説明

通行制御装置

【課題】円滑な通行を妨げることなく、共連れ入場を確実に阻止できる通行制御装置の提供。
【解決手段】通行制御装置1は、管理領域と開放領域とを結ぶ通路を管理領域側で仕切る内扉2と、開放領域側で仕切る外扉3と、有資格者の通行時に内扉2及び外扉3をインターロック制御にて一時的に解除する扉制御部4と、有資格者を認証して認証信号を出力する認証部6と、認証部6と内扉2との間の動線を撮像する撮像部8と、撮像部8により撮像された画像及び認証信号に基づき有資格者と無資格者を区別して追跡し、待機領域内に無資格者が位置するときは異常信号を出力し、待機領域内に無資格者が位置しないときは異常信号を停止する不正通行検出部5と、を備え、扉制御部4は、異常信号が出力されているときは内扉2を解除不能に制御し、異常信号が出力されていないときは内扉2を解除可能に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放領域と管理領域の間の通行を管理する通行制御装置に関するものであり、特に無資格者の共連れ入場を阻止する通行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防犯意識の高まりから、昨今、認証操作を行って認証を得た有資格者のみに対して一時的に扉を解除する通行制御装置の導入が進んでいる。このような通行制御装置においては有資格者の通行時に無資格者が入場する「共連れ入場」の問題が知られている。
【0003】
特許文献1には、同時開放不能に制御される2つの扉に挟まれた認証室を撮像した画像を処理して認証室に存在する人の数を計数し、計数された人数が複数の場合に不正と判定して入室を阻止するよう扉を制御する入室管理システムが記載されている。
この従来技術によれば、人数計測に応じ2つの扉を制御することで共連れ入場を阻止できる。
【特許文献1】特開2006−209728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、共連れが判定された場合に有資格者を含む全員が認証室から一度出るなどして判定をリセットさせてから再度認証操作を行わなくてはならず、有資格者の円滑な通行が妨げられていた。
【0005】
また、退場者は入場者が2つの扉を通過し終わるまで待たなくてはならず円滑な通行が妨げられていた。
【0006】
そこで、本発明は、円滑な通行を妨げることなく、共連れ入場を確実に阻止できる通行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために本発明は、開放領域と管理領域を結ぶ通路に設けられた待機領域と開放領域の境界に設置された外扉と、待機領域と管理領域の境界に設置された内扉とを制御して通行者の通行を規制する通行制御装置であって、外扉及び内扉をインターロック制御する扉制御部と、通行者による認証操作に基づいて通行者が有資格者か否かを判定し、有資格者と判定すれば認証信号を出力する認証部と、通行者の認証操作した場所から内扉までの動線及び待機領域を少なくとも撮像する撮像部と、撮像部により撮像された画像を用いて、有資格者を追跡するとともに、待機領域内に有資格者以外の通行者が存在していると異常信号を出力し、存在していないと異常信号を停止する不正通行検出部と、を備え、扉制御部は、異常信号が出力されているときは内扉を通行不能且つ外扉を通行可能に制御することを特徴とした通行制御装置を提供する。
かかる構成によれば、共連れ発生により出力された異常信号は、待機領域から無資格者が退去するだけで停止される。そのため、有資格者に手間をかけさせずに異常を復旧させることができ、有資格者の円滑な通行が可能となる。一方、無資格者が残留中は内扉が解除されないため、無資格者の入場は確実に阻止される。
【0008】
また、本発明の好適な態様においては、不正通行検出部は、内扉から待機領域内に入った通行者を有資格者とする。
かかる構成によれば、既に認証を得て管理領域に居た退場者に対して異常信号を出力することがなくなり、退場者と認証操作済みの入場者が同時通行できるため、通行の円滑化を図ることができる。
【0009】
また、本発明の好適な態様においては、認証部は、開放領域に設置される。
かかる構成によれば、認証操作が未完了の入場者が認証部の近傍に滞留していても退場者に対する扉の解除ができるので、退場者の円滑な通行が可能となる。
