説明

遊星歯車装置

【課題】ピニオンシャフトに軸方向中央部から外れた荷重が入力されても転がり軸受の接触不良を招くようなピニオンシャフトの撓みを確実に抑制できる低コストの遊星歯車装置を提供する。
【解決手段】ロングピニオンギヤ12と、これに噛合するサンギヤ11と、ピニオンシャフト14Fおよびキャリア本体15cを有するキャリア15と、ピニオンギヤ12とピニオンシャフト14Fの間に介装された転がり軸受18とを備えた遊星歯車装置において、ピニオンギヤ12のサンギヤ11との噛合位置がピニオンシャフト14Fの一端側部分14aに設定されるとともに、ピニオンシャフト14Fのキャリア本体15cへの固定部の近傍に、ピニオンシャフト14Fが軸直角方向の力を入力するときにその入力による最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位をピニオンシャフト14Fに生じさせる弾性部材21a,21bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関し、特にピニオンとピニオンシャフトの間に介装される転がり軸受が複数の略円柱状の転動部材で構成される遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置においては、サンギヤの周りに配された複数のピニオンギヤがキャリアに自転可能に支持されるとともに、そのキャリアがサンギヤまたはリングギヤに対し相対回転することでピニオンギヤが公転するようになっており、そのピニオンギヤは、キャリアに固定されたピニオンシャフトに転がり軸受を介して自転可能に支持されているのが一般的である。
【0003】
また、車両に搭載される有段の自動変速機においては、多段化の要求に応え得るコンパクトな遊星歯車装置とするために、前記転がり軸受としてニードル軸受を用いるものが多い。
【0004】
従来のこの種の遊星歯車装置としては、例えばピニオンシャフトがピニオンからの荷重を受けて外側に撓んでもそのとき荷重を担持する内側の部分でピニオンシャフトがニードル軸受に極力全面当たりするように、ピニオンシャフトの端部側の外径をその中央側の外径より小さくして、長寿命化を図ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−172189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来の遊星歯車装置にあっては、多段でかつ小型の自動変速機を実現すべく複式遊星歯車構成とする場合、例えば前後段のピニオンギヤを同一のキャリアに支持させるラビニヨ型の遊星歯車装置(Ravigneaux-type planetary gear)とするような場合に、次のような問題があった。
【0007】
すなわち、ラビニヨ型の遊星歯車装置では、前後段の遊星歯車を貫通する軸長の大きいピニオンシャフトが使用され、その中央部分ではなく一端側部分または他端側部分に変速状態や回転速度に応じた荷重が入力されるため、上述の従来例のように単にピニオンシャフトの中央部より端部側を細くするものでは、ピニオンシャフトとニードル軸受を全面当たり状態とすることが困難になっていた。
【0008】
そのため、ピニオンギヤの噛合い反力や遠心力が転がり軸受を介してピニオンシャフトに作用し、ピニオンシャフトに撓みが生じるとき、ピニオンシャフトと転がり軸受の間で損失トルク(ニードルと保持器の片当たりやニードルとピニオンシャフトの片当たり等の接触不良による回転抵抗)が増加してしまい、遊星歯車装置の動力伝達効率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
また、ピニオンシャフトの加工がストレートの円柱状とする場合のように容易でなく、その形状精度を管理するのも面倒であるため、ピニオンシャフトの加工精度を高めることが容易でないばかりか、遊星歯車装置のコスト高を招いてしまうという問題もあった。
【0010】
本発明は、上述のような問題を解消するためになされたもので、軸長の大きいピニオンシャフトの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、転がり軸受の片当たり等の接触不良を招くようなピニオンシャフトの撓みを確実に抑制することのできる低コストの遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る遊星歯車装置は、上記目的達成のため、(1)中空のピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛合する少なくとも1つのギヤと、前記ピニオンギヤを自転可能に支持するピニオンシャフトおよび該ピニオンシャフトを両持ち支持するキャリア本体を有し、前記少なくとも1つのギヤに対して前記ピニオンギヤを公転させることができるキャリアと、前記ピニオンギヤと前記ピニオンシャフトの間に介装された複数の略円柱状の転動要素を有する転がり軸受と、を備えた遊星歯車装置において、前記ピニオンギヤの前記少なくとも1つのギヤとの噛合位置が前記ピニオンシャフトの軸方向の一端側部分に設定されるとともに、前記ピニオンシャフトの前記キャリア本体への固定部の近傍に、前記ピニオンシャフトが軸直角方向の力を入力するときに該入力による前記ピニオンシャフトの最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位を前記ピニオンシャフトに生じさせる弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、ピニオンシャフトに軸直角方向の力が入力されるとき、その入力による弾性部材の弾性変形によって、ピニオンシャフトの最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位がピニオンシャフトに生じ、ピニオンシャフトの撓みが抑えられる。したがって、軸長の大きいピニオンシャフトの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、転がり軸受の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフトの撓みが確実に抑制されることになり、損失トルクの低減によって遊星歯車装置の動力伝達効率が向上する。また、ピニオンシャフトの加工および寸法管理が容易化されるので、従来のようなコスト高を招くこともない。
【0013】
なお、ここでピニオンシャフトのキャリア本体への固定部の近傍とは、ピニオンシャフトのキャリア本体への固定部のみならず、その固定部に隣接するキャリア本体側のシャフト嵌合穴部や、その固定部とシャフト嵌合穴部の間を含む意である。また、弾性部材は、その固定部やシャフト嵌合穴部に一体化されて設けられてもよい。
【0014】
本発明の遊星歯車装置では、(2)前記ピニオンシャフトが軸直角方向の力を入力するときの前記ピニオンシャフトの最大撓み量に対し、予め設定された弾性変形量の許容範囲内で前記弾性部材の弾性変形量が2倍以上大きくなるように、前記ピニオンシャフトの曲げ剛性および前記軸直角方向の力に対する前記弾性部材の弾性係数が設定されていることが好ましい。
【0015】
この構成により、ピニオンシャフトに軸直角方向の力が入力されるとき、弾性部材の弾性変形量の許容範囲内では、弾性部材の弾性変形量がピニオンシャフトの最大撓み量に対し2倍以上、例えば数倍大きくなる。したがって、転がり軸受の片当たり等の接触不良を招いてしまう程度のピニオンシャフトの撓みが確実に抑制される。しかも、弾性部材の弾性変形量の許容範囲を規定する最大の変形量を適宜設定することで、転がり軸受の片当たり等の接触不良を抑えながらも、ピニオンギヤの他ギヤとの噛合い状態に悪影響を及ぼすほどに大きなピニオンギヤの位置ずれが生じることもない。なお、最大変形量までは弾性部材の弾性係数が小さく、最大変形量を超えると弾性部材の弾性係数が大きくなるように非線形の弾性係数を設定したり、キャリア本体によりピニオンシャフトのキャリア本体に対する位置ずれを弾性部材の最大変形量に相当する位置ずれまでの範囲内に規制したりすることで、その弾性部材の最大変形量を適宜設定することができる。
【0016】
また、上記(1)または(2)の構成を有する遊星歯車装置では、(3)前記少なくとも1つのギヤが、前記ピニオンギヤの軸方向の一端側部分に噛合する第1のサンギヤまたは第1のリングギヤを含み、前記ピニオンギヤの軸方向の他端側部分には、第2のリングギヤまたは第2のサンギヤが噛合していることが好ましい。
【0017】
この構成により、ピニオンシャフトには軸方向の中央部から外れた位置にピニオンギヤからの噛合い反力や公転による遠心力等の荷重が入力され、その部分に最大撓みが生じ得ることになるが、ピニオンシャフトの最大撓みよりもピニオンシャフトの両端部の軸直角方向への変位が大きくなることで、ピニオンシャフトの最大撓み量が抑えられる。
【0018】
さらに、上記(3)の構成を有する遊星歯車装置では、(4)前記少なくとも1つのギヤが、前記ピニオンギヤの軸方向の一端側部分に噛合する第1のサンギヤを含み、前記ピニオンギヤの軸方向の他端側部分には、前記ピニオンギヤより軸長が短いショートピニオンギヤと第2のリングギヤとがそれぞれ噛合し、前記キャリアが、前記ピニオンシャフトに対し平行に離間する追加のピニオンシャフトを有し、前記ショートピニオンギヤが、複数の略円柱状の転動要素を有する追加の転がり軸受を介して前記追加のピニオンシャフトに自転可能に支持されているのが好ましい。
【0019】
この構成により、有段の自動変速機の多段化と小型化に好適で、転がり軸受部分での損失トルクを抑えた伝達効率の高い遊星歯車装置を提供できることになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸長の大きいピニオンシャフトの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、ピニオンシャフトとキャリア本体の間の弾性部材によってピニオンシャフトと転がり軸受の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフトの撓みを確実に抑制するようにしているので、損失トルクの低減によって伝達効率を向上させることができ、しかも、ピニオンシャフトの加工および寸法管理を容易化した低コストの遊星歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置の要部の半断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置の要部の概略斜視図である。
