説明

連続可変変速機

実施の形態は、フロントエンド補機駆動部(FEAD)、サブアセンブリ、およびそれらの構成部品に関する。開示される実施の形態は、FEADにおいて使用することができる動力変調装置(PMD)を包含する。一実施の形態においては、連続可変変速機(CVT)が原動機のクランクシャフトへと直接接続され、CVTが、補機へと届けられる速度および/またはトルクを調節するために使用される。複合駆動装置が、トルクの増倍または分割を有するモータの機能を提供し、あるいはトルクの増倍または分割を有する発電機の機能を提供するために、CVTサブアセンブリと協働するモータ/発電機サブアセンブリを含んでいる。いくつかの実施の形態においては、FEADが、PMDのサンならびに電機子または界磁などの電気モータの部品へと接続されるように構成されたサン軸を有している。一実施の形態においては、電機子および界磁が同心かつ同軸に配置され、互いに対して反対方向に回転するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2006年6月26日付の米国特許仮出願第60/816,713号の利益を主張し、同出願の全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
本発明の分野は、一般的には、機械式および/または電気機械式の動力変調装置および動力変調方法に関し、さらに詳しくは、連続的かつ/または無限に可変な遊星動力変調装置、ならびに原動機から1つ以上の補機または被駆動装置への動力の流れなど、駆動系または駆動部における動力の流れを変調するための方法に関する。
【0003】
特定のシステムにおいては、単一の動力源が複数の装置を駆動する。動力源は、典型的には、動力源の性能が最適となる動作速度範囲が狭い。動力源を、その性能が最適となる動作速度範囲で運転することが好ましい。被駆動装置も、典型的には、被駆動装置の性能が最適となる動作速度範囲が狭い。被駆動装置もまた、その性能が最適となる動作速度範囲で動作させることが好ましい。動力源から被駆動装置へと動力を伝えるために、通常は、継手が使用される。直接の変調なしの継手が動力源を被駆動装置へと接続する場合、被駆動装置は、動力源と同じ速度で動作する。しかしながら、多くの場合、被駆動装置の最適な動作速度は、動力源の最適な動作速度と同じではない。したがって、動力源の速度と被駆動装置の速度との間で変調を行うように構成された継手を、システムに取り入れることが好ましい。
【0004】
動力源と被駆動装置との間の継手を、動力源からの入力速度が、所与の継手の出力において減速または増速されるように選択することができる。しかしながら、広く実施されているシステムにおいては、典型的な公知の駆動系の構成および/または継手機構が、動力源からの入力速度と被駆動装置へと伝達される動力の速度の間に、最良でも一定の比を可能にしているにすぎない。そのようなシステムの1つは、多数の自動車の用途において使用されているいわゆるフロントエンド補機駆動(Front End Accessory Drive:FEAD)システムである。典型的なFEADシステムにおいては、原動機(通常は、内燃機関)が、冷却ファン、ウォーターポンプ、オイルポンプ、パワーステアリングポンプ、オルタネータ、などといった1つ以上の補機を動作させるための動力を供給する。自動車の動作時に、補機類は、原動機の速度に対して固定の関係を有する速度で動作することを強いられる。すなわち、例えばエンジンの速度がアイドル時の毎分800回転(800rpm)から巡航速度の2,500rpmへと高められるとき、エンジンによって駆動される各補機の速度は、エンジン速度の増加に比例して増加し、一部の補機は、1,600rpm〜8,000pmの範囲のさまざまな速度で運転される可能性がある。このようなシステムの構成の結果として、所与の補機が、その最大効率の速度範囲を外れて運転されることもしばしばである。結果として、運転時に廃棄されるエネルギー、ならびに速度および/またはトルクの範囲に対処するための大きすぎる補機サイズから、非効率が生じる。
【0005】
したがって、原動機と被駆動装置との間の動力の伝達を変調するための装置および方法に対するニーズが常に存在している。いくつかのシステムにおいては、電気モータおよび/または内燃機関からさまざまな効率最適加速度で動作する1つ以上の被駆動装置への速度および/またはトルクの伝達を調節することが、有益であると考えられる。いくつかの現行の自動車の用途においては、既存のパッケージングの制約の範囲内でフロントエンド補機駆動部を制御するための動力変調装置に対するニーズが存在している。後述される本発明の動力変調装置および/または駆動系の実施の形態は、これらのニーズの1つ以上に対処する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において図示および説明されるシステムおよび方法は、いくつかの特徴を有しているが、それらのうちのただ1つが単独で望ましい属性をもたらすわけではない。まずは、以下の説明によって明らかにされるとおりの技術的範囲を限定することなく、本明細書に開示される本発明の実施の形態のうちのいくつかについて、より目立つ特徴を簡単に説明する。この説明を検討し、とくには「好ましい実施の形態の詳細な説明(Detailed Description of the Preferred Embodiments)」という名称の個所を検討することで、本システムおよび本方法の特徴がどのようにして公知のシステムおよび方法を超えるいくつかの利点をもたらすのかを、理解できるであろう。
【0007】
本発明の実施の形態の一態様は、図15A〜図20に広く示されているような複合動力変調装置に関する。本発明の実施の形態の他の特徴は、図2A〜図2D、図3、図4、図10、図13、図14に広く示されているとおりの動力変調装置を包含する。本発明の実施の形態のさらに別の態様は、図1A、図1B、あるいは図21および図22に広く示されているような動力変調付きの駆動系に関する。さらに、本発明の実施の形態は、図1A〜図27Bに広く示され、本明細書において説明されるような装置、アセンブリ、サブアセンブリ、構成部品、および/または方法に関する。
【0008】
一実施の形態において、本発明は、クランクシャフトを有する自動車のエンジンのためのフロントエンド補機駆動部(FEAD)に関する。FEADが、クランクシャフトに取り付けられた動力変調装置を含むことができ、補機が、この動力変調装置へと動作的に接続される。動力変調装置は、可変遊星トルク/速度調節器を有することができ、トルク/速度調節器は、特定の用途においては、回転可能なハウジングを有している。
【0009】
別の実施の形態において、本発明は、原動機シャフトを有する車両のためのFEADに関する。FEADは、原動機シャフトへと直接接続された動力変調装置を含むことができる。さらにFEADは、この動力変調装置へと動作的に接続された補機を含むことができる。特定の実施の形態においては、動力変調装置が、傾けることができる遊星−レッグアセンブリを有している。補機は、例えばウォーターポンプ、冷却ファン、または空調コンプレッサであってよい。動力伝達継手は、ベルトまたはチェーンなどといったエンドレス部材であってよい。いくつかの用途においては、FEADが、動力変調装置を自動車の動かない部材へと固定するためのブラケットを含んでいる。動力変調装置の比を制御するための制御機構を、設けることができる。制御機構は、ステッピングモータを制御するための制御ハードウェアおよび/またはソフトウェアを含むことができる。
【0010】
さらに別の進歩的な実施の形態においては、FEADが、複合装置と、この複合装置を原動機へと動作的に接続するように構成された動力伝達継手とを含んでいる。複合装置は、始動モータ、発電機、および動力変調装置を、これら始動モータ、発電機、および動力変調装置が1つの装置へと一体化されるような方法で含むことができる。複合装置は、電機子および磁界を有することができ、電機子および磁界を、どちらも共通の軸を中心にして回転できるように配置することができる。さらにFEADは、複合装置を補機へと動作的に接続するように構成された第2の動力伝達継手を有することができる。補機は、例えばウォーターポンプ、空調コンプレッサ、および/または冷却ファンであってよい。いくつかの実施の形態においては、複合装置が、回転可能なハウジングを有している。特定の実施の形態においては、回転可能なハウジングを、複数の永久磁石へと組み合わせることができる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、被駆動装置へと接続された動力変調装置へと接続された原動機を有している駆動系に関する。動力変調装置を、例えば遊星歯車セットを介して、原動機へと接続することができる。被駆動装置は、コンプレッサ、バルブ、ポンプ、ファン、オルタネータ、または発電機であってよい。この駆動系が、動力変調装置および/または原動機へと接続された制御システムを含むことができる。
【0012】
本発明のさらにもう1つの態様は、複数の動力変調装置へと接続された原動機を有する駆動系を包含する。いくつかの実施の形態においては、この駆動系が、それぞれが1つの動力変調装置に対応するように複数の動力変調装置へと接続された複数の被駆動装置を含んでいる。原動機を、例えばベルトによって複数の動力変調装置へと接続することができる。
【0013】
いくつかの実施の形態において、本発明の別の態様は、バリエータアセンブリと、バリエータアセンブリの少なくとも一部を支持するように構成されたケージアセンブリと、当該動力変調装置へのトルクを受け取るように構成された入力アセンブリと、当該動力変調装置からトルクを伝達するように構成された出力アセンブリとを有し、入力および出力アセンブリがバリエータアセンブリへと接続されている動力変調装置に関する。この動力変調装置が、ケージアセンブリ、入力アセンブリ、および/またはバリエータアセンブリを支持するように構成された中心軸を含むことができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、サンへと接続されたサン軸を有する複合駆動装置に向けられている。いくつかの実施の形態においては、この複合駆動装置が、それぞれが遊星軸を有している複数の遊星と、サンを遊星軸へと動作的に接続する制御装置とを含んでいる。一実施の形態においては、複合駆動装置に、複数の遊星へと接続されたトラクションリングと、トラクションリングへと組み合わせられた1つ以上の磁石とが設けられる。複合駆動装置は、前記1つ以上の磁石に電磁気的に接続された電機子と、電機子をサン軸へと接続する動力伝達継手とを含むことができる。
【0015】
本発明の1つの態様は、サンに接する複数の球状遊星と、サンへと動作的に接続された電機子と、電機子の周囲に同軸かつ同心に取り付けられた電界と、複数の球状遊星に接する第1および第2のトラクションリングとを有する動力変調装置に関する。いくつかの実施の形態においては、電機子および電界が、電機子および電界の両者が電機子と同軸な軸を中心として回転できるように構成されている。一実施の形態においては、この動力変調装置が、軸方向に動くことができるサン軸を含んでおり、サン軸が、サンを動かすことによって当該動力変調装置の伝達比の変速を促すように構成されている。この動力変調装置に、動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじと、シフトねじへとねじ込まれるシフトナットとを設けることができ、シフトナットが、サン軸の軸方向の動きを生じさせるように構成される。
【0016】
本発明のまた別の態様は、動力変調装置の伝達比を変速するための装置に関する。この装置が、動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじへとねじ込まれるシフトナットを含んでいる。シフトナットが、好ましくは、動力変調装置のサン軸に軸方向の動きを生じさせるように構成されている。
【0017】
本発明のさらなる態様は、動力変調装置においてトルクを伝達するためのシャフトに関する。一実施の形態においては、シャフトが、当該シャフトの主軸に平行である第1および第2の複数の溝を含んでおり、第1および第2の複数の溝は、当該シャフトの外表面に形成されている。第2の複数の溝は、好ましくは、第1の複数の溝よりも当該シャフトの末端近くに位置している。いくつかの実施の形態においては、シャフトに、動力変調装置のサンを受け入れてこのサンと結合するためのサン座が設けられる。一実施の形態においては、シャフトが、おおむね当該シャフト内に同心に形成されたシャフト穴を有している。
【0018】
本発明の別の態様は、複数の傾けることができる球状遊星を有している動力変調装置へと接続された補機を有している駆動系に関する。一実施の形態においては、この駆動系が、動力変調装置の伝達比を調節するために動力変調装置へと接続されたモータを含んでいる。いくつかの実施の形態においては、この駆動系が、モータを制御するためのコントローラを有している。一実施の形態においては、この駆動系の動力変調装置が、モータによって動力変調装置の比を調節するときに軸方向に動くように構成されたサン軸を備えている。
【0019】
これらの進歩的態様および他の進歩的態様が、以下の詳細な説明を検討し、添付の図面を眺めることで、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は、本明細書に取り入れられて本明細書の一部を形成するが、本発明の実施の形態の固有の特徴を示している。
【図1A】動力変調装置(PMD)を取り入れてなる駆動系の概略のブロック図である。
【図1B】PMDを取り入れてなるさらに別の駆動系の概略のブロック図である。
【図2A】PMDの一実施の形態の断面図である。
【図2B】図2AのPMDの斜視図である。
【図2C】ケースに冷却フィンを備えている図2AのPMDの斜視図である。
【図2D】ケースに冷却ファンを備えている図2AのPMDの斜視図である。
【図3】PMDの第2の実施の形態の断面図である。
【図4】図3のPMDの部分分解断面図である。
【図5】図1のPMDの取り付けブラケットの斜視図である。
【図6】図1のPMDの制御サブアセンブリの斜視図である。
【図7】PMDにおいて使用することができるカム・ローラ・ディスクである。
【図8】PMDにおいて使用することができるステータ板である。
【図9】PMDにおいて使用することができる掻き落としスペーサの斜視図である。
【図10】PMDにおいて使用することができるシフタアセンブリの断面図である。
【図11】PMDにおいて使用するための遊星−レッグアセンブリの斜視図である。
【図12】球式のPMDにおいて使用することができるケージの斜視図である。
【図13】PMDの別の実施の形態の断面図である。
【図14】図13のPMDの斜視図である。
【図15A】PMD、モータ、および発電機を含んでいる複合装置の概念図である。
【図15B】図15Aの複合装置の一実施の形態の断面図である。
【図16】図15Bの複合装置のスプラインアセンブリの一部分の斜視図である。
【図17】図15Bの複合装置の電機子マウントの斜視図である。
【図18】図15Bの複合装置の薄板の斜視図である。
【図19】図15Bの複合装置の電機子の斜視図である。
【図20】図15Bの複合装置の斜視図である。
【図21】自動車のエンジンのクランクシャフトへと接続された図13のPMDの斜視図である。
【図22】図21のPMDの別の斜視図である。
【図23】図13のPMDの別のトラクションリングの正面図である。
【図24】図23のトラクションリングの断面図である。
【図25】図23のトラクションリングの斜視図である。
【図26A】図15Bの複合装置において使用することができるシャフトの斜視図である。
【図26B】図26Aのシャフトの上面図である。
【図26C】図26Aのシャフトの断面図である。
【図27A】図15Bの複合装置のための制御システムのいくつかの構成部品の分解斜視図である。
【図27B】図27Aに示した構成部品の断面図である。
【図28】本明細書に記載される動力変調装置において使用することができる制御システムのブロック図である。
【好ましい実施の形態の詳細な説明】
【0021】
以下で、好ましい実施の形態を、添付の図面を参照して説明する。添付の図面においては、同じ参照番号は、全体を通じて、同じ構成要素を表す。本明細書に提示される説明において使用される用語は、本発明の特定の具体的実施の形態の詳細な説明に連動して使用されているにすぎないため、それらは決して限定的または制限的に解釈されるべきものでない。さらに、本発明の実施の形態は、いくつかの新規な特徴を含むと考えられるが、それらのうちのただ1つが単独で望ましい属性をもたらすわけではなく、あるいは本明細書に記載の本発明を実施するために不可欠というわけでもない。
【0022】
