説明

遠隔検知システム

【課題】小型のタグを用い、且つ通信距離を長くした遠隔検知システムを構成する。
【解決手段】遠隔検知システム101は、リーダライタ30、アクティブタグ40A,40B、及びパッシブタグ50A〜50Fを含む。リーダライタ30はアクティブタグ40A,40Bとの間で通信を行い、アクティブタグ40A,40Bが取得した検知データを読み取る。アクティブタグ40A,40Bはパッシブタグ50A〜50C,50D〜50Fのそれぞれのセンシング情報を検知し、それらのデータをリーダライタ30へ送信する。パッシブタグ50A〜50C,50D〜50Fは、アクティブタグ40A,40Bとリーダライタ30との間でなされる通信電波の周波数帯域で共振する共振回路と、その共振回路に接続されたアンテナとを含む。アクティブタグ40A,40Bはパッシブタグ50A〜50C,50D〜50Fからの反射信号の周波数を解析してセンシング情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF−IDタグを用いた遠隔検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、RF−ID技術に関するものとして例えば特許文献1、特許文献2が開示されている。
【0003】
特許文献1のデータ通信システムは、データキャリアと本体リーダライタとの間に中継リーダライタが設けられている。中継リーダライタはデータキャリアに接近して配置され、中継リーダライタを介してデータキャリアと本体リーダライタとの間でデータ通信が行われる。中継リーダライタには電池が内蔵されていて、データキャリアが中継リーダライタに実装されたときに電源スイッチが入るように構成されている。
【0004】
特許文献2の無線応答装置は、インピーダンス変換部を有するSAW−IDタグで無電源のトランスポンダが構成されている。図1は、特許文献2の状態検知システムの構成を示すブロック図である。状態検知システム1は、送受信機10および無線応答装置である状態検知センサ20を有する。送受信機10は、アンテナ11を介して状態検知センサ20に質問信号を送信する。また、送受信機10は、状態検知センサ20から送信された応答信号をアンテナ11を介して受信する。状態検知センサ20は無給電で動作するセンサ(パッシブセンサ)である。インピーダンス変換部22は、外力や光など、周囲の状態の変化をインピーダンス変化に変換する。周囲の状態によってインピーダンス変換部22のインピーダンスが変化し、アンテナ21と識別信号発生部23とのインピーダンス整合状態が変化するので、状態検知センサ20は、周囲の状態に応じた応答信号を出力することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−127672号公報
【特許文献2】特開2007−18492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、不揮発性メモリを有したデータキャリアが受信信号による電力でデータ通信を行うシステムであるため、キャリアはメモリデータの変復調、受信信号−電圧変換等の機能が必要で、構成が複雑となり、大型になる問題がある。また中継リーダライタはメモリデータを本体リーダライタに中継するのみであり、キャリアと本体リーダライタの通信距離を長くする効果があるだけである。
【0007】
特許文献2の構成は、SAWをIDとしてインピーダンス変換部がセンサ等に使われる無電源SAWトランスポンダである。しかしSAWをIDとして使用する場合、トランスバーサル型でIDTの有無による“0”“1”判定でIDを付与することになる。トランスバーサル型SAWは共振子型SAWに比べロスが大きいため、そもそも通信距離等の特性は見込めない。またIDの桁数を大きくするほどIDT本数が増加しIDT往復の距離が増大するためロスはさらに増大する。しかも、インピーダンスは通信距離に大きな影響を与えるため、インピーダンスの変化を読み取る方式は、読み取り可か不可かに影響を与えシステムとして安定性が悪い。IDのための構成とセンサとを別々に備えるため小型化にも不利である。