説明

運行状況記憶装置

【課題】重要度の高い画像データ等を確実に保存しておくことが可能な運行状況記憶装置を提供することである。
【解決手段】車両Vに設置されるカメラ1と、車両Vの加速度を検出する加速度検出手段2と、カメラ1が撮影した画像データを常時記憶する記憶手段32と、検出される加速度が所定の条件を満たすと記憶手段32に記憶された画像データを不揮発性の記憶媒体5に記憶させる運行状況記憶装置において、不揮発性の副記憶媒体7を備え、記憶媒体5に画像データを記憶させることができない状況では、加速度データが条件を満たした時の画像データを含む画像データを副記憶媒体7に記憶させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行状況を記憶する運行状況記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種運行状況記憶装置にあっては、たとえば、車両に設置されるカメラと、車両の加速度を検出する加速度センサと、カメラが撮影した画像を常時記憶する第1の記憶手段と、加速度データが閾値を一定時間以上継続して超える場合にこれをトリガとし、第1の記憶手段に記憶していた画像を読み込んでトリガ検出前後の画像データを記憶する第2の記憶手段を備えて構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記した従来の運行状況記憶装置にあっては、第1の記憶手段はカメラが撮影した画像データを継続して記憶し続けるが、記憶容量には限界があるため、一定時間経過すると全てのデータを消去する処理が行われ、第1の記憶手段に記憶されていた画像データは一括して消去される。
【0004】
すなわち、トリガが検出されない場合には、第1の記憶手段に記憶された画像データは、事故や運行管理上重要なデータではないため、第2の記憶手段に転送されることがなく、特に重要度の高い画像データ等を第2の記憶手段に記憶させておくことができ、第2の記憶手段の記憶容量を有効活用することができる。
【特許文献1】特開2005−165805号公報(段落番号0020〜0033,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の運行状況記憶装置では、上述のように、第2の記憶手段に故障や異常が無い場合には、重要度の高い画像データ等を第2の記憶手段に記憶させておくことができるのでよいのであるが、第2の記憶手段に記憶させることができない状況では、重要性の高い画像データ等を残しておくことができない。
【0006】
すなわち、トリガが検出されても、第2の記憶手段に記憶させることができない状況では、重要度の高い画像データ等を第2の記憶手段に残しておくことができず、さらに、第1の記憶手段に記憶されたデータは、一定時間経過後に一括して消去されることになるので、運行状況記憶装置のどこにも重要度の高い画像データ等を保存しておくことができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その主たる目的は、重要度の高い画像データ等を確実に保存しておくことが可能な運行状況記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題解決手段は、車両に設置されるカメラと、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、カメラが撮影した画像データを常時記憶する記憶手段と、検出される加速度が所定の条件を満たすと記憶手段に記憶された画像データを不揮発性の記憶媒体に記憶させる運行状況記憶装置において、不揮発性の副記憶媒体を備え、記憶媒体に画像データを記憶させることができない状況では記憶手段に最後に加速度データが条件を満たした時の画像データを含む画像データを副記憶媒体に記憶させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の運行状況記憶装置によれば、記憶媒体が使用不能な状態にあっても、不揮発性の副記憶媒体に重要度の高い画像データが確実に保存されるので、重要度の高い画像データが遺失してしまう恐れが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における運行状況記憶装置を車両に搭載した図である。図2は、一実施の形態における運行状況記憶装置の一構成例を示した図である。図3は、一実施の形態における運行状況記憶装置のシステム構成を示す図である。図4は、運行状況記憶装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0011】