本明細書において使用されるとき、用語「動作的に接続される(operationally connected)」、「動作的に連結される(operationally coupled)」、「動作的にリンクされる(operationally linked)」、「動作可能に接続される(operably connected)」、「動作可能に連結される(operably coupled)」、および「動作可能にリンクされる(operably linked)」などは、一方の要素の動作によって第2の要素に対応、追随、または同時の動作または作動が引き起こされる要素間の関係(機械的、リンク、継手、など)を指す。本発明の実施の形態を説明するために上記用語が使用されるとき、要素をリンクまたは連結する特定の構造または機構が、典型的には説明される。しかしながら、特に具体的に明記しない限り、上記用語のうちの1つが使用されるとき、それら用語は、実際のリンクまたは連結がさまざまな形態(特定の場合には、当業者にとって自明であろう)をとってよいことを示している。説明の目的において、用語「半径方向の(radial)」は、本明細書において使用されるとき、変速機または連続可変装置の長手軸に対して垂直な方向または位置を指す。用語「軸方向の(axial)」は、本明細書において使用されるとき、変速機または連続可変装置の主軸または長手軸に平行な軸に沿った方向または位置を指す。
【0023】
本明細書において説明される本発明の動力変調装置またはトルク/速度調節器の実施の形態は、広くには、米国特許第6,241,636号、同第6,419,608号、同第6,689,012号、および同第7,011,600号、ならびに米国特許出願第11/243,484号(米国特許出願公開第2006/0084549A1号)に開示されているものなど、連続可変変速機(CVT)装置に関する。これらの特許および出願のそれぞれの全開示が、本明細書に参照により組み込まれる。以下で説明される本発明の特定の実施の形態は、球状速度調節器を使用する球式の可変装置であって、典型的にはそれぞれの球状速度調節器の回転軸を傾けることができる球式の可変装置を取り入れている。速度調節器は、動力調節器、ボール、プラネット、球歯車またはローラとしても知られている。通常は、調節器は、CVTの長手軸に垂直な平面において半径方向に配列される。トラクションリングが、動力調節器のアレイの各側に1つ配置され、動力調節器に接するとともに、一方または両方のトラクションリングが、トラクションリングから動力調節器を介して他方のトラクションリングへとトルクを伝えるために、ローラへと挟み付けの接触力を加える。第1のトラクションリングが、ローラへと入力回転速度で入力トルクを加える。ローラが自身の固有の軸を中心にして回転し、出力回転速度で第2のトラクションリングへとトルクを伝える。出力回転速度に対する入力回転速度の比(「速度比」)は、第1および第2のトラクションリングのそれぞれのローラの回転軸への接触点の半径の比の関数である。ローラの軸をCVTの軸に対して傾けることで、速度比が調節される。
【0024】
本明細書に開示されるトルク/速度調節装置の一態様は、原動機が種々の被駆動装置を駆動する駆動システムに関する。原動機は、例えば、電気モータおよび/または内燃機関であってよい。本明細書における説明の目的において、補機類には、原動機を動力とすることができる任意の機械または装置が含まれる。例示の目的において、それらの機械または装置は、これらに限られるわけではないが、動力取り出し装置(Power Takeoff Device:PTO)、ポンプ、コンプレッサ、発電機、補助電気モータ、などであってよい。さらに、補機類として、オルタネータ、ウォーターポンプ、パワーステアリングポンプ、燃料ポンプ、オイルポンプ、空調コンプレッサ、冷却ファン、スーパーチャージャ、および自動車のエンジンを典型的に動力とする他の任意の装置を挙げることができる。すでに述べたように、通常は、原動機の速度が、速度または出力の要求が変化するにつれて変化する一方で、補機類は、多くの場合、所与の実質的に一定な速度で最適に機能する。本明細書に開示されるトルク/速度調節装置の実施の形態を、原動機によって駆動される補機類へと届けられる動力の速度を制御するために使用することができる。
【0025】
例えば、いくつかの実施の形態においては、本明細書に開示される速度調節器を、自動車のエンジンのクランクシャフトに取り付けられたプーリによって駆動される自動車の補機類の速度を制御するために使用することができる。通常は、補機類は、エンジンが低速でアイドリングしているとき、およびエンジンが高速で動作しているときの両方で、適切に機能しなければならない。補機類が、1つの速度において最適に動作する一方で、別の速度において効率の低下を抱えることもしばしばである。エンジンが低速以外の速度で運転している多くの場合に、補機類が余分な動力を消費し、車両の燃料経済性を低下させる。さらに、補機類によって生じる動力の引き出しは、車両を走行させるためのエンジンの能力を小さくし、場合によってはより大型のエンジンを必要にする。
【0026】
特定の状況において、本明細書に開示される本発明のトルク/速度調節装置の実施の形態を、エンジンが低速で動作しているときに補機類への速度を高め、エンジンが高速で動作しているときに補機類への速度を下げるために使用することができる。したがって、補機類を1つの実質的に好ましい速度で動作させることが可能になることで、補機類の設計および動作を最適化することができ、補機類を、エンジン速度が低いときに充分な性能をもたらすために必要以上に大きくする必要がない。また、エンジンが高速で動作しているときに、トルク/速度調節装置が補機類への速度を減少させて、高いrpmにおいて補機類が耐えなければならない応力荷重を小さくできるため、補機類を小さくすることが可能である。補機類が高速にさらされることがないため、期待される寿命を大幅に長くすることができる。いくつかの場合には、補機類を低速または高速で動作させなくてもよいため、より滑らかな車両の動作がもたらされる。さらに、補機類がより低い速度で動作するため、自動車を高速においてより静かに運転することができる。
【0027】
本明細書に開示されるトルク/速度調節装置は、補機類ならびに自動車のエンジンのサイズおよび重量の削減を促進でき、したがって車両の重量を小さくし、燃料経済性を高めることができる。さらに、いくつかの場合には、より小さな補機類およびより小さなエンジンを使用するという選択肢が、これらの部品および自動車のコストを低くする。より小さな補機類およびより小さなエンジンは、パッケージングに柔軟性をもたらすことができ、エンジン室のサイズを小さくすることを可能にする。また、本明細書に開示されるトルク/速度調節装置の実施の形態は、エンジンのあらゆる動作範囲において補機類を最も効率的な速度で動作させることを可能にすることで、燃料経済性を高めることができる。最後に、このトルク/速度調節装置は、低速以外のあらゆるエンジン速度において補機類が余分な動力を消費することを防止することで、燃料経済性を向上させる。
【0028】
ここで、図1Aに目を向けると、本明細書に記載の本発明の実施の形態による動力変調装置2(すなわち、PMD2)を含む一般的な駆動系50が示されている。駆動系50は、第1の継手6を介してPMD2へと接続された少なくとも1つの原動機4を含むことができる。通常は、PMD2が、第2の継手8を介して被駆動装置8へと動力を届けるように構成されている。いくつかの実施の形態においては、潤滑システム12が、PMD2へと接続され、あるいはPMD2に一体化されている。典型的には、駆動系50は、PMD2および/または原動機4へと接続された制御システム14を含むことができる。
【0029】
原動機4は、例えば、内燃機関、電気モータ、あるいは両者の組み合わせであってよい。特定の用途においては、原動機4が、人力で動かされる機械的なリンクであってよく、他の実施の形態においては、原動機4は、補助動力付きの人力駆動装置であってよい。用途に応じ、第1および第2の継手6、10は、スプライン、キー、またはフランジ継手から単一の遊星歯車セット、さらには並列または直列配置の複数の遊星歯車セットおよび他の歯車を有するギアボックスまでの範囲にわたる任意の種類の継手であってよい。特定の実施の形態においては、一方または両方の継手6、10を使用しなくてもよく、その場合には、PMD2が、原動機4または被駆動装置8へと直接接続される。被駆動装置8は、PMD2および/または第2の継手10からトルクの入力を受け取るように構成された任意の機械または設備であってよい。被駆動装置8は、例えば、コンプレッサ、バルブ、ポンプ、ファン、車両のオルタネータ、発電機、などであってよい。
【0030】
いくつかの実施の形態においては、潤滑システム12は、PMD2の種々の部品を被覆および/または冷却するように構成された潤滑剤である。他の実施の形態においては、潤滑システムは、PMD2における潤滑剤の案内を促進および推進するように構成された部品を含んでいる。例えば、さらに詳しく後述されるとおり、一実施の形態においては、潤滑システム12が、PMD2の内表面からPMD2の他の内部部品へと潤滑剤を案内するスクレーパを含んでいる。さらに他の実施の形態においては、潤滑システム12が、PMD2の種々の内部部品へと適量の潤滑剤を届けるように構成されたポンプ制御の油圧回路を含むことができる。駆動系50の特定の実施の形態においては、制御システム14が、PMD2、原動機4、および/または潤滑システム12と連絡してこれらを制御する電気式、機械式、または電気機械式の装置であってよい。例えば、一実施の形態においては、制御システム14は、モータを動作させるためのロジックを備えるモータコントローラを有している電気機械式のシステムであってよく、モータが、PMD2の状態変化(比の変更など)を生じさせるべく、1つ以上の機械的な歯車、リンク、などを駆動する。
【0031】
駆動系50の動作の際に、原動機4が、とりわけ原動機4に課される種々の負荷要件に応じた特定のトルクおよび速度レベルにて動力を生成して届ける。制御システム14は、PMD2が原動機4からの動力を受け取って、所望の(あるいは、変調された)トルクおよび速度レベルで動力を被駆動装置8へと届けるような方法で動作し、このトルクおよび速度レベルは、原動機4の動作のトルクおよび速度レベルと同じである必要はない。いくつかの用途においては、PMD2を、原動機4から受け取る動力のトルクおよび速度レベルが変動する場合でも、一定の速度で被駆動装置へと動力を届けるように制御することが望ましい。
【0032】
次に、図1Bを参照すると、駆動系60が示されている。いくつかの実施の形態においては、駆動系60が、1つ以上の継手6Aを介して1つ以上のPMD2A、2B、および2Cへと接続された原動機4を含むことができる。図示の実施の形態においては、PMD2Aが、第2の継手10Aを介して被駆動装置8Aへと接続される一方で、PMD2Bが、第2の継手10Bを介して被駆動装置8Bへと接続されている。いくつかの実施の形態においては、原動機4が、被駆動装置8Cおよび駆動/被駆動装置8Dへと接続された少なくとも1つのPMD2Cを含むことができる複合装置16へと、継手6Aを介して接続される。駆動系60の一実施の形態においては、継手6Aが、ベルトを駆動するプーリを含んでおり、ベルトが、PMD2A、2B、および2Cのうちの1つ以上を駆動する。いくつかの実施の形態においては、第2の継手10A、10Bが、例えばチェーンを駆動するスプロケットまたはベルトを駆動するプーリであってよい。このチェーンおよびベルトが、それぞれ、該当の被駆動装置8A、8Bへと接続された対応するスプロケットまたはプーリを駆動する。このように、駆動系60の一実施の形態においては、動力変調装置を、駆動系60に存在する被駆動装置のそれぞれに専属させることができる。図示されていないが、PMD2A、2B、2Cのそれぞれが、自身の固有の制御システム14および/または潤滑システム12を有することができる。さらに別の実施の形態においては、複合装置16が、オルタネータおよび/または始動モータへと接続または一体化されたPMD2Cであってよい。一実施の形態においては、例えば、複合装置が、PMD2Cを車両の冷却ファンおよび/またはウォーターポンプに一体化させている。駆動/被駆動装置について、PMD2Cとの他の組み合わせまたは一体化が実現可能であり、かつ望ましいことが、当業者にとって明らかであろう。
【0033】
次に、図2Aを参照すると、入力−対−出力の速度/トルク比を変化させることができる連続可変遊星トルク/速度調節装置100(以下では、動力変調装置100またはPMD100と称する)の一実施の形態が示されている。いくつかの実施の形態においては、PMD100が、PMD100の中心を貫いて第1の取り付けブラケット10および第2の取り付けブラケット11を超えて延びている中心軸105を有している。説明の目的のために、中心軸105が、PMD100の長手軸を定め、これがPMD100の他の部品の位置および/または運動を説明するための基準点として機能する。本明細書において使用されるとき、用語「軸方向の(axial)」、「軸方向に(axially)」、「横方向の(lateral)」、「横方向に(laterally)」は、中心軸105によって定められる長手軸に同軸または平行な位置または方向を指す。用語「半径方向の(radial)」および「半径方向に(radially)」は、中心軸105によって定められる長手軸から垂直に延びる位置または方向を指す。特定の実施の形態においては、第1および/または第2の取り付けブラケット11、12が、取り外し可能に構成されている。第1の端部ナット106および第2の端部ナット107が、それぞれ中心軸105該当の端部に位置し、中心軸105を取り付けブラケット11、12へと取り付けている。図示のPMD100の実施の形態は、自動車のエンジンのクランクシャフトに取り付けられて、例えばフロントエンド補機駆動システム(FEAD)の補機類の速度を制御するために使用されるように構成されているが、PMD100は、トルク/速度調節装置を利用する任意の設備または車両において実践可能である。中心軸105が、ケージアセンブリ180、入力アセンブリ155、および出力アセンブリ165のために半径方向のおよび横方向の支持を提供している。この実施の形態においては、中心軸105が、シフトロッド112を収容するように構成された穴199を含んでいる。後述されるように、シフトロッド112が、PMD100の速度比の変化を実行する。
【0034】
PMD100は、バリエータ/アセンブリ140を含んでいる。バリエータアセンブリ140は、PMD100への入力速度のPMD100からの出力速度に対する比を変化させるように構成された任意の機構であってよい。一実施の形態においては、バリエータアセンブリ140が、第1のトラクションリング110、第2のトラクションリング134、傾けることができる遊星−レッグアセンブリ150、およびサンアセンブリ125を含んでいる。第1のトラクションリング110は、中心軸105を中心にして同軸かつ回転可能に取り付けられたリングであってよい。第1のトラクションリング110の半径方向外側の縁において、トラクションリング110は、斜めに延びて接触面111を終端としている。いくつかの実施の形態においては、接触面111が、例えば第1のトラクションリング110へと取り付けられたリングなど、別個の構造体であってよく、第1のトラクションリング110が、接触面111の支持を提供することができる。接触面111を、第1のトラクションリング110へとねじ込みまたは圧入でき、あるいは任意の適切な固定具または接着剤によって取り付けることができる。このように、いくつかの実施の形態においては、トラクションリング110、134が、遊星101のアレイに接触するおおむねリング状の部品である。いくつかの実施の形態においては、トラクションリング110、134が、接触面111から半径方向外側へと延びる支持構造113を有しており、支持構造113が、半径方向の剛性を高め、PMD100において軸方向の力を受ける部品のコンプライアンスに抗し、軸方向の力の成分を半径方向外側へと動かすことができるようにする構造的な支持をもたらし、PMD100の軸方向の長さを短くしている。
【0035】
いくつかの実施の形態においては、PMD100は、中心軸105を中心にして回転可能なおおむね円筒形の筒であるケース138を含んでいる。ケース138は、PMD100の構成部品の大部分を収容する内側と、PMD100を使用する何らかの部品、設備、または車両へと動作可能に接続されるように構成された外側とを有している。一実施の形態においては、ケース138の外側が、自動車の補機類の駆動部として構成されている。
【0036】
