説明

連結搬送システム

【課題】ウエハ等の搬送システムにおいて、予め装置に前室を設けた上で容器から、被搬送物を前室を通じることで装置区域に被搬送物を搬送していた。そのため、容器と前室との接続が複雑な機構によってなされていた。
【解決手段】搬送容器内の被搬送物を装置内に搬送するにあたり、搬送容器と装置を密着させることにより初めて前室に相当する連結室を形成するようにし、搬送容器、搬送容器扉、装置扉間の磁気引力により、その連結室ごと装置内に被搬送物を搬送するようにして搬送容器と装置の構造を簡略化し、かつ確実に被搬送物を装置内に搬送するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
清浄化を必要としている半導体デバイスや薄膜表示装置などに代表される、素子や精密機器などの工業製品製造方法とその製造装置、および清浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業等の巨大工場を有する諸産業においては、その巨大化に伴い設備投資額と設備運営コストが肥大化することによって、それに見合う生産額に到達せず、ビジネスとして成立しなくなる問題が深刻になっている。
巨大化が他産業に比較して特に進んでいることが理由で、清浄化のための手段としてクリーンルームを用いることが最適でないケミカルプラントを除き、先に例示した産業の製造工場の大半は、クリーンルームを用いた製造工程を有する。そこで、局所クリーン化生産方式などの手法によるクリーンルームのグレードダウンなどによって、設備投資を削減する考え方が、即効的な手段として認識され始めた。一部の産業では実用化され普及が進みつつある。局所クリーン化には、工場の環境制御コストを削減する効果もある。
【0003】
局所クリーン化生産方式を、工場の工程全体に適用した製造例としては、非特許文献1で述べられているように、半導体集積回路製造の前工程を唯一の例として挙げることができる。この製造システムでは、製造物であるウェハは、独立した製造装置間を、容器に収納されて搬送される。それぞれの装置には前室が装備されている。前室の扉は二つある。一つは、装置本体と前室間のもので、もう一つは、前室と外界の間のものである。常にどちらかの扉が閉まっているように操作することで、装置本体内部と外界を常時遮断できる。ウェハ容器は、前室に連結される。連結状態では、ウェハ雰囲気を外界からある程度の性能で遮断する性能を持って、容器と製造装置との間でウェハをやり取りすることができる。
【0004】
容器には、搬送の容易さを確保するために、軽さと小ささ、及びメカニズムのシンプルさが要請される。この要請に叶うためには、容器開閉方法、特に、容器扉を開く際の扉の収納方法に工夫を要する。具体的には、前室との連結時に、容器の扉をウェハ容器内に収納する方式は、扉の収納スペースが必要となることから、この要請に反してしまうことに留意しなければならない。このことから、ウェハ容器の扉は、前室内へ収納されるのが妥当な連結構造であるということになる。HP社は、この点を考慮した連結方法について、一つの特許(特許文献1)を取得している。
【0005】
この特許では、3つのサブシステム:(1)前室、(2)ウェハ搬送容器、(3)前室内のウェハ転送メカがあること、そして、「2つの扉を合体して、清浄な内部空間へ移動する。」ことを主な特徴としている。この方式の名称である、"Standard Mechanical InterFace: SMIF(スミフ)"は、その後、この方式の名称となった。2つの扉を合体するのは、以下の理由による。2つの扉が微粒子を含む外界に接する外側の面には、それぞれ微粒子が付着してくる。それを合体することで、それらの微粒子を両扉の間に閉じこめて、前室内部へ収納し、微粒子の局所クリーン環境への拡散を防ぐことができる。
【0006】
図1(a)に示すように、容器1は容器本体3と容器扉4から、前室2は前室本体5と前室扉6からなり、(a) 容器本体3-容器扉4、(b) 前室本体5-前室扉6、(c) 容器本体3-前室本体5、の3箇所にシール部を設け、3つのサブシステムは内外を遮断しながら搬送する際に必要な一つの公理であるから、SMIF特許の特許性の要点は、この2つの扉による扉表面付着微粒子のサンドイッチ捕捉にある。ただし、サンドイッチされた微粒子は、その部位から排除されるわけではない。また、サンドイッチされた扉の端面から微粒子
がこぼれ落ち、ウェハ汚染される危険に対しては、対策を講じていない。さらに、前室とウェハ搬送容器の連結を密閉化する構造にはなっていないので、本特許構造においては、前室内、ウェハ搬送容器内への外部汚染ウエハ質の侵入を完全に防ぐ機能を有していない。
【0007】
次いで、Asyst社は、このSMIF方式を、200mmウェハのシステムとして実用化した。Asyst社は、この実用システムに関連して、SMIF方式の概念に密閉性を付加するための一つの改良機構として特許化した(特許文献2)。この特許においては、連結部分は4つの構造物、すなわち容器(box)、容器扉(box door)、前室(port)、及び前室扉(port door)から成っている。そして、図1(b)に示すように、これらの4つの構造同士の接触の内、(a) 容器本体3−容器扉4、(b) 前室本体5−前室扉6、(c) 容器本体3−前室本体5、(d) 容器扉4−前室扉6の4つの構造間に、密閉化のためのシールを施すことを特徴としている。
【0008】
その後、この密閉方式が完全なものではないことから、この特許に対するいくつかの改良特許が登録されている。具体的には、容器内のガスを入れ替える、すなわちパージする機構(特許文献3)、扉をラッチする機械的構造から微粒子が発生するのを抑制する方法(特許文献4)、容器扉自体が扉内部に複雑な機械的構造を持っていることから発生する微粒子を、容器扉と装置扉の開閉のための移動段階毎に、装置内及び容器内から外部へ流出させる気流を発生させることにより得られる非接触シールを用いて抑制する方法(特許文献5)である。ただし、このような一連の改良特許自体が、メカニズムを複雑化させる次のような弊害を生むこととなった。その弊害とは、製造コストの増大、重量増加、新たな微粒子発生源の発生、容器洗浄の困難さ増大などである。これらの改良特許を持ってしても、ガス遮断が実用レベルにないだけでなく、微粒子遮断も不完全であった。さらに、改良特許に見られる微粒子発生の抑制や排除のための改良が必要であったことは、SMIF方式と最初のAsyst社の4つのシール方法そのものが、微粒子遮断性能が不完全であるという点で、最良の密閉連結システムとは言えないことを意味している。
【0009】
その後、2000年頃から、最新のウェハサイズが300mmになると同時に、Asyst社のシール方式とは別のSMIF方式が提案され、それは300mmウェハ搬送システムとして、世界標準となった。この標準方式は、通常FIMS(Front-opening Interface Mechanical Standard: フィムス)システムと呼ばれている。これは世界統一のSEMI規格(主に、SEMI Std. E57, E47.1, E62, E63)でありながら、特許化されている(特許文献6)。FIMSでは、容器扉の水平方向の開口と水平連結方式を採っている。
【0010】
これは、Asystシステムでの垂直方向連結とは対照的である。また、Asystシステムでは、垂直に連結することから、ウェハは容器内部のカセットに収納されている。連結後に合体した2つの扉が内部へ格納されてからはカセットごと前室内へ移動する。これに対して、FIMSでは、カセットは省略されており、水平方向に合体した2つの扉が前室内へ移動し、続けて垂直方向にその扉が下降したのちは、容器内のウェハは、前室内にあるウェハ転送ロボットを用いて直接前室内へ取り出される。
