説明

過酸化水素の製造

過酸化水素を製造するためのプロセスであって、アノードおよびカソードを有する生物電気化学システムを準備する工程と、有機もしくは無機の(またはその両方の)物質を含有する供給溶液をこのアノードに供給する工程と、この有機または無機の物質をアノードで酸化する工程と、水性の流れを当該生物電気化学システムのカソードに与える工程と、カソードで酸素を過酸化水素へと還元する工程と、過酸化水素を含有する流れをカソードから回収する工程とを含むプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素を製造するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、生物電気化学システムを使用して、水性の廃棄物の流れから過酸化水素を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は、多くの工業的用途を有する強力な酸化剤である。消毒薬として使用されるほか、過酸化水素は、パルプ漂白および紙漂白、洗剤、廃水処理、化学合成、冶金用に、繊維工業および電子機器産業において使用される(非特許文献1)。大規模では、過酸化水素は、アントラキノン自動酸化プロセス(AOプロセス)またはRiedl−Pfleidererプロセスを使用して主に製造される。このプロセスでは、アントラキノンは水素ガスで還元され、その後、酸素で再び還元される。この酸化工程の間に、過酸化水素が形成される。得られる正味の反応は:
+O→H(式1)
である。
【0003】
このAOプロセスは、過酸化水素の製造のための断然最も応用されている技術であり、世界中の過酸化水素生産の95%超を占める(非特許文献1)。しかしながら、別のアプローチも存在する。その別のアプローチのうちの1つは、従来の電気化学的プロセスによる過酸化水素製造である。これらの従来の電気化学的プロセスのうちで、2つの主要なアプローチが存在する:(i)電解槽型のアプローチ(例えば、非特許文献2)、および(ii)燃料電池型のアプローチ(例えば、非特許文献3)。電解槽のアプローチは、酸素を生成する化学的に触媒されたアノードに基づく:
アノード(酸条件):HO→0.5O+2H+2e(式2a)
アノード(アルカリ条件):2OH→0.5O+HO+2e(式2b)
【0004】
燃料電池アプローチは、水素を消費する化学的に触媒されたアノードに基づく:
アノード(酸条件):H→2H+2e(式3a)
アノード(アルカリ条件):H+2OH→2HO+2e(式3b)
【0005】
両方のアプローチでは、アノードは、酸素を還元して過酸化水素を形成する化学的に触媒されたカソードに結合される。
カソード(酸条件):O+2H+2e→H(式4a)
カソード(アルカリ条件):O+HO+2e−→HO+OH(式4b)
【0006】
残念ながら、両方のアプローチとも、かなりのエネルギー投入量を必要とする。電解槽アプローチは大きい電気消費量に起因してかなりのエネルギー投入量を必要とする;燃料電池アプローチは、大きい水素消費量に起因してかなりのエネルギー投入量を必要とする。このため、これらのプロセスは費用がかかるものとなり、多くの場合経済的に現実味がないものとなる。
【0007】
微生物燃料電池および微生物電解電池などの生物電気化学システムは、水性廃棄物の中に存在する有機物質からのエネルギーの生産のための有望な将来の技術として一般に考えられている。工業廃水、農業廃水および家庭廃水は、典型的には、環境への排出の前に除去される必要がある溶解した有機物を含有する。典型的には、これらの有機汚染物質は好気性処理によって除去され、これは曝気のために大量の電気エネルギーを要する可能性がある。
【0008】
最近、生物電気化学システムが、水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)からのエネルギーおよび製品の生産のための潜在的に興味深い技術として現れた。生物電気化学システムは、水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)の中の有機(または無機)の汚染物質を酸化(従って除去)している間に電子を電極(アノード)に移動させる、電気化学的に活性な微生物の使用に基づく。生物電気化学的な廃水処理は、このような生物触媒的なアノードを、還元反応を実施する対電極(カソード)と電気的に結合することにより、達成することができる。アノードとカソードとの間のこの電気的接続の結果として、上記電極反応は起こることができ、そして電子はアノードからカソードへと流れることができる。生物電気化学システムは、燃料電池として(この場合、電気エネルギーが生成される)または電解電池として(この場合、電気エネルギーが生物電気化学システムに供給される)動作しうる。生物電気化学システムの例は、電気の生成のための微生物燃料電池(非特許文献4)および水素ガスの製造のための生物触媒電解(特許文献1)である。
【0009】
過酸化水素が微生物燃料電池における副生成物として時おり生成される可能性があるということが文献で示唆されてきたが(非特許文献5)、このような過酸化水素は通常は非常に素早く破壊される。非特許文献6も、逆浸透濾過に関連して、アノードでのCOD除去と組み合わせた複合的な消毒および汚染物質の除去のために過酸化水素のこのカソードでの生成を開発することが可能なはずであるということを論じている。このプロセスは、消毒を汚染物質の除去と組み合わせ、従って従属栄養病原体が逆浸透濾液の中で支配的になることを防ぐことになろう。しかしながら、今まで、生物電気化学システムは、大規模な工業的な過酸化水素製造プロセスの開発のためには展開されてこなかった。このようなプロセスは、大規模に過酸化水素を製造することができるべきであり、パルプ産業および紙産業などの産業からの製品への要求に従う過酸化水素を製造することができるべきである。このような生物電気化学的なプロセスは、現在、存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005005981(A2)号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Fierroら、Angew.Chem.Int.Ed.、2006年、第45巻、6962−6984頁
【非特許文献2】FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem.、1995年、第25巻、613−627頁
【非特許文献3】Yamanaka、Angew.Chem.Int.Ed.、2003年、第42巻、3653−3655頁
【非特許文献4】RabaeyおよびVerstraete、Trends Biotechnol.、2005年、第23巻、291−298頁
【非特許文献5】BondおよびLovley、Appl.Environ.Microbiol.、2003年、第69巻、1548−1555頁
【非特許文献6】Clauwaertら、Appl.Microbiol.Biotechnol.、2008年、第79巻、901−913頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
