説明

運転支援装置、運転支援装置を搭載した自動車、および運転支援方法

【課題】他車両の姿が物陰に隠れていて見えない場合であっても、他車両の音源位置を視覚的に表示して、視覚的に容易に認識できるようにした運転支援装置、運転支援装置を搭載した自動車、および運転支援方法を提供する。
【解決手段】自車両の周辺物体位置推定手段と、音源位置推定手段と、音源位置表示手段を設け、周辺物体位置推定手段で周辺物体位置を推定し、音源位置推定手段で音源位置を推定し、音源位置表示手段で、周辺物体位置と音源位置を同時に表示した。また、音源位置と前記周辺物体位置とを照合し、音源位置と前記周辺物体位置が一致している場合は、音源パターンを示す第一の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示し、音源位置に対応する周辺物体がない場合には、音源パターンを示す第二の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の近くに駐停車している他車両、あるいは自車両に接近してくる他車両を検出して、それら他車両の存在を運転者に提示して警告する運転支援装置、運転支援装置を搭載した自動車、および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転支援装置には、車両進行方向の道路を撮影して、その画像情報を処理して車両前方の交差点の状況を画像認識し、交差点の状況に応じて他の車両と衝突しそうな状況を車両の運転者に警告を行ない、場合によっては運転者に代わってブレーキをかけるなどの車両制御をするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の運転支援装置としては、交差点付近で停止したときの車両付近の音声を集音し、音声分析することにより、車両付近の他の車両や歩行者などの存在を認識できるようにした運転支援システムも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、更に他の運転支援装置として、画像認識手段と音色識別手段を持ち、画像認識手段で死角のために物体の姿が見えず物体を認識できないときに、音色識別手段である鋭指向性マイクロホンからの音情報を利用して画像認識手段で認識できない領域にある物体を検出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
そして、画像情報と音声情報の両方を組み合わせて利用した運転支援装置は、死角や不注意などで不足しがちな情報を運転者に伝えたり警告したりして、交差点での事故防止に役立っている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
しかしこれらの運転支援装置は、例えば、交差点で停止した大型車両の後ろに隠れて停車したオートバイや、見通しが悪く姿が見えないのに接近してくる車両などについて、その位置を運転者に示して警告するという点では十分ではなかった。
【特許文献1】特開2006−224754号公報
【特許文献2】特開平7−69132号公報
【特許文献3】特開平7−57199号公報
【特許文献4】特開平8−202999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の運転支援装置に比べて、より高い精度で、自車両付近に駐停車している他車両、あるいは自車両に向かってくる他車両を、運転者が視覚的に容易に認識できるようにした運転支援装置、運転支援装置を搭載した自動車、および運転支援方法を提供することを目的とする。
【0008】
特に、他車両の姿が物陰に隠れていて見えない場合であっても、他車両の車種と音源位置を視覚的に表示して、運転者が他車両を容易に認識できるようにした運転支援装置、運転支援装置を搭載した自動車、および運転支援方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の運転支援装置は、自車両の周辺物体位置推定手段と、音源位置推定手段と、音源位置表示手段を有し、周辺物体位置推定手段で周辺物体位置を推定し、音源位置推定手段で音源位置を推定し、音源位置表示手段で周辺物体位置と音源位置を同時に表示するよう構成した。
【0010】
この構成により、自車両の周囲にある他の自動車やオートバイなどの周辺物体位置を表示するだけでなく、自車両の周囲にある他の自動車やオートバイなどの音源位置を同時に表示することができるので、自車両の周囲に見える他の自動車やオートバイなどの周辺物体位置と音源位置はもちろん、自車両の周囲で見えないけれど音が聞こえる他の自動車やオートバイの音源位置を知ることができるという効果がある。
【0011】
また、本発明の運転支援装置の音源位置推定手段は、複数の集音手段と、音源パターン検出手段と、音源位置算出手段を有し、複数の集音手段で集音した音源について、音源パターン検出手段が予め登録した音源パターンと照合して音源パターンを特定するとともに、音源位置算出手段が音源の存在している音源位置を算出するよう構成し、音源位置表示手段が音源パターンを示す表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示するように構成した。
