを有する。なお、メールサーバ111〜113のそれぞれは、インターネット121経由で他のメールサーバと接続されている。
【0016】
電話機101〜104は、通信機能を備えた端末装置である。本実施形態では、電話機101〜104は、少なくとも電子メール機能および電話機能を通信機能として備えている携帯電話機を想定している。
【0017】
メールサーバ111〜113は、電話機101〜104が行う電子メールの送受信を管理する。
【0018】
一般的な端末装置は、メール送信用サーバ(例えば、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバ)を経由して電子メールを送信し、メール受信用サーバ(例えば、POP(Post Office Protocol)サーバ)を経由して電子メールを受信する。しかしながら、通常、メール送信用サーバの機能とメール受信用サーバの機能とは同一コンピュータで運用される。このため、本実施形態でも、メールサーバ111〜113は、メール送信用サーバの機能およびメール受信用サーバの機能の両方を備えているものとしている。
【0019】
以下、電話機101は、ユーザAによって操作され、メールアドレス「user-a@zz.zzz.com」を持ち、ドメイン「zz.zzz.com」のメールサーバ111を経由して電子メールの送受信を行い、電話機102は、ユーザBによって操作され、メールアドレス「user-b@xx.xx.jp」を持ち、ドメイン「xx.xx.jp」のメールサーバ112を経由して電子メールの送受信を行い、電話機103は、ユーザCによって操作され、メールアドレス「user-c@yy.yyy.com」を持ち、ドメイン「yy.yyy.com」のメールサーバ113を経由して電子メールの送受信を行い、電話機104は、ユーザDによって操作され、メールアドレス「user-d@xx.xx.jp」を持ち、電話機102と同様にドメイン「xx.xx.jp」のメールサーバ112を経由して電子メールの送受信を行うものとする。
【0020】
また、一般的な端末装置やメールサーバでは、電子メールを送信する際に、電子メールの先頭にあるメールヘッダに、電子メールの送受信に関する送受信情報を追加していく。送受信情報は、電子メールの送信時刻を含む。
【0021】
このため、図1で示した電話機101〜104およびメールサーバ111〜113も、電子メールを送信する際に、電子メールのメールヘッダに送受信情報を追加していくものとする。なお、電子メールは、インターネット121上の不特定のメールサーバ122を経由することがある。この場合、メールサーバ122でも、電子メールが送信される際に、電子メールのメールヘッダに送受信情報が追加される。
【0022】
この場合、電話機101〜104が受信した受信メールには、送信元の電話機による電子メールの第1の送信時刻と、受信先の電話機の受信用サーバによる電子メールの第2送信時刻とが含まれることになる。第1の送信時刻と第2の送信時刻との差分が、電子メールが送信元の電話機を送信されてから受信先の電話機が受信するまでの配信時間とみなせるので、電子メールには配信時間を示す記述が含まれていることになる。
【0023】
図2は、電話機101の構成を示す図である。電話機102〜104は、電話機101と同様な構成でもよいし、一般的な携帯電話機の構成でもよい。
【0024】
図2において、電話機101は、通信部201、アドレス記憶部202、メール遅延データベース203、音声電話部204、表示部205、操作部206、および、それらを制御する制御部207を有する。
【0025】
通信部201は、通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う。本実施形態では、情報を電子メール、通信先端末装置を電話機102〜104、通信装置を電話機102〜104の送信用メールサーバであるメールサーバ111および112としている。
【0026】
アドレス記憶部202は、電話機102〜104のそれぞれの宛先情報を含むアドレス帳を記憶する。
【0027】
図3は、本実施形態のアドレス帳を示す図である。図3に示すアドレス帳301は、ユーザの氏名302、電話番号303およびメールアドレス304を有する複数のレコードで構成される。氏名302は、ユーザを特定する識別情報である。電話番号303およびメールアドレス304は、氏名302で特定されるユーザが使用する電話機の宛先情報である。
【0028】
なお、図3で示すアドレス帳301では、ユーザBおよびCに対するレコードは、宛先情報として電話番号303およびメールアドレス304の両方を有し、ユーザDに対するレコードは、宛先情報として、メールアドレス304を有するが、電話番号303を有してない。
【0029】
図2の説明に戻る。メール遅延データベース203は、メールサーバ112および113を経由する通信に遅延が発生しているか否かを示す遅延状況リストと、本通信に遅延が発生しているか否かを判断するための遅延時間閾値とを記憶する。
【0030】
