説明

運行管理システム

【課題】
有料道路を利用したときのETC車載器からのETCデータと、デジタル式運行記録計からの運行情報とを時系列に収集することにより、有料道路の利用情報を容易に記録管理及び出力させて車両及び乗務員の運行管理の向上に役立てることができる運行管理システムを構築する。
【解決手段】
有料道路の利用時にETC路側機に無線で通信されるETC車載器と、自車両が運行した運行情報を記録するデジタル式運行記録計とを電気的に接続し、前記デジタル式運行記録計が、前記ETC車載器から有料道路を利用したときの入口情報・出口情報及び料金情報との有料道路運行情報を収集し、該収集した有料道路運行情報の個々に収集時刻を対応させて記録する運行管理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が高速運行した有料道路運行情報を管理する運行管理システムに関し、さらに詳しくは有料道路運行情報によって車両及び乗務員の運行管理の向上に役立てる運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、物流業界ではデジタル式運行記録計によって車両の運行速度を逐一記憶し、1日の業務終了時に、その日の運行速度を時系列にグラフ表示した業務日報を出力して、例えば制限速度違反がないか、乗務員が必要な休息(停車)をとっているかといった管理を会社が行っている。
【0003】
また、有料道路の利用に際して、無線通信を用いて有料道路の料金精算を自動化するETC(電子料金徴収)システムが利用されている。このため、車両には、有料道路のETC路側機に無線で通信可能なETC車載器を搭載している。
【0004】
一方、特許文献1に開示されている有料道路利用履歴生成装置では、有料道路の利用履歴から運行利用した区間、時間、料金に加えてタクシーが実車か空車かの判定及び乗務員の納金業務等を自動管理して、乗務員による有料道路利用料のタクシー会社での不正な請求を完全に解消するようにしている。
【0005】
ところが、このような自動管理だけでは有料道路利用時での正確な管理情報が十分に得られなかった。例えば、有料道路の管理体制には、入口で課金して出口は自由に通過許可する入口課金管理体制、入口で通過チェックして出口で課金する出口課金管理体制などの有料道路の種別に応じた課金管理体制があり、様々な課金管理体制の全てに対応させて正確に管理することが難しくなっていた。さらに、走行状態などの正確な運行情報が得られていないため、車両及び乗務員の運行管理の向上に役立てることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−338312号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、有料道路の利用情報を収集して管理する際、有料道路を利用したときのETC車載器からのETCデータと、デジタル式運行記録計からの運行情報とを時系列に収集することにより、有料道路の利用情報を容易に記録管理及び出力させて車両及び乗務員の運行管理の向上に役立てることができる運行管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、有料道路の利用時にETC路側機に無線で通信されるETC車載器と、自車両が運行した運行情報を記録するデジタル式運行記録計とを電気的に接続し、前記デジタル式運行記録計が、前記ETC車載器から有料道路を利用したときの入口情報・出口情報及び料金情報との有料道路運行情報を収集し、該収集した有料道路運行情報の個々に収集時刻を対応させて記録する運行管理システムであることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、有料道路を利用したとき、有料道路運行情報の個々の時刻を正確に収集することができるため、収集した運行情報の分析が可能になり、有料道路の区間、時間、料金等の有料道路の利用情報が正確に得られる。従って、分析された有料道路の利用情報に基づいて車両及び乗務員への運行管理の向上に役立てることができる。例えば、乗務員別の運転傾向及び安全運転の認識が高い運転か否かなどの安全運転推進情報を正確に収集できる。従って、車両事故などを未然に防止する乗務員の安全な運行情報に役立てることができる。
【0010】
