説明

遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法

【課題】業務ソフトウェアの更新作業を効率良く行えて手間と時間を削減できると共に遠隔監視業務への悪影響が極めて少ない、遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法を提供すること。
【解決手段】昇降機の運行状態を監視する遠隔監視業務を、時間帯等に応じて出動拠点B1〜Bnとセンター拠点Bとが交代で行うようにしてある遠隔監視システムで、各出動拠点に配備されている遠隔監視用クライアント端末C1〜Cnの業務ソフトウェアを更新する方法において、センター拠点Bのサーバー装置Sが予め稼働中の出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に更新ソフトウェアを配信しておき、センター拠点Bによる遠隔監視業務から出動拠点による遠隔監視業務へ切り替える際に、この出動拠点の遠隔監視用クライアント端末の既存の業務ソフトウェアを更新してから起動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機の遠隔監視に用いられるクライアント端末の業務ソフトウェアを更新する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降機の遠隔監視システムにおいては、昇降機に設置された遠隔監視端末から故障発生の情報(故障信号)がセンター拠点に通報されると、この故障信号がセンター拠点から故障の発生した昇降機を管轄する出動拠点へ伝達されるようになっている。すなわち、平日の昼間等は、各出動拠点が管轄地域の昇降機の遠隔監視業務を行っており、故障信号の通報を受けたセンター拠点は、故障が発生した昇降機を管轄する出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に対してこの故障信号を伝達する。これにより、その出動拠点に待機している保守員(技術作業員)を故障発生現場へ急行させることができる(例えば、特許文献1参照)。ただし、出動拠点で遠隔監視業務が行われない夜間や休日等は、昇降機の遠隔監視端末からの故障信号がセンター拠点内の遠隔監視用クライアント端末に表示され、この場合、例えばセンター拠点に待機している当直の保守員が故障発生現場へ派遣される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−336381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昇降機の遠隔監視システムでは、サービス内容の拡張や改善等の機能変更が比較的頻繁に行われ、その都度、コンピュータプログラムの業務ソフトウェアを更新している。出動拠点に配備されている遠隔監視用クライアント端末においても例外ではなく、そのソフトウェア更新作業は、通常、各出動拠点が適宜行っているが、遠隔監視業務を中断するなどしてセンター拠点に更新ソフトウェアを要求して配信させねばならないため、手間と時間を要する煩雑な作業を余儀なくされていた。また、この中断時には出動拠点が行うべき遠隔監視業務をセンター拠点が代行しなければならないため、センター拠点においても煩雑な作業を余儀なくされていた。さらに、複数の出動拠点から更新ソフトウェアの要求が集中した場合には、センター拠点の負荷が増大してしまうという不便さもあった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、業務ソフトウェアの更新作業を効率良く行えて手間と時間を削減できると共に遠隔監視業務への悪影響が極めて少ない、遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、昇降機に設置された遠隔監視端末からの信号に基づいて該昇降機の運行状態を監視する遠隔監視業務を、遠隔監視用クライアント端末の配備されている出動拠点と、前記遠隔監視用クライアント端末と接続されたサーバー装置の配備されているセンター拠点とが、時間帯等に応じて交代で行うようにしてある遠隔監視システムで前記遠隔監視用クライアント端末の業務ソフトウェアを更新する方法において、前記センター拠点による遠隔監視業務から前記出動拠点による遠隔監視業務へ切り替える際に、予め前記遠隔監視用クライアント端末に更新ソフトウェア(新規の業務ソフトウェア)が格納されているか否かを判定し、格納されていると判定された場合には既存の業務ソフトウェアを前記更新ソフトウェアに更新してから起動するようにした。
【0007】