【0012】
この構成により、自車両の周囲にある音源の音源パターンと音源位置を知ることが出来るので、自車両の周囲に他の自動車がいるのかオートバイがいるのか、他の車両の車種とその位置を知ることができるという効果がある。
【0013】
また、本発明の周辺物体位置推定手段は、複数の車室外撮影手段と、周辺物体検出手段と、周辺物体位置算出手段を有し、複数の車室外撮影手段で撮影した画像について、周辺物体検出手段が自車両の周辺物体を検出し、周辺物体位置算出手段が周辺物体の存在している位置を算出するように構成した。
【0014】
この構成により、いわゆるステレオカメラを用いた精度の高い周辺物体位置推定を行なえるという効果がある。
【0015】
また、本発明の運転支援装置は、音源位置と周辺物体位置とを照合し、音源位置と周辺物体位置が一致している場合は、第一の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示し、音源位置に対応する周辺物体がない場合には、第二の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示するように構成した。
【0016】
この構成により、音源位置に対応する周辺物体がない場合には、目に見えない音源が近くにあることを警告することができるという効果がある。
【0017】
また、本発明の運転支援装置を搭載した自動車は、はじめから運転支援装置が自動車に搭載されているので、自動車に搭載される他のナビゲ―ション装置やオーディオ機器等の車載電子機器と連動するように構成したり、音源位置表示手段など共通的な手段を共用したりすることができ、機能的にもナビゲ―ション装置の一機能としての使い勝手を提供することができる。
【0018】
そして、本発明の運転支援方法は、自車両の進路前方領域の画像から周辺物体を検出する第一のステップと、第一のステップで検出した周辺物体位置について、自車両からの距離と方角を算出する第二のステップと、自車両の周辺の音からエンジン音、タイヤの走行音や走行による風切り音等のいわゆる車両音の音源を検出する第三のステップと、前記第三のステップで検出した車両音の音源位置について、自車両からの距離と方角を算出する第四のステップと、車両音の音源位置と前記周辺物体位置が一致するときは、前記車両音の音源位置を第一の表示形態で表示する第五のステップと、車両音の音源位置と前記周辺物体位置が一致していないときは、前記車両音の音源位置を第二の表示形態で表示する第六のステップを有する運転支援方法として構成している。そのため、自動車に所要のハード手段が組み込まれていれば、本発明の上記各ステップを実行するよう制御することにより、安全快適な運転支援ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の運転支援装置、あるいは運転支援装置を搭載した自動車では、自車両の周囲に見える他の自動車やオートバイなどの周辺物体位置はもちろん、自車両の周囲で見えないけれど音が聞こえる他の自動車やオートバイの音源位置をも知ることができる。そのため自動車の陰に隠れている他の自動車やオートバイや、死角から近づいてくる他の自動車やオートバイなど、運転者が気づいていない車両を運転者に認識させて安全運転を支援できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第一の実施の形態にかかる運転支援装置を搭載した自動車のブロック図を示す。図1では、理解しやすくするため、四つの車輪101を持つ実線の枠で示した自動車100の上に破線の枠で示した運転支援装置102を乗せた姿で示している。なお、運転支援装置102以外の各ブロックについては、省略して示している。自動車100は、図1の下方に示した矢印103の向き、つまり右から左に走行する。
【0022】
図1の運転支援装置102は、車室外撮影部104、周辺物体検出部105、周辺物体位置推定部106と、四つのマイクロホン、すなわち第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111と、音源位置推定部112を持ち、周辺物体位置推定部106と音源位置推定部112を音源位置表示制御部107に接続している。また、音源位置表示制御部107には、表示部113、警告部114、そして起動スイッチ115を接続している。
【0023】
車室外撮影部104は、図示していないが、複数のカメラを持ち、被写体の画像を撮影するだけでなく、いわゆるステレオカメラとして立体画像から被写体の距離を測定できるようにしている。なお、車室外撮影部104は暗いところでも使える暗視カメラを用いたものとしても良い。
【0024】