この発明の別の構成では、有料道路の利用時にETC路側機に無線で通信されるETC車載器と、自車両が運行した運行情報を記録するデジタル式運行記録計と、車両の基地局となる基地局管理装置と、前記基地局管理装置と通信して車両の運行情報を管理する運行管理サーバとからなる運行管理システムであって、前記ETC車載器とデジタル式運行記録計とを電気的に接続し、前記デジタル式運行記録計が、前記ETC車載器から、車両が有料道路を利用したときの入口情報・出口情報及び料金情報との有料道路運行情報を収集し、該デジタル式運行記録計では収集した有料道路運行情報の個々に収集時刻を対応させて記録媒体に記録し、運行管理サーバでは、前記記録媒体の記録から有料道路を利用したときの区間・時間・料金を求めた有料道路利用情報を取得して蓄積・管理すると共に、該有料道路利用情報を業務日報、または専用帳票に出力するように構成にすることができる。
【0011】
ここで記録媒体とは、電磁的に情報を記録・蓄積できると共に、それ自体単体として記録内容を保持したまま持ち運びすることができる記録媒体を意味し、例えばフラッシュメモリー、SRAM、及びこれらの少なくとも1つを内蔵したメモリーカード、若しくはCD−ROM、DVD−ROMなどを用いる。
【0012】
前記業務日報とは、乗務員及び車両の管理を目的として、管理者に出力・作成が義務付けられているものをいい、業務日報、帳票及びこれらの電子情報が利用される。この業務日報の出力に際しては、画面上に出力するディスプレイを備えたパーソナルコンピュータなどの端末装置、または、紙面上に出力するプリンタを備えたパーソナルコンピュータなどの端末装置を利用することができる。
【0013】
この発明によると、有料道路利用時の車両の運行情報を時刻に対応させて正確に取得することができるため、有料道路の利用情報を自動的に記録することができる。このため、乗務員や管理者が端末を操作して運行した情報を細かく入力操作する必要がなくなる。さらに、運行管理サーバでは実際に乗務員が運転を行った有料道路の運行情報を記録している記録媒体の運行情報を読取らせるだけで、有料道路を利用したときの区間、時間、料金を求めた有料道路の利用情報をデータベースに蓄積して管理できる。また、この運行管理サーバから完全な業務日報や専用帳票を自動的に出力させることができる。
【0014】
この発明の別の構成では、前記デジタル式運行記録計がETC車載器から有料道路運行情報を収集したとき、課金有りの有料道路運行情報であれば出口通過情報とし、この出口通過情報毎に料金表を出力させることができる。
【0015】
この場合は、有料道路の課金管理体制が入口課金管理体制、出口課金管理体制の何れであっても、車両の運行情報を時系列に正確に管理できるため、有料道路の種別にかかわらず、正確な車両の利用情報を得て有料道路の課金管理体制に対応した料金表を作成できる。
【0016】
この発明の別の構成では、前記車両が運行した運行情報を出力する業務日報には、時系列に、走行速度と有料道路の利用とを対比して図形表示させることができる。
【0017】
この場合は、走行速度と有料道路利用時との関係を図形表示して明瞭に表すことができるため、この図形表示から乗務員及び管理者は一目で乗務員の具体的な走行傾向が分る。ことに、走行速度を時系列的に把握できるため、一般道路での走行状態や有料道路での走行状態などが分り、乗務員別に分析された運行情報を取得して安全運転の推進に役立てることができる。
【0018】
この発明の別の構成の運行管理サーバには、デジタル式運行記録計が記録した運行情報に基づいて有料道路を使用したか一般道路を使用したかの道路の種別を自動判別する判別手段を備えることができる。
【0019】
この場合は、車両が走行した走行速度の継続時間や走行速度の変化状態などから有料道路と一般道路との種別を正確に判別できる。このため、有料道路の利用情報を正確に取得でき、道路の種別に応じた信頼性の高い分析ができる。例えば、道路種別の判定を補完した運行情報に基づいて安全運転の推進、経済的な運転情報の提供などに反映することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、実際に乗務員が運転を行った有料道路利用情報等の多くの情報を乗務員または管理者が端末を操作していちいち入力する必要がなく、詳細な運行情報を管理する場合であっても、これらを収集管理及び編集して完全な業務日報を自動的に且つ簡単に出力することができる。従って、正確な有料道路の利用情報に基づいて乗務員への運転傾向の分析及びこれに基づく安全運転推進情報などが正確に分り、車両及び乗務員の運行管理の向上に役立てることができる。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
図面は車両の運行管理システムを示し、この車両の運行管理システムの出力として、図1に表されるような1日の運送業務の業務日報を作成する。この業務日報の記載面の上欄には、「日報番号」、「運行日」、「事務所のコード及び名称」、「乗務員のコード及び名称」、「車両のコード及び名称」をはじめ、日報、基地局(事務所、営業所)、乗務員(作業者)等に関する基本的な特定情報が記入される。また、「有料道路代」が記入される。
