説明

遠心分離装置及びその運転方法

【課題】遠心分離装置において通常運転時に停電が発生することに起因して生じる課題を解決する
【解決手段】遠心力の作用により被処理液を固形物と分離液とに分離する回転ボウルと、回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転されるコンベアと、回転ボウルに連結された主駆動モータと、コンベアに連結されたバック駆動モータと、電源と主駆動モータとの間に電気的に接続される主駆動側インバータ装置と、電源とバック駆動モータとの間に電気的に接続されるバック駆動側インバータ装置と、を備えた遠心分離装置の運転方法であって、停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置及びその運転方法に関し、特に、停電が発生したときの課題を解決できる遠心分離装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心力を利用して固液分離を行う装置として、デカンタと称される遠心分離装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。図7は、横型のデカンタの概略構造を示す。横型のデカンタ1は、図7に示されるように、水平軸廻りに回転可能な回転ボウル11と、この回転ボウル11に内挿されたスクリューコンベア12とが、ケーシング13の内部に収容されている構造である。
【0003】
固形物を含む被処理液に遠心力を与える回転ボウル11は、一端側がコニカル状に形成されている。このコニカル状に形成されている部位は、スクリューコンベア12によって移送される固形物が液溜まりから離脱するビーチ部を形成しており、その先端側に固形物出口14が形成されている。また回転ボウル11の胴部は、回転ボウル11の内部に供給される被処理液の液溜り(プール部)を形成しており、他端側の端面に分離液出口15が形成されている。一方、スクリューコンベア12の胴部には、螺旋状のスクリュー羽根12aと、被処理液を回転ボウル内に供給するための吐出口12bが形成されている。
【0004】
このような構成において、回転ボウル11を回転させながら被処理液を供給すると、遠心力の作用により回転ボウル11の周壁面に固形物が沈降する。そして、回転ボウル11の回転軸と同軸上で、ギアボックス16を介して回転ボウル11とは相対的に差速をもって回転するスクリューコンベア12によって固形物が移送されて液から分離される。分離された固形物は、固形物出口14から排出され、固形物が分離された液(分離液)は、分離液出口15から排出される。
【0005】
回転ボウル11は、主駆動モータ2によって回転される。V/Fコントローラ21は、電源22から供給される電力を、電圧と周波数を可変制御したAC電力にして主駆動モータ2に給電し、回転ボウル11の回転速度を制御する。V/Fコントローラ21は、AC電力をDC電力に変換する第1変換部21aと、DC電力を電圧及び周波数が可変制御されたAC電力に変換する第2変換部21bを有する。一方、スクリューコンベア12は、回転ボウル11と相対的な差速をもって回転するように、バック駆動モータ23及びV/Fコントローラ24によって回転速度が制御される構成になっている。V/Fコントローラ24も、AC電力をDC電力に変換する第1変換部24aと、DC電力を電圧及び周波数が可変制御されたAC電力に変換する第2変換部24bを有する。
【0006】
詳しくは、被処理液を含む回転ボウル11を回転させると、摩擦や流体抵抗等の作用により、回転ボウル11と一体となってスクリューコンベア12も回転しようとする。そのため、スクリューコンベア12が回転ボウル11と相対的な差速をもって回転するように、バック駆動モータ23にブレーキトルクを発生させる。すなわち、バック駆動モータ23を、回生ブレーキとして利用する。回生ブレーキの作用によって生成された電力は、主駆動モータ2で消費し、これにより装置の省エネ化を実現している。
【0007】
ところで、デカンタ1と称される遠心分離装置については、特許文献や非特許文献を通じて多くの報告がなされている。特許文献1には、通常時の運転方法が開示されている。しかし、これまでの文献等には、予期せぬ停電が発生したときに生じる不具合を問題視し、その解決策まで検討したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−184973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、回転によって生じる遠心力を利用しているデカンタ1にあっては、電力の供給が止まっても慣性力によって回転ボウル11とスクリューコンベア12は共に回転し続ける。しかし、電力の供給が止まることで回転速度の制御機能が失われるため、図8に模式的に示すように、すぐに回転ボウル11とスクリューコンベア12の差速がゼロになる。その結果、固形物の排出ができず、回転ボウル11の内部に固形物が残った状態で装置が停止する。
【0010】
