説明

速度検出装置、速度検出方法及び列車速度検出システム

【課題】車上側での高精度の速度検出を維持しつつ、地上側の装置の簡素化を図ること。
【解決手段】走行路3には、列車5の進行方向に沿ってスリット部分である開口部12と遮蔽部11とが同一間隔Lで交互に現れるように形成されているパターンプレート10が配置されている。列車5には、前方/後方それぞれに、進行方向に沿って設置間隔D=「2L/3」をおいて配置された3個の検出器40を有する検出部30が設けられている。検出器40は、パターンプレート10の遮蔽部11及び開口部12のそれぞれの検出に応じた検出信号(パルス信号)を出力する。そして、車上装置50では、各検出部30について、各検出器40からの検出信号の変化からパルス幅が「L/3」となるパルス信号を生成し、列車5の速度Vを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の速度を検出する速度検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気浮上式等の浮上式交通システムにおける車両の走行速度を車上側で検出する方法として、例えば、特許文献1に開示されているように、地上に設置されたループコイルから信号を受信する方法がある。かかる方法では、地上装置として、位置信号を送信する送信手段、及び、位置信号を送信するループコイルと送信しない打消部とが一定距離D毎に繰り返し設けられたループアンテナが設けられる。そして、車上装置では、一定間隔d(=2D/n)を隔てて配置されたn個の受信コイルによってループアンテナから送信される位置信号を受信し、受信した信号の立ち上がりと立ち下がりより、距離D/n毎の速度パルスを算出して速度を算出する。これにより、車両速度を高精度で検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−252614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の検出方法では、地上装置として、発振器や増幅器を含む送信手段やループアンテナ等の各種電気機器を設ける必要があるため、設備費用や電気機器の保守作業が必要となる。また、送信手段の電源確保といった問題もある。また、ループアンテナのループコイルと打消部との間隔Dを小さくするほど速度検出の精度が高まるが、その分、地上装置の設備費用が上昇し、保守作業の工数が増加する。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車上側での高精度の速度検出を維持しつつ、地上側の装置の簡素化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の発明は、
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器(例えば、図2の検出器40)による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分(例えば、図2の遮蔽部11)と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分(例えば、図2の開口部12)とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレート(例えば、図2のパターンプレート10)が配置された走行路を走行する列車に搭載されて、当該列車の速度を検出する速度検出装置(例えば、図1の速度検出装置20)であって、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部(例えば、図1の第1検出部30−1や第2検出部30−2)と、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する速度算出部(例えば、図1の車上装置50)と、
を備えた速度検出装置である。
【0006】
また、他の発明として、
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレートが配置された走行路を走行する列車の速度を検出する速度検出方法であって、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部を前記列車に設け、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する、
速度検出方法を構成しても良い。
【0007】
また、他の発明として、
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレートを走行路に配置して具備するとともに、
前記走行路を走行する列車に、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部と、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する速度算出部と、
を有する速度検出装置を設け、
前記走行路を走行する列車が独自に列車速度を検出する列車速度検出システムを構成しても良い。
【0008】
この第1の発明等によれば、地上側には、列車に設けられた検出器による検出可能部分と不可能部分とが走行方向に沿って繰り返し出現するように形成されたパターンプレートが走行路に配置され、車上側で、検出器によるパターンプレートの検出状態から列車の速度が算出される。つまり、車上側でパターンプレートそのものを検出するように構成されている。このため、地上側には、従来の送信手段のような特別な電気設備が必要なくパターンプレートの設置のみで済むため、地上側の設備費用を安価にできるとともに保守作業を簡易なものにすることができる。また、車上側では、パターンプレートの構造によって決まる長さLよりも短い移動長α・L/Nを移動するのに要した時間から、列車の速度を算出する。このため、列車の速度をより高精度に検出できる。
