説明

運転支援装置

【課題】燃費を向上させるための車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】自車両のアクセル開度を検出する手段と、アクセル開度の時系列データに基づいて、該アクセル開度の自己相関関数を算出する手段136と、自己相関関数の値に基づき、自車両のアクセル操作の周波数を算出する手段137と、自車両の加速度を検出する手段と、加速度の周波数分析から周波数に対応するパワースペクトルを算出する手段131と、パワースペクトルの単回帰直線を演算し、所定周波数範囲での当該単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出する手段133と、を備える、燃費を向上させるよう車両の運転を支援するための装置である。この装置は、アクセル操作の周波数が所定値よりも低く、かつ傾き極大値が自車両前方での渋滞予兆を示す場合に、運転支援をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃費を向上させるよう車両の運転を支援するための装置に関し、より具体的には、アクセル操作の周期性と渋滞予兆とに基づき燃費を向上させるための運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、より良好な燃費となるよう運転を支援するための様々な装置が提案されている。例えば、特許文献1には、アクセル開度の時系列データから該アクセル開度の自己相関関数を算出し、算出された自己相関関数の値に従って、現在のアクセル操作が燃費の良好なアクセル操作かどうかを示す表示を行う運転支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−241212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、アクセル操作のみに着目して現在のアクセル操作が燃費の良好なアクセル操作かどうかを判断しているので、燃費に影響を与えるブレーキ操作、車群形成、渋滞の有無などを考慮していない。したがって、この従来の方法には、さらなる燃費向上のための運転支援上の改善余地が有る。
【0005】
したがって、本発明の目的は、アクセル操作の周期性と渋滞予兆とを考慮して燃費を向上させるための車両の運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃費を向上させるよう車両の運転を支援するための装置である。その装置は、自車両のアクセル開度を検出する手段と、検出されたアクセル開度の時系列データに基づいて、該アクセル開度の自己相関関数を算出する手段と、算出された自己相関関数の値に基づき、自車両のアクセル操作の周波数を算出する手段と、自車両の加速度を検出する手段と、検出した加速度の周波数分析から周波数に対応するパワースペクトルを算出する手段と、算出したパワースペクトルの単回帰直線を演算し、所定周波数範囲での当該単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出する手段とを備え、アクセル操作の周波数が所定値よりも低く、かつ傾き極大値が自車両前方での渋滞予兆を示す場合に、運転支援をおこなう。
【0007】
本発明によれば、アクセル操作が低周波であり、すなわち低周波走行をしており、かつ渋滞が予想される場合に、燃費を向上させるため、言い換えればエネルギーマネージメント効率を向上させるための運転支援をタイムリーに提供することが可能となる。
【0008】
本発明の一形態によると、運転支援は、エネルギーマネージメントメータを使用するタイミングを与えることを含む。
【0009】
本発明の一形態によれば、運転者に燃費向上が可能となりエネルギーマネージメント効率が良くなるタイミングを適切に知らせることが可能となる。
【0010】
本発明の一形態によると、運転支援は、クルーズコントロールを実行することを含む。
【0011】
本発明の一形態によれば、運転者に燃費向上が可能となりエネルギーマネージメント効率が良くなるクルーズコントロールの使用タイミングを適切に知らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に従う、運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に従う、制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に従う、加速度スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の一実施例に従う、渋滞予兆度と傾き極大値との関係を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施例に従う、アクセルペダルに対するアクセル操作の模式図である。