図2Cを参照すると、ケース138は、いくつかの実施の形態において、ケース138の外周に放射状に配置された1つ以上の冷却フィン66を備えている。冷却フィン66は、好ましくは、アルミニウム、銅、または鋼など、熱を速やかに散逸させることができる材料から形成されるが、任意の適切な材料を使用することができる。いくつかの実施の形態においては、冷却フィン66およびケース138が、1部品として形成されるが、他の実施の形態においては、冷却フィン66が別個の部品であって、標準的な固定具、接着剤、締まりばめ、キー、スプライン、溶接、または他の任意の適切な方法によってケース138へと取り付けられる。いくつかの実施の形態においては、冷却フィン66が、鋳造または鍛造アルミニウムからの筒として形成され、冷却フィン66の筒状部の外径から半径方向外側に延びている。とりわけ、冷却フィン66を、PMD100の動作時に生じる熱を放射するように構成でき、PMD100の周囲の空気の流れを促進するように構成できる。いくつかの実施の形態においては、冷却フィン66が、中心軸105の軸に平行である一方で、別の実施の形態においては、冷却フィン66が、ケース138の外径を巡る1つ以上のフランジ(図示せず)として構成される。さらに他の実施の形態においては、冷却フィン66が、ファンとして機能することができるらせん羽根(図示せず)である。
【0037】
図2Dを参照すると、いくつかの実施の形態においては、冷却ファン68が、ケース138に取り入れられている。冷却ファン68の羽根69は、いくつかの実施の形態においては、アルミニウム、銅、または鋼など、熱を速やかに散逸させることができる材料から製作されるが、ガラス充填ナイロンあるいは他のプラスチックおよび複合材料など、他の材料も使用可能である。冷却ファン68は、いくつかの実施の形態においては、別個の部品であって、標準的な固定具(冷却ファン68の貫通孔70に挿入され、ケース138の対応する穴へとねじ込まれる)を使用してケース138へと剛に取り付けられる。他の実施の形態においては、冷却ファン68を、接着剤、キー、スプライン、締まりばめ、溶接、または他の任意の適切な方法によって取り付けることができる。さらに別の実施の形態においては、冷却ファン68およびケース138が、1つの部品として形成される。冷却ファン68の羽根69は、好ましくは、PMD100の動作時に生じる熱の迅速な放散をもたらすとともに、エンジン室の全体の気流を促進するように構成される。いくつかの実施の形態においては、冷却ファン68が、ラジエタを通って空気を引き込むように構成される一方で、他の実施の形態においては、冷却ファン68が、エンジン室を通過するように空気を押す。
【0038】
図2A、図2B、図10、および図11を参照すると、PMD100は、トルクを第1のトラクションリング110から第2のトラクションリング134へ伝達するため、および入力速度−対−出力速度の比を変化させるための遊星−レッグアセンブリ150を含むことができる。いくつかの実施の形態においては、遊星−レッグアセンブリ150は、遊星101、遊星軸102、およびレッグ103を含んでいる。遊星軸102は、遊星101の中心を通って形成される穴を貫いて延びるおおむね円柱形の軸であってよい。いくつかの実施の形態においては、軸102は、遊星101を軸102上に整列させるニードルまたはラジアルベアリングを介して、遊星101の穴の表面と取り合っている。いくつかの実施の形態においては、軸102が、レッグ103によって遊星101の回転の軸を動かすことができるよう、遊星101の両側において穴の終端を超えて延びている。軸102は、遊星101の端を超えて延びている部位において、レッグ103の半径方向外側の端部と結合する。レッグ103は、遊星軸102を傾けるように構成された半径方向の延長部である。
【0039】
軸102は、レッグ103の半径方向外側の端部に形成された穴を貫通している。レッグ103を、eリングなどのクリップリングによって軸102上に配置することができ、あるいは軸102上へと圧入することができるが、軸102およびレッグ103の間に、他の任意の種類の固定を利用することができる。また、遊星−レッグアセンブリ150は、遊星軸102のそれぞれの端部に取り付けられる転がり部材であって、PMD100の他の部品が軸102に整列するときに軸102の転がり接触をもたらすスキューローラ151を含むことができる。いくつかの実施の形態においては、レッグ103が、半径方向内側の端部にシフトカムホイール152を備えている。シフトカムホイール152は、レッグ103の半径方向の位置の制御、したがって軸102の傾斜角の制御を容易にする。さらに別の実施の形態においては、レッグ103が、ケージアセンブリ180またはステータ板800(図8を参照)におけるレッグ103の案内および支持を可能にするステータホイール1105(図11を参照)に組み合わせられている。図11に示されているように、ステータホイール1105は、レッグ103の長手軸に対して斜めであってよい。いくつかの実施の形態においては、ステータホイール1105が、ステータホイール1105の中心軸が遊星101の中心と交差するように構成される。
【0040】
さらに図2A、図2B、図10、および図11を参照すると、種々の実施の形態において、遊星101と軸102との間の取り合いは、他の実施の形態において後述されるベアリングのいずれかであってよい。しかしながら、別の実施の形態においては、遊星101が軸102に固定され、遊星101と一緒に回転する。このような実施の形態においては、ベアリング(図示せず)が、軸102上に作用する横力がレッグ103および/またはケージアセンブリ180によって対処されるように、軸102とレッグ103との間に配置される(さまざまな実施の形態において後述)。このような実施の形態においては、軸102とレッグ103との間に配置されるベアリングが、ラジアルベアリング(球またはニードル)、ジャーナルベアリング、または他の任意の種類のベアリング、あるいは適切な機構または手段である。
【0041】
次に、図2A、図3、図4、および図10を参照して、サンアセンブリ125を説明する。いくつかの実施の形態において、サンアセンブリ125は、サン126、シフトカム127、およびサンベアリング129を含む。サン126は、おおむね円筒形の筒である。一実施の形態において、サン126は、おおむね一定の外径を有するが、他の実施の形態においては、外径は一定ではない。シフトカム127は、サン126の一端または両端に配置され、シフトカムホイール152と相互作用して、レッグ103を動かす。図示の実施の形態においては、シフトカム127が凸状であるが、レグ103の所望の動きを生み出す任意の形状であってよい。いくつかの実施の形態においては、シフトカム127が、シフトカム127の軸方向の位置によってレッグ103の半径方向の位置を制御して、軸102の傾きの角度を制御するように構成されている。
【0042】
いくつかの実施の形態においては、シフトカム127の半径方向の内径が、一方のシフトカム127を他方のシフトカム127へと取り付けるべく互いに向かって軸方向に延びている。図2Aに示されるとおり、カムの延長部128が、中心軸105の周囲の円筒を形成している。カム延長部128が、一方のカム127から他方のカム127へ延び、クリップリング、ナット、または他の何らかの適切な固定具によって所定の位置に保持されている。いくつかの実施の形態においては、シフトカム127の一方または両方が、カムディスクの延長部128へとねじ込まれ、それらが所定の位置に固定される。図示の実施の形態においては、カム127の凸曲線が、サンアセンブリ125の軸方向の中心から軸方向に離れるように極大まで延び、次いで半径方向外側へと延び、サンアセンブリ125の軸方向の中心に向かって軸方向に内側へと戻る。カムのこの輪郭は、サンアセンブリ125が軸方向の極端において移動する際に生じうるバインディングを低減させる。他のカムの形状も、同様に使用することができる。
【0043】
図2Aに示した実施の形態においては、シフトロッド112が、PMD100の伝達比の変化を生じさせる。一実施の形態においては、中心軸105の穴199の内側に同軸に配置されたシフトロッド112が、ねじ山付きの端部109を中心軸105の片側から突き出させて有している細長いロッドである。シフトロッド112の他端は、サンアセンブリ125へと延びており、シフトロッド112におおむね横方向に取り付けられたシフトピン114を含んでいる。シフトピン114が、シフトロッド112によってサンアセンブリ125の軸方向の位置を制御できるよう、サンアセンブリ125に係合している。送りねじアセンブリ115が、中心軸105内のシフトロッド112の軸方向の位置を制御する。いくつかの実施の形態においては、送りねじアセンブリ115が、シフトアクチュエータ117を含んでおり、シフトアクチュエータ117は、外径にシフト歯車118を有することができ、内径の一部にシフトロッド112と係合するねじ山を有することができる。いくつかの実施の形態においては青銅またはプラスチックなどの低摩擦材料で構成されるシフトブシュ119が、中心軸105上に回転可能に配置される円板状の部品である。シフトブシュ119を、任意の手段によって中心軸105上で軸方向について拘束でき、図2Aに示した実施の形態においては、シフトブシュ119が、端部ナット107によって所定の位置に保持されている。シフトアクチュエータ117は、平頭ねじなどといった標準的な固定具を使用してシフトブシュ119へと取り付けられる。シフト歯車118が、駆動歯車22(図2Bを参照)に係合し、いくつかの実施の形態にいては、駆動歯車22を、電気ステッピングモータなどのモータ20によって動かすことができる。いくつかの実施の形態においては、シフト歯車118が、標準的な平歯車であるが、他の実施の形態においては、シフト歯車118が、はすば歯車などといった別の種類の歯車であってよい。
【0044】
図2Aおよび図2Bを参照すると、入力アセンブリ155が、バリエータアセンブリ140へのトルクの伝達を可能にする。いくつかの実施の形態においては、入力アセンブリ155が、例えばベルト(図示せず)からの直線運動を回転運動に変換する入力プーリ156を含んでいる。いくつかの実施の形態においては、入力プーリ156が、原動機の軸(自動車のエンジンのクランクシャフトまたはモータなど)へと動作可能に取り付けられたベルトからのトルクを受け取る。ここでは、プーリが使用されているが、PMD100の他の実施の形態は、例えばチェーンから運動を受け取るスプロケットを使用してもよい。入力プーリ156は、軸方向の力生成機構へとトルクを伝達する。図示の実施の形態においては、軸方向の力生成機構は、トルクを第1のトラクションリング110へ伝達するカムローダ154である。カムローダ154は、第1の負荷カムリング157、第2の負荷カムリング158、および負荷カムリング157、158の間に配置された1式のカムローラ159を含んでいる。カムローダ154が、プーリ156からのトルクを第1のトラクションリング110へと伝達し、最終的に第1のトラクションリング110、遊星101、サン126、および第2のトラクションリング134のための接触力になる軸方向の力を生成する。軸方向の力は、カムローダ154へ印加されるトルクの大きさにおおむね比例する。いくつかの実施の形態においては、入力プーリ156が、ケース138が回転するがプーリ156はトルクを供給していないときに惰行機構として作用する一方向クラッチ(図示せず)を介して、第1の負荷カムリング157へとトルクを加える。いくつかの実施の形態においては、第2の負荷カムリング158が、第1のトラクションリング110と一体の一部品であってよい。
【0045】
さらに図2Aを参照すると、第2のカムローダ54を、遊星101へと加えられる軸方向の力を最適化するために使用することができる。一実施の形態においては、第2のカムローダ54が、第2のトラクションリング134とケース138との間に配置され、負荷カムリング57、負荷カムリング58、および負荷カムリング57、58の間に介装された1式のカムローラ59を含んでいる。
【0046】
図2A、図2Bに示されているように、端部キャップ160が、PMD100の内部の構成部品のケース138への収容を容易にしている。いくつかの実施の形態においては、端部キャップ160が、ケース138の開放端へと取り付けられるおおむね平坦な円板であり、第1の負荷カムリング157、中心軸105、およびシフトロッド112を通すことができるように中央を貫く穴を有している。いくつかの実施の形態においては、端部キャップ160がケース138に取り付けられ、カムローダ154によって生成される軸方向の力に対処するうえで役に立つ。端部キャップ160を、アルミニウム、チタニウム、鋼、あるいは高強度の熱可塑性または熱硬化プラスチックなど、軸方向の力に応じることのできる任意の材料で製造することができる。端部キャップ160は、固定具(図示せず)によってケース138へと固定されるが、端部キャップ160をケース138へとねじ込んでも、あるいは他の方法でケース138へと取り付けてもよい。
【0047】
一実施の形態においては、端部キャップ160のカムローダ154に対向する面に、プレローダ(図示せず)を収容する溝が半径を巡って形成される。プレローダは、トルクのレベルがきわめて低いときに初期の拘束力をもたらすばねであってもよい。プレローダは、ばねまたはOリングのような弾性材料など、カムローダ154、したがってトラクションリング134へと初期の力を供給することができる任意の装置であってよい。プレローダは、その寿命を通じて高いばね定数を有しかつ高レベルの弾性を維持することができる点で、波状ばねであってもよい。
【0048】
いくつかの実施の形態においては、プレローダが、スラストワッシャ162およびスラストベアリング163によって端部キャップ160へと直接荷重される。図示の実施の形態においては、スラストワッシャ162は、プレローダを収容する溝を覆ってスラストベアリング163のためのスラストレースを提供する典型的なリングワッシャである。スラストベアリング163は、コンビネーション・スラスト・ラジアル・ベアリングに比べて高レベルのスラスト容量を有し、構造的剛性を向上させるとともに、公差の要件およびコストを低減させるニードル・スラスト・ベアリングであってよいが、他の任意の種類のスラストベアリングまたはコンビネーションベアリングを使用することも可能である。特定の実施の形態においては、スラストベアリング163は、ボール・スラスト・ベアリングである。カムローダ154によって生成される軸方向の力は、スラストベアリング163およびスラストワッシャ162を介して端部キャップ160へと反作用される。端部キャップ160が、ケース138へ取り付けられてPMD100の構造を完成させる。
【0049】
さらに図2Aおよび図2Bを参照すると、特定の実施の形態においては、プーリ36がケース138に組み合わせられている。プーリ36は、サーペンタインベルトの輪郭を有することができるが、他の実施の形態においては、プーリ36を、タイミングベルト、Vベルト、丸ベルト、または他の任意の種類のベルトを受け入れるように設計することができる。プーリ36を、ケース138へとキーで固定することができ、あるいはプーリ36を、ピン、ねじ、スプライン、溶接、圧入、または剛な接続をもたらす任意の方法を使用して、取り付けることができる。いくつかの実施の形態においては、プーリ36およびケース138が1つの部品であるように、プーリ36がケース138へと一体に形成される。
【0050】
図2Aおよび図2Bにおいて、1つ以上のカムディスクベアリング172が、第1の負荷カムリング157を中心軸105に対する半径方向の位置に保持する一方で、端部キャップベアリング173が、第1の負荷カムリング157と端部キャップ160の内径との間の半径方向の整列を維持する。カムディスクベアリング172および端部キャップベアリング173は、ここではニードル・ローラ・ベアリングであるが、他の種類のラジアルベアリングも同様に使用可能である。ニードル・ローラ・ベアリングの使用は、より大きな軸方向フロートを許容し、プーリ156によって生じるバインディングモーメントに対応する。PMD100の他の実施の形態、あるいは本明細書に記載される任意の他の実施の形態においては、カムディスクベアリング172および端部キャップベアリング173の各々またはいずれかを、コンビネーション・ラジアル−スラスト・ベアリングの相補ペアで置き換えることも可能である。そのような実施の形態においては、ラジアル・スラスト・ベアリングが、半径方向の支持をもたらすだけでなく、スラストを吸収することもでき、これが、スラストベアリング163を補助し、かつスラストベアリング163の負荷を少なくとも部分的に軽減することができる。
【0051】