固形物が回転ボウル11の内部に残った状態で装置が停止した場合、そのまま装置を起動させると駆動モータ2,23やV/Fコントローラ21,24に過負荷が生じて出力が遮断(いわゆるトリップ)したり、過トルクがスクリューコンベア12に加わって羽根12aが破損したり、又はギアボックス16等の装置が破損したりする場合がある。従って、装置を再運転させる前に、回転ボウル11の内部に残っている固形物を掻き出す作業が必要であり、装置が再運転できるまでに時間と労力が必要となる。
【0011】
さらに、回転ボウル11とスクリューコンベア12が完全に停止する前に復電したからといって、図9に模式的に示すように、差速がゼロの状態から直ちに差速を形成しようとすると、スクリューコンベア12に過トルクが加わり、バック駆動側のV/Fコントローラ24に過負荷が生じてトリップする場合がある。従って、たとえ復電しても装置を一旦停止せざるを得ない。
【0012】
すなわち、本発明は、一例として挙げた上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、停電に起因して生じる課題を解決することのできる遠心分離装置の運転方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、復電後に速やかに、且つ、容易に装置の再運転を行えるようにするための遠心分離装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る遠心分離装置の運転方法は、回転ボウルと、前記回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転されるコンベアと、前記回転ボウルに連結された主駆動モータと、前記コンベアに連結されたバック駆動モータと、電源と主駆動モータとの間に電気的に接続される主駆動側インバータ装置と、電源とバック駆動モータとの間に電気的に接続されるバック駆動側インバータ装置と、を備えた遠心分離装置の運転方法であって、停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して、回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させることを特徴とする。
【0015】
前記運転方法において、例えば回転ボウルとコンベアを減速させている途中で復電した場合、装置が停止するまで減速させずに、運転を再開することができる。但し、運転の再開は、停電が発生してから一定時間内に復電した場合にのみ行い、復電が一定時間を過ぎている場合には装置を停止させることが好ましい。
【0016】
前記遠心分離装置は、好ましい一例として、主駆動側インバータ装置とバック駆動側インバータ装置とを接続する電気配線と、この電気配線の途中に配置したラッチ式のコンタクタ又はUPSにより給電されたコンタクタと、を更に備えており、停電が発生すると、前記電気配線を通じて主駆動側の回生電力をバック駆動側インバータ装置に給電することができる。
【0017】
停電が発生して主駆動モータ及びバック駆動モータへの給電がなくなった場合、何らの制御を行わずにモータがフリーラン状態になると、回生電力が発生しない。従って、主駆動側インバータ装置及びバック駆動側インバータ装置がコンデンサを備えており、停電が発生すると、主駆動側インバータ装置及びバック駆動側インバータ装置が、各コンデンサに蓄電されている電力を利用して主駆動モータ及びバック駆動モータを減速することで回生電力を発生させるようにすることが好ましい。
【0018】
本発明の遠心分離装置は、回転ボウルと、回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転されるコンベアと、前記回転ボウルに連結された主駆動モータと、前記コンベアに連結されたバック駆動モータと、電源と主駆動モータとの間に電気的に接続にされる主駆動側インバータ装置と、電源とバック駆動モータとの間に電気的に接続されるバック駆動側インバータ装置と、停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して、回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して、回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させるようにする。このようにすれば、装置が停止したときに固形物が回転ボウル内に残るのを抑えることが可能となる。
【0020】
その結果、再固形物を掻き出す作業が不要となり、復電後、速やかに、且つ、安全に装置を再運転させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に従うデカンタの全体構成を示す図である。
【図2】上記デカンタの通常運転時における電気の流れを示す図である。
【図3】上記停電時の運転方法を示すフローチャートである。
【図4】上記デカンタの停電運転時における電気の流れを示す図である。
【図5】上記停電運転時における回転ボウルとコンベアの差速を示す図である。
【図6】上記停電運転時における回転ボウルとコンベアの差速を示す図である。
