説明

遊技履歴管理システム

【課題】個人情報を取得すること無く、しかも会員カードを携帯していない遊技者についても、その遊技履歴の把握が可能であり、従って、安全性と正確性を兼ね備えた新規な遊技履歴管理システムを提供する。
【解決手段】この遊技履歴管理システムは、遊技装置2と、遊技装置2毎に設けられて、遊技者の遊技装置2に対する遊技操作のクセに基づいて、遊技者を識別する遊技者識別手段45と、遊技装置2の遊技履歴情報が計時的情報とともに格納される遊技履歴情報格納手段4aと、遊技者識別手段45により識別された遊技者情報が、計時的情報とともに格納される遊技者情報格納手段47と、遊技履歴情報格納手段4aおよび遊技者情報格納手段47から収集された両情報に対して、両情報に付された計時的情報に基づく対比処理を行うことにより、遊技者毎の遊技履歴を導出する管理手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技装置の遊技者を特定することにより、遊技者毎の遊技履歴を管理することができる遊技履歴管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の遊技履歴管理システムの従来例としては、特許文献1乃至3を挙げることができる。特許文献1、2においては、会員カードを用いて遊技者毎の遊技履歴情報を取得している。特許文献3においては、遊技者の顔画像を認証することにより、遊技者毎の遊技履歴情報を取得している。このように遊技者毎の遊技履歴情報を取得することができれば、遊技場は導入した機種が人気機種であるか否かという情報や、遊技者毎の遊技装置に対する賭金総額といった情報を得ることができる。これら情報は、遊技場にとって遊技装置の入れ替えの判断材料として極めて有用な情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245916号公報
【特許文献2】特開平11−76577号公報
【特許文献3】特開2008−93235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に示すような会員カードを使った遊技履歴管理システムには、非会員の遊技者などの会員カードを携帯しない遊技者の遊技履歴を全く把握することができないという致命的な欠点がある。
一方、特許文献3のように、遊技者の顔画像を認証することにより、遊技者毎の遊技履歴情報を取得する形態を採れば、遊技者が会員であるか否かに拘らず、また、会員カードを携帯しているか否かに拘らず、遊技者の遊技履歴をより的確に把握することが可能ではある。しかし、特許文献3のように、遊技装置の前に座るたびに、個人情報である顔情報が取得され、しかも顔情報とともに「どの台に座ったか」、「どの台で幾らお金を使ったか」などといったプライバシー情報が取得され、遊技場によりこれら個人情報やプライバシー情報が管理されることに不快感を覚える遊技者も少なく無い。また、万が一、これら顔情報(顔画像)である個人情報がプライバシー情報とともに漏洩した場合には、その被害が極めて甚大なものとなることは避けられない。つまり、特許文献3のシステム形態は、特に個人情報の保護の点で危うさを抱えていると言わざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、個人情報を取得すること無く、しかも会員カードを携帯していない遊技者についても、その遊技履歴の把握が可能であり、従って、安全性と正確性を兼ね備えた新規な遊技履歴管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、遊技装置2の遊技者を特定することにより、遊技者毎の遊技履歴を管理するための遊技履歴管理システムを対象とする。このシステムは、遊技装置2と、遊技装置2毎に設けられて、遊技者の遊技装置2に対する遊技操作のクセに基づいて、遊技者を識別する遊技者識別手段45と、遊技装置2の遊技履歴情報が計時的情報とともに格納される遊技履歴情報格納手段4aと、前記遊技者識別手段45により識別された遊技者情報が、計時的情報とともに格納される遊技者情報格納手段47と、前記遊技履歴情報格納手段4aおよび前記遊技者情報格納手段47から収集された両情報に対して、両情報に付された計時的情報に基づく対比処理を行うことにより、遊技者毎の遊技履歴を導出する管理手段4とを有する。