【0010】
また、本発明の好適な態様においては、待機領域に設置され、異常信号が入力されると予め設定された警告を出力する警告部、をさらに備える。
かかる構成によれば、待機領域内に居る無資格者の退去が促されて、早期の復旧が可能となる。
【0011】
また、本発明の好適な態様においては、扉制御部は、異常信号が出力されている間、外扉を通行可能に維持する。
かかる構成によれば、無資格者が退去するときに改めて外扉を解除する必要がなくなるので、有資格者は待たされる時間が短縮されて円滑な通行が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円滑な通行を妨げることなく、共連れ入場を確実に阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態として、マンションのエントランスにおいて通行者の入退場を管理する通行制御装置1の例を説明する。
【0014】
図1及び図2に通行制御装置1の構成を示す。
【0015】
マンションの居住区は有資格者のみが入場を許可された管理領域(第一の領域)である。マンションの外は無資格者の滞在が許容された開放領域(第二の領域)である。
管理領域と開放領域とを結ぶ通路において、管理領域側には内扉2(第一の扉)が設置され、開放領域側には外扉3(第二の扉)が設置される。2つの扉は同時解除不能に制御される。このような制御はインターロック制御と呼ばれる。
インターロック制御により一方の扉が閉鎖状態へ移行完了して他方の扉が解除状態へ移行可能となるまでの間、通行者は2つの扉の間に形成された空間で待機することになる。この空間を待機領域(第三の領域)と称する。
【0016】
2つの扉は制御線を介して扉制御部4と接続される。扉制御部4は2つの扉の他に不正通行検出部5、認証部6及び通行者検知部7とも接続される。不正通行検出部5は扉制御部4の他に認証部6、撮像部8及び警告部9とも接続される。
【0017】
以下、通行制御装置1を構成する各部について説明する。
【0018】
内扉2及び外扉3のそれぞれは、通常時は閉鎖状態を維持し、解除信号が入力されると一時的に解除状態となる。
本実施形態において、各扉は自動ドアであり、閉鎖状態では通路を封鎖する位置に戸板を移動させて通行を阻止し、解除状態では通路を開放する位置に戸板を移動させて通行阻止を解除する。
各扉は戸板の位置を検出するエンコーダ(不図示)又はスイッチ式のセンサ(不図示)を備え、扉制御部4は制御線を介して各扉が閉鎖状態か開放状態かを確認することができる。
別の実施形態では、各扉は電気錠を備えた手動式のドアであり、閉鎖状態では電気錠を施錠して通行を阻止し、解除状態では電気錠を解錠させて通行阻止を解除する。
【0019】
扉制御部4は、不正通行検出部5からの異常信号、認証部6からの認証信号、及び通行者検知部7からの検知信号を処理して、内扉2及び外扉3へ解除状態への移行を指示する解除信号、及び閉鎖状態への移行を指示する閉鎖信号等を出力する処理装置である。詳細は後述する。
【0020】
不正通行検出部5は、認証部6からの認証信号、及び撮像部8からの画像を処理して無資格者が待機領域に進入する不正通行を検出し、不正通行を検出すると異常信号を扉制御部4へ出力する処理装置である。詳細は後述する。
【0021】
認証部6は、通行者による操作を検出して検出された操作に基づき当該通行者が有資格者であるか否かを判定し、有資格者と判定した場合に扉制御部4及び不正通行検出部5へ認証信号を出力する。
本実施形態において、認証部6はカードリーダーとインターホン玄関機とが一体に構成された受付装置である。認証部6は、居住者が予め配布されたIDカードを読み取り操作すると当該居住者を有資格者と判定し、また、客人が呼出操作を行いこれに対し居住者が許可操作を行うと当該客人を有資格者と判定する。
別の実施形態においては、生体認証装置に対する生体情報の入力操作、暗証番号照合装置に対する暗証番号入力操作、又は錠装置に対する鍵操作に基づき通行者が有資格者であるか否かを判定する。
【0022】
認証部6は、開放領域又は待機領域に設置される。
ここで、居住者がIDカードを取り出すのにもたつく、客人と居住者が対話するなど、認証部6の近傍においては入場者の滞留がしばしば生じる。滞留の間、これらの入場者は未だ認証を得ていない無資格者である。そのため、認証部6を待機領域に設置すると認証操作が完了するまで内扉2を解除することができず、退場者の通行の妨げとなる。
