説明

遠隔操作支援装置および遠隔操作支援プログラム

【課題】対象物の位置や姿勢が事前に判らない場合においても、任意の方向から対象物を確認することを可能としつつ、対象物の遠隔操作を支援できるようにする。
【解決手段】環境データ取得手段21aは、レーザスキャナ14にて計測された対象物11上の点群データを環境データ15として取得し、対象物モデル表現手段21bは、対象物11についての環境データ15に基づいて三次元認識処理17を行うことにより、対象物11の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現18を生成し、マニピュレータモデル表現手段21cは、マニピュレータ12の各軸の状態19に基づいてマニピュレータ12の動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現20を生成し、三次元画像生成手段21dは、三次元空間の指定された視点から見た対象物モデル表現18およびマニピュレータモデル表現20を同一画面上に三次元的に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔操作支援装置および遠隔操作支援プログラムに関し、特に、原子力設備の原子炉内などのように人間が容易に立ち入ることができない環境下に配置された作業用ロボットを遠隔操作する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
放射線環境下や宇宙環境下などの人間が容易に立ち入ることができない場所では、そのような環境下に配置された作業用ロボットを遠隔操作することで、保守や点検などの作業が一般的に行われている。
ここで、保守や点検において実施される作業が既知である場合、あるいは定期的な保守における作業の内容が毎回同一である場合には、ロボットの動作を予めプログラミングしておくことで、人間が操作することなく自動運転で作業を行わせることができる。
【0003】
一方、定期的に行われる同一作業であっても、前回存在しなかった障害物が存在したり、保守対象である装置の一部が壊れているなど予期せぬ状況の発生にも対処できるようにするために、例えば、特許文献1には、作業環境中の物体の位置姿勢やロボットの操作に必要な位置決めに関する情報を環境モデルとして記憶し、カメラが捉えた映像と環境モデルから得られる位置決めに関する情報を図形化して表示した画像とを合成した合成画像を表示することで、手動操作を誘導できるようにする方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−311661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、作業環境中の物体の位置姿勢やロボットの操作に必要な位置決めに関する情報を環境モデルとして用意する必要があるため、遠隔操作される対象の配置が事前に判っている必要があるだけでなく、対象物が環境モデルに登録された所定の位置に存在していることが前提となっており、遠隔操作される対象の状態が操作時にも同様に保たれている必要がある。
【0005】
このため、特許文献1に開示された方法では、対象物の位置が初期の位置と異なっていたり、操作時に対象物の位置が変わったりすると、対象物の遠隔操作ができなくなる上に、予め設定された視点のみからの合成画像しか表示することができず、任意の方向から対象物を確認することができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、対象物の位置や姿勢が事前に判らない場合においても、任意の方向から対象物や作業環境を確認することを可能としつつ、対象物の遠隔操作を支援することが可能な遠隔操作支援装置および遠隔操作支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の遠隔操作支援装置によれば、レーザスキャナによる計測データおよびステレオカメラによる計測データを環境データとして取得する環境データ取得手段と、前記レーザスキャナによる対象物の形状の計測データに基づいて三次元認識処理を行うことにより、前記対象物の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成する対象物モデル表現手段と、マニピュレータの各軸の状態に基づいて前記マニピュレータの動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成するマニピュレータモデル表現手段と、三次元空間の指定された視点から見た前記対象物モデル表現および前記マニピュレータモデル表現を前記環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させる三次元画像生成手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の遠隔操作支援装置によれば、前記ステレオカメラの座標系を前記レーザスキャナの座標系に変換するカメラ座標系変換手段をさらに備え、前記三次元画像生成手段は、前記レーザスキャナの座標系に変換された前記ステレオカメラの計測データを前記レーザスキャナの計