【図7】デカンタの基本構造を示す図である。
【図8】停電が発生したときの回転ボウルとコンベアの差速を示す図である。
【図9】停電が発生したときの回転ボウルとコンベアの差速を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態による遠心分離装置及びその運転方法について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0023】
(装置構成)
図1は、本実施形態による遠心分離装置の一例として、デカンタ1の概略構造を示している。本実施形態のデカンタ1は、図1に示すように、被処理液に遠心力を付与するための回転ボウル11、回転ボウル11の内部で分離された固形物を搬送するスクリューコンベア12、差動装置であるギアボックス16、回転ボウル11の回転軸に連結される主駆動モータ2、ギアボックス16を介してスクリューコンベア12の回転軸に連結されるバック駆動モータ23を備えている。主駆動モータ2及びバック駆動モータ23は、例えばプーリと回転ベルトを通じて、回転ボウル11及びスクリューコンベア12に動力を伝達できる構成となっている。また、限定されることはないが、バック駆動モータ23よりも主駆動モータ2の方が電気容量の大きいモータを使用する。これらの構成は、図7に示した従来のデカンタ1と同様の構成である。
【0024】
なお、図1に示すデカンタ1は、回転ボウル11とスクリューコンベア12が水平軸周りに回転する横型のデカンタ1である。しかし、本実施形態に適用可能なデカンタ1は、横型に限らず、回転ボウル11とスクリューコンベア12が鉛直軸周りに回転する竪型のデカンタ1であってもよい。さらに、固形物を搬送するコンベア12は、回転ボウル11と相対的な差速をもって回転することによって固形物を搬送できればよく、必ずしもスクリュー式のコンベア12でなくともよい。
【0025】
主駆動モータ2の入力端子は、電気配線3を介して、主駆動側インバータ装置4の出力端子と電気的に接続されている。インバータ装置4の入力端子は、電気配線31を介して、電力を供給可能な電源22と接続されている。電源22は、限定されることはないが、例えば商用電源,発電機などである。そして、主駆動側インバータ装置4は、電源22から供給される電力の電圧及び周波数を可変制御して主駆動モータ2に給電する。このようなインバータ装置4としては、例えば電源からAC電力が供給される場合には、AC電力をDC電力に変換する第1変換部4aと、このDC電力を所望の電圧及び周波数にしたAC電力に変換する第2変換部4bと、所望の電圧及び周波数に変換されるように第2変換部4bの動作を制御する制御部4cと、コンデンサ4dを有するV/Fコントローラを用いることができる。なお、例えば電気配線34を通じてDC電力が供給される場合には、第1変換部4aを省略することも可能である。
【0026】
バック駆動モータ23の入力端子は、電気配線32を介して、バック駆動側インバータ装置41の出力端子と電気的に接続されている。インバータ装置41の入力端子は、電気配線33を介して、電源22と接続されている。このように、バック駆動側インバータ装置41は、電源22からの電力の電圧及び周波数を可変制御してバック駆動モータ23に供給可能な構成となっている。但し、背景技術の欄でも説明したように、装置全体の省エネ化を図るために回生ブレーキとして使用することもできる。インバータ装置41としては、主駆動側インバータ装置4と同様に、例えば電源22からAC電力が供給される場合には、AC電力をDC電力に変換する第1変換部41aと、このDC電力を所望の電圧及び周波数にしたAC電力に変換する第2変換部41bと、所望の電圧及び周波数に変換されるように第2変換部41bの動作を制御する制御部41cと、コンデンサ41dを有するV/Fコントローラを用いることができる。なお、例えば電気配線34を通じてDC電力が供給される場合には、第1変換部41aを省略することも可能である。
【0027】
主駆動側インバータ装置4とバック駆動側インバータ装置41は、例えば直流母線である電気配線34を介して接続されている。この電気配線34は、通常運転時においてバック駆動モータ23を回生ブレーキとして使用する場合には、回生電力が主駆動モータ2で消費されるように給電するのに使用する。これに加えて本実施形態では、停電時において主駆動側インバータ装置4とバック駆動側インバータ装置41の制御電源及び動力電源として回生電力を分配するのに使用する。電気配線34の途中にコンタクタ35を配置するようにしてもよい。コンタクタ35の一例としては、ラッチ式のコンタクタ、又は不図示の無停電電源装置(UPS)により給電されるコンタクタを採用することができる。
【0028】
デカンタ1は、通常時及び停電時のデカンタ1の運転を制御する制御部(不図示)を有する。この制御部は、例えば図1に示されるような制御回路と、制御器(不図示)を有する。制御器は、例えばCPUを含むコンピュータで構成することができ、更にデカンタ1の全体的な動作を制御するシーケンスプログラムをメモリに格納することができる。また、制御回路は、図1に示されるように、停電検知器としての汎用リレー42、停電が発生してからの経過時間をカウントするバッテリー内蔵式のタイマー43、停電時にも機械的に信号を保持する事の出来る運転ラッチリレー(以下、「RUNリレー」と称す)44を含んでいる。