本発明における「計時的情報」とは、タイマーによって測定された時間情報のほかに、ゲーム回数、或いはパチンコ機の遊技球の発射装置から発射される玉数から算出される時間情報をも含む概念である。すなわち、パチスロ機においては1分間のゲーム数の上限には規制があり、またパチンコ機においては1分間に発射装置から発射される遊技球の上限には規制がある。従って、これらゲーム数或いは遊技球数等に基づけば、遊技時間を算出することが可能である。
【0007】
前記遊技装置2は、複数個のドラム10を備えた回胴式遊技機であって、賭けメダルの枚数を入力するためのベットボタン20と、全ドラム10を回転させるためのスタートレバー22と、各ドラム10を停止させるための複数個のストップボタン23とを備え、遊技者がこれらベットボタン20、スタートレバー22、およびストップボタン23を順に操作することで、一回のゲームが実行されるようになっている。そして前記遊技者識別手段45が、これらベットボタン20、スタートレバー22、およびストップボタン23の操作タイミングを判断要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものとすることができる。
【0008】
前記遊技装置2は、複数個のドラム10を備えた回胴式遊技機であって、賭けメダルの枚数を入力するためのベットボタン20と、全ドラム10を回転させるためのスタートレバー22と、各ドラム10を停止させるための複数個のストップボタン23とを備え、遊技者がこれらベットボタン20、スタートレバー22、およびストップボタン23を順に操作することで、一回のゲームが実行されるようになっている。そして、前記遊技者識別手段45が、前回のゲーム終了後から次回ゲームにおけるベットボタン20を押圧操作するまでの操作タイミング、ベットボタン20を押圧操作してからスタートレバー22を押圧操作するまでの操作タイミング、スタートレバー22を押圧操作してからストップボタン23を押圧操作するまでの操作タイミング、複数個のストップボタン23に対する押圧操作の順番、一回のゲームにおけるベットボタン20及び/又はスタートレバー22の押圧回数、ストップボタン23を押圧操作する際の目押しの有無、およびベットボタン20、スタートレバー22、ストップボタン23の押圧力、から選択される一又は二以上の操作要素を判別要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものとすることができる。
【0009】
前記遊技装置2はパチンコ機であって、遊技球の発射装置による発射強度を調整するための発射ハンドルと、該発射装置による遊技球の発射動作を一時的に停止するためのストップボタンとを備える。そして、前記遊技者識別手段45が、発射ハンドルの回動操作具合による発射装置からの発射強度、発射ハンドルの操作タイミング、ストップボタンの操作タイミングから選択される一又は二以上の操作要素を判別要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る遊技履歴管理システム1においては、遊技装置2に対して遊技者が遊技操作を行うと、遊技者識別手段45が各遊技者の遊技操作のクセに基づいて、遊技者を識別するようにした。
【0011】
すなわち、例えば、所謂「パチスロ機」と称される回胴式遊技機においては、遊技者によって、ベットボタン20、スタートレバー22、およびストップボタン23の操作タイミングが微妙に異なる。具体的には、ベットボタン20を押圧操作してからスタートレバー22を押圧操作するまでのタイミング、また、スタートレバー22を押圧操作してからストップボタン23を押圧操作するまでのタイミングは、遊技者により異なるものである。同様に、前回のゲーム終了後から次回ゲームにおけるベットボタン20を押圧操作するまでの操作タイミング、複数個のストップボタン23に対する押圧操作の順番などは、遊技者により異なるものである。また、一回のゲームにおけるベットボタン20及び/又はスタートレバー22の押圧回数、ストップボタン23を押圧操作する際に目押しするか否かについても遊技者により異なるものである。さらに、ベットボタン20、スタートレバー22、ストップボタン23の押圧力についても遊技者により異なるものである。
【0012】
さらに、パチンコ機の場合には、発射ハンドルの回動操作具合による発射装置からの発射強度、発射ハンドルの操作タイミング、ストップボタンの操作タイミングは、遊技者により異なるものである。
【0013】