【図6】本発明の一実施例に従う、燃費の良好および非良好なアクセル操作が行われた場合の運転状態およびアクセル開度の推移を示す図である。
【図7】本発明の一実施例に従う、燃費の良好および非良好なアクセル操作が行われた場合のアクセル開度の自己相関関数のラグに対する推移を示す図である。
【図8】本発明の一実施例に従う、表示器の配置例を示す図である。
【図9】本発明の一実施例に従う、表示器による表示例を示す図である。
【図10】本発明の一実施例に従う、運転支援の制御フローチャートである。
【図11】本発明の一実施例に従う、渋滞予兆のフローチャートである。
【図12】本発明の一実施例に従う、アクセル操作の周波数算定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に従う、運転支援装置10の構成を示すブロック図である。運転支援装置10は車両に搭載される。運転支援装置10は、1つの装置としてあるいは他の装置の一部として車両に搭載することができる。
【0014】
運転支援装置10は、運転状態検出部11、制御部13、記憶部15、スピーカー17、走行制御部18、表示装置19を備える形で構成される。なお、制御部13は、車両がナビゲーション装置を備える場合は、その中に組み込んでもよい。また、スピーカー17および表示装置19は、ナビゲーション装置が備える該当機能を利用してもよい。
【0015】
運転状態検出部11は、車両の運転状態を検出する。この実施例では、車速(加速度)およびアクセル開度を検出する。これらは、任意の既知の手法によって検出することができる。たとえば、車速センサおよびアクセル開度センサを車両に設け、これらの検出値から、それぞれ、車速(加速度)、アクセル開度を求めることができる。
【0016】
制御部13は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである電子制御装置(ECUと呼ぶ)により実現することができる。制御部13は、運転状態検出部11によって検出された車速(加速度)およびアクセル開度を、メモリ等の記憶装置によって実現される記憶部15に記憶する。制御部13は制御信号を出力して各種アクチュエータや定速走行(CC:クルーズ・コントロール)システム等の駆動を制御する。制御部13についてはさらに後述する。
【0017】
スピーカー17は、制御部13からの制御信号に応じて所定の警報音や音声を出力することによって、運転者に報知する。表示装置19は、LCD等のディスプレイを含み、タッチパネル機能を有するディスプレイとすることができる。表示装置19は、音声出力部および音声入力部を備える構成でもよい。表示装置19は、報知制御部13からの制御信号に応じて、所定の警報情報を表示したり、所定の警告灯を点滅ないし点灯させることによって、運転者に報知する。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に従う、制御部13の構成を示すブロック図である。制御部13の各ブロックの機能について説明する。周波数分析部131は、車速センサ(図示なし)が検出した自車両の加速度について周波数分析を行い、パワースペクトルを算出する。図3に2つの異なる走行状態(a)、(b)におけるパワースペクトルの例を示す。図3では、パワースペクトルとして周波数に対応した加速度スペクトル51、53が例示されている。
【0019】
単回帰直線算出部132は、得られたパワースペクトルに対して単回帰分析をおこない単回帰直線を算出する。図3の例では、符号52、54で指示される直線がそれぞれ加速度スペクトル51、53に対して得られる単回帰直線である。
【0020】
傾き極大値算出部133は、得られた単回帰直線から傾き極大値を算出する。図3の例では、最初に単回帰直線52、54の傾きを算出する。すなわち、図3において、所定の周波数範囲Y(例えば、数秒から数分の時間範囲に対応する周波数範囲、0〜0.5Hz等)でのスペクトル値の変化Xに基づき傾きα(=Y/X)を算出する。図3では(a)と(b)での傾きα1、α2が得られる。
【0021】
