説明

通常、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物を含む心血管系疾患を抑制するための医薬調合物

本発明は、更年期以降の女性における病的状態を緩和するための、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む医薬調合物であって、許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記医薬調合物を提供する。前記医薬調合物を使用する治療方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は哺乳類における病的状態を緩和する医薬調合物および方法に関する。本発明は、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む、哺乳類における病的状態を緩和するための医薬調合物であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記医薬調合物に関する。本発明はまた、前記医薬調合物を用いる治療方法を提供する。
【0002】
この出願は参照することにより本明細書に組み込まれる、2003年9月5日に出願されたUS出願番号10/657,019の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
心血管系疾患は西洋諸国および世界中において死亡率の主な原因となっている。有害な心血管系事象の大部分は、冠状および大脳動脈におけるアテローム硬化性病変の発達を原因とする。動脈平滑筋細胞の異常増殖が、アテローム性動脈硬化症の発達における最も重要な段階の1つである。病的刺激に応答して、平滑筋細胞がまず動脈壁の中膜層から内膜層へと遊走し、その後内膜層内で増殖する。これらの事象が動脈硬化性プラークの最初の発達においてとても重大である。内膜層におけるアテローム硬化性病変の形成が、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋虚血、梗塞および脳卒中を含む多くの心血管系疾患において起こる(非特許文献1)。従って、平滑筋増殖の病的刺激を抑制することが望まれる。炎症反応は、急性または慢性の低レベルであっても、アテローム硬化性病変の発達を刺激および促進する悪化要因である。部分的なアテローム硬化性の過程として、内皮細胞を含む血管壁への単球浸潤がある。動脈壁の内側に残っている単球は、酸化脂質を蓄積して脂質過剰になり、泡沫細胞となる。泡沫細胞はアテローム硬化性病変の主な特性の1つである。従って、動脈壁におけるこれらの泡沫細胞の生成および血流から動脈壁への単球の動員を減少または緩和することが望まれる。単球は、動脈平滑筋細胞による炎症性メディエーターの分泌に応答して動脈壁に引き寄せられる。これらのメディエーターにはMCP-1が含まれる。P-セレクチンおよびICAM -1のような接着分子の発現は、単球の動脈壁への最初の接着の過程およびその結果として起こる動脈壁内部への浸透を促進する。炎症反応カスケードにはまた、インターロイキン6(IL-6)およびインターロイキン(IL-1)の発現および分泌が含まれる。これらのメディエーターは少なくとも2つの機能に関与する。これらはさらなる単球の動員を含む全身炎症反応を引き起こす。その他の効果は、サイトカインは自己分泌反応において平滑筋細胞に影響を及ぼし、このことは細胞が病的細胞刺激の悪循環においてこれらの炎症メディエーターを放出し続けるということを意味する。従って、IL-1 、IL-6、MCp-1およびその他のような炎症反応メディエーターの発現および放出を減少させることもまた望まれる。
【0004】
安全および有効な医薬調合物、および哺乳類における病的組織、主に心血管系異常および慢性または低レベルの炎症反応に関連する病的組織を緩和する方法を提供することが長い間切望されている。アテローム性動脈硬化症および炎症を治療するための副作用を持たない化合物および物質もまた切望されている。さらにまた、低コストの非薬剤物質および高価な薬剤の代わりの化合物を用いる、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化の発達の抑制、および慢性および低レベルの炎症反応の抑制における化合物および物質もまた切望されている。
【非特許文献1】R. Ross, Cellular Mechanisms of Atherosclerosis, Atherosclerosis Review, 103, Vol. 25, pages 195-200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の技術的課題は上述の需要をかなえる手段および方法を提供することにある。具体的には、本発明の目的は哺乳類における病的状態を緩和するのに有用な医薬調合物を提供することにある。前記病的状態にはアテローム性動脈硬化症および動脈硬化が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題は解決され、すなわち、前記病的状態は本明細書および特許請求の範囲において特徴付けられる実施態様により治療される。従って、本発明は病的状態を治療するための医薬調合物および方法に関する。
【0007】
従って、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む、哺乳類における病的状態を緩和するための医薬調合物であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記医薬調合物を提供する。
【0008】
好ましくは、本発明における哺乳類はヒト、イヌ、ネコまたはウマである。さらに好ましくは、前記ヒトは更年期以降の女性である。
【0009】
本発明は、治療を必要とする哺乳類に、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む有効量の医薬調合物であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記医薬調合物を投与する段階を含む、哺乳類におけるアテローム性動脈硬化症、動脈硬化に関連する病的状態および慢性または低レベルの炎症反応に関する状態を緩和する方法に関する。
【0010】
