説明

遮光性熱シール包装材のシール不良検査装置及びその方法

【課題】 レトルトパウチのそり曲がりなどによる画像検査の困難を克服する。
【解決手段】 パウチ2のシール不良検出装置1は、充填物が充填されたパウチ2を搬送する搬送部3と、搬送部3の片側に配置されパウチ2を斜め上方から搬送部3を横切るように設定された第1方向Xから照明する第1照明部4と、搬送されているパウチ2のシール部2aが第1照明部4を通過するときにシール部2aを撮像する第1撮像部5と、第1照明部4の搬送方向の下流側に配置され、かつ、パウチ2を第1方向Xと垂直線に対して線対称に設定された第2方向Yから照明する第2照明部6と、搬送されているパウチ2のシール部2aが第2照明部6を通過するときにシール部2aを撮像する第2撮像部7と、第1撮像部5及び第2撮像部7で撮像される画像を処理し、画像中のシール不良を検出するシール不良検出部8と、該当するパウチを不良品として排出する排出部9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱シール包装材において、内容物の充填後に充填口を熱溶着したシール部のシール不良を検出するシール不良検査装置方法及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する食品等を密封包装する熱シール包装材においては、3方が密閉(シール)された熱シール包装材内に所要の充填物を充填した後に、充填口を熱溶着によって密閉(シール)している。この密閉工程においては、接着不良によるシール皺、ピンホール、気泡混入、夾雑物噛み込み、充填物蒸気による水滴付着など、熱溶着面(シール面)のシール不良が生じる場合ある。こうしたシール不良は、充填物の腐敗等を引き起こすため、充填工程後にシール不良の有無を確実に判別する必要がある。
【0003】
まず、熱シール包装材をチャンバ内に入れ、チャンバ内の空気を減圧し、減圧前後の圧力差によってシール不良を検出するリーク・テスタと呼ばれる検査装置がある。これは熱シール包装材を搬送しないで検査する装置である。まず、シャドウグラフ法、シュリーレン法等による光学可視化観測可能な透孔窓を有する機密性としたチャンバ内にガラス製やプラスチック製の密封容器等の被検査体包装体を入れ、チャンバ内を減圧吸引して被検査体包装体の気流噴出状態を光学的に観測して画像検査し減圧前後の状態を比較し不良状態を自動的に検査するものがある(特許文献1)。
【0004】
つぎに、チャンバの中に、予め内容物を充填した密封体を入れ、密封体内部の圧力とチャンバ内の圧力とに差圧を発生させるとともに、前記内容物又はチャンバー内に含まれる酸素を密封体外部のチャンバ内空間で又は該空間から導いて検出し、その濃度差に基づいて密封体の漏れの有無を判定することを特徴とする密封体の漏れ検査方法がある(特許文献2)。
【0005】

つぎに、熱シール包装材を搬送しながら不良シールを検査する静電式シール不良検査装置がある(特許文献3〜5)。これは、熱溶着が不良の箇所の総厚みを検出することで不良個所を検査するものである。即ち、このシール不良検査装置は、導電性層を含む複数種のシート部材をそれぞれ積層し対向面の導電性層の内側に熱溶着用シート部材がそれぞれ配された熱シール包装材に適用され、熱シール包装材の各導電性層との間の各静電容量から導電性層と各検出用電極との各距離をそれぞれ測定し、これらの距離と2つの検出用電極間の距離とから導電性層間の厚みを算出し、算出された厚みが所定以上であれば、熱シール包装材のシール不良と判定する検出する方法である。
【0006】
ピンホールチェッカによる不良検査方法がある(特許文献6、7)。これは、赤外線の温度分布差画像によって導電性の食品や医薬品など樹脂材包装製品のピンホールやシール不良を非破壊で検出する電圧印加式の高速ラインセンサである。電子の流れを検出する方式なので、細菌が進入するような微小ピンホールも高速検査できる。
【0007】
熱シール包装材のシール不良検査装置は、検査対象となるレトルトパウチ2の2値化画像の抽出処理を行い(S1)、輪郭で囲む部分を不良領域と特定し(S2)、不良画像を面積を測定し、合計面積Sを決定し(S3)、合計面積Sが基準面積S0を超えるか否かを判定し(S4)、S4で肯定判定なら対応する不良排出指令信号を生成し、排出装置10に出力し(S5)、不良品を排出する。密着検査装置14は、搬送通過中の被検体であるレトルトパウチ2の表面を第1電極11で連続的に接触しながら、被検体に電圧を印加し、その印加電圧を受ける第2電極12と、これらを構成する回路中の電気的変化を捉えてピンホール他のシール不良を検出検査する発明が提案されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−273031号
