説明

運行管理装置および運行管理方法

【課題】従来の方法ではフォークリフトの運行を十分に最適化することは難しい。
【解決手段】運行管理装置100は、対象物を運搬する運搬機の運行を管理する。運搬要求装置は運行管理装置100に対して対象物を運搬するよう要求し、運搬機は運行管理装置100に対して行き先を指示するよう要求する。運行管理装置100は、運搬要求装置の要求ごとに緊急の度合いを保持する緊急度保持部と、運搬機から指示を要求されると、緊急度保持部を参照し、運搬の要求の緊急の度合いが高いほどその運搬の要求を優先して運搬機に割り当てる運搬要求割当部と、運搬要求割当部によって割り当てられた運搬の要求に基づいて、運搬機に行き先に関する情報を送信する情報送信部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理装置および運行管理方法に関し、特に運搬機の運行を管理する運行管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、工程間の搬送をフォークリフトなどの運搬機で行う工場では、搬送すべき物品をフォークマンの人判断によって探しているところが多い。しかしながら、近年メーカでは大量生産から少量多品種生産への転換が図られており、それに伴い工場でも少量他品種生産に対応できるようラインを増やしたり工程数を増やしたりしている。
【0003】
したがって、そのような工場でより効率よくフォークリフトを運行させるためには、熟練したフォークマンの判断だけでなく運行管理システムを使用して工場全体で管理することが必要となってきている。
【0004】
フォークリフトの運行を管理する従来の技術としては、特許文献1に記載のフォークリフト運行管理方法や特許文献2に記載の荷役管理装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−214599号公報
【特許文献2】特開昭63−27970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の従来の運行管理技術では、フォークリフトと生産機器との間の距離などの空間的なパラメータによってフォークリフトの運行を最適化しようとしている。しかしながら、運搬の要求は時間軸に沿って発生するものでもあることを考えると、従来の方法ではフォークリフトの運行を十分に最適化することは難しい。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率よく運搬機の運行を管理する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は運行管理装置に関する。この運行管理装置は、対象物を運搬する運搬機の運行を管理する運行管理装置である。運搬要求装置は運行管理装置に対して対象物を運搬するよう要求し、運搬機は運行管理装置に対して行き先を指示するよう要求する。運行管理装置は、運搬要求装置の要求ごとに緊急の度合いを保持する緊急度保持部と、運搬機から指示を要求されると、緊急度保持部を参照し、運搬の要求の緊急の度合いが高いほどその運搬の要求を優先して運搬機に割り当てる運搬要求割当部と、運搬要求割当部によって割り当てられた運搬の要求に基づいて、運搬機に行き先に関する情報を送信する情報送信部と、を備える。
【0009】
この態様によると、運搬の要求をその緊急の度合いが高いほど優先的に運搬機に割り当てることができる。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率よく運搬機の運行を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る運行管理装置を備える工場の上面図である。
【図2】実施の形態に係る運行管理装置およびそれに接続される部材の機能および構成を示すブロック図である。
【図3】図2の緊急度保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図4】図2の緊急基準保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図5】図2の位置保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図6】加工機IDごとに経過時間と緊急度レベルとの関係を示した説明図である。
【図7】フォークリフトの操作パネルに表示される指示画面を示す代表画面図である。