本発明は、治療を必要とする哺乳類に、以下の比率:約25,000部のリジン(approximately 25,000 parts of lysine)、約15,000部のプロリン、約8,000部のアルギニン、約80,000部のアスコルビン酸、約30,000部のマグネシウム、約50,000部の緑茶抽出物、約15,000部のN-アセチル-システイン、約5部のセレニウム、約50部の銅および約200部のマンガンでさらなる化合物を含む医薬調合物の有効量を投与する段階を含む、哺乳類におけるアテローム性動脈硬化症、動脈硬化に関連する病的状態および慢性または低レベルの炎症反応に関する状態を緩和する方法であって、前記医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記方法に関する。本発明に用いられる割合が絶対値でないことは理解される。むしろそれらは物質が存在する比率を明確にするために使用される。例えば、医薬調合物が12.5部のリジンおよび7.5部のプロリンを含む場合には、該調合物は本発明の記載に従うとリジンおよびプロリンを25,000部のリジン (2,000の12.5倍)および15,000部のプロリン (2,000の7.5倍)の比率で含むこととなる。さらに好ましくは、上述されるような投与用の医薬調合物は、約25 mgのリジン、約15 mgのプロリン、約8 mgのアルギニン、約80 mgのアスコルビン酸、約30 mgのマグネシウム、約50 mgの緑茶抽出物、約15 mgのN-アセチル-システイン、約5 mcgのセレニウム、約50mcgの銅および約200 mcgのマンガンを含み、前記医薬調合物は7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む。
【0011】
本発明は、治療を必要とする哺乳類に、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む医薬調合物の有効量を投与する段階を含む、哺乳類におけるアテローム性動脈硬化症、動脈硬化に関連する病的状態を緩和し、そして慢性または低レベルの炎症反応に関する状態を抑制する方法であって、前記医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記方法を提供する。
【0012】
場合により、前記調合物の有効量は約0.3 mg/kgのリジン、0.2 mg/kgのプロリン、0.1 mg/kgのアルギニン、1.1 mg/kgのビタミンC、0.4 mg/kgのマグネシウム、0.7 mg/kgの緑茶抽出物および0.2 mg/kgのN-アセチル-システインである1日用量である。
【0013】
好ましくは、前記医薬調合物は経口または非経口形態である。さらに好ましくは、前記経口形態は錠剤またはカプセル剤である。好ましくは、前記医薬調合物は経口で、静脈注射でまたは非経口で投与してもよい。
【0014】
本発明は、リジン、プロリン、アルギニン、アスコルビン酸、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅およびマンガンを含む、慢性または低レベルの炎症反応に関連する病的状態を治療するための調合物を提供する。
【0015】
慢性または低レベルの炎症反応を治療する方法は、変化する副作用の範囲とともに個体間で変化し得る。しかし、これは通常、経口によるリジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む活性調合物であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む、前記活性化合物の投与に関連する。好ましくは前記調合物は、以下の化合物を約25,000部のリジン、約15,000部のプロリン、約8,000部のアルギニン、約80,000部のアスコルビン酸、約30,000部のマグネシウム、約50,000部の緑茶抽出物、約15,000部のN-アセチル-システイン、約5部のセレニウム、約50部の銅および約200部のマンガンの比率で単独の丸剤(pill)に含み、前記医薬調合物は7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む。さらに好ましくは、単独の丸剤は約25 mgのリジン、約15 mgのプロリン、約8 mgのアルギニン、約80 mgのアスコルビン酸、約30 mgのマグネシウム、約50 mgの緑茶抽出物、約15 mgのN-アセチル-システイン、約5 mcgのセレニウム、約50mcgの銅および約200 mcgのマンガンを含み、医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む。
【0016】
単独の丸剤またはカプセル剤の投与を通して、前記調合物は約0.3 mg/kgのリジン、0.2 mg/kgのプロリン、0.1 mg/kgのアルギニン、1.1 mg/kgのビタミンC、0.4 mg/kgのマグネシウム、0.7 mg/kgの緑茶抽出物および0.2 mg/kgのN-アセチル-システインの用量を送達する。前記丸剤またはカプセル剤の投与は、場合により慢性または低レベルの炎症を抑制するのに有効になるまで1日ごとに繰り返される。
【0017】
本発明の医薬調合物が平滑筋細胞増殖の阻害に有効であることが示された。前記調合物は抗高血圧剤のような用途に臨床的妥当性を有する。平滑筋細胞増殖を減少させることにより、前記調合物は血管拡張剤として作用し、全末梢血管抵抗を減少させる。さらに、本発明の医薬調合物は、アテローム性動脈硬化症の発達および進行の原因である平滑筋増殖の阻害を示す。本発明におけるインビトロでの実験により、前記調合物の増殖の阻害剤としての強力な効果が示される(3H-チミジンの取り込みにより測定)。したがって、前記調合物はアテローム性動脈硬化症の発現を軽減する。本発明の医薬調合物はまた、平滑筋の遊走を阻害し、したがってアテローム性動脈硬化症の発達および進行を軽減する。内側平滑筋細胞(medial smooth muscle cells)の内膜への走化性遊走は、アテローム性動脈硬化症の間の新生内膜形成の病因において重要な第一の段階である。PDGFは平滑筋細胞遊走を促進するのに重要な物質であると考えれらている(Russel R. (1986) N. Engl. J. Med. 314 488-500)。本明細書において開示される調合物の筋内膜(myo-intimal)形成を阻害する能力は、1つには、血管平滑筋の中膜から内膜への物質的な遊走を直接阻害することに関する。従って、もう1つの実施態様において本発明は、アテローム性動脈硬化症の発達を阻害するために、哺乳類、好ましくはヒトにおける平滑筋細胞の増殖を阻害して、特に心疾患の発達のリスクである血管におけるその増殖を阻害するための、リジン、プロリン、アルギニン、アスコルビン酸、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅およびマンガン、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬調合物を提供する。もう1つの実施態様において、本発明はまた、アテローム性動脈硬化症の発達を阻害するために、哺乳類、好ましくはヒトにおける平滑筋細胞の増殖および遊走を阻害するための、特に心疾患の発達のリスクである血管におけるその増殖を抑制するための治療方法であって;この方法がリジン、プロリン、アルギニン、アスコルビン酸、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅およびマンガン、およびその薬学的に許容される賦形剤を含む本明細書に開示される医薬調合物の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、前記治療方法を提供する。本発明の調合物が、広い範囲の種々の有糸分裂促進剤を介した血管平滑筋細胞増殖および遊走を阻害するのに有効であることが示される。