【特許文献2】特開平10−185752号
【特許文献3】特開平6−345062号
【特許文献4】特開平7−120426号
【特許文献5】特開平8−301241号
【特許文献6】特開2000−88781
【特許文献7】特開2000−227407
【特許文献8】特開2005−241302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1、2では気体の圧力制御のため装置が大掛かりになり、また特許文献1では画像検査が複雑化し、簡易な検査が困難である。また、リークテスタ、特許文献1、2、ピンホールチェッカでは検査対象物を搬送しないで検査するので、検査効率が悪い。さらに、静電式熱シール包装材検査装置では、導電性熱シール包装材には適用できるが、絶縁性熱シール包装材(例えば透明プレスチック材)の検査には適用できないという問題がある(特許文献3〜6)。特許文献7は赤外線であるので適用範囲が狭いという問題がある。特許文献8では、検査の効率と精度は良いが、アルミニウムのレトルトパック、ラミネートパウチ等の遮光性熱シール包装材の場合には、アルミニウムの表面は遮光性であり反射光を検出し熱シール不良検査を行っているのであるが、包装材の表面のそり、うねり、凹凸等により反射光の向きが変わり、明度差が生じて上手く撮像できない状況がある。そのため、画像のうち明るい部分は処理できるものの、影の部分が処理できず、検査漏れを克服できないという課題が考えられた。
特に、包装材の具や液の噛み込みが生じると、そこから細菌が伝わって中に入って内容物を腐らせることから、不良シールを有効に排除することが切望されている。
【0010】
以上の諸点に鑑み、本発明は、アルミニウム製レトルトパックなどの光を反射させる材質の遮光性熱シール包装材の画像検査によるシール不良検査において簡便且つコストを低減した検査方法及び検査装置を実現することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、請求項1に記載の発明は、充填物が充填された遮光性熱シール包装材を搬送する搬送部と、搬送部の片側に配置され前記熱シール包装材を斜め上方から前記搬送部を横切るように設定された第1方向から照明する第1照明部と、前記搬送されている熱シール包装材のシール部が前記第1照明部を通過するときに該シール部を撮像する第1撮像部と、前記第1照明部の搬送方向の下流側に配置され、かつ、前記熱シール包装材を前記第1方向と垂直線に対して線対称に設定された第2方向から照明する第2照明部と、前記搬送されている熱シール包装材のシール部が前記第2照明部を通過するときに該シール部を撮像する第2撮像部と、該撮像部で撮像される画像を処理し、画像中のシール不良を検出するシール不良検出部と、該当する熱シール包装材を不良品として排出する排出部と、を備えることを特徴とする熱シール包装材のシール不良検出装置である。これにより前記課題を好適に解消することができる。
【0012】
ここでいう遮光性熱シール包装材には、気密性と遮光性のあるもの、例えばレトルト食品、医薬品、化学品等のレトルトパウチ等が含まれる。パウチは、一般的に合成樹脂やアルミ箔を積層加工(ラミネート加工)したフィルムで出来ており、PP/AL/PET(ポリプロピレンシートとアルミニウムシートと2層のポリエチレンテレフタレートシート)を積層したラミネートフィルムである。空気や水分、光を遮断し、内部の食品等を密閉するための工夫である。
【0013】