以上のように、各遊技者により、遊技操作の操作部材(回胴式遊技機のベットボタン20等、或いはパチンコ機の発射ハンドル等)の操作タイミング、或いは操作手順などは異なるものであるため、これら操作タイミング、或いは操作手順などを判別要素として遊技者のクセを特定することができれば、このクセに基づいて遊技者を識別することができる。つまり、この種の遊技装置では、所定数のメダル或いは遊技球の払い出しが行われる大当たり状態と、この大当たり状態に至るまでの通常状態とを繰り返すが、通常状態は勿論のこと、大当たり状態を挟んだ通常状態における遊技操作のクセが一致する期間においては、同一の遊技者が遊技したと判別することが可能である。
【0014】
加えて、遊技者識別手段45により識別された遊技者情報が、計時的情報とともに遊技者情報格納手段47に格納されるようにしていると、識別された遊技者の各遊技装置2における時間情報を知ることができる。すなわち、何時から何時まで、その遊技装置2で遊技者が遊技したかを知ることができる。また、時間的に重複すること無く、異なる遊技装置2における遊技操作のクセが同一である場合には、同じ遊技者が異なる遊技装置2で遊技したと判断することができる。
【0015】
また、本発明においては、遊技装置2の履歴情報についても、これに計時的情報を付加するものとする。すなわち、履歴情報については、賭金情報、メダル或いは遊技球の払い出し枚数の情報、大当たり回数の情報、大当たり状態に至るまでの通常状態におけるゲーム数の情報のほかに、大当たり状態に至った時間、或いは大当たり状態が終了した時間などの計時的な情報(計時的情報)を付加しておき、これを遊技履歴情報格納手段4aに格納しておくものとする。
【0016】
以上のように、遊技履歴情報と遊技者情報の両情報に計時的情報を付加していると、両情報を収集したのちに、計時的情報に基づいて両情報を対比することで、遊技者毎の遊技履歴を知ることができる。すなわち、特定された遊技者が遊技装置2において何時から何時まで遊技したかという情報(遊技時間情報)、特定された遊技者が遊技装置2に賭けた掛金に関する情報(賭金情報)、特定された遊技者に対して遊技装置2から払い出されたメダル数や遊技球数に関する情報(賞球情報)、特定された遊技者の遊技装置2における大当たり回数情報などを知ることができる。
【0017】
本発明者の知見によれば、例えば回胴式遊技機において、ベットボタン20を押圧操作してからスタートレバー22を押圧操作するまでのタイミングと、スタートレバー22を押圧操作してからストップボタン23を押圧操作するまでのタイミングと、ストップボタン23の押圧順序といった、以上3つの判断要素に基づいて遊技操作のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するようにすれば、極めて高い確率(略100%)で遊技者を識別・特定することが可能である。
また、パチンコ機において、大当たり状態に至る直前に実行されるリーチ状態における発射ハンドルとストップボタンの操作、大当たり状態が開始するときの発射ハンドルおよびストップボタンの操作タイミング、大当たり後の確率変動状態、或いは時短状態における確変チェッカーの開閉動作に対するストップボタンの操作タイミングといった、以上3つの判断要素に基づいて遊技操作のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するようにすれば、極めて高い確率(略100%)で遊技者を識別・特定することが可能である。
【0018】
また、本発明に係る遊技履歴管理システム1は、遊技者識別手段による識別される遊技者情報が、名前や識別番号といった個人を特定し得る個人情報、或いは個人情報に結びつく情報を一切含んでおらず、高い安全性を備えたものである点が着目される。また、顔情報といった個人を特定し得る情報を一切含んでおらず、この点でも安全性に優れた遊技履歴管理システム1を構築できる点が着目される。尤も、実際の管理手段4、遊技者識別手段45では、遊技者情報にID番号等を付して、これを管理することとなるが、当該遊技者情報に係るID番号には、名前や性別や生年月日といった個人情報は一切含まれておらず、また当該ID番号には個人情報に結び付く情報も一切含まれていない。従って、万が一、本発明に係る遊技履歴管理システム1により収集された遊技者情報が履歴情報とともに、漏洩した場合でも、「ある一人の遊技者が、何時から何時まで遊技をし、その際に幾らお金を使って何回大当たりを引き当てた。」といった情報が漏洩するだけであり、特定の個人を特定し得る個人情報が一切漏洩することは無い。
【0019】