出動拠点による遠隔監視業務が開始される直前には、該出動拠点の遠隔監視用クライアント端末は電源が投入されているので、この遠隔監視用クライアント端末に更新ソフトウェアが格納されている場合、既存の業務ソフトウェアを更新してから起動すれば、ソフトウェア更新作業の完了後に出動拠点が遠隔監視業務を開始しても開始時刻の遅延する可能性は低く、遅延したとしても僅かな時間で済む。したがって、かかる遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新作業に伴って出動拠点が遠隔監視業務をわざわざ中断する必要はなく、かつ、センター拠点が遠隔監視業務を代行する時間を増やす必要もほとんど無いか全く不要となる。
【0008】
上記のソフトウェア更新方法において、センター拠点のサーバー装置が、予め出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に対して更新ソフトウェアを配信しておくようにしてあると、出動拠点側から更新ソフトウェアを要求して配信させる必要がなくなると共に、各出動拠点に対する更新ソフトウェアの配信状況をセンター拠点で管理しやすくなる。それゆえ、業務ソフトウェアの更新作業が一層効率良く行えるようになり、サーバー装置に負荷が集中する虞もなくなる。
【0009】
この場合において、センター拠点のサーバー装置が、出動拠点の遠隔監視用クライアント端末が稼働中であるか否かを把握しており、稼働中の場合だけ更新ソフトウェアを配信するようにしてあると、非稼働状態の遠隔監視用クライアント端末に対する無駄な配信を防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法では、センター拠点による遠隔監視業務から出動拠点による遠隔監視業務へ切り替える際に、この出動拠点の遠隔監視用クライアント端末の既存の業務ソフトウェアを更新してから起動するので、ソフトウェア更新作業の完了後に出動拠点が遠隔監視業務を開始しても開始時刻の遅延する可能性は低く、遅延したとしても僅かな時間で済む。したがって、かかるソフトウェア更新作業に伴って出動拠点が遠隔監視業務をわざわざ中断する必要はなく、かつ、センター拠点が遠隔監視業務を代行する時間を増やす必要もほとんど無いか全く不要となる。すなわち、本発明のソフトウェア更新方法によれば、業務ソフトウェアの更新作業を効率良く行えて手間と時間を削減できると共に、遠隔監視業務への悪影響が極めて少ないという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態例に係る遠隔監視システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の遠隔監視システムにおける出動拠点の遠隔監視用クライアント端末の動作スケジュールを示す説明図である。
【図3】該遠隔監視用クライアント端末の業務ソフトウェアを自動更新する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態例に係る遠隔監視システムでは、昇降機に設置された遠隔監視端末Tから公衆電話回線網NTを介して、該昇降機の運行情報がセンター拠点Bに送信されるようになっている。すなわち、昇降機に故障が発生すると、遠隔監視端末Tが故障信号を公衆電話回線網NTを介してセンター拠点Bに通報する。センター拠点Bでは、この故障信号を通信装置Mが受信してサーバー装置Sに伝達する。そしてサーバー装置Sが、後述するように時間帯等に応じて、故障が発生した昇降機を管轄している出動拠点の遠隔監視用クライアント端末、もしくはセンター拠点B内の遠隔監視用クライアント端末に、この故障信号を伝達するようになっている。
【0013】
昇降機を遠隔監視する業務は、平日の昼間は出動拠点B1,B2,……Bnで行われており、各出動拠点B1,B2,……Bnにはそれぞれ遠隔監視用クライアント端末C1,C2,……Cnが配備されている。そして、いずれかの昇降機に故障が発生すると、その昇降機を管轄する出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に対して、センター拠点Bのサーバー装置Sが遠隔監視端末Tからの故障信号を社内ネットワークNIを介して伝達する。つまり、平日の昼間は、各出動拠点B1〜Bnがそれぞれ管轄地域の昇降機を遠隔監視する業務を行っており、いずれかの昇降機に故障が発生すると、その昇降機を管轄する出動拠点(例えばB1)の遠隔監視用クライアント端末(例えばC1)に故障信号が表示されるため、この故障信号に基づいて、当該出動拠点(例えばB1)に待機している保守員(技術作業員)が現地へ急行して故障対応を行う。