生物電気化学システムを使用する、最終生成物として過酸化水素を製造するための装置およびプロセスを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、本発明は、過酸化水素を製造するためのプロセスであって、アノードおよびカソードを有する生物電気化学システムを準備する工程と、有機もしくは無機の(またはその両方の)物質を含有する供給溶液をこのアノードに供給する工程と、この有機または無機の物質をアノードで酸化する工程と、水性の流れをこの生物電気化学システムのカソードに与える工程と、カソードで酸素を過酸化水素へと還元する工程と、過酸化水素を含有する流れをカソードから回収する工程とを含むプロセス、を提供する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、過酸化水素を製造するための生物電気化学システムであって、アノードを有するアノードチャンバーと、水性の廃棄物の流れをアノードチャンバーに供給するためのアノード液体注入口と、液体をアノードチャンバーから除去するためのアノード液体排出口と、カソードを有するカソードチャンバーと、水性の流れをカソードチャンバーに供給するためのカソード液体注入口と、過酸化水素を含有する生成物の流れをカソードチャンバーから除去するためのカソード液体排出口と、アノードチャンバーとカソードチャンバーとの間のイオンの移動を可能にするための、アノードチャンバーとカソードチャンバーとの間のイオン透過膜と、アノードをカソードに接続する電気回路とを具え、当該アノードはアノードチャンバーに供給される水性の廃棄物の流れの中の有機または無機の物質を酸化する生物触媒されるアノードを構成する、システムを提供する。
【0015】
当業者なら理解するように、本発明で使用される生物電気化学システムは、水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)の中の有機(または無機)の汚染物質を酸化している間に電子を電極(アノード)に移動させる、少なくともアノードまたはアノード区画に関連する電気化学的に活性な微生物を含むことになろう。
【0016】
1つの実施形態では、当該システムは、酸素含有気体をカソードチャンバーに供給するためのカソード気体注入口をさらに含む。このシステムは、余剰の気体をカソードチャンバーから除去するためのカソード気体排出口をもさらに含んでもよい。
【0017】
本発明は、生物電気化学電池または生物電気化学システムを利用することにより、水性の廃棄物の流れ(例えば廃水)からの過酸化水素の製造に適した生物電気化学システムを提供する。この生物電気化学電池または生物電気化学システムは、水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)中の有機(例えば揮発性脂肪酸)および/または無機物質(例えば、スルフィド)を酸化するアノードと、酸素を過酸化水素へと還元するカソードとを含有する。このアノード反応は、電気化学的に活性な微生物などの微生物によって触媒され、電子(e)とプロトンおよび/または二酸化炭素および/または他の酸化生成物(例えば硫黄)を生成する。
アノード:有機(または無機)物質→xHCO+yH+ze+他の生成物(式5)
【0018】
この酸化反応で生成された電子(e)は、アノードへと移動され、電気回路を介してアノードからカソードへと輸送される。このカソードは化学的に触媒されてもよく、そして過酸化水素への酸素の還元のために電子を消費する。このカソード反応は以下のとおりである:
カソード(酸条件):O+2H+2e→H(式6a)
カソード(アルカリ条件):O+HO+2e−→HO+OH(式6b)
【0019】
水性の廃棄物の流れ(例えば廃水)の中の有機(または無機)物質を酸化するアノードは、典型的には、約−0.3〜−0.2V(pH 7において)の電極電位を呈する(本願明細書全体にわたって与えられるすべての電極電位は、標準水素電極に対して測定される)。pHに依存するが、過酸化水素の製造のカソードでの製造は、約−0.065(pH 14)〜0.67V(pH 0)の電極電位を呈する。従って、生物電気化学システムを使用する過酸化水素の製造のための全体の電池電位(カソード電位からアノード電位を引いたもの)は、典型的には正の値を有するであろう。これは、水性の廃棄物の流れからの過酸化水素の生物電気化学的な製造は自発的なプロセスであり、電気投入量をまったく必要としないということを意味する。まさに実際、電気エネルギーをこの反応から生成することができた。しかしながら、これらの条件下で、過酸化水素生成速度は比較的低いであろうし、そしてわずか低濃度(ppmレベル)の過酸化水素しか得られる見込みはない。なぜなら、生成した過酸化水素の多くは、同時に、以下の式に従って自己分解、とりわけ高pH値での自己分解の結果として、失われるからである(Brillasら、J.Appl.Electrochem.、1997、27、83−92):
2HO→O+2OH(式7)
【0020】
低濃度の過酸化水素はその場での(in situ)消毒に適しているが、パルプ漂白および紙漂白などの他の使用のための生成物の流れとしての回収には適していない。それゆえ、過酸化水素濃度を上昇し、他の使用に適した回収可能な生成物を生成するために、過酸化水素がより高い生成速度で製造されることが望ましい。これを成し遂げるために、アノードおよびカソードは、短絡して、すなわち電気エネルギーの取り出しなしに互いに接続されてもよい。あるいは、またはさらに、このプロセスをなおいっそうスピードアップするために、外部電源を、任意に、アノードとカソードとの間で接続してもよい。この電力供給装置を使用して、外部電圧がこのシステムに加えられてもよく、これにより、電極反応がスピードアップし、過酸化水素生成速度が上昇する。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、当該生物電気化学システムは、当業者には公知のように、イオン透過膜によって隔てられたアノードチャンバーおよびカソードチャンバーを含む。本発明での使用に適したイオン透過膜としては、生物電気化学システムで使用されうるいずれのイオン透過膜(Kimら、Environ.Sci.Technol.、2007、41、1004−1009;Rozendalら、Water Sci.Technol.、2008、57、1757−1762)も挙げられる。このようなイオン透過膜としては、カチオン交換膜およびアニオン交換膜などのイオン交換膜を挙げてもよい。精密濾過膜、限外濾過膜、およびナノ濾過膜などの多孔質膜もまた、本発明で使用される生物電気化学システムで使用されてもよい。イオン透過膜は、膜を通る正および/または負に帯電したイオンの輸送を容易にし、これはアノードからカソードへの負に帯電した電子のフローを補い、従ってこのシステムにおける電気的中性を維持する。
【0022】
他の実施形態では、アノードチャンバーおよびカソードチャンバーを有するのではなく、当該生物電気化学電池は、オープンフローシステムを具えてもよい。
【0023】
当該生物電気化学システムはアノードおよびカソードを具える。アノードは、電気化学的に活性な微生物と相互作用することができる電気伝導性物質を含んでもよい。好ましくは、このアノードは、電気化学的に活性な微生物の結合を許容する電気伝導性物質からなる。このようなアノード材料の例は、炭素および/またはグラファイトである。金属または金属合金も、アノード材料として使用されてもよい。
【0024】
カソードは、酸素から(例えば、空気から −式6)の過酸化水素の形成に向かって触媒的である電気伝導性物質を含んでもよい。電気化学的な過酸化水素製造のための適切な物質は当業者に公知であり、例としては、炭素物質、金、およびキノン変性ガラス状炭素電極(FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem.、1995、25、613−627;Vailら、J.Electroanal.Chem.、2004、564、159−166)が挙げられる。任意にこれらの物質は、適切な電流コレクタ上に担持されていてもよい。この電流コレクタは金属を含んでもよい。この目的のために適切な物質はニッケルである。なぜなら、ニッケルは、過酸化水素の分解に向かって触媒的ではないからである(FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem.、1995、25、613−627)。この目的のために不適切な物質は鉄または鋼である。なぜなら、鉄または鋼は過酸化水素の分解に向かって触媒的であるからである(FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem.、1995、25、613−627)。一般に、カソードチャンバーの中で、過酸化水素の分解に向かって触媒的である物質を使用することを使用することを回避することが望ましい。