図4は、本実施形態のメール遅延データベース203の構造を示す図である。図4に示すように、メール遅延データベース203は、遅延状況リスト401と、遅延時間閾値402を有する。遅延状況リスト401は、メールサーバを特定するドメイン名411と、ドメイン名411で特定されるメールサーバを経由する通信に遅延が発生しているか否かを示すメール配信遅延中フラブ412とを有する複数のレコードを有する。
【0031】
なお、通信に遅延が発生している場合、メール配信遅延中フラブ412は「遅延中」を示し、通信に遅延が発生していない場合、メール配信遅延中フラブ412は「遅延なし」を示す。また、遅延時間閾値402として10分が設定されている。
【0032】
図2の説明に戻る。音声電話部204は、他の電話機と電話通信を行う。表示部205は、種々の情報を表示する。操作部206は、ユーザAからの種々の操作を受け付ける。
【0033】
制御部207は、通信部201にて受信された電子メールである受信メールが経由した通信装置の情報処理状況を評価し、その評価結果に基づいて、受信メールの送信用メールサーバを経由する通信にかかる所要時間を推定する。
【0034】
例えば、制御部207は、受信メールのメールヘッダに記述された配信時間を情報処理状況として評価し、配信時間を所要時間として推定する。これは、上述したように、メール送信用サーバの機能とメール受信用サーバの機能とが同一のメールサーバで運用されているので、受信メールの配信時間が長いと、その受信メールのメール送信用サーバを経由する通信にも、配信時間と同程度の長い時間がかかると考えられるためである。
【0035】
また、送信元メールアドレスに含まれるドメイン名が同一の電子メールを通信部201が複数回受信した場合、制御部207は、電子メールごとに配信時間を求め、それらの配信時間の平均値を所要時間として推定してもよい。このとき、制御部207は、所定期間以前に求めた配信時間を破棄するなどして、所定期間内に求めた配信時間の平均値を所要時間として推定してもよい。
【0036】
この場合、メールサーバの負荷が一時的に大きくなるなどして、配信時間が一時的に長くなっても、所要時間をより正確に推定することができる。
【0037】
所要時間を推定すると、制御部207は、所要時間がメール遅延データベース203内の遅延時間閾値402より大きいか否かを判断する。所要時間が遅延時間閾値402より大きい場合、制御部207は、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401に含まれる、受信メールにおける送信元のメールアドレスのドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を「遅延中」とする。
【0038】
また、ユーザAが操作部206に対して電子メールの送信操作を行った場合、制御部207は、送信メールにおける送信先のメールアドレスのドメイン名を持つレコードを、メール遅延データベース203の遅延状況リスト401から検索する。なお、本実施形態では、電子メールの送信操作を通信の実行を指示する操作として用いている。
【0039】
検索されたレコードのメール配信遅延中フラグ412が「遅延中」の場合、制御部207は、送信メールにおける送信先のメールアドレスのドメイン名のメールサーバを経由した通信に遅延が発生していると判断して、通信に遅延が発生している旨を含む通知画面を表示部205に表示する。これにより、所要時間が遅延時間閾値402以上の場合、表示部205は、操作部206に対して送信操作が行われると、通信に遅延が生じている旨を通知する通知部として機能することになる。
【0040】
また、通知画面は、遅延が生じている通信の通信経路とは別の通信経路を用いた通信を推奨する旨を含んでいてもよい。別の通信経路を用いた通信は、ショートメール機能やインスタントメッセージ送信機能などの、電子メール機能とは別の通信機能による通信でもよいし、ドメイン名が別の送信先メールアドレスを有する電子メールにかかる通信でもよい。
【0041】
なお、同一のユーザが複数の端末装置を使用することがある。例えば、ユーザが携帯電話機および固定電話機の両方を使用することがある。このため、別の通信経路を用いた通信の通信先は、送信メールの送信先の端末装置とは限らない。
【0042】
また、通知画面は、送信メールの内容の変更を推奨する旨を含んでいてもよい。例えば、送信メールに画像などの添付ファイルが付けられている場合、通知画面は、添付ファイルの削除を推奨する旨を含んでいてもよい。
【0043】
次に電話機101の動作について説明する。
【0044】
図5は、電子メールを受信した際の電話機101の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0045】
通信部201は、先ず、他の電話機から電子メールを受信し、その電子メールを受信メールとして制御部207に渡す(ステップ501)。制御部207は、受信メールからメールヘッダを取得する(ステップ502)。
【0046】
図6および図7は、メールヘッダの一例を示す図である。メールヘッダでは、一般的に、電子メールを送信した電話機が追加した送受信情報が一番下にあり、そこから上に向かって、電子メールを中継するメールサーバにて送受信情報が順次挿入されている。