【0011】
さらに、このFIMS特許においては、Asyst特許と異なり、各構造体の接触部のシール構造については具体的な構造定義がない。また、実際の実用FIMSシステムにおいては、意図的に1〜2mmほどの隙間を各構造体間に設けた構造としている。具体的には、容器-前室間、前室と前室扉間には隙間を設けている。その理由の一つは、物理的な接触によるシール構造を設けると、そのシール部分で機械的な擦れが発生し、これが、大量の微粒子発生を引き起こすからである。また、シールを設けないことで、Asyst特許の請求範囲と異なる特許となっている。しかし、これらの隙間があることから、ガス分子に対しては、原理的に密閉性を持たない欠点が生じている。
【0012】
なお、200mmウェハ用のAsystシステムにおいても、連結後の容器扉と前室扉の開閉時に局所環境内で発生する圧力変動とそれによる気流発生が引き起こす微粒子発生の問題を軽減するため、及び、密閉容器であると容器扉が負圧になって開きにくくなることを防ぐための2つの理由から、容器に、外界に通ずる圧力抜き孔が設置されている。このことで、実際には特にガス分子に対しては遮断性能を持つことができない構造になっている。圧力抜き孔は、同じ理由で、300mmウェハ用のFIMSシステムの容器FOUP(Front Opening Unified Pod: フープ)にも装備されている。このように、実際には、従来のSMIF型システムでは、完全密閉を実現できていない。
【0013】
以上の従来特許と公知の実用事例で理解されることは、シールを各部に施す密閉型機構に於いては、ガスなどの小さな分子に対しても有効な内外分離性能を持つ局所クリーン化生産システムを構築することは可能であるが、その反面、シール部の機械的擦れなどにより、多量の微粒子発生という副作用を生じるということである。逆に、隙間のある構造を採ると、微粒子の発生を抑制できる反面、ガス分子に対しては内外の分離性能を確保することができない。これは、SMIF方式の持つ自己矛盾としての欠陥である。この結果、実用システムでは、密閉性の不完全な構造とならざるを得ない問題点があった。
【0014】
実際、最新の300mmウェハ対応の全ての半導体集積回路製造工場に、世界標準として導入されたFIMSシステムでは、隙間を持っているために、ガス分子だけでなく、微粒子についても、完全な遮断性能を持っていない。その弊害として、本来遮断性能の点で完全な局所クリーン化生産システムであれば、クリーンルームは不要になるはずであるが、実際の全工場においては、依然としてクリーンルーム中でFMISシステムが導入されている。つまり、現状では、クリーンルームと局所クリーン化の2重のクリーン化が必要となっているのである。このことが、設備投資額を増大させ、また高度な管理が必要となり、製造コストを大きく押し上げている。
【0015】
最後に、上述のガス分子と微粒子の同時排除の困難さに加え、さらに重要なことは、装置空間と人空間を分離するのに、前室という空間が必要であった。このことで、前室の2つの扉と搬送容器の1つの扉の合計3つの扉が必要であり、連結システムとしての複雑さを生む本質的な原因ともなっていた。
また、特許文献7〜9には、ポッドと装置をポッドドアと装置のポートドアが対向するように密着させて、その後該ポッドドアとポートドアを移動させることによってポッドを開く装置が記載されているが、そのポッドドアと装置のポートドアにより形成される空間は単に窒素で置換するに留まるのであって、空間を規定する部材表面を清浄化するものではないし、窒素で置換することはポッド又は装置内部が真空である場合には圧力差を理由に機能しないことを示す。
特許文献10には保管箱のキャップを開けるために、該キャップを保持する手段として磁気や真空力による手段が記載されているが、これはあくまで保持手段に過ぎず、該キャップ表面とそれに対向する装置の扉表面を清浄化させるものではない。
特許文献11記載の発明は真空クリーンボックスのシャッター兼用蓋体とクリーン装置のシャッターを気密に接合し、その密閉空間を真空にした後に該シャッター蓋体とシャッターを別々に開けることが記載されており、このような方法は全て真空下で行わなくてはならないし、全ての部材の外面を清浄化させておくことを前提としている。
特許文献12記載の発明は露光マスク容器の蓋と装置の蓋により形成される空間を真空にして、その後にこれらの蓋を開けるものであるが、この方法は真空装置にのみ使用されるし、しかも単に真空にするのみであって清浄化を行うものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4532970号明細書
【特許文献2】米国特許第4674939号明細書
【特許文献3】米国特許第4724874号明細書
【特許文献4】米国特許第4995430号明細書
【特許文献5】米国特許第5169272号明細書
【特許文献6】米国特許第5772386号明細書
【特許文献7】特開平05−082623号公報
【特許文献8】特開平06−084738号公報
【特許文献9】特開平05−109863号公報
【特許文献10】特開平06−037175号公報
【特許文献11】特開平07−235580号公報
【特許文献12】特開2004−039986号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「局所クリーン化の世界」(原史朗、工業調査会、ISBN 4-7693-1260-1(2006))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本来2つ扉があれば、2つの扉を同時に開けないことで、装置空間と人作業空間を分離できるはずであるが、従来技術では、前室の2つの扉と搬送容器の1つの扉の3つがあるため、それらの開閉に要する機構等を設ける必要があり、装置が複雑化していた。本発明は、この問題を解決し、より簡単な構造であっても、確実に外気とシールして、内容物を搬送・装置内に搬入させるものである。
【0019】
また、シールを各部に施す密閉型機構に於いては、ガスなどの小さな分子に対しても有効な内外分離性能を持つ局所クリーン化生産システムを構築することは可能であるが、その反面、シール部の機械的擦れなどにより、多量の微粒子発生という副作用を生じる。逆に、隙間のある構造を採ると、微粒子の発生を抑制できる反面、ガス分子に対しては内外の分離性能を確保することができない。すなわち、従来技術では、ガス分子を完全排除できる物理的な空間遮断構造を持ちながら、微粒子を排除できる機能を持った製造物搬送方法が存在しなかった。さらに、従来において使用されている搬送容器は外気のガス分子が流入可能なフィルター部等を有するために、完全に遮断されたものではなかったのが現実である。
本発明は、物理的な空間遮断構造を持つことでガス分子を遮断する構造において、微粒子を排除出来なかった課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記の課題を解決するため、磁性体を有する搬送容器本体と搬送容器扉で構成されて、この磁気力により搬送容器扉と搬送容器を閉じる構造を有する搬送容器と、装置本体と磁石又は磁性体を有する装置扉を有する装置からなる連結システムであって、搬送容器は、搬送容器本体と搬送容器扉の密着連結により密閉可能な第1のシール構造を有し、装置は、装置本体と装置扉の密着連結により密閉可能な第2のシール構造を有し、さらに、搬送容器と装置は、両者が密着連結することにより形成される密閉可能な第3のシール構造を有し、搬送容器と装置が密着連結したときだけ、第3のシール構造によって密閉化された1つの分割されない連結室を形成し、搬送容器扉が搬送容器から分離し装置内に取り込まれる構造を有する連結システムとしたものである。