【図8】図2の運行管理装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、実施の形態に係る運行管理装置100を備える工場2の上面図である。工場2は例えば自動車工場や製本工場などである。工場2は、第1部品製造機4、第2部品製造機6、第3部品製造機8、第4部品製造機10、第1組立機12、第2組立機14、第1フォークリフト16、第2フォークリフト18、を備える。
【0015】
第1部品製造機4、第2部品製造機6、第3部品製造機8、第4部品製造機10はそれぞれ、最終製品のための部品を原材料から製造する加工機である。第1組立機12、第2組立機14はそれぞれ、部品製造機によって製造された部品を組み立てて最終製品を作る加工機である。製造の流れの観点からは、部品製造機は上流の加工機であり、組立機は下流の加工機であると言える。以下、部品製造機と組立機とを総称して加工機と呼ぶことがある。
【0016】
第1フォークリフト16、第2フォークリフト18は、加工機によって加工される加工対象物すなわち原材料や部品および最終製品を運搬する。
運行管理装置100は、工場2内での第1フォークリフト16や第2フォークリフト18の運行を管理する。運行管理装置100は、有線または無線もしくはそれらの組み合わせによるネットワークを介して各部品製造機、各組立機、および各フォークリフトと通信する。
【0017】
加工機は運行管理装置100に対して加工対象物を運搬するよう要求する。例えば第1部品製造機4を操作するオペレータは、製造の状況を監視し、製造済みの部品が多くなってくると第1部品製造機4に備え付けられた搬出要求用のボタンを押す。このボタンが押されると、第1部品製造機4から部品を搬出するよう要求されたことを示す信号が、第1部品製造機4から運行管理装置100に送信される。以下、加工機で生じる運搬の要求を運搬要求と称す。本実施の形態では、運搬要求は、(1)加工機で加工済みのものを搬出してほしいという搬出要求と、(2)加工機で加工するためのものを搬入してほしいという搬入要求と、に分けられる。
なお、加工機は、運行管理装置100に対して加工対象物を運搬するよう要求するので、対象物を運搬するよう要求する運搬要求装置の一例であると言うことができる。
【0018】
第1フォークリフト16、第2フォークリフト18は、運行管理装置100に対して行き先を指示するよう要求する。例えば、第1フォークリフト16を操作するフォークマンは、手持ちの運搬作業が終了すると、第1フォークリフト16に備え付けられたタッチパネルなどの操作パネルで指示要求用のボタンを押す。このボタンが押されると、第1フォークリフト16から行き先を指示するよう要求されたことを示す信号が、第1フォークリフト16から運行管理装置100に送信される。以下、フォークリフトからの指示の要求を指示要求と称す。
【0019】
運行管理装置100は、運搬要求を受けて保持し、保持される各運搬要求に定期的に緊急の度合いを示す離散的な緊急度レベルを付与する。緊急度レベルは緊急の度合いが高いほど高くなるように設定される。運行管理装置100は、指示要求を受けると、保持される運搬要求から緊急度レベルが高い運搬要求を優先的に選択し、指示要求を発したフォークリフトに割り当てる。これにより、緊急の度合いが高い運搬要求を優先して処理できるので、効率的にフォークリフトの運行を管理できる。
【0020】
図2は、実施の形態に係る運行管理装置100およびそれに接続される部材の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0021】
運行管理装置100は、ネットワーク20を介して第1部品製造機4、第2部品製造機6、第3部品製造機8、第4部品製造機10、第1組立機12、第2組立機14、第1フォークリフト16、第2フォークリフト18、と接続される。
運行管理装置100は、要求取得部102、運搬要求登録部104、緊急度保持部106、緊急度レベル更新部108、緊急基準保持部110、位置更新部112、位置保持部114、運搬要求割当部116、情報送信部118、完了通知取得部134、を含む。
【0022】
要求取得部102はネットワーク20と接続され、加工機からは運搬要求を、フォークリフトからは指示要求を、それぞれ取得する。
【0023】
運搬要求登録部104は、要求取得部102によって運搬要求が取得された場合、緊急度保持部106にその運搬要求を登録する。運搬要求登録部104は、運搬要求に含まれる情報のうち、その運搬要求を発した加工機を一意に特定する加工機IDと、その運搬要求が搬出要求であるか搬入要求であるかの別と、加工機がその運搬要求を発した時刻である発生時刻と、を対応付けて緊急度保持部106に登録する。
【0024】
緊急度保持部106は、運搬要求ごとに緊急度レベルを保持する。