【0025】
当該アノードおよびカソードは、電気回路によって互いに接続される。1つの実施形態では、この電気回路は、アノードとカソードとの間の電気的短絡として作用するほどに非常に低い抵抗を有する導体を含んでもよい。別の実施形態では、電力供給装置がこの電気回路の中に含まれてもよい。この電力供給装置は、このシステムに電圧を加えるために使用することができ、電圧を加えることで過酸化水素生成速度が上昇する。電力供給装置を用いてアノードとカソードとの間に加えられる電圧は、0〜2.5V、好ましくは0〜1.5V、より好ましくは0〜1.0Vであってもよい。これは、0〜10,000A/(生物電気化学電池1m)、好ましくは10〜5,000A/(生物電気化学電池1m)、より好ましくは100〜2500A/(生物電気化学電池1m)という当該生物電気化学電池における体積電流密度、および/または0〜1,000A/(膜表面積1m)、好ましくは1〜100A/(膜表面積1m)、より好ましくは2〜25A/(膜表面積1m)の単位面積当たりの電流密度を生じる可能性がある。
【0026】
アノードチャンバーを含む実施形態では、アノードチャンバーは、典型的には、アノードチャンバー液体注入口を通して水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)を与えられてもよい。この流れの中の無機または有機の物質(またはその両方)は、電極と相互作用する、アノードチャンバーの中にある電気化学的に活性な細菌によって酸化され、流出する流れは、アノードチャンバー液体排出口を通ってアノードチャンバーを離れる。
【0027】
カソードチャンバーを含む実施形態では、カソードチャンバーは、カソードチャンバー液体注入口を通して水または水性の流れを与えられてもよい。任意に、EDTA、コロイド状ケイ酸塩、コロイド状スズ酸塩、ピロリン酸ナトリウム、有機ホスホン酸塩、硝酸、および/またはリン酸などの過酸化水素安定剤が、この水または水性の流れに加えられてもよい。当業者に公知の他の過酸化水素安定剤も使用されてもよい。カソードチャンバーへの水フローは、過酸化水素の所望の生成物濃度を得るように変更されてもよい。生成物の流れの中の過酸化水素の典型的な生成物濃度は、0.01〜30重量%の間、好ましくは0.1〜10重量%の間、より好ましくは1〜8重量%の間にあってもよい。
【0028】
別の実施形態では、当該生物電気化学システムは、バイオリアクターの中にぶら下がっていてもよいしまたは吊り下げられていてもよく、そして当該生物電気化学システムは管膜を具えて、アノードはこの管膜の外側にありかつ過酸化物を生成するカソードは、この管膜の内側にあってもよい。この場合、アノードは注入口を有しない。同様の採用形態において、カソードが管膜の外側にありかつアノードが管膜の内側にあってもよい。この場合、カソードは注入口を有しない。
【0029】
当該膜が流体透過膜を含み、このような流体がこの膜を横断して流れることができる、他の実施形態があってもよい。このような実施形態では、カソードまたはアノードのうちの1つへの注入口を有することは必要でない可能性がある。
【0030】
カソードは、カソードチャンバー気体注入口を通して酸素(例えば、空気から)を与えられてもよい。過酸化水素はカソードで製造され、この過酸化水素を含有する水性の生成物の流れは、カソードチャンバー液体排出口を通ってカソードチャンバーを離れる。気体注入口を通って与えられた余剰分の気体が、気体排出口を通って当該システムを離れるように、このカソードチャンバーは、気体排出口を具えていてもよい。
【0031】
他の実施形態では、カソードチャンバーへの供給物として与えられる水性の流れは、酸素化されたまたは曝気された水性の流れを含んでもよい。
【0032】
カソード反応(式6)はプロトンを消費するかまたはヒドロキシルイオンを生成するかのいずれかであるので、pHは、典型的には、カソードチャンバーの中では上昇するであろう。実際、この原理は、本発明の特定の実施形態において活用されうる。この特定の実施形態では、アノードチャンバーおよびカソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はカチオン交換膜を含む。カチオン交換膜は当業者に公知であり、その例としては、CMI−7000(Membranes International)、Neosepta CMX(ASTOM Corporation)、fumasep(登録商標) FKB(Fumatech)、およびNafion(DuPont)などの膜が挙げられる。カチオン交換膜が当該生物電気化学システムで膜として使用される場合には、カチオンは、電気回路を通ってアノードからカソードへと流れる電子の負電荷を補うために、アノードからカソードへと輸送される。水性の廃棄物の流れ、とりわけ廃水、は典型的にはほぼpH中性であるため、カチオン交換膜を通って輸送されるカチオンは典型的にはプロトンではないが、水性の廃棄物の流れの中に存在する他のカチオン(ナトリウムおよびカリウムなど)を含む。カソードで、これらのカチオンは、カソード反応(式6)で生成されるヒドロキシルイオンと結合する。過酸化水素が依然として製造されるにつれて、本発明のこの実施形態は、水酸化物物質(水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)および過酸化水素の混合物を生成する。水酸化ナトリウムおよび過酸化水素の混合物は、例えばパルプ産業および紙産業で漂白目的のために、工業的に広く使用される。本発明のこの実施形態の生成物の流れの中の過酸化水素に対する水酸化ナトリウムの比は、0.1:1〜10:1の間、好ましくは0.5:1〜5:1の間、より好ましくは1:1〜3:1の間であってもよい。所望に応じて、この生成物の流れの比は、市販のカセイソーダまたは過酸化水素を加えることにより、必要に応じて変えることができる。
【0033】
多価イオン(例えば、カルシウム)のレベルが、アノードチャンバーに供給される水性の廃棄物の流れ(例えば、廃水)の中で高いと、膜のカソード側でのカルシウム塩(例えば、水酸化カルシウム)の沈殿に起因するカチオン交換膜のスケーリング(scaling)のリスクが存在する。これは、不可逆的に膜を損傷する可能性がある。イオン透過膜が、多価イオンにそのイオン透過膜を通過することを許容する場合は、このリスクはとりわけ高い。この膜へのスケーリングによる損傷を防ぐために、カチオン交換膜は、特別の種類のカチオン交換膜、つまり一価イオン選択的なカチオン交換膜(Balsterら、J.Membr.Sci.、2005、263、137−145)であってもよい。
【0034】
一価イオン選択的なカチオン交換膜は当業者に公知であり、例としてはNeosepta CIMS(ASTOM Corporation)が挙げられる。一価イオン選択的なカチオン交換膜は、選択的に一価のカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム)を輸送し、多価カチオン(例えば、カルシウム)がその膜を通って輸送されることを防ぐ。それゆえ、膜のカソード側に到達する多価イオンの量は著しく減少し、スケーリングのリスクは大きく下がる。一価イオン選択的なカチオン交換膜を使用することによって得られるさらなる利点は、水性の廃棄物の流れの中に存在する可能性があるごく少量の鉄イオンもこの膜によってブロックされるということである。鉄イオンは、過酸化水素の分解についての周知の触媒である。
【0035】