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解消して、小型のタグを用い、且つ通信距離を長くした遠隔検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠隔検知システムは、アクティブタグと、当該アクティブタグとの間で通信を行うリーダとを含む遠隔検知システムにおいて、アクティブタグとリーダとの間でなされる通信電波の周波数帯域で共振する共振回路と、当該共振回路に接続されたアンテナとを含むパッシブタグを備え、アクティブタグは、アンテナ、送受信回路、復調回路、制御回路、ID回路、及び電源回路を備え、トランスポンダ方式によってパッシブタグを遠隔検知し、リーダとの通信情報に前記パッシブタグの情報を含める手段を含む。
【0010】
この構成により、アクティブタグとリーダ装置との間での無線通信と、パッシブタグとアクティブタグとの間でのトランスポンダ通信とが互いに有効に作用して、小型のパッシブタグを用いて且つトランスポンダ通信よりも遠距離での通信が可能となる。
【0011】
前記パッシブタグの共振回路を、検出量に応じて共振周波数が変化するセンサ素子を含むもの、又はセンサ素子自体、とすればパッシブセンサタグの検知内容をリーダで読み取ることができる。
【0012】
また、アクティブタグとリーダとの間での無線通信の距離を、アクティブタグとセンサタグとの間でのトランスポンダ通信の距離より長くすれば、従来のトランスポンダ通信より遠距離でパッシブタグを利用できるようになる。
【0013】
前記共振回路は例えばSAWデバイスである。
前記アンテナは、例えばフィルムと当該フィルムに形成された放射電極とで形成され、前記フィルムに前記共振回路が設けられる。
また、例えば前記パッシブタグの前記アンテナと前記共振回路は気密封止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リーダとアクティブタグとの通信電波によって、通信距離の比較的短いパッシブタグの出力をトランスポンダ方式で検出できる。また、通信距離の比較的長いリーダとアクティブタグとの間の無線通信で、長距離の1対多点の複数点検知ができる。すなわちアクティブタグ方式とパッシブタグ方式が融合される。
【0015】
そのため、パッシブタグのトランスポンダ方式での有効通信距離を超える範囲でも、パッシブタグを用いた遠隔検知が可能となる。しかもパッシブタグはID回路を必要としないので、小型、軽量で、製造が容易となる。
【0016】
例えば、病院で体温を遠隔検知する場合、複数配置されたアクティブタグの中で体温検知センサタグの近傍のアクティブタグから温度情報とともにID情報(例えば、病院内の位置情報)などとともに無線検知できる。さらに、複数のアクティブタグの情報はリーダとの無線通信によりリーダに検知情報を集中できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】特許文献2の状態検知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の遠隔検知システム101のブロック図である。
【図3】図3(A)は図2に示したリーダライタ30の構成を示すブロック図である。図3(B)は図2に示したアクティブタグ40Aの構成を示すブロック図である。図3(C)は図2に示したパッシブタグ50Aの構成を示すブロック図である。
【図4】図4(A)はパッシブタグ50Aの平面図、図4(B)はパッシブタグ50Aの正面断面図である。
【図5】アクティブタグ(40A,40B)とパッシブタグ(50A〜50F)との間での送信信号と反射信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図6】図6(A)は、図3(A)に示したリーダライタ30の制御回路31の処理内容を示すフローチャートである。図6(B)は、図3(B)に示したアクティブタグ40Aの制御回路41の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の遠隔検知システムについて、図1以降の各図を参照して説明する。
図2は本発明の遠隔検知システム101のブロック図である。この遠隔検知システム101は、リーダライタ30、アクティブタグ40A,40B、及びパッシブタグ50A〜50Fを含む。リーダライタ30はアクティブタグ40A,40Bとの間で通信を行い、アクティブタグ40A,40Bが取得した検知データを収集する。
