説明

連続送液システムおよびその制御方法

【課題】
連続送液システムにおいて、逆流の切れ目を防止しながら、送液動作に使用するポンプを切換えたときでも送液量の変動を抑制する。
【解決手段】
連続送液システム50は、容器40に収容された液体を吸引し、加圧して需要元へ吐出する。容器に連通する複数のポンプ18a、18bと、複数のポンプの各々に設けられ、ポンプと容器間に配置したバルブ22a、22bと、ポンプの各々に設けられポンプを駆動するモータ13a、13bと、モータとバルブを制御する制御器31とを備える。制御器は、予め定められた流量を単独のポンプで吐出するときは他のポンプを吸引動作または停止させる。そして、単独のポンプが吐出するときの吐出開始時からの所定時間および吐出終了直前の所定時間は単独で吐出するまたは吐出していたポンプの吐出流量を減らす。さらに、他のポンプにこの減らした流量だけ吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続送液システムおよびその制御方法に係り、特にシリンジポンプ等の微小流量を送液する送液手段を有する連続送液システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な流量、例えば10ml/min程度の送液には、シリンジポンプ等が多用される。シリンジポンプは、送液する液体の種類や配管系が変更された結果、圧力損失が変動しても、送液量が変動せず、安定した定量の送液が可能である。この特徴を利用して、化学分野などの計測機器に利用される。
【0003】
ところで、シリンジポンプは、シリンジ内に収容された所定容量の液体をプランジャで押し出す構造であり、シリンジ内の所定容量分の液体を吐出し切ると送液を一端停止し、再度液体を吸引する必要が生じる。液体を吸引中は当然ながら送液が停止するので、送液が中断される。そこで、2個のシリンジポンプ用いて送液の中断を防止することが種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のシステムでは、使用する液の置換性と脈動を防止するために、2個のシリンジポンプを直列に接続し、片方のシリンジが液体吸引中に他方のシリンジが液体を吐出するように動作させて送液の切れ目を抑えている。
【0005】
複数のシリンジポンプを並列接続する例が、特許文献2、3に記載されている。特許文献2に記載の枚葉塗工装置では、マイクロシリンジポンプ2台を並列に接続し、一方のポンプが塗料タンクから吸引中は、他方のポンプがステージ上の基板に塗装している。また、特許文献3に記載のシリンジポンプユニットでは、揺動アームの両端側にシリンジポンプのピストンの基端部を挟み込んで、一方のピストンが吐出動作のときは他方のピストンが吸引動作するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−293946号公報
【特許文献2】特開平8−182952号公報
【特許文献3】特開2006−266458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の従来の液体クロマトグラフは、上流側シリンジポンプと下流側シリンジポンプの2つを直列に組み合わせ、上流側のシリンジポンプの入口側と出口側に液の逆流を防ぐ逆止弁を備えている。そして、上流側のシリンジポンプからの送液の切れ目を下流側のシリンジポンプで補って送液している。つまり、この送液ポンプでは、上流側シリンジポンプが液体を吐出しているときに、下流側シリンジポンプが液体を吸引して送液の切れ目を防止しているので、上流側シリンジポンプには、装置として要求されている吐出量に加え、下流側シリンジポンプが吸引する吸引量も吐出量に含まれるので、ポンプの動力が増大する。
【0008】
また、送液の切れ目をなくすために逆止弁を使用しているが、逆止弁を使用するとデッドボリュームを低減できる利点があるが、流路断面積が減少するので送液中の液体に析出した微小な固形物や送液する液体自体が予め微粒子を含むスラリー液における微粒子が異物として咬み込まれるおそれがある。
【0009】
また、並列接続した特許文献2に記載の装置の場合には、各シリンジポンプに接続した切換弁を切換えて塗工動作と吸引動作を交互に実行しているが、この公報に記載のものは、シリンジポンプの塗工動作と吸引動作の切換え時が基板の交換時になるので、いわゆるバッチ処理であり、ポンプを切換えながら連続的に液を供給することについては考慮されていない。