次に、得られた傾きαの差分、すなわち所定の時間間隔での傾きαとαk−1との差分Δα(=α―αk−1)を算出する。得られた差分Δαの時間変化、あるいは差分Δαから得られるパラメータ(例えば、絶対値|Δα|、2乗値(Δα)等)の時間変化の極大値を求める。得られた極大値を傾き極大値として処理装置14内のメモリ(RAM等)あるいは記憶部15に記憶する。
【0022】
渋滞予兆算出部134は、傾き極大値算出部133により算出された傾き極大値に応じて渋滞予兆度を算出する。ここで、渋滞予兆度は、自車両前方にける道路(車線)において渋滞に至る可能性を示すパラメータとして定義する。すなわち、渋滞予兆度は、渋滞となる可能性が高い場合に大きくなり、その可能性が低い場合に小さくなる。この渋滞予兆度を本発明では傾き極大値から算出する。
【0023】
図4は、渋滞予兆度と傾き極大値との関係を説明するための図である。図4の直線56、57は、図3の直線52、54と同様に単回帰直線算出部132によって求められる単回帰直線である。単回帰直線56は傾きαが小さい場合の例であり、単回帰直線57は傾きαが大きい場合の例である。渋滞予兆度の大小を判定する閾値については、任意の値を定めることができるが、一般的に(1/f)ゆらぎ特性として知られている「−45度」をその値とすることができる。
【0024】
傾きαが小さい場合は、先行車両から受ける衝撃波(振動、ゆらぎ)が小さい場合に相当し、車間距離が短くなりにくく車群が密になりにくい、すなわち渋滞に至る可能性が低い場合に相当する。この場合、渋滞予兆度は小さな値をとる。逆に傾きαが大きい場合は、先行車両から受ける衝撃波(振動、ゆらぎ)が大きい場合に相当し、車間距離が短くなりやすく車群が密になりやすい、すなわち渋滞に至る可能性が高い場合に相当する。この場合、渋滞予兆度は大きな値をとる。なお、ここで言う衝撃波(振動、ゆらぎ)とは、各車両が加速および減速の動作を繰り返すことにより後方の車両にその動作(前後の動き)を一種の振動として伝播させることを意味する。図4の例では、単回帰直線56から単回帰直線57へ向かって傾きαが大きくなるにつれて、渋滞に至る可能性が高くなっていく、すなわち渋滞予兆度が大きくなっていく関係にある。
【0025】
したがって、本発明ではこの単回帰直線の傾きの大きさ、より具体的には、傾き極大値算出部133によって算出された傾き極大値(例えば、|Δα|、(Δα)等の時間変化の極大値)に応じて渋滞予兆度を算出する。具体的には、例えば傾き極大値(x)と渋滞予兆度(y)との関係を示す関数(例えば、y=ax+b)を予め求めておき、傾き極大値算出部133によって算出された傾き極大値(x)に対する渋滞予兆度(y)を算出する。あるいは、傾き極大値と対応する渋滞予兆度の値との関係を予め作成してテーブルとしてメモリに格納しておき、算出された傾き極大値に対する渋滞予兆度をそのテーブルを参照して求めることもできる。
【0026】
次に図2のブロック135〜137の機能について説明する。最初にこれらの機能を理解する上での基本的な考え方について説明する。
【0027】
図5は、アクセルペダル300に対するアクセル操作の模式図である。クルーズ走行(定速走行)のような燃費の良好な走行を行っている場合には、矢印303で示すような変動範囲内となるようなオンオフ(押したり戻したりの)操作を行っており、細かいオンオフ操作の頻度が比較的多い。他方、燃費の非良好な運転を行っている場合には、矢印305で示すような大きな変動範囲となるようなオンオフ操作を行っており、大きくゆったりとしたオンオフ操作の頻度が比較的多い。言い換えれば、アクセルペダルを押してから、戻るまでの所用時間が相対的に長い場合は低周波型ペダル操作を意味し、相対的に短い場合は高周波型ペダル操作であることを意味している。
【0028】
図6にアクセル開度の時間的推移を示す。図6の(a)には、図5の矢印303で示したような変動範囲でアクセル操作が行われて良好な燃費の運転が行われた場合の、アクセル開度の時間的推移が示されている。(b)には、図5の矢印305で示したような変動範囲でアクセル操作が行われ、(a)に比べて非良好な燃費の運転が行われた場合の、アクセル開度の時間的推移が示されている。(a)および(b)の時間軸のスケールは異なっており、(a)の時間t1、t2、t3と、(b)の時間t1、t2、t3とがそれぞれ対応している。
【0029】
また、図6の(c)および(d)は、力学系のアトラクタ(attractor)を示しており、それぞれ、(a)および(b)のようなアクセル開度の時系列データを、時間遅れ座標系によって三次元状態空間に埋め込んだものである。具体的には、該アクセル開度の時系列データをA(t)(t=1、2、3...)とすると、ベクトルV(t)=(A(t)、A(t+τ)、A(t+2τ))を考え、該ベクトルV(t)を、三次元状態空間内に順次プロットしていったときの軌道が、これらの図に示されている。ここで、τは、時間遅れを表している。