別の実施形態では、カソードでのスケーリングから生じる問題は、カソード流体へのスケール防止剤の添加によって低減することができる。
【0036】
本発明の別の実施形態では、アノードチャンバーおよびカソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はアニオン交換膜を含む。アニオン交換膜は当業者に公知であり、例としては、AMI−7001(Membranes International)、Neosepta AMX(ASTOM Corporation)、およびfumasep FAA(登録商標)(fumatech)などの膜が挙げられる。アニオン交換膜が当該生物電気化学システムで膜として使用される場合、アニオンは、電気回路を通ってアノードからカソードへと流れる電子の負電荷を補うために、カソードからアノードへと輸送される。カチオンはこのアニオン交換膜によって完全にブロックされるため、多価カチオンはアノードからカソードへと輸送され得ず、スケーリングの問題は防がれる。さらに、鉄イオンもブロックされ、そのため、鉄が水性の廃棄物の流れの中に存在しても、過酸化水素の分解は防止される。
【0037】
この特定の実施形態では、カソードチャンバーは、カソードチャンバー液体注入口を通して水または水性の流れを与えられてもよい。この水または水性の流れは、許容できるレベルの電気伝導率を得るために、加えられた塩イオン(例えば、ナトリウムおよび塩化物イオン)または緩衝液(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含有してもよい。電流が当該システムを通って流れて過酸化水素が生成されると、アニオンは、カソードからアノードへと輸送されることになる。この水または水性の流れが十分な量の緩衝液を含有しない場合は、pHも、この特定の実施形態のカソードチャンバーの中で上昇するであろう。アルカリ条件下で(式6b)、過酸化水素はヒドロペルオキシドイオン(すなわち、HO)として存在する可能性がある。このヒドロペルオキシドイオンも負に帯電したイオンであるので、それも、アニオン交換膜を通して輸送されることができる。その場合、この過酸化水素は生成物の流れから失われる。これが起こるのを防止するために、ヒドロペルオキシドイオンが形成されないレベルまで酸(例えば、塩酸および/または二酸化炭素)を加えることにより、pHをカソードの中で制御することができる。これは、ヒドロペルオキシドイオンがアニオン交換膜を通して輸送されて生成物の流れから失われることを防止する。
【0038】
本発明の別の実施形態では、アノードチャンバーおよびカソードチャンバーを隔てるイオン透過膜は、バイポーラ膜を含む。バイポーラ膜は当業者に公知であり、例としては、NEOSEPTA BP−1E(ASTOM Corporation)およびfumasep(登録商標) FBM(Fumasep)などの膜が挙げられる。バイポーラ膜はアニオン交換層の上にあるカチオン交換層から構成され、下式に従う、その膜のイオン交換層の間でプロトンおよびヒドロキシルイオンへの水の分裂の原理に依る:
O→H+OH(式8)
【0039】
バイポーラ膜が当該生物電気化学システムで膜として使用される場合には、アニオン交換層はアノードチャンバーに向けられ、カチオン交換層はカソードチャンバーに向けられる。電流が流れるとき、水はイオン交換層の間を拡散し、プロトンおよびヒドロキシルイオンへと分裂される。ヒドロキシルイオンは、アニオン交換層を通ってアノードチャンバーへと移動し、そこでヒドロキシルイオンは、アノード反応(式5)におけるプロトン生成を補い、プロトンはカチオン交換層を通ってカソードチャンバーへと移動し、そこでカソード反応(式6)におけるヒドロキシルイオン生成(またはプロトン消費)を補う。この結果として、pHは、酸を加えることなく、カソードチャンバーの中で一定に保たれうる。さらに、他のアニオンおよびカチオンはこのバイポーラ膜を通して輸送されないので、多価カチオンもアノードからカソードへと輸送されず、スケーリングの問題は防止される。さらに、鉄イオンもブロックされ、そのため、鉄が水性の廃棄物の流れの中に存在しても、過酸化水素の分解は防止される。
【0040】
この特定の実施形態では、カソードチャンバーは、カソードチャンバー液体注入口を通して水または水性の流れを与えられる。この水または水性の流れは、許容できるレベルの電気伝導率を得るために、加えられた塩イオン(例えば、ナトリウムおよび塩化物イオン)または緩衝液(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含有してもよい。
【0041】
本発明の別の実施形態では、イオン透過膜は多孔質膜である。多孔質膜は当業者に公知であり、例としては、精密濾過膜、限外濾過膜、およびナノ濾過膜が挙げられる。この特定の実施形態では、水性の廃棄物の流れの一部分または全体フローは、この多孔質膜を通ってアノードからカソードへと導かれる。この場合、他の記載された実施形態におけるカソードチャンバー液体注入口を通ってカソードチャンバーに入る水または水性の流れは、減少または解消されてもよい。
【0042】
本発明の別の実施形態では、水または水性の流れは、カソードチャンバーを通る流体フローがカソードの方向に当該膜に垂直であるようにして、カソードと膜との間のカソードチャンバー液体を通ってカソードに入る。これは、多孔質膜を通って流体を送ることにより、またはスペース(空間)および/またはスペーサを膜とカソードとの間に導入することにより、および液体をこのスペースおよび/またはスペーサを通して導くことにより、何し遂げることができる。このようなスペーサは当業者に公知である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、ガス拡散電極がカソードとして使用される(例えば、FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem. 1995、25、613−627;Yamanaka、Angew.Chem.Int.Ed. 2003、42、3653−3655)。このガス拡散電極は直接空気または酸素に曝露され、これにより酸素の十分な利用可能性を保証し、過酸化水素の形成に恩恵をもたらす。カソードチャンバーは、イオン透過膜とガス拡散電極との間にある。ガス拡散電極は当業者に公知であり、例としては、ポリ(テトラフルオロエチレン)粉末(PTFE)と混合された炭素粉末(例えば気相法炭素繊維(VGCF)、昭和電工株式会社(Showa−Denko Co.))でできた電極(例えば、FollerおよびBombard、J.Appl.Electrochem. 1995、25、613−627;Yamanaka、Angew.Chem.Int.Ed.2003、42、3653−3655に記載されているもの)が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のプロセスの1つの実施形態での使用に適した装置の概略図を示す。
【図2】カソードとしてガス拡散電極を利用し、かつ本発明の1つの実施形態での使用に適した装置の概略図を示す。
【図3】本発明の1つの実施形態で起こる反応の概略図を示す。
【図4】実施例に従って運転された生物電気化学システムについての、電池電圧および電極電位 対 電流のグラフである。
【図5】実施例に従って運転された生物電気化学システムについての、累積電荷 対 時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図面は、本発明の好ましい実施形態を例証するために提供されているということは分かるであろう。それゆえ、本発明は、図面に示された特徴だけに限定されると解釈されるべきではないということを理解されたい。
【0046】