【0010】
さらに特許文献3に記載のシリンジポンプユニットは、シリンジポンプを並列接続し電磁切換弁で吸引動作と塗布動作とを切換えている。この公報に記載のものは、塗布動作に使用するシリンジポンプを交換する際には、一端塗布位置からノズル位置を変更して塗布を中止するようにしている。すなわち、この公報に記載のものでも、連続的に液を供給することについては、考慮されていない。
【0011】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、微小流量を送液時に逆流の切れ目を防止しながら、送液動作に使用するポンプを切り替えたときであっても送液量の変動を抑制することにある。本発明の他の目的は、継続して一定の微小流量を送液する信頼性の高い送液システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の特徴は、容器に収容された液体を吸引し、加圧して需要元へ吐出する連続送液システムであって、前記容器に連通する複数のポンプと、この複数のポンプの各々に設けられ、前記ポンプと前記容器間に配置したバルブと、前記ポンプの各々に設けられ前記ポンプを駆動するモータと、前記モータと前記バルブを制御する制御器とを備え、前記制御器は、予め定められた流量を需要元へ単独のポンプで吐出するときは他のポンプを吸引動作または停止させ、前記単独のポンプが吐出するときの吐出開始時からの所定時間および吐出終了直前の所定時間は単独で吐出するまたは吐出していたポンプの吐出流量を減らし、他のポンプにこの減らした流量だけ吐出させるように前記複数のポンプおよび前記バルブを制御することにある。
【0013】
そしてこの特徴において、前記バルブはロータリーバルブであり、前記複数のポンプは複数のシリンジポンプであり、前記制御器は前記複数のシリンジポンプの吐出動作と吸引動作を切換えて連続送液を制御することが好ましく、前記複数のポンプは2台のシリンジポンプであり、前記制御器は、前記2台のシリンジポンプから単独吐出動作を交互に繰り返させ、前記各シリンジポンプの単独吐出の前後には双方のシリンジポンプによる吐出動作として吐出動作がオーバーラップするよう制御することが望ましい。
【0014】
また上記特徴において、前記ポンプの吐出部と需要元との間に前記ポンプから吐出される液体の流量を検出する流量計と圧力を検出する圧力計を有し、前記ポンプを駆動する前記モータの起動タイミングと加減速時間との組み合わせパターンの制御データテーブルを記憶する記憶手段を前記制御器に備え、前記制御器は前記記憶手段に記憶された前記制御データを用いて前記ポンプを駆動し、前記圧力センサ及び前記流量計の計測値が最も安定となる条件で前記ポンプを駆動するものであってもよい。
【0015】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、容器に連通する同容量の2台のシリンジポンプと、これら2台のシリンジポンプの各々に設けられ前記シリンジポンプと前記容器間に配置したロータリーバルブと、前記シリンジポンプの各々に設けられ前記シリンジポンプを駆動するモータと、前記モータと前記ロータリーバルブを制御する制御器とを用いて、容器に収容された液体を吸引し、加圧して需要元へ吐出する連続送液システムの制御方法において、前記2台のシリンジポンプを交互に吸引動作と吐出動作させ、一方のシリンジポンプが単独で吸引しているときに他方のシリンジポンプで吸引動作させ、一方のシリンジポンプの単独動作開始直前の所定時間および単独動作終了前の所定時間だけ他方のシリンジポンプも吐出動作し、これら双方のシリンジポンプが吐出動作するときは、前記一方のシリンジポンプの速度を減速させ、前記他方のシリンジポンプに前記一方のシリンジポンプの減速量だけ加速させることにある。
【0016】