【0019】
アクティブタグ40Aはパッシブタグ50A〜50Cのそれぞれのセンシング情報を検知し、それらのデータをリーダライタ30へ送信(応答)する。また、アクティブタグ40Aは自身でも所定のセンシングを行い、その情報をリーダライタ30へ送信(応答)する。同様に、アクティブタグ40Bはパッシブタグ50D〜50Fのそれぞれのセンシング情報を検知し、それらのデータをリーダライタ30へ送信(応答)する。また、アクティブタグ40Bは自身でも所定のセンシングを行い、その情報をリーダライタ30へ送信(応答)する。
【0020】
パッシブタグ50A〜50C,50D〜50Fは、アクティブタグ40A,40Bとリーダライタ30との間でなされる通信電波の周波数帯域で共振する共振回路と、その共振回路に接続されたアンテナとを含む。
【0021】
図2に示した遠隔検知システム101は、アクティブタグ40A,40Bによる検知データ、及びパッシブタグ50A〜50Cによる検知データをアクティブタグ40A,40Bを介して収集する。この例では、パッシブタグ50A〜50Cはアクティブタグ40Bから一定距離を超えて離れているので、アクティブタグ40Bはパッシブタグ50A〜50Cの影響を受けない。同様に、パッシブタグ50D〜50Fはアクティブタグ40Aから一定距離を超えて離れているので、アクティブタグ40Aはパッシブタグ50D〜50Fの影響を受けない。
【0022】
図3(A)は図2に示したリーダライタ30の構成を示すブロック図である。図3(B)は図2に示したアクティブタグ40Aの構成を示すブロック図である。図3(C)は図2に示したパッシブタグ50Aの構成を示すブロック図である。アクティブタグ40Bの構成はアクティブタグ40Aと同一である。また、パッシブタグ50B〜50Fの構成はパッシブタグ50Aと基本的に同一である。
【0023】
図3(A)に示すように、リーダライタ30は、アンテナ35、送受信回路34、変復調回路33、制御回路31、メモリ32、及びインターフェース回路36を備えている。送受信回路34はアンテナ35を介してアクティブタグ40A,40Bとの間で送信及び受信を行う。変復調回路33は送信信号の変調及び受信信号の復調を行う。制御回路31は各種コマンドをシリアル信号にして変復調回路33へ出力することによって、アクティブタグ40A,40Bに対して所定のコマンドを送信する。また、制御回路31は変復調回路33から復調信号を入力し、パッシブタグ及びアクティブタグ毎の検知データを区別してメモリ32に書き込む(収集する)。さらに、制御回路31はインターフェース回路36を介して外部回路との間でケーブルを介して通信を行い、検知データを外部へ出力する。
【0024】
図3(B)に示すように、アクティブタグ40Aは、アンテナ48、送受信回路47、変復調回路46、制御回路41、電源回路42、メモリ43、センサ44、及びID回路45を備えている。送受信回路47はアンテナ48を介してアクティブタグ用のリーダライタ30との間で送信及び受信を行う。変復調回路46はリーダライタ30への送信信号の変調及び受信信号の復調を行う。変復調回路46はまた、パッシブタグ50A〜50Cからの反射信号の検出も行う。センサ44は例えば温度センサ、湿度センサ、ガスセンサ等である。ID回路45はリーダライタ30がアクティブタグを識別するために用いる固有の情報を発生する回路である。
【0025】
なお、必要なセンシングを全てパッシブタグで行う場合には、アクティブタグにこのようなセンサ44を設ける必要はない。また、メモリ43は必ずしも制御回路41の外に設ける必要はない。
【0026】
制御回路41は検知データをシリアル信号にして変復調回路46へ出力することによって、リーダライタ30へ検知データを送信する。また、制御回路41は変復調回路46から復調信号を入力し、リーダライタ30からのコマンドを識別し、コマンドに応じた処理を行う。検知データの応答要求コマンドであれば、既に取得した検出データにIDを付与したシリアル信号を変復調回路46へ出力する。制御回路41はさらに、変復調回路46によって検出されたパッシブタグ50A〜50Cからの反射信号の周波数情報を読み取り、パッシブタグ50A〜50Cのセンシング情報を取得する。例えば、パッシブタグ50A〜50Cの反射信号の周波数は個別に設定されているので、その周波数の検出によってパッシブタグ50A〜50Cのうち、どのパッシブタグからの反射信号であるかを検知し、前記周波数情報を検知データとしてメモリ43へ書き込む。