そのため、認証部6は図1に示したように開放領域に設置されるのが望ましい。
これにより認証操作が未完了の入場者が認証部6の近傍に滞留していても退場者に対する内扉2の解除ができるので、退場者の円滑な通行が可能となる。
【0023】
通行者検知部7は、扉付近に設置され、内扉2及び外扉3を通行しようとする通行者を検知する赤外線センサ等のセンサである。通行者を検知すると扉制御部4へ検知信号を出力する。
通行者検知部7−1は待機領域内の外扉3付近に設置されて待機領域内の退場希望者を検知する。通行者検知部7−1を他と区別するために外扉側退場者検知部7−1と称する。
通行者検知部7−2は待機領域内の内扉2付近に設置されて待機領域内の入場希望者を検知する。通行者検知部7−2を内扉側入場者検知部7−2と称する。
通行者検知部7−3は管理領域内の内扉2付近に設置されて管理領域内の退場希望者を検知する。通行者検知部7−3を内扉側退場者検知部7−3と称する。
別の実施形態において通行者検知部7は、カードリーダー等の認証装置、マットセンサ、又は押し釦式スイッチ等とすることができる。
【0024】
撮像部8は、監視カメラである。撮像部8は、撮像範囲に少なくとも認証部6及び待機領域を含む。すなわち、撮像部8は、認証部6と内扉2との間の通行者の動線及び待機領域を少なくとも撮像する。撮像部8は、一定時間間隔にて撮像を行い、撮像された画像を不正通行検出部5へ出力する。以下、撮像部8により撮像された画像を監視画像と称し、上記一定時間で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
【0025】
本実施形態において、撮像部8は同期した2つの監視カメラであり、それぞれが魚眼レンズを備える。撮像部8−1は、開放領域の天井に光軸を鉛直下方へ向けて設置され、開放領域の認証部6と外扉3を含む領域を撮像する。撮像部8−2は、待機領域の天井に光軸を鉛直下方へ向けて設置され、待機領域全体を撮像する。
認証部6が待機領域に設置される別の実施形態においては、撮像部8−1は必須ではなく、少なくとも撮像部8−2があればよい。
【0026】
警告部9は、待機領域に設置され、不正通行検出部5から異常信号が入力されると無資格者に対して予め設定された警告音を出力するスピーカー、又はブザー等の音響出力手段である。警告部9は、異常信号が入力されている間、警告音を繰り返し出力する。
別の実施形態では、異常信号が入力されると無資格者に対して予め設定された警告表示を行うLEDパネル、又は液晶ディスプレイ等の表示手段である。
これにより待機領域内に居る無資格者の退去が促されて、早期の復旧が可能となる。
【0027】
ここで、無資格者は不審者とは限らず、うっかり認証操作を忘れた居住者も含まれる。そこで、警告の内容は、認証操作の要求から退去の要求へと段階的に変化させることで居住者に与える不快感を軽減することができる。具体的には、例えば、繰り返しの1〜3回目は「認証操作を行っていない方は入れません。認証操作を行ってください」という内容とし、4回目以降は「認証操作を行っていない方は出てください」という内容とする。
【0028】
図2に不正通行検出部5の構成を示す。
【0029】
不正通行検出部5は、画像入力手段50、認証信号入力手段51、異常信号出力手段52及び記憶手段53が、画像処理手段54に接続されてなる。
【0030】
画像入力手段50は、撮像部8とのインターフェース回路であり、撮像部8により撮像された画像信号を画像処理手段54へ入力する。
【0031】
認証信号入力手段51は、認証部6とのインターフェース回路であり、認証部6からの認証信号を画像処理手段54へ入力する。
【0032】
異常信号出力手段52は、扉制御部4及び警告部9とのインターフェース回路であり、画像処理手段54からの異常信号を扉制御部4及び警告部9へ出力する。
【0033】
記憶手段53は、ROM、RAM等のメモリ装置であり、各種プログラムや各種データを記憶し、これらの情報を画像処理手段54との間で入出力する。
各種データには、監視画像における各通行者の位置の履歴、各通行者が有資格者であるか無資格者であるかを表す属性の情報、及び各通行者を識別する画像特徴である参照画像情報からなる通行者情報と、入場者が認証部6に対し認証操作を行う際に滞留する監視画像内の領域である認証領域と、監視画像における外扉2の領域を示す外扉領域とを含む。通行者情報は処理の過程で得られ、認証領域及び外扉領域は不図示のマウスやキーボードを用いて予め設定される。