そしてこの特徴において、前記一方のシリンジポンプが単独吐出動作している間に、前記他方のシリンジポンプに接続された前記ロータリーバルブを吐出側から吸引側へ切換え、この他方のシリンジポンプで前記容器から溶液を吸引し、さらに前記他方のシリンジポンプに接続された前記ロータリーバルブを吸引側から吐出側へ切換えるのがよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリンジポンプを2台並列に接続し、それぞれのシリンジポンプにロータリーバルブを付設し、一方のシリンジポンプの吐出動作が終了する前に他のシリンジポンプを吐出動作させているので、異物等による目詰まりを防止できるとともに、バルブの切り替え動作時に生じるシリンジポンプからの送液量の変動を抑制できる。また、継続して一定の微小流量を送液する信頼性の高い送液システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る連続送液システムの一実施例のブロック図である。
【図2】図1に示した連続送液システムが備えるポンプおよびバルブの動作を示すタイミングチャートである
【図3A】図1に示した連続送液システムの制御を示すフローチャートである。
【図3B】図1に示した連続送液システムの制御を示すフローチャートである。
【図3C】図1に示した連続送液システムの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る連続送液システムの一実施例について、図面を用いて説明する。図1は、連続送液システム50のブロック図であり、図2はシリンジポンプおよびロータリーバルブの動作を示すタイミングチャート、図3はこの連続送液システム50が備えるシリンジポンプおよびロータリーバルブの制御フローチャートである。
【0020】
連続送液システム50は、筐体内に保持される機構部42と、筐体内に着脱可能に取り付けられる送液対象の流体が収容された容器40と、この連続送液システム50を制御する制御部30とに分かれる。そして、機構部42は、この連続送液システム50の中枢をなす送液部10と、この送液部10の下流側に位置する配管部20とを備える。
【0021】
送液部10では、第1、第2のシリンジポンプ18a、18bが2台平行に配置されている。第1、第2のシリンジポンプ18a、18bのシリンジ11a、11bには、プランジャ12a、12bが挿入されている。プランジャ12a、12bのシリンジ11a、11bへの挿入側と反対端部は、ボールネジ14a、14bのスライドブロック15a、15bに固定されている。ボールネジ14a、14bは、モータ13a、13bで駆動される。
【0022】
シリンジポンプ18a、18bの吐出側には、配管接続のためのアダプタ21a、21bが取り付けられており、このアダプタ21a、21bの下流側は、ロータリーバルブ22a、22bの1次側に接続されている。ロータリーバルブ22a、22bの2次側は、一方が配管24a、24bを介して容器40に、他方が需要先に接続される配管27a、27bに接続されている。この需要先への配管27a、27bは、配管合流点25で1本の配管19にまとめられ、流量計26を介して図示しない需要元へ接続されている。容器に接続された配管24a、24bも、配管合流点28で1本の配管29にまとめられて、容器40に接続されている。
【0023】
需要元への配管19の途中であって流量計26の下流側には、圧力センサ23が取り付けられている。圧力センサ23および流量計26が検出した信号は、制御部30が有するパーソナルコンピュータ等の制御器31に、信号線s1、s2を介して入力される。制御器31は、記憶手段31aおよび演算手段31bを有する。記憶手段31aには、予め設定された流量などのデータが記憶されている。制御器31には、マウスやキーボード、ディスプレイ等の入出力デバイス32が付設されている。制御器31は、入力された信号に基づいて、各種指令をロータリーバルブ22a、22bやボールネジ14a、14bを駆動するモータ13a、13bに、信号線s3〜s6を介して出力する。
【0024】
すなわち、各シリンジ11a、11b内をプランジャ12a、12bが往復することにより、容器40から配管24a、24bを経てシリンジ11a、11b内に吸引された液体を、配管27a、27bから吐出する。プランジャ12a、12bは、動力源となるモータ13a、13bにより、駆動される。その際、モータ13a、13bの回転運動が、ボールネジ14a、14bとスライドブロック15a、15bにより、往復運動へと変換される。
【0025】