【0018】
本発明の調合物はエストロゲン誘導の平滑筋細胞増殖および浸潤を阻害するのに有効である。これらは動脈硬化性プラークの発達と同様に血圧を制御する。リジンおよびプロリンのような成分の複合効果により、重度の結合組織分解を抑制することができ、その結果として増殖および浸潤過程を減らすことができる。さらに、緑茶抽出物およびビタミンCはそれらの抗酸化特性の効力により結合組織分解を鈍らせることができる。驚くべきことに、本発明の調合物に存在する成分が、心血管の分解および癌の発達に関するエストロゲンの効果を相殺するように相乗的に作用することが見出された。有利なことに、本発明の化合物および物質に伴う副作用が検出されず、哺乳類における上述の病的組織を緩和する安全で有効な医薬調合物および治療方法が提供される。さらに前記医薬調合物および治療方法および高価な薬剤の代わりに低コストの非薬剤物質および化合物を用いる本発明の用途に関する。
【0019】
本明細書において使用される場合に、「緩和(alleviating)」という語句は、本発明において示される病的状態に伴う症候群を減少し、阻害し、軽減しまたは治療することを意味するために使用される。緩和は臨床医学者が前記病的状態に伴う症状を観察することにより明らかになる。前記症状はステッドマン」またはシリンベルのような標準的な教科書において詳細に記載されている。緩和は、好ましくは有意な減少、阻害、軽減または治療を示す。有意性は統計学の標準的な方法、例えばStudentのt-検定、カイ二乗検定またはその他により決定することができる。好ましくは、本発明において示される症候群は、エストロゲン療法を受けている更年期以降の女性に共通の症候群である。「エストロゲン療法の症候群」はよく認知された語句であり、本明細書においては主に、エストロゲン置換療法を受けている女性における、高血圧、アテローム性動脈硬化症および乳癌を含む心血管および新生物の問題を示す。
【0020】
「有効量」という語句は、本明細書に記載される種々の病的状態の症状を緩和することができる本発明調合物の量を意味する。
【0021】
キャリアー、希釈剤および賦形剤に関連する「薬学的に許容される」という語句は、それらが製剤の他の成分と適合しなければならず、その服用者に対して有害でないことを意味する。
【0022】
「重量%」は、調合物の全重量部として成分の%を示す;例えば、25重量%のリジンは、調合物の全重量の25%がリジンで構成されていることを示す。
【0023】
「約」という語句は、示される値がある程度変化し得ることを意味する。しかし、前記値は本発明において示される調合物の効果を達成するのに十分なものでなければならない。与えられた値の化合物がこれらの効果を達成するかどうかは、付属の実施例において示されるこれらの試験を含む標準的な技術により測定することができる。好ましくは、前記値の変動は本発明において示される統計的検定により計算される標準偏差の範囲内である。さらに好ましくは、前記値の変動は± 20%、± 15%、± 10%、± 5%、± 2%、± 1%または± 0.5%である。最も好ましくは、「約」という語句は特定の値を示す。
【0024】
本明細書に使用される「リジン」は、リジン塩、好ましくはヒドロキシリジンおよびヒドロキシリジン塩を含む。典型的には、L-リジンは約0.3 mg/kgの1日用量で投与される。L-リジンは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全リジン量は約25ミリグラム(mg)である。
【0025】
本明細書に使用される「プロリン」は、プロリン、プロリン塩、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシプロリン塩を含む。典型的には、L-プロリンは約0.2 mg/kgの1日用量で投与される。L-プロリンは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全プロリン量は約15ミリグラム(mg)である。
【0026】
本明細書に使用される「アルギニン」は、アルギニンおよびアルギニン塩を含む。典型的には、L-アルギニンは約0.1 mg/kgの1日用量で投与される。L-アルギニンは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全アルギニン量は約8 mgである。
【0027】
本明細書に使用される「ビタミンC」は、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩およびその誘導体を含む。本明細書で使用する場合に、アスコルビン酸およびビタミンCは同義的に使用され、好ましくはアスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムまたはアスコルビン酸パルミテートを含む。典型的には、アスコルビン酸は約0.4 mg/kgの1日用量で投与される。アスコルビン酸は1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全アスコルビン酸量は約80 mgである。本出願の特許請求の範囲に記載される種々の化合物を、共有結合化合物の形態で、または物理的な混合物として、またはその他の組み合わせで一緒に使用することができる。
【0028】
本発明はアスコルビン酸塩化合物、プロリン、リジンまたはその任意の組み合わせを含む医薬調合物を提供する。 従って、本発明はアスコルビン酸塩、プロリンまたはリジンに限定されず、本発明の好ましい用途と合致して使用することができる等価な構造を含む。
【0029】
本明細書に使用される「緑茶抽出物」は、緑茶に存在するポリフェノール性化合物を示す。ポリフェノール性化合物は緑茶において30%の乾燥重量まで存在することができる。それらはフラバノール、フラバンジオール、フラボノイドおよびフェノール酸を含む。フラバノールは緑茶において最も豊富なポリフェノールであり、カテキンとして公知である。緑茶抽出物における主なカテキンには、1) (-)-エピカテキン、2) (-)-エピカテキン-3-ガレート、3) (-)-エピガロカテキンおよび4) (-)-エピガロカテキン-3-ガレート (EGCG)が含まれる。カテキンの間では、EGCGが緑茶に存在する主要なポリフェノール性構成成分である。本明細書において使用される場合に、緑茶抽出物は約80重量%のポリフェノールを含み、カフェインは含まない。