ここでいうシール不良には、底開無し、折れ、位置不良、噛込み、皺などがある。特に、内容物の噛み込みを検出することが好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、充填物が充填され熱融着により密封された遮光性熱シール包装材の搬送途中において、前記熱シール包装材を斜め上方から前記搬送部を横切るように設定された第1方向から照明しながら該熱シール包装材のシール部を撮像する第1撮像ステップと、前記第1撮像ステップにて撮像され撮像位置から下流に搬送された後、前記熱シール包装材を前記第1方向と垂直線に対して線対称に設定された第2方向から照明しながら該熱シール包装材のシール部を撮像する第2撮像ステップと、前記第1撮像ステップ及び第2撮像ステップにて撮像された画像を処理する処理ステップと、前記処理された画像を参照して、シール不良を検出する判定ステップと、該当する熱シール包装材を不良品として排出する排出ステップと、を備えることを特徴とする遮光性熱シール包装材のシール不良検出方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2に記載の発明によれば、包装材の表面のそり、凹凸、皺、曲がり等に起因する照明光の反射により生じる明度差を克服し、撮影不良の影響を受けることがなく、検査精度及び検査能率が大幅に改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
遮光性熱シール包装材のシール不良検出装置1(以下、単にシール不良検査装置という。)は、充填物が充填された遮光性熱シール包装材であるレトルト食品用パウチ2(以下、パウチ2という。)を搬送する搬送部3と、搬送部3の片側に配置されパウチ2を斜め上方から搬送部3を横切るように設定された第1方向Xから照明する第1照明部4と、搬送されているパウチ2のシール部2a(図2参照)が第1照明部4を通過するときにシール部2aを撮像する第1撮像部5と、第1照明部4の搬送方向の下流側に配置され、かつ、パウチ2を第1方向Xと垂直線に対して線対称に設定された第2方向Yから照明する第2照明部6と、搬送されているパウチ2のシール部2aが第2照明部6を通過するときにシール部2aを撮像する第2撮像部7と、第1撮像部5及び第2撮像部7で撮像される画像を処理し、画像中のシール不良を検出するシール不良検出部8と、該当する熱シール包装材を不良品として排出する排出部9と、を備えることを特徴とする。その他、シール不良検出部8と双方向に通信し電気制御を司る電気制御盤11、シール不良検出部8と電気制御盤11とに接続された操作盤12、パウチ2の通過を検出する光電センサ13、撮像タイミングの位置を検出する画像処理用エンコーダ14、排出タイミングの位置を検出する排出位置用エンコーダ15、パウチ2が連接検出された場合に、排出動作を行う連接パウチ排出ノズル16、及び具・液漏れ検出センサ17と、を備えている。以下、各要素について詳細に説明する。
【0017】
このシール不良検査装置1は被検体としての金属シート(アルミニウム箔等)を構成要素として含む遮光性・気密性の熱シール包装材であるパウチ2の検査を行うものである。シール不良があるか否かが判別されるパウチ2は、所定数の層数のシート部材が積層されて、あらかじめ一方のみを残して気密に貼り合わせられた既成の袋状のものに、内容物を充填した後、残りの一方を、ヒートバー等によって加熱処理を施し、開口部を熱溶着して密閉されたものである。ここでいうパウチ2は主としてレトルトパウチであるが、その他形態も含む。実施形態でいうシール不良には、底開無し、折れ、位置不良、噛込み、皺などがある。またパウチ2は、たとえば、外形寸法がW110mm×H140mmなどが挙げられる。検査能力は例えば80個/分(最大150個分)に設定してある。搬送部3で搬送されているパウチ2を斜め上方から第1照明部4及び第2照明部6によりそれぞれ照明し、第1撮像部5及び第2撮像部7で撮像した画像を元にシール検査を行う。コンベア進行方向に対して左斜め上方からの照明による画像と右斜め上方からの照明による画像に基づいて、シール部分の噛み込みや折れを検出して良否を判定し、良否判定結果を出力する。これにより、シール部2aの反りや曲りに影響されることなく安定した検査を行うことができる。
【0018】
搬送部3は、図1〜図3に示す通り、パウチ2を搬送する、滑り止め加工がされたベルトコンベア30と、ベルトコンベアを支持する支持部31と、駆動モータ32とを備えたものである。搬送部3で搬送されているパウチ2を毎分80個(毎秒1.3個)で検査するように搬送速度が設定してある。
【0019】
なお、搬送部3へは上流側に配置される供給機(図示略)からパウチ2が供給されるようになっている。
【0020】