【0034】
図3は、監視画像を例示したものである。
【0035】
撮像部8−1により開放領域が撮像された監視画像10−1においては、外扉領域11−1と認証領域12が設定されている。撮像部8−2により待機領域が撮像された監視画像10−2においては、外扉領域11−2が設定されている。
【0036】
画像処理手段54は、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置であり、記憶手段53からプログラムを読み出して実行することにより画像処理手段として動作する。
【0037】
画像処理手段54は、監視画像を分析して開放領域及び待機領域に存在する通行者の位置を個々に追跡するとともに、認証信号が入力されたときに認証領域に位置する通行者の属性を有資格者に設定し、待機領域内に有資格者の属性が設定されていない無資格者の存在を検出すると異常信号を出力し、待機領域内に無資格者の存在を検出しないと異常信号を出力しない。
こうすることで、共連れが発生して異常信号が出力された後、待機領域内に進入した無資格者が開放領域に退去するだけで異常信号の出力を停止できる。そのため、有資格者に手間をかけさせずに異常を復旧させることができ、有資格者の円滑な通行が可能となる。
一方、有資格者が待機領域から出て無資格者のみが残ったとしても異常信号の出力は停止されず、無資格者の入場は確実に阻止される。
【0038】
追跡についてより具体的に説明を行う。
【0039】
不正通行検出部5は、撮像部8−1により撮像された監視画像を画像処理して開放領域内での追跡を行い、撮像部8−2により撮像された監視画像を画像処理して待機領域内での追跡を行う。
不正通行検出部5は、背景差分処理により監視画像から通行者の像を検出し、検出された通行者の像から画像特徴を抽出し、抽出された画像特徴と参照画像情報との類似度を算出し、算出された類似度が予め定めたしきい値を超える像を通行者情報が表す通行者の像として同定することで個々の通行者を追跡する。そして、不正通行検出部5は、各通行者の像の重心位置を演算し、演算した重心位置を同定された通行者情報に追記し、通行者の像から抽出した画像特徴で同定された通行者情報の参照画像情報を更新する。
【0040】
ここで、通行者が外扉3を通過するとき、開放領域側での追跡結果と待機領域側での追跡結果において同時刻に新規出現と消失が生じる。
そこで、不正通行検出部5は、開放領域側に設定された外扉領域と待機領域側に設定された外扉領域との間で、一方の外扉領域において新規出現した通行者の像と他方の外扉領域において消失した通行者情報との同定を許容して追跡を行う。
こうすることで外扉3を通過する通行者を確実に追跡することができる。
【0041】
また、退場者は既に認証を得て管理領域にいた有資格者である。
そこで、不正通行検出部5は、待機領域において新規出現した通行者、すなわち内扉から前記待機領域内に入った通行者の属性を有資格者に設定する。
こうすることで、退場者に対して異常信号を出力することがなくなり、退場者と認証操作済みの入場者の同時通行を許容できる。そのため、通行の円滑化を図ることができる。
【0042】
図4に扉制御部4の構成を示す。
【0043】
扉制御部4は、異常信号入力手段40、認証信号入力手段41、検知信号入力手段42、記憶手段43及び扉信号入出力手段44が、制御手段45に接続されてなる。
【0044】
異常信号入力手段40は、不正通行検出部5とのインターフェース回路であり、不正通行検出部5からの異常信号を制御手段45へ出力する。
【0045】
認証信号入力手段41は、認証部6とのインターフェース回路であり、認証部6からの認証信号を制御手段45へ入力する。
【0046】
検知信号入力手段42は、通行者検知部7とのインターフェース回路であり、通行者検知部7からの検知信号を制御手段45へ入力する。
【0047】
記憶手段43は、ROM、RAM等のメモリ装置であり、各種プログラムや各種データを記憶し、これらの情報を制御手段45との間で入出力する。
【0048】
扉信号入出力手段44は、内扉2及び外扉3とのインターフェース回路であり、制御手段45からの解除信号及び閉鎖信号を各扉へ出力したり、各扉の状態(解除状態/閉鎖状態)を表す信号を制御手段45へ入力したりする。