また、本発明に係る遊技履歴管理システム1は、会員カードを用いて遊技者を特定するものではないため、会員カードを携帯せずに遊技を行う遊技者についても、その遊技履歴の把握が可能である。従って、遊技場における遊技者全員の遊技履歴をより的確に把握することが可能であり、より正確な遊技者毎の遊技履歴の把握が可能となる。
【0020】
以上のように、本発明によれば、個人情報を取得すること無く、しかも会員カードを携帯していない遊技者についても、その遊技履歴の把握が可能であり、従って、安全性と正確性を兼ね備えた遊技履歴管理システム1を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る遊技履歴管理システムを構成する遊技装置(回胴式遊技機)の正面図である。
【図2】第1実施形態に係る遊技履歴管理システムのブロック構成図である。
【図3】遊技者識別手段による遊技者の識別方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
図1に、本発明を回胴式遊技機(以下、パチスロ機と記す)の遊技履歴管理システムに適用した実施形態を示す。
図2に示すように、この遊技履歴管理システム1は、複数台のパチスロ機(遊技装置、回胴式遊技機)2と、パチスロ機2に組み込まれた遊技者識別装置(遊技者識別手段)45と、これらパチスロ機2と有線LAN3を介して接続された管理用のホールコンピュータ(管理手段)4と、ホールコンピュータ4のハードディスクである記憶装置(遊技履歴情報格納手段)4aと、パチスロ機2に適宜に接続されるデータ取得用のポータブルコンピュータ5とで構成される。
【0023】
図1に示すように、パチスロ機2は、外周面に大当たり図柄(例えば7)を含む複数種類の図柄が記された3本のリール(ドラム)10を回転可能に収納する。リール10が停止したとき、本体11の正面に設けられた表示窓12を介して、上段、中段、下段の計3つの図柄が表示される。パチスロ機2の前面左方には、内部抽選の結果、ボーナスが内部当選した状態を遊技者に報知するための告知ランプ13、ゲームが開始されたことを知らせるためのスタートランプ14、絵柄の組合せがリプレイ役に入賞したときに、遊技者へ次のゲームがリプレイ遊技であることを知らせるためのリプレイランプ15、遊技開始のためのメダルの投入を遊技者に促すためのウエイトランプ16などが設けられている。パチスロ機2の前面下方には、遊技者が獲得して貯留されているメダル枚数を表示するためのクレジット表示機17が設けられている。表示窓12を囲むように、本体11の正面には液晶画面18が配置されており、この液晶画面18に、例えば、大当たり演出、リーチ演出が表示される。
【0024】
また、パチスロ機2の前面には、貯留されているメダル(クレジットメダル)からメダルの投入を行うためのクレジットベットボタン(ベットボタン)20、貯留されているメダルを払い出すための清算ボタン21、遊技を開始して、各リール10を回転させるためのスタートレバー22、リール10を停止させるためのストップボタン23、メダルを投入するためのメダル投入口24などが配置されている。なお、多くの場合は、ベットボタン20は、それを一回押圧操作するだけで、最大のメダル賭け数が投入される、所謂マックスベットボタンとなっている。ストップボタン23は、各リール10に対応して設けられており、左、中、右の計三つのボタン(23a・23b・23c)で構成される。パチスロ機2の前面下方には、入賞時にメダルを払い出すためのメダル払出口25が設けられている。
【0025】
図2に示すごとく、パチスロ機2は、該パチスロ機2の全体を制御するメイン基板30と、メイン基板30からの制御信号を受けて、液晶画面18を制御するビデオカード31と、スピーカ32から出音される音声を制御するサウンドカード33と、特定図柄が揃ったとき、或いは大当たり状態に至ったときなどに、メダルを払い出すための払出装置34を制御する制御回路35と、パチスロ機2の前面に配設された各種ランプ13〜16を制御するランプ制御装置36などを備える。
【0026】
メイン基板30は、ゲームプログラム、遊技音データ、画像データなどが格納されるRОM(Read Only Memory)37と、該RОM37に格納のゲームプログラムに基づいてパチスロ機2を制御し、所定の条件下で当たり信号を発生する中央制御装置38と、プログラムの実行領域となるRAM(Random Access Memory)39などを備える。中央制御装置38は、クレジットベットボタン20、スタートレバー22、ストップボタン23から操作信号を受ける信号の入力機能と、ビデオカード31、サウンドカード33、ランプ制御装置36、或いは払出装置34の制御回路35に向けて制御信号を送信する信号の出力機能とを備えている。符号41は、リール10を制御するためのリール制御装置を示す。