図1〜図4(a)に示す通り、第1照明部4及び第2照明部6の配置が特徴的な構成の一つであり、この2つの照明部4及び6は搬送部3の搬送方向Cに沿って位置を前後に偏倚させてあり、かつ、これらの2基による相補的な左右からの照明を構成している。まず、搬送方向C下流に向かって搬送部3の側面右側に第1照明部4が設置され、第1方向Xに照明する。この第1照明部4は、LED(ハロゲンランプでもよい)から構成される複数の発光体40と、発光体40を固定する筒状で搬送部3側に開口部を設けたケーシング41と、このケーシング41を取り付ける固定具42と、から構成される。図4(a)に示す通り、発光体40は体軸が水平を基準として傾斜角度θとなるように取り付けられ、また、ケーシング41の体軸の取付角度αが水平を基準として(90°−θ)となるように設定される。
【0021】
また、第2照明部6が搬送方向Cの下流に第1照明部4とは所定距離を隔てて配置され、かつ、搬送方向C下流に向かって側面左側に設置され、第2方向Yに照明する。この第2照明部6は、発光体60と、発光体60を固定する円筒形の搬送部3側に開口部が形成されたケーシング61と、このケーシング61を取り付ける固定具62と、から構成される。第1照明部4と同様に、発光体60は傾斜角度θで取り付けられ、また、ケーシング61の軸は取付角度αが設けてあり、(90°−θ)となる。
【0022】
パウチ2の種類等に応じて、この傾斜角度θは25〜45°の範囲で設定することが好ましい。図では傾斜角度θは30度、αは60度に設定してある。ケーシング41、61の取付角度が夫々変更できるようになっている。
【0023】
図4(b)に示す変更形態の第1照明部4´及び第2照明部6´も可能である。この変更形態では、発光体40´,60´の体軸、ケーシング41´,61´の軸方向ともに傾斜角度θとなっている。
【0024】
第1照明部4及び6の発光体40,60は単数でも複数でも良いし、また、面発光でもよいし、点発光でもよい。第1照明部4及び第2照明部6はハロゲンランプ、発光素子(LED)又は赤外線発光素子(IR−LED)が好ましい。ハロゲンランプの場合は、赤外線分を含むので白黒撮影、赤外線撮影両方に使用可能であり、一方、LEDの場合、IR−LEDでないと赤外光が出ていないものであるので、使い分けが必要である。直接照明が好ましいが、間接照明でもよい。
【0025】
搬送部3の側方の斜め上方の対称な2方向から照明する理由は、パウチ2のシール部2aに縦に筋が入ったような噛み込みを検出し易くするためである。なお、図2ではパウチ2の搬送方向Cに対して、直交方向に第1照明部4及び第2照明部6から光をパウチ2へ照射することが例示されているが、90°から角度を設けるなど、条件に合わせてその角度は適宜に設定される。
【0026】
検査面にカラー印刷が入っていると、明度レベルでの処理が難しくなるので、赤外線撮影で色を消してしまうことが好ましい。すなわち、カラー印刷がないときには白黒撮影、カラー印刷があるときは赤外線照明撮影が好ましい。照明は、ハロゲン又はLEDが好ましいが、赤外線撮影をするときは、LEDではIR−LEDが好ましい。
【0027】
第1撮像部5は、搬送部3の上部に固定された白黒エリアカメラを備え、垂直下方に撮影方向が設定されている。また、この第1撮像部5は、搬送方向Cに対して第1照明部4の横隣に固定されている。また、第2撮像部7は、図2に示す通り、第1撮像部5と同じ高さに設置され、かつ、所定距離下流に離れた位置(例えば4cm〜15cm間隔)で搬送部3の上部に固定された白黒エリアカメラを備え、垂直下方に撮影方向が設定されている。この第1撮像部5と第2撮像部7とを結んだ線は搬送方向Cと平行である。また、この第2撮像部7は、搬送方向Cに対して第2照明部6の横隣に固定されている。第1撮像部5及び第2撮像部7は、プログレッシブ・スキャン方式で、エリアセンサである。カメラは白黒カメラ、カラーカメラのいずれでもよいが、通常は白黒カメラを使用する。カメラの検出分解能力は0.2〜0.25mm/画素が挙げられ、640×480画素でありコンベア上で約160mmの視野を観察するが、これに限定されるものではない。カメラ下を約57m/分で流れるパウチ2を電子シャッタで1/1000秒で撮像して約0.03秒で画像を取込み、約0.3秒以内で外観計測が行われる。2台のカメラは左右別々にIR−LED照明されて約0.5秒間隔で取り付けられ、左右2回の測定が終わったところで撮像された画像を出力する。撮像例を図8、図9に示す。これらの図に示されるように、右側の第1撮像部5で撮像した画像と、左側の第2撮像部7で撮像した画像とは、お互いの暗い部分を補足しあっている。これにより、シール部2aにうねりやそりなどがあっても適切な撮像が可能となるわけである。