図1および図2に示すように、一実施の形態における運行状況記憶装置は、車両Vに設置されるカメラ1と、車両Vに作用する加速度を検出する加速度検出手段2と、後述の記憶手段32を含んで構成される制御部3と、検出される加速度データが所定の条件を満たすと記憶手段32に記憶された画像データうち上記条件が成就した時に撮影された画像データを含む画像データを記憶する記憶媒体5と、記憶媒体5を着脱自在に保持し記憶媒体5へのデータの受渡しを可能とする保持機構6と、不揮発性の副記憶媒体7と、予備電源9とを備えて構成され、制御部3、保持機構6、副記憶媒体7および予備電源9は同一の筐体8内に収納されている。
【0012】
以下、詳細に説明すると、カメラ1は、CCD(電荷結合素子、図示せず)とレンズ(図示せず)を備えており、CCDカメラとして構成され、車両Vの前方を撮影可能なように車両Vに設置されている。なお、カメラ1は、たとえば、車両Vの前方以外にも後方や側方を撮影可能なように、車両Vに複数設置されるようにしてもよい。
【0013】
そして、このカメラ1は、車両Vの前方である撮影範囲を常時撮影し続け、この撮影した画像を電気信号に変換して制御部3へ出力するようになっている。なお、画像については広義に解釈しており、画像には、静止画像の他、動画も含まれる。また、カメラ1はCCDカメラとして構成される以外にもCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を利用したカメラを使用することが可能である。
【0014】
また、加速度検出手段2は、具体的には加速度センサとされており、基本的には、車両Vの前後左右の2軸の加速度を検知することができるものであればよく、より多くの運行情報を得たい場合には、車両Vの上下方向の加速度を検知できる3軸の加速度センサを用いるようにしてもよい。また、加速度検出手段2には、具体的には、たとえば、圧電式、半導体ピアゾ抵抗式、静電容量式、その他の種々の加速度センサを用いることが可能である。
【0015】
そして、この加速度検出手段2は、所定のサンプリング周期、たとえば、10ms(ミリ秒)の周期で車両Vの前後左右の2軸の加速度を検出して、アナログの電圧信号である加速度信号を出力し、この加速度信号はデジタル信号に変換されて制御部3へ入力される。なお、この加速度検出手段2は、筐体8内に収容されるようにしてもよい。
【0016】
さらに、この実施の形態では、車両Vの速度を検出する速度検出手段4が設けられており、この速度検出手段4は、具体的には、速度センサとされている。この速度センサは、ロータリエンコーダ等とされ、速度に応じたパルス信号(車速パルス)を制御部3に出力するようになっている。なお、速度検出手段4としては、車速パルスから演算して速度aを得る以外にも、GPS(Global Positioning System)受信装置を備えている場合には、これを速度検出手段4として、このGPS受信装置から得られる位置データから速度を得るようにしてもよい。
【0017】
記憶媒体5は、不揮発性の記憶媒体であって、具体的にはたとえば、フラッシュメモリ等とされ、筐体8に備え付けの保持機構6に着脱自在に保持される。
【0018】
また、保持機構6は、筐体8の任意の箇所に設けられて記憶媒体5を保持する保持部を外方へ向けており、筐体8の外方から記憶媒体5の着脱が可能なようになっている。また、保持機構6は、後述する制御部3による制御下に置かれて記憶媒体5と制御部3との間のデータの受渡しが可能なようになっており、後述の記憶手段32に記憶された画像データ等を記憶媒体5へ書き込むことが可能とされる。
【0019】
なお、保持機構6は、記憶媒体5の形式に適するものを採用することが可能であり、たとえば、記憶媒体5がカード形式でデータ受け渡し用の端子を備えている場合にあっては、カードを収容保持した状態で記憶媒体5の端子に接続される端子を備えるようにすれば良く、また、記憶媒体5がCD−ROMやDVD等の光ディスクである場合には、保持機構6は、光ディスクを内部に収容して光ディスクにアクセスしてデータを読書きすることが可能なディスクドライブ装置とすれば良い。
【0020】