アダプタ21a、21bは、様々な容量のシリンジポンプ18a、18bを、この連続送液システム50が使えるようにする継手であり、ロータリーバルブ21a、21bに各サイズのシリンジポンプ18a、18bを漏れることなく接続する。すなわち、アダプタ21a、21bのロータリーバルブ22側への取り付け部には、ネジが切ってあり、ロータリーバルブ22とネジ締結されている。アダプタ21a、21bのシリンジ11側の取り付け部には、ルアーロック型の接続口が設けられている。化学・医療分野などで一般的に使用されている先端がルアーロック形状のシリンジ11であれば、容量を問わず接続することができる。この連続送液システム50の定格流量の変化に合わせてシリンジ11a、11bを変更するだけで、幅広い送液条件に対応できる。また、シリンジ11a、11bを取り外して、洗浄することも容易である。
【0026】
ロータリーバルブ22a、22bは、各シリンジポンプ18a、18bに吸引動作をさせるのか、吐出動作をさせるのかを切り替える。圧力センサ23および流量計26は、配管19内の圧力と流量をそれぞれ常時計測し、制御器31へ送信する。制御器31は、圧力センサ23および流量計26の値が予め定めた閾値を超えた場合に、圧力または流量異常と判断し、モータ13a、16bの回転を停止する。これにより主として配管部20で生じる液詰まりを検出し、緊急停止や異常高圧で連続送液システム50が損傷するのを防止する。また、この圧力値及び流量値は、制御器31内にの記憶手段31aに自動的に記録され、本連続送液システム50を実験装置として使用する場合の実験データ、製造装置として用いるときの製造時の初期値データとして活用することもできる。
【0027】
配管24a、24b、29に、は耐薬品性に優れたフッ素樹脂製のチューブが選ばれる。チューブの変形による送液量の変動を防ぐため、肉厚で硬いチューブが特に好ましい。送液液体が水等の腐食性が低い材質の液体であれば、ステンレス配管を用いても良い。
【0028】
送液部10では、制御器31からの信号が信号線s5、s6を介してモータ13a、13bに送信されると、モータ13a、13bが回転する。モータ13a、13bの回転とともに、ボールネジ14a、14bが動き出す。そして、モータ13a、13bの回転運動が、図1では上下方向への往復運動に変換される。この時、2個のプランジャ12a、12bが送液動作あるいは吸引動作するように、モータ13a、13bの回転運動を制御器31が制御する。
【0029】
ボールネジ14a、14bに移動可能に取り付けられたライドブロック15a、15bは、ボールネジ14a、14bの動きに応じて、一方のスライドブロック15aが上に移動する場合は、他方のスライドブロック15bが下へ移動することが可能になっている。すなわち各スライドブロック15a、15bは、反対方向に動くことも可能であるから、片方のプランジャ12aまたは12bが送液動作中は、他方のプランジャ12bまたは12aが吸引動作可能である。
【0030】
このように、モータ13a、13bを複数個設けているので、プランジャ12a、12bを個別に制御できる。その結果、送液動作と吸引動作を異なる速度で行うことや、吸引動作完了時間を短くすること、送液動作を同時にすること、または他のシリンジポンプ18aまたは18bの動作と異なる動作をさせること等のいろいろな動作をシリンジポンプにさせることが可能である。
【0031】
本実施例で、モータ13a、13bの回転運動を往復運動に変換する手段として、ボールネジ14a、14bを用いた理由は以下のとおりである。回転運動を直線運動に変換する機構はいくつかあるが、移動量と速度を精密に伝達できるため、シリンジポンプ18a、18bのような微小量の送液に用いるポンプを制御するのに最も適しているためである。精密な送液精度が要求されない場合は、タイミングベルトやクランクなどの方法でもよい。
【0032】
このように構成した連続送液システムの動作について、図2および図3を参照しながら説明する。図1で符号にaが付いた部品を「第1の」の接頭語を付して、符号にbが付いた部品を「第2の」の接頭語を付して、以下に説明する。第1のシリンジポンプ18aを含む系を第1のシリンジポンプ系、第2のシリンジポンプ18bを含む系を第2のシリンジポンプ系と呼ぶ。
【0033】
図2に示すタイムチャートで、上側3個が第1のシリンジポンプ系におけるタイムチャート、下側3個が第2のシリンジポンプ系におけるタイムチャートである。横軸は時間t(s)であり、縦軸は第1のシリンジポンプ系でも第2のシリンジポンプ系でも、上から順にシリンジポンプ18a、18bから吐出される液体の流速(mm/s)、シリンジ11a、11bの変位(ストローク)δ(mm)、ロータリーバルブ22a、22bの位置Loである。ここで、シリンジ11a、11bの径が第1、第2のシリンジポンプ系で同一であるから、シリンジポンプ18a、18bでの流体の流速Vは流量Q(μL/s)に比例する。図2で、A10〜A28で示した領域ごとに、この連続送液システム50の動作を説明する。