図1では車室外撮影部104を自動車100の前方に設けたように示しているが、例えば、自動車100の天井外部に360度回転可能な回転台を置いて、その上に車室外撮影部104を載せた構成としてもよい。回転台を自動車100の進路にあわせて図示しない駆動手段で回転させて、回転台に載せた車室外撮影部104の向きが進行方向あるいはハンドルの向きと一致するようにしておけば、前進するときは自動車100の前方を撮影し、バックするときは自動車100の後方を撮影することができる。また右折するときは前方右方向の領域を、左折するときは前方左方向の領域をより多く撮影することができる。更に、交差点で停車したときや見通しの悪い地点では、車室外撮影部104の向きを、死角となりやすい領域や見通しの悪い領域をより多く撮影するように制御してもよい。
【0025】
車室外撮影部104で撮影した画像は、周辺物体検出部105に入力される。周辺物体検出部105では、図示しない記憶手段に、予めバス、トラック、タクシー、普通乗用車、オートバイなどの画像パターンのデータを複数登録しておき、入力された画像の中から予め登録してある画像パターンの有無をチェックして、入力された画像の中に同一又は類似する画像パターンがあれば、その画像部分を周辺物体として検出する。また、車室外撮影部104は、先に説明したように、いわゆるステレオカメラとして立体画像データを得ることができる。そして、周辺物体位置推定部106は、周辺物体と車室外撮影部104との距離と周辺物体がある方角を算出する。
【0026】
また、第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111も、図1では自動車100の前方に設けたように示しているが、既に説明した車室外撮影部104と同様に、自動車の天井外部に360度回転可能な回転台を置いて、その上に四つの集音部を載せてもよい。これら四つの集音部は集音した情報を音源位置推定部112に送出する。
【0027】
音源位置推定部112は、手段として音源パターン検出手段と音源位置算出手段を持っている。音源位置推定部112は、四つの集音部から送られてきた音響信号を分析し、音源パターン検出手段により、その音響信号の中のいわゆる車両音であるエンジン音について、いくつの音源が存在し、その音源はどういう音源パターンかを判別する。そして、音源位置算出手段により、それぞれの音源の集音部からの距離と、音源の存在する位置の方角を算出する。
【0028】
なお、ここでは詳しく説明しないが、車両検出のためのS/N比向上と音の空間分布の確からしさを高めるようにしておくことが望ましい。
【0029】
音源位置表示制御部107には、車室外撮影部104で撮影して位置を推定した自車両周辺の周辺物体位置、そして四つの集音部で集音した音から推定した音源位置から、周辺物体位置と音源位置を表示部113に同時に表示する。なお、表示部113は液晶表示装置などが用いられる。
【0030】
また、音源位置表示制御部107は、音源位置を周辺物体位置と照合する。音源位置が周辺物体位置と一致しないときは、見えない位置に音源があるとして警告部114を用いて、音声メッセージや警告音で警告を発する。特に本発明では、音源位置を示すと同時に「バス」「乗用車」「トラック」「オートバイ」というように音源パターンも示すようにしている。たとえば、見えないところに、エンジンのかかっているオートバイがあることを警告するので、単に見えない位置に音源があるというだけでなく、見えない位置の音源がどういう車両であるかがわかる。
【0031】
図1において、起動スイッチ115は、運転支援装置102を起動するためのスイッチであり、起動スイッチ115により運転支援装置102を起動したり、停止させたりする。なお、図1に示すように、本発明の第一の実施の形態の自動車100では、音源位置表示制御部107にGPS(Global Positioning System)受信器116と記憶手段であるメモリ117を接続している。GPS受信器116で測定した現在位置をメモリ117に予め記憶させている地図データと照合し、例えば交差点に自動車100が近づいたときに運転支援装置102を起動するようにしている。
【0032】
このことにより、起動スイッチ115をオフにしていたとしても、道路を走行しているときに交差点の近くに来たときに運転支援装置102が自動的に起動する。
【0033】
なお、交差点に近づいたことを、GPS受信器による現在位置と地図データの照合で求める方法の他に、車室外撮影部104で撮影した画像の中に、交差点があることを示す標識、カーブミラー、信号器や横断歩道など交差点を示す特徴的な画像が含まれていたときには交差点に近づいたと判定するようにしてもよい。
【0034】
また、交差点以外にも前方道路がカーブしていて見通しが悪いことを標識または道路形状で判断したときは、起動スイッチ115をオンにして、運転支援装置102を起動するようにしてもよい。
【0035】