【0009】
列車速度を検出する具体的な構成としては、第2の発明のように、
前記速度算出部は、前記N個の検出器の何れかの検出状態が変化することをα=1の場合の検出論理パターンとして、当該時間間隔とL/Nの長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
速度検出装置を構成しても良い。
【0010】
また、第3の発明のように、
前記検出部は、前記検出器を3個(=N)有してなり、
前記速度算出部は、3個の検出器の何れかが検出有り状態に変化することを前記検出論理パターンとして、当該時間間隔と2L/3の長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
速度検出装置を構成しても良い。
【0011】
また、第4の発明のように、
前記検出部は、前記検出器を3個(=N)有してなり、
前記速度算出部は、3個の検出器の何れかが検出無し状態に変化することを前記検出論理パターンとして、当該時間間隔と2L/3の長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
速度検出装置を構成しても良い。
【0012】
更に、第5の発明のように、
前記N個の検出器の検出状態の組合せ変化を記憶する組合せ変化記憶部を更に備え、
前記速度算出部は、前記N個の検出器の検出状態の組合せ変化から、αが1以上N未満の任意の整数の場合の検出論理パターンを生成する生成手段を有し、前記N個の検出器の検出状態の組合せが該生成された検出論理パターンとなった時間間隔を用いて当該列車の速度を検出する、
速度検出装置を構成しても良い。
【0013】
また、第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明の速度検出装置であって、
前記パターンプレートは前記走行路の分岐地点で断続して配置されており、
複数の前記検出部を、同一列車の前後異なる位置に設置して備え、
前記速度算出部は、前記複数の検出部それぞれの検出結果を用いて当該列車の速度を別々に算出し、検出結果が所定の異常条件を満たす検出部があった場合に、当該検出部を除く他の検出部の検出結果に基づいて算出された速度を用いて当該列車の速度とする、
速度検出装置である。
【0014】
走行路の分岐点などではパターンプレートが断続して配置される箇所があり、この地点では、検出器によるパターンプレートの検出がなされないため列車の速度が算出されない。しかし、この第6の発明のように、同一列車の前後異なる位置に検出部が備えられることで、例えば、パターンプレートが配置されていない箇所を走行したとき等、一方の検出部ではパターンプレートが検出されない場合でも、他方の検出部による検出結果に基づいて列車の速度を算出することができる。
【0015】
検出器の具体的な構成としては、第7の発明のように、
前記検出器は光学式センサ(例えば、図3の発光部41及び受光部42)でなる速度検出装置を構成しても良い。
【0016】
また、第8の発明のように、
前記検出器は磁気式センサでなる(例えば、図14の検出器40B)速度検出装置を構成しても良い。
【0017】
この場合、第9の発明として、
前記パターンプレートの前記検出可能部材は金属物体でなり、
前記検出器は、
近接する金属物体中に電流を誘導させる送信コイルを1次コイルとし、前記誘導電流によって生じる磁界を検出する2つのコイルを逆巻きに直列接続した差動コイルを2次コイルとして前記送信コイルと前記差動コイルとが磁気結合された送受信コイル部(例えば、図14の磁気センサ部45)と、
前記送信コイルに交流信号を印加する発振部(例えば、図14の交流電源43)と、
前記発振部により印加された交流信号と前記差動コイルに生じた交流信号との位相差を検出する位相差検出部(例えば、図14の位相差検出部49)と、
を有し、前記位相差検出部による検出結果から金属物体の有無を検出する磁気式センサでなる、
速度検出装置を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】速度検出システムの構成図。
【図2】検出部の構成図。
【図3】検出器として光学式センサを用いた検出部の構成図。
【図4】速度検出原理の説明図。
【図5】進行方向判定原理の説明図。
【図6】進行方向判定原理の説明図。
【図7】速度検出装置の機能構成図。
【図8】検出信号データのデータ構成例。
【図9】重み付けテーブルのデータ構成例。
【図10】検出状態一覧テーブルのデータ構成例。
【図11】変化パターンテーブルのデータ構成例。
【図12】速度検出処理のフローチャート。
【図13】速度検出処理中に実行される個別速度算出処理のフローチャート。
【図14】検出器として磁気式センサを用いた検出部の構成図。
【図15】パターンプレートと検出部との他の配置関係例。
【図16】検出論理値の変化パターンの一例。
【図17】4個の検出器を有する検出部の構成図。
【図18】検出部が4個の検出器を有する場合の検出信号の一例。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、本発明をHSST磁気浮上交通システムに適用した場合を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0020】
[第1実施形態]
先ず、本発明の第1実施形態を説明する。
<全体構成>