【0030】
緑茶抽出物は約0.7 mg/kgの1日用量で投与することができる。緑茶抽出物は1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1日の投与あたりの推奨の全アスコルビン酸量は約50 mgである。
【0031】
本明細書に使用される「N-アセチル-システイン」は、システインまたはシスチン(システインの二量体)およびそのシステイン塩を含む。N-アセチル-システインは約0.2 mg/kgの1日用量で投与することができる。N-アセチル-システインは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全N-アセチル-システイン量は約15 mgである。
【0032】
本発明はさらに無機物および/または微量元素を提供する。微量元素は結合組織に必要な高分子の生成を触媒するのを助けることができる。本発明において好ましい微量元素は鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、セレニウム、クロム、ニッケル、スズ、フッ素またはバナジウムである。
【0033】
マグネシウムは約0.7 mg/kgの1日用量で投与することができる。マグネシウムは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全マグネシウム量は約30 mgである。
【0034】
セレニウムは約0.00007 mg/kgの1日用量で投与することができる。セレニウムは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全セレニウム量は5 mcgである。
【0035】
銅は約0.0007 mg/kgの1日用量で投与することができる。銅は1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全銅量は約50 mcgである。
【0036】
マンガンは約0.04 mg/kgの1日用量で投与することができる。マンガンは1日に1回、2回または3回の投与形態で経口的に投与することができる。体重が72 kgの平均的な個体に対する、1回の投与あたりの推奨の全マンガン量は約200 mcgである。
【0037】
本発明において、調合物のいくつかの成分は高量で存在する。ビタミンCは調合物全体と比較して(キャリアー、賦形剤、充填剤、添加剤等を含まない調合物全体と比較して)20〜30重量%で存在する。緑茶抽出物は11〜25重量%(調合物全体と比較して)で存在し、マグネシウムは7〜9%(調合物全体と比較して)で存在する。
【0038】
前記調合物は場合により1つまたはそれ以上の以下の物質;ビタミン A、ビタミン D3、ビタミン E、ビタミン B1、ビタミン B2、ナイアシン、ビタミン B6、葉酸、ビタミン B12、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、亜鉛、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスバイオフラボノイド、イノシトール、L-カルニチン、コエンザイムQ10、グルコサミン、タウリンおよびコンドロイチン硫酸を含む。好ましくは、前記物質は以下の比率:191 IU (国際単位) のビタミン A、20 IUのビタミン D3、10 IUのビタミン E、1,500部のビタミン B1、1,500部のmg のビタミン B2、10,000部のナイアシン、1,500部のビタミン B6、75部の葉酸、3.3部のビタミン B12、10部のビオチン、5,000部のパントテン酸、15,000部のカルシウム、2,500部の mgのリン、2,500部の亜鉛、5部のクロム、0.5 部のモリブデン、5,000部のカリウム、15,000部のシトラスバイオフラボノイド、5,000部のイノシトール、5,000部のL-カルニチン、2,500部のコエンザイムQ10、25,000部のグルコサミン (N-アセチル-D-グルコサミン)、50,000部のタウリンおよび15,000部のコンドロイチン硫酸の比率で前記調合物に含まれる。さらに好ましくは、これらの物質の量は場合によりおよそ以下;191 IU (国際単位)のビタミン A、20 IUのビタミン D3、10 IUのビタミン E、1.5 mgのビタミン B1、1.5 mgのビタミン B2、10 mgのナイアシン、1.5 mgのビタミン B6、75 mcgの葉酸、3.3 mcgのビタミン B12、10 mcgのビオチン、5 mgのパントテン酸、15 mgのカルシウム、2.5 mgのリン、2.5 mgの亜鉛、5 mcgのクロム、0.5 mcgのモリブデン、5 mgのカリウム、15 mgのシトラスバイオフラボノイド、5 mgのイノシトール、5 mgのL-カルニチン、2.5 mgのコエンザイムQ10、25 mgのグルコサミン (N-アセチル-D-グルコサミン)、50 mgのタウリンおよび15 mgのコンドロイチン硫酸、のとおりである。
【0039】
本発明の調合物は、過剰な平滑筋細胞増殖(平滑筋細胞の過剰増殖)により特徴付けられる心血管系疾患を治療または抑制するのに有用である。疾患が過剰な平滑筋細胞増殖により特徴付けられるかどうかは、標準的な技術を用いて臨床医学者が決定することができる。前記標準的な技術としては、インビボ技術に基づく抗体、生検それに続く組織学的な組織サンプル解析または組織サンプルのフローサイトメトリーを含むことができる。前記調合物は、特に平滑筋細胞の過剰増殖のために頻繁に生じる高血圧およびアテローム性動脈硬化症の治療に有用である。アテローム性動脈硬化症はコレステロール代謝に関連する。弱体化した結合組織により動脈壁におけるプラーク形成が促進されることが知られている。従って、本発明は結合組織を強化するために有効な量のアスコルビン酸塩化合物、リジンおよびプロリンを提供する。アスコルビン酸塩は、線維芽細胞および関連細胞からのコラーゲン、エラスチンおよびその他の結合組織高分子の合成を刺激することが知られている。アミノ酸であるリジンおよびプロリンは、結合組織分子の合成に必要な主要なアミノ酸である。
【0040】
用量必要量は投与の経路、存在する症状の重篤度、および特に治療を受けるものによって変化する。前記調合物の推奨1日用量は経口で投与される。約0.3 mg/kgのリジン、0.2 mg/kgのプロリン、0.1 mg/kgのアルギニン、1.1 mg/kgのビタミンC、0.4 mg/kgのマグネシウム、0.7 mg/kgの緑茶抽出物および0.2 mg/kgのN-アセチル-システインである1日用量が推奨される。丸剤またはカプセル剤の投与が、場合により慢性または低レベルの炎症を抑制するのに有効となるまで1日ごとに繰り返される。
【0041】
