説明

遷移金属化合物及びオレフィン重合用触媒

オレフィン重合用触媒の成分として有用な、遷移金属化合物及び高分子量を持つオレフィン重合体を与える高活性な重合触媒を提供する。具体的には、式(1)で表される遷移金属化合物を用いたオレフィン重合用触媒である。
【化1】


[式中、Mは、周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素であり、Xは、Mと結合するσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよい。Yは、ルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なってよい。A、Aの内、少なくとも一つはホウ素又はリン原子が架橋原子となっている架橋基を示し、qは1〜5の整数で、[(Mの原子価)−2]を示し、rは0〜3の整数を示す。Q及びQは、特定構造を有する。Q及びQはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物及びオレフィン重合用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高活性可溶系オレフィン重合用触媒としては遷移金属化合物とアルミノキサンとの組み合わせからなるものが知られている(例えば、特開昭58−19309号公報又は特開昭60−217209号公報参照。)。
また、可溶系オレフィン重合触媒の活性種としては、カチオン種が有効であることが報告されている(例えば、J.Am.Chem.Soc.81巻、81頁(1959年)、J.Am.Chem.Soc.82巻、1953頁(1960年)又はJ.Am.Chem.Soc.107巻、7219頁(1986年)を参照)。
この活性種を単離し、オレフィン重合に適用した例としては、J.Am.Chem.Soc.108巻、7410頁(1986年)、特表平1−502636号公報、特開平3−139504号公報、又は欧州特許出願公開第468651号明細書等を挙げることができ、さらに、この活性種に有機アルミニウム化合物を併用した例として、特開平3−207704号公報又は国際公開第92/1723号パンフレット等を挙げることができる。
【0003】
ところで、多重架橋型(二重架橋型)メタロセン錯体については、その合成例が少なく、国際公開93/20113号パンフレット及びOrganometallics、12巻、1931頁(1993年)、Organometallics、13巻、3868頁、Organometallics、17巻、5525頁、又はJ.Am.Chem.Soc.118巻、11988頁に記載されている。
また、その重合触媒としての挙動は、Organometallics、12巻、1931頁(1993年)にプロピレンの重合例が記載されているが、アイソタクチックポリプロピレンを得るにはメタロセン錯体のメソ、ラセミ体の分割が必要である上、得られるポリプロピレンの分子量は低いものであった。
【0004】
また、J.Am.Chem.Soc.118巻、11988頁のBercawの研究でも、プロピレンの重合例が記載されているが、この場合も得られるポリプロピレンの分子量は低いものであった。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、(1)オレフィン重合用触媒の成分として有用な、新規遷移金属化合物(二重架橋型メタロセン錯体)の提供、(2)高分子量を持つオレフィン重合体を与える高活性な重合触媒の提供、(3)この重合触媒を用いて得られる高分子量のオレフィン系単独重合体や共重合体の提供、及び(4)前記オレフィン系重合体を効率良く製造する方法の提供を目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らは、特定構造を有する新規な遷移金属化合物が、オレフィン重合用触媒の成分として有用であること、及びこの遷移金属化合物と活性化助触媒を含む重合用触媒が、高活性であり、しかも、高分子量で狭い分子量分布のオレフィン重合体を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、式(1)で表される遷移金属化合物が提供される。
【化1】

[式中、Mは、周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素であり、Xは、Mと結合するσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよい。Yは、ルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なってよい。A、Aは架橋基を示し、これらのうち、少なくとも一つはホウ素又はリン原子が架橋原子となっている。qは1〜5の整数で、[(Mの原子価)−2]を示し、rは0〜3の整数を示す。Q及びQは、式(2)又は式(3)で表される構造を有する。Q及びQはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。]
【化2】

[式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜4のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基又はヘテロ含有基を示す。]
【化3】

[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0008】
また、この遷移金属化合物(A)を含有するオレフィン重合用触媒が提供される。
【0009】
また、この重合用触媒の存在下、オレフィン類を単独重合又はオレフィン類と他のオレフィン類及び/又は他の単量体とを共重合させるオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
また、この製造方法により得られるオレフィン系重合体が提供される。
本発明の遷移金属化合物は、オレフィン重合用触媒成分として有用であり、それを含有するオレフィン重合用触媒を用いると、高分子量の規則性ポリオレフィンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[1] 遷移金属化合物
本発明の遷移金属化合物は、式(1)で表される化合物である。
【化4】