【0014】
一方、夜間や休日には、出動拠点B1,B2,……Bnによる遠隔監視業務は行われないため、センター拠点Bが遠隔監視業務を代行する。この場合、昇降機の遠隔監視端末Tからセンター拠点Bのサーバー装置Sへ通報された故障信号は、センター拠点Bに配備されている遠隔監視用クライアント端末S1,……Snのいずれかに表示されるため、その時点で待機している当直の保守員がセンター拠点Bから現地へ派遣される。
【0015】
このように昇降機を遠隔監視する業務拠点は、平日の昼間と夜間および休日とで異なるため、センター拠点Bのサーバー装置Sには、各出動拠点B1,B2,……Bnに配備されている遠隔監視用クライアント端末C1,C2,……Cnの稼働状況を表示する管理テーブルCが設けられている。この管理テーブルCの表示内容は、遠隔監視業務が出動拠点からセンター拠点Bへ切り替えられたときに「稼働中」から「代行中」に変更され、これとは逆にセンター拠点Bから出動拠点へ切り替えられたときには「代行中」から「稼働中」に変更される。サーバー装置Sは、管理テーブルCに基づいて、昇降機の遠隔監視端末Tから通報された故障信号の伝達先を選定する。
【0016】
次に、上述した遠隔監視システムにおいて、サービス内容の拡張や改善等に伴いコンピュータプログラムの業務ソフトウェアを更新する際の処理手順について説明する。かかるソフトウェア更新作業は、センター拠点Bではサーバー装置Sおよび各遠隔監視用クライアント端末S1,……Snに対して実施され、各出動拠点B1,B2,……Bnではそれぞれの遠隔監視用クライアント端末C1,C2,……Cnに対して実施される。ただし、各出動拠点においてそれぞれ遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新作業を行うために遠隔監視業務を中断すると作業効率が悪くなるので、本実施形態例では、センター拠点Bのサーバー装置Sの制御によって各遠隔監視用クライアント端末C1,C2,……Cnに対するソフトウェア更新作業が自動的に行えるようにしている。
【0017】
すなわち、遠隔監視用クライアント端末C1,C2,……Cnに適用される更新ソフトウェアをセンター拠点Bのサーバー装置Sにセットした後、このサーバー装置Sが管理テーブルCを参照しながら、稼働中の出動拠点に配備されている遠隔監視用クライアント端末に対し社内ネットワークNIを介して更新ソフトウェアを配信するようにしてある。その際、サーバー装置Sは稼働中の各出動拠点に対して更新ソフトウェアを順次配信していくので、出動拠点側からの要求で更新ソフトウェアをダウンロードする場合に比べて、サーバー装置Sに負荷が集中する虞がない。なお、稼働中の出動拠点に配信された更新ソフトウェアは、その遠隔監視用クライアント端末内のハードディスクドライブ等の二次記憶装置に格納される。また、昇降機の遠隔監視業務をセンター拠点Bが代行している出動拠点では、遠隔監視用クライアント端末が非稼働状態となっており、更新ソフトウェアをダウンロードすることができないので、こうしたクライアント端末に対しては後刻稼働状態となった時点で更新ソフトウェアを配信する。
【0018】
次に、図2を参照しながら、本実施形態例における出動拠点の遠隔監視用クライアント端末の動作スケジュールについて説明する。図2に示すように、この出動拠点では、日中(平日昼間)の時間帯T2から夜間の時間帯T3へ移行する時点で、管轄の昇降機に対する遠隔監視業務をセンター拠点Bに代行させる業務切替A2が実施される。業務切替A2が実施されるのに伴い、この出動拠点に配備されている遠隔監視用クライアント端末はシャットダウンされる。そして、翌日がこの出動拠点の稼働日(平日)である場合、夜間の時間帯T1から日中(平日昼間)の時間帯T2へ移行する時点で、管轄の昇降機に対する遠隔監視業務を再開する業務切替A1が実施されるが、業務切替A1に先立って出動拠点では遠隔監視用クライアント端末の電源を投入し、オペレーティングシステムが立ち上がった後に業務ソフトウェアを自動起動させる。本実施形態例では、この業務切替A1に先立つ時間帯を利用して、遠隔監視用クライアント端末に対する業務ソフトウェアの自動更新を行う。
【0019】
次に、かかるソフトウェア更新作業の処理手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。出動拠点の遠隔監視用クライアント端末は、まず、自動起動される更新ソフトウェア(新規の業務ソフトウェア)が、サーバー装置Sから事前に配信されて二次記憶装置に格納されているか否かを確認する(ステップS1)。更新ソフトウェアが格納されていない場合は、ステップS3へ進んで既存の業務ソフトウェアを起動させた後、業務切替A1を実施して遠隔監視業務を再開する。