【0028】
図5に示すシール不良検出部8は第1撮像部5及び第2撮像部7で撮像され作成される画像信号を2値化処理し、2値化処理された画像について検査領域に関し所定の基準を満たさないものをシール不良と判定するものである。シール不良検出部8は、図6の通り、撮像部5及び撮像部7からの画像信号の処理を司るマイクロコンピュータであり、CPU80、RAM81、ROM82、カウンタ83、タイマ84、ハードディスク等から構成された記憶装置85及び入出力インタフェース86をバス87により相互に接続したものである。シール不良検出部8は、通常は、撮像部5及び7から白黒画像を入力して2値化するが、撮像部5及び7からR・G・B(赤・緑・青の輝度)信号を入力し白黒の2値化を行うこともある。そして、所定の判定基準に従ってシール不良の有無を決定し、この決定データを参照して排出部9に不良排出指令信号を送信し、不良品を選別排出するものである。排出部9がシール不良検出部8から不良排出指令信号を受信し、その信号に応答して排出部9が該当するパウチ2を不良排出個所で排出する。
【0029】
シール不良検出部8は画像取込ボード(図示略)を内蔵している。画像処理部はレトルトパウチの上部にあるシール部分の噛み込みや折れ曲りを検査して良否判定を行う。左右別々の角度からの照明によりシール部分の反りや曲り等による影響を回避することができる。赤外光を使用することによりパウチ2の絵柄に関係なく安定した検査を行うことができる。明確に印刷された黒文字などはマスク処理して検査範囲外とする。
【0030】
画像解析処理による外観検査を行うための所定の検査基準が設定されている。また、製品別パラメータが任意に設定される。シール検査項目としては「シールの折れ」「シール部の具・異物の噛み込み」「シール位置」「接着部の皺(しわ)」「底の開き不良」の良否判断をする。主に噛み込みを対象とし、他の検査項目を適宜省くこともできる。
【0031】
(1)底開無し
底開無しは,パウチ2のシール部2aの側面の凹みの有無を検査する。これはパウチ2の底が十分に開いていない場合は、パウチ2中央付近に内容物が集中し無理やり詰め込まれるため,側面がゆがんでしまうという性質を利用している。左右共に基準値(横括れ幅)以上の凹みが有る場合、及び左右いずれか一方に広範囲に亘る基準値以上の凹みがある場合に底開無しと検知する。基準値(横括れ幅)は補助パラメータとして設定画面で変更が可能である。
【0032】
(2) 折れ
折れは,パウチ2上部の凹凸が基準となる位置からどれくらい離れているかを調べ、基準値(折れ量)以上の差異が有る場合に検知される。このとき左右両端にはR(アール)がついているため,この部分は折れの検査から除外する必要がある。このため左右両端から一定範囲(折範囲オフセット)は検査しない。基準値(折れ量)は基本パラメータとして操作盤12から、一定範囲(折範囲オフセット)は補助パラメータとして設定画面から変更が可能である。
【0033】
(3)位置不良
位置不良は,まずシール位置、フック穴位置を計測し,パウチ2上端からシール中央部までの距離,及び穴下端からシール中央部までの距離を検査する。パウチ2上端からシールまでの距離と基準値(シール位置)との差異が、基準誤差(シール位置誤差)を超える場合に位置不良と検知する。また上部の穴が計測できた場合は、穴の下端とシール中央部までの距離も基準値(穴位置)と比較し、基準値(穴位置)未満の場合も位置不良と検知する。さらにシール部2aが正確に計測できなかった場合も位置不良と検知する。基準値(シール位置)は基本パラメータとして操作盤12から、基準値(穴位置)及び基準誤差(シール位置誤差)は補助パラメータとして設定画面から変更が可能である。
【0034】
(4)噛込み
噛込みは位置不良検査において計測したシール位置周辺を計測し、シール部2aの太さや連続性を検査する。
【0035】
(5) 皺
皺は位置不良検査において計測したシール位置から上部の濃淡差を識別し、濃淡の斑が,基準値(皺検知サイズ)を超えた場合に検出する。基準値(皺検知サイズ)は基本パラメータとして操作盤から変更が可能である。