本発明の調合物は、経口、静脈注射または非経口投与を含むがそれらに限定されない種々の経路により投与することができる。経口、静脈注射または非経口の投与における正確な用量は、変えることができ、治療を受ける個体の経験に基づいて決められる。好ましくは、前記医薬調合物は例えば錠剤またはカプセル剤のような単位剤形(unit dosage form)である。このような形態において、調合物は適当な量の活性成分を含む単位用量にさらに分割され;前記単位剤形は包装された調合物、例えば包装された散剤、バイアルまたはアンプルでよい。前記単位剤形は、例えばカプセル剤、丸剤または錠剤それ自体でもよく、または適当な数の前記調合物が包装されている形態であってもよい。
【0042】
本発明のもう1つの態様は、有効量の調合物および薬学的に許容されるキャリアー、希釈剤または賦形剤を提供することにある。
【0043】
本発明のもう1つの態様は、リジン、プロリン、アルギニン、アスコルビン酸、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅およびマンガンを含む医薬調合物を提供することにある。
【0044】
本発明の医薬製剤は、当業者に公知の方法により公知で容易に利用できる成分を使用して製造することができる。例えば、本発明の成分は慣用の賦形剤、希釈剤またはキャリアーを用いて製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤等を形成させることができる。前記製剤に適した賦形剤、希釈剤またはキャリアーの例としては、澱粉、糖、マンニトールおよびケイ素誘導体のような充填剤および増量剤;カルボキシメチルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチンおよびポリビニル-ピロリドンのような結合剤;グリセロールのような保湿剤;炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶出を遅延させる物質(agents for retarding dissolution);4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような表面活性剤;カオリンおよびベントナイトのような吸着性キャリアー;およびタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体のポリエチルグリコールのような潤滑剤が挙げられる。
【0045】
本発明の治療用化合物は、その用途を最適化するかまたは促進することができる医薬調合物中に製剤化することができる。特に、前記医薬調合物は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化の治療、および慢性または低レベルの炎症反応の軽減のために有効な量を含む。前記医薬調合物は、多くの場合に薬学的に許容されるキャリアーまたは希釈剤、および適当な場合には賦形剤を含む。
【0046】
前記調合物はまた、便宜的な経口投与のためのエリキシル剤または液剤として、または例えば筋肉内、皮下または静脈内の経路による非経口投与に適した液剤として製剤化することができる。理想的には前記製剤は、丸剤、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、液体の形態または類似の剤形である。前記調合物は徐放剤形等として製剤化されるのが適している。前記製剤は、できる限り一定期間にわたって活性成分のみを、または好ましくは特定の生理的な位置で放出することができるように構成される。コーティング、エンベロープおよび保護基質は、例えば高分子材料またはワックスから作ることができる。
【0047】
本発明の医薬製剤は、当業者に公知の方法により公知で容易に利用できる成分を使用して製造することができる。例えば、エストロゲンまたはプロゲスチン化合物を伴うまたは伴わない式Iの化合物は、慣用の賦形剤、希釈剤またはキャリアーを用いて製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤等を形成させることができる。前記製剤に適した賦形剤、希釈剤またはキャリアーの例としては、澱粉、糖、マンニトールおよびケイ素誘導体のような充填剤および増量剤;カルボキシメチルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチンおよびポリビニル-ピロリドンのような結合剤;グリセロールのような保湿剤;炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶出を遅延させる物質;4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような表面活性剤;カオリンおよびベントナイトのような吸着性キャリアー;およびタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体のポリエチルグリコールのような潤滑剤が挙げられる。
【0048】
前記化合物はまた、便宜的な経口投与のためのエリキシル剤または液剤として、または例えば筋肉内、皮下または静脈内の経路による非経口投与に適した液剤として製剤化することができる。さらに、前記化合物は徐放剤形等として製剤化されるのが適している。前記製剤は、できる限り一定期間にわたって活性成分のみを、または好ましくは特定の生理的な位置で放出することができるように構成される。コーティング、エンベロープおよび保護基質は、例えば高分子材料またはワックスから作ることができる。
【0049】
特に定義しない限り、本明細書において使用される全ての科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を有する。典型的な方法および材料を以下に記載するが、これらと同等のものを使用することができる。本明細書において言及される全ての刊行物およびその他の引用文献は参照することによりそのまま組み込まれる。
【0050】
図1は平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のEGCGと比較したXR296の効果を示す。ヒト平滑筋細胞における[3H]チミジンの取り込みは、新規DNA合成および細胞増殖の指標である。チミジンの取り込みはコントロール群の値(100%)の割合として表す。
【0051】
図2は、平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のアスコルビン酸と比較したXR296の効果を示す。ヒト平滑筋細胞における[3H]チミジンの取り込みは、新規DNA合成および細胞増殖の指標である。チミジンの取り込みはコントロール群の値(100%)の割合として表す。
【0052】
図3は、平滑筋細胞におけるTNFα刺激によるIL-6分泌に対する本発明調合物(XR296)(100 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかのXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0053】