[領域A10]
A10の領域は、この連続送液システム50の起動時の動作である。すなわち、第1のシリンジポンプ系も第2のシリンジポンプ系も初期状態にあり、第1のロータリーバルブ22aは吸込側にあり、容器40と連通している。第1のシリンジ11aは、初め全閉状態、つまり内容量0の状態にある。その後所定の速度でプランジャ12aを引き、最大ストロークとなる時間p0まで引いたら、容器40からの吸引を止める。このとき、第2のシリンジポンプ系は休止状態にある。本実施例では、第2のロータリーバルブ22bも吸引側に設定されており、第2のシリンジ11bは全閉状態となっている。
[領域A11]
A11の領域は、第1のロータリーバルブ22aの切換え動作の領域である。第1のシリンジポンプ系では吸引動作が終わったので、吐出動作に切替える必要がある。そこで、時間p0〜p1の間に、第1のロータリーバルブ22aを切替える。このとき、第1のロータリーバルブ22a内部には送液に寄与しないデッドボリュームが形成されているので、このデッドボリューム分だけ予め送液しておく。第2のシリンジポンプ系は、依然初期状態を保つ。
[領域A12]
領域A12は、第1のシリンジポンプ18aでこの連続送液システム50に予め定められた流量を送液する領域であり、時間p1〜p2だけ一定流速で送液する。このとき第2のシリンジポンプ18bは、時間p1よりも後の時間q0に、容器40からの溶液の吸引を開始する。時間q0〜q1の間、第2のプランジャ22bが吸引して最大容量まで吸引すると、領域A21で表される続く時間q1〜q2の間に、第2のロータリーバルブ22bを作動させて吸引から吐出状態に切り替える。このとき第1のロータリーバルブ22aと同様に、吐出に寄与しないデッドボリュームが生じているので、切換え終了時に需要元に吐出開始されるよう、第2のプランジャ22bが吐出動作をする。
[領域A13と領域A22]
この領域が本発明の特徴的な領域である。第1のシリンジポンプ系と第2のシリンジポンプ系との切換え時の脈動を抑制するための領域である。すなわち第1のシリンジポンプ系での吐出動作が終わりに近づいたら、第2のシリンジポンプ系の吐出動作をオーバーラップさせることにより、徐々に第1のシリンジポンプ系の吐出動作から第2のシリンジポンプ系の吐出動作に移行させている。
【0034】
時間p2(=q2=t1)で、第1のプランジャ22aの減速を開始し、時間p3(=q3=t2)になったら、第1のシリンジポンプ18aを全閉状態にする。この第1のシリンジポンプ18aでの流速(流量)低下分だけ、第2のシリンジポンプ18bから溶液を吐出する。
[領域A23]
領域A23は、吐出動作が完全に第2のシリンジポンプ18bに移行し、第2のシリンジポンプ18bだけで所定容量だけ溶液を吐出する領域である。時間q3〜q4の間、この状態を継続する。第1のシリンジポンプ18aでは、この時間中に吸引動作を完了させ、吐出動作ができる状態にしておく必要がある。そのため、第2のシリンジポンプ18bに吐出動作が移行した時間p3からp4の間で、ロータリーバルブ22aを吸込側に切替える。それに引き続いて、容器40から溶液の吸引を開始し、時間p5で吸引を終える。吸引を終えたら、再びロータリーバルブ22aを吐出側に時間p5〜p6間に切替える。
[領域A14と領域A24]
第2のシリンジポンプ18bから第1のシリンジポンプ18aへ、吐出動作を移行させる領域である。第1のシリンジポンプ18aが吐出動作をできる状態になった時間p6(=q4=t3)で、第2のシリンジポンプ18bからの吐出速度を減速させ、その流速(流量)低下分だけ、第1のシリンジポンプ18aから溶液を吐出する。
【0035】
以後、上記動作を繰り返し、第1、第2のシリンジポンプ系の切換えによる、連続送液システム50の吐出流れにおける脈動を防止する。すなわち、第1のシリンジポンプ系では、図2のp6〜p16で示したタイミングで、第1のロータリーバルブ22aおよび第1のプランジャ12aを動作させる。一方、第2のシリンジポンプ系では、q5〜q15で示したタイミングで、第2のロータリーバルブ22bおよび第2のプランジャ12bを動作させる。ここで、t4〜t10で示した時間には、第1のシリンジポンプ系と第2のシリンジポンプ系の切換えのタイミングを同期させる。図2に図示した動作を以後継続し、需要元に必要な容量だけ送液するまで繰り返す。