この遷移金属化合物は、置換又は無置換のシクロペンタジニエル基及び/又はインデニル基を、二重架橋したものであり、A、Aの、少なくとも一つがホウ素又はリン原子が架橋原子となっている架橋基で架橋したものである。
式(1)において、A、Aは、例えば、式(4)及び式(5)に表される構造を有する。
【0011】
【化5】

式中、Eは、架橋原子であり、例えば、周期表13族から15族の元素が挙げられる。A、Aの少なくとも一つは、ホウ素又はリンを架橋原子とする。
【0012】
は、炭素数1〜20の炭素含有基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等のアリール基が挙げられる。
は、Eがホウ素の場合、窒素、酸素、リン又はイオウを含む電気的に中性の塩基性基、もしくはアルキルアニオン、アリルアニオン、Nを含むマイナスの電荷を有する基を示す。
【0013】
窒素、酸素、リン又はイオウを含む電気的に中性の塩基性基の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリメチルホスフィン、ジメチルスルフィド等が挙げられる。
アルキルアニオン、アリルアニオン、Nを含むマイナスの電荷を有する基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等のアリール基;ジメチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の含窒素基等が挙げられる。
【0014】
Eがリンの場合、Rは、=O、=N−R、=S、=CR等のEと多重結合を形成する基が挙げられる。ここで、R及びRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等のアリール基である。
【0015】
Eがリンの場合、Rの具体例としては、オキソ基、メチルイミノ基、フェニルイミノ基、トリメチルシリルイミノ基、チオ基、=C(CH、=CPh等が挙げられる。
【0016】
このような架橋基の具体例としては、Eがホウ素の場合、B―CH、B―Ph、B―N(i―Pr)、B―CH(NEt)等が挙げられる。
Eがリンの場合、P−CH、P−Ph、P(O)Ph、P(NSi(CH)Ph等が挙げられる。
尚、本明細書において、Phはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基を示している。以下、同様に記載することがある。
【0017】
尚、ホウ素及びリンを含まない架橋基としては、例えば、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチルイソプロピルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p−トリル)シリレン、メチルフェニルシリレン、エチルフェニルシリレン等の置換シリル基;テトラメチルジシリル基、ジメチルジフェニルジシリル基等の置換ジシリル基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン、メチルフェニルメチレン、エチリデン、メチレン、エチレン、テトラメチルエチレン、シクロヘキシリデン、1,2−シクロヘキシレン、1,2−フェニレン、ビニレン、ビニリデン、エテニリデン(CH=C=)等の炭化水素基を使用できる。
【0018】
好ましくは、式(6)に示される架橋基である。
【化6】