図3は、緊急度保持部106の一例を示すデータ構造図である。緊急度保持部106は、加工機ID302と、搬入要求の有無304と、搬入要求の発生時刻306と、搬入要求の緊急度レベル308と、搬出要求の有無310と、搬出要求の発生時刻312と、搬出要求の緊急度レベル314と、を対応付けて保持する。
【0025】
図3において、搬入要求の有無の「Y」は運行管理装置100が搬入要求を取得した後その搬入要求がまだ処理されていないことを示し、搬入要求の有無の「N」はそれ以外の状態、例えば処理が必要な搬入要求はないことを示す。搬出要求の有無についても同様である。
加工機ID「A]、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」は、第1部品製造機4、第2部品製造機6、第3部品製造機8、第4部品製造機10、第1組立機12、第2組立機14にそれぞれ対応する。
【0026】
図2に戻る。
緊急度レベル更新部108は、緊急度保持部106によって保持される各運搬要求に対して、まだ緊急度レベルが付与されていない場合は緊急度レベルを付与し、既に付与されている場合は緊急度レベルを更新する。緊急度レベル更新部108は、経過時間算出部120、緊急度レベル決定部122、緊急度レベル登録部124、を有する。
【0027】
経過時間算出部120は、定期的に緊急度保持部106を参照し、緊急度保持部106によって保持される運搬要求ごとに、加工機がその運搬要求を発してから経過した時間である経過時間を算出する。より具体的には経過時間算出部120は、緊急度保持部106によって保持される搬入要求または搬出要求ごとにその発生時刻と現在の時刻との差を算出して経過時間とする。
【0028】
緊急度レベル決定部122は、緊急基準保持部110を参照し、経過時間算出部120によって算出された経過時間に対応する緊急度レベルを決定する。
図4は、緊急基準保持部110の一例を示すデータ構造図である。緊急基準保持部110は、加工機ID316と、時間刻み318と、非常レベル320と、を対応付けて保持する。時間刻みは全ての加工機において等しく定めても良いが、好ましくは加工機ごとに、さらに好ましくは加工機の種類ごとに定められるパラメータであって経過時間と緊急度レベルとの関係を規定するパラメータである。非常レベルは、緊急度レベルの最高値である。
【0029】
緊急度レベル決定部122は経過時間算出部120から、レベル決定対象の運搬要求を発した加工機の加工機IDとその運搬要求に対して算出された経過時間とを取得する。緊急度レベル決定部122は緊急基準保持部110を参照し、取得した加工機IDに対応する時間刻みを求める。緊急度レベル決定部122は、取得した経過時間をその時間刻みで除して得られる商に1を足した数(自然数)を、レベル決定対象の運搬要求に対する緊急度レベルとして決定する。すなわち、緊急度レベルは経過時間が長いほど高く設定される。
【0030】
ここで例として図3に示される加工機ID「C」の搬入要求に対して緊急度レベルを決定する場合を考える。現在の時刻を「12:30」とする。経過時間算出部120は、加工機ID「C」の搬入要求の発生時刻「12:18」と現在の時刻「12:30」との差を計算し、経過時間「12(分)」を算出する。緊急度レベル決定部122は、図4に示される緊急基準保持部110から加工機ID「C」に対する時間刻み「5(分)」を取得する。緊急度レベル決定部122は、経過時間「12(分)」を時間刻み「5(分)」で除して得られる商「2」に1を足した「3」を、加工機ID「C」の搬入要求に対する緊急度レベルとして決定する。
【0031】
図2に戻る。
緊急度レベル登録部124は、緊急度レベル決定部122によって決定された緊急度レベルを緊急度保持部106に登録する。
【0032】
位置更新部112は定期的に、ネットワーク20を介して第1フォークリフト16、第2フォークリフト18からそれらの位置を取得する。ここでの各フォークリフトの位置の測位には、GPS(Global Positioning System)技術などの公知の測位技術が使用される。
位置更新部112は、取得したフォークリフトの位置を使用して、位置保持部114に保持される各フォークリフトの位置を更新する。
【0033】
位置保持部114は、各フォークリフトの位置を保持する。
図5は、位置保持部114の一例を示すデータ構造図である。位置保持部114は、フォークリフトを一意に特定するフォークリフトID322と、位置座標324と、を対応付けて保持する。位置座標は、位置更新部112によって最後に更新されたときの、フォークリフトの工場2内での位置を直交座標で示す。