さらに図2Aおよび図2Bを参照すると、中心軸105の周囲に同軸に取り付けられて中心軸105とケース138の閉鎖端の内径との間に保持される支持部材である軸142が、ケース138を中心軸105に対して半径方向に整列させて保持する。軸142は、中心軸105に角度に関して整列させられた状態で固定される。ここでは、キー144が、軸142を角度に関して整列した状態に固定しているが、この固定は、当業者にとって公知の任意の手段によって行うことができる。軸142とケース138の内径との間に、ラジアル・ハブ・ベアリング145が取り付けられ、ケース138の半径方向の位置および軸方向の整列を維持する。ハブベアリング145は、封止用の軸キャップ143によって所定の位置に保持される。軸キャップ143は、中心軸105の周囲に適合する中央穴を有しており、ここでは固定具147によってケース138に取り付けられる円板である。
【0052】
次に、図3、図4、および図10に目を向け、PMD100の別の実施の形態であるPMD300を説明する。PMD300は、とりわけトラクションリング334、ケージ389、サンアセンブリ325、遊星−レッグアセンブリ350、およびトラクションリング310を、他の構成部品とともに収容するケース351を含んでいる。トラクションリング110、134に比べ、トラクションリング310、334の角度が小さくなっており、これが軸方向の力に耐えるトラクションリング310、334の能力を高め、PMD300の全体としての半径方向の径を縮小する。PMD300は、別のシフト機構を備えており、そこでは、シフトロッド312が、サンアセンブリ325の軸方向の動きを生じさせるように構成された送りねじ機構を含んでいる。この実施の形態においては、送りねじ機構が、サンアセンブリ325の内側または付近のシフトロッド312の端部に形成された1式の送りねじ313を含んでいる。1つ以上のサン・アセンブリ・ピン314が、カムディスク延長部328から送りねじ313へと半径方向に延びており、シフトロッド312の回転につれて軸方向に移動する。
【0053】
図示の実施の形態においては、サン326の外径が一定ではなく、サン326の両端において外径が大きくなっている。この設計により、サン326に接するPMD内の潤滑剤が、サン326の最大の直径へと遠心力によって引き出される。潤滑剤は、ひとたびサン326の両端に達すると、PMD300の中心から半径方向に離れるように潤滑を必要とする部品へと噴き付けられる。いくつかの実施の形態においては、この設計により、サン326が、サン326を中心位置から軸方向に離れるように駆動しようとする力に抵抗できる。しかしながら、これは単に一例にすぎず、サン326の外径は、サン326へと加わる力に対応するため、およびPMD300のシフトを補助するために、設計者が望む任意の方法で変更されてもよい。
【0054】
次に、図2A、図2B、図5、および図6を参照すると、いくつかの実施の形態においては、取り付けブラケット10、11が、PMD100を自動車のフレーム(図示せず)、エンジンブロック(図21を参照)、あるいはフレームまたはエンジンブロックへと取り付けられたブラケット(図示せず)などといった固定の物体へと接続するように構成されている。一実施の形態においては、ブラケット10、11が、中心軸105のそれぞれの端部の付近に形成された平坦部26に取り付けられている。端部ナット106、107が、取り付けブラケット10、11をPMD100へと締め付けるべく中心軸105のそれぞれの端部にねじ込まれる。いくつかの実施の形態においては、取り付けブラケット10、11が鋼から製作されるが、他の実施の形態においては、チタニウム、アルミニウム、または複合材料など、他の材料も使用することができる。一方または両方の取り付けブラケット10、11を、着脱可能に構成することができる。取り付けブラケット10が、標準的な固定具を使用して取り付けブラケット10をエンジンブロックまたはフレームなどの固定の物体へと取り付けできるようにする穴12を含むことができる。一実施の形態においては、取り付けブラケット11が着脱可能であり、エンジンブロックまたはフレームなどの固定の物体への取り付けを可能にする穴13を有している。いくつかの実施の形態においては、取り付けブラケット10、11が、標準的な固定具を使用して互いに取り付けられる。他の実施の形態においては、着脱式のブラケット11は使用されず、取り付けブラケット10が、標準的な固定具を使用してPMD100を固定の物体へと取り付けることを可能にするように穴12が形成されているU字形の部品である。いくつかの実施の形態においては、取り付けブラケット11を、入力ベルト(図示せず)または出力ベルト(図示せず)の交換を容易にするために、標準的な固定具によって速やかに取り外すことができる。他の実施の形態においては、取り付けブラケット10および/または取り付けブラケット11が、取り付け相手の物体に対応するように、他の形状であってよい。特定の実施の形態においては、取り付けブラケット10、11の一方または両方を、ケージアセンブリ180へと動作可能に接続し、ケージアセンブリ180の固定および回転防止に役立てることができる。
【0055】
いくつかの実施の形態においては、ステッピングモータなどのモータ20を、PMD100の速度比の変更および調節のために使用することができる。モータ20が、モータブラケット24および標準的な固定具によって取り付けブラケット10へと取り付けられ、いくつかの実施の形態においては、モータブラケット24が、取り付けブラケット10、11と同じ材料で製作されている。駆動歯車22が、モータ20の軸へと接続されている。駆動歯車22は、シフト歯車118に噛合しており、シフト歯車118は、いくつかの実施の形態においては、シフトロッド112におけるトルクを大きくし、速度を小さくするために、駆動歯車22よりも大きい。シフトブシュ119が、シフトブシュ119の自由な回転を可能にするすきまばめにて、中心軸105上に同心に取り付けられている。端部ナット107が、シフトブシュ119がPMD100の中心に向かって軸方向に移動することがないようにしている。シフト歯車118は、シフトロッド112へとねじ込まれ、標準的な固定具によってシフトブシュ119へと取り付けられている。
【0056】
動作時、モータ20が駆動歯車22を駆動し、駆動歯車22がシフト歯車118を駆動し、シフト歯車118がシフトロッド112を回転させ、PMD100の速度比の変更を生じさせる。いくつかの実施の形態においては、モータ20が、自動車のエンジンの回転数および/またはPMD100の回転数を計数し、次いでPMD100を変速すべくステッピングモータ20へと信号を送ることができる制御フィードバックループを備えるロジック装置(図示せず)によって制御される。このロジック装置は、当該技術分野において周知である。
【0057】
図7は、例えばPMD100、PMD300、または他の球状遊星PMDにおいてにおいて使用することができるカムリング700を示している。カムリング700は、半径方向の外側の縁に形成されたカム溝710を有している。カム溝710は、1式のカムローラ(図示せず)を収容する。カムローラは、球(ベアリング球など)であってよいが、バリエータアセンブリ140、340へと加えられる軸方向の力をPMD100、300へと加えられるトルクに実質的に比例する量にて加減すべくカム溝710の形状との組み合わせにおいてトルクをトルク成分および軸方向の力成分へと変換する他の任意の形状であってもよい。他に、そのような形状として、円柱形のローラ、たる型ローラ、非対称ローラ、または他の任意の形状が挙げられる。多くの実施の形態において、カムディスク溝710に使用される材料は、好ましくは、カムディスク700が経験することになる荷重において過剰または恒久的な変形に対抗するために充分に強い。大トルクの用途においては、特別な硬化処理が必要な場合もある。いくつかの実施の形態においては、カムディスク溝710が、40HRC以上へと硬化処理された炭素鋼で製造される。カムローダ(図1のカムローダ154、または任意の他の種類のカムローダ、など)の動作の効率は、上記の硬さ値によって左右され、典型的には、効率を高めるために硬さが増されるが、高度の硬化は、カムの荷重部品を脆くする可能性があり、コストも高まる可能性がある。
【0058】
図7は、コンフォーマルカムの一実施の形態を示している。すなわち、カム溝710の形状が、カムローラの形状に実質的に一致する。溝710がローラに一致するため、溝710がベアリングローラ・リテーナとして機能し、いくつかの状況においてカムローラの収容および/または離間のためのケージ部材の使用を不要にする。図7に示した実施の形態は、一方向の負荷カムリング700であるが、負荷カムリング700は、双方向の負荷カムリングであってもよい(例えば、図23〜25の双方向の負荷カムリングを参照)。いくつかの実施の形態においては、ベアリング・ローラ・リテーナを使用する必要がなくなることで、PMD100、300の設計が単純になる。さらに、コンフォーマルなカム溝710は、ベアリングローラと溝710との間の接触応力の低減を可能にし、ベアリングローラのサイズの縮小および/または数の削減を可能にし、あるいは材料選択の柔軟性を拡大できる。
【0059】
図8は、バリエータアセンブリ140のケージアセンブリ180のケージ189またはバリエータアセンブリ340のケージアセンブリ389の支持構造体を形成するために使用されるケージディスクまたはステータ板800を示している。いくつかの実施の形態においては、ケージディスク800が、変速時にレッグ103が半径方向内側および外側に移動するときにレッグ103を案内及び支持するように形作られている。また、ケージディスク800は、軸102の角度の整列ももたらす。いくつかの実施の形態においては、それぞれの軸102のための2つのケージディスク800の対応する溝が、バリエータアセンブリ140、340におけるシフト力を低減するために、角度方向にわずかにオフセットされている。
【0060】
特定の実施の形態においては、レッグ103が、ステータ板800のスロットによって案内される。レッグ103上のレッグローラ1107(図11を参照)が、ステータ内の円形の輪郭に追従する。レッグローラ1107は、通常は、シフト力または牽引接触回転力によって加えられる並進力に対向する並進反作用点をもたらす。レッグ103およびそれぞれのレッグローラ1107は、PMD100、300の比が変更されるときに平面運動にて移動し、レッグ103が、遊星101の中心付近に中心を持つ円形の包絡線を描く。レッグローラ1107は、レッグ103の中心からオフセットされているため、同様にオフセットされた包絡線を描く。各ステータ板800にレッグローラ1107の平面運動に一致する矛盾のない輪郭を生成するために、各レッグ103におけるローラのオフセットと同じ量だけ溝の中心からオフセットされた円形の切断が必要である。
【0061】
次に、図2A、図9、および図12を参照すると、潤滑向上潤滑スペーサ900を実装するケージアセンブリ389の別の実施の形態が示されている、図示の実施の形態においては、この場合にはケージ389(図4も参照)である遊星101のための支持構造体が、ケージディスク1220を1つ以上の潤滑スペーサ900を含む複数のスペーサ1210へ取り付けることによって形成される。潤滑スペーサ900は、ケース138、351の表面から潤滑剤を掻き落として、潤滑剤をバリエータアセンブリ140、340の中央の部材に向かって戻すように案内するためのスクレーパ910を有している。さらに、いくつかの実施の形態の潤滑スペーサ900は、潤滑剤の流れを潤滑剤を最も利用する領域へと案内するうえで役に立つ通路920を有している。いくつかの実施の形態においては、潤滑スペーサ900における通路920の間の部分が、潤滑剤の流れを通路920へと案内する隆起したくさび925を形成している。スクレーパ910は、スペーサ900と一体であってよく、あるいは別個であって、スクレーパ910の材料と異なる材料(これに限られるわけではないが、ケース138から潤滑剤の掻き落としを向上させるゴムなど)で製作されていてもよい。スペーサ1210および潤滑スペーサ900の両端は、ケージディスク1220との結合のための表面を形成すべく垂直に延びるフランジ状のベース1240を終端としている。図示の実施の形態のベース1240は、ケージディスク1240に対向する面がおおむね平坦であるが、遊星101に対向する面は、レッグローラ151が当接する上述の曲面を形成するために丸められている。また、ベース1240は、レッグ103がその行程の全体において当接する溝も形成している。
【0062】
次に、図3、図9、および図10を参照して、潤滑システムおよび潤滑方法の実施の形態を説明する。遊星101が回転するとき、潤滑剤は、遊星101の赤道へ向かって流れ、次いでケース351に向かって噴き付けられる傾向にある。一部の潤滑剤は、最大の径を有するケース351の内壁に落下しないが、このような潤滑剤も、遠心力によってケース351の最大の内径に向かって流れる。スクレーパ910が、ケース351の内側に蓄積される潤滑剤を除去するように垂直に配置される。潤滑剤は、重力によってV字形のくさび925の各側を通路920へと降下する。スペーサ900は、通路920の半径方向内側の端部がカムディスク327およびサン126の付近で終わるように配置される。このように、サン126およびカムディスク327が、ケース351内を循環する潤滑剤を受け取る。一実施の形態においては、スクレーパ910が、ケース351から約1000分の30インチだけ離れるように寸法付けられる。当然ながら、このすき間は、種々の用途に応じて、より大きくても、より小さくてもよい。
【0063】
図3および図10に示されているように、カムディスク327を、サン326に対向する面が傾けられ、通路920から落下する潤滑剤を受け取って、カム327とサン326との間の空間に向かって潤滑剤を案内するように、構成することができる。潤滑剤は、サン326へと流れた後に、サン326の最大径に向かって流れ、潤滑剤の一部が軸102へと噴き付けられる。潤滑剤の一部は、通路920からサン326へと落下する。この潤滑剤は、サン326ならびに遊星101とサン326との間の接触面を潤滑する。サン326の各側が傾斜しているため、潤滑剤の一部が遠心力によってサン326の縁に向かって流れ、潤滑剤が半径方向に噴き付けられる。
【0064】
図3を参照すると、いくつかの実施の形態においては、サン126、326から軸102に向かって噴き付けられた潤滑剤が、溝345へ落下し、溝345が、潤滑剤を受け取って、遊星101の内側へと送る。潤滑剤の一部は、トラクションリング110、134が遊星101に接している接触面111にも落下する。潤滑剤は、遊星101の片側を出るとき、遠心力のもとで遊星101の赤道に向かって流れる。この潤滑剤の一部が、第1のトラクションリング110および遊星101に接し、接触面111に接触し、次いで遊星101の赤道に向かって流れる。潤滑剤の一部は、第2のトラクションリング134の遊星101とは反対側を向いている面に沿って、半径方向に流れ出る。
【0065】
図13、図14、図21、図22を参照すると、一実施の形態において、PMD1300が、自動車のエンジン790のクランクシャフトへと直接接続されている。簡略化のために、PMD100とPMD1300との間の相違のみを説明する。中心軸105に類似した中心軸1305が、今やシフト操作が、端部キャップ160の側からではなく、軸キャップ143の側から行われるように変更されている。モータ20、駆動歯車22、モータブラケット24、取り付けブラケット10、および送りねじアセンブリ115を、今や軸キャップ143の近傍に見ることができる。
【0066】
クランクシャフトマウント1314が、いくつかの実施の形態においてはフランジ1315を備えるおおむね円板状の部品であるが、エンジンのクランクシャフト(図示せず)の対応する部位(図示せず)へと取り付けられるように構成されている。フランジ1315は、いくつかの実施の形態においては、標準的な固定具を通過させてエンジンのクランクシャフトへと取り付けられた対応する部品のねじ穴へとねじ込むための穴を含んでいる。いくつかの実施の形態においては、クランクシャフトマウント1314が、エンジンのクランクシャフトへとキーで取り付けられる円筒形のカプラとして構成されている。図13の実施の形態においては、クランクシャフトマウント1314が、キー、スプライン、固定具、しまりばめ、または他の任意の適切な方法によってドライバ1372に接続されている。ドライバ1372は、いくつかの実施の形態においては、硬化処理した鋼で製作された円筒である。いくつかの実施の形態においては、2つのニードル・ローラ・ベアリング1374、1376が、PMD1300の動作の際に生じる大きなトルク伝達荷重を吸収するために、ドライバ1372の穴の内側かつ中心軸1305の外側に配置される。ドライバ1372は、キー、スプライン、固定具、しまりばめ、または他の任意の適切な方法によって第1の負荷カムリング157へと取り付けられ、第1の負荷カムリング157へとトルクを伝達する。
【0067】