【0021】
さらに、連結室には清浄気体噴入孔及び排気孔を設け、連結室内の圧力制御を行う機能を有する弁がどちらかの孔またはその連結室に直接接続されている構造を持たせて、搬送
容器と装置の合体時には、連結室内の圧力が外部よりも負圧にすること、及び任意のガスにより連結室内の雰囲気を置換することが可能な、排気装置または負圧発生装置が連結された排気孔や気体の供給装置が連結した吸気孔を有するようにしてもよい。
また、装置扉に電磁石又は磁石(永久磁石など室温で磁性を帯びている物体)を有してその磁気力によって搬送容器扉を装置扉に吸引することで搬送容器扉を開く構造や、搬送容器本体に磁性体(磁化される物体)を有し、搬送容器扉には2つ以上の磁性体が離れて1つの磁石に接続してなる組を1つ以上設け、磁石により磁化されたその組を構成する磁性体が搬送容器本体が有する磁性体と磁気引力により引き合うことで、搬送容器本体と搬送容器扉を閉じる構造を有し、かつ、装置扉が有する電磁石又は磁石の磁気力によって、搬送容器扉を装置扉側に吸引することで、搬送容器本体と搬送容器扉の磁性体間の磁気力を弱め、これによって搬送容器扉を開く構造としてもよい。
搬送容器扉外面には異なる3方向に向かうV字状の溝を設け、該搬送容器扉の周囲の容器本体には位置決めピンを設け、さらに、該搬送容器扉の周囲には斜面を設けてなる該搬送容器と、これらのV字状の溝、位置決めピン及び斜面のそれぞれに嵌合する構造を有する装置扉及び装置本体を採用することもできる。
加えて、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器本体が有する磁石と該搬送容器扉が有する磁性体が対向するように配置されてなる構造を有する搬送容器としてもよく、また、搬送容器本体に2つ以上の磁性体を有し、搬送容器扉には1つの磁石の両端に2つの磁性体が接続してなる組を1つ以上設け、磁石により磁化されたその組を構成する磁性体が、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体と該搬送容器扉が有する該2つ以上の磁性体が対向するように配置され、該搬送容器扉が有する該磁石の磁気力により搬送容器本体と搬送容器扉を閉じる構造を有する搬送容器としてもよく、さらに、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該磁石の両端に接続した該2つの磁性体それぞれが、該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体に対して、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態とするために必要な磁気力を及ぼす程度に近接し、かつ該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体は搬送容器本体内にて接続されることにより、搬送容器本体と搬送容器扉が有する磁石及び各磁性体によって、磁気の閉回路を形成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来の連結システムで必要であった装置の固定された前室が不要となり、装置の構造がより簡素化できると共に、搬送容器と装置との密着構造により前室に相当する空間が、シール部分が3つと少ない箇所をシールするのみという簡単な機構と、搬送容器本体と容器扉の開閉、容器扉と装置扉の脱着を磁気により形成することが可能である。
また、容器内部、3つのシールにより構成される空間及び装置内部のそれぞれの気圧を同程度とすることができるので、容器内部を外気と同じ気圧にする必要がなく、開閉時に塵や埃、パーティクル等が内部に侵入することを防止できる。
しかも、磁気力により容器扉と装置扉の脱着を行うので、脱着にあたっての摺動部がなく、微粒子を発生させることもない。磁気の閉回路を形成する場合には、磁気が外部に漏れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の搬送容器と装置の前室との接続の模式図(a)(b) 本発明の搬送容器と装置の連結システムの模式図(c)
【図2】本発明の搬送容器と装置との連結システムが形成される工程
【図3】本発明の搬送容器と装置との連結システムが形成される工程
【図4】本発明の搬送容器と装置との連結システムが形成される工程
【図5】磁気力の閉回路を形成することにより搬送容器扉を開閉するための装置
【図6】図5に記載された装置において搬送容器側に磁気力の閉回路が形成された状態の模式図
【図7】図5に記載された装置において搬送容器扉と装置にまたがって磁気力の閉回路が形成された状態の模式図
【図8】本発明における搬送容器扉内部側模式図
【図9】本発明における搬送容器内側模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
搬送容器と装置の間で被搬送物である内容物を出し入れする際に、搬送容器内部と装置内部が個別に外界と遮断可能にするために、搬送容器と装置の両方に扉を設ける必要があることは明らかである。
本発明では、搬送容器と装置本体を気密に連結し、これらの間で内容物を移動させるために必要な扉を2つだけとする。一つは容器の扉であり、もう一つは、装置本体の扉である。これらの2つの扉は、搬送容器と装置が気密に連結した時だけ連結室を形成できるような形状を有する。元々その連結室の内面は2つの扉の外面であるから、外部空間にさらされることで汚染された可能性がある表面である。従って、連結室を形成して連結室内部の清浄化機構を具備する場合には、さらに清浄性を確保でき、搬送容器内部、装置内部及び連結室からなる内部空間と外部との分離を実現できる。
【0025】
本発明は連結時に装置と搬送容器との間に発生する小さな連結室について、どのような構造と清浄化手法があるのかについて、極めて曖昧な手法しかない従来のSMIF方式、あるいは装置に固定化された前室を設けてなる方式とは異なる。
本発明では、固定化された前室を要しないため、前室と装置内の処理室との間に設けられた扉を設ける必要はなく、その扉の分だけ、必要な扉の数を1つ減らすだけでなく、それと同時に従来の局所クリーン化生産システムの不完全な内外遮断性能を解決する。本発明においては、装置と搬送容器の連結時に、外部から密閉遮断される連結室を形成させる。そのために、以下の3つのシール構造を設ける。
【0026】
まず、搬送容器は、搬送容器本体と搬送容器扉の密着連結により密閉可能な第1番目のシール構造(シール1)を有する。密着連結に使用する機構としてはラッチ等の公知の手段を採用することができる。
次に、装置は、装置本体と装置扉の密着連結により密閉可能な第2番目のシール構造(シール2)を有する。最後に、搬送容器本体と装置本体は、両者の密閉連結により密閉可能な第3番目のシール構造(シール3)を有する。搬送容器と装置が連結する際には、最初の2つのシールに加えて、3番目のシールが成立するので、これらの3つのシールにより、分割されない1つの密閉化された連結室が形成される。
ここで、これらのシール構造は、Oリングやガスケット等の公知のシール手段を採用することが可能である。
【0027】