【0030】
(a)と(b)を比較して明らかなように、また(c)と(d)を比較して明らかなように、燃費の良好な高周波型アクセル操作に比べて、燃費の非良好な低周波型アクセル操作の方が、アクセルペダル開度の増減が大きく、オンオフ操作をゆっくり行っていることがわかる。すなわち、燃費の非良好なアクセル操作の方が、燃費の良好なアクセル操作に比べて、低周波な動きをしていることがわかる。したがって、より高周波なアクセル操作を運転者に促して燃費向上を図る必要がある。
【0031】
アクセル操作が高周波な動きあるいは低周波な動きを行っているかどうかの判断は、この実施形態では、自己相関関数を用いて判断する。短時間の間においては、アクセル操作の確率分布はほぼ等しいと考えることができる。したがって、アクセル開度の標本値を時系列に取得したとき、この時系列は、弱定常性の時系列と考えることができる。
【0032】
ここで、前述したように、アクセル開度の時系列データを、A(t)(t=1、2、3...)とすると、下記の式が成立する。式(1)は、アクセル開度の標本値A(t)のn個の平均を算出する式であり、式(2)は、該平均値を用いて自己共分散関数Rを算出する式であり、式(3)は、該自己共分散関数Rを用いて自己相関関数ρを算出する式である。kは、ラグ(lag)を示している。
【数1】

【0033】
自己相関関数ρは、ゼロから1の間に正規化され、ラグkの関数である。周期性の高い(高周波)信号ほど、自己相関関数ρの値は、より1に近い値を持つよう算出される。
【0034】
ここで図7を参照すると、(a)は、図6の(a)に示すような燃費の良好な運転の場合に算出された自己相関関数値のラグkに対する推移を示す。(b)は、図6の(b)に示すような燃費の非良好な運転の場合に算出された自己相関関数値のラグkに対する推移を示している。自己相関関数値は、ラグkがゼロの時にピーク値1を取り、その後時間の経過と共に減衰していくが、ラグkがゼロから所定時間Tの自己相関関数値を比較すると、(b)よりも(a)の方が、自己相関関数値のばらつきが小さい。
【0035】
すなわち、(a)のような運転の場合には、図6の(a)に示したように高周波な動作でアクセルペダルのオンオフを行うので、周期性が高い(高周波)信号としてアクセル開度の時系列データが得られる。したがって、自己相関関数値は、ラグに対して急激に小さくなる挙動となり、(b)に比べて、減衰に要する時間が短い。これに対して、(b)のような運転の場合には、図6の(b)に示したように低周波な動作でアクセルペダルのオンオフを行うので、周期性が低い(低周波)信号としてアクセル開度の時系列データが得られる。したがって、自己相関関数値は、ラグと共に徐々に小さくなる挙動となり、(a)に比べて、減衰に要する時間が長い。
【0036】
このように、自己相関関数値の減衰挙動を調べることにより、燃費の良好なアクセル操作が行われているかどうか否か、すなわち高周波な操作(燃費良好)か低周波な操作(燃費非良好)かを判断することができる。これは、ペダル操作の周期性の有無から燃費の良悪が推定できるためである。
【0037】
図2に戻って、ブロック135において、アクセル開度を時系列データとして取得する。具体的には、記憶部15に記憶された複数(N個)のアクセル開度から図6に例示されるような時系列データを得る。ブロック136において、取得したアクセル開度の時系列データから自己相関関数ρを算出する。具体的には、上述した式(1)〜(3)を用いて自己相関関数ρの値(自己相関関数値)を算出する。
【0038】
ブロック137において、アクセル操作の周波数を算出する。具体的には、算出された自己相関関数値の所定時間間隔での減衰率ρr(=Δρ/ΔT)が所定値より大きい場合は高周波数であり、所定値よりも小さい場合は低周波数であるとする。これは、図7を参照して説明したように、アクセル操作が高周波になるほど所定時間内での自己相関関数値の減衰頻度が大きくなることから、減衰率ρrが所定値より大きいか否かで周波数が高いか低いかを判断することができるからである。この周波数の高低の算出により、燃費が良好な状態か否かを見極めることが可能となる。
【0039】