フォークリフトID「甲」、「乙」は、第1フォークリフト16、第2フォークリフト18にそれぞれ対応する。
【0034】
図2に戻る。
運搬要求割当部116は、要求取得部102によって指示要求が取得された場合、緊急度保持部106を参照し、運搬要求の緊急度レベルが高いほどその運搬要求を優先して指示対象のフォークリフトに割り当てる。ここで指示対象のフォークリフトは、要求取得部102によって取得された指示要求を発したフォークリフトである。
運搬要求割当部116は、運搬要求抽出部126、位置取得部128、運搬要求絞込部130、非常用優先処理部132、を有する。
【0035】
運搬要求抽出部126は、要求取得部102によって指示要求が取得された場合、緊急度保持部106によって保持される運搬要求のうち、緊急度保持部106によって保持される緊急度レベルのなかで最も高い緊急度レベルに属する運搬要求を抽出する。運搬要求抽出部126は、抽出された運搬要求がひとつの場合、その運搬要求を指示対象のフォークリフトに割り当てる。
【0036】
位置取得部128は、位置保持部114を参照し、指示対象のフォークリフトの位置座標を取得する。
運搬要求絞込部130は、運搬要求抽出部126によって抽出された運搬要求が複数の場合、その複数の運搬要求(以下、絞込対象の運搬要求と称す)のなかから所定の規則に基づいてひとつの運搬要求を選択し、指示対象のフォークリフトに割り当てる。所定の規則に関して、運搬要求絞込部130は短距離モードとマッチングモードとを有する。
【0037】
(短距離モード)
短距離モードでは、運搬要求絞込部130は、絞込対象の運搬要求のなかから特許文献1や特許文献2に記載の搬送ロジックなどの公知の搬送ロジックを使用してひとつの運搬要求を選択する。
【0038】
(マッチングモード)
マッチングモードは、工場2のように上流の加工機(部品製造機)と下流の加工機(組立機)とが存在する場合に好適に利用される。マッチングモードでは、運搬要求絞込部130はまず、絞込対象の運搬要求から上流の加工機の搬出要求を選択する。選択された搬出要求が複数ある場合は、運搬要求絞込部130は指示対象のフォークリフトからの距離が最も短い上流の加工機の搬出要求を選択する。運搬要求絞込部130は、指示対象のフォークリフトからの距離を、位置取得部128によって取得された位置座標を使用して算出する。
【0039】
次に運搬要求絞込部130は、絞込対象の運搬要求から下流の加工機の搬入要求を選択する。選択された搬入要求が複数ある場合は、運搬要求絞込部130は、選択された搬出要求を発した上流の加工機からの距離が最も短い下流の加工機の搬入要求を選択する。
運搬要求絞込部130は、選択された上流の加工機の搬出要求と選択された下流の加工機の搬入要求との対をひとつの運搬要求として指示対象のフォークリフトに割り当てる。
【0040】
図3に示される緊急度保持部106を例にとってマッチングモードを説明する。指示対象のフォークリフトを第1フォークリフト16とする。運搬要求抽出部126は、図3に示される緊急度保持部106に保持される緊急度レベルのなかで最も高いレベルである緊急度レベル「3」に属する運搬要求を抽出する。ここで抽出される運搬要求は、加工機ID「A」の搬出要求、加工機ID「B」の搬出要求、加工機ID「C」の搬入要求、加工機ID「D」の搬入要求、加工機ID「E」の搬入要求、の5つである。
【0041】
運搬要求絞込部130は、5つの運搬要求から、部品製造機に対応する加工機IDを有する搬出要求を選択する。ここでは加工機ID「A」の搬出要求および加工機ID「B」の搬出要求が選択される。運搬要求絞込部130は、この2つの搬出要求のうち第1フォークリフト16からの距離がより短い第1部品製造機4に対応する加工機ID「A」の搬出要求を選択する。運搬要求絞込部130は、5つの運搬要求から、組立機に対応する加工機IDを有する搬入要求を選択する。ここでは加工機ID「E」の搬入要求が選択される。運搬要求絞込部130は、加工機ID「A」の搬出要求と加工機ID「E」の搬入要求との対をひとつの運搬要求として第1フォークリフト16に割り当てる。
この結果、第1フォークリフト16の操作パネルには、第1部品製造機4から部品を搬出して第1組立機12に搬入する、という主旨の指示が表示される。
【0042】
非常用優先処理部132は、要求取得部102によって指示要求が取得されたか否かにかかわらず定期的に、緊急度保持部106によって保持される運搬要求のなかから緊急度レベルが非常レベルとなっている運搬要求を検索する。この際、非常用優先処理部132は、各加工機の非常レベルについて緊急基準保持部110を参照する。
【0043】