図1に示される装置は、アノード12およびカソード14を有する生物電気化学システム10を具える。このシステムは、アノードチャンバー16およびカソードチャンバー18を具える。イオン透過膜20は、このアノードとカソードとの間に配置されている。単に電気伝導性ワイヤーを含んでもよい電気回路22は、アノードをカソードに接続し、それらの間の電子の移動を許容する。過酸化水素の製造の速度を上昇させるために、バッテリ24または他の電圧源/電力供給装置が具えられてもよい。
【0047】
このアノードチャンバーは、アノード液体注入口26およびアノード液体排出口28を具える:廃水の流れなどの水性の廃棄物の流れは、アノード液体注入口26を通ってアノードチャンバー16に供給される。この水性の廃棄物の流れは、有機および/または無機の物質を含有する。この有機または無機の物質は、アノードチャンバーの中にある電気化学的に活性な微生物または細菌によって酸化され、酸化生成物(上記の式5に記載されたものなど)を生成する。プロトンおよび電子も、アノードチャンバーで起こる酸化反応によって生成される。
【0048】
アノードチャンバーで起こる酸化反応は、電子を生成するだけでなく、それらの反応は、アノードチャンバーの中の有機または無機の成分の酸化によって、アノードチャンバー16に供給される水性の廃棄物の流れを精製するかまたは少なくともその水性の廃棄物の流れの中の混入物質レベルを低下させるように作用するということは分かるであろう。このように処理された水性の流れは、アノード液体排出口28を経由してアノードチャンバーから除去される。
【0049】
水の流れなどの水性の流れは、カソード液体注入口30を経由してカソードチャンバー18に供給される。このカソードチャンバー18に与えられる水の流れは、過酸化水素を安定化するための1以上の安定剤を含んでもよい。カソードチャンバー18はまた、カソード液体排出口32を具えてもよい。過酸化水素を含有する液体生成物の流れは、カソード液体排出口32を介してカソードチャンバー18から除去される。
【0050】
上に与えられた式6aおよび式6bから分かるように、カソードチャンバーの中での過酸化水素の製造は、酸素の還元を伴う。過酸化水素の製造に必要な酸素を与えるために、カソードチャンバー18に供給される水の流れは、酸素化されたまたは曝気された水の流れを含んでもよい。あるいは、図1に示されるように、酸素または空気は、気体注入口34を通してカソードチャンバーの中へと導入されてもよい。カソードチャンバー18に供給されたいずれかの余剰の酸素または空気を除去するために、カソードチャンバー18は気体排出口36をも具えていてもよい。
【0051】
図2は、本発明の実施形態での使用に適した装置の概略図を示す。図2に示される装置は、図1に示される装置と共通したいくつかの特徴を有し、便宜のため図1の特徴と共通した図2の特徴は、同じ参照数字によって表されることになるが、図2では’を付け加える。これらの特徴は、さらに説明する必要はない。
【0052】
図2に示される装置が図1に示される装置と異なるところは、図1のカソード14が、カソードとして作用するガス拡散電極15で置き換えられていることである。このガス拡散電極15は直接空気または酸素に曝露され、これにより酸素の十分な利用可能性を保証し、過酸化水素の形成に恩恵をもたらす。カソードチャンバー18’は、イオン透過膜とガス拡散電極との間にある。
【0053】
本発明は、生物電気化学システムを使用して、生成物の流れとしての過酸化水素を製造するためのプロセスおよび装置を提供する。本発明のプロセスは、過酸化水素の製造のために水性の廃棄物の流れのエネルギー含有量を使用することができるため、このプロセスは、従来の電気化学的プロセスと比べて、低い外部エネルギー要求量(電気および水素など)を有するという利点を持つ。さらなる恩恵として、この生物電気化学システムを離れる水性の廃棄物の流れは、それがアノードチャンバーを通過するにつれての廃棄物の流れの中の有機または無機の物質の少なくともいくつかの酸化の結果として、低下したレベルの有機または無機の混入物を有する。
【0054】
本発明は、生物電気化学システムに基づく過酸化水素を製造するためのプロセスを提供する。このシステムは、大規模な工業的な過酸化水素製造プロセスの製造を許容する可能性がある。本発明のプロセスは、大規模に過酸化水素を製造することができる可能性があり、そしてパルプ産業および紙産業などの産業からの製品への要求に従う過酸化水素を製造できる可能性がある。いくつかの実施形態では、この過酸化水素生成物の流れは、ある量の水酸化ナトリウム(または他の有用なアルカリ性物質)を含んでもよい。
【実施例】
【0055】
電気化学電池
カチオン交換膜(Ultrex、Membranes International Inc.、米国、ニュージャージー州、グレン・ロック(Glen Rock))によって隔てられた2つの平行なPerspex(パースペックス)フレーム(内のり寸法14×12×2cm)からなる電気化学電池の中で、実験的稼動を行った。膜およびフレームのこの構成でアノードチャンバーおよびカソードチャンバーを作り出し、それらはともに336mLの空塔容積を有していた。この電気化学電池のアノード側はPerspexプレートによって外部から隔てられ、他方、カソード側は、炭素布のガス拡散電極(E−TEK Specialty ELAT for Hydrogen Peroxide、BASF Fuel Cell,Inc.、米国)によって外部から隔てられていた。アノードチャンバーにアノード材料としての2〜6mmの範囲の直径を持つ粒状のグラファイト(El Carb 100、Graphite Sales,Inc.、米国)を充填した。これによりアノードチャンバーの液体の体積は約182mLまで下がった。グラファイトの棒をグラファイト顆粒の塔の中へと挿入し、外部と接触させた。このガス拡散カソードを、ステンレス鋼フレーム(SS316)電流コレクタ(内のり寸法13.6×13.6×0.1cm)を介して電気的に接続した。このステンレス鋼フレームは185cmの露出した、突出したカソード表面積を残し、これに基づいてすべての電流密度が報告される。両方の電極チャンバーは、Ag/AgCl参照電極(+197mV 対 NHE)を具えていた。この電気化学電池を、アノード電位(3電極構成)または電池電圧(2電極構成)のいずれかを制御するポテンシオスタット(VMP3、Princeton Applied research、米国)に接続した。アノード電位およびカソード電位は、多チャネルデータ取得ユニット(34970A Data Acquisition Unit、Agilent Technologies、USA)を用いて連続的にモニターした。すべての電極電位は、NHEに対して報告される。
【0056】
起動および運転
この電気化学電池のアノードチャンバーに、加熱処理した供給物を連続的に(1mL min−1)供給した。この新規な生物電気化学的な技術の全電位を評価することができるように、緩衝能(pH 7)および酢酸塩含有量がアノード性能を決して限定しないように、この供給物を設計した。それは、(脱イオン水中に)以下のものを含有していた:1.0g/L NaCHCOO、18g/L NaHPO、9g/L KHPO、0.1g/L NHCl、0.5g/L NaCl、0.1g/L MgSO・7HO、0.015g/L CaCl・7HO、および1mL/L 微量栄養素溶液(H.B.Lu、A.Oehmen、B.Virdis、J.KellerおよびZ.G.Yuan、Water Res. 40(2006) 3838)。アノードチャンバーの内容物を約100mL/minで再循環させることにより、アノードチャンバーを連続的に混合した。カソードチャンバーに、2.9g/LのNaCl溶液(50mM)を満たし、回分式モードで運転した。
【0057】