図13および図14を参照すると、PMD1300は、おおむねPMD100と同じ方法および類似の構成部品にて変速を行うが、シフトアクチュエータ117を備える送りねじアセンブリ115、シフト歯車118、シフトブシュ119、およびプーリ・スナップ・リング116が、今や軸143の近傍に位置している。モータ20、駆動歯車22、モータブラケット24、および取り付けブラケット10も、今や軸143の近傍にある。この実施の形態においては、取り付けブラケット10およびクランクシャフトマウント1314の両者が協働して、PMD1300を支持する。
【0068】
図21および図22を参照すると、PMD1300が、自動車のエンジン790のクランクシャフトへと接続され、さらにオルタネータ792、パワーステアリングポンプ794、およびアイドラプーリ796へと動作可能に接続されて示されている。エンドレスサーペンタインベルト798が、プーリ36に動作可能に接続されてプーリ36によって駆動され、オルタネータ792およびパワーステアリングポンプ794に動力をもたらしている。ウォーターポンプ、燃料ポンプ、オイルポンプ、空調コンプレッサ、冷却ファン、スーパーチャージャ、ならびに自動車のエンジン790を動力とすることができる他の任意の装置など、他の自動車の補機類(図示せず)も、サーペンタインベルト798によって駆動することができる。特定の実施の形態においては、PMD1300が、速度/トルク減速機構を介してクランクシャフトへと接続される。例えば、ベルトで駆動されるプーリまたはチェーンで駆動されるスプロケットをクランクシャフトへと接続し、それぞれベルトまたはチェーンによってPMD1300へと接続することができる。さらに別の実施の形態においては、PMD1300を、エンジンの動作時に生じる振動力に対処すべく車両のエンジンのクランクシャフトに典型的に接続される装置である高調波バランサを取り入れるように構成でき、あるいはそのような高調波バランサと協働するように構成することができる。
【0069】
以下でさらに説明されるとおり、本明細書に示される動力変調器の特定の実施の形態のまた別の態様は、オルタネータおよび/または始動モータを動力変調装置(PMD)に一体化させてなる複合装置に関する。いくつかの実施の形態においては、PMDが、オルタネータ/モータの電機子および固定子(または、界磁部品)の両者が回転するように、遊星動力変調器として構成される。回転子および固定子が反対の方向に回転するため、大きな速度差が生み出され、したがってきわめて高い出力密度のオルタネータおよび/または始動モータが生み出される。本明細書において使用されるとき、「電機子」は、モータまたは発電機などといった電気機械装置の2つの主たる構成要素のうちの一方である。説明の目的のため、本明細書において、用語「界磁(field)」は、界磁巻線または界磁磁石など、電気機械装置の第2の主たる構成要素を指す。通常は、界磁は、電機子と相互作用するための磁界を生成し、したがって界磁は、典型的には、永久磁石または導電コイルによって形成された電磁石を含んでいる。電機子は、通常は、界磁ならびに運動、トルク(回転機械)、または力(直線機械)の方向の両者に対して垂直に向けられた導体または導電コイルである。電機子は、界磁と対照的に、通常は電流または起電力(通常は両方)を運ぶように構成されている。電機子を、界磁を横切って電流を運ぶように構成でき、(回転機械における)軸トルクまたは(直線機械における)力を生み出すことができる。さらに、電機子を、起電力を生み出すように構成することができる。電機子において、起電力は、電機子および界磁の相対運動によって生成される。機械がモータとして機能するとき、この起電力が電機子電流に反対し、電機子が電力を機械的なトルクへと変換し、トルクを、軸を介して負荷へと伝える。機械が発電機として機能するとき、電機子の起電力が電機子電流を駆動することで、軸の機械的な力が電力へと変換される。
【0070】
図15Aに示されているとおり、一実施の形態においては、複合装置1550が、サン1554へと接続されたサン軸1552を含むことができる。一実施の形態においては、制御装置1556が、サン1554および遊星軸102へと接続されている。一群の遊星101が、サン1554に係合して、摩擦または弾性流体力学的相互作用あるいは両者によってトルクを伝達するように構成されている。ケージ389であってよく、さらには/あるいはステータ板800、1220と同様の適切な形状のステー板を含むことができるケージ1558を、遊星軸102および/または制御装置1556の構成部品を支持および/または案内するために使用することができる。いくつかの実施の形態においては、トラクションリング1560、1562が、摩擦または弾性流体力学的相互作用あるいは両者によってトルクを伝達すべく、遊星101に接触して配置されている。
【0071】
一実施の形態においては、制御装置1586が、サン軸1552へと接続され、サン軸1552の軸方向の移動を生み出すように構成されている。特定の実施の形態においては、制御装置1556および制御装置1586が、サン軸1552の軸方向の移動をサン1554の軸方向の移動および遊星軸102の傾きに協調させるよう、動作可能に連結される。図15Aにおいては、サン軸1552が、サン軸1552とサン1554とが一緒に軸方向に動かなければならないような方法で、サン1554へと接続されているが、他の実施の形態においては、サン軸1552およびサン1554の軸方向の移動が分離される。したがって、いくつかの実施の形態においては、制御装置1556が遊星軸102の傾きおよび/またはサン1554の軸方向の移動を実行するが、サン軸1552は軸方向について固定されたままである。制御装置1556、1586は、遊星軸102の傾きならびに/あるいはサン軸1552および/またはサン1554の軸方向の移動を達成するように構成された任意の電気式、機械式、または電気機械式の装置、磁気または電磁気装置、サーボモータ、あるいはサーボ機構であってよく、そのような軸方向の移動は、いくつかの場合においては、遊星軸102を傾けるのと同時であってよい。例えば、一実施の形態においては、制御装置1586が、電気モータを動力としてサン軸1552を軸方向に動かす送りねじ機構であってよい。サン軸1552と遊星軸102との間の機械的な結合が、サン軸1552が軸方向に動かされるときに遊星軸102を傾ける。
【0072】
一実施の形態においては、複合装置1550が、複合装置1550の内部部品をとりわけ収容および/または保護するハウジングまたはケース1564を含むことができる。特定の実施の形態においては、ハウジング1564が、端部カバーへと取り付けられるおおむね円筒形の外殻を含んでおり、さらに別の実施の形態においては、ハウジング1564が、中央穴を備える底部と、同様に中央穴を有するカバー板によって覆われる開口とを有する円筒形の缶で構成される。一実施の形態においては、トラクションリング1562が、ハウジング1564の少なくとも一部分と一体である。いくつかの実施の形態においては、ハウジング1564の少なくとも一部分が、動力伝達継手1566へと接続され、さらに別の実施の形態においては、動力伝達継手1566が、トラクションリング1562に直接接続され、あるいはハウジング1564およびトラクションリング1562と一体に形成される。
【0073】
いくつかの実施の形態においては、複合装置1550が、トラクションリング1560、遊星101、サン1554、およびトラクションリング1562を横切ってのトルクの伝達を促進する締め付け力をもたらすために、1つ以上の軸方向力生成器(AFG)1568を含んでいる。AFG1568は、例えば1つ以上のカムローダ54、154が軸方向力生成器として機能する図2Aおよび図13に関して上述した形式であってよい。いくつかの実施の形態においては、サン軸1552が、トルクを軸1570へと伝達し、あるいは軸1570から伝達するように構成された動力伝達継手1570へと接続される。動力伝達継手1572を、トルクをトラクションリング1560へと伝達するため、またはトラクションリング1560から伝達するために、動作可能に接続することができる。いくつかの実施の形態においては、動力伝達継手1572が、AFG1568を介してトラクションリング1560へと接続され、さらに別の実施の形態においては、動力伝達継手1572およびAFG1568が、少なくとも部分的に互いに一体化される。動力伝達継手1566、1570、1572は、動力(トルクおよび/または速度の特性を有している動力)を伝達するように構成された任意の装置、造作、または部品であってよく、例えば、動力伝達継手1566、1570、1572は、プーリ、スプロケット、ワンウェイクラッチ、フリーホイール、コグ、レバー、クランク、スプライン、キー、締まりばめ、溶接、磁界、などであってよく、これらを、動力を伝達すべく対応するプーリ、チェーン、ベルト、などと協働するように適切に構成することができる。
【0074】
図15Aに示されているように、複合装置1550は、複合装置1550の他の構成部品と関連して動作するモータ/発電機ユニット1574を含むことができる。モータ/発電機ユニット1574は、サン軸1552の周囲に同心に取り付けられた電機子1576を含むことができる。電機子1576は、磁界発生器1578と協働して発電機または電気モータの機能をもたらすように構成されている。磁界発生器1578は、一群の永久磁石または電磁石サブアセンブリであってよい。いくつかの実施の形態においては、磁界発生器1578が、ハウジング1564および/またはトラクションリング1562と一体である。他の実施の形態においては、磁界発生器1578が、フランジ、スプライン、歯車、などを介してトラクションリング1562および/またはハウジング1564へと接続される。特定の実施の形態においては、サン軸1552が、溝付きスプライン、直線スプライン、ボールスプライン、ゼネラルスプライン、キー、などであってよい動力伝達継手1580を介して、電機子1576へと接続される。
【0075】
一実施の形態においては、電機子1576が、電気インターフェイス1584へと接続された電気導体1582へと接続されている。図15Aの複合装置1550は、3相モータ/発電機の3つのリードを代表する3つの電気導体1582を示している。しかしながら、他の実施の形態においては、モータ/発電機ユニット1574が、より多数または少数の相を含んでもよい。電気インターフェイス1584は、電気導体1582から電気を受け取り、あるいは電気導体1582へと電気を届けるように構成された任意の装置であってよい。いくつかの実施の形態においては、電気インターフェイス1584が、回転する電気導体および/または電池を含んでいる。
【0076】
動作時、一構成においては、動力をPTC1570を介して複合装置1550へと入力することができる。例えば自動車のクランクシャフトなどの原動機がPTC1570を駆動し、サン軸1552を時計方向に回転させる場合、サン1554が時計方向に駆動される。ケージ1558をグラウンドへと固定した状態で、遊星101が反時計方向に回転し、結果として、トラクションリング1560、1562を反時計方向に駆動する。次いで、トラクションリング1560、1562が、それぞれPTC1572、1566へと反時計方向の回転にて動力を届けることができる。PTC1572、1566を、例えばウォーターポンプ、冷却ファン、空調システムのコンプレッサ、などといった自動車の補機類を駆動するために使用することができる。同時に、モータ/発電機ユニット1574の極性が、サン軸1552がPTC1580を介して電機子1576を駆動するときに電機子1576および磁界生成器1578が相互作用して電気を生成するように設定され、電気導体1582がこの電気を受け取り、電気インターフェイス1584へと届ける。
【0077】
他の動作状態においては、複合装置1550が、PTC1572において直接またはベルトを介して、クランクシャフトから例えば反時計方向の動力を取り出す。次いで、機械的な動力が、トラクションリング1560、遊星101、トラクションリング1562を通り、反時計方向にてケース1564および/またはPTC1566を通って流れ出る。機械的な動力は、トラクションリング1560、遊星101、サン1554、サン軸1552を通り、時計方向にてPTC1570を通って流れ出ることもできる。いくつかの実施の形態においては、PTC1570を、サン軸1552のいずれかの端部に配置することができる。また、サン軸1552が電機子1576を時計方向に駆動すると同時に、トラクションリング1562が磁界発生器1578を反時計方向に回転させるとき、機械的な動力を、電力へと変換することができる。
【0078】
さらに別の動作状態においては、複合装置1550が、とりわけ自動車のエンジンなどの原動機を始動させるために使用することができるモータとして機能することができる。電力が、電気インターフェイス1584を介して複合装置1550へと届けられる。電力の源は、例えば電池であってよい。複合装置1550へと届けられた電力が、電機子1576を励起し、電機子1576が磁界発生器1578と協働し、サン軸1552および電機子1576を接続するPTC1580を介してサン軸1552を駆動する駆動トルクを生み出す。モータ/発電機ユニット1574の極性が、サン軸1552の時計方向の回転を生じさせるように選択される場合、サン軸1552は、サン1554を時計方向に駆動する。その結果、遊星101が反時計方向に駆動され、遊星101が、トラクションリング1560、1562を反時計方向に駆動する。次いで、動力を、PTC1566、1572から取り出すことができる。一実施の形態においては、PTC1566が、いくつかのプーリ、ベルト、スプロケット、チェーン、歯車、および/または1つ以上の補機を含むことができるフロントエンド補機駆動システムへと動作可能に接続される。PTC1572を、原動機の始動を促進する方法でクランクシャフトへと直接的または間接的に接続することができる。実施の形態に応じて、PTC1570を、サン軸1552のいずれかの端部に位置させることができ、使用しても、使用しないでおくこともでき、あるいはそもそも存在していなくてもよい。
【0079】
上述の動作状態以外にも、多数の動作状態が可能であることに注意すべきである。上述の動作状態は、あくまでも例として使用されているにすぎず、それらの説明は、他にも考えられる動作状態を除外しようとするものではなく、決して複合装置1550において可能な種々の動作状態を限定しようとするものではない。例えば、いくつかの実施の形態においては、ケージ1558を、サン軸1552を中心にして回転するように構成することができる。ケージ1558がそのように構成されるとき、複合装置1550は、無限に可変のトルク/速度調節を有することができる。
【0080】
上述の動作状態のいずれについても、制御装置1556、1586を、動力の入力と動力の出力との間のトルク/速度比を遊星軸102の傾きによって調節するように構成することができる。例えば、クランクシャフトからPTC1572へと、トルク/速度が時間につれて変化する動力の入力が存在する場合に、複合装置1550を、PTC1566における動力の出力が一定の速度であるように制御することができ、そのような出力で、例えば一群の補機を駆動することができる。
【0081】
次に、図15B〜図20を参照すると、モータ/発電機601を取り入れてなるPMD600が示されている。モータ/発電機601が組み込まれたPMD600は、図15Aに関して上述したような複合装置の一実施の形態であり、便宜上、次に説明される複合装置およびPMD600は、入れ換え可能に言及される。特定の構成において、PMD600は、時間的に交代で、エンジンの始動モータの機能および車両のオルタネータ(または、発電機)の機能の両方を提供することができる。モータ/発電機601は、本明細書においてM/G601とも称される。簡略化のために、PMD100とPMD600との間の相違のみを説明する。一実施の形態においては、M/G601が、3つの電機子相を備える4極のモータである。M/G601は、反対方向に回転する電機子682および界磁694を有することができる。電機子682が、動作可能にサン718へと取り付けられている。遊星101が遊星の構成であるがため、サン718は、トラクションリング750の回転方向と反対の方向に回転する。界磁694は、いくつかの実施の形態においてはトラクションリング134へと剛に取り付けられた回転磁性鋼円筒であってよいが、トラクションリング134と一体であってよく、あるいは別個に作成されてトラクションリング134へと組み合わせられてもよい。いくつかの実施の形態においては、界磁694は、界磁694の内径を巡って環状に配置されて界磁694の内径へと取り付けられる永久磁石680を利用する。他の実施の形態においては、界磁694が、磁界を生成するための1つ以上の電磁石を使用する。いくつかの実施の形態においては、電機子682が、多数の薄板686(電機子マウント630へと取り付けられる)の周囲に巻き付けられたコイル684を含んでいる。一実施の形態においては、電気子682が、18個の歯をそれぞれが有している24枚のケイ素鋼板を有している。さらに、電機子マウント630は、電機子682を界磁694および磁石680に対して位置させ、電機子682を自動車のバッテリ(図示せず)などの電気の源へと接続する複数の配線(図示せず)を案内する。電機子マウント630は、複数のスプラインベアリング636を介してサン軸602へと動作可能に取り付けられる。サン軸602は、PMD600の中心に配置された長い円柱形の軸であって、長手軸11に一致し、サン718を動かしてPMD600の変速を行うために軸方向に移動することが可能である。サン軸は、図26A〜図26Cを参照してさらに後述される。