【0047】
図6は、ユーザBの電話機102から受信した電子メールのメールヘッダの一例である。図6で示したメールヘッダ601では、電話機102が電子メールを送信した送信時刻は、文字列"Date:"で始まる文602に記載されており、「2010/11/15 08:58:51」となっている。また、メールヘッダ601では、メールサーバ111がユーザAの電話機101にメールを送信した送信時刻が、最も上の方にある文字列"Received:"で始まる文603に記載されており、「2010/11/15 09:38:52」となっている。
【0048】
図7は、ユーザCの電話機103から受信した電子メールのメールヘッダの一例である。図7で示したメールヘッダ701では、図6で示したメールヘッダと同様に、電話機103が電子メールを送信した送信時刻は、文字列"Date:"で始まる文702に記載されており、「2010/11/15 08:59:52」となっている。また、メールヘッダ701では、メールサーバ111がユーザAの電話機101にメールを送信した送信時刻が、最も上の方にある文字列"Received:"で始まる文703に記載されており、「2010/11/15 08:59:53」となっている。
【0049】
動作の説明に戻る。制御部207は、受信メールから取得したメールヘッダに基づいて、受信メールの配信にかかった配信時間を、受信メールの送信用メールサーバを経由する通信にかかる所要時間として算出する(ステップ503)。
【0050】
図6の例では、電話機102の送信時刻が「2010/11/15 08:58:51」であり、メールサーバ111の送信時刻が「2010/11/15 09:38:52」であるので、配信時間は約40分となる。同様に、図7の例では、配信時間は約1秒となる。
【0051】
制御部207は、所要時間を推定すると、メール遅延データベース203内の遅延時間閾値402を確認する。そして、制御部207は、所要時間と遅延時間閾値402とを比較して、所要時間が遅延時間閾値402より大きいか否かを判断する(ステップ504)。
【0052】
所要時間が遅延時間閾値402より大きい場合、制御部207は、通信に遅延が発生していると判断して、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401に含まれる、受信メールにおける送信元のドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を「遅延中」とする(ステップ505)。なお、該当するドメイン名を持つレコードが遅延状況リスト401にない場合、制御部207は、そのレコードを新たに作成し、その後、上記と同様な動作によりメール配信遅延中フラグ412を「遅延中」とする。
【0053】
図6の例では、所要時間は約40分であり遅延時間閾値402の10分より大きいので、制御部207は、通信に遅延が発生していると判断して、メールサーバ112のドメイン名「xx.xx.jp」を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を「遅延中」にする。このとき、遅延状況リスト401にドメイン名「xx.xx.jp」を持つレコードがない場合には、制御部207は、ドメイン名「xx.xx.jp」を持つレコードを作成し、その後、メール配信遅延中フラグ412を「遅延中」にする。
【0054】
一方、所要時間が遅延時間閾値402以下の場合、制御部207は、通信に遅延は発生していないと判断して、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401に含まれる、受信メールにおける送信元のドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を「遅延なし」とする(ステップ506)。なお、制御部207は、該当するドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を削除してもよい。また、該当するドメイン名を持つレコードが遅延状況リスト401にない場合には、制御部207は、特に何もせずに処理を終了する。また、制御部207は、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401に含まれる、受信メールにおける送信元のドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグ412を「遅延なし」とする(ステップ506)。
【0055】
図7の例では、所要時間が約1秒であり遅延時間閾値402の10分以下であるので、制御部207は、通信に遅延は発生していないと判断して、メールサーバ113のドメイン名「yy.yyy.com」を持つレコードのメール配信遅延中フラグを「遅延なし」にする。もし、遅延状況リスト401にドメイン名「yy.yyy.com」を持つレコードがない場合、制御部207は、特に何もせずに処理を終了する。
【0056】