【図3】図2のIII方向矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置を備えた車両用の自動変速機の概略構成図である。
【図5】図4に示す自動変速機の全体構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置の作用説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置の要部の半断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置の要部の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1〜図5に、本発明の第1実施形態に係る遊星歯車装置およびこれを備えた車両用の自動変速機を示している。
【0024】
本実施形態の遊星歯車装置10は、図4および図5に示す自動変速機1に組み込まれるものであり、自動変速機1は、例えば6速のオートマチックトランスアクスルとして構成されている。また、遊星歯車装置10は、自動変速機1をコンパクト化するためにラビニヨ式の構成となっている。
【0025】
自動変速機1は、図外のエンジンからトルクコンバータ2を介してインプットシャフト3に入力される動力を、クラッチC1,C2やブレーキB1,B2,B3の作動状態に応じて遊星歯車装置10,50に伝達することで、公知の変速動作を行うものである。そして、遊星歯車装置10からの回転出力に応動するカウンタードライブギヤ5、カウンタードリブンギヤ6およびディファレンシャルドライブピニオン7を介してディファレンシャルギヤ8に動力を伝達し、左右のドライブシャフト9a,9bを駆動するようになっている。
【0026】
遊星歯車装置10は、図1〜図3にその要部を示すように、自動変速機1をコンパクト化するためにラビニヨ式の構成となっており、その中心部を貫通するインターミディエイトシャフト4(図4、図5参照)とクラッチC1とを介してインプットシャフト3からの動力を入力するときに回転する第1のサンギヤ11と、この第1のサンギヤ11の周りに周方向等間隔に配された互いに平行な複数、例えば3本の中空のロングピニオンギヤ12(ピニオンギヤ)と、これら複数のロングピニオンギヤ12の外歯12tに噛合する内歯13tを有する第2のリングギヤ13と、ロングピニオンギヤ12をそれぞれ自転可能に支持する複数(例えば3本または4本)のピニオンシャフト14Fおよびこれらピニオンシャフト14Fを両持ち支持(両端固定状態で支持)するキャリア本体15cを有し、ロングピニオンギヤ12に噛合する第1のサンギヤ11または第2のリングギヤ13(少なくとも1つのギヤ)に対してロングピニオンギヤ12を公転(公転方向に相対回転)させることができるキャリア15と、を備えている。
【0027】
ここで、第2のリングギヤ13は、インターミディエイトシャフト4とクラッチC2とを介してインプットシャフト3からの動力を入力するときにはワンウェイクラッチF1の回転許容方向に回転し、一方、ブレーキB2を介して自動変速機1のケース1c側から制動されるときには停止できるようになっている。
【0028】
第1のサンギヤ11は、ロングピニオンギヤ12の軸方向の一端側部分12aに噛合しており、第2のリングギヤ13は、ロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bに噛合している。すなわち、ロングピニオンギヤ12の第1のサンギヤ11との噛合位置はピニオンシャフト14Fの軸方向の中央より一端側に位置する一端側部分14aの範囲内に設定されており、ロングピニオンギヤ12の第2のリングギヤ13との噛合位置はピニオンシャフト14Fの軸方向の中央より他端側に位置する他端側部分14bの範囲内に設定されている。
【0029】
図2、図3に示すように、複数のロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bには、ロングピニオンギヤ12より軸長が短いショートピニオンギヤ17が第2のリングギヤ13とは別にそれぞれ噛合しており、キャリア15には、これら複数のショートピニオンギヤ17を支持するようピニオンシャフト14Fに対し平行に離間する追加のピニオンシャフト14Sが設けられている。ここで、追加のピニオンシャフト14Sは、ピニオンシャフト14Fと同一形状のもので、キャリア15のキャリア本体15cに対してピニオンシャフト14Fと同様に支持されるものとするが、必ずしも同一の形状や支持形態である必要はない。
【0030】