【0036】
以上の第1、第2シリンジポンプ18a、18bの動作においては、図2から分かるように、プランジャ12a、12bの移動速度を、吸引動作のときに吐出動作のときよりも早くしている。その理由は、第1、第2のシリンジポンプ18a、18bの双方の吐出動作をオーバーラップさせる必要があることと、吸引の場合は真空吸引であるのに対し、吐出の場合数100kPa下での流動となるからで、真空吸引の場合流動抵抗が小さく必要動力も吐出に比べて小さくできるからである。
【0037】
上記連続送液システム50の動作フローを、図3に示したフローチャートで説明する。この図3では、第1、第2のシリンジポンプ18a、18bにおける第1、第2のプランジャ12a、12bの動作を、全てポンプで表している。
【0038】
連続送液ポンプシステム50を起動すると、制御器31は第1、第2のシリンジポンプ系を初期状態に設定する(ステップ100)。次いで、第1のシリンジポンプ18aで容器40から溶液をシリンジ11a内に吸引する(ステップ102)。第1のプランジャ12aが最大ストロークまたは所定容量位置まで移動して吸引が完了したか否かを制御器31が判断する(ステップ104)。なお、ステッピングモータを第1の駆動モータ13aに使用するときは、所要ステップ数に達したか否かを駆動モータ13aが判断する。
【0039】
第1のシリンジポンプ18aの吸引が完了していれば、第1のロータリーバルブ22aを吸引側から吐出側へ切替える。それとともに、第1のロータリーバルブ22aとこの第1のロータリーバルブ22aの接続部分のデッドボリューム分だけ、第1のシリンジポンプ18aから溶液を吐出する(ステップ106)。第1のロータリーバルブ22aの切換えが完了したか否かを、制御器31が判定する(ステップ108)。
【0040】
第1のロータリーバルブ22aが完全に吐出側に切替えられていたら、一定速度で第1のプランジャ12aを押し込み第1のシリンジ11a内の溶液を吐出する(ステップ110)。このステップ110の動作中に、第2のシリンジポンプ18bが容器40から溶液をシリンジ11b内に吸引する(ステップ112)。そして、第2のプランジャ12bが最大ストロークまたは所定容量位置まで移動して吸引が完了したか否かを制御器31が判断する(ステップ114)。なお、ステッピングモータを第2の駆動モータ13bに使用するときは、所要ステップ数に達したか否かを駆動モータ13bが判断する。
【0041】
第2のシリンジポンプ18bの吸引が完了していれば、第2のロータリーバルブ22bを吸引側から吐出側へ切替える。それとともに、第2のロータリーバルブ22bとこの第2のロータリーバルブ22bの接続部分のデッドボリューム分だけ、第2のシリンジポンプ18bから溶液を吐出する(ステップ116)。
【0042】
第2のロータリーバルブ22bの切換えが完了したか否かを、制御器31が判定する(ステップ118)。第2のロータリーバルブ22bが完全に吐出側に切替えられていたら、制御器31は第1、第2のシリンジポンプ18a、18bの同期を取る。すなわち、第1のシリンジポンプ18aの第1のプランジャ12aを減速させる。そして、この減速分と同じ分だけ第2のシリンジポンプ18bのプランジャ12bを、同じタイミングで加速させる(ステップ120)。これにより、配管19部から吐出される溶液の量を不変とすることができる。
【0043】
第1のシリンジポンプ18aのプランジャ12aの速度が0になり、第2のシリンジポンプ18bのプランジャ12bの速度が最大または所定値になったか否かを制御器31が判断する(ステップ122)。所定値になっていれば、第2のシリンジポンプ18bはその速度を維持する(ステップ124)。
【0044】
一方、第1のシリンジポンプ18aでは、第2のシリンジポンプ18bが一定速で吐出している間に、以下のステップを実行する。すなわち、第1のロータリーバルブ22aを吐出側から吸引側に切替える(ステップ126)。そして、第1のロータリーバルブ22aが切り替わったかを判断する(ステップ128)。次いで、容器40から溶液を吸引する(ステップ130)。所定容量または最大ストロークまで第1のプランジャ12aが吸引したか否かを制御器31が判断する(ステップ132)。その後、第1のロータリーバルブ22aを吸引側から吐出側に切替える(ステップ134)。制御器が完全に第1のロータリーバルブ22aが切り替わったかを判断する(ステップ136)。