図4は、平滑筋細胞によるIL-1βのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0054】
図5は、平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるMCP-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0055】
図6は、平滑筋細胞によるP-セレクチンのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(2.2 mcg/ml、6.7 mcg/mlおよび20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0056】
図7は、平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるICAM-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0057】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。本発明は、開示される好ましい実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更するものでない限り全ての変更、代替の態様を含むものである。
【実施例】
【0058】
実施例:実験の説明およびプロトコール
平滑筋細胞の増殖率試験
説明:上述のように平滑筋細胞の過剰な増殖は、アテローム硬化性の過程の促進に直接関連する。培養細胞の増殖率は、インキュベーション期間内の細胞DNAに取り込まれるトリチウムラベル化代謝前駆体の量により評価される新規DNA合成(すなわち[3H]チミジンの取り込み)によって見積もられる。
【0059】
心血管系疾患進行の指標としての平滑筋細胞増殖
病的刺激に応答して、平滑筋細胞がまず動脈壁の中膜層から内膜層へと遊走し、その後内膜層内で増殖する。これらの事象が動脈硬化性プラークの最初の発達においてとても重大である。内膜層におけるアテローム硬化性病変の形成が、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋虚血、梗塞および脳卒中を含む多くの心血管系疾患において起こる(非特許文献1)。本発明調合物は、平滑筋細胞の浸潤および増殖を阻害し、従ってアテローム性動脈硬化症および動脈硬化の進行を抑制するように設計されている。
【0060】
以下の実験において使用される「調合物」は、リジンが1グラムで存在し、プロリンが750 mgで存在し、アルギニンが500 mgで存在し、アスコルビン酸が 710 mgで存在し、マグネシウムが 50 mgで存在し、緑茶抽出物が1 グラムで存在し、N-アセチル-システインが 200 mgで存在し、セレニウムが30 mcgで存在し、銅が2 mgで存在し、そしてマンガンが1 mgで存在する、特定成分を特定の量で含む調合物を表す。前記調合物を含むカプセル剤をまず培地に溶解し、使用する前に適当な濃度に希釈する。
【0061】
図1に示すデータは、平滑筋細胞におけるインビトロ実験を示す。示されるように、図1は平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のEGCGと比較したXR296の効果を示す。ヒト平滑筋細胞における[3H]チミジンの取り込みは、新規DNA合成および細胞増殖の指標である。図2は、平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のアスコルビン酸と比較したXR296の効果を示す。ヒト平滑筋細胞における[3H]チミジンの取り込みは、新規DNA合成および細胞増殖の指標である。チミジンの取り込みはコントロール群の値(100%)の割合として表す。
【0062】
平滑筋細胞の増殖率試験
ヒト大動脈平滑筋細胞(SMC)をClonetics社から購入した。SMCを、100 units/mlのペニシリン、0.1 mg/mlのストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(本明細書においてはDMEMと呼ぶ)および10%のFBS (v/v)中で、5%のCO2を含む加湿した大気における37°Cで培養し、コンフルエンスに達するまで1:3〜1:5に分裂させた。継代が5〜8代のSMCを実験に使用した。
【0063】
SMC増殖を、細胞の遺伝物質への[3H]-チミジンの取り込みにより評価した。細胞は、2%のFBSを添加した0.5 mlのDMEMにおいて、1 cm2あたり10,000個の細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。プロトコールで記載されるようにフレッシュな培地および添加物を、24時間ごとに接着した細胞に供給した。XR296の原液を、1日ごとに細胞培養培地に添加する直前に、DMEMに10 mg/mlの濃度で溶解させ、1分間激しく撹拌し、そして0.2 μmの滅菌フィルターを通してろ過することにより調製した。実験の最後の24時間に1 μCi/mlの[3H]-チミジンを細胞培養に添加し、3日後に細胞増殖を測定した。細胞を、冷却したpH 7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、10%のトリクロロ酢酸とともに4°Cで15分間インキュベートし、冷エタノールで洗浄し、風乾し、0.5 Nの水酸化ナトリウムで可溶化し、そしてその後に塩酸で中和した。サンプルをシンチレーション液と混合し、液体シンチレーションカウンター(6500 LSモデル、Beckman Instruments社、USA)を用いて計測した。細胞DNAに取り込まれた放射活性を1ウェルあたりd/minとして表した。
【0064】
自己分泌炎症反応の指標としての平滑筋細胞におけるサイトカインの発現
説明:炎症反応におけるサイトカインの発現およびその関与が知られている。心血管系疾患で現れる血管および平滑筋の病変が、アテローム性動脈硬化症および高血圧の間の炎症反応の1つであるということが最近認められてきた。インターロイキン-6は炎症過程を引き起こす重要なサイトカインの1つである。病的刺激下にある平滑筋細胞におけるインターロイキン-6の過剰発現は、さらに炎症性病変を増幅する。本発明調合物は平滑筋細胞におけるサイトカイン生成(特にインターロイキン-6)の過剰発現を阻害するように設計されている。平滑筋細胞におけるインターロイキン-6の発現を阻害することにより、アテローム性動脈硬化症の治療、および低レベルの慢性炎症および炎症反応の効果の軽減において本発明調合物が改善手段となる。
【0065】