連結時に発生した連結室が密閉の室を構成するために、この連結室の圧力や微粒子濃度、ガス濃度等の環境は制御可能となる。環境を制御するため、連結室に対しては、ガスの入出力または圧力制御を目的とした入力ポートと出力ポートが装備される。この構造においては、容器扉と前室扉を合体して微粒子を捕捉し収納する必要はない。この構造では、微粒子とガス分子の両方に対して、外界と製造物空間を相互に完全に遮断する機能が得られるので、この構造を、清浄気密連結(Particle-Lock Airtight Docking: PLAD)構造とする。
【0028】
装置と搬送容器の合体時に形成される連結室を形成する内部壁は、搬送容器本体、搬送容器扉、装置本体、装置扉のそれぞれの一部分で構成されている。装置と搬送容器が合体していない状態においては、その内部壁になる部分の表面は、外部空間に接しており、外部空間の汚染物質やガス分子が付着して汚染されている。これらの外部空間へさらされた
表面は、合体時において連結室の内部壁を形成しても、依然として汚染されている。この連結室内部壁の付着汚染は、連結室に設けられている清浄気体導入用ポートから、清浄気体を噴出することで、壁に付着した微粒子をその気体の風力によって表面から脱離させ、排気用ポートから排出することができる。また、清浄気体の導入により、化学的に表面に吸着しているガス分子も、清浄気体と置換することで、表面から脱離させることができる。
【0029】
重要なことは、清浄気体の導入によって排除出来ない固着物質や強い結合力で表面に残存する分子類は、搬送容器と装置を一体化するため、搬送容器扉と装置扉を開けた後も、表面から離脱することはないので、無視できることである。さらに、合体時に搬送容器と装置が物理的に接触することで、摩擦などにより、発生する微粒子とガス分子も、2つの扉を開ける前に、清浄気体の導入によって、連結室から排除できる。このように、シール3の形成によって発生する連結室内の汚染は、本方法によって排除可能である。
また、連結室内の雰囲気を装置内部の雰囲気と同じ雰囲気に制御すると、搬送装置扉と装置扉を開ける前後において、装置内の雰囲気の組成が変化することがない。
【0030】
連結室を清浄気体によって清浄化した後、シール1とシール2を解放する、すなわち、搬送容器扉と装置扉を装置内部に向けて開けることで、搬送容器と装置内の空間が一体化し、物体の両者間の搬送が可能になる。シール1とシール2のシールを物理的に引き離す際に、これらのシール部や2つの扉それぞれが搬送容器や装置の部材と面していた箇所から、多少の微粒子やガス分子が発生する可能性がある。これらの発生した汚染物が、搬送容器内と装置内へ侵入すると、搬送する物体への汚染の原因になる。従って、このシール部で発生した汚染物は、連結室側へ移動するような工夫が必要である。汚染物質の連結室内への移動は、連結室の気圧を搬送容器内部及び装置内部の両方の気圧よりも低く設定することで可能になる。物質は気圧の低い方へ流れるからである。連結室へ吸引された汚染物質は、排気孔から外部へ排出される。このような連結部分で発生した汚染物質の排除は、容器内部が気密であり、かつ連結室を設けることで初めて可能になる。
ただし、連結室の気圧が、搬送容器内部又は装置内部の気圧に対してある程度の気圧差を有する場合には、その圧力差に抗して搬送容器扉や装置扉を開けることが困難になる可能性がある。
【0031】
以上の構造と操作から明らかなように、一時的に形成する連結室は真空排気が可能である。従って、装置本体や搬送容器内部が真空圧の場合でも、連結室を真空にすることで、扉を扉の両側の圧力差がほとんど無い状態で開くことができる。一般に、真空装置では、真空装置本体の真空を大気に戻す時間とそれにより生ずる汚染を避けるため、真空装置本体は常に真空に保持する場合が多い。そのため、普通は真空装置に前室を設ける。この前室が大気と真空を行き来する。このため、この前室をair-lock室と呼ぶ場合がある。本発明では、連結室がこのair-lockの役割を果たすために、つまり大気と真空を行き来するために、従来型の固定された前室は不要となる。普通、前室自体が扉や搬送メカニズムを持つため、前室の容積は、比較的大きなものとなっている。このため、前室を排気するにも相当の時間を要する。一方、本発明では、連結室は、容器と装置の合体時にできるわずかな小空間で済むため、連結室自体の連結時の清浄化には、たいして時間がかからないし、それに要する装置は小規模なもので済む。ただし、本発明においても、前室を設けることを排除するものではない。
【0032】
微粒子による製造物への汚染が問題となる場合においては、とりわけ、連結室の清浄化操作が必要である。一方、微粒子汚染が問題とならず、ガス分子汚染が問題となる場合においては、その汚染の影響が比較的重大でない場合には、連結室のガス導入とガス排気ポートは省略できる可能性がある。連結室の容積は従来の前室と比較して極めて小さなものであるから、その内部の汚染物質の絶対量も少なく、それが搬送容器と製造装置の容積内
に拡散して希薄化されると、たとえば4桁以上濃度が低下する。この希薄汚染濃度で問題のない用途では、連結室の清浄化のための真空化、あるいは清浄気体を導入するためにポートを設置、等を行う必要がない。
【0033】
次に搬送容器の開閉方法について述べる。
搬送容器の扉は装置との合体の後に装置内部に開かれる構造を有する。仮に、容器扉が容器の外へ合体前に開く方法では、容器内部が外部にさらされないよう、もう一つ扉が必要になってしまうので、省スペースとメカニズムの効率の点で、不利である。容器の内部へ搬送容器の扉が格納される方法では、奥方向へ引き込まれると、それだけ搬送容器の扉の移動に使う容積が増えてしまい、搬送する容器が大型化して望ましくない。従って、搬送容器の扉は装置内部へ格納される。
【0034】
搬送容器の扉の内部格納構造においては、扉に蝶番がついて開閉する、住居用ドアに採用される方式をとる可能性がある。しかし、蝶番の摺動部から大量の微粒子が発生するのでこれも適切な方法ではない。本発明では、搬送容器扉は、装置本体へ分離格納される。搬送容器扉と搬送容器本体を密閉しているシール1は、搬送容器扉と搬送容器本体の間に位置する。搬送容器扉が装置本体へ垂直に格納移動されると、シールに対して横ずれがないため、扉と本体の擦れは最小限に留まる。
【0035】
容器扉は、装置扉に具備される扉のフック機構等によって開閉される。本発明においては、微粒子もガス分子もその発生を抑制する機構として磁気フック機構を用いる。一般的に用いられる摺動する部分が沢山ある機械的な鍵の機構では、開閉時に発生する摺動によって、多量の微粒子が発生する。従って、高度な清浄化が要求される場合に用いるべきではない。磁気を用いる開閉機構は、そのような機械的動作を伴わず、摺動が発生しないので、微粒子の発生量が格段に少なく、高度な清浄化に適している。
【0036】
本発明では、搬送容器本体と搬送容器扉に磁性体(少なくとも一方が磁石)を設けて、この磁性体間の引力によって搬送容器扉と搬送容器を閉じる。また、装置扉に磁石を組み込み、その磁気力によって搬送容器扉を装置扉に吸引することで、搬送容器扉を開くものである。このとき、作用する磁気力を調整するために、場合により電磁石や磁性体等を密着させないことも必要である。
本発明のような磁気開閉機構が機械開閉機構よりも清浄化の点で優れているが、磁気開閉機構は実際の搬送容器の開閉機構としては不十分な点がある。それは、磁気力が磁性体間の距離に強く依存しており、吸引力が1mm以下で急速に強くなって、逆にそれ以上の距離になると急速に弱くなるので、製品構造に高い精度を要求されることが理由の一つである。特に磁性体同士を接触させた場合、ミクロンスケールでみれば、磁性体表面は凹凸があり、精度もミクロンオーダに達していなければ、磁気吸引力は、意図したものにならない。また、搬送容器のように同じものがたくさんある場合、個々の容器で僅かに寸法が違うので、磁気吸引力が個々の容器で違う可能性がある。