【0036】
シール検査項目のパラメータを説明する。
【0037】
(1)折れ量
上端の凹凸のひどいものを折れと判断する。この凹凸の許容範囲を折れ量としてmm単位で指定する。折れ量の閾値を下げすぎると、パウチ2の歪みや撮影時のノイズを折れと誤検知する可能性がある。閾値を上げすぎると,本来折れと認識すべき外形異常を見逃す可能性がある。
【0038】
(2)噛込レベル
シール部分を認識するための濃淡差のレベルを調整する。濃淡差の閾値を下げるとシールの認識が甘くなり、閾値を上げると認識が厳しくなる。
【0039】
(3) シール位置
シール位置の中央部がパウチ2の上端からどれくらいの位置にあるかをmm単位で設定する。
【0040】
(4) 皺検知サイズ
皺の検査は濃淡差の斑を検知し、その大きさで可否判定する。閾値を下げると皺の認識が厳しくなり、閾値を下げると認識が甘くなる。
【0041】
パウチ2のシール部2aがカラーの場合、撮像部7に可視光線カットフィルタを装着し可視光をカットして赤外線だけで白黒画像にし、それを2値化画像とすることもある。
【0042】
排出部9は、エアシリンダなどから構成され、不良排斥個所で、不良シールされたパウチ2を排出できるようになっている。
【0043】
図5に示す電気制御盤11は、搬送部3、第1照明部4、第1撮像部5、第2照明部6、第2撮像部7、排出部9、光電センサ13、画像処理用エンコーダ14、連接パウチ排出ノズル16、具・液漏れ検出センサ17と接続され、また、シール不良検出部8と双方向に接続されていて、各種の入力信号と出力信号が入出力されるようになっている。
【0044】
タッチパネル式の操作盤12は、検査装置の起動・停止など全般の操作をするものであり、また、検査結果データの保存に使用される。
【0045】
光電センサ13はパウチ2の通過を検出するものである。パウチ2の検査数量を検出するなどに用いられる。
【0046】
画像処理用エンコーダ14はロータリーエンコーダでありパウチ2の第1撮像部5からの移動距離を測定するものである。
【0047】
排出位置用エンコーダ15はロータリーエンコーダであり、パウチ2の第2撮像部7からの移動距離を測定するものである。
【0048】
連接パウチ排出ノズル16は、連接されたパウチ2をエアブロー方式で排出するものである。
【0049】
具・液漏れ検出センサ17は、具・液漏れしたパウチ1を事前に検出するものであり、搬送部3上流又は装置1の入口に設置するものである。
【0050】
以上のように、側面左右の2方向からパウチ2を照明し、それぞれについて撮影を行い、2つの画像を得て、総合的にシール不良を判断するように構成されている。
【0051】
次にシール不良検査装置1の動作を説明する。概略動作は次の通りである。供給機(図示略)からパウチ2が搬送部3へ供給されると、パウチ2が搬送方向Cに搬送され、その途中において、パウチ2を第1照明部4で照明しながらパウチ2のシール部2aを第1撮像部5で撮像する。また、パウチ2を第2照明部6で照明しながらパウチ2のシール部2aを第2撮像部7で撮像する。このように撮像された画像をシール不良検出部8で2値化処理し、2値化処理された画像中の白黒いずれかの値に該当する領域を特定し、所定の基準に従って、シール不良領域と判定し、不良品と判定されると、不良品として排出部9により排出するものである。
【0052】
以下、シール不良検出部8による画像処理の詳細について図7に示す画像処理のフローチャートを参照して説明する。本実施形態の画像検査プログラムはROM82に格納されており、CPU80の指令に従い所定の画像検査が実行されるものである。
【0053】
まず、処理が開始されると、CPU80はカウンタ83やフラグのリセット等、一連の初期設定を行う。ここでは、各種カウント値、フラグの初期値はいずれも「0」である。以下のフローチャート及びそれらの説明において、「ステップ」を単に「S」と略す。
【0054】
パウチ2を斜め上方から搬送部3の搬送方向Cを横切るように設定された第1方向Xから照明しながらパウチ2のシール部2aを撮像し、その画像を取り込む(S1)。
【0055】
第1撮像ステップ(S1)にて撮像した撮像位置から下流に進んだ位置Lを画像処理用エンコーダ14に基づいて検出し、所定距離L0(ここでは15cm)の位置までパウチ2が下流に搬送されたか否かを判定する(S2)。否定判定ならS1に戻り、肯定判定ならS3に進む。