検索の結果そのような運搬要求が発見された場合、非常用優先処理部132は、通常の優先処理とは異なる非常用優先処理によってその運搬要求をフォークリフトに割り当てる。ここで通常の優先処理とは、運搬要求抽出部126、位置取得部128、運搬要求絞込部130によって行われる優先処理である。
【0044】
非常用優先処理においては、非常用優先処理部132は、緊急度レベルが非常レベルとなっている運搬要求を、次に指示要求を発してきたフォークリフトに対して無条件で割り当てる。緊急度レベルが非常レベルとなっている運搬要求が複数発見された場合は、非常用優先処理部132は、それらの運搬要求が発生した順、すなわち発生時刻が古い順に割り当てる。
【0045】
情報送信部118は、運搬要求割当部116によって割り当てられた運搬要求の内容に基づいて、指示対象のフォークリフトに行き先に関する情報を送信する。
例えば運搬要求割当部116によって指示対象のフォークリフトに割り当てられた運搬要求が搬出要求の場合は、情報送信部118はその搬出要求を発した加工機の場所を含む行き先データを指示対象のフォークリフトにネットワーク20を介して送信する。
【0046】
また、運搬要求割当部116によって指示対象のフォークリフトに割り当てられた運搬要求が搬入要求の場合は、情報送信部118は、その搬入要求を発した加工機に搬入すべき原材料や部品などの搬入対象物が保管または製造されている場所と、その搬入要求を発した加工機の場所と、を含む行き先データを指示対象のフォークリフトにネットワーク20を介して送信する。ここで上記マッチングモードが使用された場合は、情報送信部118は、搬出要求を発した上流の加工機の場所と、搬入要求を発した下流の加工機の場所と、を含む行き先データを指示対象のフォークリフトにネットワーク20を介して送信する。
【0047】
完了通知取得部134は、フォークリフトまたは加工機によって発せられる完了通知をネットワーク20を介して取得する。完了通知は運搬要求に対応する運搬が完了したことを知らせる通知であり、フォークリフトが指示された運搬を完了したときフォークリフトまたは加工機によって発せられる。完了通知取得部134は、完了通知を取得すると、緊急度保持部106の対応する運搬要求を削除する。ここで、フォークリフトから発せられる完了通知は次の指示要求とみなされてもよい。
【0048】
図6は、加工機IDごとに経過時間と緊急度レベルとの関係を示した説明図である。図6の縦軸は経過時間、横軸は加工機IDを示す。各加工機IDに対応する棒グラフの中の数字は、対応する経過時間の範囲に対して定められた緊急度レベルを示す。
【0049】
図7は、フォークリフトの操作パネルに表示される指示画面400を示す代表画面図である。指示画面400は、運行管理装置100から受信した行き先データに基づいて運行管理装置100からの指示内容を表示する指示内容表示領域402と、運行管理装置100に指示要求を送信するための指示要求送信ボタン404と、を有する。
【0050】
以上の構成による運行管理装置100の動作を説明する。
図8は、実施の形態に係る運行管理装置100における一連の処理を示すフローチャートである。加工機は運搬要求を運行管理装置100に送信する(S202)。要求取得部102が運搬要求を取得すると、運搬要求登録部104はその運搬要求を緊急度保持部106に登録する(S204)。運行管理装置100は、加工機からの運搬要求がある度にステップS204を繰り返す。
【0051】
緊急度レベル更新部108は定期的に、緊急度保持部106に保持される運搬要求の緊急度レベルを更新する(S206)。フォークリフトは、次の作業の指示が必要な場合、指示要求を運行管理装置100に送信する(S208)。要求取得部102が指示要求を取得すると、運搬要求割当部116は、緊急度保持部106によって保持される運搬要求のうち、緊急度レベルが最も高いレベルに属する運搬要求を抽出する(S210)。運搬要求割当部116は、抽出された運搬要求が複数の場合、抽出された複数の運搬要求を短距離モードまたはマッチングモードを使用してひとつに絞り込む(S212)。運搬要求割当部116は、絞り込まれたひとつの運搬要求を、指示要求を発したフォークリフトに割り当てる。情報送信部118は、割り当てられた運搬要求に基づく行き先情報を、指示要求を発したフォークリフトに送信する(S214)。
【0052】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0053】