測データとともに表示させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3記載の遠隔操作支援プログラムによれば、レーザスキャナによる計測データおよびステレオカメラによる計測データを環境データとして取得するステップと、前記レーザスキャナによる対象物の形状の計測データに基づいて三次元認識処理を行うことにより、前記対象物の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成するステップと、マニピュレータの各軸の状態に基づいて前記マニピュレータの動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成するステップと、三次元空間の指定された視点から見た前記対象物モデル表現および前記マニピュレータモデル表現を前記環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させるステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4記載の遠隔操作支援プログラムによれば、前記ステレオカメラの座標系を前記レーザスキャナの座標系に変換するステップをさらに備え、前記レーザスキャナの座標系に変換された前記ステレオカメラの計測データを前記レーザスキャナの計測データとともに表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、対象物およびマニピュレータの現在の状態が反映された三次元的なモデルを生成し、そのモデルをレーザスキャナやステレオカメラによる環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させることが可能となる。このため、対象物の位置や姿勢が変化する場合においても、対象物およびマニピュレータの現在の状態を作業環境とともに精度よく表示させることが可能となるとともに、対象物およびマニピュレータを三次元的にモデル化することにより、任意の視点からの画像に切り替えることが可能となり、人間が容易に立ち入ることができない放射線環境下や宇宙環境下などであっても、対象物の遠隔操作を円滑に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る遠隔操作支援装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る遠隔操作支援装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、保守や点検などの作業が行われる作業エリアには、対象物11を操作するマニピュレータ12およびマニピュレータ12にて操作される対象物11が配置されている。なお、対象物11およびマニピュレータ12は、放射線環境下や宇宙環境下などの人間が容易に立ち入ることができない場所に設置することができる。また、マニピュレータ12とは、作業用ロボットなどを含めた遠隔操作で使用される機械装置全般を言う。
【0012】
ここで、マニピュレータ12には、対象物11を把持するグリッパを設け、そのグリッパを三次元空間の任意の位置に移動させたり、任意の方向に回転させたりするアームに連結することができる。そして、アームは関節点を介して互いに連結され、各アームはX軸、Y軸およびZ軸を中心として回転自在に構成することができる。そして、各アームには軸を設定し、各軸には三次元座標系を設定し、各軸の状態を観測することで、各アームの位置を特定することができる。また、マニピュレータ12には、対象物11の周辺の環境を立体的に撮影するステレオカメラ13がグリッパの近傍に取り付けられている。
【0013】
一方、マニピュレータ12に人間が指令を出すエリアには、マニピュレータ12の遠隔操作を支援する遠隔操作支援装置15が設置されている。
ここで、遠隔操作支援装置15には、環境データ取得手段15a、対象物モデル表現手段15b、マニピュレータモデル表現手段15c、カメラ座標系変換手段15dおよび三次元画像生成手段15eが設けられるとともに、対象物11の形状を計測するレーザスキャナ14および対象物11やマニピュレータ12の現在の状態などを表示する表示装置16が接続されている。
【0014】
環境データ取得手段15aは、レーザスキャナ14にて計測された対象物11上の点群データを環境データP1として取得したり、ステレオカメラ13による計測データを環境データP3として取得したりすることができる。対象物モデル表現手段15bは、対象物11についての環境データ15に基づいて三次元認識処理を行うことにより、対象物11の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成することができる。マニピュレータモデル表現手段15cは、マニピュレータ12の各軸の状態に基づいてマニピュレータ12の動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成することができる。カメラ座標系変換手段15dは、ステレオカメラ13とレーザスキャナ14との間でキャリブレーションを実施することで、ステレオカメラ13の座標系をレーザスキャナ14の座標系に変換することができる。三次元画像生成手段15eは、三次元空間の指定された視点から見た対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現を、レーザスキャナ14およびステレオカメラ13による環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させることができる。