【0029】
停電検知リレー42は、例えば電源22から供給される電力の電圧に基づいて、停電が発生したこと、及び復電したことを検知する。停電検知リレー42が停電を検知すると、インバータ装置4,41に減速指令が出力され、主駆動モータ2及びバック駆動モータ23が減速を開始する。タイマー43は、停電検知リレー42によって停電の発生が検知されるとカウントを開始し、さらに停電検知リレー42が復電を検知するとカウントするのを停止する。また、RUNリレー44は、停電時も運転指令の信号を保持し運転指令をインバータ装置4,41に出力し続ける。詳しくは図3に示す停電時の運転動作に移行される。なお、タイマー43がタイムアップすると接点44aがクローズとなり、この場合には減速中に復電しても運転が再開されない。以上が図1の制御回路の動きになるが、図3のフローチャートの動作を実現する回路の一例であり、制御回路は特に図1に限定されることはない。
【0030】
(運転方法)
上記のように構成されたデカンタ1の運転方法について、添付図面を参照しながら説明する。図2は、通常の運転動作が行われているときの電気の流れを模式的に示す。図3は、停電が発生したときの運転手順を示すフローチャートであり、図4は、前記フローチャートの手順で運転動作が行われているときの電気の流れを模式的に示す。
【0031】
まず通常の運転動作が行われているときは、図2に示すように、電源22からのAC電力が主駆動側インバータ装置4に給電される。主駆動側インバータ装置4は、回転ボウル11が所望の回転数となるように電力の電圧及び周波数を可変制御し、主駆動モータ2に給電する。このように回転ボウル11を所望の回転速度(一例として、1500rpm)で回転させながら被処理液を供給すると、遠心力の作用により回転ボウル11内で固形物が周壁側に沈降する。
【0032】
被処理液を含む回転ボウル11を回転させると、摩擦や流体抵抗等の作用によってスクリューコンベア12が回転ボウル11に引っ張られ、回転ボウル11と一体となって回転しようとする。従って、回転ボウル11とスクリューコンベア12が相対的な差速をもって回転(一例として、1450rpm)するように制御する必要がある。例えば回転ボウル11よりもスクリューコンベア12の方を遅く回転させたい場合には、バック駆動モータ23を回生ブレーキとして使用し、バック駆動側インバータ装置41によってブレーキトルクを可変制御又は回転数を制御する。回生ブレーキの作用によって生成される電力は、電気配線34および主駆動側インバータ装置4を通じて主駆動モータ2に給電する。
【0033】
反対に、例えば回転ボウル11よりもスクリューコンベア12の方を速く回転させたい場合には、電源22からの電力をバック駆動側インバータ装置41に給電し、電圧と周波数を可変制御してバック駆動モータ23に給電することにより、所望の回転速度(一例として、1550rpm)となるようにする。
【0034】
このように正常に運転されている最中に停電が発生すると、図3の動作(Act)100に示すように、停電検知リレー42によって停電が検知され、インバータ装置4,41に減速指令が入力され、図3の動作101に示すように、停電時運転が開始される。より詳しくは、主駆動側インバータ装置4は、停電が検知されると直ちにコンデンサ4dに蓄電されている電力を利用して、主駆動モータ2を減速させる制御を行う。同様に、バック駆動側インバータ装置41は、停電が検知されると直ちにコンデンサ41dに蓄電されている電力を利用して、バック駆動モータ23を減速させる制御を行う。すなわち、停電によって電力の供給が止まっても、コンデンサ4d,41dに僅かな時間、電力が残っているので、この電力を使用して主駆動モータ2及びバック駆動モータ23にブレークトルクを瞬間的に発生させる。インバータの標準機能で停電を検知出来る場合は、停電検知リレー42の代わりにインバータ標準機能を用いて停電検知を行い、減速を行っても良い。なお、被処理液の供給は、停電時運転の開始と同時に停止してもよく、タイミングを遅らせて停止してもよい。また、停電検知リレー42によって停電が検知されると、図3の動作102に示すように、タイマー43が起動して経過時間のカウントが開始される。
【0035】
このように、停電によって電力の供給が止まると、駆動モータ2,23に対して瞬間的かつ強制的に減速指令がなされる結果、駆動モータ2,23が減速することとなり、駆動モータ2,23により電力(回生電力)が生成される。従って、本実施形態では配線31又は33を通じて回生電力を電源側には戻さず、図4に示すように、主駆動側インバータ装置4とバック駆動側インバータ装置41の制御電源及び動力電源に給電するように電気系統を制御する。制御電源とは、インバータ装置4(41)の制御部4c(41c)を稼働させるための電力(制御用電力)が給電される電源である。また、動作電源とは、電圧と周波数を制御して駆動モータ2(23)に給電する電力(動作用電力)の電源である。但し、例えばバック駆動モータ23の電気容量が小さいことに起因して、バック駆動側インバータ装置41の制御電源及び動力電源が確保できないこともある。従って、図4にも示すように、電気容量の大きい主駆動モータ2で生成される回生電力は、バック駆動側インバータ装置41にも給電されるように、電気配線34を通じて分配する。