本実施形態の電話機101は、電子メールを受信するたびに上記の動作を行うことでメール配信遅延状況をメールサーバごとに収集し、メール遅延データベース203を更新していく。
【0057】
また、あるドメイン名を持つレコードのメール配信遅延中フラグを「遅延中」にした後で、そのドメイン名を持つメールサーバにおける電子メールの配信遅延が解消することもある。このため、制御部207は、メール配信遅延中フラグを「遅延中」にしてから一定時間が経過したか否かを判断し、一定時間が経過した場合、メール配信遅延中フラグを「遅延なし」にリセットする機能を備えてもよい。この場合、表示部205には、所要時間が遅延時間閾値402より大きいと判断されてから一定時間が経過していない場合に、通知画面が表示される。なお、上記の一定時間は、例えば、メール遅延データベース203内に予め記憶されている。
【0058】
図8は、電子メールを送信する際の電話機101の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0059】
先ず、ユーザAは、操作部206に対して、電子メールの作成操作、送信先のメールアドレスの設定操作および電子メールの送信操作を行う。制御部207は、作成操作に従って電子メールを作成し、設定操作に従って電子メールに送信先のメールアドレスを設定する。(ステップ801)。
【0060】
そして、制御部207は、送信操作を検出すると、電子メールの送信先のメールアドレスから送信先のドメイン名を抽出し、そのドメイン名を有するレコードを、メール遅延データベース203の遅延状況リスト401から検索し、そのレコードからメール配信遅延中フラグ412を取得する(ステップ802)。
【0061】
制御部207は、取得したメール配信遅延中フラグ412が「遅延中」であるか否かを判断する(ステップ803)。
【0062】
メール配信遅延中フラグ412が「遅延中」の場合、制御部207は、抽出したドメイン名のメールサーバを経由する通信に遅延が発生していると判断して、電子メールを送信し(ステップ804)、その後、送信先のメールアドレスを持つレコードを、アドレス記憶部202内のアドレス帳301から検索する(ステップ805)。
【0063】
制御部207は、検索されたレコードに電話番号が存在するか否かを判断する(ステップ806)。
【0064】
電話番号が存在する場合、制御部207は通知画面を表示部205に表示し(ステップ807)、その後、検索されたレコード内の電話番号である相手先の電話番号を予め入力した電話発信画面を表示して、ユーザAに電話発信を促す(ステップ808)。
【0065】
一方、電話番号が存在しない場合(アドレス帳に送信先のメールアドレスを持つレコードが存在しない場合も含む)、制御部207は通知画面を表示部205に表示し(ステップ809)、その後、相手先の電話番号を入力していない電話発信画面を表示して、ユーザAに電話番号の入力と電話発信とを促す。(ステップ810)
ステップ808および810の後でユーザAが操作部206に対して電話発信操作を行うと、制御部207は、音声電話部204を用いて電話発信を行う(ステップ811)。なお、電話発信操作は、電話番号を入力する操作を含む。
【0066】
また、ステップ803においてメール配信遅延中フラグ412が「遅延なし」の場合、制御部207は、抽出したドメイン名のメールサーバを経由する通信に遅延が発生していないと判断して、制御部207は、電子メールを送信し(ステップ812)、処理を終了する。なお、ステップ802において送信先のドメイン名を有するレコードが遅延状況リスト401にない場合、制御部207は、ステップ812と同じ処理を行う。
【0067】
上記の動作において、例えば、ユーザBの電話機102に電子メールを送信する場合、ユーザAは、送信先のメールアドレスとして「user-b@xx.xx.jp」を設定して、メール送信操作を行う。制御部207は、メールアドレス「user-b@xx.xx.jp」からドメイン名「xx.xx.jp」を抽出し、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401から、ドメイン名が「xx.xx.jp」のレコードを検索する。本レコードのメール配信遅延中フラグ412は図4で示したように「遅延中」であるので、制御部207は、ドメイン名「xx.xx.jp」のメールサーバを経由する通信に遅延が発生していると判断して、電子メールをメールサーバ111に送信した後、アドレス帳301からメールアドレス「user-b@xx.xx.jp」を持つレコードを検索し、そのレコード内のユーザBの電話番号「012-345-6789」を取得する。その後、制御部207は、通知画面を表示部205に表示し、続いて、ユーザBの電話番号「012-345-6789」が入力された電話発信画面を表示して、ユーザAに電話発信を促す。
【0068】