本実施の形態に係る運行管理装置100によると、運搬要求の緊急度レベルが高いほどその運搬要求は優先して指示対象のフォークリフトに割り当てられる。したがって、運行管理装置100で受け付けられた運搬要求全体の緊急の度合いをより低くするようにフォークリフトの運行が管理される。これにより、例えばフォークリフトと加工機との距離を主なパラメータとして最適化する場合と比べて搬入・搬出不足により加工機が止まってしまう可能性を低減できるので、より効率よくかつ異常が発生する確率の低いフォークリフトの運行管理が可能となる。
【0054】
加工機のオペレータは通常ある程度の余裕をもって運搬要求を運行管理装置100に送信する。したがって、経過時間が長いほど緊急の度合いは高まってゆく。そこで本実施の形態に係る運行管理装置100では、緊急度レベルは経過時間が長いほど高く設定される。このように運搬要求の割り当てに時間の情報を導入することで、より工場操業の実態に即した形でのフォークリフトの運行管理が可能となる。
【0055】
また、加工機ごともしくは加工機の種類ごとに緊急度レベルと経過時間との関係を設定できるので、加工機の違いもしくは加工機の種類の違いによる緊急性の違いも考慮に入れることができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る運行管理装置100では、緊急度保持部106によって保持される運搬要求のうち、緊急度レベルが最も高いレベルに属する運搬要求が抽出され、そのなかからひとつの運搬要求が選択されてフォークリフトに割り当てられる。したがって、優先管理を段階的に行うことができる。また、緊急度レベルによる選択と他の規則による選択とを好適に融合させることができ、より効率のよい運行管理が可能となる。
【0057】
また、本実施の形態に係る運行管理装置100では、緊急度保持部106によって保持される運搬要求のなかに非常レベルの運搬要求がある場合、その運搬要求は非常用優先処理によってフォークリフトに割り当てられる。非常レベルの運搬要求は、例えば加工機が運転を続けることができるか否かに関わる運搬要求である。運行管理装置100はそのような運搬要求を最優先で処理するようにフォークリフトに指示を出すことができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る運行管理装置100は、上流、下流の加工機が存在する状況においてマッチングモードを有する。したがって、両方の加工機のニーズに基づいてより効率的にフォークリフトの運行を管理できる。
【0059】
以上、実施の形態に係る運行管理装置100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
実施の形態では、非常用優先処理部132は緊急度保持部106を検索する場合について説明したが、これに限られない。例えば、非常用優先処理部は、緊急度レベル更新部108において非常レベルが発生した場合、その旨の通知を緊急度レベル更新部108から受けてもよい。あるいはまた、検索および通知の組み合わせが使用されてもよい。
【0061】
実施の形態では、工場2は上流の加工機と下流の加工機とを有する場合について説明したが、これに限られず、例えば単一の種類の加工機を有する工場に本実施の形態で説明した運行管理方法を導入してもよい。あるいはまた、加工機によって加工される加工対象物だけでなくより一般的に対象物を運搬する運搬機の運行を管理する場合に、本実施の形態で説明した技術的思想を適用してもよい。例えば、配送センターのトラックターミナルなどで、対象物を倉庫などからトラックバースへの搬送する作業と、対象物をトラックバースからトラックに積み込む作業とを行うフォークリフトの運行管理に本実施の形態で説明した運行管理方法を導入してもよい。
【0062】
実施の形態では、緊急度レベルと経過時間とが比例関係にある場合について説明したが、これに限られず、両者は別の関係、例えば指数関数的な関係、を有してもよい。
【0063】
実施の形態では、運搬機としてフォークリフトを例に説明したが、これに限られず、運行管理装置はキャッチパレットトラックやサントピッカーやパワーリフタなどの他の運搬機の運行を管理してもよい。
【0064】
実施の形態では、緊急度レベル更新部108が緊急度レベルを更新する場合について説明したが、これに限られず、加工機が運搬要求と共に緊急度レベルの初期値を送信してもよい。この変形例では、運搬要求登録部は運搬要求と緊急度レベルの初期値とを対応付けて緊急度保持部に登録する。この場合、例えば搬送ミスが起こった場合に好適に対応できる。すなわち、搬送ミスにより加工機に間違った原材料が搬入された場合、その加工機には一刻も早く正しい原材料が搬入されなければならない。そこでその加工機は再度搬入要求を出す際緊急度レベルの初期値を高く設定する。これにより、優先して原材料の搬入を受けて運転を継続することができる。