なお、ロングピニオンギヤ12の一端側部分12aに形成される複数の外歯と他端側部分12bに形成される複数の外歯は互いに相違する形状であってもよいし、互いに同一の形状であってもよい。また、図2に示すように、一端側部分12aと他端側部分12bの間にロングピニオンギヤ12の外歯12tの歯丈程度の深さの切欠き12cが形成されてもよい。
【0031】
遊星歯車装置10は、さらに、ロングピニオンギヤ12とピニオンシャフト14Fとの間に介装された複数の略円柱状の転動部材18a(複数の転動要素)および保持器18bを有する複列配置の転がり軸受18と、ショートピニオンギヤ17と追加のピニオンシャフト14Sとの間に介装された複数の略円柱状の転動部材19a(複数の転動要素)および保持器(図示せず)を有する複列配置の追加の転がり軸受19と、を備えている。すなわち、ロングピニオンギヤ12は、転がり軸受18を介してキャリア15のピニオンシャフト14Fに自転可能に支持され、ショートピニオンギヤ17は、追加の転がり軸受19を介してキャリア15の追加のピニオンシャフト14Sに自転可能に支持されている。
【0032】
転がり軸受18および追加の転がり軸受19の転動部材18a,19aは、それぞれ軸受金属素材からなる硬質のもので、高精度の円筒状の外周転動面形状を有している。また、各ピニオンシャフト14F,14Sは、転動部材18a,19aと同等な硬度の軸受金属素材からなり、少なくともその一端側部分14aおよび他端側部分14bのうち転動部材18a,19aが転動する外周部分の全域に高周波焼入れ処理が施されている。
【0033】
一方、ピニオンシャフト14Fの一端側部分14aおよび他端側部分14bのキャリア本体15c側への固定部の近傍には、それぞれ略長方形断面の環状の弾性部材21a,21bが設けられている。また、追加のピニオンシャフト14Sの一端側部分14a´および他端側部分14b´(図2参照)のキャリア本体15c側への固定部の近傍にも、それぞれ略長方形断面の環状の弾性部材21a,21bが設けられている。なお、ここで、環状の弾性部材21a,21bが略長方形断面を有するのは、ピニオンシャフト14Fの軸方向荷重を担持するのに十分な軸方向の厚みを持たせるためであり、他の手段によりピニオンシャフト14Fの軸方向荷重を担持できれば、弾性部材21a,21bを軸方向に厚い断面形状にする必要はない。
【0034】
弾性部材21a,21bは、形状的には、例えばピニオンシャフト14F(あるいは追加のピニオンシャフト14S)の両端部を構成するように、ピニオンシャフト14Fの円筒状の軸受転動面14rと略同一の外径に形成され、ピニオンシャフト14Fの両端側の円柱状の突出部14p1,14p2に嵌着もしくは固着されている。
【0035】
これら一対の弾性部材21a,21bは、それぞれ例えば硬質のゴム弾性体あるいはばね用金属からなり、ピニオンシャフト14Fがロングピニオンギヤ12側からの軸直角方向の力(噛合い反力や公転による遠心力等の荷重)を入力するときに、部分的に圧縮されることで、その入力によるピニオンシャフト14Fの最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位をピニオンシャフト14Fに生じさせることができるように、その弾性係数が設定されている。
【0036】
また、一対の弾性部材21a,21bは、ピニオンシャフト14Fがロングピニオンギヤ12側からの軸直角方向の力を入力するときのピニオンシャフト14Fの最大撓み量に対し、予め設定された弾性変形量の許容範囲内で弾性部材21a,21bの弾性変形量が大きくなるように、例えば2倍以上、より好ましくは数倍大きくなるように、ピニオンシャフト14Fの曲げ剛性と軸直角方向の力に対する弾性部材21a,21bの弾性係数とがそれぞれ設定されている。
【0037】
具体的には、各弾性部材21a,21bは、ピニオンシャフト14Fからの荷重入力によるその部分的な弾性圧縮量が予め設定された最大変形量に達するまではその弾性係数が小さく、その部分的な弾性圧縮量が予め設定された最大変形量を超えるとその弾性係数が大きくなるように、非線形の弾性係数が設定されている。
【0038】
ここにいう各弾性部材21a,21bの最大変形量は、各弾性部材21a,21bの部分的な圧縮による弾性変形量の許容範囲を規定する最大の変形量であり、例えば10数マイクロメートル(以下、μmと記す)程度に設定されている。そして、ピニオンシャフト14Fの最大撓み量は、各弾性部材21a,21bの最大変形量の半分あるいは数分の一、例えば5μm程度以下に設定されている。
【0039】
図4、図5に示す遊星歯車装置50は、増速用の単段式のもので、インプットシャフト3に入力される動力を入力する第3のサンギヤ51と、この第3のサンギヤ51の周りに周方向等間隔に配された互いに平行な複数、例えば一対の中空の第3のピニオンギヤ52と、これら第3のピニオンギヤ52に噛合する第3のリングギヤ53と、第3のピニオンギヤ52をそれぞれ自転可能に支持する複数のピニオンシャフト54(図中に1つのみ図示)およびこれらピニオンシャフト54を両持ち支持するキャリア本体(符号なし)を有し、第3のピニオンギヤ52に噛合する第3のサンギヤ51または第3のリングギヤ53に対して第3のピニオンギヤ52を公転させることができるキャリア55と、を備えている。