【0022】
中欄には、作業情報が記入され、「出発地〜到着地名称」の欄には、基地局や作業地(目的地)の地名、または取引先の住所若しくは所在地が記入される。また、「納品先」の欄には、取引先の名称などが記入される。
その他、「出発・到着の日時」、作業地での「作業時間」、「走行距離」、「作業」の内容を記入し、「化学薬品」の欄には運送作業の対象物である薬品名称を、「納入量」の欄には対象物の品数が記入される。
【0023】
下欄には、車両の走行情報を具体的に図形表示する。右下欄には、走行情報に基づいて、乗務員の運転業務を評価する評価点を計算し、走行評価情報として表またはグラフに表示する。
ここで、上欄の日報等の特定情報、下欄の走行情報及び、右下欄の走行評価情報、中欄の作業情報については、自動的に記入され出力する。
【0024】
図2は、業務日報を管理する各事務所(基地局)に設けられた管理端末11と、これらと電気通信回線であるインターネット12を通じて接続されたセンターサーバ13等とを概念的に示す運行管理システムの構成図である。
【0025】
管理端末11は、管理されるべき車両が、運送業務の開始と共に出発し、終了と共に帰着する基地局に設けられており、主に乗務員によって操作される。
この管理端末11はパーソナルコンピュータなどによって構成され、内部には業務日報の出力や通信を行うためのコンピュータプログラムを格納している。また、業務日報を画面上に出力するディスプレイを備えており、業務日報を紙面上に出力するプリンタ14を備えている。
【0026】
また、管理端末11には、デジタル式運行記録計18が記録した運行情報やETCデータ等を記録したメモリーカード16の記録内容を読取るカードリーダ17を接続して備えている。
【0027】
センターサーバ13は、電気通信回線であるインターネット12を通じて、管理端末11に接続されたサーバコンピュータまたはパーソナルコンピュータであって、地名データベース及び取引先データベース等のデータベース19を備えている。
このセンターサーバ13には、管理端末11との通信やデータベース照会、または業務日報データの作成などの処理を制御するためのコンピュータプログラムを内蔵している。
このセンターサーバ13及びデータベース19は、物流会社の管理センターに備えても良いし、この発明のシステムを管理者に提供するシステム提供会社に備えても良い。また、センターサーバ13では特定の運送会社、あるいは複数の運送会社とそれぞれETC対応をとって管理できるようにしても良い。
【0028】
データベース19は、乗務員別の業務日報等の多くの履歴データを管理する。インターネット12は、電気通信回線の一例であって、必要に応じてLAN回線等によっても構成することができる。
【0029】
図3は車両に搭載されるETC車載器15とデジタル式運行記録計18とのブロック構成図を示し、前記ETC車載器15は無線通信機31とリーダライタ32と外部インターフェース33と、これらを制御する制御部34とを備えて構成される。
【0030】
前記無線通信機31は有料道路の料金所等に設置されるETC路側機と無線で通信し、ETCユーザ情報、通過情報、課金情報等のETCデータが通信される。前記ETCユーザ情報は、リーダライタ32によって乗務員のETCカードから読み込まれる。そして、外部インターフェース33を介してETC車載器15からETCデータを後述するデジタル式運行記録計18に伝送して記録される。
【0031】
上述のデジタル式運行記録計18はインターフェース35と、本体スイッチ36と、リーダライタ37と、車速センサ38と、タイマ39と、これらを制御する制御部40とを備えて構成される。
前記インターフェース35は前記ETC車載器15の外部インターフェース33と接続し、ETC車載器15からのETCデータを取得する。
【0032】
本体スイッチ36は、有料道路と一般道路とを人為的に区別させるために車両が有料道路の入口、出口を通過するときに乗務員により入力操作させるものである。
リーダライタ37は、デジタル式運行記録計18に装着されたメモリーカード16に運行情報を記録する。
【0033】
車速センサ38は、車両の走行情報としての速度、加速度、走行距離を電子情報として検出する。これにより、車両が走行した詳細な動作状態を業務日報に出力することができる。
タイマ39は、正確な現在の時刻を検出するために設けられており、正確な時刻を記録して業務日報に出力する。
【0034】