以上の問題を回避するため、本発明においては、磁性体間の距離を制御できる構造を採用できる。2つの磁性体が接触しているミクロンスケールの距離での吸引力の変化が激しいので、そのような近接距離を、実用に用いないように回避することが目的である。数十ミクロン程度距離を離しておく設計とすると、10μmの精度誤差での吸引力の差は比較的小さくなる。さらに、この小さくなった吸引力の差を補うため、もっとも吸引力の弱くなると予想される磁気力を基準に、装置側の開放機構の磁気力を定める。
【0037】
[搬送容器]
本発明における搬送容器は、外気に直接触れることにより汚染や反応等の何らかの支障を生じる物を搬送するための密閉容器である。この「物」としては、半導体用基板、センサ用基板、微生物、培地、遺伝子、不安定な化合物、酸化されやすい金属、有害物質等、
化合物や菌等による汚染を避けるべき物質、拡散を防止すべき物質、反応性が高い物質等、各種用途に使用され、現在において、クリーンルームやグローブボックス等の装置内にて取り扱うべきものが広く対象となる。中でも広く使用される用途としては加工途中のハーフインチから450mm等の大口径に至る各種口径の半導体ウエハ、半導体チップの搬送等である。
【0038】
このような搬送される物の特性に応じて、搬送容器の本体と扉の材料や特性を選択することができ、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、石英、ガラス等の耐湿性及び寸法安定性に優れた材料を使用することが好ましい。搬送容器扉の開閉を上記のように磁気力により行うためには、少なくともこれら材料による搬送容器本体の扉と密閉する箇所に磁性体及び磁石を配置する。
【0039】
もちろん、搬送容器の大きさは搬送されるものの大きさに関連して決定され、また1つの搬送容器に複数の物を収納するための複数の室を設けることも可能である。例えば、1つの搬送容器の表裏面にそれぞれ1つずつの扉を設け、その内部に独立した室を設けることや、円盤状の搬送容器の表面に複数の扉を互いに隣接させて設けて、各扉には対応する室を設けること等が可能である。
【0040】
搬送容器が搬送されている途中等、搬送容器が単独で容器として使用されているときに、不用意に扉が開かないように扉をロックするための機構を備えること、及びそのロックは搬送容器と装置が密着連結したときに自動的に解除されるような機構も設けることが利用性の点から好ましい。
【0041】
搬送容器内に収納された物が不用意に移動すると、搬送容器の扉を開けて装置内に導入することが困難になったり、収納されている物自体が破損する可能性が高くなるので、搬送容器内においては、収納された物を固定するための押圧部材等の何らかの手段を設けることが必要である。
【0042】
[搬送容器と装置のインターフェイス]
搬送容器の扉側の面が装置扉に接続されるが、ここで搬送容器の扉が装置扉に対してずれることなく高精度に位置決めされることが必要である。この点は、搬送容器を手で装置扉に接続する場合であっても、あるいは搬送装置にて接続する場合であっても同じである。
しかも、搬送容器と装置扉との間で摺擦する部分があれば、その部分からはパーティクルを発生することになり、その後、装置内を汚染したり搬送容器内の物品を汚染することになりかねない。このため、搬送容器の扉側には特定の構造を持たせる必要がある。
まず、搬送容器の扉は、搬送容器本体に埋め込まれるようにして設置される。そして搬送容器本体の扉側の面の周縁部には搬送容器側面にかけての傾斜部を設ける。この傾斜部は装置本体のポートの周縁部に設け、ポート中心部に向けて設けられた傾斜部と一致するようにされている。
さらに搬送容器の扉の周囲の搬送容器本体部には、複数の突起部を設けてなり、該突起部は装置本体のポートに設けられた凹部に嵌合するようにされている。
さらに、搬送容器の扉の外面には3つの先端が半球状の突起として設けられ、この突起に対応して装置扉表面には3つのV字状の溝が放射状に設けられている。
このような構造の搬送容器本体、搬送容器扉、装置本体及び装置扉を使用して以下の通りに搬送容器は装置扉に高精度に接続される。
まず、装置本体に接近してきた搬送容器は、上記の搬送容器本体の扉側の面の周縁部に設けた傾斜部を装置本体のポートの周縁部に設けた傾斜部に合わせるようにして挿入され始める。途中まで挿入されて、搬送容器は装置本体に対して多少の遊びがある程度に位置決めされる。
次いで、上記の搬送容器の扉の周囲の搬送容器本体部に設けた複数の突起部が、対応する該装置本体のポートに設けられた凹部に嵌合する。この際に上記の多少の遊びは相当削減されて、搬送容器の垂直軸に対する回転がある程度抑制される。
その状態でさらに搬送容器本体が装置扉に接近すると、搬送容器の扉に設けた3つの先端の半球状の突起が、装置本体の扉に設けた上記の3つのV字の溝に入ることになる。このときには、1つのV字の溝を構成する対向した2つの斜面それぞれが、該半球状の突起と接触し、該半球状の突起は2箇所において該対向した2つの斜面それぞれと接触する。
この結果、搬送容器は垂直軸に対する回転方向へのぶれが無くなり、かつ水平方向へのぶれも放射状の3つのV字の溝により解消する。
このような機構によって、搬送容器は装置本体に対して垂直方向への移動以外は不可能となり固定される。
[装置]
上記搬送容器と密着連結される装置としては、上記のように搬送される「物」が取り扱われる各種装置でよく、「物」が半導体用基板であれば半導体製造用装置、センサ用基板であればセンサ製造用装置、微生物や培地、あるいは遺伝子であれば培養装置や分析装置、不安定な化合物や酸化されやすい金属であれば反応装置や分析装置、有害物質であれば分析装置等のそれを取り扱う装置等、外気を遮断して操作することが必要な公知の各種の装置を選択し得る。
なかでも半導体製造装置としては、半導体製造工程にて使用される一連の各種装置を採用することができる。
【実施例】
【0043】
以下図面に基づいて実施例を説明する。
図1(c)は本発明の連結システムを構成する搬送容器7と装置8が密着連結している図であり、図示はしないが搬送容器7を装置8に固定し、密着連結させるための公知の手段に基づいて、搬送容器7と装置8が密着している。ここで、本発明の最も特徴的な点は、搬送容器7は装置8の前室に密着しているのではなく、装置8そのものに密着させることができる点である。ただし、これは搬送容器7が装置前室に密着することを排除するものではない。
前記のように、搬送容器7と装置8が密着連結した結果、搬送容器7の容器扉12と装置8の装置扉9で規定される連結室10が従来の連結システムにおける前室の役目を果たすものとして形成される。
【0044】
従来技術における前室は、搬送容器に収納された物品を装置内に搬入させるために、大気と減圧下、あるいは大気と特定の雰囲気下という環境が異なる外気と装置内を接続するために機能するものである。これに対して、本発明における上記連結室10はあたかも該前室であるかのように、連結室10内部の環境が、密着連結直後の外界と同じ環境から、容器扉12と装置扉9が一体となって装置内に向けて移動し、2つの扉が開くまでの間に、連結室に接続された気体供給用ポート15及び気体排出用のポート16を介して装置内の雰囲気と同様の雰囲気となるように調整され得る。
【0045】
半導体のように真空下において処理する工程に付すものは、特にこのような清浄用気体の供給と排出が要求される。この場合、複数の工程毎に異なる装置を用いる製造設備においては、各工程に使用する装置それぞれに本発明の連結システムを必要とする。