【0040】
ここで、第3のリングギヤ53はブレーキB3を介して選択的に自動変速機1のケース1c側から制動され、キャリア55は、ブレーキB1を介して選択的に自動変速機1のケース1c側から制動されるようになっている。
【0041】
次に、クラッチC1,C2やブレーキB1〜B3の作動について簡単に説明する。
【0042】
まず、1速目の変速段では、例えばクラッチC1、ワンウェイクラッチF1およびブレーキB2が作動し、第2のリングギヤ13の制動状態でクラッチC1を介して第1のサンギヤ11にエンジンからの動力が伝達されると、キャリア15の減速回転に応じてカウンタドライブギヤ5が回転するようになっている。
【0043】
また、2速目の変速段では、例えばクラッチC1およびブレーキB1が作動し、ショートピニオンギヤ17に噛合する第2のサンギヤ16の自転および第3のピニオンギヤ52の公転が制動される状態でクラッチC1を介して第1のサンギヤ11にエンジンからの動力が伝達されると、第2のリングギヤ13の回転に応じてキャリア15が減速回転してカウンタドライブギヤ5が回転する。さらに、3速目の変速段では、例えば2速目で作動するブレーキB1に代えてブレーキB3が作動し、第3のリングギヤ53の制動状態下で第2のサンギヤ16が回転し、第2のリングギヤ13および第2のサンギヤ16の回転に応じてキャリア15が回転するようになっている。
【0044】
4速目の変速段では、例えばクラッチC1,C2が作動し、クラッチC1を介して第1のサンギヤ11に、クラッチC2を介して第2のリングギヤ13にそれぞれエンジンからの動力が伝達され、第2のリングギヤ13および第2のサンギヤ16の回転に応じてキャリア15が回転してカウンタドライブギヤ5が回転する。また、5速目の変速段では、例えばクラッチC2およびブレーキB3が作動し、クラッチC2を介して第2のリングギヤ13にエンジンからの動力が伝達されるとともに、第3のリングギヤ53が制動される状態で、第2のリングギヤ13および第2のサンギヤ16の回転に応じてキャリア15が増速回転してカウンタドライブギヤ5が高速回転する。さらに、6速目の変速段では、例えばクラッチC2およびブレーキB1が作動し、第2のリングギヤ13の制動状態下で、キャリア15が入力回転に応じて高速回転可能となるようになっている。
【0045】
次に、作用について説明する。
【0046】
上述のように構成された本実施形態の遊星歯車装置10では、自動変速機1の上述のような変速状態の変化、あるいは、エンジン側から入力される動力(回転数、伝達トルク等)の変化等に応じて、キャリア本体15cに両持ち支持される梁状のピニオンシャフト14Fや追加のピニオンシャフト14S(以下、単にピニオンシャフト14F,14Sという)に対し、ロングピニオンギヤ12やショートピニオンギヤ17からの噛合い反力や遠心力等といった力が、撓みを生じさせる軸直角方向の荷重として様々な入力位置および大きさで入力されることになる。このときの荷重の入力位置は、軸長の大きいピニオンシャフト14F,14Sの軸方向の中央部から端部側に外れた位置となる。
【0047】
例えば、ある変速段において、ロングピニオンギヤ12は第2のリングギヤ13側から回転トルクを入力しつつ第1のサンギヤ11側から噛合い反力を受け、さらに、その公転に伴う遠心力を生じ、これらの力がピニオンシャフト14Fに作用する。また、ショートピニオンギヤ17はロングピニオンギヤ12および第2のサンギヤ16からの噛合い反力を受けながら、追加のピニオンシャフト14Sの他端側部分に軸直角方向の力を作用させる。
【0048】
このような状態においては、従来であれば、軸長の大きいピニオンシャフト14F,14Sの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されることで、図6(C)に示す比較例のように弾性部材21a,21bを持たないピニオンシャフトの軸方向の中央部から外れた位置に最大撓みδが生じたり、あるいは、図示はしないが、弾性部材21a,21bを持たないピニオンシャフトの撓み曲線が略S字形になるように大きな撓みが複数箇所に生じたりしていた。
【0049】
これに対し、本実施形態においては、図6(A)および図6(B)にそれぞれ仮想線で示すように、荷重(力)の入力時にピニオンシャフト14F,14Sの両端部での弾性部材21a,21bの弾性変形が生じることによって、ピニオンシャフト14F,14Sには、それぞれの最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位が生じ、ピニオンシャフト14F,14Sの撓み(弾性曲げ変形)がそれぞれ抑えられる。
【0050】
したがって、転がり軸受18や追加の転がり軸受19(以下、単に転がり軸受18,19という)の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフト14F,14Sの撓みが確実に抑制されることになり、損失トルクの低減によって遊星歯車装置10の動力伝達効率が向上する。