【0082】
ケーブル676が、M/G601の配線を収容しており、これらの配線が、電機子682から電機子マウント630を通って引き回され、サン軸602の内側のソケット674を終端としている。一実施の形態においては、円筒形のソケット674が、電機子682の3相からの3つのリードを受け入れ、これら3つのリードを回転導体672へと案内している。円柱形の部品である回転導体672が、ソケット674に位置する回転端から導体キャップ668に位置する固定端へと電気を伝える。一実施の形態においては、回転導体672が、水銀などの液体金属を使用して電流をソケット674に位置する回転端から導体キャップ668に位置する固定端へと伝える形式である。他の実施の形態においては、スリップリングが使用されるが、他の任意の適切な方法も使用可能である。3つのリード670は、導体キャップ668から延びて、モータコントローラ(図示せず)および/または電気の源へとつながっている。特定の実施の形態においては、モータコントローラが、電気の源へとつながっている。
【0083】
次に、とくには図15Bおよび図20を参照すると、一実施の形態においては、サン718が、M/G601がモータとして動作しているとき、トラクションリング134よりもトラクションリング750により近く位置する。多数の自動車の用途においては、エンジンを回転させるために適切なトルクの増幅を達成するために、M/G601からエンジンのクランクシャフトへと回転数の低減が存在することが好ましい。サン718がトラクションリング134に向かって移動するにつれ、サン718の速度に対するトラクションリング134の速度が減少する一方で、トラクションリング750の速度は大きくなる。M/G601が一定の速度で動作する場合、界磁694がトラクションリング134へと接続され、電機子682およびサン718に対して一定の速度で回転するため、サン718がトラクションリング134に向かって移動するにつれ、界磁694の速度が遅くなる。正味の効果は、M/G601の速度に対してすべての比でのトラクションリング750における速度の大幅な低減の存在である。
【0084】
PMD600をM/G601に組み合わせることで、軸、ケース、およびベアリングを共有することができる。PMD600のいくつかの用途においては、トラクションリング134および界磁694が、磁性鋼から1つの一体の部品として製作されるため、磁石680を囲む磁性鋼の追加の重量およびコストが不要になり、あるいは大幅に削減される。
【0085】
さらに別の実施の形態においては、電機子682の液体冷却をPMD600と同じ流体を使用して行うことができる可能性がある。同じ液体を電機子682へと預けることによって、大幅に大きな動力をM/G601を介して伝えることができる。いくつかの実施の形態においては、液冷式のモータが、PMD600に使用される同じ流体、ポンプ、ホース、およびシールを利用することができる。特定の実施の形態においては、3つの別個の装置(すなわち、始動モータ、オルタネータ、および動力変調装置)が1つの装置へと組み合わせられるため、サイズおよび重量の削減が実現される。サイズおよび重量がより小さくなることで、慣性が減少するとともに、PMD600およびM/G601を、元より必要とされる空間よりも小さな空間に入れ込むことができる。他の実施の形態は、PMD600およびM/G601を結合させ、必要とされるベアリングの数の削減および他の装置およびプーリの省略からの効率向上をもたらす。
【0086】
さらに図15Bおよび図20を参照すると、一実施の形態において、界磁694が、横キャップ612および端部キャップ658へと接続されている。横キャップ612および端部キャップ658を、標準的な固定具を使用して界磁694へと剛に固定することができる。横キャップ612は、おおむね円板状の部品であってよく、潤滑剤、冷却液を収容し、PMD600の構成部品を保護および収容するように機能する。いくつかの実施の形態においては、横キャップ612および端部キャップ658が鋼で製作されるが、他の材料も使用可能である。トラクションリングベアリング605が、実施の形態に応じて半径方向の荷重および軸方向の荷重を支持することができるが、トラクションリング750の延長部の外径の周囲かつ端部キャップ658の穴の内側に取り付けられている。トラクションリングベアリング605は、トラクションリング750と端部キャップ658との間の相対運動を可能にする。キャップベアリング626が、サン軸602の周囲かつ横キャップ612の穴の内側に配置され、界磁694とサン軸602との間の相対運動を提供し、半径方向の荷重を支持でき、いくつかの実施の形態においては軸方向の荷重を支持できる。横キャップ612の軸方向の移動を防止すべく機能するスラストベアリング624が、横キャップ612とシフトねじ622との間に取り付けられている。いくつかの実施の形態においては、スラストベアリング624が、半径方向の荷重ならびにスラスト荷重を支持することができ、あるいは半径方向の荷重のみを支持することができる。シフトねじ622は、通常は、PMD600によって伝達される最大トルクに耐えることができるフレームまたは車台などといった剛な運動しない構造体へと標準的な固定具によって取り付けることができる固定の部品である。シフトナット621が、シフトねじ622へとねじ込まれ、シフトナット621の回転によってサン軸602に軸方向の動きが生じ、PMD600が変速される。シフトナット621は、通常は、ねじ山付きの中央穴を有して環状に形作られた部品であり、大きなトルクを受けることがない。いくつかの実施の形態においては、シフトナット621がアルミニウムで製作されるが、プラスチックおよび鋼などといった他の材料も使用することができる。
【0087】
ここで、図27Aおよび図27Bを追加で参照すると、一実施の形態においては、PMD600が、すでに説明したステッピングモータ20および駆動歯車22を使用して変速される。シフト歯車748が、シフトリング620およびシフトナット621の外径へと、キー、標準的な固定具、締まりばめ、接着剤、または他の任意の適切な方法を使用して接続される。シフト歯車748の幅は、シフトリング620およびシフトナット621の軸方向の移動を許容しつつ、依然として駆動歯車22と係合するために充分である。遠心シフタなど、他のシフト方法をモータ20の代わりとすることも可能である。遠心シフタは、原動機の速度が増加するときに出力プーリ724およびサン軸プーリ722の速度を遅くし、原動機の速度が低下するときに出力プーリ724およびサン軸プーリ722の速度を高める1つ以上のおもりを使用する。
【0088】
シフトナット621は、中央穴を有する円板状のシフトリング620へと、標準的な固定具によって取り付けられる。一実施の形態においては、シフトリング620が、シフトナット621と同じ材料で製作されるが、他の材料も使用可能である。シフトナット621およびシフトリング620は、シフトナット621およびシフトリング620がピンマウント650に対して回転するときの摩擦を最小限にする2つのシフトベアリング625A、625Bを収容している。ピンマウント650は、円板状であって、シフトねじ622に対するすき間をもたらす中央穴を備えている。ピンマウント650の軸は、長手軸11と同心であり、シフトナット621およびシフトリング620の沈め穴に整列している。ピンマウント650は、中心から半径方向に延びる2つのねじ穴を180度の間隔で有しているが、より少数または多数のねじ穴を使用してもよい。一実施の形態においてはピンマウント650のねじ穴へとねじ込まれるが、押し込まれても、溶接されても、あるいは他の任意の適切な方法を使用して挿入されてもよい2つのシフトピン616A、616Bが、ピンマウント650の穴へと延び、シフトねじ622のスロットを通過し、シフトねじ622の穴へと延びるねじ山付きのピンである。シフトピン616A、616Bは、サン軸602の外側かつシフトねじ622の穴の内側に配置された2つのピンベアリング654A、654Bに接触する。ピンベアリング654A、654Bは、回転するサン軸602とシフトピン616A、616Bとの間の相対運動を提供するとともに、PMD600の変速から生じるスラスト荷重を吸収する。
【0089】
さらに図15Bおよび図20を参照すると、ステータベアリング614が、サン軸602の周囲でステータ板780Bの穴に取り付けられ、サン軸602とステータ板780Bとの間の軸方向の動きを可能にするとともに、半径方向の荷重に耐えることを可能にしている。サン軸602の片側(端部キャップ658に近い方)においては、シャフトベアリング610が、サン軸602の外側かつステータブレース608の穴の内側に取り付けられている。いくつかの実施の形態においては、シャフトベアリング610が、ニードルローラまたは円柱ローラベアリングであり、ローラがサン軸602の硬化および研磨領域に接触する。これにより、サン軸602を、最小限の摩擦にてシャフトベアリング610に対して軸方向に動かすことができる。ステータブレース608は、通常は円筒形であり、いくつかの実施の形態においては硬化鋼から製作されるが、任意の適切な材料が使用可能である。ステータブレース608は、第1の端部において、標準的な固定具、溶接、またはステータ板780Aの穴への圧入によって、ステータ板780Aへと剛に取り付けられている。ステータブレース608は、第2の端部において、フレームまたは車台などといった固定の構造体へと剛に取り付けられている。ステータブレース608とトラクションリング750との間に相対運動を提供するために、1つ以上のブレースベアリング604A、604Bが、ステータブレース608上かつトラクションリング750の穴の内側に取り付けられている。さらにブレースベアリング604A、604Bは、半径方向の荷重を支持し、いくつかの実施の形態においては軸方向の荷重も支持する。
【0090】
次に、図15B、図16、および図17を参照し、サン軸602と電機子682との間の動力伝達の1つの方法を説明する。いくつかの実施の形態においては、サン軸602が、1つ以上のシャフト溝634を含んでおり、シャフト溝634は、軸11に平行であって、いくつかの実施の形態においてはスプラインベアリング636よりもわずかに大きい半径を有しているおおむね長手方向の溝である。いくつかの実施の形態においては、スプラインベアリング636が、電機子682とサン軸602との間でトルクを伝達するおおむね球形の転がり部材である。スプラインベアリング636を、硬化鋼または他の適切な材料から製作することができる。使用されるスプラインベアリング636の数およびサイズは、伝達しなければならないトルクの大きさ、シャフト溝634の半径および長さ、ならびにPMD600のサイズに依存して決まる。
【0091】
一実施の形態においては、1つ以上のマウント溝632が、電機子マウント630の内径へと形成されている。マウント溝632は、いくつかの実施の形態においては、シャフト溝634と同一であるが、他の実施の形態においては、より長くても、より短くてもよく、あるいは別の半径を使用してもよい。いくつかの実施の形態においては、スプラインベアリング636が、それぞれのスプラインベアリング636の中心がシャフト溝634およびマウント溝632の両者の半径方向深さの間の中間に位置するように、配置されている。スプラインベアリング636は、シャフト溝634の半径およびマウント溝632の半径の両者に接して同じ量だけ転がるため、自動調心である。典型的には、2つ以上のシャフト溝634およびマウント溝632が角度方向において等間隔で配置されるとき、スプラインベアリング636は、電機子682をサン軸602に対して中心に位置させる。いくつかの実施の形態においては、自動調心が生じることができるようにするため、および組み立てを容易にするために、スプラインベアリング636に少量のすき間が設けられる。少量のすき間が設けられる場合、スプラインベアリング636は、PMD600が変速されるときに初めて自身を適切な位置に配置させる。PMD600が変速されるとき、スプラインベアリング636は、サン軸602の軸方向の移動距離の半分だけ、シャフト溝634およびマウント溝632に沿って軸方向に転がる。結果として、特定の実施の形態においては、シャフト溝634およびマウント溝632の長さは、好ましくは、スプラインベアリング636の直径に各シャフト溝634のスプラインベアリング636の数を掛けた長さの少なくとも約2倍である。いくつかの実施の形態においては、ステータベアリング614およびキャップベアリング626が、スプラインベアリング636の軸方向の移動を制限するために使用される。
【0092】
次に、図15B、図16、図17、および図26を参照し、電機子682への電気配線の案内を説明する。いくつかの実施の形態においては、3つの電気配線が、サン軸602のシャフト穴638へと案内され、すでに述べたように、回転導体672が、非回転の配線を回転する配線へと変換する。ケーブル676に収容された配線が、サン軸602の中心の中空の行き止まり穴であるケーブル筒639へと案内され、次いでシャフトスロット635を通過する。シャフトスロット635は、サン軸602の一部分に沿って軸方向に延び、サン軸602の外径からケーブル筒639までの通路を形成しているスロットである。次いで、3つの電気配線(図示せず)は、ケーブル676を出て、電機子マウント630の配線空洞648の内側の3つの固定子相のそれぞれへと分岐する。変速時にPMD600においてサン軸602が軸方向に移動するとき、サン軸602が、電機子682へと接続された配線を交互に延長および短縮させる。配線空洞648は、変速の際に必要となる電気配線の余分な長さのための空間を提供する。電気配線の案内を容易にするために、電機子マウント630が、配線空洞648内の配線へのアクセスを提供する1つ以上の組み立て穴646を含んでいる。さらに、電機子マウント630は、3つの電気配線のそれぞれについてそれぞれの固定子相への案内を容易にするために、電機子630の壁を貫いて軸方向に形成された1つ以上の案内穴644を含むことができる。組み立て穴646または案内穴644を、電気配線および電機子682からのリードへとアクセスするために使用することができ、配線およびリードを組み立て穴646または案内穴644を通って引き出し、はんだで接続し、絶縁し、次いで再び配線空洞648へと戻すことができる。いくつかの実施の形態においては、電機子マウント630の半径方向に延びる壁が、電機子682を電機子マウント630へと固定するように構成された1つ以上の積層ねじ穴642を含んでいる。
【0093】
次に、図15B、図18、および図19を参照すると、電機子682および界磁694の一実施の形態が示されている。図19に最もよく見られるように、いくつかの実施の形態においては、電機子682が、多数の薄板686をまとめて積層して構成された鉄心と、スロット690によってもたらされる空間においてそれぞれの歯692へと巻き付けられたいくつかの導電線コイル684とを含んでいる。他の実施の形態においては、無鉄心の固定子が使用される。いくつかの実施の形態においては、18個の溝690および18個の歯692が使用されるが、用途に応じて、より少数または多数を使用してもよい。いくつかの実施の形態においては、それぞれの薄板686の積層穴688が、電機子682を電機子マウント630へと固定するために使用される。一実施の形態においては、小ねじなどといった標準的な固定具が、積層穴688を通って挿入され、電機子マウント630のねじ穴642へとねじ込まれる。
【0094】
次に、図15Bおよび図20を参照すると、いくつかの実施の形態においては、4極のM/G601を生成するために4つの磁石680が使用されているが、他の実施の形態においては、より少数または多数の磁石680を使用してもよい。磁石680は、永久磁石式であってよく、硬質フェライトセラミック、サマリウムコバルト、およびネオジムホウ素鉄などの任意の適切な材料から製作することができる。いくつかの実施の形態においては、磁石680の外径が、界磁694の内径に一致し、磁石680の内径の半径が、界磁694および電機子682と同心である。いくつかの実施の形態においては、磁石680と電機子682との間の距離が、好ましくは、磁束を最大にし、したがってM/G601によって生み出されるトルクまたはオルタネータ601によって生み出される電気を最大にするために、可能な限り小さい。磁石680の半分は、極性がSからNへと半径方向に延びるように磁化され、磁石680の残りの半分は、NからSへと半径方向に延びる極性を有している。磁石680は、交互の磁石680が同じ極性を有するように配置される。