図2に、本発明の第一の実施の形態の運転支援装置を搭載した自動車100の動作を示すフロー図を示す。まず、起動スイッチ115をオンにして運転支援装置102の各ブロックの動作を開始させる(ステップS1)。すると、車室外撮影部104が進路前方領域を特定して撮影を行い(ステップS2)、周辺物体検出部105が進路前方領域の周辺物体を検出する。具体的には、車室外撮影部104で撮影した画像が周辺物体検出部105に入力され、周辺物体検出部105に予め登録してあるバス、トラック、タクシー、普通乗用車、オートバイなどの画像パターンが画像中に含まれているかどうかをチェックし、いずれかの画像パターンと同一又は類似したものがあれば、周辺物体として検出する(ステップS3)。そして、車室外撮影部104が撮影した立体画像データから周辺物体位置推定部106が、周辺物体と車室外撮影部104との距離と、周辺物体の位置する方角を算出する(ステップS4)。
【0036】
そして、四つの集音部、第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111が自動車100周辺の音を集音し、音源位置推定部112に集音した情報を送出する。
【0037】
音源位置推定部112は、四つの集音部から送られてきた音響信号を分析し、その音響信号の中のいわゆるエンジン音の有無を判定し(ステップS5)、エンジン音が含まれていれば(ステップS5のYes)、エンジン音の音源について、いくつ音源が存在し、音源はそれぞれどういう音源パターンかを判別し、それぞれの音源が集音部からの距離と音源の存在する位置の方角を算出する。音源の存在する位置と方角を算出するには、四つの集音部に到来する音の周波数とパワーの大小を分析して求める(ステップ6)。
【0038】
音源位置表示制御部107は、エンジン音源の音源パターンと音源位置を表示部113に表示する(ステップS7)。次いで、周辺物体とその位置を表示する(ステップS8)。なお、図2のフロー図のステップS5で、集音部から送られてきた音響信号にエンジン音が含まれていないときは(ステップS5のNo)、音源パターンや音源位置を求めることなく周辺物体を表示して一旦、動作を終える(ステップS9)。
【0039】
図3に、本発明の第一の実施の形態の運転支援装置を搭載した自動車100が交差点200の手前に到達したときの平面図を模式的に示す。自動車100が、図3の右側から交差点200の手前に来たとき、センターライン201の向こう側の反対車線にはバス301とオートバイ302が走行していたとして説明する。信号機202が赤になると、自動車100、バス301、オートバイ302がそれぞれ停止する。自動車100とバス301は、それぞれの停止線203の前で停止するが、オートバイ302はバス301の陰で止まる。
【0040】
ここでもし、本発明の自動車100の運転支援装置102が動作していなかったとすれば、運転者に見えるのは、反対車線のバス301だけである。バス301の後ろにオートバイ302が隠れていることは見えない。ここに第一の危険が潜んでいる。
【0041】
また、図3で、自動車100がセンターライン201との間にオートバイが通過できる幅を残して停車していると、他のオートバイ303が自動車100の右から進入してくる可能性がある。右折するオートバイは、すばやく交差点を通過したいためにセンターライン201側に寄ってくるためであり、自動車100が右折するときに、右側に進入してくるオートバイに気づかず衝突することが多いと言われている。ここに第二の危険が潜んでいる。
【0042】
しかし、本発明の第一の実施の形態の運転支援装置102が動作していれば、これらの第一の危険、第二の危険を自動車100の運転手がすばやく察知することができる。
【0043】
図4(a)と図4(b)を用いて、本発明の第一の実施の形態の運転支援装置の表示部113に、自動車100が交差点の手前に到達した前後の状況がどのように示されるかを説明する。図4(a)は、自動車100が交差点200にさしかかったときに表示部113に示される表示内容を示し、図4(b)は、自動車100、バス301、オートバイが交差点200で停止したときの表示部113に示される表示内容を示す。
【0044】
図4(a)で、自動車100が交差点200にさしかかると、GPS受信器の現在位置データと地図データの照合で、交差点200に接近したと判断され、起動スイッチ115が入る。すると、車室外撮影部104は、進路前方領域を撮影する。進路前方領域の画像には交差点200の右前方、センターライン201の右側の反対車線上、停止線203の少し向こうにバス301とオートバイ302の画像がある。周辺物体検出部105が、予め登録してある画像パターンと照合して、バス301とオートバイ302を周辺物体として検出する。また、周辺物体位置推定部106が、周辺物体として検出したバス301とオートバイ302について、それぞれと車室外撮影部104との距離と、それぞれの周辺物体が位置している方角を算出する。
【0045】