【0051】
また、ストレートの円柱形状(オイル通路等を持つ中空形状であってもよい)を有するピニオンシャフト14F,14Sの加工および寸法管理が容易化されるので、従来のようなコスト高を招くこともない。
【0052】
しかも、本実施形態においては、ピニオンシャフト14F,14Sが軸直角方向の力を入力するときのピニオンシャフト14F,14Sの最大撓み量δa(図6(B)参照)に対し、予め設定された弾性変形量の許容範囲内で弾性部材21a,21bの弾性変形量δbが2倍以上大きくなるように、ピニオンシャフト14F,14Sの曲げ剛性および軸直角方向の加重にする弾性部材21a,21bの弾性係数が設定されているので、転がり軸受18,19の片当たり等の接触不良を招いてしまう程度のピニオンシャフト14F,14Sの撓みが確実に抑制されることになる。しかも、弾性部材21a,21bの弾性変形量の許容範囲を規定する最大の変形量を適宜設定することで、転がり軸受18,19の片当たり等の接触不良を抑えることができ、ロングピニオンギヤ12やショートピニオンギヤ17に他ギヤとの噛合い状態に悪影響を及ぼすほどに大きな位置ずれが生じることもない。
【0053】
また、ロングピニオンギヤ12の軸方向の一端側部分12aに第1のサンギヤ11が、ロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bに第2のリングギヤ13がそれぞれ噛合し、ショートピニオンギヤ17にロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bと第2のサンギヤ16とが噛合することで、ピニオンシャフト14F,14Sには軸方向の中央部から外れた位置に両ピニオンギヤ12,17からの噛合い反力やその公転による遠心力等の荷重が入力されるが、上述のように、ピニオンシャフト14F,14Sの最大撓みよりもピニオンシャフト14F,14Sの両端部の軸直角方向への変位が大きくなることでピニオンシャフト14F,14Sの最大撓み量が抑えられる。
【0054】
さらに、遊星歯車装置10が第1のサンギヤ11、ロングピニオンギヤ12、第2のリングギヤ13、キャリア15、第2のサンギヤ16、ショートピニオンギヤ17および転がり軸受18、19を有するラビニヨ式の構成となっているので、有段の自動変速機1の多段化および小型化に好適で、転がり軸受18,19部分での損失トルクを抑えた伝達効率の高い遊星歯車装置10を提供できることになる。
【0055】
このように、本実施形態においては、軸長の大きいピニオンシャフト14F,14Sの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、ピニオンシャフト14F,14Sとキャリア本体15cの間の弾性部材21a,21bによってピニオンシャフト14F,14Sと転がり軸受18,19の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフト14F,14Sの撓みを確実に抑制するようにしているので、損失トルクの低減によって動力伝達効率を向上させることができ、しかも、ピニオンシャフト14F,14Sの加工および寸法管理を容易化した低コストの遊星歯車装置10を提供することができるものである。
【0056】
なお、上述の第1実施形態においては、各弾性部材21a,21bは、複数の異種の弾性リングを組み合わせたものであってもよい。例えば、ピニオンシャフト14F,14Sのキャリア本体15cに対する軸直角方向の位置ずれが、1種類の弾性リングの最大変形量に達するとそれより高硬度の弾性リングが圧縮され始めることで、実質的に各弾性部材21a,21bの最大圧縮量が決まるようにすることができる。また、各弾性部材21a,21bは、非線形の弾性係数を有するものに限らず、線形の弾性係数を有するものであってよい。ただし、その場合、ピニオンシャフト14F,14Sのキャリア本体15cに対する軸直角方向の位置ずれを、キャリア本体15c側から弾性部材21a,21bの前記最大変形量に相当する位置ずれまでの範囲内に規制するように、キャリア本体15cのシャフト嵌合穴部の一部をピニオンシャフト14F,14Sに係合可能にするのがよい。いずれにしても、各弾性部材21a,21bの最大変形量を適宜設定することができる。さらに、荷重の入力形態に応じて、弾性部材21a,21bの弾性係数あるいは最大変形量を相違させることも考えられる。
【0057】
(第2実施形態)
図7に、本発明の第2実施形態に係る遊星歯車装置の要部を半断面で示している。
【0058】
なお、本実施形態は、上述の第1実施形態と類似する構成を有するもので、特に、ピニオンシャフトのキャリア側への固定部の近傍に設けられる弾性部材が第1実施形態とは相違するものである。また、図7中において、ロングピニオンギヤは、一端側部分と他端側部分に同一の歯が形成されたものとして図示している。
【0059】