また、予備電源9は、二次電池や蓄電池等とされて、運行状況記憶装置を稼動させる上で電力供給が必要なカメラ1、加速度検手段2、速度検出手段4、制御部3、保持機構6および副記憶媒体7の各部に電力供給を行えるようになっている。なお、予備電源9による電力供給が必要無い場合には、筐体8の外部に伸びて外部電源に接続される電源コード8aを介して当該各部に電力供給を行うようになっており、筐体8に設置される電源スイッチ10をオン操作することによって上記各部に電力を投入して運行状況記憶装置を起動することができ、また、当該電源スイッチ10をオフ操作することによって運行状況記憶装置の動作を停止させることが可能となっている。
【0021】
そして、制御部3は、図2に示すように、カメラ1が撮影した画像を処理する画像処理部31と、画像処理部31が出力する画像データと加速度検出手段2が検出する車両Vの前後方向の前後加速度データおよび車両Vの横方向の横方向加速度データ、さらには、速度検出手段4が検出する速度データを常時記憶する記憶手段32と、加速度検出手段2が検出した前後加速度データと横加速度データを処理して画像データを記憶媒体5に記憶させるか否かを判断する判断部33と、記憶手段32内に蓄積された画像データから所定の画像データを抽出して記憶する記憶媒体5と、記憶媒体5にデータ書き込みができない状態を認識する異常検出部34と、警告出力部35とを備えて構成されている。また、制御部3は、ラッシュROM等で構成される不揮発性の副記憶媒体7に接続され、副記憶媒体7に対してデータを読書きおよび一括消去することが可能とされている。
【0022】
なお、制御部3は、後述するようにCPU(Central Prossesing Unit)23と演算に必要な記憶領域を備えたコンピュータシステムによって実現されており、そのハードウェア資源は、基板A上に形成される電子回路であり、副記憶媒体7も同じ基板Aに取付けられる。
【0023】
そして、この基板Aを介してカメラ1、加速度検手段2、速度検出手段4、制御部3、保持機構6さらには副記憶媒体7へ電力供給を行えるようになっている。
【0024】
また、電源スイッチ10は、オン操作時には上記基板Aに電力投入を行うようになっているが、オフ操作時には、直接的に基板Aへの電力供給を遮断するのではなく、制御部3が終了処理を行い、当該処理の終了後に制御部3が電源供給を断つようになっている。
【0025】
続いて、制御部3の各部について説明すると、画像処理部31は、常時作動のカメラ1が撮影した画像を動画として取り込み、この動画から所定のフレームレートで静止画像を切り取り、この静止画像を所定の圧縮形式、たとえば、JPEGやGIF等の圧縮形式の画像データを生成する。なお、フレームレートを大きくしすぎると、1秒間に生成される画像データの容量が大きくなりすぎて、大容量の記憶装置が必要となることから、車両事故時の検証に画像データが不足することにならない程度、具体的にはたとえば、5〜10フレーム毎秒程度に設定されている。
【0026】
つづいて、記憶手段32は、画像処理部31が出力する画像データと、同画像データが得られた時刻における加速度データと速度データとを記憶するが、記憶する際には、画像データと、画像データが得られた時点の加速度データおよび速度データとが対応可能なように関連付けを行って記憶する。
【0027】
具体的には、この画像データ、加速度データおよび速度データは、記憶手段32に記憶される際に、それぞれ日付と時刻に関連付けられて記憶される。なお、副記憶手段32に記憶される上記画像データ、前後加速度および横加速度のデータおよび速度データは、一定量蓄積されると古いデータから順に削除されるか一括して削除されて、新しいデータに更新されるようになっている。なお、GPS受信装置を備えている場合には、GPS受信装置から得られる経度および緯度で構成される位置データをも画像データに関連付けて記憶手段32に記憶するようにしてもよい。
【0028】
そして、判断部33は、加速度検出手段2が検出した前後加速度および横加速度を取り込み、前後加速度の絶対値が前後加速度閾値を超えることおよび横加速度の絶対値が横加速度閾値を超えることのいずれか一方を満たすことを条件として、この条件を満たしているか否かを判断し、条件を満たしている場合には、記憶手段32に記憶された画像データからカメラ1が上記条件を満たした時刻に撮影した画像データを含む画像データを抽出してこれを記憶媒体5に記憶させ、逆に、満たしていない場合には、記憶媒体5に画像データを記憶させない。
【0029】
すなわち、判断部33は、前後加速度の絶対値が前後加速度閾値を超えても、横加速度の絶対値が横加速度閾値を超えても、記憶媒体5にカメラ1が上記条件を満たした時刻に撮影した画像データを含む画像データを記憶させることになる。
【0030】