ところで、ETC車載器15を装着したデジタル式運行記録計18によってメモリーカード16に記録されるETCデータは車両の運行に関する運行データのフォーマットに追加される。例えば、図4に示すように、車両が料金所を通過したとき、運行データのヘッダにECOO(識別データ)を格納し、デジタル式運行記録計18で測定した時刻、走行距離などを付加して料金所のETC路側機から受信したETCデータを格納する。
【0035】
この記録したETCデータはメモリーカード16から管理端末11に取り込まれてセンターサーバ13に送信され、該センターサーバ13のデータベース19のETC利用実績記録表テーブルに保存される。そして、ヘッダがECOOであることによってETCデータであると解析したETCデータのうち、通行料金はデータベース19のETC利用実績記録表テーブルに合計値が保存される。この通行料金は、1運行(メモリーカード16がデジタル式運行記録計18にセットされて抜き取られるまでに記録した複数の運行データ)毎にETCデータ内の通行料金の合計処理を行う。このとき、通行料金に前払い割引、長距離割引、夜間割引などの割引利用情報があれば、その分の減算処理を行う。
【0036】
ETCデータを読取ったセンターサーバ13は、管理端末11にデータを送信し、該管理端末11に接続されたプリンタ14に業務日報とETC利用実績表を出力させる。この場合、ETC利用実績表を印刷するか否かは設定により変更できる。例えば、管理する会社別に出力可否を設定しておき、出力可に設定されている会社のみETC利用実績表を出力させることができる。
【0037】
図5は帳票を管理する帳票フォーマットの1例を示し、この帳票フォーマットは、会社名、印刷日時、日報番号、運行日、項目1、項目2、事務所コード、事務所名称、乗務員コード、乗務員名称、車両コード、車両名称との予め知られている既存の特定データ(No1〜No12)と、入口情報通過日時、入口情報道路名、入口情報IC(インターチェンジ)名、出口情報通過日時、出口情報道路名、出口情報IC名、通行料金、通行料金合計との有料道路利用データ(No13〜No20)との詳細な項目に分類している。そして、これらの帳票フォーマットの項目に対応した情報をデータベース19から入力することにより、ETC利用実績表を自動的に作成する。
【0038】
次に、有料道路と一般道路との判別に際しては、例えば、ETCデータを分析して判別する。また、ETCデータが得られていない走行区間では一般道路と判別する。このほか、手動入力手段としてのデジタル式運行記録計18の本体スイッチ36と自動入力手段としてのETCデータとの双方を併用しても有料道路と一般道路とを判別するように構成することができる。
【0039】
例えば、図6(A)に示すように、デジタル式運行記録計18の本体スイッチ36が乗務員によってONされたときは、この本体スイッチ36の人為操作による入力情報を優先し、ETCデータにかかわらず、有料道路の走行と判別する。一方、有料道路走行時に押し忘れなどにより本体スイッチ36がOFFのままであれば、ETCデータの判別結果を用いて有料道路か一般道路かを判別する。
【0040】
さらに、有料道路のうち、どの利用路線が使用されたかを判別する基準データとしてETC利用路線名称の定義表を追加したフォーマットの一例を図6(B)に示す。この場合は、道路事業者ID、道路事業者名称等のほか、数字や文字等の桁数及び数字や文字等の属性を定義して有料道路の判別に役立てる。
【0041】
同様に、有料道路の分岐点となるIC名称の定義表を追加したフォーマットの一例を図6(C)に示す。この場合は、道路事業者ID、路線番号、IC番号、名称等のほか、数字や文字等の桁数及び数字や文字等の属性を定義して有料道路の判別に役立てる。これらの定義表は、データベース19に記憶されている。
【0042】
前記ETC車載器15とデジタル式運行記録計18とはシリアル伝送にて接続しており、該デジタル式運行記録計18ではETC車載器15からのETCデータと車両の運行情報とを収集した情報の個々に収集時刻を対応させてメモリーカード16に記録する。また、メモリーカード16に記録されている情報からセンターサーバ13では、有料道路を利用したときの区間・時間・料金を求めた有料道路利用情報をデータベース19に蓄積して管理すると共に、該有料道路利用情報を管理端末11により業務日報、または専用帳票に出力する。
【0043】
図7は乗務員の業務内容を表すETC利用実績表の一例を示し、上欄には、図1に既述した「日報番号」、「運行日」、「事務所のコード及び名称」、「乗務員のコード及び名称」、「車両のコード及び名称」等の特定情報を記録する。