本実施形態では、キャリア35のシャフト嵌合穴部35a,35bに、それぞれ硬質のゴム弾性体またはばね用金属からなる環状の弾性部材41a,41bが装着されており、これらシャフト嵌合穴部35a,35bに例えばピニオンシャフト34F(あるいは図示しない追加のピニオンシャフト)の一端側部分34aおよび他端側部分34bの端部(軸受転動面34rより外端側の部分)がそれぞれ嵌入され、そのピニオンシャフト34Fに転がり軸受18を介してロングピニオンギヤ12が(あるいは、追加のピニオンシャフトに転がり軸受19を介してショートピニオンギヤ17が)自転可能に支持されている。
【0060】
また、ピニオンシャフト34Fのキャリア本体35cに対する軸直角方向の位置ずれが、キャリア本体35c側から弾性部材41a,41bの最大変形量に相当する位置ずれまでの範囲内に規制するように、キャリア本体35cのシャフト嵌合穴部35a,35bの環状凸部35e,35fがピニオンシャフト34Fに係合可能になっている。
【0061】
本実施形態においても、軸長の大きいピニオンシャフト34F等の軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、ピニオンシャフト34F等とキャリア本体35cの間の弾性部材41a,41bによってピニオンシャフト34F等と転がり軸受18,19の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフト34F等の撓みを確実に抑制することができる。その結果、損失トルクの低減によって動力伝達効率を向上させることができ、しかも、ピニオンシャフト34F等の加工および寸法管理を容易化した低コストの遊星歯車装置10を提供することができるものである。
【0062】
(第3実施形態)
図8に、本発明の第3実施形態に係る遊星歯車装置の要部を半断面で示している。
【0063】
なお、本実施形態は、上述の第1実施形態と類似する構成を有するもので、特に、ピニオンシャフトの両端部とキャリアの間に介装される弾性部材が第1実施形態とは相違するものである。
【0064】
本実施形態では、ピニオンシャフト44F(あるいは、図示しない追加のピニオンシャフト)は、転がり軸受18が転動する円筒状の軸受転動面44rとその内方部分が高周波焼入れ等の熱処理により硬質化された硬質部分44hとなっている。
【0065】
また、ピニオンシャフト44Fの一端側部分44aおよび他端側部分44bは、高周波焼入れ処理等の熱処理が施されず硬質部分44hよりも相対的に弾性係数の小さい軟質弾性部分44i,44jを、ピニオンシャフト44Fの両端部に有している。
【0066】
これら軟質弾性部分44i,44jは、ピニオンシャフト44Fの硬質部分44hをキャリア本体15c側に支持させるための固定部の近傍に設けられており、ピニオンシャフト44Fの硬質部分44hがロングピニオンギヤ12側からの軸直角方向の力を入力するときのピニオンシャフト44Fの最大撓み量に対して、予め設定された弾性変形量の許容範囲内で軟質弾性部分44i,44jの弾性変形量が大きくなるように、例えば2倍以上大きくなるように、ピニオンシャフト44Fの曲げ剛性とその軸直角方向の荷重に対する軟質弾性部分44i,44jの弾性係数とがそれぞれ設定されている。
【0067】
本実施形態においても、軸長の大きいピニオンシャフト44F等の軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、ピニオンシャフト44F等とキャリア本体15cの間の軟質弾性部分44i,44jによってピニオンシャフト44F等と転がり軸受18,19の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフト44F等の撓みを確実に抑制することができる。その結果、損失トルクの低減によって動力伝達効率を向上させることができ、しかも、ピニオンシャフト44F等の加工および寸法管理を容易化した低コストの遊星歯車装置10を提供することができるものである。
【0068】
なお、上述の各実施形態においては、ロングピニオンギヤ12の軸方向の一端側部分12aに第1のサンギヤ11が噛合し、ロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bに第2のリングギヤ13が噛合していたが、ロングピニオンギヤ12の軸方向の一端側部分12aに第1のリングギヤが噛合し、ロングピニオンギヤ12の軸方向の他端側部分12bに第2のサンギヤが噛合するように構成できることはいうまでもない。
【0069】
また、本発明にいう弾性部材は、本実施形態のように非熱処理部としてピニオンシャフトに一体に設けられてもよいし、キャリア側に一体に設けられてもよい。この弾性部材は、また、ピニオンシャフトの主要部分とは別体の部品であるが第1実施形態のようにピニオンシャフトに固着または嵌着されたものでもよいし、第2実施形態のようにキャリアのシャフト嵌合穴部に固着または嵌入されたものであってもよく、これらを併用したものであってもよい。
【0070】
さらに、上述の各実施形態では、遊星歯車装置10をラビニヨ式のものとしたが、ショートピニオンギヤを支持する追加のピニオンシャフトのように、ピニオンシャフトのキャリアへの両端固定部を除く部分の長さがそのピニオンシャフトに転がり軸受を介して支持されるピニオンに対して十分に長くなる部分のみを有する遊星歯車装置であっても、本発明を適用することができる。