一方、四つの集音部が自動車100の周辺の音を集音し、音の周波数とパワーを基に音響信号を分析し、その音響信号の中のいわゆるエンジン音について、いくつの音源が存在し、その音源はどういう音源パターンかを判別し、それぞれの音源が集音部からの距離と音源の存在する位置の方角を算出する。図4(a)では、音源パターンとして、オートバイのエンジン音とバスのエンジン音が求まり、音源位置にそれぞれ四角い枠で囲った「オートバイ」、「バス」という音源パターンを示す表示402、401が示される。また、周辺物体としてバス301とオートバイ302が表示される。
【0046】
自動車100が停車すると、バス301とオートバイ302も停車して、表示部113に示される表示内容は図4(a)の状態から図4(b)の状態に変わる。なお、図4(b)では、オートバイ302はバス301の陰に隠れている。自動車100からオートバイ302の姿は見えないが、オートバイ302のエンジン音は集音され、音源パターンと音源位置が推定されるので、オートバイの音源位置を示す表示402が、表示部113には表示される。
【0047】
なお、このようにいずれかの車両が他の車両の陰に隠れていて、オートバイ302とバス301というように車両の車種が違うときは「バスの後ろ。バイク。注意。」というような警告メッセージを警告部114から出すようにしている。隠れている車両の車種がそれを隠している車両の車種と違うと、両者の走り方に差が有って危険だからである。
【0048】
また、図4(b)では、自動車100の右側後方から接近する他のオートバイ303のエンジン音が集音され、エンジン音の音源パターンと音源位置が推定されると、自動車100の右側に音源位置を示す表示403が表示される。このように、本発明にかかる運転支援装置102が搭載されていれば、バスの陰に隠れて見えないオートバイ302や、自動車100の右側をかすめて通り抜けようとしているオートバイ303などを察知することができる。ここで、音源位置を示す表示401、402、403については、エンジン音の音源パターン、つまり車種名を四角いプレートに文字で書いた表示であるとして説明したが、簡単なマークやアイコンで表示してもよい。
【0049】
このように本発明の第一の実施の形態にかかる運転支援装置102を搭載した自動車100の運転者は、先に指摘した第一の危険と第二の危険を回避することができる。
【0050】
なお、上記の説明では、四つの集音部が自動車100の周辺の音を集音する際に、車室外撮影部104で撮影した画像に基づいて周囲物体位置推定部106が推定した周辺物体の位置を加味しないで集音することを説明したが、周囲物体位置推定部が推定した周辺物体がある方向に集音部を向けて、より効率的に自車両周辺の状況把握をしても良い。また逆に、画像から周辺物体としての車両が無さそうな領域について注意深く集音して、画像による周囲物体である車両検出を補うように構成しても良い。
【0051】
また、複数の集音部の説明として、四つの集音部で構成した例を示したが、集音部に到達する時間差や音圧の差などから音源の位置を算出することができれば、二以上の集音部があればよく、更に集音部を増やして五つ、あるいは六つの集音部を用いることにより、音源位置算出の精度を高くしてもよい。
【0052】
(実施の形態2)
次に、本発明の第二の実施の形態にかかる運転支援装置を搭載した自動車について説明する。本発明の第二の実施の形態かかる運転支援装置は、周辺物体位置と音源位置を照合し、周辺物体位置と対応しない音源位置があるときに警告を発するようにした点に特徴がある。
【0053】
この構成により、周辺物体の位置と対応しないエンジン音源があるときには、画像としては見えていないところにエンジンがかかっている車両があると判断して、運転手にその音源がどこにあるかを示して警告する効果がある。
【0054】
既に説明した第一の実施の形態では、自動車の右側後方から接近する他のオートバイ303のエンジン音が集音され、エンジン音の音源パターンと音源位置が推定されたとしても、自動車の右側に音源位置を示す表示403が表示されるにとどまっていたが、第二の実施の形態では、自動車の右側後方から接近する他のオートバイ303のエンジン音が集音され、エンジン音の音源パターンと音源位置が推定されたのち、対応する周辺物体がないときは、自動車の右側に対応する周辺物体がない音源があるとして、音源位置を示す表示の色を他の色に変えて表示し、「右側。見えない。オートバイ。注意。」という警告を発して自動車の運転者を支援する。
【0055】
なお、本発明の第二の実施の形態かかる運転支援装置を搭載した自動車の構成は、基本的に既に説明した第一の実施の形態と同じなので、ブロック図の図示と説明を省略する。
【0056】
図5に、本発明の第二の実施の形態かかる運転支援装置を搭載した自動車の動作を示すフロー図を示す。まず、起動スイッチ115を操作して運転支援装置を起動する(ステップS1)。すると、車室外撮影部104は、進路前方領域を特定して撮影し(ステップS2)、進路前方領域の周辺物体を検出する。
【0057】