このアノードチャンバーに、炭素および窒素の除去を行うMFC(微生物燃料電池)(B.Virdis、K.Rabaey、Z.Yuan、R.A.RozendalおよびJ.Keller、Environ.Sci.Technol. 印刷中(2009))から取り出した複合微生物系を播種した。播種後、この電気化学電池を、アノード電位が−0.27V、すなわち酢酸塩酸化についての理論的電位(図3を参照)に近い値まで下がるまで、4日間開回路のままにした。その瞬間、電気回路を閉じ、アノード電位を−0.2Vで制御した。翌日のあいだ、電流生成は増加し、2週間の運転後、約0.3mA/cmで安定した。その後、このBESを0.5Vの一定の印加電池電圧で、すなわち、十分に低いエネルギー投入量(<1kWh/kg H)で高電流密度(>0.5mA/cm)を維持することができる印加電圧のレベルで運転した。供給物の中に酢酸塩が存在しないと、電流生成は観察されなかった。すべての実験は、室温で(22±1℃)で行った。
【0058】
実験手順および算出
当該BESを印加電流走査にかけた。この走査に先立ち、この電気化学電池のカソードチャンバーを2回リンスし、その後、50mM NaCl溶液を満たした。このシステムを、最初に開回路のまま10分間放置し、平衡条件を確立させた。その後、0mAから始めて、印加電池電圧が0.5Vに到達するまで、0.1mA/sの走査速度で電流を増大させた。この印加電流走査の間、電池電圧および電極電位をモニターした。
【0059】
印加電流走査に加えて、0.5Vの印加電圧で8時間の実験的稼動の間、このBESの性能を評価した(五重に)。毎稼動に先立って、電気化学電池のカソードチャンバーを2回リンスし、その後、50mM NaCl溶液を満たした。実験的稼動の間、アノードの流入および流出する酢酸塩濃度、ならびにカソードのH濃度およびpHを、2時間間隔で測定した。カソード液の電気伝導率を、実験的稼動の前後で測定した。酢酸塩濃度は高性能液体クロマトグラフィ(HPLC;Shimadzu)を使用して測定した;H濃度は、バナジウム酸塩法(R.F.P.Nogueira、M.C.OliveiraおよびW.C.Paterlini、Talanta 66(2005) 86)を使用して分光光度法で測定した;pHおよび電気伝導率は、手持ち式の計測器(Cyberscan PC 300、Eutech Instruments)を使用して測定した。クーロン効率は、測定された電荷発生(経時的に積算された電流)を、電荷として表される(消費される酢酸塩1molあたりに生成される8molのeに基づく;図3を参照)累積酢酸塩消費量で割ったものとして定義し;カソード効率は、電荷として表される(生成するH 1molあたりに消費される2molのeに基づく;図3を参照)累積H生成量を、測定された電荷発生で割ったものとして定義し;全体効率を、電荷として表される累積H生成量を電荷として表される累積酢酸塩消費量で割ったものとして定義した。
【0060】
結果と考察
印加電流走査
図4からわかるように、開回路でのアノード電位(−0.24V)は酢酸塩酸化についての標準電位(pH 7において−0.28V;図3を参照)に近かったが、開回路でのカソード電位(0.10V)は、H生成についての標準電位(pH 7において0.28V;図3)と比較して約0.18Vという大きい電位損失を受けていた。得られた開回路電圧は0.34Vであった。開回路電圧の正の値は、理論的にはこのシステムによって正味の電力出力を届けることができるということを示す。印加電流走査の間、電池電圧は電流密度の増加とともに減少したが、電流密度が0.16mA/cm(この地点で、当該システムが短絡条件(すなわち、E電池=0V)に達する)に到達するまで正に留まった。この電流密度を超えると、電池電圧は負になり、これは、このシステムが運転するために正味の電力投入量を必要とするということを示す。
【0061】
性能
図4は、より低い電流密度では、生物電気化学的なH生成は、理論上、同時の電気生成(すなわち、正の電池電圧)を伴って運転されうるということを示唆する。しかしながら、それらの条件下で、H生成は相対的に低い速度で進行する。これらの速度は、電圧(すなわち、負の電池電圧)を加えること、従って少量の電気エネルギーを投資することにより、著しく増大させることができる。それゆえ、本発明者らは、8時間の実験的稼動における0.5Vの印加電圧でのBESの性能を評価した(図5を参照)。この印加電圧で、このシステムは0.53±0.07mA/cmという平均電流密度を呈し、この値は、印加電流走査によって予測される電流密度と同じ範囲にある(図4を参照)。H濃度は、t=0時間での0mM(または0重量%)からt=8時間での38±3.9mM(または0.13±0.01重量%)(これは1.9±0.2kgH/m/日という体積H生成速度と等価であった)へと増加した。
【0062】
図5は、(i)測定された電荷発生、(ii)電荷として表される累積酢酸塩消費量、および(iii)電荷として表される累積H生成量をプロットすることにより、この実験的稼動の間によって成し遂げられた効率を図示する。累積酢酸塩消費量は完全な実験的稼動全体を通しての電荷発生と同等であった。これは、このBESのクーロン効率(すなわち、eへの酢酸塩の変換)は非常に高いということを意味する:8時間後に約98.4±2.0%。他方で、累積H生成量は電荷発生からわずかにずれ、特にこの実験的稼動を進めるほどずれ、このためカソード効率(すなわち、Hへのeの変換)は8時間後に84.4±5.2%まで低下した。それでもなお、83.1±4.8%という高い全体効率(すなわち、Hへの酢酸塩の変換)が、8時間の運転後に成し遂げられた。
【0063】
実験的稼動の間、カソード液の電気伝導率はt=0時間での5.5±0.1mS/cmからt=8時間での12.3±1.0mS/cmへと上昇し、他方でpHはt=0時間での7.2±0.6からt=2時間での11.9±0.5へと上昇し、残りの実験的稼動の間、約pH 12に留まった。電気伝導率およびpHのこの上昇は、カチオン交換膜を通るプロトン以外のカチオンの輸送から、およびカソード反応におけるプロトンの消費から説明することができる(図3を参照)。
【0064】
推測される影響
0.5Vの印加電圧および84.4%のカソード効率で、このポテンシオスタットは、約0.93kWh/kg Hの電気エネルギー投入量を届けた。この電気エネルギー投入量は、アノードでの多大なエネルギーを消費する酸素放出反応が必要であることに起因して典型的には約4.4〜8.9kWh/kg Hを必要とするH生成のための従来の電気化学システムの電気エネルギー投入量よりも著しく低い。それゆえこの新規な技術は、重要な産業上の推測される影響を有する可能性がある。全世界でのH市場は約220万トンと見積もられ、そのうちの約50%はパルプ漂白および紙漂白のために使用される。注目すべきことに、パルプ産業および紙産業は、酢酸塩および他の容易に生分解できる有機物が一般的な構成要素である大量の有機物が含まれた廃水をも生成する。従って、廃水供給量とH要求量との間の理想的な合致がこの産業のために確立されることはおそらく可能であり、こうなれば、この産業の環境への影響全体を著しく低減することができるであろう。
【0065】
本実施例において、Hは0.13±0.01重量%の濃度で生成された。この濃度は、販売できる生成物としてのHの回収のためにはあまりに低い可能性があるが、いくらかの改善があれば、それは現場での直接の使用のために非常に適したものとなるであろう。上に示したものと同じ実験装置を使用するさらなる実験的作業では、約1%過酸化水素(実質的な増加)を含有する流れの生成がもたらされた。さらなる改善が予想される。
【0066】
過酸化水素の流れを使用することができるであろう1つの可能性がある例は、パルプ漂白および紙漂白のために最も広く使用されるプロセスであるKraftプロセスである。このKraftは、少なくとも2〜3重量%の濃度を必要とする。上に示したものと同じ実験装置を使用するさらなる実験的作業では、約1%の過酸化水素を含有する流れの生成がもたらされた。この実験的稼動は、より高いH濃度で(すなわちこの実験的稼動を進めるほど)のカソード効率の低下を示し、これは、Hがさらに水へと還元される(H+2H+2e→2HO)ということを示唆する。それゆえ、少なくとも2〜3重量%の濃度を成し遂げるために、例えば酸素濃度を高めることによりまたはH安定剤(例えば、EDTA,ケイ酸塩)を加えることにより、効率を改善するための努力がなされるはずである。