【0056】
S3では、パウチ2を第2方向Yから照明しながらシール部2aを撮像し、その画像を取り込む(S3)。
【0057】
前記S1及びS3にて取り込まれた画像について所定の閾値に基づいて2値化処理を行う(S4)。外形2値化レベルは、背景が必ず白になるので,どれくらいの白度から背景とみなすかの処理をする。外形2値化レベルの閾値を下げると外形認識が狭くなり,閾値を上げると外形認識が広くなる。閾値を下げすぎると,光の回折などで明るくなってしまった部分を外形認識から省いてしまい、良品を折れや位置不良として誤検知しやすくなる。閾値を上げすぎると,外形付近の撮影ノイズを拾いやすくなり,折れとして誤検知しやすくなる。
【0058】
S4で処理された画像を参照して、2値化画像の不良画像の特定(抽出処理)を行い、シール不良であるか否かを所定の基準に従って、合否を判定する処理を行う(S5)。ここでは必ず検査枠(図8、図9の四角形で囲んだ枠)を設けてその中での検査となる。赤外線撮影をしても、赤色部分、緑色部分、青色部分は消せるが、黒色部分は消せない。また、フック穴などがあった部分、文字、模様部分が入った部分は、通常はシールに影響が無いので、その箇所はマスクし、処理範囲から外すことが好ましい。図8、図9で方形の枠はシール個所検査エリア、その他は内容物の充填エリア(非検査エリア)である。図8、図9では優良個所は白(「0」)、不良領域は黒(「1」)である(白黒を逆に設定してもよい)。シール不良検査部8が検査結果を表示し、メモリに保存する。
【0059】
第1撮像部5及び第2撮像部7による撮像を異なる場所で垂直線に対して線対称からの照明下で2回行う。すなわち、第1照明部4の照明下で第1撮像部5がパウチ2を1回撮像し、更にその下流側で今度は垂直線に対して線対称である側面左側の照明部6の照明下で1回撮像する。つまり、相補的な照明と、相補的な撮像を行うわけである。また、照射方向に水平から上方向に照射の傾斜角度θをつけているので、明度差が増し、より効果的な撮像ができる。
【0060】
排出部9は不良シール検出部8からの不良排出指令信号を受信すると、不良と判定されたパウチ2を不良排出個所で排出する(S6)。2つの画像での撮像結果を判定し、第1撮像部5による画像、第1撮像部7による画像のいずれにもシール不良がなかった場合には、パウチ2を通過させる。いずれか一方又は両方にシール不良があった場合には、排出部9の不良品排出シリンダでこれを選択的に不良品としてその都度排出する。エアーシリンダ(図示略)によって搬送部3の一部を折り曲げパウチ2を下方のシール不良品のボックスへ落とすようになっている。
【0061】
また、連接検出設定がなされ、シール不良検査部8が処理できる間隔以下でパウチ2が検査された時に連接異常として判断する。上記設定の場合、140mmのパウチが200mmピッチ以下で通過した時(パウチ間60mm)、排出位置検出用エンコーダ15により、630パルス後に、間隔の狭い2つのパウチを連接パウチ排出ノズル16で排出する。
【0062】
検査結果表示を行う(S7)。良品はOK、不良品はその状態毎に底開無し、折れ、位置不良、噛込、皺と表示される。照明の調整不良、検体の回転、連接などで正しく計測できない場合はエラーと表示される。計測数値表示としては、現在表示されている画像の折量、シール位置、最大の皺サイズ等を表示する。底開無しや折れを検知した場合は,その他の計測が困難なためシール位置等が表示されない。
【0063】
検査結果の一例を図8、図9に示す。サンプル1〜4では、右側方照明により撮像した場合、左側方照明により撮像した場合の2つの画像を示し、上下にカメラの取込画像、画像処理後の異常検出された画像をそれぞれ示している。1パウチを検査する毎に検査結果が表示され、検査処理数と不良数が加算される。検査結果の画面に検査結果ごとの数量が加算される。製品切替を終了する毎に検査結果データを記憶し検査処理番号が1つ加算される。検査結果をメモリに保存する。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことは無論であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で多くの変更、追加、置換、削除等を施し得ることができることは当業者であれば当然である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、遮光性レトルトパウチ等のシール不良を的確に効率よく検査ができるので、レトルトパウチ等のシール不良の検査に貢献できる。本発明の食品用、菓子用、医薬品等のレトルトパウチへの利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明実施形態のシール不良検査装置1の正面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】同じく右側面である。