【0027】
パチスロ機2の中央制御装置38は、遊技履歴に関する情報を、パチスロ機2の上方に設置されたデータ表示装置40に向けて送信する。この遊技履歴情報は、データ表示装置40、およびLAN3を介してホールコンピュータ4に送信される。かかる遊技履歴情報は、ビッグボーナス、レギュラーボーナスといった大当たりに関する情報、大当たりに至るまでのゲーム回数に関する情報などが含まれる。また、パチスロ機2の側方に付設されたメダル貸出機(不図示)からのメダルの貸し出し情報もホールコンピュータ4に送信される。以上より、ホールコンピュータ4には、各パチスロ機2がどの程度メダルを払い出したか、各パチスロ機2に付設のメダル貸出機が幾らメダルを貸し出したかといった情報(いわゆる「差玉情報」)等の遊技履歴情報がリアルタイムに収集される。ホールコンピュータ4は、遊技履歴情報を受け取るたびに、これに計時的情報を付して、これを自身のハードディスク4aに保存する。すなわち、例えば、パチスロ機2からビッグボーナスに至った旨の遊技履歴情報が送られてきたときには、かかる遊技履歴情報に、ビッグボーナスに至った時・分・秒を示す計時的情報を付して、これをハードディスク4aに保存する。尤も、パチスロ機2のゲーム数および1分間のゲーム数の上限値から算出される遊技時間を計時的情報としてハードディスク4aに保存してもよい。
【0028】
そのうえで、本実施形態においては、各パチスロ機2に遊技者のクセに基づいて遊技者を識別するための遊技者識別装置(遊技者識別手段)45を設けた点が着目される。この遊技者識別装置45は、パチスロ機2の筐体内部に組み付けられるものであり、中央制御装置38から送られてきたクレジットベットボタン20、スタートレバー22、およびストップボタン23などの操作信号に基づいて遊技者を識別するための制御部46と、該制御部46により識別された遊技者情報を格納する記憶部(遊技者情報格納手段)47と、接続コード48を接続するための接続端子49とで構成される。制御部46は、中央処理装置(CPU)と、プログラム格納用のROMと、プログラム実行用のRAMのほかに、タイマーを備えるマイクロコントローラであり、ROMに格納されているプログラムに基づいて遊技者を識別し、得られた遊技者情報をタイマーの計時的情報とともに記憶部47に格納する。
【0029】
記憶部47は不揮発性メモリである。接続端子49は、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格の接続端子であり、接続コード48が接続端子49に差し込まれることで、遊技者識別装置45とポータブルコンピュータ5とは電気的に接続される。かかる接続状態において、ポータブルコンピュータ5からの送信信号を受けると、制御部46は、接続コード48を介して記憶部47内に格納されている遊技者情報をポータブルコンピュータ5に向けて送信する。ポータブルコンピュータ5は、遊技者識別装置45から遊技者情報を受けると、これをコンピュータ5内のハードディスクの所定のホルダ内に格納する。
【0030】
図3を使って、遊技者の識別方法について説明する。図3に、パチスロ機2の基本動作を示す。待機状態(S1)において、貯蓄メダルが無い状態(S2でNO)から、遊技者により、メダル投入口24にメダルが投入される(S3)と、中央制御装置38は、メダルの投入枚数に応じたライン数を示すラインランプ19を点灯させて、ベット枚数に応じたゲームが可能な状態とする(S4)。貯蓄メダルがある場合には(S2でYES)、遊技者によりベットボタン20が押圧操作される(S5)と、ベットボタン20の押圧回数、すなわち、メダルのベット枚数に応じたライン数を示すラインランプ19を点灯させて、ベット枚数に応じたゲームが可能な状態とする(S4)。例えば、3枚のメダルが投入されたとき、或いは3回以上ベットボタン20が押圧されたときは、3つのラインに係るラインランプ19を点灯させる。
【0031】
この状態から、遊技者により、スタートレバー22が押圧操作されると(S6)、中央制御装置38は、リール制御装置41を介して各リール10を回転させる。次に、遊技者により、ストップボタン23(23a〜23c)が押圧操作されると(S7)、中央制御装置38は、各ストップボタン23a〜23cに対応するリール10を停止させる。このとき、当たり図柄がライン上に揃った場合には(S8でYES)、当たり図柄に応じたメダル枚数を貯蓄メダルとしてクレジットし、S2に戻る。尤も、当たり図柄に応じたメダルをメダル払出口25から払い出してもよい。リプレイ図柄がライン上に揃った場合には(S8でNO、S9でYES)、S4に戻るとともに、リプレイランプ15を点灯させる。