したがって、上記した条件を満たすか否かの判断においては、車両Vの前後方向の前後加速度の絶対値と前後加速度閾値の比較と、車両Vの横方向の横加速度の絶対値と横加速度閾値の比較を行うことになる。
【0031】
そして、上記判断に必要となる前後加速度閾値および横加速度閾値は、互いに独立した値であり、基本的には、旋回時のスピードの出しすぎや事故に到らないまでも急発進、急停車、急旋回や横滑り等の車両事故を招く恐れがある運転状況と判断されうる状況で車両Vに作用すると想定される加速度の絶対値、すなわち、運転中にヒヤッとしたりハッとしたりする運転状況、いわゆるヒヤリハットにある場合に車両Vに作用すると想定される加速度の絶対値に設定される。
【0032】
また、この実施の形態の場合、記憶媒体5に記憶される画像データは、上記条件を満足した時刻を含んで所定範囲の時間内に撮影された画像データとされ、さらには、記憶媒体5は、記憶すべき画像データに関連付けられる該所定範囲の時間内に検出された前後加速度および横加速度のデータ、および、速度データとともに、これらを一つの運行履歴データとして記憶するようになっている。すなわち、記憶媒体5には、上記した条件を満足した時刻の画像データのみならず、その時刻の前後の画像データを記憶しておくことができ、事故時やヒヤリハット時の状況の一部始終を記憶しておくことができる。
【0033】
なお、所定範囲の時間は、具体的にはたとえば、条件満足時刻の前20秒と後10秒の合計で30秒程度とされており、この程度の運行履歴データを記憶しておくことによって、事故時やヒヤリハット時の状況の一部始終を記憶しておくことができる。
【0034】
なお、上記したところでは、判断部33は、車両Vの前後方向と横方向のみの加速度について、上記判断を行うようにしているが、加速度検出手段2が3軸加速度センサである場合には、車両Vの上下方向の加速度に対しても車両Vの前後左右方向の加速度データの処理と同様に、上下方向の加速度に対する閾値を設けて上下加速度が当該閾値を超える場合にも記憶媒体5に画像データを記憶させるようにしてもよい。
【0035】
また、画像データを含む運行履歴データには、前後加速度あるいは横加速度が条件を満たした時刻を含む所定範囲の時間内に検出された画像データが含まれるので、各加速度の絶対値がそれぞれ対応する各閾値を超える状況に至る前と至った後を確認することができ、車両事故や乱暴運転等の原因の究明が容易となり、また、前後加速度あるいは横加速度のデータが含まれるので、車両Vの制動や操舵状況をも把握することができ、さらに、速度データが含まれるので、より精緻に車両事故や乱暴運転等の原因を究明することが可能となり、また、すべてのデータから正確な運行状況を把握することが可能である。
【0036】
このように、通常時には、記憶媒体5に保持機構6を介して上記した画像データを含む運行履歴データを記憶させることができるが、記憶媒体5に何らかの障害がある場合、記憶媒体5を認識できない場合、あるいは、記憶媒体5が保持機構6に適正に保持されていないか記憶媒体5が存在しない場合には、記憶媒体5に上記運行履歴データを記憶させることができない。
【0037】
このような場合、制御部3は、異常検出部34を備えており、異常検出部34が記憶媒体5へデータを書き込めない状態であることを認識した後に、前後加速度の絶対値が前後加速度閾値を超えるか横加速度の絶対値が横加速度閾値を超えるかして記憶媒体5に上述の運行履歴データを記憶させる条件が整っても、記憶媒体5には運行履歴データを記憶させる動作をせず、代わりに、記憶手段32に運行履歴データを消去せずに、保存した状態に維持する。
【0038】
なお、異常検出部34は、運行状況記憶装置の筐体8に備え付けの電源スイッチ10がオン操作され、オペレーティングシステムの起動後あるいは運行状況記憶装置を機能させる上で必要となるアプリケーションプログラムが起動した後に、記憶媒体5が保持部材6に適切に保持されてデータの書き込みおよび読み込みを行える状態となっているか否かを認識する。この認識においては、データの書き込みや読み込みのテスト等の周知の方法が採用され、記憶媒体5が存在しなかったり、データの読書きが不能であったりする場合には、記憶媒体5の使用が不能であることを認識し、異常検出部34は、警告出力部35に対して制御指令を送る。
【0039】
警告出力部35は、筐体8の外方から視認可能なLED(Light Emitting Diode)を備えており、上記制御指令を受けた警告出力部35は、LEDを点灯することによって記憶媒体5に異常が認められる旨をユーザーに知らせる。なお、警告出力部35にスピーカを具備させる場合には、当該スピーカを用いて音声や警告音によって、記憶媒体5に異常が認められる旨をユーザーに知らせてもよい。