図1は、第1実施形態における速度検出システム1の構成例である。図1(a)は、列車5の側方から見た速度検出システム1の概略を示す図であり、図1(b)は、列車5の進行方向に対する断面略図である。図1によれば、速度検出システム1は、HSST磁気浮上交通システムに適用され、列車5に搭載される速度検出装置20と、列車5の走行路3に沿って設置されたパターンプレート10とを備えて構成される。
【0021】
速度検出装置20は、列車5に搭載された車上装置50と、列車5の先頭車両の前方下部に設けられた第1検出部30−1と、最後尾車両の後方下部に設けられた第2検出部30−2とを有する。第1検出部30−1及び第2検出部30−2(以下、まとめて「検出部30」という)はともに同一構成であり、パターンプレート10を非接触で検出する。
【0022】
図2は、パターンプレート10及び検出部30の構成を示す図である。図2に示すように、パターンプレート10は、走行路に沿った方向に多数のスリットを有するスリット板であり、プレート部分である遮蔽部(検出可能部分)11と、スリット部分である開口部(検出不可能部分)12とが同一の長さL(例えば、30cm程度)に形成されている。つまり、パターンプレート10は、列車5の進行方向に沿って、遮蔽部11と開口部12とが交互に現れるように形成されている。また、パターンプレート10は、遮光性を有する部材、例えば非透明樹脂や金属板等によって形成されており、開口部12を上方に向けて略鉛直に設置されている。
【0023】
検出部30は、3個(N=3)の検出器40−1,40−2,40−3(以下、まとめて「検出器40」という)を有する。検出器40は、パターンプレート10に沿った方向に、列車5の進行方向前方から検出器40−1,40−2,40−3の順に、所定の設置間隔D=「2L/3」をおいて設けられている。また、各検出器40は、その検出方向をパターンプレート10に向けるとともに、パターンプレート10の遮蔽部11と開口部12とを検出可能な高さ位置に設けられている。つまり、列車5が走行しているとき、検出器40では、パターンプレート10が“有る”遮蔽部11と、パターンプレート10が“無い”部分である開口部12とを交互に検出している。そして、検出器40は、検出したパターンプレート10の有無を示す検出信号Fを車上装置50に出力する。
【0024】
第1実施形態では、検出器40として光学式センサが用いられる。図3は、検出器40として光学式センサを用いた検出部30の配置構成図である。図3に示すように、各検出器40は、その間にパターンプレート10を挟むように対向配置された1組の発光部41及び受光部42を有する。発光部41はレーザ光やLED光といったビーム状の光を発射し、受光部42での受光有無が、パターンプレート10の検出有無を表す検出信号Fとして出力される。つまり、発光部41からの発射光が、パターンプレート10の開口部12を通過して受光部42で受光されると、パターンプレート10が「無し(0)」と検出される。また、発光部41からの発射光が、パターンプレート10の遮蔽部11で遮断されて受光部42で受光されないと、パターンプレート10が「有り(1)」と検出される。例えば、図3では、検出器40−1,40−2では「無し(0)」と検出され、検出器40−3では「有り(1)」と検出される。
【0025】
車上装置50は、検出部30からの検知信号をもとに、自列車5の走行速度Vや進行方向を検出する。
【0026】
<原理>
速度検出システム1における列車の速度及び進行方向の検出原理を説明する。但し、以下では、説明の簡単化のため、列車速度Vは一定であるとする。
【0027】
(1)速度検出
図4は、走行速度の検出原理を説明する図である。図4では、上から順に、3台の検出器40−1,40−2,40−3それぞれによる検出信号F1,F2,F3、検出信号F1,F2,F3から生成される論理信号R1,R2を示している。
【0028】
上述のように、列車5が走行している場合、検出器40では、パターンプレート10の遮蔽部11と開口部12とが交互に検出される。つまり、検出器40からの検出信号Fは、「1(有り)」と「0(無し)」が交互に変化するパルス信号となる。そして、遮蔽部11及び開口部12は同一の長さLに形成されているため、検出信号Fのパルス幅(時間間隔)Wは、列車5が距離Lを走行するのに要する時間となる。また、各検出器40は設置間隔D=「2L/3」をおいて設けられている。このため、検出信号F1に対して、距離「2L/3」に相当する分だけ検出信号F2の位相が遅れ、この検出信号F2に対して、距離「2L/3」に相当する分だけ検出信号F3の位相が遅れている。
【0029】
そして、これらの検出信号F1,F2,F3から、論理信号R1,R2が生成される。すなわち、論理信号R1は、検出信号Fの立ち上がり/立ち下がりに着目した信号であり、検出信号F1,F2,F3のうちの何れかの立ち上がりタイミング或いは立ち下がりタイミングで変化するパルス信号として生成される。この論理信号R1のパルス幅Waは、列車5が距離「L/3」を走行するのに要する時間taとなる。例えば、L=30cmとすると、10cm走行するのに要する時間となる。また、論理信号R2は、検出信号Fの立ち上がりに着目した信号であり、検出信号F1,F2,F3のうちの何れかの立ち上がりタイミングで変化するパルス信号として生成される。各検出器40が設置「2L/3」をおいて設けられているため、この論理信号R2のパルス幅Wbは、列車5が距離「2L/3」を走行するのに要する時間tbとなる。例えば、L=30cmとすると、20cm走行するのに要する時間となる。
【0030】
そして、これらの論理信号R1,R2から列車5の走行速度Vが算出される。つまり、論理信号R1によれば、列車5の走行速度Vaは次式(1)で算出される。
Va=Wa/ta
=(L/3)/ta ・・(1)
また、論理信号R2によれば、列車5の走行速度Vbは次式(2)で算出される。
Vb=Wb/tb
=(2L/3)/tb (2)