【0032】
S2からS9に至る一連のゲームを繰り返し、ビッグボーナスやレギュラーボーナスなどの大当たり図柄が揃うと、遊技者は大量のメダルを得ることができる。以上のように、遊技者は、メダルの投入操作、或いはベットボタン20の押圧操作といったベット操作と、スタートレバー21の押圧操作と、ストップボタン23の押圧操作という、計三つの操作を行って、ビッグボーナスやレギュラーボーナスなどの大当たり図柄が揃うことを目指して、ゲームを進行させる。
【0033】
遊技者識別装置45は、以上のような各遊技者の三つの操作から、各遊技者のクセを見出して遊技者を識別する。具体的には、以下のような一又は二以上の要素を判別要素として、遊技者のクセを特定して、遊技者を識別する。
【0034】
(判別要素1)
前回のゲーム終了後から次回ゲームにおけるベットボタン20を押圧操作するまでの操作タイミング。
すなわち、前回のゲームが終了してから、ベットボタン20を押圧操作するまで、或いはベット操作の押圧操作が完了するまでの操作タイミングは、遊技者によって長短が見られる。従って、これを捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0035】
(判別要素2)
ベットボタン20を押圧操作してからスタートレバー22を押圧操作するまでの操作タイミング。
多くの場合、遊技者は、三つのラインを使って遊技を行う。すなわち、通常は3枚のメダルを賭けて一回のゲームを行うものであり、遊技者は、一回のゲームにおいて、ベットボタン20を三回押圧操作する、或いはマックスベットボタンがある場合には、これを一回押圧操作する。また、以上のようにベットボタン20を押圧操作したのちに、スタートレバー22を押圧操作して、リール10を回転させる。ベットボタン20の押圧操作が完了したのちにスタートレバー22を押圧操作するまでの操作タイミングは、遊技者によって長短がある。従って、これを捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0036】
(判別要素3)
スタートレバー22を押圧操作してからストップボタン23を押圧操作するまでの操作タイミング。
すなわち、スタートレバー22の押圧操作が完了したのちにストップボタン23を押圧操作するまでの操作タイミングは、遊技者によって長短がある。従って、これを捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0037】
(判別要素4)
複数個のストップボタン23(23a〜23c)に対する押圧操作の順番。
すなわち、ストップボタン23の押圧手順には、左→中央→右の順にストップボタン(23a→23b→23c)を押圧操作する所謂「順押し」と称される手順のほか、右→中央→左の順にストップボタン(23c→23b→23a)を押圧操作する「逆押し」と称される手順や、左→右→中央の順にストップボタン(23a→23c→23b)を押圧操作する「挟み押し」と称される手順がある。従って、遊技者のストップボタン23の押圧手順を捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。具体的には、数10から数100ゲームの全押圧手順に占める「順押し」「逆押し」「挟み押し」のそれぞれの手順の割合を捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0038】
(判別要素5)
一回のゲームにおけるベットボタン20及び/又はスタートレバー22の押圧回数。
すなわち、一回のゲームにおけるベットボタン20の押圧操作は、通常は3回で済むものであり、また、マックスベットボタン20を備える機種では、一回のゲームにおけるベットボタン20の押圧操作は一回で済むものである。また、一回のゲームにおけるスタートレバー22の押圧操作は、一回で済むものである。しかしながら、遊技者によっては、これらベットボタン20、或いはスタートレバー22を必要以上に何度も押圧操作するものもいる。従って、これら一回のゲームにおけるベットボタン20及び/又はスタートレバー22の押圧回数を捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0039】