【0049】
制御手段45は、DSP、MCU等の演算装置であり、記憶手段43からプログラムを読み出して実行することにより制御手段として動作する。
制御手段45は、内扉2及び外扉3を同時解除不能に制御する所謂インターロック制御を行うとともに、異常信号が入力されているときは内扉2を通行不能(解除不能)に維持し且つ外扉3を通行可能(解除可能)に制御する限定的なインターロック制御を行う。異常信号が入力されていないときは上述した通常のインターロック制御となる。
こうすることで、無資格者は管理領域へ入場できず且つ開放領域へ退去できるだけとなる。共連れ入場の確実な阻止及び異常からの復旧が可能となる。
【0050】
具体的には扉制御部4は、次の制御を行う。
扉制御部4は、認証信号が入力された場合及び検知信号が入力された場合、少なくとも一方の扉が閉鎖状態であることを条件に他方の扉へ解除信号を出力する。これに加えて、内扉2への解除信号の出力には異常信号が入力されていないことを条件とする。
また、制御手段45は、不図示のタイマーを備え、解除信号の出力後に所定時間が経過すると解除した扉へ閉鎖信号を出力する。
【0051】
ここで、待機領域に無資格者が存在する場合に外扉3を閉鎖してしまうと無資格者が退去するときに外扉3の解除及び閉鎖を行うこととなり、外扉3が閉鎖完了するまで内扉2を解除できない。この間、有資格者は待機領域で待たされることとなり、円滑な通行の妨げとなる。
そこで、扉制御部4は、異常信号が入力されている間は外扉3を通行可能に維持する(外扉3の解除状態を維持する)。
これにより、有資格者が待たされる時間が短縮されて、円滑な通行が可能となる。
【0052】
以下、通行制御装置1の動作を説明する。
【0053】
不正通行検出部5の動作を説明する。図5は画像処理手段54が実行する処理のフローチャートを示したものである。
【0054】
不正通行検出部5には撮像部8から一定時間おきに監視画像が入力され(S100)、不正通行検出部5は監視画像が入力される度にS101〜S116の処理を繰り返す。
【0055】
まず、不正通行検出部5は、撮像部8−1からの監視画像に基づき開放領域内の通行者に対する追跡処理を行い、撮像部8−2からの監視画像に基づき待機領域内の通行者に対する追跡処理を行い、通行者情報を更新する(S101)。この時点で、各領域において新規出現とされた通行者については新たな通行者情報を登録して仮登録フラグを追記しておき、各領域において消失とされた通行者情報については未だ登録抹消せずに消失フラグを追記しておく。
【0056】
次に、不正通行検出部5は、領域ごとに得られた追跡結果を必要に応じて関連付ける。
すなわち、不正通行検出部5は、仮登録フラグが記された通行者情報のうち出現位置(最初の位置)が扉領域内である通行者情報、及び消失フラグが記された通行者情報のうち消失位置(最後の位置)が外扉領域内である通行者情報を、領域間を移動した通行者によるものとして検出し、検出があれば(S102−YES)、検出された通行者情報のうち同一の通行者によるものをマージすることで追跡の引継ぎを行う(S103)。
【0057】
具体的には、消失位置が開放領域側の外扉領域内である通行者情報を、出現位置が待機領域側の外扉領域内である通行者情報にマージして仮登録フラグと消失フラグを削除し、消失位置が待機領域側の外扉領域内である通行者情報を、出現位置が開放領域側の外扉領域内である通行者情報にマージして仮登録フラグと消失フラグを削除する。尚、領域間を移動した通行者が複数の場合は、外扉領域内での位置関係の整合性から同一の通行者を区別できる。
【0058】
S102,S103の処理を経てなお、仮登録フラグが記された通行者情報が残っていれば(S104−YES)、不正通行検出部5はその出現位置を確認する(S105)。
出現位置が開放領域内であれば(S105−開放領域)当該通行者情報は未だ認証を得ていない入場者に関するものである。この場合、不正通行検出部5は当該通行者情報の属性を無資格者に設定する(S106)。
一方、出現位置が待機領域であれば(S105−待機領域)当該通行者情報は管理領域からの退場者に関するものである。この場合、不正通行検出部5は当該通行者情報の属性を有資格者に設定する(S107)。
【0059】