【0067】
本実施例は、BESにおいて酢酸塩から効率的にHを製造することができるということを示す。0.5Vの印加電圧で、検討したBESは、0.13±0.01重量%の濃度および83.1±4.8%の全体効率で、約1.9±0.2kg H/m/日を生成した。その後の実験で過酸化水素のレベルは約1%にまで上昇し、さらなる改善が予想される。
【0068】
当業者なら、本発明は具体的に記載されたもの以外の変更および改変を受ける余地がある可能性があるということはわかるであろう。例えば、他の電気化学システムについて一般に行われるように、複数の過酸化水素を製造する生物電気化学システムをバイポーラ積層構造の中で直列に接続することが、本発明についてもなされてもよい。本発明は、その技術思想および範囲の中に入るすべてのこのような変更および改変を包含するということを理解されたい。
【0069】
本願明細書全体を通して、用語「含む」およびその文法上の等価物は、文脈から明らかにそうではないとわからないかぎり、包含的な意味を有すると解釈されるものとする。
【0070】
出願人は、本願明細書中で論じられる先行技術はオーストラリアまたは他の地域での一般的な普通の知識の一部を形成すると認めるわけではない。
【0071】
用語「有機(または無機)の」は、無機物質および有機物質の両方を指すと解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を製造するためのプロセスであって、アノードおよびカソードを有する生物電気化学システムを準備する工程と、有機もしくは無機の(またはその両方の)物質を含有する供給溶液を前記アノードに供給する工程と、前記有機または無機の物質を前記アノードで酸化する工程と、水性の流れを前記生物電気化学システムの前記カソードに与える工程と、前記カソードで酸素を過酸化水素へと還元する工程と、過酸化水素を含有する流れを前記カソードから回収する工程とを含む、プロセス。
【請求項2】
前記生物電気化学システムは、少なくとも前記アノードまたはアノード区画に関連する電気化学的に活性な微生物を含み、有機および/または無機の汚染物質を含有する廃水の流れがアノード区画に供給され、前記電気化学的に活性な微生物は、それらが前記廃水の流れの中にある有機または無機の汚染物質を酸化している間、前記アノードへの電子の移動をもたらす、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
酸素含有気体が、前記カソードを具えるカソードチャンバーに供給される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
余剰の気体を前記カソードチャンバーから除去する工程をさらに含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記カソードは、過酸化水素への酸素の還元のために、化学的に触媒されて電子を消費する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
過酸化水素の製造全体の電池電位(カソード電位からアノード電位を引いたもの)は正の値を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
外部電圧を前記システムに加えて電極反応の速度を上昇させるため、および過酸化水素の製造の速度を上昇させるために、外部電源が前記アノードと前記カソードとの間に接続される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記カソードは、酸素からの過酸化水素の形成に向かって触媒的である電気伝導性物質を含み、前記電気伝導性物質は電流コレクタ上に担持されており、前記電流コレクタは過酸化水素の分解に向かって触媒的ではない、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記カソードと接触している水性の流れは過酸化水素安定剤を含有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記カソードから回収される過酸化水素を含有する流れは、0.01〜30重量%の間、好ましくは0.1〜10重量%の間、より好ましくは1〜8重量%の間の範囲の過酸化水素の濃度を有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
酸素化されたまたは曝気された水性の流れを含む水性の流れが前記カソードに供給される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
カソード反応はプロトンを消費するかまたはヒドロキシルイオンを生成するかのいずれかであり、そのため、前記カソードチャンバーの中のpHは上昇し、前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はカチオン交換膜を含み、これによってカチオンは前記アノードから前記カソードへと輸送されて、電気回路を通ってアノードからカソードへと流れる電子を補い、水酸化物物質および過酸化水素の混合物が前記カソードチャンバーの中で形成される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
過酸化水素に対する水酸化ナトリウムの比は0.1:1〜10:1の間、好ましくは0.5:1〜5:1の間、より好ましくは1:1〜3:1の間にある、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記カチオン交換膜は一価イオン選択的なカチオン交換膜を含み、前記一価イオン選択的なカチオン交換膜は、多価カチオンがアノードからカソードへと輸送されることを防ぎ、これにより前記カソードチャンバーの中でのスケーリングを最小化または防止し、かつ鉄イオンが前記アノードから前記カソードへと動くことをも防ぐ、請求項12または請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てる前記イオン透過膜はアニオン交換膜を含み、アニオンは前記カソードから前記アノードへと輸送されて、電気回路を通ってアノードからカソードへと流れる電子の負電荷を補い、前記アニオン交換膜は、多価カチオンがアノードからカソードへと輸送されるのを防ぎ、これにより前記カソードチャンバーの中でのスケーリングを最小化または防止し、かつ鉄イオンが前記アノードから前記カソードへと動くことをも防ぐ、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