【0095】
次に、図15Bを参照すると、サン718が、PMD100のサン126に類似しているが、サン718が動力を伝達する点で相違している。サン718が、締まりばめ、溶接、標準的な固定具、キー、または他の任意の適切な方法によって、サン軸602へと剛に取り付けられている。サンベアリング717A、717Bが、サン718と非回転のシフトカム713との間の相対運動を提供している。シフトカム713は、シフトカム713と回転および軸方向の移動が可能なサン軸602との間の干渉を防止するために、シフトカム713の内径とサン軸602との間にすき間が形成されている点を除き、PMD100のシフトカム127と同様である。
【0096】
次に、図15B、図20、図27A、および図27Bを参照し、シフトねじ622および関連の部品を説明する。いくつかの実施の形態においては、支持ブラケット740が、動作時にシフトねじ622の静止位置を維持するために、シフトねじ622へと剛に取り付けられている。支持ブラケット740は、剛な非回転のフレーム、車台、または物体へと取り付けられる。シフトねじ622の内径によって定められるシフト穴660が、導体キャップ668、回転導体672、および他の部品を覆って保護している。シフトスロット662(図20を参照)が、リード670を閉じ込めて回転を防止するため、およびPMD600が変速されるときのリード670の軸方向の移動を可能にするために、軸方向に延びている。シフトねじ622のねじ山666は、種々の変速速度ならびに打ち勝たなければならない変速力に対処するためのピッチおよびサイズであってよい。いくつかの実施の形態においては、複数のねじ山666が、好ましくは、組み立ての容易さおよび緩い公差を改善するために、サン軸602の軸方向の移動よりも大きな軸方向長さである。
【0097】
ピンマウント650が、すき間および規制のない動きをもたらすために、ねじ山666の直径よりもわずかに大きい穴を有している。PMD600の変速を行うために、シフトナット621が回転し、ピンマウント650の軸方向の移動を生じさせる。2つのシフトピン616A、616Bが、ねじ山付きのピン穴656A、656Bへとねじ込まれ、ピンマウント650の穴を超えてシフト穴660へと延びている。シフトピン616A、616Bが、シフトピン616A、616Bの各側に配置された2つのピンベアリング654A、654Bに接触し、サン軸602とシフトピン616A、616Bとの間の相対移動をもたらすとともに、軸方向の力を吸収する。ピンベアリング654A、654Bを、標準的な固定具によって所定の位置に保持することができ、一実施の形態においては、保持リングが使用され、ピンベアリング654A、654Bのシフトピン616A、616Bから離れる方を向いている側においてサン軸602の表面に形成された溝に挿入される。
【0098】
図15Bおよび図20を参照すると、入力プーリ720が、例えばエンジンのクランクシャフトのプーリへと動作可能に取り付けられたベルト(図示せず)から入力される機械的な動力を受け取るように構成されている。さらに別の実施の形態においては、入力プーリ720が、チェーンによって駆動されるスプロケットであってよい。動力が、入力プーリ720から、トラクションリング750、遊星101、第2のトラクションリング134を通って流れ、出力プーリ724から出る。入力プーリ720および/または出力プーリ724は、いくつかの実施の形態においては、Vベルトプーリ、サーペンタインベルトプーリ、タイミングベルトプーリ、または他の任意の種類のプーリまたはスプロケットであってよい。出力プーリ724は、入力プーリ720と同じ方向に回転し、例えば自動車において補機類および他の装置に動力をもたらすように構成することができる。
【0099】
特定の実施の形態においては、動力を、遊星101から、サン718、サン軸602を通り、サン軸プーリ722の外へと案内することも可能である。サン軸プーリ722が、出力プーリ724よりも高い速度で出力プーリ724とは反対方向に回転し、自動車の補機類および他の装置に動力をもたらすことができる。サン軸プーリ722は、いくつかの実施の形態においては、マウント溝632と同じ形状であってよく、マウント溝632と同じ機能を実行することができるプーリマウント溝732を有している。サン軸602が、いくつかの実施の形態においては、シャフト溝634と同じ形状であってよく、シャフト溝634と同じ機能を実行することができるプーリシャフト溝734を有している。いくつかの実施の形態においてはスプラインベアリング636と同一であるプーリスプラインベアリング736が、プーリマウント溝732およびプーリシャフト溝734によって生成されるスロットへと挿入されている。
【0100】
図15Bおよび図20をさらに参照すると、フランジ738が、キー、スプライン、締まりばめ、標準的な固定具、または他の任意の適切な方法によって、ステータブレース608へと剛に取り付けられている。いくつかの実施の形態においては、フランジナット730が、ステータブレース608の第1の端部へとねじ込まれ、フランジ738を軸方向に規制する。一実施の形態においては、フランジ738が、サン軸プーリ722の周囲を巡るベルト(図示せず)のための開口をもたらすために、切り欠きを有している。サン軸プーリ722の各側に配置されたプーリベアリング728A、728Bが、PMD600の変速の際にサン軸プーリ722を軸方向に拘束する。カバー板726が、フランジ738へと取り付けられる。いくつかの実施の形態においては、標準的な固定具が、フランジ738をカバー板726へと固定しており、フランジ738およびカバー板726の両者を、PMD600の取り付けのために、フレーム、支持ブラケット、または他の固定の構成部品へと固定することができる。
【0101】
入力プーリ720、サン軸プーリ722、または出力プーリ724の任意の1つを、エンジンのクランクシャフトのプーリへと取り付けられたベルトによって駆動することができる。さらに、プーリ720、722、または724のいずれかを、自動車の補機類または装置に動力をもたらすように構成することができる。いくつかの実施の形態においては、プーリ720、722、または724のうちのただ1つが補機類へと動力をもたらすために使用され、したがって、エンジンのクランクシャフトへと動作可能に取り付けられた1つのプーリ、および補機類に動力をもたらすただ1つのプーリが存在する。これらの実施の形態においては、残りのプーリを取り除くことができ、あるいは残りのプーリが使用されない。
【0102】
図15B、図20、図23〜図25を参照し、トラクションリング750の別の実施の形態を説明する。M/G601が主としてモータとして機能する用途においては、トルクが、第2のトラクションリング134においてPMD600へと入力され、動力が、遊星101を通ってトラクションリング750へと移動する。このような逆駆動の状態においては、カムローダ154が、好ましくは、トラクションリング750および/または第1の負荷カムリング157上の浅いV字の斜面を使用する。浅いV字の斜面が、トルクがトラクションリング750を介して入力されるか、第2のトラクションリング134を介して入力されるかにかかわらず、最適な軸方向力の生成を可能にする。図23〜図25が、接触面111の反対側においてトラクションリング750の表面へと浅いV字の斜面が形成されている実施の形態を示している。特定の実施の形態においては、斜面の表面752が、V字の中心754の各側について鏡像である。V字の中心754は、斜面において最も低い点であり、斜面の表面752が、V字の中心754の各側で斜めに立ち上がっている。
【0103】
次に図26A〜図26Cに目を向け、図15Bを参照すると、サン軸602の一実施の形態が、プーリスプラインベアリング736およびプーリマウント溝732と協働してサン軸602からサンシャフトプーリ722へと(あるいは、この反対に)トルクを伝達するように構成された1つ以上のプーリシャフト溝734を含んでいる。さらに、サン軸602は、スプラインベアリング636およびマウント溝632と協働してサン軸602から電機子マウント630へと(あるいは、この反対に)トルクを伝達するように構成された1つ以上のシャフト溝634を含むことができる。一実施の形態においては、サン軸602は、サン718を支持し、サン軸602をサン718へと接続するように構成された座669を含むことができる。座669は、例えばサン718上の対応する継手に係合するためのスプラインまたはキー接続(図示せず)を含むことができる。ケーブル676の収容および案内ならびにソケット674の収容を容易にするために、サン軸602は、おおむねサン軸602の内部にサン軸602と同心に形成されるシャフト穴638およびケーブル筒639を含むことができる。図26A〜図26Cに示されるように、サン軸602は、いくつかの実施の形態においては、PMD600の他の構成部品との充分なすき間をもたらしながら、PMD600の動作の際に生じるトルクに耐えて伝達を行うことができるように構成された細長いネック部668を含んでいる。サン軸602を、PMD600のトルクおよび速度に耐えるように設計された任意の適切な材料で構成でき、いくつかの実施の形態においては、サン軸602が硬化鋼で製作されるが、軟鋼、アルミニウム、チタニウム、炭素繊維も使用可能である。
【0104】
次に、図27Aおよび図27Bを参照すると、PMD600のための制御機構サブアセンブリ675が、シフトベアリング625Aおよびピンベアリング654Aを受け入れるように構成されたシフト歯車748を含むことができる。制御機構サブアセンブリ675は、さらに、シフトベアリング625Bおよびピンベアリング654Bを受け入れるように構成されたシフトリング620を有することができる。シフト歯車748およびシフトリング620を、ピンマウント650をシフトベアリング625A、625Bの間に配置して備える囲いを形成するように、一体に固定することができる。ピンマウント650は、例えばピンマウント650の半径方向のねじ穴677へとねじ込まれるように構成されたシフトピン616A、616Bを受け入れるように構成されている。すでに上述したように、シフトねじ622上のシフト歯車748の回転によって、ピン616A、616Bが、サン軸602へと動作可能に接続されたピンベアリング654A、654Bを軸方向に動かすことによって、サン軸602の軸方向の動きを生じさせる。
【0105】
次に、図28を参照すると、本明細書に記載の駆動系において使用することができる制御システム2800が示されている。制御ハードウェアおよびソフトウェア2802が、例えば、制御ハードウェアおよびソフトウェア2802のメモリに存在できる比例−微分制御の仕組み2805から信号を受け取るためのマイクロステッパ・コントローラ・マイクロプロセッサ2803を含むことができる。所望の補機速度2806を、制御ハードウェアおよびソフトウェア2802による使用のためにメモリに保存することができる。マイクロプロセッサ2803が、一実施の形態においては、原動機2804の速度を表わす信号(例えば、内燃機関のクランクシャフトの速度センサからの信号)および実際の補機速度2807を表わす信号(例えば、補機2810の速度センサからの信号)を受信する。
【0106】
比例−微分制御2805が、制御の戦略を実施するように構成されている。制御ハードウェアおよびソフトウェア2802が、所望の補機速度2806と実際の補機速度2807(フィードバックループによって得られる)との間の誤差2809を計算する。ハードウェアおよびソフトウェア2802が、誤差2809を比例定数および微分定数によって拡大する。所望の補機速度2806と実際の補機速度2807との間に差が存在する場合には、ステッピングモータドライバ2814が、ステッピングモータ2816にPMDの比2808の調節を行わせ、補機2810の速度を所望の補機速度2806により密に一致させる。実際の補機速度2807が所望の補機速度2806に実質的に等しくなるとき、誤差信号は存在しなくなり、ステッピングモータ2816を停止させることができる。他の実施の形態においては、ステッピングモータ2816が、比2808を保持するために活動状態に保たれる。さらに別の実施の形態においては、ロック機構(図示せず)を使用して、ステッピングモータ2816を停止させてもPMDの比2808が変化しないようにすることができる。一実施の形態においては、ステッピングモータ2816を、12Vまたは42Vの電池またはシステムなどの電源によって駆動することができる。
【0107】
本明細書に記載の実施の形態は、とりわけ法的要件を満足させるために提示された例である。これらの例は、あくまでも使用が可能な実施の形態にすぎず、決して本発明を限定しようとするものではない。すなわち、これらの例ではなく、以下の特許請求の範囲が、本発明を定める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトを有する自動車のエンジンのためのフロントエンド補機駆動部(FEAD)であって、
クランクシャフトに取り付けられた動力変調装置、および
該動力変調装置へと動作可能に接続された少なくとも1つの補機
を含んでいるFEAD。
【請求項2】
前記動力変調装置を前記補機へと動作可能に接続する第1の動力伝達継手をさらに含んでいる、請求項1に記載のFEAD。
【請求項3】
前記動力変調装置が、可変遊星トルク/速度調節器を備えている、請求項1に記載のFEAD。
【請求項4】
前記トルク/速度調節器が、回転可能なハウジングを備えている、請求項3に記載のFEAD。
【請求項5】
前記回転可能なハウジングが、動力伝達継手を備えている、請求項4に記載のFEAD。
【請求項6】
前記動力伝達継手が、プーリを備えている、請求項5に記載のFEAD。
【請求項7】
原動機シャフトを有する車両のためのフロントエンド補機駆動(FEAD)システムであって、
原動機シャフトへと直接接続された動力変調装置と、
少なくとも1つの補機と、
前記動力変調装置を前記補機へと動作可能に接続する動力伝達継手と
を含んでいるFEADシステム。
【請求項8】
前記動力変調装置が、少なくとも1つの傾動可能な遊星−レッグアセンブリと、サンアセンブリとを備えている、請求項7に記載のFEAD。
【請求項9】
前記補機が、ウォーターポンプを備えている、請求項8に記載のFEAD。
【請求項10】
前記補機が、冷却ファンを備えている、請求項8に記載のFEAD。
【請求項11】
前記補機が、空調コンプレッサを備えている、請求項8に記載のFEAD。
【請求項12】
前記動力伝達継手が、ベルトまたはチェーンなどのエンドレス部材を備えている、請求項9、10、または11のいずれかに記載のFEAD。
【請求項13】
前記動力変調装置を車両の動かない部材へと固定するための少なくとも1つのブラケットをさらに含んでいる、請求項7に記載のFEAD。
【請求項14】
前記動力変調装置の比を制御するための制御機構をさらに備えている、請求項7に記載のFEAD。
【請求項15】
前記制御機構が、ステッピングモータを備えている、請求項14に記載のFEAD。
【請求項16】
前記制御機構が、前記ステッピングモータを制御するための制御ハードウェアおよび/またはソフトウェアを備えている、請求項15に記載のFEAD。
【請求項17】
始動モータと、発電機と、動力変調装置とを備えており、該始動モータ、該発電機、および該動力変調装置が1つの装置へと一体化されている複合装置、および
該複合装置を原動機へと動作可能に接続するように構成された第1の動力伝達継手
を備えているフロントエンド補機駆動部(FEAD)。
【請求項18】
前記複合装置が、電機子および界磁を備えており、該電機子および該界磁の両者が、共通の軸を中心にして回転できる、請求項17に記載のFEAD。
【請求項19】
前記複合装置を補機へと動作可能に接続するように構成された第2の動力伝達継手をさらに備えている、請求項18に記載のFEAD。
【請求項20】
前記補機が、ウォーターポンプ、空調コンプレッサ、および/または冷却ファンを含んでいる、請求項19に記載のFEAD。
【請求項21】
前記複合装置が、回転可能なハウジングを備えている、請求項18に記載のFEAD。
【請求項22】
前記回転可能なハウジングに、複数の永久磁石が組み合わせられている、請求項21に記載のFEAD。
【請求項23】
前記回転可能なハウジングが、磁界を生み出すように構成されている、請求項21に記載のFEAD。
【請求項24】
原動機と、
該原動機に接続された動力変調装置と、
該動力変調装置へと接続された被駆動装置と、
を含んでいる駆動系。
【請求項25】
前記動力変調装置が、第1の継手を介して前記原動機へと接続されている、請求項24に記載の駆動系。
【請求項26】