装置内の雰囲気が真空であれば、気体排出用ポート16から連結室10内の気体を真空ポンプ等により排出し、必要であれば、続いて気体供給用ポート15から不活性の気体を連結室内に導入後、さらに気体排出用ポート16からその気体を排出する操作を任意の回数行う等により、微粒子等を含有している連結室10内の環境を装置内の環境と同程度のものとすることが可能である。
【0046】
もちろん、目的とする装置内の清浄度や雰囲気に応じて、必要であれば、連結室10内の環境を装置内の環境と近づけることができる。
このように、本発明は搬送容器を前室ではなく直接装置8に密着連結できるものであり、そのために密着連結により形成された連結室10には、気体導入用ポート15及び気体排出用のポート16が接続されるように、装置8にはこれらのポートを設けることができる。
これらのポートにより連結室10内を気体が流通して清浄化するにあたっては、気体が連結室10内全てにわたって流通することが必要であるし、容器扉12と装置扉9が密着していた容器7の開口部及び装置本体8の開口部に付着している、粒子等も除去可能なように気体が流通することも必要である。
【0047】
本発明の連結システムを用いた搬送容器7と装置8の密着連結の詳細を、搬送容器内部のウエハを装置内に導入する例を挙げて次に示す。この例に限らず、他に例えば、微生物の培地、不安定な化合物を導入することも可能である。
図2には、搬送容器7が搬送容器本体11と容器扉12からなり、搬送容器本体11と容器扉は公知のシール手段により気密にシールされている。そして搬送容器本体11には容器扉から搬送容器本体11の内部に向けて設けられたウエハ17を支持する部材を設けてなる。
【0048】
容器7と装置8を密着連結させた後を考慮して、搬送容器7は搬送容器本体11の壁部に磁石18を設け、容器扉12の搬送容器本体11の壁部に当接する箇所には鉄等の磁性体19を設けてなることができる。その際には、該搬送容器本体11の壁部及び該容器扉12の磁性体19を設けた箇所を延長し、容器扉12の磁性体19を設けた箇所と当接する装置扉9の箇所に電磁石14を配置しておく。
【0049】
図2の状態では、搬送容器7は搬送容器本体11が容器扉12と磁気力によって強力に密着し、搬送容器本体11の内部は外気とは確実に遮断されている。また、装置8の装置扉9は何らかの手段により装置本体13に確実に密着しており、装置本体13もまた外気とは確実に遮断された状態である。
【0050】
このような図2の状態から、次には図3に示されているように、搬送容器7は容器扉12を下方に向けた状態で、上面に装置扉9を設けてなる装置8の装置扉9に重ね合わされるようにして載置される。このとき、搬送容器7と装置8の一方に位置決め用のピンを設け、他方にその位置決め用ピンを嵌合する穴を設ける等して、搬送容器7と装置8が正確に重ね合わされるようにすることが重要である。その位置決めのための機構としてはピンに限定されるものではなく、公知の位置決め手段を採用することも可能である。
【0051】
装置本体13と装置扉9も、公知のシール手段により気密にシールされている。
搬送容器7を装置8の上に正確な位置で載置した後には、両者を密着連結させるための操作を行う。密着連結をしない場合には、搬送容器7と装置8が気密にシールされず、それらの間には隙間が形成されることになり、その状態で扉を開くと外気が搬送容器7内や装置8内に侵入し、これらの内部が外気と微粒子等で汚染されることになる。
この密着連結するための手段としては、ラッチ機構等の公知の手段でよく、その密着強度としては搬送容器本体11と装置本体13の間に介在するガスケット等の公知のシール手段によるシールが有効に機能する程度の強度でよい。
【0052】
搬送容器7を装置8に密着した後に、搬送容器本体11と装置本体13との間に、どちらか一方又は両方に設けられていた公知のシール手段により気密なシール構造が形成される。そしてそのシール手段により区画された容器扉12と装置扉9との間に形成された連結室10を装置内の環境と同じ環境にすべく、予め装置に設けられている気体供給用ポー
ト15及び気体排出用のポート16を用いて、連結室10内の環境を調整する。
具体的な調整方法としては、当初は外気と同じ環境の連結室10内の空気を気体排出用ポート16から排気して減圧とする。次いで気体供給用ポート15から例えば乾燥した窒素ガスを導入し、さらに気体排出用ポート16から排気して減圧とする工程からなる方法、またはこの方法を繰り返す方法を採用できる。
【0053】
このような方法によれば、当初は外気と同じ環境であって、酸素等の反応性ガスの他に微粒子等の汚染物質が存在した連結室10は、気体の排気と供給による気流により、除去が可能な微粒子等が除去されると共に、酸素等の反応性ガスも排気される。その後に、装置8内の環境と同じ環境、つまり、装置8内が減圧下であれば、連結室10も減圧下、装置8内が不活性ガス雰囲気下であれば、連結室10も不活性ガス雰囲気下に調整される。もちろん連結室10の環境の調整はその他の工程によってもよい。
【0054】
このような連結室10の環境の調整は、従来の装置において前室においてなされていた調整と特に変わるところはないが、搬送容器7と装置8の双方の扉等により規定される連結室は従来の前室と比較して圧倒的に小さいので、気体の供給や排気に要する装置もより小規模な装置で十分であり、また所要時間も遙かに短時間で済むものである。
【0055】
引き続き、搬送容器7内に収納されているウエハを装置8内に移動させる方法を説明する。
いずれにも図示していないが、装置扉9を開閉するためのエレベータ等の装置が装置8内に設けられており、搬送容器7の容器扉に固定されたウエハを、容器扉12及び装置扉9ごと装置8内に移送して装置内の処理手段による処理に付すことになる。
一体化した容器扉12と装置扉9を共に装置8内に移動させるに際して、容器扉12と搬送容器本体7との密着を解除する。
【0056】
その解除するための手段の一例として、以下の手段が挙げられる。
容器扉12に設けられた磁性体19は、搬送容器本体7の壁に設けられた磁石18の磁気力を受けて、該磁石18と磁着している。
このため、容器扉12を搬送容器本体11から離すためには、磁性体19に作用する磁石18からの磁気力に抗して、磁性体19に対して容器扉12を離す方向へと力を加えることが必要である。
【0057】
図3においては、装置扉9に設けられている電磁石14に電流を通して、磁性体19に対して磁気力を加えることにより、磁性体19にかかる磁気力が磁石18によるものよりも電磁石14によるものを強くすることにより、磁気力の閉回路が形成されて装置扉9に容器扉12が磁着する結果となる。
このように、装置扉9に容器扉12を磁着させた状態で、装置扉9を下方に移動させることにより、図4に示すように装置内に装置扉9と容器扉12が共に導入される。電磁石への通電は磁石18から容器扉12への磁気力がある程度弱くなった時点で停止してもよい。
この状態において、装置扉9と容器扉12からなる連結室10は装置8内の空間と連通するが、既に連結室10は装置8内の環境と同環境であるので、連結室10に由来する装置内の汚染はみられない。
【0058】
なお、この例は装置8に気体供給用ポート15及び気体排出用のポート16を設けてなる例であるが、これらのポートを設けなくても良い場合がある。それは、装置8の容積と連結室10の容積を比較すると、連結室10の内容積が圧倒的に小さいので、仮に連結室10に存在する微粒子やガスが装置内の雰囲気に混入しても、それによる汚染の程度が極めて小さく無視可能である場合である。
【0059】