【0040】
この場合、運行履歴データをそのまま記憶手段32に記憶させておくようにしてもよいが、そうすると、記憶手段32の記憶容量を圧迫することになるので、もともと容量が大きい運行履歴データを間引いて容量の小さい新たな運行履歴データとして記憶手段32に記憶させておくようにする。具体的には、たとえば、上記したように5〜10フレーム毎秒程度で条件成就時を含んだ30秒程度の画像データと当該画像データに関連付けられる加速度および速度データとを含んだもともとの運行履歴データを間引いて、1秒間に1フレーム程度の画像データと、当該画像データに関連付けられる加速度および速度データとで構成される新たな運行履歴データとして、記憶手段32に記憶させる。なお、データを間引く場合、加速度が条件を満たした時に撮影された画像データについては間引かずに新たな運行履歴データ中に残るようにする。また、画像および加速度のサンプリング周期によって加速度が条件を満たした時の画像データが存在しない場合、加速度が条件を満たした時より後に一番早くサンプリングされた画像データについては、間引かずに新たな運行履歴データ中に残るようにする。このようにすることで、データを間引いても一番重要性の高い画像データを確実に保存しておくことが可能となる。
【0041】
そして、この新たな運行履歴データは、次に加速度データが条件を満たすまでは、記憶手段32に消去されずに記憶された状態に維持され、順次、加速度データが条件を満たすと、また新たな容量の小さい運行履歴データが生成されて、それまで記憶されていた新たな運行履歴データを最新の新たな運行履歴データに更新される。
【0042】
このように、記憶媒体5の使用が不能な状態では、運行状況記憶装置が稼動中は、絶えず、上記した動作を繰り返し、記憶手段32には、必ず運行状況記憶装置の動作中に最後に加速度データが条件を満たした時の画像データを含む運行履歴データである最新の運行履歴データが間引かれて保存されることになる。
【0043】
そして、運行状況記憶装置の使用が終了し、筐体8に備え付けの電源スイッチ10がオフ操作されると、制御部3は、記憶手段32に保存されている上記最新の運行履歴データを副記憶媒体7に記憶させてから、運行状況記憶装置の終了処理を行う。なお、外部電源からの電力供給が途絶える場合には、制御部3は、予備電源9から電力供給を受けつつ、記憶手段32に保存されている上記最新の運行履歴データを副記憶媒体7に記憶させてから、運行状況記憶装置の終了処理を行うようになっている。
【0044】
したがって、電源がオフとされても、データが間引かれた最新の運行履歴データが不揮発性の副記憶媒体7に保存されるので、重要度の高い画像データを含む運行履歴データを遺失してしまう恐れが無い。
【0045】
また、最新の運行履歴データを副記憶媒体7に保存するようにしているので、事故に至るような場合に電源をオフ操作することによって、事故時の画像データを保存しておくことが可能である。
【0046】
さらに、予備電源9を備えているので、事故に至って外部電源からの電力供給が途絶えてしまう場合にも、事故時の画像データを保存しておくことが可能であり、また、間引かれた運行履歴データを副記憶媒体7に書き込むようにしているので書き込み時間も少なくなり、書き込み途中で電力供給が途絶えてしまって当該データを遺失してしまうような事態を防止することが可能である。
【0047】
また、上記したところでは、副記憶媒体7への運行履歴データの書き込みは、運行状況記憶装置の動作を終了させるときであるので、副記憶媒体7に保存された運行履歴データは常に運行状況記憶装置の動作中の最後に加速度が条件を満たした時のものとなり、また、書き込みが一回となるので、副記憶媒体7をデータの書き込みと消去の回数に制限があるようなものとしても実用上の弊害が無く、さらに、そのような副記憶媒体7を採用しても長期間に渡り使用することが可能となる。
【0048】
なお、副記憶媒体7がデータの書き込みと消去の回数に制限が無いか、あるいは回数制限あってもがその回数が非常に多い場合には、記憶手段32に運行履歴データを消去せずに保存した状態とする代わりに、順次、加速度が条件成就するごとに、副記憶媒体7に記憶手段32に記憶された運行履歴データを上述の如く間引いて出来るデータを記憶させるようにしてもよい。この場合にも、副記憶媒体7に保存されるのは、運行状況記憶装置の動作中の最後に加速度が条件を満たした時の画像データを含む運行履歴データとなる。また、この場合には、記憶手段32に消去が制限される運行履歴データを保存しておく必要がなくなるので、記憶手段32の記憶領域を圧迫することが皆無となる点で有利となる。