【0015】
なお、対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現には、例えば、コンピュータグラフィクスにて一般的に使用されるサーフィスモデルなどを用いることができる。
また、遠隔操作支援装置15には、マニピュレータ環境データ格納手段17、ステレオカメラ環境データ格納手段18、マニピュレータキャリブレーション結果格納手段19、ステレオカメラキャリブレーション結果格納手段20、対象物変換行列格納手段21およびマニピュレータ変換行列格納手段22が接続されている。
マニピュレータ座標格納手段17は、マニピュレータ座標系の各点についてレーザスキャナ座標系における三次元座標A1、B1、C1、D1、・・・を格納することができる。ステレオカメラ環境データ格納手段18は、ステレオカメラ座標系の座標値についてレーザスキャナ座標系における三次元座標A2、B2、C2、・・・を格納することができる。
【0016】
マニピュレータキャリブレーション結果格納手段19は、マニピュレータ12のキャリブレーション結果を格納することができる。なお、マニピュレータ12のキャリブレーション結果とは、マニピュレータ座標系の座標値をレーザスキャナ座標系に変換する剛体変換行列を言う。ここで、レーザスキャナ14にてマニピュレータ12上の3箇所以上の点に対応するレーザスキャナ座標値を測定することにより、レーザスキャナ14とマニピュレータ12とのキャリブレーション(関係決め)を実施することができる。具体的には、マニピュレータ12上の測定点が3点であれば、レーザスキャナ座標系とマニピュレータ座標系との間の回転関係を表現する3×3行列と平行移動関係を表現する3次元ベクトルから構成される4×4の剛体変換行列を算出することができる。そして、レーザスキャナ14とマニピュレータ12とのキャリブレーションを予め実施し、マニピュレータ12のキャリブレーション結果をマニピュレータキャリブレーション結果格納手段19に事前に登録することができる。
【0017】
ステレオカメラキャリブレーション結果格納手段20は、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果を格納することができる。なお、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果とは、ステレオカメラ座標系の座標値をレーザスキャナ座標系に変換する剛体変換行列を言う。そして、マニピュレータ12の各軸の角度とマニピュレータ12のキャリブレーション結果を用いることで、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果を算出することができる。
【0018】
対象物変換行列格納手段21は、対象物11上の点を基準座標系の三次元座標に変換する変換行列を格納することができる。なお、対象物11の三次元認識処理による認識結果は、回転変換要素と並行移動要素からなる4×4の変換行列に対応させることができ、基本座標系に予め配置された対象物11を基準座標系の対象物11の位置や姿勢に合わせることができる。そして、対象物11の基本座標系に変換行列を乗算することで、対象物11の基準座標系に変換することができる。
【0019】
マニピュレータ変換行列格納手段22は、マニピュレータ12上の点を基準座標系の三次元座標に変換する変換行列を格納することができる。なお、マニピュレータ変換行列格納手段22に格納される変換行列は、マニピュレータ12の各軸1、2、・・・ごとに設けることができ、マニピュレータのアームから定期的に現在の軸角度を読み出し、各軸座標系の変換行列(軸1の変換行列、軸2の変換行列、・・・、先端の変換行列)に変換して保存することができる。そして、マニピュレータ12上の指定された点の三次元座標系に変換行列を乗算することで、基準座標系の三次元座標に変換することができる。
【0020】
そして、レーザスキャナ14は、レーザ光にて対象物11を走査することにより、三次元計測処理を行う。そして、環境データ取得手段15aは、レーザスキャナ14にて三次元計測処理が行われると、対象物11上の点群データを環境データP1として取得し、遠隔操作支援装置15に保存する。
そして、対象物モデル表現手段15bは、三次元認識データベースを参照しながら、対象物11についての環境データP1に基づいて三次元認識処理を行うことで、対象物11の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成する。ここで、三次元認識データベースには、マニピュレータ12にて操作される複数の対象物11についてのスピンイメージを格納することができる。そして、対象物11についての環境データP1に基づいて三次元認識処理を行う場合、対象物11の点群データについての法線ベクトルを設定し、レーザスキャナ14にて計測された点群データについてのスピンイメージと、三次元認識データベースに格納されたスピンイメージとを照合することができる。なお、スピンイメージを用いた三次元認識処理については、特開2006−139713号公報に詳細に記載されている。