【0071】
転がり軸受18,19が、保持器18b等を有しない総ころタイプのものであってもよいことはいうまでもない。
【0072】
以上説明したように、本発明に係る遊星歯車装置は、軸長の大きいピニオンシャフトの軸方向の中央部から外れた部分に荷重が入力されても、ピニオンシャフトのキャリア本体への固定部の近傍に配された弾性部材によって、ピニオンシャフトと転がり軸受の片当たり等の接触不良を招いてしまうようなピニオンシャフトの撓みを確実に抑制するようにしているので、損失トルクの低減によってトルク伝達効率を向上させることができ、しかも、ピニオンシャフトの加工および寸法管理を容易化した低コストの遊星歯車装置を提供することができるという効果を奏するものであり、ピニオンとピニオンシャフトとの間に介装される転がり軸受が複数の略円柱状の転動部材で構成される遊星歯車装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 自動変速機
1c ケース
10 遊星歯車装置
11 第1のサンギヤ
12 ロングピニオンギヤ(ピニオンギヤ)
12a 一端側部分
12b 他端側部分
13 第2のリングギヤ
14a;34a;44a 一端側部分
14b;34b;44b 他端側部分
14F;34F;44F ピニオンシャフト
14r;34r;44r 軸受転動面
14S 追加のピニオンシャフト
15 キャリア
15c;35c キャリア本体
16 第2のサンギヤ
17 ショートピニオンギヤ
18 転がり軸受
18a,19a 転動部材(複数の転動要素)
18b 保持器
19 追加の転がり軸受
21a,21b;41a,41b 弾性部材
35a,35b シャフト嵌合穴部
35e,35f 環状凸部(キャリア本体の一部)
44h 硬質部分
44i,44j 軟質弾性部分(弾性部材)
B1,B2,B3 ブレーキ
C1,C2 クラッチ
F1 ワンウェイクラッチ
δa 最大撓み量(ピニオンシャフトの最大撓み量)
δb 弾性変形量(弾性部材の弾性変形量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のピニオンギヤと、前記ピニオンギヤに噛合する少なくとも1つのギヤと、前記ピニオンギヤを自転可能に支持するピニオンシャフトおよび該ピニオンシャフトを両持ち支持するキャリア本体を有し、前記少なくとも1つのギヤに対して前記ピニオンギヤを公転させることができるキャリアと、前記ピニオンギヤと前記ピニオンシャフトの間に介装された複数の略円柱状の転動要素を有する転がり軸受と、を備えた遊星歯車装置において、
前記ピニオンギヤの前記少なくとも1つのギヤとの噛合位置が前記ピニオンシャフトの軸方向の一端側部分に設定されるとともに、
前記ピニオンシャフトの前記キャリア本体への固定部の近傍に、前記ピニオンシャフトが軸直角方向の力を入力するときに該入力による前記ピニオンシャフトの最大撓み量よりも大きな軸直角方向の変位を前記ピニオンシャフトに生じさせる弾性部材が設けられていることを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項2】
前記ピニオンシャフトが軸直角方向の力を入力するときの前記ピニオンシャフトの最大撓み量に対し、予め設定された弾性変形量の許容範囲内で前記弾性部材の弾性変形量が2倍以上大きくなるように、前記ピニオンシャフトの曲げ剛性および前記軸直角方向の力に対する前記弾性部材の弾性係数が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのギヤが、前記ピニオンギヤの軸方向の一端側部分に噛合する第1のサンギヤまたは第1のリングギヤを含み、
前記ピニオンギヤの軸方向の他端側部分には、第2のリングギヤまたは第2のサンギヤが噛合していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのギヤが、前記ピニオンギヤの軸方向の一端側部分に噛合する第1のサンギヤを含み、
前記ピニオンギヤの軸方向の他端側部分には、前記ピニオンギヤより軸長が短いショートピニオンギヤと第2のリングギヤとがそれぞれ噛合し、
前記キャリアが、前記ピニオンシャフトに対し平行に離間する追加のピニオンシャフトを有し、
前記ショートピニオンギヤが、複数の略円柱状の転動要素を有する追加の転がり軸受を介して前記追加のピニオンシャフトに自転可能に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の遊星歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−80505(P2011−80505A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231607(P2009−231607)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】