このように、検出信号Fのパルス幅Wより短いパルス幅の論理信号R1,R2を生成し、この論理信号R1,R2のパルス幅Wa,Wbから、列車5の走行速度Vを算出する。
【0031】
ところで、検出信号Fのパルス幅Wは時間間隔であるため、列車5の走行速度Vによって異なる。具体的には、速度Vが遅いほど、検出信号Fのパルス幅Wが長くなる。そこで、本実施形態は、現在の走行速度Vに応じて、速度算出に用いる論理信号R1,R2を使い分ける。具体的には、「高速」及び「低速」の2つの速度域を定め、現在の速度Vが「高速」の速度域では論理信号R2を用いた速度算出を行い、「低速」の速度域では論理信号R1を用いた速度算出を行う。つまり、速度Vが低い場合には、パルス幅が短いほうの論理信号R1を用いて速度算出を行い、速度が速い場合には、パルス幅が長いほうの論理信号R2を用いて速度算出を行う。例えば、全速度域を論理信号R2のみでカバーしようとすると、徐行又は停止に近い速度で走行している場合には、パルス幅が非常に長くなり走行速度Vの検出精度が劣化する。このため、速度域に応じて論理信号R1,R2を使い分けることで、走行速度Vの検出精度を高めることができる。
【0032】
(2)進行方向判定
列車5の進行方向は、検出信号F1,F2,F3の値の組み合わせの変化から判定する。図5は、進行方向の判定原理を説明する図である。図5では、上から順に、検出信号F1,F2,F3、「検出論理値」を示している。
【0033】
「検出論理値」は、検出信号F1,F2,F3それぞれの値(1/0)の組合せ(すなわち、各検出器40−1,40−2,40−3での検出状態(有り/無し)の組合せ)を表す値であり、検出信号F1,F2,F3それぞれの値を重み付けした合計値である。検出信号F1,F2,F3それぞれの重み付けは、「1」,「2」,「4」とする。つまり、検出論理値は、検出信号F1,F2,F3の値の並びを、検出信号F1の値を最下位ビットとした3ビットとみなした値に相当する。そして、列車5が正常に走行しているときに取り得る検出信号Fの値の組合せ及び対応する検出論理値は、「1」〜「6」の6種類となる。
【0034】
列車5が走行しているときには、検出信号Fが周期的に変化することから、検出信号Fの値の組合せである検出論理値は周期的に変化する。この検出論理値の変化パターンは、列車の進行方向によって異なる。つまり、図2の配置位置関係のように、検出器40−1を先頭側として列車5が走行している場合には、検出論理値の変化パターンは図5に示すとおりである。ところが、列車5が逆方向に走行している場合、すなわち、検出器40−3を先頭側として列車5が走行している場合には、検出論理値の変化パターンは、図6に示すようになる。
【0035】
図6は、列車5が逆方向に走行している場合の検出信号Fを示す図である。図6では、上から順に、検出信号F1,F2,F3、検出信号F1,F2,F3から生成される論理信号R1,R2、検出論理値を示している。この場合、進行方向に対する検出器40の配置順は、先頭側から検出器40−3,40−2,40−1の順となる。つまり、検出信号F1,F2,F3の位相は、図5に示した場合とは逆に、検出信号F3に対して、距離「2L/3」に相当する分だけ検出信号F2の位相が遅れ、この検出信号F2に対して、距離「2L/3」に相当する分だけ検出信号F1の位相が遅れている。従って、検出論理値の変化パターンは、図5に示した場合と異なる。
【0036】
このように、検出論理値の変化パターンは、列車5の進行方向、及び、検出器40の配置順によって決まる。このため、検出器40−1,40−2,40−3それぞれからの検出信号F1,F2,F3から求められる検出論理値の変化パターンを、進行方向及び配置順によって定まる変化パターンと比較することで、列車の進行方向(正/逆方向)を判定することができる。
【0037】
<機能構成>
図7は、速度検出装置20の機能構成を示すブロック図である。図7によれば、速度検出装置20は、第1検出部30−1と、第2検出部30−2と、車上装置50とを備えて構成される。
【0038】
車上装置50は、機能的には、処理部100と、記憶部200と、通信部300とを有する。
【0039】
処理部100は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部200に記憶されたプログラムやデータ、第1検出部30−1及び第2検出部30−2からの検出信号F等に基づいて、車上装置50を構成する各部への指示やデータ転送を行い、車上装置50の全体制御を行う。また、処理部100は、速度算出部110と、進行方向判定部120とを含み、速度検出プログラム210に従った速度検出処理を実行する。
【0040】
速度検出処理では、処理部100は、第1検出部30−1及び第2検出部30−2それぞれについて、当該検出部30が有する検出器40−1,40−2,40−3それぞれからの検出信号F1,F2,F3を所定のサンプリング時間間隔(例えば、0.5s)で取得し、取得した信号値に基づく処理を行う。取得した検出信号Fについては、現在からさかのぼって過去の所定期間(例えば、60秒)の間のデータが、検出信号データ250として随時記憶更新される。
【0041】
図8は、検出信号データ250のデータ構成の一例を示す図である。図8によれば、検出信号データ250は、検出部30毎に生成され、検出時刻251毎に、検出信号F1,F2,F3それぞれの値である検出状態252と、検出論理値253とを対応付けて格納している。検出論理値253は、対応する検出信号F1,F2,F3それぞれの検出状態252を、重み付けテーブル220に従って重み付けした値である。
【0042】
図9は、重み付けテーブル220のデータ構成の一例を示す図である。図9によれば、重み付けテーブル220は、検出信号221それぞれについて、重み222を対応付けて格納している。