これに対し、中央欄には、入口情報として車両が入口ゲートを通過した「通過日時」に対応させて、○○道路公団のように「事業社名」と、「IC名」とを記録し、さらに出口情報として車両が出口ゲートを通過した「通過日時」に対応させて、同じく○○道路公団のように「事業社名」と、「IC名」とを記録する。
【0044】
さらに、有料道路利用別の「料金」と、その合計金額とを有料道路の利用実績として記録する。また、この合計金額は図1の業務日報の「有料道路代」の欄に記録される。
【0045】
前記有料道路での課金に際して、有料道路の出口で課金する場合は、入口と出口でそれぞれ収集されるETCデータの入口情報と出口情報が違う値のため、各々の入口名称・出口名称を表示する。これに対し、入口で課金する場合は、入口で課金処理が完結するため出入口の名称は同じ名称を表示し、また、通過日時も同じ値を表示してデータ管理する。
【0046】
このように、有料道路を利用した時は、自車両の運行した情報を記録する際にデジタル式運行記録計18が記録した情報によって「通過日時」を特定でき、ことに時刻と対応させてETCデータを記録するため、有料道路の利用情報を自動的に記録管理することができる。このため、運行した情報を乗務員や管理者が端末を操作して入力操作する必要がなくなる。
【0047】
さらに、センターサーバ13では有料道路を利用したときの区間、時間、料金の利用情報をデータベース19に蓄積して管理できるほか、該センターサーバ13から完全な業務日報や専用帳票を管理端末11に出力させることができる。
ことに、実際に運転を行った運行情報を記録しているメモリーカード16の運行情報を読取らせるだけでセンターサーバ13から詳細な運行情報を編集して出力することができる。
【0048】
この結果、正確な有料道路の利用情報に基づいて車両及び乗務員への運行管理の向上に役立てることができる。例えば、図8に示すように、運行情報を図形表示し、この図形表示を含む業務日報(図1参照)をプリンタ14に出力して印刷することができる。この運行情報を表す図形の上欄には、有料道路及び一般道路を走行したときの走行速度を時系列に対比させて速度変化グラフとして表示させている。
【0049】
この場合は、有料道路と一般道路との走行状態を図形表示して明瞭に表すことができ、一目で乗務員の具体的な走行傾向を理解できる。ことに、車両の走行速度を時間の経過に従って時系列に把握できるため、道路種別に応じた乗務員別の乗務状態(例えば速度オーバーしていないか)などを正確に分析して取得できる。
【0050】
下欄には、一般道路、有料道路、荷積、荷卸、停車、アイドル、休憩、その他、実車との具体的な運行情報を時間の経過に対比させて帯グラフにより表示させている。これにより、乗務員の具体的な作業内容を正確に管理できる。
【0051】
図9は上欄に一般道路と有料道路での速度管理(速度分布)状態を分析した結果を、棒グラフによって表示した一例を示し、下欄には同乗務員の安全運転評価と経済運転評価との分析結果をレーダーチャートによって表示している。この表示は、業務日報(図1参照)の一部に示される。
【0052】
図示する例では、上欄の棒グラフの分布状態からは一般道路での高速走行が目立ち、速度制御する必要があることが認められる。また、有料道路では過剰な高速走行はなく、比較的安全走行と認められる。また、下欄のレーダーチャートに示す安全運転評価では、急加速、急減速、一般道路での最高速度、有料道路での最高速度、一般道路での速度オーバー時間、有料道路での速度オーバー時間、連続運転超過時間とを分析した結果、この分析結果からは急加速、急減速、有料道路での最高速度が高速であるほか、速度オーバー時間が長いことが分る。これにより、例えば評価コメントとして「一般道路の速度超過が非常に目立っています。明日からはスピードに注意して運転しましょう」と適切なアドバイスの内容を出力することができる。
【0053】
さらに、レーダーチャートの経済運転評価では、アイドリング率、急加速、急減速、一般道路での速度オーバー時間、有料道路での速度オーバー時間を分析した結果、この分析結果からは一般道路での速度オーバー時間以外の項目の全てが不経済運転であり、改善が必要なことが認められる。
【0054】
このように、センターサーバ13から運行情報を出力する業務日報には、車両の運行情報を分析して乗務員の安全運転推進情報をグラフにして表示出力することができる。これにより、乗務員別に異なる運転傾向及び安全運転の認識が高い運転か否かなどが詳細に分るほか、安全な乗務に役立てることができるので安全性が高くなり、車両事故などを未然に防止することができる。
【0055】
次に、運行管理システムのメモリーカード16への記録処理動作を図10の記録データ形式に従って説明する。