【図4】(a)(b)は第1照明部及び第2照明部の詳細図である。
【図5】同じくシール不良検査装置1の電気構成を示すブロック図である。
【図6】同じくシール不良検出部8の電気構成を示すブロック図である。
【図7】同じくシール不良検出部8が行う処理のフローチャートである。
【図8】カメラで撮影され画像処理されたレトルトパウチのサンプル1,2を示す画像である。
【図9】カメラで撮影され画像処理されたレトルトパウチのサンプル3,4を示す画像である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・シール不良検査装置 2・・・レトルトパウチ 2a・・・シール部
3・・・搬送部 4・・・第1照明部 5・・・第1撮像部
6・・・第2照明部 7・・・第2撮像部
8・・・シール不良検出部 9・・・排出部 11・・・電気制御盤
12・・・操作盤 13・・・光電センサ 14・・・画像処理用エンコーダ
16・・・連接パウチ排出ノズル 17・・・具・液漏れ検出センサ
C・・搬送方向 X・・・第1方向 Y・・・第2方向
80・・・CPU 81・・・RAM 82・・・ROM 83・・・カウンタ
84・・・タイマ 85・・・記憶装置 86・・・入出力インタフェース
87・・・バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物が充填された遮光性熱シール包装材を搬送する搬送部と、
搬送部の片側に配置され前記熱シール包装材を斜め上方から前記搬送部を横切るように設定された第1方向から照明する第1照明部と、
前記搬送されている熱シール包装材のシール部が前記第1照明部を通過するときに該シール部を撮像する第1撮像部と、
前記第1照明部の搬送方向の下流側に配置され、かつ、前記熱シール包装材を前記第1方向と垂直線に対して線対称の方向に設定された第2方向から照明する第2照明部と、
前記搬送されている熱シール包装材のシール部が前記第2照明部を通過するときに該シール部を撮像する第2撮像部と、
該撮像部で撮像される画像を処理し、画像中のシール不良を検出するシール不良検出部と、
該当する熱シール包装材を不良品として排出する排出部と、
を備えることを特徴とする遮光性熱シール包装材のシール不良検出装置。
【請求項2】
充填物が充填され熱融着により密封された遮光性熱シール包装材の搬送途中において、前記熱シール包装材を斜め上方から前記搬送部を横切るように設定された第1方向から照明しながら該熱シール包装材のシール部を撮像する第1撮像ステップと、
前記第1撮像ステップにて撮像され撮像位置から下流に搬送された後、前記熱シール包装材を前記第1方向と垂直線に対して線対称に設定された第2方向から照明しながら該熱シール包装材のシール部を撮像する第2撮像ステップと、
前記第1撮像ステップ及び第2撮像ステップにて撮像された画像を処理する処理ステップと、
前記処理された画像を参照して、シール不良を検出する判定ステップと、
該当する熱シール包装材を不良品として排出する排出ステップと、
を備えることを特徴とする遮光性熱シール包装材のシール不良検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256313(P2010−256313A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110100(P2009−110100)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(500125881)有限会社新選技研 (3)
【出願人】(300036589)有限会社ランデック (2)
【出願人】(302040478)株式会社ソプロ (2)
【Fターム(参考)】