すなわち、車室外撮影部104で撮影した画像は、周辺物体検出部105に入力され、周辺物体検出部105では、予め登録してあるバス、トラック、タクシー、普通乗用車、オートバイなどの画像パターンと照合して、合致する画像パターンがあれば、周辺物体として検出する(ステップS3)。そして、車室外撮影部104がステレオカメラとして撮影した立体画像データを周辺物体位置推定部106が検出した周辺物体と車室外撮影部104との距離と、周辺物体の位置する方角を算出する(ステップS4)。
【0058】
そして、四つの集音部、第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111が自動車周辺の音を集音し、音源位置推定部112に集音した情報を送出する。音源位置推定部112は、四つの集音部から送られてきた音響信号を分析し、その音響信号の中のいわゆるエンジン音の有無を判定し(ステップS5)、エンジン音が含まれていれば(ステップS5のYes)、エンジンの音源について、いくつの音源が存在し、その音源はどういう音源パターンかを判別し、それぞれの音源が集音部からの距離と、音源の存在する位置の方角を算出する(ステップS6)。
【0059】
音源位置表示制御部107は、音源位置と周辺物体位置が一致するか否かをエンジン音源の一つ一つについて順次、照合する(ステップS9)。音源位置と周辺物体位置が一致しているときは音源位置を第一の表示形態、例えば青色の文字パターンで表示する(ステップS10)。全てのエンジン音源について表示が終わっていないと(ステップS11)、エンジン音源の位置を推定して(ステップS6)、照合する(ステップS9)。
【0060】
音源位置と周辺物体位置が一致していないときは、先に例示した「右側。見えない。オートバイ。注意。」というような警告音を発するとともに、音源位置を第二の表示形態、例えば赤色の文字パターンで表示する(ステップS12)。なお、警告音としては、特定のブザー音や警告メッセージ音声を発しても良いが、集音部に到達した音そのものを生の警告情報として発しても良い。また、図5のステップS5で、エンジン音がないときは、周辺物体を表示して(ステップS13)動作を終える。
【0061】
以上の手順を運転支援方法として簡略化した表現にまとめると、以下のように表現することもできる。
【0062】
まず、第一のステップとして、自車両の進路前方領域の画像から周辺物体を検出する。第二のステップとして、周辺物体位置について、自車両からの距離と方角を算出する。第三のステップとして、自車両の周辺の音からエンジン音の音源を検出する。第四のステップとして、エンジン音の音源位置について、自車両からの距離と方角を算出する。第五のステップとして、エンジン音の音源位置と周辺物体位置が一致するときは、エンジン音の音源位置を第一の表示形態で表示する。第六のステップとして、エンジン音の音源位置と周辺物体位置が一致していないときは、エンジン音の音源位置を第二の表示形態で表示する。これらのステップを有する運転支援方法。
【0063】
なお、ここで第一のステップと第二のステップを一組のステップとして、第三のステップと第四のステップを一組のステップとして順序を入れ替えても良いし、同時に行なっても良い。
【0064】
本発明の第二の実施の形態にかかる運転支援装置では、周辺物体の位置と対応しないエンジン音源があるときには、画像として見えていないところにエンジンがかかっている車両があると判断して、運転手にその音源がどこにあるかを示して警告することが出来るので、車両の陰や車両以外の障害物の陰から不意に出てきた車両と衝突することが予防できるという効果が得られる。
【0065】
(実施の形態3)
次に、本発明の第三の実施の形態かかる運転支援装置を搭載した自動車について説明する。第三の実施の形態かかる運転支援装置は、周辺物体として停車している車両を検出し、停車している車両の位置とエンジン音の音源の位置を照合し、停車車両の位置とエンジン音の音源の位置が一致したときは音源パターンの表示を点滅したり、表示色を変えたり、例えば「停車車両。エンジン動作中。」などと警告する警告表示モードで表示するようにした点に特徴がある。
【0066】
なお、周辺物体が停車している車両かどうかの判定は、既に図1を用いて説明した周辺物体位置推定部106において、その周辺物体の画像と近傍の画像の相対関係、例えば路肩の画像とタイヤの画像、車体の画像と近傍の背景画像を比べることによって、周辺物体の位置が変化していないことを確認することで行なうことができる。そのため、本発明の第三の実施の形態かかる運転支援装置を搭載した自動車のブロック図は図1のブロック図と基本的に同じなので図示と説明を省略する。以下、本発明の第三の実施の形態にかかる運転支援装置を搭載した自動車の動作を図6のフロー図で説明し、図7と図8で、実施の態様の具体的な効果を説明する。
【0067】
図6において、起動スイッチ115を操作して運転支援装置102を起動する(ステップS1)。すると、車室外撮影部104は、進路前方領域を特定して画像を撮影する(ステップS2)、そして、進路前方領域の周辺物体を検出する。このとき、周辺物体と近傍の画像の相対位置関係が変化していないものを「停車中の車両」として検出する(ステップS15)。そして、車室外撮影部104がステレオカメラとして撮影した立体画像データを周辺物体位置推定部106が検出した「停車中の車両」と車室外撮影部104との距離と、周辺物体の位置する方角を算出する(ステップS16)。