【0021】
このスピンイメージを用いた三次元認識処理では、対象物11の三次元認識を行うために、対象物11全体の点群データを計測する必要がなく、レーザスキャナ14による一方向からの計測で済ませることができるので、計算量を減らすことができる。
また、対象物モデル表現手段15bは、対象物11についての環境データP1に基づいて三次元認識処理を行うことで、対象物11の変換行列を算出し、対象物変換行列格納手段21に格納することができる。
また、ステレオカメラ13は、対象物11の周辺環境を複数の視点から撮影することにより、対象物11の周辺環境についての立体的な計測を行う。そして、環境データ取得手段15aは、ステレオカメラ13による計測データを環境データP3として取得し、遠隔操作支援装置15に保存する。
【0022】
さらに、マニピュレータ12は、マニピュレータ12の各軸の状態P2を検出し、遠隔操作支援装置15に送る。そして、マニピュレータモデル表現手段15cは、マニピュレータ12の各軸の状態P2に基づいて、マニピュレータ12の実際の動きが反映されたマニピュレータ12と同様な形状を構築することにより、マニピュレータ12の動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成する。なお、マニピュレータモデル表現を生成するために必要なアームなどのマニピュレータ12の構成要素の寸法は遠隔操作支援装置15に予め登録することができる。また、マニピュレータ12の各軸の状態P2は、マニピュレータ12の各軸の角度を用いることができ、マニピュレータ12の各軸の角度を検出するために角度センサを各軸ごとに設けることができる。
【0023】
また、マニピュレータモデル表現手段15cは、マニピュレータ12の各軸の状態P2を取得すると、マニピュレータ12の各軸座標系の変換行列に変換して、マニピュレータ変換行列格納手段22に格納することができる。
そして、カメラ座標系変換手段15dは、マニピュレータ12の各軸ごとの変換行列とマニピュレータ12のキャリブレーション結果を用いることで、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果を算出し、ステレオカメラキャリブレーション結果格納手段20に登録する。そして、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果を用いて、ステレオカメラ座標系の座標値をレーザスキャナ座標系の座標値に変換することで、ステレオカメラ座標系の座標値についてのレーザスキャナ座標系における三次元座標A2、B2、C2、・・・を求め、ステレオカメラ環境データ格納手段18に格納する。
【0024】
そして、三次元画像生成手段15eは、三次元空間の指定された視点から見た対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現を三次元的に示す二次元画像を生成し、レーザスキャナ14による環境データP1およびレーザスキャナ座標系に変換されたステレオカメラ13による環境データP3とともに、表示装置16の同一画面上に重ねて表示させることができる。なお、対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現を表示装置16に表示させる場合、Ooen GLなどのグラフィックスソフトウェアを利用することで、任意の視点から見た対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現を同一画面上に重ねて表示させることができる。
【0025】
そして、オペレータは、対象物モデル表現およびマニピュレータモデル表現を三次元的に示す画像が環境データP1、P3とともに表示装置16上に表示されると、遠隔操作しやすいように視点を切り替えながら、マニピュレータ12を操作することができる。
これにより、対象物11およびマニピュレータ12の現在の状態が反映された三次元的なモデルを生成し、そのモデルをレーザスキャナ14やステレオカメラ13による環境データP1、P3とともに同一画面上に三次元的に表示させることが可能となる。このため、対象物11の位置や姿勢が変化したり、対象物11の近傍に障害物が存在したりする場合においても、対象物11およびマニピュレータ12の現在の状態を作業環境とともに精度よく表示させることが可能となるとともに、対象物11およびマニピュレータ12を三次元的にモデル化することにより、任意の視点からの画像に切り替えることが可能となり、人間が容易に立ち入ることができない放射線環境下や宇宙環境下などであっても、対象物11の遠隔操作を円滑に行うことが可能となる。
【0026】
なお、環境データ取得手段15a、対象物モデル表現手段15b、マニピュレータモデル表現手段15c、カメラ座標系変換手段15dおよび三次元画像生成手段15eは、これらの手段で行われる処理を遂行させる命令が記述されたプログラムをコンピュータに実行させることにより実現することができる。