図3に示すように、本発明調合物XR296においては、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、 緑茶抽出物、およびプロリン、リジンおよびアルギニンのようなアミノ酸のようないくつかの成分が、その他の成分より比較的大きな割合で存在するが、実際にはマグネシウム、マンガン、銅およびセレニウムの存在により追加的な有益な効果が提供される。従って無機物を含むこれらの成分の全ての存在により、その他の成分単独、またはマグネシウム、セレニウム、マンガンおよび銅を除いたお互いの組み合わせにおいては見られない相乗効果が提供される。
【0066】
サイトカイン発現試験
細胞内サイトカイン(IL-6、IL-1ベータ、MCP-1、P-セレクチンおよびICAM-1)産生のレベルは炎症反応の刺激の指標である。さらに、これらのサイトカインの産出が種々の段階の炎症反応を刺激する。例えば、IL-6およびIL-1ベータは基本的な炎症反応のメディエーターであり、MCP-1は単球を血流から動脈壁へ誘引する化学誘引物質であり、そしてP-セレクチンおよびICAM-1は白血球の動脈壁細胞(内皮および平滑筋細胞)への接着を仲介する。
【0067】
細胞培養用プラスチック容器はCostar社から購入し、細胞培養培地成分はGIBCO社から購入した。その他の試薬はSigma社から購入した。ヒト大動脈平滑筋細胞(SMC; Clonetics社)を、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したDMEM中において37°Cおよび5% CO2で培養し、5代〜8代の継代で実験に使用した。サイトカイン発現試験のために、SMCを1ウェルあたり50,000個の細胞となるように24ウェルプラスチックプレートに播種し、コンフルエントになるまで増殖させた。細胞培養培地を、血清なしのDMEMに0.1%のウシ血清タンパク質および指定された量の栄養混合物を添加した培地に置換した。24時間のインキュベーションの後、培地を同量の栄養混合物、および刺激物質である10 ng/mLの腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)または0.1 mg/mLの細菌性リポ多糖(LPS)を含むか、またはコントロールとして刺激物質を含まないフレッシュなDMEM/BSA培地で置換した。24時間のインキュベーションで馴化培地を回収し、サイトカイン試験のために個別に-80°Cで凍結させた。細胞の層をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、0.1NのNaOHに37°Cで2時間溶解させた後に、細胞タンパク質をBCA protein micromethod(Pearce製)により測定した。使用した実験条件において、1ウェルあたりの細胞タンパク質の含量は、細胞の生存が損なわれないコントロールである非添加サンプルと有意な差異はなかった。細胞馴化培地におけるサイトカインのレベルは、ELISAキット(Quantikine、R&D Systems製)を用いて取扱説明書の記載に従って測定した。全ての実験は3重に少なくとも2回ずつ実施した。代表的な実験の結果を、実験サンプルにおける平均サイトカイン濃度(+/- SD)として表した。
【0068】
図3に示すように、平滑筋細胞におけるTNFα刺激によるIL-6分泌に対する本発明調合物(XR296)(100 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかのXR296に存在する濃度での効果と比較した。
【0069】
図4は、平滑筋細胞によるIL-1βのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0070】
図5は、平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるMCP-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0071】
図6は、平滑筋細胞によるP-セレクチンのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(2.2 mcg/ml、6.7 mcg/mlおよび20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【0072】
図7は、平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるICAM-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のEGCGと比較したXR296の効果を示す。
【図2】図2は、平滑筋細胞増殖の阻害における、当量濃度のアスコルビン酸と比較したXR296の効果を示す。
【図3】図3は、平滑筋細胞におけるTNFα刺激によるIL-6分泌に対する本発明調合物(XR296)(100 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかのXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【図4】図4は、平滑筋細胞によるIL-1βのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【図5】平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるMCP-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【図6】図6は、平滑筋細胞によるP-セレクチンのリポ多糖誘導性分泌における本発明調合物(XR296)(2.2 mcg/ml、6.7 mcg/mlおよび20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの4倍濃度XR296(80 mcg/ml)に存在する濃度での効果と比較したグラフである。
【図7】図7は、平滑筋細胞による10 ng/ml のTNFαに刺激されるICAM-1分泌における本発明調合物(XR296)(20 mcg/ml)の効果を、その各成分のうちのいくつかの160 mcg/mlであるXR296に存在する濃度での効果と比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む医薬調合物であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む前記医薬調合物。
【請求項2】
過剰な平滑筋細胞増殖(平滑筋細胞の過剰増殖)を特徴とする心血管系疾患の緩和または抑制用の医薬調合物を製造するために、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む調合物を使用する方法であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む、前記使用方法。