前記第1の継手が、スプライン、キー、またはフランジを備えている、請求項25に記載の駆動系。
【請求項27】
前記第1の継手が、歯車装置を備えている、請求項25に記載の駆動系。
【請求項28】
前記第1の継手が、遊星歯車セットを備えている、請求項27に記載の駆動系。
【請求項29】
前記動力変調装置が、第2の継手を介して前記被駆動装置へと接続されている、請求項24に記載の駆動系。
【請求項30】
前記動力変調装置および/または前記原動機へと接続された制御システムをさらに含んでいる、請求項24に記載の駆動系。
【請求項31】
前記原動機が、内燃機関および/または電気モータを備えている、請求項24に記載の駆動系。
【請求項32】
前記被駆動装置が、コンプレッサ、バルブ、ポンプ、ファン、オルタネータ、または発電機で構成されるグループから選択される1つ以上の装置を含んでいる、請求項24に記載の駆動系。
【請求項33】
潤滑システムをさらに備えている、請求項24に記載の駆動系。
【請求項34】
原動機と、
複数の動力変調装置と、
前記原動機を前記複数の動力変調装置へと接続する継手と、
それぞれが1つの動力変調装置に対応するように前記複数の動力変調装置へと接続された複数の被駆動装置と、
を含んでいる駆動系。
【請求項35】
前記継手が、ベルトを駆動するためのプーリを備えている、請求項34に記載の駆動系。
【請求項36】
前記原動機が、内燃機関を備えている、請求項34に記載の駆動系。
【請求項37】
前記継手が、ベルトを備えており、前記動力変調装置のそれぞれが、前記ベルトによって動作可能に駆動される、請求項36に記載の駆動系。
【請求項38】
前記被駆動装置が、コンプレッサ、バルブ、ポンプ、ファン、オルタネータ、および発電機で構成されるグループから選択される少なくとも2つの装置を含んでいる、請求項37に記載の駆動系。
【請求項39】
少なくとも1つの動力変調装置が、
バリエータアセンブリと、
前記バリエータアセンブリの少なくとも一部を支持するように構成されたケージアセンブリと、
前記バリエータアセンブリへと接続され、当該動力変調装置へのトルクを受け取るように構成された入力アセンブリと、
前記バリエータアセンブリへと接続され、当該動力変調装置からトルクを伝達するように構成された出力アセンブリと、
を備えている、請求項34に記載の駆動系。
【請求項40】
前記動力変調装置が、
バリエータアセンブリと、
前記バリエータアセンブリの少なくとも一部を支持するように構成されたケージアセンブリと、
前記バリエータアセンブリへと接続され、当該動力変調装置へのトルクを受け取るように構成された入力アセンブリと、
前記バリエータアセンブリへと接続され、当該動力変調装置からトルクを伝達するように構成された出力アセンブリと、
を備えている、請求項24に記載の駆動系。
【請求項41】
前記ケージアセンブリ、入力アセンブリ、および出力アセンブリの少なくとも1つを支持するように構成された中心軸をさらに備えている、請求項40に記載の駆動系。
【請求項42】
前記動力変調装置の速度比の変速を促進するように構成されたシフトロッドをさらに備えており、前記中心軸が、該シフトロッドを受け入れるように構成された穴を備えている、請求項41に記載の駆動系。
【請求項43】
前記バリエータアセンブリが、第1のトラクションリング、第2のトラクションリング、傾けることができる遊星−レッグアセンブリ、およびサンアセンブリを備えている、請求項42に記載の駆動系。
【請求項44】
前記バリエータアセンブリを収容するように構成されたケースをさらに備えており、該ケースが、自動車の補機を駆動するようにさらに構成されている、請求項40に記載の駆動系。
【請求項45】
前記ケースに組み合わせられた冷却フィンをさらに備えている、請求項44に記載の駆動系。
【請求項46】
前記動力変調装置の動作の際に生じる熱を放散するために前記ケースへと接続された冷却ファンをさらに備えている、請求項44に記載の駆動系。
【請求項47】
前記バリエータアセンブリが、
トラクションリング間のトルクの伝達を促進するように構成された遊星と、
前記遊星のための回転軸を提供する遊星軸と、
前記遊星軸の傾きを促進すべく前記遊星軸へと接続されたレッグと、
を備えている、請求項40に記載の駆動系。
【請求項48】
少なくとも1つのレッグが、ステータホイールを備えている、請求項47に記載の駆動系。
【請求項49】
少なくとも1つのレッグが、シフトカムホイールをさらに備えている、請求項48に記載の駆動系。
【請求項50】
前記遊星軸へと接続されたスキューローラをさらに備えている、請求項47に記載の駆動系。
【請求項51】
前記サンアセンブリが、シフトカムを備えており、該シフトカムが、該シフトカムの軸方向の位置によって前記傾けることが可能な遊星−レッグアセンブリのレッグの半径方向の位置が制御されるように構成されている、請求項43に記載の駆動系。
【請求項52】
前記シフトロッドの軸方向の位置を制御するための送りねじアセンブリをさらに備えている、請求項42に記載の駆動系。
【請求項53】
シフトアクチュエータをさらに備えている、請求項42に記載の駆動系。
【請求項54】
前記シフトアクチュエータが、シフトアクチュエータの外径のシフト歯車を備えており、該シフトアクチュエータが、該シフトアクチュエータの内径において前記シフトロッドに係合するように構成されている、請求項53に記載の駆動系。
【請求項55】
前記シフト歯車へと動作可能に接続されたモータをさらに備えている、請求項54に記載の駆動系。
【請求項56】
駆動歯車が、前記モータを前記シフト歯車へと接続している、請求項55に記載の駆動系。
【請求項57】
前記シフトロッドが、該シフトロッドの前記サンアセンブリの内側の部位に形成されたねじ山を備えている、請求項43に記載の駆動系。
【請求項58】
前記中心軸をエンジンブロックへと接続するように構成された取り付けブラケットをさらに備えている、請求項41に記載の駆動系。
【請求項59】
前記入力アセンブリが、前記動力変調装置をクランクシャフトへと接続するように構成されたクランクシャフトマウントを備えている、請求項40に記載の駆動系。
【請求項60】
前記動力変調装置が、1つ以上の補機へと動作可能に接続されている、請求項59に記載の駆動系。
【請求項61】
前記1つ以上の補機が、オルタネータ、パワーステアリングポンプ、またはアイドラプーリを含んでいる、請求項60に記載の駆動系。
【請求項62】
ベルトが、前記動力変調装置を前記1つ以上の補機へと接続している、請求項60に記載の駆動系。
【請求項63】
サン軸と、
前記サン軸へと接続されたサンと、
それぞれが遊星軸を有している複数の遊星と、
前記サンを前記遊星軸へと動作可能に接続する制御装置と、
前記複数の遊星へと接続されたトラクションリングと、
前記トラクションリングへと組み合わせられた1つ以上の磁石と、
前記1つ以上の磁石に電磁気的に接続された電機子と、
前記電機子を前記サン軸へと接続する動力伝達継手と、
を備えている複合駆動装置。
【請求項64】
前記トラクションリングへと動作可能に接続された少なくとも1つの軸方向力発生器をさらに備えている、請求項63に記載の複合駆動装置。
【請求項65】
前記サン軸へとトルクを伝達し、あるいは前記サン軸からトルクを伝達するための動力伝達継手をさらに備えている、請求項63に記載の複合駆動装置。
【請求項66】
前記トラクションリングへとトルクを伝達し、あるいは前記トラクションリングからトルクを伝達するための動力伝達継手をさらに備えている、請求項63に記載の複合駆動装置。
【請求項67】
前記電機子および前記1つ以上の磁石が、前記サン軸を中心にして同心に取り付けられている、請求項63に記載の複合駆動装置。
【請求項68】
前記遊星軸を支持および/または案内するように構成されたケージをさらに備えている、請求項67に記載の複合駆動装置。
【請求項69】
前記サン軸が、クランクシャフトへと接続されており、前記ケージが、グラウンドへと固定されている、請求項68に記載の複合駆動装置。
【請求項70】
前記サン軸が、前記電機子を駆動し、該電機子および前記1つ以上の磁石が、電気を生成すべく相互作用するように構成されている、請求項69に記載の複合駆動装置。
【請求項71】
前記電機子および前記1つ以上の磁石が、モータとして機能するように構成されている、請求項68に記載の複合駆動装置。
【請求項72】
複数の球状遊星と、
前記球状遊星に接するサンと、
前記サンに動作可能に接続された電機子と、
前記電機子の周囲に同軸かつ同心に取り付けられた電界と、
前記複数の球状遊星に接する第1および第2のトラクションリングと、
を備えている動力変調装置。
【請求項73】
前記電機子および前記電界が、該電機子および該電界の両者が該電機子と同軸な軸を中心として回転できるように構成されている、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項74】
前記電機子および前記電界が、反対の方向に回転する、請求項73に記載の動力変調装置。
【請求項75】
前記電機子および前記電界が、4極のモータおよび3つの電機子相を含んでいる、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項76】
前記電機子および前記電界が、モータ/発電機を含んでいる、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項77】
界磁が前記第1のトラクションリングへと剛に取り付けられている、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項78】
前記界磁が、複数の電磁石を含んでいる、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項79】
軸方向に動くことができるサン軸をさらに備えており、該サン軸が、前記サンを動かすことによって当該動力変調装置の伝達比の変速を促すように構成されている、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項80】
前記サン軸へと接続された電機子マウントをさらに備えている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項81】
前記電機子が、複数の薄板の周囲に巻き付けられた複数のコイルを含んでいる、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項82】
電気ソケットに電気的に連絡した回転導体をさらに備えており、前記電気ソケットが、前記電機子へと接続された電気リードを受け取るように構成されている、請求項72に記載の動力変調装置。
【請求項83】
前記回転導体に電気的に連絡した導体キャップをさらに備えている、請求項82に記載の動力変調装置。
【請求項84】
動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじと、該シフトねじへとねじ込まれるシフトナットとをさらに備えており、該シフトナットが、前記サン軸の軸方向の動きを生じさせるように構成されている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項85】
前記サン軸の周囲に取り付けられたステータ板をさらに備えており、該ステータ板が、前記複数の球状遊星のために半径方向軸方向の支持をもたらすように構成されている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項86】
前記ステータ板が、グラウンドへと固定されている、請求項80に記載の動力変調装置。
【請求項87】
前記サン軸に接続されたサン軸プーリをさらに備えている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項88】
前記第2のトラクションリングへと接続された出力プーリをさらに備えている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項89】
前記第1のトラクションリングへと接続されたプーリをさらに備えている、請求項79に記載の動力変調装置。
【請求項90】
動力変調装置の伝達比を変速するための装置であって、
動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじ、および
該シフトねじへとねじ込まれるシフトナット
を備えており、
前記シフトナットが、動力変調装置のサン軸の軸方向の動きを生じさせるように構成されている装置。
【請求項91】
前記シフトナットの回転が、前記サン軸の軸方向の動きを生じさせる、請求項90に記載の装置。
【請求項92】
前記シフトナットが、シフト歯車を備えている、請求項91に記載の装置。
【請求項93】
前記シフトナットへと接続されたシフトリングをさらに備えている、請求項92に記載の装置。
【請求項94】
前記シフトリングおよび前記シフトナットが整列するピンマウントをさらに備えている、請求項93に記載の装置。
【請求項95】
前記ピンマウントに受け入れられた少なくとも1つのシフトピンをさらに備えている、請求項94に記載の装置。
【請求項96】
前記少なくとも1つのシフトピンと協働して前記サン軸を軸方向に動かすように構成された1つ以上のピンベアリングをさらに備えている、請求項94に記載の装置。
【請求項97】
第1のシフトベアリングおよび第1のピンベアリングをさらに備えており、前記シフトナットが、該第1のシフトベアリングおよび該第1のピンベアリングを受け入れるように構成されている、請求項93に記載の装置。
【請求項98】
第2のシフトベアリングおよび第2のピンベアリングをさらに備えており、前記シフトリングが、該第2のシフトベアリングおよび該第2のピンベアリングを受け入れるように構成されている、請求項97に記載の装置。
【請求項99】
ピンマウントをさらに備えており、前記シフトナットおよび先記シフトリングが、該ピンマウントを囲むように一体に組み合わせられている、請求項98に記載の装置。
【請求項100】
シフトピンをさらに備えており、前記ピンマウントが、該シフトピンを受け入れるように構成されている、請求項99に記載の装置。
【請求項101】
ピニオンへと接続されたモータをさらに備えており、該ピニオンが、前記シフト歯車を駆動するように構成されている、請求項100に記載の装置。
【請求項102】
動力変調装置においてトルクを伝達するためのシャフトであって、
当該シャフトの外表面に形成され、当該シャフトの主軸に平行である第1の複数の溝、
当該シャフトの外表面に形成され、前記第1の複数の溝よりも当該シャフトの末端近くに位置しており、当該シャフトの主軸に平行である第2の複数の溝、
動力変調装置のサンを受け入れて該サンと結合するためのサン座、および
おおむね当該シャフト内に同心に形成されたシャフト穴
を有しているシャフト。
【請求項103】
補機と、
前記補機へと接続され、複数の傾動可能な球状遊星を有している動力変調装置と、
前記動力変調装置の伝達比を調節するために当該動力変調装置へと接続されたモータと、
前記モータを制御するためのコントローラと、
を備えている、駆動系。
【請求項104】
前記補機の実際の速度を検出するためのセンサをさらに含んでいる、請求項103に記載の駆動系。
【請求項105】
前記コントローラが、モータ・コントローラ・マイクロプロセッサを備えている、請求項103に記載の駆動系。
【請求項106】
前記コントローラが、前記モータ・コントローラ・マイクロプロセッサへと信号をもたらす比例−微分制御の仕組みを備えている、請求項105に記載の駆動系。
【請求項107】
所望の補機速度を表わす信号を受信または保存するための手段をさらに備えている、請求項106に記載の駆動系。
【請求項108】
原動機の速度を検出するための手段をさらに備えている、請求項107に記載の駆動系。
【請求項109】
前記動力変調装置が、前記モータが該動力変調装置の比を調節するときに軸方向に動くように構成されたサン軸を備えている、請求項108に記載の駆動系。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【公表番号】特表2009−541663(P2009−541663A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518168(P2009−518168)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014510
【国際公開番号】WO2008/002457
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(502252415)フォールブルック テクノロジーズ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】