【0068】
そして、四つの集音部、第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111が自動車100周辺の音を集音し、音源位置推定部112に集音した情報を送出する。
【0069】
音源位置推定部112は、四つの集音部から送られてきた音響信号を分析し、その音響信号の中のいわゆるエンジン音の有無を判定し(ステップS5)、エンジン音が含まれていれば(ステップS5のYes)、エンジンの音源について、いくつの音源が存在し、その音源はどういう音源パターンかを判別し、それぞれの音源が集音部の載せられている回転台の中心からの距離と音源の存在する位置の方角を算出する(ステップ6)。
【0070】
音源位置表示制御部107は、音源位置と停車中車両の位置が一致するか否かをエンジン音源の一つ一つについて順次、照合する(ステップS17)。音源位置と停車中車両の位置が一致しているときは音源位置を示す音源パターンの表示を点滅させたり、色を変えて表示したりする、いわゆる警告モードで表示する(ステップS18)。全てのエンジン音源について表示が終われば(ステップS11)、動作を終える(ステップS14)。
【0071】
図7では、道路220の路肩221にトラック304が停車しているときに本発明の第三の実施の形態の運転支援装置を搭載した自動車が、トラック304の横をどのようにすり抜ければよいかを示したものである。
【0072】
本発明の第三の実施の形態かかる運転支援装置は、図6のフロー図で説明したように、起動スイッチ115を操作して運転支援装置を起動して走行する。すると、車室外撮影部104は、進路前方領域を撮影して、進路前方領域の周辺物体であるトラック304を検出する。このとき、トラック304と近傍の画像の相対位置関係が変化していないとして「停車中の車両」として検出する。
【0073】
そして、車室外撮影部104がステレオカメラとして撮影した立体画像データを周辺物体位置推定部106が検出した「停車中の車両」と車室外撮影部104との距離と、周辺物体の位置する方角を算出する。
【0074】
そして、四つの集音部、第一集音部108、第二集音部109、第三集音部110、第四集音部111が自動車100周辺の音を集音し、音源位置推定部112に集音した情報を送出する。音源位置推定部112は、四つの集音部から送られてきた音響信号を分析し、その音響信号の中のいわゆるエンジン音の有無を判定する。エンジン音が含まれていればその音源が集音部からの距離と音源の存在する位置の方角を算出する。
【0075】
音源位置表示制御部107は、音源位置と停車中車両の位置が一致するか否かをエンジン音源の一つ一つについて順次、照合する。音源位置と停車中車両の位置が一致しているときは、停車中のトラック304にエンジン音がしていると判定して、音源位置を示す音源パターン405の表示を点滅させたり、色を変えたり、いわゆる警告モードで表示する。
【0076】
図7(a)では、「停車中のトラック。エンジン音。」という警告メッセージが発せられ、警告モードの表示405がされるので、運転支援装置を搭載した自動車は、トラック304がいつ発進するかもしれないと注意しながら大きくA矢印のように迂回して進むべきであることを認識することができる。
【0077】
一方、トラック304の位置でエンジン音がしていないことが分かれば、図7(b)のように停車中のトラック304にはエンジン音の音源位置が示されず、警告もないので、トラック304の横をB矢印のように安心してすり抜けることが出来る。
【0078】
図8では、スーパーやデパートの駐車場に沢山の乗用車が停車しているときに本発明の第三の実施の形態の運転支援装置を搭載した自動車が、多くの乗用車の横をどのようにすり抜ければよいかを示したものである。本発明の第三の実施の形態かかる運転支援装置は、停車している多数の乗用車の中でエンジン音がしている車両を警告表示するので、図8(a)のように警告表示406をしている乗用車だけを注意してすり抜ければよい。もし図8(b)のように、多数の乗用車の中でエンジン音がしているものがなければ、多数の乗用車の横を安心してすり抜けることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる運転支援装置は、視覚と音の両面から自車両の周囲の状況を把握することができる。特に見えていないエンジンのかかった車両があることを運転手に知らせるので、疲れている運転手や注意力の低下している運転手の運転支援装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1における運転支援装置を搭載した自動車のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における運転支援装置を搭載した自動車の動作を示すフロー図