【0049】
上記したように、本実施の形態における運行状況記憶装置にあっては、記憶媒体5の使用が不能な状態では、副記憶媒体7に重要度の高い運行履歴データを保存しておくことができるが、電源スイッチ10がオン操作されて運行状況記憶装置に電力供給されると、先ほどのように、異常検出部34が記憶媒体5の使用が可能か否かをチェックし、記憶媒体5が使用可能と判断される場合には、制御部3は、副記憶媒体7に記憶されている運行履歴データを記憶媒体5に転送する。すなわち、制御部3は、副記憶媒体7に記憶されている運行履歴データを読み込んで記憶媒体5に当該データを書き込み、副記憶媒体7に記憶されていたデータを一括消去する。なお、副記憶媒体7に何らデータが保存されていない場合には、前回運行状況記憶装置が終了したときには記憶媒体5は正常に動作していたのであり、制御部3は、上記動作を行わない。
【0050】
したがって、このように、記憶媒体5が使用可能な状態となる場合には、副記憶媒体7に保存されていたデータが筐体8から離脱させることが可能な記憶媒体5に転送されるので、当該データを端末等の図示しない外部装置へ移動させることが容易となる。
【0051】
上記したところでは、運行状況記憶装置が停止後に起動させられるか、あるいは再起動させられるときに副記憶媒体7から記憶媒体5へデータを移すようにしているが、運行状況記憶装置が起動されたときに異常検出部35が記憶媒体5の使用が不能であることを認識しても、運行状況記憶装置の動作中に異常検出部35によって記憶媒体5が使用可能か否かをチェックして、記憶媒体5が使用可能となった場合に、副記憶媒体7に記憶されている運行履歴データを読み込んで記憶媒体5に当該データを書き込みするようにしてもよい。
【0052】
なお、副記憶媒体7に運行履歴データが記憶されており、異常検出部34が記憶媒体5の使用が可能と判断する状態にあっても、何らかの理由で記憶媒体5へ副記憶媒体7に記憶された運行履歴データを転送することが不能となる場合、制御部3と図示しない外部装置との通信が可能なように通信用端子11が設けられており、この通信用端子11を介して副記憶媒体7に記憶された運行履歴データを外部装置の記憶装置へ転送することが可能なようになっている。なお、通信用端子11を介して通信は、シリアル通信等とされればよい。
【0053】
したがって、本実施の形態における運行状況記憶装置にあっては、運行状況記憶装置自体に何らかの不具合が生じたとしても、不揮発性の副記憶媒体に記憶された重要度の高い画像データを外部装置へ転送することが可能であり、重要度の高い画像データが遺失してしまう恐れが無い。
【0054】
つづき、本実施の形態における運行状況記憶装置のハードウェア資源の構成について説明すると、この運行状況記憶装置は、図3に示すように、ハードウェアとしてはカメラ1、加速度検出手段2および速度検出手段4以外に、カメラ1の画像データをデコードするビデオデコーダ20と、加速度検出手段2が出力するアナログの電圧でなる加速度信号をデジタル信号に変換するA/D変換器21と、速度検出手段4が出力するアナログのパルス信号をデジタル信号に変換するA/D変換器22と、ビデオデコーダ20および各A/D変換器21,22を介して画像信号、加速度信号および速度信号を取り込み、上記した制御部3の処理を実行するCPU23と、上記CPU23に記憶領域を提供するSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)24と、運行履歴データが記憶される記憶媒体たるフラッシュメモリ25と、フラッシュメモリ25を着脱自在に保持する保持機構6と、制御部3の処理を行うためCPUが実行するアプリケーションやオペレーティングシステム等のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)26と、LED27と、副記憶媒体たるフラッシュROM28と、フラッシュROM28内に格納される運行履歴データを図外の外部装置へ出力するための通信用端子11とを備えて構成されており、制御部3の各部における構成は、CPU23が制御部3の処理を行うためアプリケーションプログラムを実行することで実現することができる。
【0055】