【0043】
速度算出部110は、検出部30からの検出信号Fをもとに自列車5の走行速度Vを算出する。具体的には、第1検出部30−1及び第2検出部30−2のそれぞれについて、該検出部30が有する検出器40−1,40−2,40−3それぞれからの検出信号F1,F2,F3にもとづく速度V1,V2を算出する。
【0044】
検出部30についての速度Vは、次のように算出する。すなわち、速度域が「低速」ならば、検出信号F1,F2,F3の何れかの立ち上がり或いは立ち下がりのタイミングで変化する論理信号R1を生成し、このパルス幅Waから速度Vaを算出する。つまり、検出信号F1,F2,F3それぞれの立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングを検出し、この立ち上がり/立ち下がりタイミングの検出間隔ta、及び、この検出間隔taに相当する距離「L/3」から、式(1)に従って速度Vaを算出し、該検出部30についての速度Vとする。一方、速度域が「高速」ならば、検出信号F1,F2,F3の何れかの立ち上がりタイミングで変化する論理信号R2を生成し、このパルス幅Wbから列車の速度Vbを算出する。つまり、検出信号F1,F2,F3それぞれの立ち上がりタイミングを検出し、この立ち上がりタイミングの検出間隔tb、及び、この検出間隔tbに相当する距離「2L/3」から、式(2)に従って速度Vbを算出し、該検出部30についての速度Vとする。
【0045】
なお、速度算出部110は、検出信号F1,F2,F3が所定のエラー条件(異常条件)を満たす検出部30については、「検出エラー」と判断して速度算出を行わない。この「エラー条件」は、検出器40の故障や、パターンプレート10が途切れて配置されていない箇所を走行するときを想定した条件であり、具体的には、列車5が正常に走行しているならば取り得ない検出信号F1,F2,F3の値の組合せとなったときの条件である。
【0046】
本実施形態では、検出状態一覧テーブル230を参照し、検出信号F1,F2,F3の値の組合せが、この検出状態一覧テーブル230にて定められていない組合せのときに、検出エラーと判定する。検出状態一覧テーブル230は、列車5が正常に走行しているときに取り得る検出信号F1,F2,F3の値の組合せを定義したデータテーブルである。
【0047】
図10は、検出状態一覧テーブル230のデータ構成の一例を示す図である。図10によれば、検出状態一覧テーブル230は、取り得る検出信号Fの値の組み合わせ231毎に、検出論理値232を対応付けて格納している。検出器40−1,40−2,40−3は「2L/3」の設置間隔Dで設けられているため、検出信号F1,F2,F3の値の全てが同じとなる組合せは取り得ない。つまり、検出信号F1,F2,F3の全ての値が「0(無し)」或いは「1(有り)」となったときを、「エラー条件」とする。
【0048】
そして、速度算出部110は、算出した各第1検出部30−1及び第2検出部30−2それぞれについての速度V1,V2を用いて、列車5の走行速度Vを判定する。具体的には、第1検出部30−1を優先し、第1検出部30−1からの検出信号Fに基づく速度V1を列車5の走行速度とする。また、第1検出部30−1が検出エラーの場合には、第2検出部30−2からの検出信号Fに基づく速度V2を列車5の走行速度Vとする。
【0049】
進行方向判定部120は、検出部30からの検出信号Fをもとに自列車5の進行方向を判定する。具体的には、第1検出部30−1及び第2検出部30−2それぞれについて、該検出部30が有する検出器40−1,40−2,40−3それぞれからの検出信号F1,F2,F3をもとに、該検出部30についての進行方向を判定する。すなわち、該検出部30についての過去所定期間分の検出論理値の変化パターンが、変化パターンテーブル240にて定義される変化パターンに一致するかを判断し、一致すると判断した方向を、該検出部30についての進行方向と判定する。
【0050】
図11は、変化パターンテーブル240のデータ構成の一例を示す図である。図11によれば、変化パターンテーブル240は、列車の進行方向241毎に、検出論理値の変化パターン242を対応付けて格納している。この検出論理値の変化パターン242は、検出部30における各検出器40の配置順、及び、各検出器40による検出信号Fの重み付けによって決まるものである。
【0051】
なお、進行方向判定部120も、速度算出部110と同様に、検出信号F1,F2,F3がエラー条件を満たす検出部30については、「検出エラー」が発生したとして進行方向の判定を行わない。
【0052】
そして、進行方向判定部120は、各検出部30について判定した進行方向をもとに、自列車5の進行方向を判定する。すなわち、第1検出部30−1を優先し、第1検出部30−1からの検出信号Fをもとに判定した進行方向を列車5の進行方向とする。また、第1検出部30−1が検出エラーの場合には、第2検出部30−2からの検出信号Fをもとに判定した進行方向を自列車5の進行方向とする。
【0053】
図7に戻り、記憶部200は、ROMやRAM、ハードディスク等で実現される記憶装置であり、処理部100が車上装置50を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部100の作業領域として用いられ、処理部100が各種プログラムに従って実行した演算結果や、検出部30からの検出信号等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部200には、プログラムとして速度検出プログラム210が記憶されるとともに、データとして、重み付けテーブル220と、検出状態一覧テーブル230と、変化パターンテーブル240と、検出信号データ250とが記憶される。
【0054】