そして、このプログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶しておけば、遠隔操作支援装置15のコンピュータに記憶媒体を装着し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、環境データ取得手段15a、対象物モデル表現手段15b、マニピュレータモデル表現手段15c、カメラ座標系変換手段15dおよび三次元画像生成手段15で行われる処理を実現することができる。
【0027】
また、環境データ取得手段15a、対象物モデル表現手段15b、マニピュレータモデル表現手段15c、カメラ座標系変換手段15dおよび三次元画像生成手段15で行われる処理を遂行させる命令が記述されたプログラムをコンピュータに実行させる場合、スタンドアロン型コンピュータで実行させるようにしてもよく、ネットワークに接続された複数のコンピュータに分散処理させるようにしてもよい。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る遠隔操作支援装置に適用されるマニピュレータ座標系およびステレオカメラ座標系の一例を示す図である。
図2において、マニピュレータ12の三次元座標系は、マニピュレータ12の各軸1、2、・・・ごとに設けることができる。例えば、マニピュレータ12の基準座標系はX0・Y0・Z0座標系、軸1の座標系はX1・Y1・Z1座標系、軸2の座標系はX2・Y2・Z2座標系、軸3の座標系はX3・Y3・Z3座標系、軸4の座標系はX4・Y4・Z4座標系とし、マニピュレータ12に取り付けられたステレオカメラ13の座標系はX5・Y5・Z5座標系とすることができる。そして、マニピュレータ12の各軸間の距離d1、d2、d3、d4を設定することができる。
【0029】
そして、例えば、軸1の座標系の点は、以下の(1)式にてレーザスキャナ座標系の座標値に変換することができる。
(マニピュレータ12のキャリブレーション結果)×(軸1の座標系の変換行列)×(軸1上の点座標) ・・・(1)
また、例えば、ステレオカメラ座標系の座標値をレーザスキャナ座標系の座標値に変換する変換行列は、以下の(2)式にて与えることができる。
(マニピュレータ12のキャリブレーション結果)×(軸1の座標系の変換行列)×(軸2の座標系の変換行列)×(軸3の座標系の変換行列)×(軸4の座標系の変換行列)×(ステレオカメラ座標系の変換行列) ・・・(2)
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係るステレオカメラによる環境データの位置変換方法を示すフローチャートである。なお、図3の環境データの位置変換方法では、マニピュレータ12の4個の軸があるものとして説明する。
図3において、図1のカメラ座標系変換手段15dは、マニピュレータ12のキャリブレーション結果をマニピュレータキャリブレーション結果格納手段19から読み出す(ステップS1)。また、カメラ座標系変換手段15dは、マニピュレータ12の軸角度とアーム長d1〜d4を読み出し(ステップS2)、マニピュレータ12の軸数分だけ前軸の変換行列と現軸の変換行列とを順次乗算し(ステップS3、S5)、その乗算結果を保持する(ステップS4)。
【0031】
そして、マニピュレータ12の軸4の座標系をステレオカメラ座標系に合致させるための移動量を算出し(ステップS6)、マニピュレータ12のキャリブレーション結果とマニピュレータ12の軸数分の変換行列とが乗算された乗算結果に、マニピュレータ12の軸4の移動量を加算することで、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果を算出する(ステップS7)。
【0032】
次に、カメラ座標系変換手段15dは、ステレオカメラ13による環境データP3と色情報とを読み出し(ステップS8)、ステレオカメラ13のキャリブレーション結果とステレオカメラ13による環境データP3とを乗算することで、ステレオカメラ13による環境データP3におけるステレオカメラ座標系の座標値をレーザスキャナ座標系の座標値に変換する(ステップS9)。そして、レーザスキャナ座標系に変換されたステレオカメラ13による環境データP3に色情報を付加し(ステップS10)、ステレオカメラ環境データ格納手段18に保存する(ステップS11)。そして、ステップS9〜S11の処理を環境データP3の個数分だけ繰り返したかどうかを判断し(ステップS12)、環境データP3の個数分だけ繰り返してない場合にはステップS9〜S11の処理を繰り返す。
【0033】
図4(a)は、本発明の一実施形態に係るレーザスキャナによる環境データ、対象物のモデル表現およびマニピュレータのモデル表現の表示例を示す図、図4(b)は、本発明の一実施形態に係るステレオカメラによる環境データ、レーザスキャナによる環境データ、対象物のモデル表現およびマニピュレータのモデル表現の表示例を示す図である。