このように、制御回路41は、リーダライタ30へ送信する情報にパッシブタグの情報を含める手段を備える。
【0027】
図3(C)に示すように、パッシブタグ50Aは、SAWデバイス54とアンテナの放射電極52A,52Bを備えてSAWトランスポンダを構成している。SAWデバイス54は圧電基板と圧電基板に形成されるIDT電極と含む共振回路を構成している。放射電極52A,52Bはダイポールアンテナを構成していて、上記共振回路に接続されている。
なお、ダイポールアンテナに代えて、ループアンテナ、モノポールアンテナ等のアンテナを用いてもよい。
【0028】
このパッシブタグ50Aの共振回路の共振周波数により、アクティブタグ40Aから送信された電波の反射状態は異なる。アクティブタグ40Aは、この反射信号の周波数を検出することによって、パッシブタグ50A〜50Cのセンシング情報を検知する。
【0029】
図4(A)はパッシブタグ50Aの平面図、図4(B)はパッシブタグ50Aの正面断面図である。このパッシブタグ50Aはベースフィルム51、SAWデバイス54、及び封止フィルム59を備えている。ベースフィルム51の上面には放射電極52A,52Bが形成されている。SAWデバイス54は、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム等の圧電基板55上にIDT電極56及び反射電極57A,57Bが形成されていて、2端子1ポートの共振回路が構成されている。この共振回路の共振周波数は例えば860MHz〜960MHzの周波数帯である。上記共振回路の共振周波数は温度に対して一定の係数を備えている。すなわち周囲温度に応じて共振周波数が変化する。
【0030】
なお、パッシブタグ50Aの共振周波数は、厳密には、SAWデバイス54の共振回路と放射電極52A,52Bとによって構成される回路の共振周波数であるが、実質的にSAWデバイス54の共振回路の共振周波数に等しい。
【0031】
このSAWデバイス54はベースフィルム51の上面に実装され、SAWデバイスの2端子が放射電極52A,52Bに接続されている。封止フィルム59は、SAWデバイス54が実装されているベースフィルム51の上面の全面に貼付されていて、この封止フィルム59とベースフィルム51とによってSAWデバイス及び放射電極52A,52Bが封止されている。このような耐湿性のある気密封止パッケージ構造とすれば、パッシブタグは高湿度の環境下でも利用できる。
【0032】
ベースフィルム51の裏面(外底面)には、必要に応じて両面粘着シート及び離型紙が貼着される。例えばその離型紙を剥がして患者の所定部位にパッシブタグ50Aを貼付することによって、体温を検知するためのセンサタグとして作用する。
【0033】
図5は、アクティブタグ(40A,40B)とパッシブタグ(50A〜50F)との間での送信信号と反射信号の周波数スペクトラムを示す図である。図5において、曲線thruはアクティブタグの送信信号のスペクトラム、曲線SAWはパッシブタグにおけるSAWデバイス以外からの反射信号のスペクトラム、曲線RevはパッシブタグにおけるSAWデバイスからの反射信号のスペクトラム、曲線NWAは、パッシブタグにおけるSAWデバイスの挿入損失の波形である。
【0034】
この例では、アクティブタグ40Aの送信信号の周波数(パッシブタグ50Aが存在しない場合又はパッシブタグ50Aの共振回路の共振動作が影響を与えない状態での周波数)ftは868MHz、パッシブタグ50Aの共振回路の共振周波数frは868MHz+100kHz程度である。
【0035】
パッシブタグの共振周波数の変化範囲はアクティブタグ40Aの送信信号の周波数の主帯域(図5に示した例では867〜869MHz)内に存在する。そのため、パッシブタグ(50A〜50F)はアクティブタグ(40A,40B)からの送信信号を受けて、共振周波数に応じた反射信号を送信(反射)する。
【0036】
このように、パッシブタグ50Aがアクティブタグ40Aの近方界に存在すると、アクティブタグ40Aが受ける反射信号の周波数がずれるので、アクティブタグ40Aはこの反射信号の周波数を検出して、パッシブタグ50A〜50Cの共振周波数すなわちセンシング情報を検知する。