ブロック138の運転支援判定部は、ブロック134で算出された渋滞予兆度と、ブロック137で算出されたアクセル操作の周波数とから運転支援をおこなうか否かを判定する。具体的には、例えば、渋滞予兆度の大きさが所定値よりも大きく、かつアクセル操作の周波数が低い場合に、運転支援をおこなう判定をする。この判定により、燃費が悪化傾向にあり、かつ渋滞予兆があることによりその傾向が高まることが想定される場合に、燃費の悪化傾向を軽減し、しいては燃費の向上をねらった運転支援を提供するタイミングを提供することが可能となる。逆に、渋滞予兆度の大きさが所定値よりも小さく、かつアクセル操作の周波数が高い場合には、燃費が悪化傾向にはなくかつその傾向がさらに悪くなる可能性が低いので、運転支援をおこなわない判定をする。
【0040】
運転支援判定部138は、判定結果を含む制御信号を走行制御部139、報知制御部140、および通信制御部141に送る。走行制御部139は、運転支援をおこなう判定結果を受けた場合、例えばクルーズコントロールを実行する制御信号を対応するシステムに送る。これにより、アクセル操作をすることなく前方車両への追随走行が可能となり、結果として燃費の改善、向上が達成可能となる。なお、クルーズコントロールの実行は1つの走行制御例であり、燃費の改善に役立つための各種アクチュエータの制御をおこなうことにより走行制御を実行してもよい。この各種アクチュエータは、複数のアクチュエータの総称として用いており、例えばスロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、ステアリングアクチュエータ等が含まれる。また、表示装置によって運転支援情報を提供しても良いが、運転者による認知時間、運転行動特性の差異のバラつきが生じることもあるため、クルーズコントロール等の走行制御の方が、本発明を適用するシステムとしてより好適である。
【0041】
報知制御部140は、運転支援をおこなう判定結果を受けた場合、表示装置19およびスピーカー17の報知制御をおこなう。報知制御部140は、例えば、エネルギーマネージメントメータの使用を喚起するために、表示装置19にその使用喚起を促す表示を点灯させたり、あるいはスピーカー17から音声で伝えるための制御信号を送る。
【0042】
図8は、本発明の一実施例に従う、車室内での表示装置の配置例を示す図である。図8では、表示部63を、車室の中心線C上に位置するルームミラー62の下部に設置する場合と、フロントカバー部60の上に設置する場合を例示している。表示部63は、ナビゲーション装置の表示部61の一部として組み込むあるいはその上部等に配置してもよい。なお、表示部63は、車室の中心付近に位置することが望ましい。その理由は、表示部63が車室の中心付近に位置することにより、運転者の視線方向が左右いずれに向かっていても、表示部63を運転者の視野内に入れることができるからである。
【0043】
図9は、表示部63の表示例を示す図である。表示部63は、エネルギーマネージメントメータ使用を表示する点灯部631、クルーズコントロールの使用を表示する点灯部632を有する。点灯部631は、エネルギーマネージメントメータ使用を促すために所定の色(例えば黄色)で点灯あるいは点滅する。点灯部632は、クルーズコントロールの使用が行われると所定の色(例えば緑色)で点灯あるいは点滅する。なお、図の点灯部631、632内の文字表示は説明のために記載されているもので実際には表示してもしなくてもよい。これらの表示により、運転者はエネルギーマネージメントメータおよびクルーズコントロールの使用の有無を視覚的に速やかに把握することができる。
【0044】
表示ブロック633は、渋滞予兆算出部134が算出した渋滞予兆度が所定値よりも大きい場合に、所定の色(例えば赤色)で点灯あるいは点滅する。表示ブロック634には、燃費の状態、例えば「燃費悪化」、「燃費良好」、「現在の燃費(km/l)」等を表示する。なお、表示ブロック633と634は必要に応じて任意に設定でき、必ずしも無くてもよい。
【0045】
表示ブロック635、636、637は、スイッチボタンであり、それぞれ、点灯部631、632の表示をオフさせるスイッチ、表示ブロック633の表示をオフさせるスイッチ、表示部63全体の表示をオフさせるスイッチである。運転者は各スイッチを押す(触れる)ことにより、手動で対応する表示機能を停止させることができる。
【0046】
通信装置21は、通信制御部141による制御下で、無線通信によって他車両あるいはサーバ装置(図示なし)や中継局(図示なし)と通信を行い、渋滞予兆算出部134から出力される渋滞予兆算出結果と位置情報を対応付けて送信したり、他車両等から渋滞情報等を受信する。取得された情報は、通信制御部141を介して報知制御部140あるいは走行制御部139に送られる。
【0047】