【0036】
回生電力によってインバータ装置4,41の制御電源及び動力電源が確保できると、図3の動作103に示すように、電圧と周波数を制御して駆動モータ2,23によるブレーキトルクの量又は回転数を制御し、回転ボウル11とスクリューコンベア12との間で相対的な差速を維持しながら減速していく。すなわち、回生電力を利用して駆動モータ2,23を減速させることでさらに回生電力が得られるので、この回生電力をさらに減速させるのに利用していく。図5は、停電運転時における回転ボウル11とスクリューコンベア12の回転速度の変化を模式的に示している。
【0037】
差速を維持した状態で減速させている間もタイマー43による時間のカウントは続けており、図3の動作104において、カウント値が予め決めた一定時間に達しているか否かを判定する。そして停電したままカウント値が一定時間に達した場合には、接点44aがクローズとなり、たとえ復電しても通常運転モードには戻さず、図3の動作105に示すように、減速を続けて一旦装置を停止する。そして、回転ボウル11とスクリューコンベア12が完全に停止してから、図3の動作106に示すように、RUNリレー44をオンにして装置の運転を開始すると共に、図3の動作107に示すように、タイマー43のカウント値をリセットする。
【0038】
一方、前述の動作104においてタイマー43のカウント値が一定時間に達していない場合、図3の動作108に示すように、停電検知リレー42によって復電が検知されたか否かを判定する。復電が検知されていない場合には動作104に戻る。一方、復電が検知された場合には、図3の動作109に示すように、インバータ装置4,41の減速指令がオフとなり、停電時運転から通常運転モードに移行して再運転を開始する。このときには既に電源22からの電力が供給されているので、図3の動作110に示すように、回転ボウル11とスクリューコンベア12の回転速度を加速させると共に、被処理液の供給を再開する。さらに、図3の動作111に示すように、タイマー43のカウント値をリセットする。図6には、減速している最中に復電を検知して装置を再運転させたときの回転ボウル11とスクリューコンベア12の回転速度の変化を模式的に示している。
【0039】
以上のように、本実施形態は、停電が発生したことを検知すると、一例として図3に示した手順に従って停電時運転を開始する。そして、主駆動モータ2及びバック駆動モータ23で生成される回生電力を、主駆動側及びバック駆動側インバータ装置4,41の制御電源及び動力電源として給電し、ブレーキトルクの量又は回転数を制御することによって回転ボウル11とスクリューコンベア12との間で相対的な差速を維持しながら減速していく。従って、本実施形態によれば、停電が復旧することなく回転ボウル11とスクリューコンベア12の回転が停止しても、回転ボウル11内に固形物が残留するのを抑えることができる。
【0040】
よって、停電が復旧した時点で、固形物の掻き出し作業を行わずに速やかに装置を再運転させることが可能である。従来の技術では、装置が停止してから固形物を掻き出すまでに時間を要すると、固形物の種類によっては壁面等にこびり付いて除去が難しくなることがあった。しかし、この課題は、本実施形態によって解決される。また起動時において、過負荷によって駆動モータ2,23やインバータ装置4,41が異常停止することが抑えられるし、過トルクによってギアボックス16等の装置が損傷することも抑えられるので、安全に装置を再運転させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、回転ボウル11とスクリューコンベア12の差速を維持しながら減速させているので、一定時間内に復電したことを検知すれば、装置を停止することなく再運転させることが可能となる。デカンタ1の慣性力は比較的大きいため、特に、大型のデカンタ1の場合には、装置を起動して所望の回転数まで加速するのに長時間を要することがある。しかし、本実施形態の停電時運転モードを適用することで、例えば落雷による瞬停に対しても装置を停止することなく運転継続が可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、停電が発生したことを検知すると直ちにコンデンサ4d(41d)に蓄電されている電力を利用して、駆動モータ2(23)を瞬間的かつ強制的に減速指令を行うことによって、回生電力を発生させることができる。この減速指令を行わず、或いは減速指令が遅れて駆動モータ2,23がフリーランとなってしまうと、回生電力を発生させることができず、制御電源及び動力電源を確保することができなくなってしまう。
【0043】