この際、形成された連結室10と装置8内の気圧等の環境を同じとするために、例えば装置扉9に装置8内と連結室10内を連通する開閉可能な管路を設け、搬送容器7と装置8が密着して、連結室10が形成された後において、該管路を開として連結室10と装置8内を連通させるようにしてもよい。
さらに、上記の実施例の装置8の装置扉の向きを横向き、あるいは下向きとし、搬送容器7の容器扉12も横向き、あるいは上向きとすることも可能である。
【0060】
磁気力により容器扉と装置扉を開閉する別の機構について図5を基に説明する。
図5は搬送容器21が装置20に密着した状態の図であり、装置扉22の上面に容器扉23が対向し、搬送容器本体25の容器扉23の周囲の部分が装置本体24に対向している。
装置扉には、電磁石26が埋め込まれ、その先端が装置扉の上面に露出している。
該電磁石26の先端の位置に対向するように、磁性体27が容器扉23の表面から反対面を貫通するように埋め込まれている。この磁性体27は複数埋め込まれており、その複数の磁性体27は磁石36の両端に磁気力にて接続されている。そして、このような2つの磁性体27と磁石36からなる組が1つ以上埋め込まれている。
【0061】
また、容器扉23の内側、つまり搬送容器本体側に磁性体27が露出した箇所には、搬送容器本体25に埋め込まれた磁性体28が磁気力を及ぼしており、容器扉23は内部に埋め込まれた磁性体27と搬送容器本体25に埋め込まれた磁性体28との間に発生する磁気力による引力により、搬送容器本体25に固定され、このため、容器扉23により搬送容器本体25の内部が密閉される。
搬送容器本体25に埋め込まれた複数の磁性体28は、容器扉23と対向する部分から離れた箇所にて、磁性体29により接続されており、この状態において搬送容器本体と容器扉を磁気力が接続して閉回路が形成されている。
【0062】
搬送容器本体25の内部には、装置20内との間を容器扉23と共に移動可能となるように容器扉23に固定されてなる被処理物30が収納されており、装置本体24や搬送容器本体25に外気の侵入や微粒子の侵入を防止しつつ、被処理物を装置内、あるいは容器内に移動可能とするためには搬送容器21と装置20が密着して連結室を形成し、該連結室は外気に対して気密であることが必要である。
このため、図5においては搬送容器本体25と容器扉23との間を気密しシールするための、Oリング等のシール部材31が設けられ、装置本体24と装置扉22との間を気密にシールするための、Oリング等のシール部材33が設けられ、また搬送容器本体25と装置本体24を気密にシールするためのOリング等のシール部材32が設けられており、これらのシール部材により、容器21の内部と装置20の内部は、容器21が装置20に接続しているときはもちろん、そうでないときも、内部が外気から遮断された状態でいられることが可能である。
【0063】
さらに、容器21が装置20に正確に接続され、搬送容器本体21内の被処理物30が装置本体24の内部を行き来して、正確に処理することが可能となるには、搬送容器本体25に設けた複数の位置決めピン34と、装置本体24に設けた複数の穴や溝を正確に嵌合などすることが必要である。もちろん、装置側に位置決めピンを設け容器側に穴や溝を設けてもよいが、操作性を考慮すると、容器側に位置決めピンを設け、装置側に該位置決めピンと嵌合するように穴や溝を形成することが好ましい。
位置決めピン34の先端形状は円球状でも円錐状、角錐状でもよく、ピンとして明確な先端を備えるものであればよい。また穴や溝35はその位置決めピン34と嵌合するように、位置決めピンの先端形状を反映した内面の形状を有してもよいが、特にV字状の溝、U字状の溝とすることが好ましい。このときに位置決めピン34の先端付近の2点が穴や
溝35の底部付近の2点に接触するようにしてもよい。このときには、例えば位置決めピン34の先端が円球状、穴や溝がV字の溝のときのように、位置決めピンの先端の円球状部分がV字の溝35の中心部に位置させてもよい。このような位置決め手段によれば、容器21を装置20に正確且つ確実に、予定した位置に接続させることが可能となる。
【0064】
図5では図示しないが、装置20に図2に示すような気体供給用ポート及び気体排出用のポートを設け、かつ搬送容器本体25と装置本体24との間はシール部材32により気密にシールされるので、装置扉22と容器扉23の間に形成された連結室を装置20や容器21の内の雰囲気に合わせることができるように、任意のガスにより満たすことも、また任意の気圧下とすることも可能となる。
図5において、容器、装置及びそれらの扉の形状、電磁石の形状、磁性体の形状、ピンや穴、溝は図示されたものに限定されず、同様の機能を発揮可能であれば任意の形状のものでよい。また、電磁石26に代えて磁石とすることも可能である。
また、図2〜4に示したように、図5に記載の装置も容器扉が装置扉と共に装置内に移動されて、装置内にて所定の処理等がなされるものである。
【0065】
図5で示す状態及び搬送容器を装置から離した場所に位置させている状態において、各磁性体及び電磁石のみの関係を図6に示す。
図6において、搬送容器は電磁石から離れた場所に位置し、電磁石は磁気力を持っていない状態にある。一方、搬送容器においては、容器扉に埋め込まれた磁石36により接続された2つの磁性体27がある。そして該磁性体27のそれぞれには搬送容器本体に設けられた磁性体28が接続され、さらにこれらの該磁性体28は磁性体29により接続されている。このように接続した結果、図6に示すようにそれぞれの磁性体により矢印方向に磁気力による回路が形成される。
【0066】
同様に、搬送容器が装置に接続された後、電磁石26により磁気力が発生したときであり、容器扉がまだ開いていない状態での磁性体及び電磁石の関係を図7に示す。
まず電磁石26に電流を流して、電磁力を発生させると、その電磁力発生前に磁性体27内部で磁性体28へ向かっていた磁力線は、電磁石の磁力により、磁性体28へ向かうのをやめ、その磁力線は電磁石方向へ再配置される。結果として、磁石36-磁性体27-電磁石26-電磁石26-磁性体27という磁気回路を形成する。このことで、磁性体27と電磁石26は強い吸引力を持つことになる。このことで、搬送容器本体25と容器扉23で構成されていた磁気回路は、磁性体27と磁性体28の間で、磁力線がかなり弱くなり、事実上磁気回路として切断される。すなわち、磁性体27と磁性体28の吸引力が極めて弱くなり、搬送容器本体25と容器扉23は、磁気ロックが解除される。
以上のように、電磁石で磁力を発生させると、搬送容器本体と容器扉の磁気ロックが解除され、電磁石と容器扉が磁気ロックされるので、容器扉を開くことができることになる。
このように、電磁石の作用により容器扉の開閉と装置扉の開閉を同時に行うことができるので、外気や外部の微粒子が容器内部や装置内部に流入することを防止でき、その際には容器扉の開閉前後ともに磁気力の閉回路が形成されるので、磁気力が外部に漏れることがない。
【0067】
搬送容器扉の内部側からみた構造の模式図を図8に示す。該搬送容器扉は搬送容器の開口部に埋め込まれるようにして扉が閉まるものであり、該搬送容器扉の上下面に対して垂直でない斜面37を全周に有する円盤状であり、その搬送容器内部側には、被搬送物を保持するための爪38が3本設けられている。例えば円板状の被搬送物はこれらの爪38に載置、あるいは嵌合により保持される。また、該搬送容器扉の外面には溝35が設けられている。
この搬送容器扉には磁性体39及び磁石40が埋め込まれている。
【0068】
図8と図9に基づき、搬送容器本体25を搬送容器扉23で閉める工程を説明する。