通信部300は、所定の通信方式による外部装置(主に、他の列車の車上装置や地上装置等)との通信を制御する。
【0055】
<処理の流れ>
図12は、車上装置50において、処理部100が実行する速度検出処理を説明するフローチャートである。図12によれば、処理部100は、先ず、初期設定として、速度域を「低速」に設定する(ステップA1)。次いで、個別速度算出処理を行い、検出部30それぞれについての速度V1,V2及び進行方向を算出する(ステップA3)。
【0056】
図13は、個別速度算出処理を説明するフローチャートである。図13によれば、個別速度算出処理では、処理部100は、各検出部30を対象としたループAの処理を行う。ループAでは、先ず、対象の検出部30からの検出信号Fがエラー条件を満たすか否かを判定する。エラー条件を満たすならば(ステップB1:YES)、対象の検出部30において「検出エラー」が発生していると判断する(ステップB3)。
【0057】
エラー条件を満たさないならば(ステップB1:NO)、続いて、速度算出部110が、対象の検出部30についての速度Vを算出する。すなわち、現在の速度域が「高速」ならば(ステップB3:高速)、対象の検出部30からの検出信号Fの何れかについて、立ち上がりを検出したか否かを判断する。何れかの検出信号Fの立ち上がりを検出したならば(ステップB5:YES)、前回の立ち上がりの検出からの経過時間tbを取得し(ステップB7)、取得した時間tbと距離「2L/3」とから列車5の速度Vbを算出し、対象の検出部30についての速度Vとする(ステップB9)。
【0058】
一方、速度域が「低速」ならば(ステップB3:低速)、対象の検出部30からの検出信号Fの何れかについて、立ち上がり/立ち下がりを検出したかを判断する。何れかの検出信号Fの立ち上がり/立ち下がりを検出したならば(ステップB11:YES)、前回の立ち上がり/立ち下がりの検出からの経過時間taを取得し(ステップB13)、取得した時間taと距離「L/3」とから列車5の速度Vaを算出し、対象の検出部30についての速度Vとする(ステップB15)。
【0059】
続いて、進行方向判定部120が、対象の検出部30についての進行方向の判定を行う。すなわち、対象の検出部30からの検出信号Fの何れかについて、立ち上がり/立ち下がりを検出したかを判断し、立ち上がり/立ち下がりを検出したならば(ステップB17:YES)、各検出信号Fの値の組合せに対応する検出論理値を算出する(ステップB19)。そして、過去所定期間分の検出論理値の変化パターンから列車5の進行方向を判定し、対象の検出部30についての進行方向とする(ステップB21)。ループAはこのように行われる。
【0060】
そして、第1検出部30−1及び第2検出部30−2の両方を対象としたループAの処理を終了すると、個別速度算出処理を終了する。
【0061】
個別速度算出処理が終了すると、続いて、処理部100は、検出部30に検出エラーが発生したかを判断し、第1検出部30−1及び第2検出部30−2の両方に検出エラーが発生したならば(ステップA5:YES)、「速度算出不可能」と判断して、所定のエラー処理を行う(ステップA25)。
【0062】
両方の検出部30に検出エラーが発生していないならば(ステップA5:NO)、続いて、速度算出部110が列車5の速度判定を行う。すなわち、第1検出部30−1に検出エラーが発生したかを判断し、発生していないならば(ステップA7:NO)、第1検出部30−1からの検出信号Fにもとづく速度V1を列車5の走行速度Vとする(ステップA9)。一方、第1検出部30−1に検出エラーが発生しているならば(ステップA9:NO)、第2検出部30−2からの検出信号Fにもとづく速度V2を列車5の走行速度Vとする(ステップA11)。
【0063】
そして、判定した走行速度Vが所定の閾値Vth以上ならば(ステップA13:YES)、速度域を「高速」に設定し(ステップA15)、閾値Vth未満ならば(ステップA13:NO)、速度域を「低速」に設定する(ステップA17)。なお、このとき、判定した速度Vが所定の超低速(例えば、10cm/s)以下のときには「停止」と見なすことにしても良い。
【0064】
また、進行方向判定部120が列車5の進行方向の判定を行う。すなわち、第1検出部30−1に検出エラーが発生したかを判断し、発生していないならば(ステップA19:YES)、第1検出部30−1からの検出信号Fにもとづく進行方向を列車5の進行方向とする(ステップA21)。一方、第1検出部30−1に検出エラーが発生しているならば(ステップA19:YES)、第2検出部30−2からの検出信号Fにもとづく進行方向を列車5の進行方向とする(ステップA23)。
【0065】
続いて、処理部100は、速度検出を終了するか否かを判断し、終了しないならば(ステップA27:NO)、ステップA3に戻り、同様の処理を繰り返す。
終了するならば(ステップA27)、速度検出処理を終了する。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、上述の第1実施形態において、検出器40が磁気式センサで構成される場合の実施形態である。
【0067】
<構成>
第2実施形態において、パターンプレート10は、例えば鉄等の金属製でなり、導電性を有する材料で形成される。そして、検出器40として、磁気式センサが用いられる。
【0068】
図14は、第2実施形態における検出器40Bの構成を示す図である。図14によれば、検出器40Bは、交流電源43と、増幅器44,48と、位相差検出部49と、磁気センサ部45とを有し、磁気センサ部45がパターンプレート10に近接するように配置される。
【0069】