【0045】
第1のロータリーバルブ22aが吐出側に完全に切り替わっていたら、制御器31は、第1、第2のシリンジポンプ18a、18bの同期を取る。すなわち、第2のシリンジポンプ18bの第2のプランジャ12bを減速させる。そして、この減速分と同じ分だけ第1のシリンジポンプ18aのプランジャ12aを、同じタイミングで加速させる(ステップ138)。
【0046】
第2のシリンジポンプ18bの流速が0になり、第1のシリンジポンプ18aの流速が最大値または所定値に達したか否かを制御器31が判断する(ステップ140)。ついで、第1のシリンジポンプ18aには、この流速を維持させる(ステップ142)。ステップ142で、第1のシリンジポンプ18aが一定速で溶液を吐出している間、第2のシリンジポンプ18bでは、以下の動作をする。
【0047】
すなわち、第2のロータリーバルブ22bを吐出側から吸引側に切替える(ステップ144)。そして、制御器31が完全に第2のロータリーバルブ22bが切り替わったかを判断する(ステップ146)次いで、容器40から溶液を吸引する(ステップ148)。所定容量または最大ストロークまで第2のプランジャ12bが吸引したか否かを制御器31が判断する(ステップ150)。その後、第2のロータリーバルブ22bを吸引側から吐出側に切替える(ステップ152)。制御器31が完全に第2のロータリーバルブ22bが切り替わったかを判断する(ステップ154)。
【0048】
第2のロータリーバルブ22bが吐出側に完全に切り替わっていたら、制御器31は、第1、第2のシリンジポンプ18a、18bの同期を取る。すなわち、第1のシリンジポンプ18aの第1のプランジャ12aを減速させる。そして、この減速分と同じ分だけ第2のシリンジポンプ18bのプランジャ12bを、同じタイミングで加速させる(ステップ156)。ステップ158〜ステップ172は、ステップ120〜ステップ136までの動作と同じである。
【0049】
以下、上記ステップ、例えば124〜ステップ150、すなわち時間t2〜t5の間の動作を、需要元の要求する容量が送液されるまで繰り返す。なお、本フローチャートでは、制御器31が第1、第2のシリンジポンプ18a、18bの動作および第1、第2のロータリーバルブ22a、22bの切換えをフィードバック的に制御するようにしているが、第1、第2のモータ1a、13bをステップモータとして、第1、第2のモータ13a、13bの制御手段がフィードフォワード的に各機器を制御するようにしてもよい。
【0050】
本実施例によれば、第1のプランジャ12aの送液動作完了直前の減速動作開始タイミングで、第2のプランジャ12bの送液(加速)動作を開始する、およびこの逆動作をするので、第1、第2のプランジャ12a、12bの送液動作がオーバーラップする。したがって、2個のプランジャ12a、12bにおいては、互いに減速と加速のスピードを合わせることにより、設定値の送液速度が維持され脈動無く安定した連続送液となる。
【0051】
また、第1、第2のプランジャ12a、12bの切替動作タイミングは、第1、第2のモータ13a、13bの回転を制御する、制御器31かのパルス値をカウントするだけで、一方のプランジャ12a(または12b)が減速動作を開始するタイミングが分かり、他方のプランジャ12b(または12a)の送液(加速)動作が同期して開始される。
【0052】
さらに、各機器の動作タイミングを装置の自動自己学習により決定できる機能を設ければ、最適な無脈動送液を行うことが可能となる。具体的には、自動自己学習機能として、プランジャの切替タイミング、すなわちモータの起動タイミングと加減速時間を数パターン自動で順次動作させ、圧力センサ或いは流量計の計測値が最も安定するタイミングを制御器に記録させて、送液動作に反映すればよい。
【符号の説明】
【0053】
10…送液部
11a、11b…シリンジ
12a、12b…プランジャ
13a、13b…モータ
14a、14b…ボールネジ
15a、15b…スライドブロック
18a、18b…シリンジポンプ
19…配管
20…配管部
21a、21b…アダプタ
22a、22b…ロータリーバルブ
23…圧力センサ