【0037】
図6(A)は、図3(A)に示したリーダライタ30の制御回路31の処理内容を示すフローチャートである。図6(B)は、図3(B)に示したアクティブタグ40Aの制御回路41の処理内容を示すフローチャートである。
【0038】
リーダライタ30は、図6(A)に示すように、一定タイミング又は不定期のタイミングでアクティブタグに対して検知データを要求するコマンドを送信する。これに続いて、アクティブタグから送信(応答)される検知データを受信し、所定の形式でメモリに格納する。既に述べたとおり、この検知データにはアクティブタグが検知したパッシブタグ50A〜50Fのセンシング情報が含まれている。
【0039】
アクティブタグ(40A,40B)は、図6(B)に示すように、受信信号の有無を検出し、受信信号があれば、それがリーダライタ30からの何らかの要求コマンドであるか否かを判定する。検知データの送信要求であれば、既に取得した検知データをリーダライタ30へ送信する。また、これとともに、パッシブタグからの反射信号の周波数を解析することによって各パッシブタグのセンシング情報を取得する。そして、それらの検知データを次の送信に備えてメモリへ書き込む。
【0040】
本発明に係るアクティブタグは、図3(B)に示したように、リーダライタと通信を行うために送受信回路47及び変復調回路46を備えているので、リーダライタに対する送信信号に対するパッシブタグ(SAWトランスポンダ)の反射信号を受信し解析することは制御回路41の信号処理で実質的に行われる。すなわち送受信回路47及び変復調回路46を既に備えているので、従来構成のアクティブタグの制御回路による信号処理にパッシブタグからの反射信号の解析機能を付加するだけでよい。そのため、アクティブタグの回路規模を殆ど増すことなく、非常に効率の高い遠隔検知システムが構成できる。
【0041】
また、本発明に係るアクティブタグでは、アクティブタグとパッシブタグとで用いる周波数帯域が共用されることが可能であるため、例えば、[A]アクティブタグとリーダとの間での通信、及び[B]アクティブタグとパッシブタグとの間での通信において、アクティブタグの構成である、アンテナ、送受信回路、復調回路、及び制御回路が共有できる。これに対し、前述の[A]と前述の[B]とで異なる周波数帯域を用いるとすれば、前記の構成を共有させると、無線通信(電波送受信)の効率が落ち、通信距離が短くなるか、あるいは、無線通信の効率を維持するために、フィルタ素子、デュプレクサ素子及びスイッチ素子などを用いて信号から所定の周波数帯域を選択し、通過させる分波回路、合波回路及び濾波回路などの周波数選択手段をアクティブタグに付加する必要が生じる。
【0042】
したがって、このようにアクティブタグとパッシブタグとで用いる周波数帯域が共用されない場合に比較して、回路の共有がもたらす部品点数が削減される。これにより、装置の小型化及び製造工程が簡略化できる。
【0043】
また、回路の共有化により装置内の回路の数が減らせるので、各回路間を接続する配線長が短縮できる。そのため、配線を配置する面積が削減できるので装置を小型化できる。さらには、配線長の短縮により外界の電磁波が配線に飛び込むノイズが低減できる。そのため、装置の電磁波ノイズ耐性が高まる。
【0044】
なお、個々のパッシブタグはアクティブタグのIDで識別するので、個々のパッシブタグにID回路が不要であり、ID回路を設けることによる信号減衰がなく、パッシブタグから送信(反射)される反射信号の減衰を抑制できるので、ID回路が設けられるときに比べトランスポンダ方式の通信距離を長くできる。
【0045】
また、所定部位のセンシングにおいて湿気等が問題となる場合にアクティブタグであれば、全体を耐湿構造とするのはサイズ、部品点数から難易度が高いが、パッシブタグとすればセンサ(チップ)のみ気密封止パッケージに実装すればよいので容易に実現できる。
【0046】
以上に示した遠隔検知システムによれば、例えば、病院で体温を遠隔検知する場合に、配置された複数のアクティブタグのうち、体温検知用のパッシブタグの近傍に配置されたアクティブタグは、パッシブタグにより得た体温情報とともにアクティブタグのID情報(例えば、病院内の位置情報)をリーダライタ30へ送信する。これによって、病院内の複数の患者の体温情報を、小型、軽量、製造が容易な(使い捨て可能な)体温検知用パッシブタグを用いて一元管理できる。