次に、不正通行検出部5は、認証部6からの認証信号の入力を確認する(S108)。入力があれば(S108−YES)、不正通行検出部5は、現在位置が認証領域内である通行者情報を検出し(S109)、検出された通行者情報の属性を有資格者に更新する(S110)。
尚、認証信号の入力がなければ(S108−NO)、S109,S110はスキップされる。
【0060】
続いて、不正通行検出部5は、追跡の後処理として、仮登録フラグの削除、消失フラグが記された通行者情報の登録抹消を行う(S111)。
【0061】
こうして有資格者と無資格者とを区別した追跡が進捗すると、不正通行検出部5は、属性が無資格者である通行者の現在位置を待機領域の座標と比較して現在位置が待機領域内である無資格者を検出する(S112)。
待機領域内に無資格者が検出されると(S113−YES)、不正通行検出部5は、異常信号を扉制御部4、及び警告部9へ出力する(S114)。異常信号を入力された扉制御部4は扉制御を異常時の制御に切り替え、異常信号を入力された警告部9は無資格者に対する認証操作及び退去を要求する警告音声を再生する。
一方、待機領域内に無資格者が検出されない場合(S113−NO)、不正通行検出部5は、扉制御部4及び警告部9へ異常信号を出力していれば(S115−YES)、その出力を停止する(S116)。尚、異常信号を出力していない場合は停止状態が維持される。
【0062】
以上の処理が終了すると、処理は再びS100へ戻される。
【0063】
次に、図6〜図10を参照して、扉制御部4の動作を説明する。
【0064】
図6は制御手段45が実行する処理のフローチャートの一部である。図8、図9は入場者が通行するときの動線と扉の動きを模式的に示したものである。
【0065】
まず、扉制御部4は、認証部6から認証信号が入力されているか確認する(S200)。入力されていれば(S200−YES)、扉制御部4は、内扉2が閉鎖状態であるか否かを確認し(S201)、閉鎖状態であれば(S201−YES)、外扉3へ解除信号を出力する(S202)。解除信号が入力された外扉3は解除状態へと移行する。解除信号を出力した扉制御部4は、タイマーにより外扉解除時間の計時を開始する(S203)。外扉解除時間は1〜5秒程度の時間が予め設定されて記憶手段43に記憶されている。
【0066】
一方、認証信号が入力されていない(S200−NO)、または認証信号が入力されているが内扉2が閉鎖状態でない(S201−NO)場合、外扉3の解除は行われない。
【0067】
続いて、扉制御部4は、タイマーを参照して外扉解除時間が満了したか確認し(S204)、満了していれば(S204−YES)、外扉3へ閉鎖信号を出力する(S205)。閉鎖信号が入力された外扉3は閉鎖状態へと移行する。
【0068】
図8(a)は、有資格者10が認証部6を操作したことで外扉3が一時的に解除され、有資格者10が待機領域まで進入した様子を示している。複数の有資格者10が連続して通行することも可能である。待機領域内に存在する通行者は有資格者10のみであるため、不正通行検出部5は異常信号を出力しない。進入後、図8(b)のように外扉3は閉鎖される。
【0069】
一方、図9(h)は、無資格者11が共連れ入場を行おうとし、待機領域まで進入した様子を示している。待機領域内に無資格者11が存在するため、不正通行検出部5は異常信号を出力し、警告部9は警告音を出力する。
【0070】
続いて、扉制御部4は、不正通行検出部5からの異常信号の入力を確認し(S206)、入力されていれば(S206−YES)、外扉3の解除状態を維持する制御を行う。すなわち、タイマーを参照して外扉解除時間の計時中であれば(S207−YES)、タイムアップ時間を増加させて外扉解除時間を延長する(S208)。延長する時間はS200〜S224の処理が一巡するのに要する時間とすればよい。一方、外扉解除時間の計時中でない、つまり外扉3が閉鎖状態へ移行中であれば(S207−NO)、扉制御部4は、改めて外扉3へ解除信号を出力し(S209)、外扉解除時間の計時を開始する(S210)。
【0071】
これにより図9(i)のように、待機領域内に無資格者11が存在する場合に外扉3の解除状態が維持されるため無資格者11の退去のために有資格者10が待たされる時間が短縮され、有資格者10の円滑な通行が可能である。また、有資格者10が無資格者11とともに待機領域内に閉じ込められないため、有資格者10に安心感を与えることもできる。