水または水性の流れが前記カソードチャンバーに与えられ、前記水または水性の流れは最小レベルの電気伝導率を得るために加えられた塩イオンまたは緩衝液を含有する、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記カソードチャンバーの中のpHは、ヒドロペルオキシドイオンが形成されないレベルまで酸を加えることにより、前記カソードの中で制御される、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はバイポーラ膜を含み、前記バイポーラ膜は、アニオン交換層の上にあるカチオン交換層を含み、前記アニオン交換層は前記アノードチャンバーに向けられ、前記カチオン交換層は前記カソードチャンバーに向けられ、これにより電流が流れ、水は前記イオン交換層の間で拡散し、プロトンおよびヒドロキシルイオンへと分裂され、前記ヒドロキシルイオンは前記アニオン交換層を通って前記アノードチャンバーへと移動し、そこで前記ヒドロキシルイオンは前記アノード反応におけるプロトン生成を補い、プロトンは前記カチオン交換層を通って前記カソードチャンバーへと移動し、そこで前記プロトンは前記カソード反応におけるヒドロキシルイオン生成またはプロトン消費を補い、前記バイポーラ膜は、多価カチオンがアノードからカソードへと輸送されることを防ぎ、これにより前記カソードチャンバーの中でのスケーリングを最小化または防止し、かつ鉄イオンが前記アノードから前記カソードへと動くことをも防ぐ、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記イオン透過膜は多孔質膜を含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
ガス拡散電極が前記カソードとして使用される、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記カソードに与えられる流体は1以上のスケール防止剤を含む、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
過酸化水素を製造するための生物電気化学システムであって、アノードを有するアノードチャンバーと、水性の廃棄物の流れを前記アノードチャンバーに供給するためのアノード液体注入口と、液体を前記アノードチャンバーから除去するためのアノード液体排出口と、カソードを有するカソードチャンバーと、水性の流れを前記カソードチャンバーに供給するためのカソード液体注入口と、過酸化水素を含有する生成物の流れを前記カソードチャンバーから除去するためのカソード液体排出口と、前記アノードチャンバーと前記カソードチャンバーとの間のイオンの移動を可能にするための、前記アノードチャンバーと前記カソードチャンバーとの間のイオン透過膜と、前記アノードおよび前記カソードを接続する電気回路とを具え、前記アノードは、前記アノードチャンバーに供給される前記水性の廃棄物の流れの中の有機または無機の物質を酸化する生物触媒されるアノードを構成する、システム。
【請求項23】
酸素含有気体を前記カソードチャンバーに供給するためのカソード気体注入口をさらに具える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
余剰の気体を前記カソードチャンバーから除去するためのカソード気体排出口をさらに具える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、水性の廃棄物の流れの中の有機(または無機)汚染物質を酸化している間に電子を電極(アノード)に移動させる、少なくともアノードまたはアノード区画と関連する電気化学的に活性な微生物を含む、請求項22から請求項24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記アノードと前記カソードとの間に接続される外部電源をさらに具える、請求項22から請求項25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記生物電気化学システムはイオン透過膜によって隔てられたアノードチャンバーおよびカソードチャンバーを具える、請求項22から請求項25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記イオン透過膜は、イオン交換膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜、多孔質膜、またはバイポーラ膜から選択される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記生物電気化学電池はオープンフローシステムを具える、請求項22から請求項26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記カソードは、酸素からの過酸化水素の形成に向かって触媒的である電気伝導性物質を含む、請求項22から請求項29のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項31】
前記電気伝導性物質は電流コレクタ上に担持されており、前記電流コレクタは過酸化水素の分解に向かって触媒的ではない、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記システムはアノードチャンバーを具え、前記アノードチャンバーはアノードチャンバー液体注入口およびアノードチャンバー液体排出口を具える、請求項22から請求項28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
前記システムはカソードチャンバーを具え、前記カソードチャンバーはカソードチャンバー液体注入口を具える、請求項22から請求項28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項34】
前記膜は流体透過膜を含み、そのため、流体が前記膜を横断して流れることができる、請求項22から請求項28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はカチオン交換膜を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項36】
前記カチオン交換膜は一価イオン選択的なカチオン交換膜を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はアニオン交換膜を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項38】
前記アノードチャンバーおよび前記カソードチャンバーを隔てるイオン透過膜はバイポーラ膜を含み、前記バイポーラ膜は、アニオン交換層の上にあるカチオン交換層を含み、前記アニオン交換層は前記アノードチャンバーに向けられ、前記カチオン交換層は前記カソードチャンバーに向けられている、請求項27に記載のシステム。
【請求項39】
前記イオン透過膜は多孔質膜を含み、水性の廃棄物の流れの一部分または全体フローが前記多孔質膜を通ってアノードからカソードへと導かれる、請求項27に記載のシステム。
【請求項40】
水または水性の流れは、前記カソードチャンバーを通る流体フローが前記カソードの方向に前記膜に垂直であるようにして、前記カソードと前記膜との間の前記カソードチャンバー液体注入口を通って前記カソードに入る、請求項27に記載のシステム。
【請求項41】
前記水または前記水性の流れは多孔質膜を通過するか、またはスペースおよび/もしくはスペーサが前記膜の間に設けられ、前記カソードおよび前記水または水性の流れがこのスペースおよび/またはスペーサを通って導かれる、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
ガス拡散電極が前記カソードとして使用される、請求項27に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505961(P2012−505961A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531300(P2011−531300)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001355
【国際公開番号】WO2010/042986
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(505167565)ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】