【請求項3】
前記疾患が動脈硬化またはアテローム性動脈硬化症である、請求項2記載の使用方法。
【請求項4】
炎症反応の緩和または抑制用の医薬調合物を製造するために、リジン、プロリン、アルギニン、ビタミンC、マグネシウム、緑茶抽出物、N-アセチル-システイン、セレニウム、銅、マンガン、およびキャリアー、希釈剤および賦形剤からなる群から選択される薬学的に許容される成分1種を含む調合物を使用する方法であって、前記許容可能な成分を除いた医薬調合物が7〜9重量%のマグネシウム、20〜30重量%のアスコルビン酸および11〜25重量%の緑茶抽出物を含む、前記使用方法。
【請求項5】
前記医薬調合物が経口、静脈注射または非経口で投与される、請求項2〜4のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項6】
前記調合物が、約25,000部のリジン、約15,000部のプロリン、約8,000部のアルギニン、約80,000部のアスコルビン酸、約30,000部のマグネシウム、約50,000部の緑茶抽出物、約15,000部のN-アセチル-システイン、約5部のセレニウム、約50部の銅および約200部のマンガンの比率でこれらの化合物を提供する、請求項1記載の医薬調合物または請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項7】
前記調合物が、約25 mgのリジン、約15 mgのプロリン、約8 mgのアルギニン、約80 mgのアスコルビン酸、約30 mgのマグネシウム、約50 mgの緑茶抽出物、約15 mgのN-アセチル-システイン、約5 mcgのセレニウム、約50mcgの銅および約200 mcgのマンガンである用量を提供する、請求項1記載の医薬調合物または請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項8】
前記調合物が、約0.3 mg/kgのリジン、0.2 mg/kgのプロリン、0.1 mg/kgのアルギニン、1.1 mg/kgのビタミンC、0.4 mg/kgのマグネシウム、0.7 mg/kgの緑茶抽出物および0.2 mg/kgのN-アセチル-システインである1日用量を提供する、請求項1記載の医薬調合物または請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法または請求項6記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項9】
前記調合物が以下の物質:ビタミン A、ビタミン D3、ビタミン E、ビタミン B1、ビタミン B2、ナイアシン、ビタミン B6、葉酸、ビタミン B12、ビオチン、パントテン酸、カルシウム、リン、亜鉛、クロム、モリブデン、カリウム、シトラスバイオフラボノイド、イノシトール、L-カルニチン、コエンザイムQ10、グルコサミン、タウリンおよびコンドロイチン硫酸のうちの1種またはそれ以上をさらに含む、請求項1記載の医薬調合物または請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法または請求項6または7のいずれか1つに記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項10】
前記物質が以下の比率:191 IU (国際単位) のビタミン A、20 IUのビタミン D3、10 IUのビタミン E、1,500部のビタミン B1、1,500部のmg のビタミン B2、10,000部のナイアシン、1,500部のビタミン B6、75部の葉酸、3.3部のビタミン B12、10部のビオチン、5,000部のパントテン酸、15,000部のカルシウム、2,500部の mgのリン、2,500部の亜鉛、5部のクロム、0.5 部のモリブデン、5,000部のカリウム、15,000部のシトラスバイオフラボノイド、5,000部のイノシトール、5,000部のL-カルニチン、2,500部のコエンザイムQ10、25,000部のグルコサミン (N-アセチル-D-グルコサミン)、50,000部のタウリンおよび15,000部のコンドロイチン硫酸の比率で前記調合物に含まれる、請求項8記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項11】
前記調合物が1種またはそれ以上の物質を以下の量:約191 IUのビタミン A、約20 IUのビタミン D3、約10 IUのビタミン E、約1.5 mgのビタミン B1、約1.5 mgのビタミン B2、約10 mgのナイアシン、約1.5 mgのビタミン B6、約75 mcgの葉酸、約3.3 mcgのビタミン B12、約10 mcgのビオチン、約5 mgのパントテン酸、約15 mgのカルシウム、約2.5 mgのリン、約2.5 mgの亜鉛、約5 mcgのクロム、約0.5 mcgのモリブデン、約5 mgのカリウム、約15 mgのシトラスバイオフラボノイド、約5 mgのイノシトール、約5 mgのL-カルニチン、約2.5 mgのコエンザイムQ10、約25 mgのグルコサミン (N-アセチル -D-グルコサミン)、約50 mgのタウリンおよび/または約15 mgのコンドロイチン硫酸、で含む、請求項8記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項12】
前記調合物が経口用形態である、請求項1記載の医薬調合物、請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法または請求項6〜9のいずれか1つに記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項13】
前記経口用形態が錠剤、丸剤またはカプセル剤である、請求項10記載の医薬調合物または使用方法。
【請求項14】
前記調合物が非経口用形態である、請求項1記載の医薬調合物、請求項2〜5のいずれか1つに記載の使用方法または請求項6〜9のいずれか1つに記載の医薬調合物または使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−509877(P2008−509877A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525061(P2006−525061)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009263
【国際公開番号】WO2005/023239
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503454872)
【Fターム(参考)】