【0072】
続いて、扉制御部4は、内扉側入場者検知部7−2からの検知信号を確認する(S211)。入力されていれば(S211−YES)、扉制御部4は、外扉3が閉鎖状態であるか確認し(S212)、外扉3が閉鎖状態であれば(S212−YES)、内扉2へ解除信号を出力する(S213)。解除信号が入力された内扉2は解除状態へ移行する。解除信号を出力した扉制御部4は、タイマーにより内扉解除時間の計時を開始する(S214)。内扉解除時間も外扉解除時間と同様に1〜5秒程度の時間が予め設定されて記憶手段43に記憶されている。
【0073】
図8(c)のように、待機領域内に有資格者10しか存在しない場合は、外扉3が閉鎖されるので、内扉側入場者検知部7−2の検知に応じて内扉2が解除され、有資格者10が管理領域へ入場可能となる。
【0074】
待機領域内に無資格者11が存在する場合は、S206〜S210にて前述した制御により外扉3が閉鎖されないので内扉2が解除されず、無資格者11は管理領域へ入場できない。そして、図9(j)のように、無資格者11が開放領域へ退去すると不正通行検出部5からの異常信号が停止され(異常が復旧し)、間もなく外扉解除時間が満了して外扉3が閉鎖される。そして外扉3が閉鎖されれば、図8(c)と同様、内扉2が解除されて有資格者10が管理領域へ入場可能になる。
この間、有資格者10は無資格者11の退去を待つだけで異常が復旧でき、入場者10の円滑な通行が可能である。
【0075】
図7は制御手段45が実行する処理のフローチャートの続きである。図10は退場者が通行するときの動線と扉の動きを模式的に示したものである。
【0076】
扉制御部4は、内扉側退場者検知部7−3からの検知信号を確認する(S215)。入力されていれば(S215−YES)、外扉3が開閉状態であるか否か確認し(S216)、閉鎖状態であれば(S216−YES)、内扉2へ解除信号を出力する(S217)。解除信号が入力された内扉2は解除状態へ移行する。解除信号を出力した扉制御部4は、タイマーにより内扉解除時間の計時を開始する(S218)。
【0077】
図10(p)は、内扉2の前に立った退場者12が内扉側退場者検知部7−3により検知されたことで内扉2が一時的に解除され、退場者12が待機領域まで進入した様子を示している。
【0078】
このとき、もし退場者12が先に待機領域へ進入して内扉2が閉鎖されたときに異常信号が出力されてしまうと、入場者10−3は退場者12が開放領域へ退場しきるまで入場できなくなってしまう。
しかし、前述したように不正通行検出部5は退場者12を有資格者と認識する。そのため、認証操作を経て既に待機領域まで進入していた入場者10−3と退場者12とが待機領域に同時に存在(点線の状態)しても異常信号は出力されない。これにより入場者10−3が退場者12の退場を待たずに入場することができ、円滑な通行が可能である。
【0079】
また、退場者12は有資格者と認識されているため待機領域から管理領域へ自由に移動できる。そのため忘れ物に気付いたときなども手間なく戻れ、退場者12の円滑な通行が可能である。
【0080】
また、認証部6が開放領域に設置されているため、認証部6の前で滞留する入場者10−4が退場者12の通行に与える影響はなく、退場者12の円滑な通行が可能である。
【0081】
続いて、扉制御部4は、タイマーを参照して内扉解除時間が満了したか確認し(S219)、満了していれば(S219−YES)、内扉2へ閉鎖信号を出力する(S220)。閉鎖信号が入力された内扉2は閉鎖状態へと移行する。
【0082】
続いて、扉制御部4は、外扉側退場者検知部7−1からの検知信号を確認する(S221)。入力されていれば(S221−YES)、扉制御部4は、内扉2が閉鎖状態であるか否かを確認し(S222)、閉鎖状態であれば(S222−YES)、外扉3へ解除信号を出力する(S223)。解除信号が入力された外扉3は解除状態へ移行する。解除信号を出力した扉制御部4は、タイマーにより外扉解除時間の計時を開始する(S224)。
【0083】
図10(q)は、外扉3の前に立った退場者12が外扉側退場者検知部7−1により検知されたことで外扉3が一時的に解除され、退場者12が開放領域へ出た様子を示している。
このときも、退場者12は入場者10−4と同時に通行でき、退場者12、入場者10−4ともに円滑な通行が可能である。
【0084】