磁気センサ部45は、2つのコイルが同極性で直列接続された送信コイル46と、2つのコイルが逆極性で直列接続された受信差動コイル47とが磁気結合されてなる。増幅器44は、交流電源43から供給される交流電力を増幅して、磁気センサ部45の送信コイル46に供給する。増幅器48は、受信差動コイル47に生じた交流電力を増幅して、位相差検出部49に出力する。位相差検出部49は、交流電源43から供給される交流電圧と、受信差動コイル47の両端に発生する電圧との位相差を検出する。
【0070】
磁気センサ部45では、交流電源43からの交流電力が供給されることで送信コイル46に磁界が生じ、この発生磁界によって近接する遮蔽部11の表面に渦電流を発生させる。そして、この渦電流による誘導磁界によって、受信差動コイル47には誘起電圧が発生する。位相差検出部49は、交流電源43による交流電圧と、受信差動コイル47の誘起電圧との位相差を検出することで、受信差動コイル47の誘起電圧の発生有無、すなわち遮蔽部11の有無を検出する。
【0071】
なお、受信差動コイル47は、2つのコイルが逆極性に直列接続されていることで、送信コイル46に供給される交流電力による誘起電圧を相殺することができ、渦電流による誘起電圧だけを検出することができる。
【0072】
そして、車上装置50では、上述の第1実施形態と同様の原理によって、列車5の速速度検出及び進行方向判定を行う。
【0073】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0074】
(A)センサ
例えば、上述の第1実施形態において、検出器40に用いる光学式センサを、送受信式ではなく反射式としても良い。また、超音波センサとしても良い。
【0075】
(B)パターンプレート10の構造
また、上述の実施形態では、パターンプレート10を、多数のスリットが形成されたスリット板とし、走行方向に沿って遮蔽部11と開口部12とが交互に現れる構造としたが、検出器40による検出可能部材と検出不可能部材とを、距離Lで交互に並べた構成としても良い。具体的には、検出不可能部材としては、第1実施形態においては、検出器40を光学式センサとしているため、透明樹脂(プラスチック)やガラス等の光透過性の部材で形成する。また、第2実施形態においては、検出器40を磁気式センサとしているため、樹脂等の絶縁体或いは非磁性体で検出不可能部材を形成する。
【0076】
(C)パターンプレート10と検出部30との設置位置関係
また、パターンプレート10と検出部30との位置関係を、例えば、図15に示すようにしても良い。図15では、パターンプレート10は略水平に配置され、検出部30は、このパターンプレート10の上方或いは下方側から対向するように設けられる。
【0077】
(D)検出論理パターン
また、上述の実施形態では、速度検出の検出論理パターンとして、検出信号Fの立ち上がり及び立ち下がりタイミング(論理信号R1)、或いは、検出信号Fの立ち上がりタイミング(論理信号R2)を用いることにしたが、これ以外のパターン、例えば検出信号Fの立ち下がりタイミングとしても良い。
【0078】
或いは、検出論理値の変化パターンとしても良い。すなわち、図5に示したように、列車5が正方向に走行している場合、検出論理値は「5」,「4」,「6」,「2」,「3」,「1」,「5」と周期的に変化するが、この検出論理値の変化パターンを検出論理パターンとし、各検出論理値の変化時間間隔tと、この変化時間間隔tに対応する距離とから、速度Vを算出する。具体的には、検出論理値は、何れかの検出信号Fが変化する毎に変化するが、このときの変化パターンを基本パターンとする。そして、図16に示すように、この基本パターンから、例えば1つおきといったように、所定数の間隔で検出論理値を抽出して、検出論理値の変化パターンを生成する。
【0079】
(E)検出部30の数
また、速度検出装置20が備える検出部30の数は「2」に限らず、「1」でも良いし、「3」以上であっても良い。また、列車5の前方に設けられた第1検出部30−1を優先させたが、後方に設けられた第2検出部30−2を優先させても良い。また、どちらか一方の検出部30を優先させることなく、例えば、両方の検出部30についての速度V1,V2の平均値を自列車5の速度Vとしても良い。
【0080】
(F)検出器40の数
また、上述の実施形態では、検出部30が3個の検出器40を有するとしたが(N=3)、4台以上の検出器40を有する構成としても良い(N>3)。検出部30がN個の検出器40を有する構成の場合、このN個の検出器40は検出間隔「L・(N−1)/N」をおいて配置される。そして、各検出器40からの検出信号Fの立ち上がり/立ち下がりタイミングの検出間隔taは、「L/N」の距離を走行するのに要する時間に相当し、列車速度Vは「(L/N)/ta」で算出される。
【0081】
例えば、図17は、検出部30が4個の検出器40−1〜40−4を有する(N=4)場合の配置構成を示す図である。図17に示すように、4個の検出器40−1〜40−4は、設置間隔D=「3L/4」をおいて配置される。
【0082】
そして、図18は、検出器40−1〜40−4それぞれからの検出信号F1〜F4と、この検出信号F1〜F4から生成される論理信号R1と、検出論理値とを示す図である。また、論理信号R1は、検出信号F1〜F4の何れかの立ち上がり/立ち下がりタイミングで変化するパルス信号であり、このパルス幅Waは「L/4」となる。そして、検出信号F1〜F4それぞれに「1」,「2」,「4」,「8」の重み付けをすると、検出論理値は「5」,「13」,「9」,「11」,「10」,「2」,「6」,「4」の順に変化し、取り得る検出論理値は8種類となる。
【符号の説明】
【0083】
1 速度検出システム
10 パターンプレート
11 遮蔽部(検出可能部分)、12 開口部(検出不可能部分)
20 速度検出装置
30 検出部(30−1 第1検出部、30−2 第2検出部)