具体的には、画像処理部31は、画像データを取り込んだCPU23が画像データを圧縮することで実現され、判断部33は、前後加速度および横加速度のデータを取り込んだCPU23がSDRAM24から記憶領域の提供を受けつつ前後加速度および横加速度のデータの絶対値がそれぞれ対応する前後加速度閾値と横加速度閾値を超えるか否かの判断する演算を行うことで実現され、記憶手段32は、圧縮された画像データ、加速度データおよび速度データをSDRAM24に書き込んでSDRAM24にこれらデータを記憶させることで実現される。そして、加速度が上記した条件を成就すると、CPU23は、SDRAM24から条件成就時を含んで前後の所定範囲の時間内の画像データ、加速度データおよび速度データを抽出して読み込んで、該画像データを含む運行履歴データファイルを生成してフラッシュメモリ25内に記憶させる。
【0056】
また、異常検知部34は、記憶媒体たるフラッシュメモリの異常検知用のプログラムをCPU23によって実行することによって実現され、異常を検知する場合には、LED27を点灯させる。
【0057】
つづいて、制御部3における上述した記憶手段34に画像データを含む運行履歴データを記憶させる処理手順、すなわち、画像データ記憶方法の手順を具体的に説明する。この制御部3の処理は、図4に示す手順の一例に従って実行される。なお、この手順は、上述のように、予めROM26に格納されている。
【0058】
ステップF1では、制御部3は、記憶媒体5に異常があるか否かをチェックする。
【0059】
つづいて、ステップF2に移行して、制御部3は、異常がない場合には、ステップF3に移行し、異常がある場合にはステップF6に移行する。
【0060】
ステップF3では、記憶媒体たるフラッシュメモリ25に異常が無いので、制御部3は、副記憶媒体たるフラッシュROM28内に運行履歴データが保存されているかをチェックする。そして、当該データが存在する場合には、ステップF4へ移行し、存在しない場合にはステップF5へ移行する。
【0061】
ステップF4では、制御部3は、フラッシュROM28から運行履歴データを読み込んで記憶媒体たるフラッシュメモリ25へ当該データを書き込み、フラッシュROM28に記憶されているデータを消去してステップF5へ移行する。
【0062】
さらに、ステップF5では、記憶媒体たるフラッシュメモリ25に異常が無いので、制御部3は、通常時の処理を行う。すなわち、カメラ1が撮影した画像データに、加速度データ、速度データ、日付や位置データを関連付けて運行履歴データとしてSDRAM24に継続的に記憶させ、加速度が条件を成就する場合には、記憶手段たるSDRAM24から条件成就時を含んで所定時間範囲内の画像データを含む運行履歴データを抽出してフラッシュメモリ25へ記憶させる処理を行う。
【0063】
ステップF6では、記憶媒体たるフラッシュメモリ25に異常が認められることから、LED27を点灯させ、異常時の処理を行う。すなわち、カメラ1が撮影した画像データに、加速度データ、速度データ、日付や位置データを関連付けて運行履歴データとしてSDRAM24に継続的に記憶させるとともに、加速度が条件を成就する場合には、条件成就時を含んで所定時間範囲内の画像データを含む運行履歴データを上述のように間引いて新たな運行履歴データを生成し、この新たな運行履歴データをSDRAM24に保存し、次に加速度が条件を満たして間引かれた運行履歴データが生成されるまでは消去しないようにする。また、電源スイッチ10がオフ操作されて、運行状況記憶装置が停止させられると、フラッシュROM28にSDRAM24に保存されている運行履歴データを書き込む。
【0064】
このように、この運行状況記憶装置によれば、記憶媒体5が使用不能な状態にあっても、不揮発性の副記憶媒体7に重要度の高い画像データが確実に保存されるので、重要度の高い画像データが遺失してしまう恐れが無い。
【0065】
また、最新の運行履歴データを副記憶媒体7に保存するようにしているので、事故に至るような場合に電源をオフ操作することによって、事故時の画像データを保存しておくことが可能である。
【0066】
なお、この運行状況記憶装置にGPS受信装置を設け、このGPS受信装置から得られる位置データを運行履歴データに含めるようにしてもよい。
【0067】
さらに、上記した各処理手順は、一例であるので、運行状況記憶装置の仕様等によって最適となるようにこれを変更することが可能である。
【0068】
また、上記した各実施の形態にあっては、運行状況記憶装置を自動車に適用した例を用いて説明したが、車両は自動車に限られず、鉄道車両、二輪車等にも運行状況記憶装置を適用することができる。