(判別要素6)
ストップボタン23を押圧操作する際の目押しの有無。
各ゲームにおいて、特定の図柄(例えば、チェリー図柄)を狙って、ストップボタン23を押圧操作することは「目押し」と称される。かかる目押しを行うか否かは遊技者の特徴的なクセであるため、目押しの有無を捉えることで、遊技者を識別することができる。
【0040】
(判別要素7)
ベットボタン20、スタートレバー22、ストップボタン23の押圧力。
遊技者によっては、必要以上にベットボタン20等を強く押圧する者がいる。従って、ベットボタン20等に押圧力を捉えるセンサを設けて、これを検知すれば、各遊技者の押圧力を捉えることができるので、遊技者を識別することができる。
【0041】
遊技者識別装置45の制御部46は、以上のような判別要素に基づいて、遊技者を識別し、これを計時的情報とともに、記憶部47に格納する。具体的には、遊技者毎に識別番号を付して、かかる識別番号を記憶部47に格納するとともに、この識別番号で特定される遊技者が、パチスロ機2で遊技を開始した時間と、遊技を終了した時間を記憶部47に格納する。尤も、パチスロ機2のゲーム数および1分間のゲーム数の上限値から算出される遊技時間を計時的情報として記憶部47に格納してもよい。
【0042】
遊技場の担当者は、例えば、一日の営業が終了すると、各パチスロ機2の遊技者識別装置45から遊技者情報を収集する。具体的には、遊技者識別装置45とポータブルコンピュータ5とを接続して、遊技者情報を収集する。尤も、無線通信により、遊技者識別装置45とポータブルコンピュータ5とを接続して、遊技者情報を収集してもよい。次に、遊技場の担当者は、ポータブルコンピュータ5に収集された遊技者情報と、ホールコンピュータ4のハードディスク4aに蓄積されている各パチスロ機2の遊技履歴情報とを対比する。これにより、遊技場の担当者は、遊技者毎の遊技履歴を知ることができる。すなわち、両情報に対して、両情報に付された計時的情報に基づく対比処理を行うことにより、ある特定の遊技者が、遊技したパチスロ機2で何回大当たりを引き当てたかということ、或いは幾らお金を使ったかといったことなどを知ることができる。遊技者が台移動したときにも、各パチスロ機2における遊技履歴を知ることができる。
【0043】
上記実施形態では、パチスロ機を例にして本システムを説明したが、遊技装置はパチンコ機であってもよい。かかる場合には、遊技者識別装置は、以下の一又は二以上の判別要素に基づいて、遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別する。
【0044】
(判別要素1)
発射ハンドルの回動操作具合による発射装置からの発射強度。
パチンコ機には、遊技球の発射装置による発射強度を調整するための発射ハンドルが、筐体の前面に設けられており、遊技者が、かかる発射ハンドルの回転操作量を調整することで、発射装置による遊技球の発射強度に強弱を付けることができる。遊技球の発射強度は、発射ハンドルの回転操作具合によって左右されるものであるため、発射ハンドルの回動操作具合に由来する発射装置からの発射強度を捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0045】
(判別要素2)
発射ハンドルの操作タイミング、ストップボタンの操作タイミング。
例えば、リーチ図柄が揃ったときに、遊技球の発射を停止するか否かということは、遊技者により異なる。また、発射ハンドルから手を離すことで遊技球の発射を停止させる遊技者もいれば、ストップボタンを押すことで遊技球の発射を停止させる遊技者もいる。さらに、停止後の遊技球の再発射のタイミングも遊技者により異なるものである。従って、発射ハンドルの操作タイミング、ストップボタンの操作タイミングを捉えることで、遊技者のクセを特定し、遊技者を識別することができる。
【0046】
管理手段4はホールコンピュータである必要は無く、他のコンピュータであってもよい。さらに、遊技装置2内に、遊技者識別手段45、遊技履歴情報格納手段4a、遊技者情報格納手段47、および管理手段4を備えた専用の装置が設けられており、遊技場の営業終了後に、当該装置から、これら情報を抽出する形態としてもよい。また、遊技者識別装置45に接続されるデータ取得装置5は、ポータブルコンピュータである必要は無く、専用の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 遊技履歴管理システム