また、インバータ装置4,41の種類によっては、電気配線34の途中にコンタクタ35が必要になる場合がある。この場合においても、ラッチ式コンタクタ又はUPSにより給電されたコンタクタを配置することにより、停電中も当該電気配線34の接続が確保できるので、バック駆動側からの回生電力が少ない場合であっても主駆動側からの回生電力を給電することが可能である。
【0044】
なお、上述の実施形態は、好ましい一例として、主駆動側及びバック駆動側インバータ装置4,41の両方に回生電力を給電する構成を示している。しかし、これに限定されることはなく、バック駆動側インバータ装置41にのみ回生電力を給電し、スクリューコンベア12の方だけにブレーキトルクを形成して差速を維持するようにしてもよい。
【0045】
なお、本発明は、固‐液分離をするデカンタに限定されることはなく、液‐液分離や固‐液‐液の三相分離を行うデカンタであってもよい。
【0046】
最後に、本実施形態は、予期せぬ停電であれば如何なる原因によって生じた停電に対しても、その効果を得ることが可能である。予期せぬ停電とは、例えば落雷や地震などの天災によるものや、電力供給事情の良くない地域及び国で生じるものもある。いずれにせよ停電の原因が限定されることはない。
【0047】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0048】
1 デカンタ
2 主駆動側モータ
22 電源
23 バック駆動側モータ
34 電気配線(直流母線)
4 主駆動側インバータ装置
41 バック駆動側インバータ装置
42 停電検知リレー
43 タイマー
44 RUNリレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ボウルと、前記回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転されるコンベアと、前記回転ボウルに連結された主駆動モータと、前記コンベアに連結されたバック駆動モータと、電源と主駆動モータとの間に電気的に接続される主駆動側インバータ装置と、電源とバック駆動モータとの間に電気的に接続されるバック駆動側インバータ装置と、を備えた遠心分離装置の運転方法であって、
停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して、回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させることを特徴とする遠心分離装置の運転方法。
【請求項2】
回転ボウルとコンベアを減速させている途中で復電した場合、装置を停止させずに運転を再開することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離装置の運転方法。
【請求項3】
運転の再開は、停電が発生してから一定時間内に復電した場合に行い、復電が一定時間を過ぎている場合には装置を停止させることを特徴とする請求項2に記載の遠心分離装置の運転方法。
【請求項4】
主駆動側インバータ装置及びバック駆動側インバータ装置はコンデンサを備えており、
停電が発生すると、主駆動側インバータ装置及びバック駆動側インバータ装置が、各コンデンサに蓄電されている電力を利用して主駆動モータ及びバック駆動モータを減速することで回生電力を発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠心分離装置の運転方法。
【請求項5】
前記遠心分離装置は、主駆動側インバータ装置とバック駆動側インバータ装置とを接続する電気配線と、この電気配線の途中に配置したラッチ式のコンタクタ又はUPSにより給電されたコンタクタと、を更に備えており、停電が発生すると、前記電気配線を通じて主駆動側の回生電力をバック駆動側インバータ装置に給電することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠心分離装置の運転方法。
【請求項6】
回転ボウルと、
回転ボウル内に配置され、回転ボウルと相対的な差速をもって回転されるコンベアと、
前記回転ボウルに連結された主駆動モータと、
前記コンベアに連結されたバック駆動モータと、
電源と主駆動モータとの間に電気的に接続にされる主駆動側インバータ装置と、
電源とバック駆動モータとの間に電気的に接続されるバック駆動側インバータ装置と、
停電が発生すると、慣性力で回転する回転ボウル及びコンベアによって主駆動モータ及びバック駆動モータで生成される回生電力を、バック駆動側及び/又は主駆動側インバータ装置の制御電源及び動力電源に給電して、回転ボウルとコンベアとが相対的な差速をもって回転する状態を維持しながら減速させる制御部と、を備えたことを特徴とする遠心分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−230040(P2011−230040A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101553(P2010−101553)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】