また、ユーザCの電話機103に電子メールを送信する場合、ユーザAは、送信先のメールアドレスとして「user-c@yy.yyy.com」を設定して、メール送信操作を行う。制御部207は、メールアドレス「user-c@yy.yyy.com」からドメイン名「yy.yyy.com」を抽出し、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401から、ドメイン名が「yy.yyy.com」のレコードを検索する。本レコードのメール配信遅延中フラグ412は図4で示したように「遅延なし」であるので、制御部207は、ドメイン名「yy.yyy.com」のメールサーバを経由する通信に遅延が発生していないと判断して、電子メールをメールサーバ111に送信し、処理を終了する。
【0069】
また、ユーザDの電話機104に電子メールを送信する場合、ユーザAは、送信先のメールアドレスとして「user-d@xx.xx.jp」を設定して、メール送信操作を行う。制御部207は、メールアドレス「user-d@xx.xx.jp」からドメイン「xx.xx.jp」を抽出し、メール遅延データベース203内の遅延状況リスト401から、ドメイン名が「xx.xx.jp」のレコードを検索する。このドメイン名は、ユーザBのメールアドレスのドメイン名と同一であるので、図4で示したように、検索されたレコード内のメール配信遅延中フラグは「遅延中」である。このため、制御部207は、ドメイン名「xx.xx.jp」のメールサーバを経由する通信に遅延が発生していると判断して、電子メールをメールサーバ111に送信した後、アドレス帳からメールアドレス「user-d@xx.xx.jp」を持つレコードを検索する。しかしながら、本レコードには電話番号が登録されていないので、制御部207は、通知画面を表示部205に表示し、続いて、電話番号が入力されていない電話発信画面を表示して、ユーザAに電話番号の入力と電話発信とを促す。
【0070】
上記の動作において、ユーザDの電話機104に電子メールを送信する前に、ユーザDからの電子メールを受信したことがなかったとする。この場合でも、上記のように、ユーザDの電話機104と同じメールサーバ112を経由するユーザBの電話機102から電子メールが受信されていれば、メールサーバ112を経由する通信に遅延が発生しているか否かを判断することができる。
【0071】
以上説明したように本実施形態では、通信装置であるメールサーバ112および113を経由する通信にかかる所要時間が通信装置の情報処理状況によって推定され、所要時間が閾値より大きいと、通信に遅延が発生している旨が通知される。このため、通信装置や通信先の端末装置などの外部装置に特別な機能がなくても、通信の遅延を通知することが可能になる。
【0072】
また、本実施形態では、通信装置を経由して受信された電子メールに記述された配信時間に基づいて所要時間が推定されるので、容易に所要時間を推定することができる。
【0073】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
【0074】
第1の実施形態では、制御部207は、受信メールに記述された配信時間を通信装置の情報処理状況として用いて、所要時間を推定していたが、本実施形態では、別の方法で所要時間を推定する。つまり、制御部207は、通信部201を用いて、通信装置であるメールサーバ112および113と接続し、その接続に要した接続確保時間を通信装置の情報処理状況として用いて所要時間を推定する。
【0075】
より具体的には、制御部207は、定期的に、アドレス記憶部202内のアドレス帳のレコードからメールアドレスを抽出し、そのメールアドレスのドメイン名のメールサーバのそれぞれに対して、通信部201を経由して接続要求を送信し、その送信時刻を保持する。その後、通信部201が接続要求に対する接続許可を示す応答情報を受信した場合、制御部207は、その応答情報を受信した受信時刻を測定し、送信時刻と受信時刻との差分を接続確保時間とする。そして、制御部207は、接続確保時間に基づいて、所要時間を推定する。例えば、制御部207は、接続確保時間を所要時間とする。
【0076】
なお、接続要求が送信されてから所定時間経過しても応答情報が受信できなかった場合、制御部207は、接続要求の送信先のメールサーバを経由した通信に遅延が発生したと判断してもよい。
【0077】
また、電話機101は、図9で示すように、通信部201と、表示部205と、制御部207とを有する構成でもよい。
【0078】
図9で示した構成では、通信部201が通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う。
【0079】
制御部207は、通信部201による通信装置の情報処理状況を評価し、その評価結果に基づいて、通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定する。そして、制御部207は、所要時間が閾値より大きいか否かを判断する。
【0080】
所要時間が閾値より大きい場合、表示部207は、通信に遅延が発生している旨を含む通知を表示することでユーザに通知する。
【0081】