40(40−1,40−2,40−3) 検出器
41 発光部、42 受光部
43 交流電源、44 増幅器
45 磁気センサ部、46 送信コイル、47 受信差動コイル
48 増幅部、49 位相差検出部
50 車上装置
100 処理部、110 速度算出部、120 進行方向判定部
200 記憶部
210 速度検出プログラム
220 重み付けテーブル、230 検出状態一覧テーブル
240 変化パターンテーブル、250 検出信号データ
300 通信部
3 走行路、5 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレートが配置された走行路を走行する列車に搭載されて、当該列車の速度を検出する速度検出装置であって、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部と、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する速度算出部と、
を備えた速度検出装置。
【請求項2】
前記速度算出部は、前記N個の検出器の何れかの検出状態が変化することをα=1の場合の検出論理パターンとして、当該時間間隔とL/Nの長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記検出器を3個(=N)有してなり、
前記速度算出部は、3個の検出器の何れかが検出有り状態に変化することを前記検出論理パターンとして、当該時間間隔と2L/3の長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
請求項1又は2に記載の速度検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検出器を3個(=N)有してなり、
前記速度算出部は、3個の検出器の何れかが検出無し状態に変化することを前記検出論理パターンとして、当該時間間隔と2L/3の長さとから当該列車の速度を検出する手段を有する、
請求項1又は2に記載の速度検出装置。
【請求項5】
前記N個の検出器の検出状態の組合せ変化を記憶する組合せ変化記憶部を更に備え、
前記速度算出部は、前記N個の検出器の検出状態の組合せ変化から、αが1以上N未満の任意の整数の場合の検出論理パターンを生成する生成手段を有し、前記N個の検出器の検出状態の組合せが該生成された検出論理パターンとなった時間間隔を用いて当該列車の速度を検出する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の速度検出装置。
【請求項6】
前記パターンプレートは前記走行路の分岐地点で断続して配置されており、
複数の前記検出部を、同一列車の前後異なる位置に設置して備え、
前記速度算出部は、前記複数の検出部それぞれの検出結果を用いて当該列車の速度を別々に算出し、検出結果が所定の異常条件を満たす検出部があった場合に、当該検出部を除く他の検出部の検出結果に基づいて算出された速度を用いて当該列車の速度とする、
請求項1〜5の何れか一項に記載の速度検出装置。
【請求項7】
前記検出器は光学式センサでなる請求項1〜6の何れか一項に記載の速度検出装置。
【請求項8】
前記検出器は磁気式センサでなる請求項1〜6の何れか一項に記載の速度検出装置。
【請求項9】
前記パターンプレートの前記検出可能部材は金属物体でなり、
前記検出器は、
近接する金属物体中に電流を誘導させる送信コイルを1次コイルとし、前記誘導電流によって生じる磁界を検出する2つのコイルを逆巻きに直列接続した差動コイルを2次コイルとして前記送信コイルと前記差動コイルとが磁気結合された送受信コイル部と、
前記送信コイルに交流信号を印加する発振部と、
前記発振部により印加された交流信号と前記差動コイルに生じた交流信号との位相差を検出する位相差検出部と、
を有し、前記位相差検出部による検出結果から金属物体の有無を検出する磁気式センサでなる、
請求項8に記載の速度検出装置。
【請求項10】
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレートが配置された走行路を走行する列車の速度を検出する速度検出方法であって、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部を前記列車に設け、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する、
速度検出方法。
【請求項11】
光学式センサ又は磁気式センサでなる検出器による検出が可能な検出可能部材で構成された検出可能部分と、前記検出器による検出が不可能な検出不可能部材又は空隙で構成された検出不可能部分とが同一の長さLで走行方向に沿って繰り返し出現するパターンプレートを走行路に配置して具備するとともに、
前記走行路を走行する列車に、
N個(N≧3)の前記検出器を前記パターンプレートに沿った方向に間隔D=(N−1)・L/Nで配列して有する検出部と、
前記N個の検出器の検出状態が、当該列車がα・L/N(αは1以上N未満の整数)の移動長移動する毎に表れる所定の検出論理パターンとなった時間間隔とα・L/Nの長さとから当該列車の速度を算出する速度算出部と、
を有する速度検出装置を設け、
前記走行路を走行する列車が独自に列車速度を検出する列車速度検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−235046(P2010−235046A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87660(P2009−87660)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】