まず、乗務員は基地局出発の前にメモリーカード16をETC車載器15にセットする。メモリーカード16は運行情報がクリアされているが、乗務員及び車両の特定情報は記録されている。
【0056】
そして、出発と共に速度センサ38などが走行情報を取得し、メモリーカード16に記録・蓄積しながら運送業務を遂行する。このとき、車両の走行開始時刻T1はメモリーカード16に記録管理され(記録データD1)、その後も車両の定周期走行データとして、速度と走行距離に応じた現在の時刻T2がメモリーカード16に時系列に記録される(記録データD2)。
【0057】
この車両の走行中に有料道路の入口や出口に設置されたETC路側機と無線で通信し、該車両に搭載されたETC車載器15が無線でETCデータを受信すれば、その最初に受信したETCデータに課金処理がない場合は、有料道路の通過情報として「通過時刻T3」及び「課金処理なし」をメモリーカード16に記録する(記録データD3)。
【0058】
その後の走行中も、車両の定周期走行データとして速度と走行距離に応じた現在の時刻T4がメモリーカード16に記録される(記録データD4)。
【0059】
一方、課金処理が実行されるETCデータの場合は、このETCデータから通過時刻T5、課金処理あり、入口情報、出口情報、料金情報を作成してメモリーカード16に記録する(記録データD5)。
【0060】
その後、車両が走行途中でサービスエリア等の休憩所で走行停止した場合、あるいは目的地に到着して往運行が終了した場合にも、その停止時刻T6を作成してメモリーカード16に記録する(記録データD6)。
【0061】
車両が目的地である取引先に到着したとき、乗務員は本体スイッチ36を押下する。この本体スイッチ36を押下したときも作業情報の入力データとしてメモリーカード16に書き込んで記録する。
【0062】
作業が終了した後、車両は再出発し、この場合も再度、車両の再走行開始時刻T7がメモリーカード16に記録され(記録データD7)、その後も車両の定周期走行データとして速度と走行距離に応じた現在時刻T8がメモリーカード16に記録される(記録データD8)。
【0063】
そして、ETCデータから通過時刻T9、課金処理あり、入口情報、出口情報、料金情報を作成してメモリーカード16に記録する(記録データD9)。
【0064】
その後の運行情報も車両の定周期走行データとして速度と走行距離に応じた現在の時刻T10がメモリーカード16に記録される(記録データD10)。
【0065】
車両が全ての運送業務を終了し、基地局に帰着した場合にも、その走行停止時刻T11はメモリーカード16に記録される(記録データD11)。そして、メモリーカード16を乗務員または管理者が取り出し、基地局に設置されている管理端末11にセットする。
【0066】
これにより、乗務員または管理者は管理端末11を操作してメモリーカード16に記録されているETCデータを含む運行情報を読み出し、センターサーバ13へインターネット12を通じて転送する。
【0067】
センターサーバ13は運行情報を受け取り、これに基づいて業務日報の出力情報を作成し、この業務日報の出力情報を管理端末11に表示出力すると共に、該管理端末11に接続されたプリンタ14にETC利用実績表を印刷して出力させる。
【0068】
次に、運行管理システムのセンターサーバ13での処理動作を図11のフローチャートに従って説明する。
センターサーバ13では、管理端末11からメモリーカード16に記録されている運行情報に基づいた業務日報の応答要求があったときその応答要求された情報を分析し、課金処理有りのETCデータがない場合は、有料道路の利用情報がなく、一般道路だけの運行情報と判定して(ステップn1:No)、有料道路に関する処理を終了する。
【0069】
一方、課金処理有りのETCデータがある場合は、有料道路を利用して課金処理されていると判定し(ステップn1:Yes)、そのETCデータを分析する。そして、図7に示したETC利用実績表のように、有料道路を利用したときの出口通過時刻、入口情報、出口情報及び料金情報を作成する(ステップn2)。
【0070】
そして、センターサーバ13は時系列で1つ前のETCデータを分析し、「通行可」と「課金処理なし」のETCデータが記録されていることを発見できれば(ステップn3:Yes)、そのETCデータの入口通過時刻をETC利用実績表に記録するように作成する(ステップn4)。
【0071】
これに対し、時系列で1つ前のETCデータを分析したときに、「通行可」と「課金処理なし」のETCデータでなければ(ステップn3:No)、つまり、1つ前のETCデータが存在しないか、あるいは1つ前のETCデータが「課金処理有り」である場合は、入口課金として判別し、有料道路の入口と出口を同一のデータ(名称及び時刻)をETC利用実績表に記録するように作成する(ステップn5)。センターサーバ13は、このようにして作成したETC利用実績表と共に業務日報を応答出力する。