【図3】本発明の実施の形態1における運転支援装置を搭載した自動車が交差点で停止した状態を示す平面図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における運転支援装置で撮影した進行前方領域の画像を示す図(b)本発明の実施の形態1における運転支援装置で撮影した進行前方領域の画像を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における運転支援装置を搭載した自動車の動作を示すフロー図
【図6】本発明の実施の形態3における運転支援装置を搭載した自動車の動作を示すフロー図
【図7】(a)本発明の実施の形態3における運転支援装置を搭載した自動車が道路を走行する状態を示す図(b)本発明の実施の形態3における運転支援装置を搭載した自動車が道路を走行する状態を示す図
【図8】(a)本発明の実施の形態3における運転支援装置を搭載した自動車が多数の乗用車が停止している駐車場を走行する状態を示す図(b)本発明の実施の形態3における運転支援装置を搭載した自動車が駐車場を走行する状態を示す図
【符号の説明】
【0081】
100 自動車
102 運転支援装置
104 車室外撮影部
105 周辺物体検出部
106 周辺物体位置推定部
107 音源位置表示制御部
108 第1集音部
109 第2集音部
110 第3集音部
111 第4集音部
112 音源位置推定部
113 表示部
114 警告部
115 起動スイッチ
116 GPS受信器
117 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺物体位置推定手段と、
音源位置推定手段と、
音源位置表示手段を有し、
前記周辺物体位置推定手段で周辺物体位置を推定し、
前記音源位置推定手段で音源位置を推定し、
前記音源位置表示手段で、前記周辺物体位置と前記音源位置を同時に表示するよう構成したことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記音源位置推定手段は、
複数の集音手段と、
音源パターン検出手段と、
音源位置算出手段を有し、
前記複数の集音手段で集音した音源について、前記音源パターン検出手段が予め登録した音源パターンと照合して音源パターンを特定するとともに、
前記音源位置算出手段が音源の存在している音源位置を算出するよう構成し、
前記音源位置表示手段が、前記特定した音源パターンを示す表示情報を前記音源位置または前記音源位置の近傍に表示するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記周辺物体位置推定手段は、
複数の車室外撮影手段と、
周辺物体検出手段と、
周辺物体位置算出手段を有し、
前記複数の車室外撮影手段で撮影した画像について、前記周辺物体検出手段が自車両の周辺物体を検出し、
前記周辺物体位置算出手段が、前記検出された周辺物体の位置を算出するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記音源位置と前記周辺物体位置とを照合し、
前記音源位置と前記周辺物体位置が一致している場合は、第一の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示し、
音源位置に対応する周辺物体がない場合には、第二の表示情報を音源位置または音源位置の近傍に表示するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記音源位置と前記周辺物体位置とを照合した際に、音源位置に対応する周辺物体がない場合には、音源パターンを示すとともに警告を発するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の運転支援装置を搭載した自動車。
【請求項7】
自車両の進路前方領域の画像から周辺物体を検出する第一のステップと、
前記第一のステップで検出した周辺物体位置について、自車両からの距離と方角を算出する第二のステップと、
自車両の周辺の音から車両音の音源を検出する第三のステップと、
前記第三のステップで検出した車両音の音源位置について、自車両からの距離と方角を算出する第四のステップと、
前記車両音の音源位置と前記周辺物体位置が一致するときは、前記車両音の音源位置を第一の表示形態で表示する第五のステップと、
前記車両音の音源位置と前記周辺物体位置が一致していないときは、前記車両音の音源位置を第二の表示形態で表示する第六のステップを有する運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−257323(P2008−257323A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96259(P2007−96259)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】