図10は、本発明の一実施例に従う、運転支援のための制御のフローチャートである。このフローは制御部13(図1)において所定の周期で実行される。なお、各ステップの詳細は既に図2の各ブロックの説明において述べた通りである。ステップS2において、アクセル操作が低周波か否かを判定する。この判定がYesの場合、次のステップS4において、渋滞予兆があるか否かを判定する。この判定がYesの場合、次のステップS6において、走行先の道路において渋滞および燃費の悪化が予想されるという判定が下される。次のステップS8において、その燃費の悪化を防ぐために運転支援、すなわち各種の制御および提示が行われる。
【0048】
図11は、本発明の一実施例に従う、渋滞予兆のフローチャートである。このフローは制御部13(図1)において所定の周期で実行される。なお、各ステップの詳細は既に図2のブロック131〜134の説明において述べた通りである。ステップS12において、車速センサ11によって自車両の加速度を検出する。ステップS14において、加速度スペクトル単回帰極大化をおこなう。具体的には、上述した傾き極大値を算出する(図2のブロック131〜133)。ステップS16において、渋滞予兆度を算出する(図2のブロック134)。ステップS18において、渋滞予兆の有無、すなわち渋滞予兆度が所定値より大きいか否かを判定する。この判定がYesの場合、次のステップS20において渋滞予兆の有無を出力する。ステップS18の判定がNoの場合、ステップS14に戻り以降のフローを繰り返す。
【0049】
図12は、本発明の一実施例に従う、アクセル操作の周波数算定のフローチャートである。このフローは制御部13(図1)において所定の周期で実行される。なお、各ステップの詳細は既に図2のブロック135〜137の説明において述べた通りである。ステップS22において、アクセル開度センサ(図示なし)によってアクセル開度を検出する。ステップS24において、アクセル開度を時系列データとして取得する(図2のブロック135)。ステップS26において、取得したアクセル開度の時系列データから自己相関関数ρを算出する(図2のブロック136)。ステップS28において、自己相関関数値の所定時間間隔での減衰率ρr(=Δρ/ΔT)を算出する。ステップS30において、減衰率ρrが所定値より小さいか否かを判定する。この判定がYesの場合、次のステップS32において、アクセル操作の周波数は低いと判断され、その判断結果が出力される(図2のブロック137)。ステップS30の判定がNoの場合、ステップS24に戻り以降のフローを繰り返す。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 運転支援装置
13 制御部
51、53 加速度(パワー)スペクトル
52、54、56、57 単回帰直線
63 表示部
300 アクセルペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃費を向上させるよう車両の運転を支援するための装置であって、
自車両のアクセル開度を検出する手段と、
検出されたアクセル開度の時系列データに基づいて、該アクセル開度の自己相関関数を算出する手段と、
算出された自己相関関数の値に基づき、自車両のアクセル操作の周波数を算出する手段と、
自車両の加速度を検出する手段と、
検出した加速度の周波数分析から周波数に対応するパワースペクトルを算出する手段と、
算出したパワースペクトルの単回帰直線を演算し、所定周波数範囲での当該単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出する手段と、を備え、
前記アクセル操作の周波数が所定値よりも低く、かつ前記傾き極大値が自車両前方での渋滞予兆を示す場合に、運転支援をおこなう、運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援は、エネルギーマネージメントメータを使用するタイミングを与えることを含む、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援は、クルーズコントロールを実行することを含む、請求項1に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−219759(P2012−219759A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88567(P2011−88567)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】