以上の処理を終えると扉制御部4の処理は再びS200へと戻る。
【0085】
尚、上記実施形態において、不正通行検出部5は、有資格者に加えて無資格者も追跡して無資格者の位置を判定した。別の実施形態では有資格者のみを追跡して有資格者として追跡している像以外に抽出された通行者の像の位置を無資格者の位置として判定する。この場合、内扉2が通行可能なときに有資格者として追跡している像以外に抽出された通行者の像が待機領域内に抽出されればそれは退場者の像である。そこで、不正通行検出部5は異常を判定していないときに抽出された上記像を内扉から前記待機領域内に入った通行者と認定して有資格者として追跡対象に加えることができる。
【0086】
また、上記実施形態において、扉制御部4は、異常信号が入力されている間はタイマーを延長することで外扉3を通行可能に維持した。別の実施形態では、異常信号が入力されている間は外扉3へ解錠信号を連続的又は断続的に出力する、異常信号が入力されている間はS204及びS205をスキップして外扉解除時間満了を無視するなど、種々の形態により外扉3を通行可能に維持する制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施の形態に係る通行制御装置の全体構成図である。
【図2】不正通行検出部5の機能ブロック図である。
【図3】監視画像の一例を表す図である。
【図4】扉制御部4の機能ブロック図である。
【図5】不正通行検出処理のフローチャートである。
【図6】扉制御処理のフローチャートである。
【図7】扉制御処理のフローチャートである。
【図8】入場者が通行するときの動作を表す図である。
【図9】共連れ入場が発生するときの動作を表す図である。
【図10】入場者と退場者が同時通行するときの動作を表す図である。
【符号の説明】
【0088】
1・・・通行制御装置
2・・・内扉
3・・・外扉
4・・・扉制御部
5・・・不正通行検出部
6・・・認証部
7・・・通行者検知部
8・・・撮像部
9・・・警告部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放領域と管理領域を結ぶ通路に設けられた待機領域と前記開放領域の境界に設置された外扉と、前記待機領域と前記管理領域の境界に設置された内扉とを制御して通行者の通行を規制する通行制御装置であって、
前記外扉及び前記内扉をインターロック制御する扉制御部と、
前記通行者による認証操作に基づいて通行者が有資格者か否かを判定し、有資格者と判定すれば認証信号を出力する認証部と、
前記通行者の認証操作した場所から前記内扉までの動線及び前記待機領域を少なくとも撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を用いて、
前記有資格者を追跡するとともに、前記待機領域内に前記有資格者以外の通行者が存在していると異常信号を出力し、存在していないと異常信号を停止する不正通行検出部と、
を備え、
前記扉制御部は、前記異常信号が出力されているときは前記内扉を通行不能且つ前記外扉を通行可能に制御することを特徴とした通行制御装置。
【請求項2】
前記不正通行検出部は、前記内扉から前記待機領域内に入った通行者を有資格者とする請求項1に記載の通行制御装置。
【請求項3】
前記認証部は、前記開放領域に設置される請求項1または請求項2に記載の通行制御装置。
【請求項4】
前記待機領域に設置され、前記異常信号が入力されると予め設定された警告を出力する警告部、をさらに備えた請求項3に記載の通行制御装置。
【請求項5】
前記扉制御部は、前記異常信号が出力されている間、前記外扉を通行可能に維持する請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の通行制御装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図10】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−157149(P2010−157149A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335692(P2008−335692)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】