【0072】
この実施例で説明した管理装置11は、請求項の基地局管理装置に、
センターサーバ13は運行管理サーバ及び判別手段に、
メモリーカード16は記録媒体に、
それぞれ対応するが、この発明は本実施例の構成には限定されず、適宜必要に応じた組み合わせによって、種々の構成によって達成することができる。
【0073】
例えば、車両にGPS受信機及びGPSアンテナを備え、人工衛星からの信号を受信して、地球上における該車両の位置情報を検出するGPS測位検出機能を併用して車両の運行管理を高めることもできる。また、メモリーカード16とカードリーダ17を介さずに管理端末11とデジタル式運行記録計18の間で無線LANや携帯電話通信網を利用してデータ送信することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】業務日報の未記録のフォーマット例を示す図表。
【図2】運行管理システムの概略構成図。
【図3】ETC車載器とデジタル式運行記録計のブロック構成図。
【図4】ETCデータのフォーマット例を示す説明図。
【図5】帳票フォーマット例を示す説明図。
【図6】有料道路を識別するためのフォーマット例を示す説明図。
【図7】ETC利用実績表の一例を示す説明図。
【図8】運行情報を図形により表示して示す図表。
【図9】乗務員の分析結果を図形により示す説明図。
【図10】運行管理システムの記録データ形式を示す説明図。
【図11】運行管理システムの処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0075】
11…管理端末
13…センターサーバ
15…ETC車載器
16…メモリーカード
18…デジタル式運行記録計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料道路の利用時にETC路側機に無線で通信されるETC車載器と、自車両が運行した運行情報を記録するデジタル式運行記録計とを電気的に接続し、
前記デジタル式運行記録計が、前記ETC車載器から有料道路を利用したときの入口情報・出口情報及び料金情報との有料道路運行情報を収集し、該収集した有料道路運行情報の個々に収集時刻を対応させて記録する
運行管理システム。
【請求項2】
有料道路の利用時にETC路側機に無線で通信されるETC車載器と、自車両が運行した運行情報を記録するデジタル式運行記録計と、車両の基地局となる基地局管理装置と、前記基地局管理装置と通信して車両の運行情報を管理する運行管理サーバとからなる運行管理システムであって、
前記ETC車載器とデジタル式運行記録計とを電気的に接続し、
前記デジタル式運行記録計が、前記ETC車載器から、車両が有料道路を利用したときの入口情報・出口情報及び料金情報との有料道路運行情報を収集し、
該デジタル式運行記録計では収集した有料道路運行情報の個々に収集時刻を対応させて記録媒体に記録し、
運行管理サーバでは、前記記録媒体の記録から有料道路を利用したときの区間・時間・料金を求めた有料道路利用情報を取得して蓄積・管理すると共に、該有料道路利用情報を業務日報、または専用帳票に出力する
運行管理システム。
【請求項3】
前記デジタル式運行記録計が、ETC車載器から有料道路の運行情報を収集したとき、課金有りの有料道路運行情報を出口通過情報とし、この出口通過情報毎に料金表を出力する
請求項1または2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
車両が運行した運行情報を出力する業務日報には、時系列に、走行速度と有料道路の利用を対比して図形表示する
請求項1から3の何れか1つに記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記運行管理サーバは、デジタル式運行記録計が記録した運行情報に基づいて有料道路の使用か一般道路の使用かの道路の種別を自動判別する判別手段を備えてなる
請求項1から4の何れか1つに記載の運行管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−344001(P2006−344001A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169010(P2005−169010)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】