以上説明したように図9で示した構成でも、通信装置を経由する通信にかかる所要時間が通信装置の情報処理状況によって推定され、所要時間が閾値より大きいと、通信に遅延が発生している旨が通知される。このため、第1の実施形態と同様に、通信装置や通信先の端末装置などの外部装置に特別な機能がなくても、通信の遅延を通知することが可能になる。
【0082】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【0083】
例えば、端末装置として携帯電話機を用いて説明したが、端末装置は、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機およびPC(Personal computer)などでもよい。
【0084】
また、通信部201が端末装置から受信する情報は電子メールとしていたが、ショートメールおよびインスタントメッセージなどでもよい。
【0085】
また、制御部207は、通信に遅延が発生している旨や、別の通信経路を用いた通信を推奨する旨を表示部205に表示することで通知していたが、スピーカ装置などを用いて音声で通知してもよい。
【0086】
また、図3に示したアドレス帳301や図4で示したメール遅延データベース203は単なる一例であって、図で示された構成に限定されるものではない。
【0087】
また、電話機101の機能は、その機能を実現するためのプログラムを、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ実行させることで、実現されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
101〜104 電話機
111〜113 メールサーバ
121 インターネット
201 通信部
202 アドレス記憶部
203 メール遅延データベース
204 音声電話部
205 表示部
206 操作部
207 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う通信部と、
前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定し、前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断する制御部と、
前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う通知部と、を有する端末装置。
【請求項2】
前記通信部が受信する情報は、前記通信先端末装置を送信されてからの配信時間を示す記述を含み、
前記制御部は、前記配信時間を前記情報処理状況として評価する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信部を用いて前記通信装置と接続し、当該接続に要した接続確保時間を前記情報処理状況として評価する、請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
操作部をさらに有し、
前記通知部は、前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信の実行を指示する操作が前記操作部に対して行われると、前記通知を行う、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所要時間が前記閾値より大きいと判断してから一定時間が経過したか否かを判断し、
前記通知部は、前記一定時間が経過していない場合、前記通知を行う、請求項4に記載の端末装置。
【請求項6】
前記通知は、前記通信の通信経路とは別の通信経路を用いた通信の実行を推奨する旨を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項7】
通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う端末装置の遅延通知方法であって、
前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定し、
前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断し、
前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う、遅延通知方法。
【請求項8】
通信装置を経由して通信先端末装置と情報の送受信を行う通信部と接続されたコンピュータに、
前記通信装置の情報処理状況を評価し、当該評価結果に基づいて、前記通信装置を経由する通信にかかる所要時間を推定する処理と、
前記所要時間が閾値より大きいか否かを判断する処理と、
前記所要時間が前記閾値より大きい場合、前記通信に遅延が発生している旨を含む通知を行う処理と、を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175236(P2012−175236A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33109(P2011−33109)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】