24a、24b…配管
25…配管合流点
26…流量計
27a、27b…配管、
28…配管合流点
29…配管
30…制御部
31…制御器
32…入出力デバイス
31a…記憶手段
31b…演算手段
40…容器
42…機構部
50…連続送液システム
s1〜s6…信号線
p0〜p16…時間
q0〜q15…時間
t1〜t10…時間
A10〜A28…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体を吸引し、加圧して需要元へ吐出する連続送液システムであって、前記容器に連通する複数のポンプと、この複数のポンプの各々に設けられ、前記ポンプと前記容器間に配置したバルブと、前記ポンプの各々に設けられ前記ポンプを駆動するモータと、前記モータと前記バルブを制御する制御器とを備え、前記制御器は、予め定められた流量を需要元へ単独のポンプで吐出するときは他のポンプを吸引動作または停止させ、前記単独のポンプが吐出するときの吐出開始時からの所定時間および吐出終了直前の所定時間は単独で吐出するまたは吐出していたポンプの吐出流量を減らし、他のポンプにこの減らした流量だけ吐出させるように前記複数のポンプおよび前記バルブを制御することを特徴とする連続送液システム。
【請求項2】
前記バルブはロータリーバルブであり、前記複数のポンプは複数のシリンジポンプであり、前記制御器は前記複数のシリンジポンプの吐出動作と吸引動作を切換えて連続送液を制御することを特徴とする請求項1に記載の連続送液システム。
【請求項3】
前記複数のポンプは2台のシリンジポンプであり、前記制御器は、前記2台のシリンジポンプから単独吐出動作を交互に繰り返させ、前記各シリンジポンプの単独吐出の前後には双方のシリンジポンプによる吐出動作として吐出動作がオーバーラップするよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載の連続送液システム。
【請求項4】
前記ポンプの吐出部と需要元との間に前記ポンプから吐出される液体の流量を検出する流量計と圧力を検出する圧力計を有し、前記ポンプを駆動する前記モータの起動タイミングと加減速時間との組み合わせパターンの制御データテーブルを記憶する記憶手段を前記制御器に備え、前記制御器は前記記憶手段に記憶された前記制御データを用いて前記ポンプを駆動し、前記圧力センサ及び前記流量計の計測値が最も安定となる条件で前記ポンプを駆動することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の連続送液システム。
【請求項5】
容器に連通する同容量の2台のシリンジポンプと、これら2台のシリンジポンプの各々に設けられ前記シリンジポンプと前記容器間に配置したロータリーバルブと、前記シリンジポンプの各々に設けられ前記シリンジポンプを駆動するモータと、前記モータと前記ロータリーバルブを制御する制御器とを用いて、容器に収容された液体を吸引し、加圧して需要元へ吐出する連続送液システムの制御方法において、
前記2台のシリンジポンプを交互に吸引動作と吐出動作させ、一方のシリンジポンプが単独で吸引しているときに他方のシリンジポンプで吸引動作させ、一方のシリンジポンプの単独動作開始直前の所定時間および単独動作終了前の所定時間だけ他方のシリンジポンプも吐出動作し、これら双方のシリンジポンプが吐出動作するときは、前記一方のシリンジポンプの速度を減速させ、前記他方のシリンジポンプに前記一方のシリンジポンプの減速量だけ加速させることを特徴とする連続送液システムの制御方法。
【請求項6】
前記一方のシリンジポンプが単独吐出動作している間に、前記他方のシリンジポンプに接続された前記ロータリーバルブを吐出側から吸引側へ切換え、この他方のシリンジポンプで前記容器から溶液を吸引し、さらに前記他方のシリンジポンプに接続された前記ロータリーバルブを吸引側から吐出側へ切換えることを特徴とする請求項5に記載の連続送液システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2013−15072(P2013−15072A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148251(P2011−148251)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】