図4(a)において、対象物11の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現およびマニピュレータ12の実際の動きが反映されたマニピュレータモデル表現が、レーザスキャナ14による環境データP1とともに表示装置16に表示されている。
また、図4(b)において、対象物11の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現およびマニピュレータ12の実際の動きが反映されたマニピュレータモデル表現が、レーザスキャナ14による環境データP1およびレーザスキャナ座標系に変換されたステレオカメラ13による環境データP3とともに表示装置16に表示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔操作支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る遠隔操作支援装置に適用されるマニピュレータ座標系およびステレオカメラ座標系の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るステレオカメラによる環境データの位置変換方法を示すフローチャートである。
【図4】図4(a)は、本発明の一実施形態に係るレーザスキャナによる環境データ、対象物のモデル表現およびマニピュレータのモデル表現の表示例を示す図、図4(b)は、本発明の一実施形態に係るステレオカメラによる環境データ、レーザスキャナによる環境データ、対象物のモデル表現およびマニピュレータのモデル表現の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
11 対象物
12 マニピュレータ
13 ステレオカメラ
14 レーザスキャナ
15 遠隔操作支援装置
15a 環境データ取得手段
15b 対象物モデル表現手段
15c マニピュレータモデル表現手段
15d カメラ座標系変換手段
15e 三次元画像生成手段
16 表示装置
17 マニピュレータ環境データ格納手段
18 ステレオカメラ環境データ格納手段
19 マニピュレータキャリブレーション結果格納手段
20 ステレオカメラキャリブレーション結果格納手段
21 対象物変換行列格納手段
22 マニピュレータ変換行列格納手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナによる計測データおよびステレオカメラによる計測データを環境データとして取得する環境データ取得手段と、
前記レーザスキャナによる対象物の形状の計測データに基づいて三次元認識処理を行うことにより、前記対象物の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成する対象物モデル表現手段と、
マニピュレータの各軸の状態に基づいて前記マニピュレータの動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成するマニピュレータモデル表現手段と、
三次元空間の指定された視点から見た前記対象物モデル表現および前記マニピュレータモデル表現を前記環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させる三次元画像生成手段とを備えることを特徴とする遠隔操作支援装置。
【請求項2】
前記ステレオカメラの座標系を前記レーザスキャナの座標系に変換するカメラ座標系変換手段をさらに備え、
前記三次元画像生成手段は、前記レーザスキャナの座標系に変換された前記ステレオカメラの計測データを前記レーザスキャナの計測データとともに表示させることを特徴とする請求項1記載の遠隔操作支援装置。
【請求項3】
レーザスキャナによる計測データおよびステレオカメラによる計測データを環境データとして取得するステップと、
前記レーザスキャナによる対象物の形状の計測データに基づいて三次元認識処理を行うことにより、前記対象物の形状および姿勢が反映された対象物モデル表現を生成するステップと、
マニピュレータの各軸の状態に基づいて前記マニピュレータの動作状態が反映されたマニピュレータモデル表現を生成するステップと、
三次元空間の指定された視点から見た前記対象物モデル表現および前記マニピュレータモデル表現を前記環境データとともに同一画面上に三次元的に表示させるステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする遠隔操作支援プログラム。
【請求項4】
前記ステレオカメラの座標系を前記レーザスキャナの座標系に変換するステップをさらに備え、
前記レーザスキャナの座標系に変換された前記ステレオカメラの計測データを前記レーザスキャナの計測データとともに表示させることを特徴とする請求項3記載の遠隔操作支援プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−12106(P2009−12106A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175240(P2007−175240)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】