【0020】
ステップS1で更新ソフトウェアが格納されている場合は、ステップS2へ進んで業務ソフトウェアを自動更新する。こうして更新された業務ソフトウェアは次なるステップS3で起動されるため、業務切替A1に先立つ準備時間帯U(図2参照)を利用してソフトウェア更新作業が行え、業務切替A1が実施された後は、この更新された業務ソフトウェアに従って出動拠点による遠隔監視業務が開始されることになる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態例においては、センター拠点Bのサーバー装置Sが、予め、稼働中の出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に更新ソフトウェアを配信しておき、センター拠点Bによる遠隔監視業務から出動拠点による遠隔監視業務へ切り替える際に、この出動拠点の遠隔監視用クライアント端末の既存の業務ソフトウェアを更新してから起動するようにしている。それゆえ、この出動拠点がソフトウェア更新作業の完了後に遠隔監視業務を開始しても、開始時刻が遅延する可能性は低く、遅延したとしても僅かな時間で済む。また、かかるソフトウェア更新作業に伴って出動拠点が遠隔監視業務をわざわざ中断する必要はなく、かつ、センター拠点Bが遠隔監視業務を代行する時間を増やす必要もほとんど無いか全く不要となる。
【0022】
また、本実施形態例においては、センター拠点Bのサーバー装置Sが管理テーブルCを参照しながら、稼働中の各出動拠点の遠隔監視用クライアント端末に対して更新ソフトウェアを順次配信していくので、各出動拠点に対する更新ソフトウェアの配信状況をセンター拠点Bが管理しやすいという利点がある。さらに、かかるソフトウェア更新方法を採用すれば、出動拠点側からの要求で更新ソフトウェアをダウンロードする場合に比べて、サーバー装置Sに負荷が集中しなくなるという利点もある。しかも、サーバー装置Sは管理テーブルCに基づき、出動拠点の遠隔監視用クライアント端末が稼働中であるか否かを把握しており、稼働中の場合だけ更新ソフトウェアを配信するので、非稼働状態の遠隔監視用クライアント端末に対する無駄な配信を防止できるという利点もある。
【符号の説明】
【0023】
B センター拠点
B1,B2,……Bn 出動拠点
C 管理テーブル
C1,C2,……Cn (出動拠点の)遠隔監視用クライアント端末
M 通信装置
NI 社内ネットワーク
NT 公衆電話回線網
S サーバー装置
T 遠隔監視端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機に設置された遠隔監視端末からの信号に基づいて該昇降機の運行状態を監視する遠隔監視業務を、遠隔監視用クライアント端末の配備されている出動拠点と、前記遠隔監視用クライアント端末と接続されたサーバー装置の配備されているセンター拠点とが、時間帯等に応じて交代で行うようにしてある遠隔監視システムで前記遠隔監視用クライアント端末の業務ソフトウェアを更新する方法において、
前記センター拠点による遠隔監視業務から前記出動拠点による遠隔監視業務へ切り替える際に、予め前記遠隔監視用クライアント端末に更新ソフトウェアが格納されているか否かを判定し、格納されていると判定された場合には既存の業務ソフトウェアを前記更新ソフトウェアに更新してから起動するようにしたことを特徴とする遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記サーバー装置が、予め前記遠隔監視用クライアント端末に対して前記更新ソフトウェアを配信しておくようにしてあることを特徴とする遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記サーバー装置が、前記遠隔監視用クライアント端末が稼働中であるか否かを把握しており、稼働中の場合だけ前記更新ソフトウェアを配信するようにしてあることを特徴とする遠隔監視用クライアント端末のソフトウェア更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−101920(P2012−101920A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253145(P2010−253145)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】