【0069】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一実施の形態における運行状況記憶装置を車両に搭載した図である。
【図2】一実施の形態における運行状況記憶装置の一構成例を示した図である。
【図3】一実施の形態における運行状況記憶装置のシステム構成を示す図である。
【図4】運行状況記憶装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 カメラ
2 加速度検出手段
3 制御部
4 速度検出手段
5 記憶媒体
6 保持機構
7 副記憶媒体
8 筐体
9 予備電源
10 電源スイッチ
11 通信用端子
20 ビデオデコーダ
21,22 A/D変換器
23 CPU
24 SDRAM
25 記憶媒体たるフラッシュメモリ
26 ROM
27 LED
28 副記憶媒体たるフラッシュROM
31 画像処理部
32 記憶手段
33 判断部
34 異常検出部
35 警告出力部
A 基板
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されるカメラと、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、カメラが撮影した画像データを常時記憶する記憶手段と、検出される加速度が所定の条件を満たすと記憶手段に記憶された画像データを不揮発性の記憶媒体に記憶させる運行状況記憶装置において、不揮発性の副記憶媒体を備え、記憶媒体に画像データを記憶させることができない状況では、加速度データが条件を満たした時の画像データを含む画像データを副記憶媒体に記憶させることを特徴とする運行状況記憶装置。
【請求項2】
記憶媒体を着脱自在に保持し記憶媒体へのデータの受渡しを可能とする保持機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の運行状況記憶装置。
【請求項3】
記憶手段で記憶した画像データを間引いて副記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1または2に記載の運行状況記憶装置。
【請求項4】
条件を満たすと記憶手段で記憶した画像データを間引いて新たな画像データを生成して記憶手段に記憶させ、新たな画像データを副記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の運行状況記憶装置。
【請求項5】
副記憶媒体には、最後に加速度データが条件を満たした時の画像データを含む画像データを記憶させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに運行状況記憶装置。
【請求項6】
電源オフ操作が行われたときに、副記憶媒体に画像データを記憶させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の運行状況記憶装置。
【請求項7】
記憶媒体に画像データを記憶させることができる状況に復帰した場合、副記憶媒体に記憶された画像データを記憶媒体に転送することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の運行状況記憶装置。
【請求項8】
電源オン操作時に、記憶媒体に画像データを記憶させることができる状況である場合、副記憶媒体に記憶された画像データを記憶媒体に転送することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の運行状況記憶装置。
【請求項9】
予備電源を備え、外部電源からの電力供給が途絶える場合に、予備電源から電力供給をうけつつ、加速度データが条件を満たした時の画像データを含む画像データを副記憶媒体に記憶させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の運行状況記憶装置。
【請求項10】
副記憶媒体に記憶された画像データを外部装置へ転送可能な通信用端子を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の運行状況記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−65454(P2008−65454A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240339(P2006−240339)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】