該搬送容器扉23の爪38に被搬送物を保持した後に、装置との位置決めピンを備えた搬送容器本体25に搬送容器扉23を嵌合させるようにして該被搬送物を該搬送容器内に入れる。この際に、図8で示される搬送容器扉を反転し、該搬送容器扉23の斜面37を搬送容器25の内部の斜面43に合わせるようにして嵌合させる。このとき該搬送容器扉23の周囲に設けられた切り欠き部41が搬送容器内部に設けた突起44にかみ合うようにされる。さらに同時に該搬送容器扉の周囲に設けられ、かつ斜面43に一致するように設けられた斜面37が、該搬送容器本体の内面を形成する斜面43に徐々に接するように接近して該搬送容器本体に該搬送容器扉が嵌合されると同時に、該斜面37と43も接するようになる。
さらに、上記のように、該搬送容器扉23の磁性体39は、搬送容器本体25内部に設けた磁性体42と対向配置される。このとき、磁性体39を経由して磁石40の磁力線が磁性体42へ配向することで、該搬送容器扉側の磁性体39へ該搬送容器本体25側の磁性体42が磁気力で吸引され、これによって該搬送容器扉23は該搬送容器本体25に固定される。
【符号の説明】
【0069】
1・・・従来の搬送容器
2・・・従来の装置の前室
3・・・従来の搬送容器の本体
4・・・従来の搬送容器の容器扉
5・・・従来の装置の本体
6・・・従来の装置の装置扉
7・・・本発明における搬送容器
8・・・本発明における装置
9・・・装置扉
10・・連結室
11・・搬送容器本体
12・・容器扉
13・・装置本体
14・・電磁石
15・・気体供給用ポート
16・・気体排出用ポート
17・・ウエハ
18・・磁石
19・・磁性体
20・・装置
21・・容器
22・・装置扉
23・・容器扉
24・・装置本体
25・・搬送容器本体
26・・電磁石
27・・磁性体
28・・磁性体
29・・磁性体
30・・被処理物
31・・シール部材
32・・シール部材
33・・シール部材
34・・位置決めピン
35・・溝
36・・磁石
37・・斜面
38・・爪
39・・磁性体
40・・磁石
41・・切り欠き部
42・・磁性体
43・・斜面
44・・突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送容器は、搬送容器本体と搬送容器扉の密着連結により密閉可能な第1のシール構造を有し、装置は、装置本体と装置扉の密着連結により密閉可能な第2のシール構造を有し、さらに、搬送容器と装置は、両者が密着連結することにより形成される密閉可能な第3のシール構造を有し、搬送容器と装置が密着連結したときだけ、第3のシール構造によって密閉化された1つの分割されない連結室を形成し、搬送容器扉が搬送容器から分離し装置内に取り込まれる構造を有し、搬送容器本体と搬送容器扉は磁石及び/又は磁性体を有して、これらの間の磁気力により搬送容器扉と搬送容器を閉じる構造を有する搬送容器を構成し、装置本体と磁石を有する装置扉を有する装置からなる連結システム。
【請求項2】
連結室には清浄気体噴入孔及び排気孔を有し、さらに連結室内の圧力制御を行う機能を有する弁がこれらの孔とその連結室のうちの1つ以上に直接接続されている構造を有する請求項1記載の連結システム。
【請求項3】
搬送容器と装置の連結時には、連結室内の圧力を外部よりも負圧にすることが可能な、排気装置または負圧発生装置が連結された排気孔を有する請求項2記載の連結システム。
【請求項4】
装置扉の磁石の磁気力によって搬送容器扉を装置扉に吸引することにより、搬送容器扉を開く構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の連結システム。
【請求項5】
搬送容器扉の磁化される物体と搬送容器本体の磁性体の間に間隙を設け、かつ搬送容器扉の磁性体と装置扉の磁石間にも間隙を設けることで、搬送容器扉を開閉する請求項4記載の連結システム。
【請求項6】
搬送容器扉が搬送容器から分離し装置内に取り込まれる構造が、搬送容器本体と搬送容器扉が磁気力により閉じる構造を有し、かつ、装置扉に磁石を有してその磁気力によって搬送容器扉を装置扉に吸引することで、搬送容器扉を開く構造である請求項1〜5のいずれかに記載の連結システム。
【請求項7】
搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器本体が有する磁石と該搬送容器扉が有する磁性体が対向するように配置されている構造を有する搬送容器を用い、この搬送容器が装置本体に連結した際に、装置本体に設けられた電磁石または磁石が該搬送容器扉の磁性体と対向するように配置される構造を持ち、かつ電磁石または磁石の磁気力によって磁性体を吸引することで容器扉を開く構造である請求項1〜5のいずれかに記載の連結システム。
【請求項8】
搬送容器扉が搬送容器から分離し装置内に取り込まれる構造が、搬送容器本体に磁性体を有し、搬送容器扉には1つの磁石の両端に2つ以上の磁性体が接続してなる組を1つ以上設け、磁石により磁化されたその組を構成する磁性体が搬送容器本体が有する別の磁性体と磁気力により引き合うことで、搬送容器本体と搬送容器扉を閉じる構造を有し、かつ、装置扉が有する磁石の磁気力によって、搬送容器扉を装置扉側に吸引することで、搬送容器本体と搬送容器扉に設けられた上記の2種の磁性体間の磁気力を弱め、これによって搬送容器扉を開く構造である請求項1〜5及び7のいずれかに記載の連結システム。
【請求項9】
搬送容器扉外面には異なる3方向に向かうV字状の溝を設け、該搬送容器扉の周囲の容器本体には位置決めピンを設け、さらに、該搬送容器扉の周囲には斜面を設けてなる該搬送容器と、これらのV字状の溝、位置決めピン及び斜面のそれぞれに嵌合する構造を有する装置扉及び装置本体を採用する請求項1〜8のいずれかに記載の連結システム。
【請求項10】
搬送容器本体と搬送容器扉の密着連結により密閉可能なシール構造を有し、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器本体が有する磁石と該搬送容器扉が有する磁性体が対向するように配置されてなる構造を有する搬送容器。
【請求項11】
搬送容器本体と搬送容器扉の密着連結により密閉可能なシール構造を有し、搬送容器本体に2つ以上の磁性体を有し、搬送容器扉には1つの磁石の両端に2つの磁性体が接続してなる組を1つ以上設け、磁石により磁化されたその組を構成する磁性体が、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体と該搬送容器扉が有する該2つ以上の磁性体が対向するように配置され、該搬送容器扉が有する該磁石の磁気力により搬送容器本体と搬送容器扉を閉じる構造を有する搬送容器。
【請求項12】
搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態において、該搬送容器扉が有する磁石の両端に接続した該2つの磁性体それぞれが、該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体に対して、搬送容器本体に搬送容器扉が閉じた状態とするために必要な磁気力を及ぼす程度に近接し、かつ該搬送容器本体が有する該2つ以上の磁性体は搬送容器本体内にて接続されることにより、搬送容器本体と搬送容器扉が有する磁石及び各磁性体によって、磁気の閉回路が形成されてなる請求項11に記載の搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−258722(P2011−258722A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131471(P2010−131471)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】