【0065】
実施の形態では、位置更新部112は定期的にフォークリフトからそれらの位置を取得する場合について説明したが、フォークリフトの作業完了ボタンの信号を受信した際に、フォークリフトの位置情報をその時点でのフォークリフトの位置に更新してもよい。
【符号の説明】
【0066】
2 工場、 4 第1部品製造機、 6 第2部品製造機、 8 第3部品製造機、 10 第4部品製造機、 12 第1組立機、 14 第2組立機、 16 第1フォークリフト、 18 第2フォークリフト、 20 ネットワーク、 100 運行管理装置、 102 要求取得部、 104 運搬要求登録部、 106 緊急度保持部、 108 緊急度レベル更新部、 110 緊急基準保持部、 112 位置更新部、 114 位置保持部、 116 運搬要求割当部、 118 情報送信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を運搬する運搬機の運行を管理する運行管理装置において、運搬要求装置は前記運行管理装置に対して対象物を運搬するよう要求し、運搬機は前記運行管理装置に対して行き先を指示するよう要求するものであり、
前記運行管理装置は、
運搬要求装置の要求ごとに緊急の度合いを保持する緊急度保持部と、
運搬機から指示を要求されると、前記緊急度保持部を参照し、運搬の要求の緊急の度合いが高いほどその運搬の要求を優先して前記運搬機に割り当てる運搬要求割当部と、
前記運搬要求割当部によって割り当てられた運搬の要求に基づいて、前記運搬機に行き先に関する情報を送信する情報送信部と、を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
前記緊急度保持部によって保持される緊急の度合いは、運搬要求装置が運搬の要求を発してから経過した時間が長いほど高く設定されることを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記緊急度保持部によって保持される緊急の度合いは離散的なレベルであり、
前記運搬要求割当部は、前記緊急度保持部によって保持される緊急の度合いのレベルのうち最も緊急の度合いが高いレベルに属する複数の運搬の要求を抽出し、抽出された運搬の要求のなかから所定の規則に基づいてひとつの運搬の要求を選択して前記運搬機に割り当てることを特徴とする請求項1または2に記載の運行管理装置。
【請求項4】
前記緊急度保持部によって保持される緊急の度合いは非常レベルを有し、
前記運搬要求割当部は、前記緊急度保持部によって保持される運搬の要求のなかに緊急の度合いが前記非常レベルである運搬の要求がある場合、通常の優先処理とは異なる非常用優先処理によってその運搬の要求を前記運搬機に割り当てることを特徴とする請求項3に記載の運行管理装置。
【請求項5】
対象物を運搬する運搬機の運行を管理する運行管理方法において、運搬要求装置は対象物を運搬するよう要求し、運搬機は行き先を指示するよう要求するものであり、
前記運行管理方法は、
運搬要求装置の要求ごとに緊急の度合いを緊急度保持部に保持するステップと、
運搬機から指示を要求されると、前記緊急度保持部を参照し、運搬の要求の緊急の度合いが高いほどその運搬の要求を優先して前記運搬機に割り当てるステップと、
割り当てられた運搬の要求に基づいて、前記運搬機に行き先に関する情報を送信するステップと、を含むことを特徴とする運行管理方法。
【請求項6】
対象物を運搬する運搬機の運行を管理する機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムにおいて、運搬要求装置は対象物を運搬するよう要求し、運搬機は行き先を指示するよう要求するものであり、
前記コンピュータプログラムは、
運搬要求装置の要求ごとに緊急の度合いを緊急度保持部に保持する機能と、
運搬機から指示を要求されると、前記緊急度保持部を参照し、運搬の要求の緊急の度合いが高いほどその運搬の要求を優先して前記運搬機に割り当てる機能と、
割り当てられた運搬の要求に基づいて、前記運搬機に行き先に関する情報を送信する機能と、を前記コンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46309(P2012−46309A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189554(P2010−189554)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】