2 遊技装置(回胴式遊技機、パチスロ機)
4 管理手段(ホールコンピュータ)
4a 遊技履歴情報格納手段(ホールコンピュータの記憶装置(ハードディスク))
45 遊技者識別手段(遊技者識別装置)
47 遊技者情報格納手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技装置(2)の遊技者を特定することにより、遊技者毎の遊技履歴を管理するための遊技履歴管理システムであって、
遊技装置(2)と、
遊技装置(2)毎に設けられて、遊技者の遊技装置(2)に対する遊技操作のクセに基づいて、遊技者を識別する遊技者識別手段(45)と、
遊技装置(2)の遊技履歴情報が計時的情報とともに格納される遊技履歴情報格納手段(4a)と、
前記遊技者識別手段(45)により識別された遊技者情報が、計時的情報とともに格納される遊技者情報格納手段(47)と、
前記遊技履歴情報格納手段(4a)および前記遊技者情報格納手段(47)から収集された両情報に対して、両情報に付された計時的情報に基づく対比処理を行うことにより、遊技者毎の遊技履歴を導出する管理手段(4)と、
を有することを特徴とする遊技履歴管理システム。
【請求項2】
前記遊技装置(2)は、複数個のドラム(10)を備えた回胴式遊技機であって、賭けメダルの枚数を入力するためのベットボタン(20)と、全ドラム(10)を回転させるためのスタートレバー(22)と、各ドラム(10)を停止させるための複数個のストップボタン(23)とを備え、遊技者がこれらベットボタン(20)、スタートレバー(22)、およびストップボタン(23)を順に操作することで、一回のゲームが実行されるようになっており、
前記遊技者識別手段(45)が、これらベットボタン(20)、スタートレバー(22)、およびストップボタン(23)の操作タイミングを判断要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものである、請求項1記載の遊技履歴管理システム。
【請求項3】
前記遊技装置(2)は、複数個のドラム(10)を備えた回胴式遊技機であって、賭けメダルの枚数を入力するためのベットボタン(20)と、全ドラム(10)を回転させるためのスタートレバー(22)と、各ドラム(10)を停止させるための複数個のストップボタン(23)とを備え、遊技者がこれらベットボタン(20)、スタートレバー(22)、およびストップボタン(23)を順に操作することで、一回のゲームが実行されるようになっており、
前記遊技者識別手段(45)が、前回のゲーム終了後から次回ゲームにおけるベットボタン(20)を押圧操作するまでの操作タイミング、ベットボタン(20)を押圧操作してからスタートレバー(22)を押圧操作するまでの操作タイミング、スタートレバー(22)を押圧操作してからストップボタン(23)を押圧操作するまでの操作タイミング、複数個のストップボタン(23)に対する押圧操作の順番、一回のゲームにおけるベットボタン(20)及び/又はスタートレバー(22)の押圧回数、ストップボタン(23)を押圧操作する際の目押しの有無、およびベットボタン(20)、スタートレバー(22)、ストップボタン(23)の押圧力、から選択される一又は二以上の操作要素を判別要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものである、請求項1記載の遊技履歴管理システム。
【請求項4】
前記遊技装置(2)はパチンコ機であって、遊技球の発射装置による発射強度を調整するための発射ハンドルと、該発射装置による遊技球の発射動作を一時的に停止するためのストップボタンとを備え、
前記遊技者識別手段(45)が、発射ハンドルの回動操作具合による発射装置からの発射強度、発射ハンドルの操作タイミング、ストップボタンの操作タイミングから選択される一又は二以上の操作要素を判別要素として遊技者のクセを特定し、このクセに基づいて遊技者を識別するものである、請求項1記載の遊技履歴管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−165922(P2012−165922A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30148(P2011−30148)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(504410837)株式会社アタリ (5)
【Fターム(参考)】