【0047】
《他の実施形態》
以上に示した実施形態はパッシブタグが所定のセンシングを行うセンサタグである例を示したが、パッシブタグの有無の検知を行う場合にも同様に適用できる。この場合、アクティブタグはパッシブタグからの反射信号の有無を検出し、そのことでパッシブタグの有無を検知する。
【0048】
また、以上に示した例では、リーダライタからの送信信号がパッシブタグで反射されて、その反射信号の周波数を検出するようにしたが、リーダライタからの送信信号の終了後に続いて生じるSAWデバイスの残響による送信信号の周波数を検出することによって、検知データを取得するようにしてもよい。
【0049】
また、以上に示した例では、SAWデバイスの温度依存性を積極的に利用して温度センサとして用いるようにしたが、その他に、圧力、磁界、雰囲気等によって共振周波数が変化するようにSAWデバイスを構成すれば、圧力センサ、磁気センサ、ガスセンサのセンサタグとして用いることができ、これらの検知をリーダライタで遠隔で一元的に行うことができる。
【0050】
なお、以上の実施形態では、リーダライタがアクティブタグと無線通信するように説明したが、アクティブタグに対して何らかのデータを書き込むことは必須の機能ではないので、単に「リーダ」であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
30…リーダライタ
31…制御回路
32…メモリ
33…変復調回路
34…送受信回路
35…アンテナ
36…インターフェース回路
40A,40B…アクティブタグ
41…制御回路
42…電源回路
43…メモリ
44…センサ
45…ID回路
46…変復調回路
47…送受信回路
48…アンテナ
50A〜50F…パッシブタグ
51…ベースフィルム
52A,52B…放射電極
54…SAWデバイス
55…圧電基板
56…IDT電極
57A,57B…反射電極
59…封止フィルム
101…遠隔検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブタグと、当該アクティブタグとの間で通信を行うリーダとを含む遠隔検知システムにおいて、
前記アクティブタグと前記リーダとの間でなされる通信電波の周波数帯域で共振する共振回路と、当該共振回路に接続されたアンテナとを含むパッシブタグをさらに備え、
前記アクティブタグは、アンテナ、送受信回路、復調回路、制御回路、ID回路、及び電源回路を備え、トランスポンダ方式によって前記パッシブタグを遠隔検知し、前記リーダへ送信する情報に前記パッシブタグの情報を含める手段を含む、遠隔検知システム。
【請求項2】
前記パッシブタグの共振回路は、検出量に応じて共振周波数が変化するセンサ素子を含む、又はセンサ素子自体である、請求項1に記載の遠隔検知システム。
【請求項3】
前記アクティブタグの制御回路は、前記リーダへ送信する電波が前記パッシブタグで反射されることにより生じる信号を検知し、前記パッシブタグの情報を前記ID回路によるIDで前記リーダと通信する、請求項1又は2に記載の遠隔検知システム。
【請求項4】
アクティブタグとリーダとの間での通信距離は、アクティブタグとセンサタグとの間での通信距離より長い、請求項1乃至3の何れかに記載の遠隔検知システム。
【請求項5】
前記共振回路はSAWデバイスである、請求項1乃至4の何れかに記載の遠隔検知システム。
【請求項6】
前記アンテナは、フィルムと当該フィルムに形成された放射電極とで形成され、前記フィルムに前記共振回路が設けられた、請求項1乃至5の何れかに記載の遠隔検知システム。
【請求項7】
前記パッシブタグの前記アンテナと前記共振回路は気密封止された、請求項1乃至6の何れかに記載の遠隔検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−191889(P2011−191889A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55998(P2010−55998)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】