[式中、R、R10は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、cは、1〜4の整数である。]
【0019】
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントニル基等のアリール基が挙げられる。
【0020】
式(1)において、Mは、周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示す。具体例としては、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、コバルト、パラジウム及びランタノイド系金属等が挙げられる。これらの中では、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが好適である。
【0021】
Xは、σ結合性の配位子であり、具体例としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアミド基、炭素数1〜20の珪素含有基、炭素数1〜20のホスフィド基、炭素数1〜20のスルフィド基、炭素数1〜20のアシル基等が挙げられる。尚、qは1〜5の整数で、[(Mの原子価)−2]を示し、qが2以上の場合、複数のXは同じでも異なっていてもよい。
【0022】
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントニル基等のアリール基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。
【0023】
炭素数1〜20のアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジブチルアミド基、ジシクロヘキシルアミド基、メチルエチルアミド基等のアルキルアミド基;ジビニルアミド基、ジプロペニルアミド基、ジシクロヘキセニルアミド基等のアルケニルアミド基;ジベンジルアミド基、フェニルエチルアミド基、フェニルプロピルアミド基等のアリールアルキルアミド基;ジフェニルアミド基、ジナフチルアミド基等のアリールアミド基等が挙げられる。
【0024】
炭素数1〜20の珪素含有基としては、メチルシリル基、フェニルシリル基等のモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基等のジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチル(t−ブチル)シリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基等のトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基等の炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基等の珪素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基等の珪素置換アリール基等やジメチルヒドロシリル基、メチルジヒドロシリル基等が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜20のホスフィド基の具体例としては、ジメチルホスフィド基、メチルフェニルホスフィド基、ジフェニルホスフィド基、ジシクロヘキシルホスフィド基、ジベンジルホスフィド基等が挙げられる。
炭素数1〜20のスルフィド基としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、ヘキシルスルフィド基、シクロヘキシルスルフィド基、オクチルスルフィド基等のアルキルスルフィド基;ビニルスルフィド基、プロペニルスルフィド基、シクロヘキセニルスルフィド基等のアルケニルスルフィド基;ベンジルスルフィド基、フェニルエチルスルフィド基、フェニルプロピルスルフィド基等のアリールアルキルスルフィド基;フェニルスルフィド基、トリルスルフィド基、ジメチルフェニルスルフィド基、トリメチルフェニルスルフィド基、エチルフェニルスルフィド基、プロピルフェニルスルフィド基、ビフェニルスルフィド基、ナフチルスルフィド基、メチルナフチルスルフィド基、アントラセニルスルフィド基、フェナントニルスルフィド基等のアリールスルフィド基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、パルミトイル基、テアロイル基、オレオイル基等のアルキルアシル基、ベンゾイル基、トルオイル基、サリチロイル基、シンナモイル基、ナフトイル基、フタロイル基等のアリールアシル基、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸からそれぞれ誘導されるオキサリル基、マロニル基、スクシニル基等が挙げられる。
【0026】
Yは、ルイス塩基を示し、具体例としては、アミン、エーテル、ホスフィン、チオエーテル類等を挙げることができる。尚、rは0〜3の整数を示す。
アミンとしては、炭素数1〜20のアミン類が挙げられ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアルキルアミン;ビニルアミン、プロペニルアミン、シクロヘキセニルアミン、ジビニルアミン、ジプロペニルアミン、ジシクロヘキセニルアミン等のアルケニルアミン;フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、フェニルプロピルアミン等のアリールアルキルアミン;ジフェニルアミン、ジナフチルアミン等のアリールアミン、又はアンモニア、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0027】
エーテルの具体例としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、n−アミルエーテル、イソアミルエーテル等の脂肪族単一エーテル化合物;メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル等の脂肪族混成エーテル化合物;ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテル等の脂肪族不飽和エーテル化合物;アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテル、α−ナフチルエーテル、β−ナフチルエーテル等の芳香族エーテル化合物、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化トリメチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環式エーテル化合物等が挙げられる。
【0028】
ホスフィンとしては、炭素数1〜20のホスフィンが挙げられる。具体的には、メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、ヘキシルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、オクチルホスフィン等のモノ炭化水素置換ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジオクチルホスフィン等のジ炭化水素置換ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリ炭化水素置換ホスフィン等のアルキルホスフィン;ビニルホスフィン、プロペニルホスフィン、シクロヘキセニルホスフィン等のモノアルケニルホスフィンやホスフィンの水素原子をアルケニルが2個置換したジアルケニルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルケニルが3個置換したトリアルケニルホスフィン;ベンジルホスフィン、フェニルエチルホスフィン、フェニルプロピルホスフィン等のアリールアルキルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアリール又はアルケニルが3個置換したジアリールアルキルホスフィン又はアリールジアルキルホスフィン;フェニルホスフィン、トリルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリメチルフェニルホスフィン、エチルフェニルホスフィン、プロピルフェニルホスフィン、ビフェニルホスフィン、ナフチルホスフィン、メチルナフチルホスフィン、アントラセニルホスフィン、フェナントニルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが2個置換したジ(アルキルアリール)ホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが3個置換したトリ(アルキルアリール)ホスフィン等のアリールホスフィン等が挙げられる。
チオエーテルの具体例としては、上記のスルフィドが挙げられる。
【0029】
及びQは、式(2)又は式(3)で表される構造を有する。Q及びQはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。
【化7】

[式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜4のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基又はヘテロ含有基を示す。]
【0030】
式(2)において、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等のアリール基が挙げられる。
炭素数1〜4のハロゲン含有炭化水素基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、p−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニルメチル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
【0031】
珪素含有基の具体例としては、メチルシリル基、フェニルシリル基等のモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基等のジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチル(t−ブチル)シリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基等のトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基等の炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基等のケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基等のケイ素置換アリール基等やジメチルヒドロシリル基、メチルジヒドロシリル基等が挙げられる。
ヘテロ含有基の具体例としては、ジフェニルホスフィノ基、ジメチルボリル基、ジフェニルボリル基、ジメチオルアルセニル基等が挙げられる。
【0032】
【化8】

[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0033】
式(3)において、Rは、インデニル基の3位〜7位に結合している。炭素数1〜20の炭化水素基の具体的としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基や、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントニル基等のアリール基を挙げることができる。
【0034】
式(1)に示される遷移金属化合物の具体例としては、
(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ZrCl、(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ZrCl、(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)(インデニル)ZrCl、(1,2’−MeB)(2,1’−MeB)(インデニル)ZrCl、(1,2’−PhB)(2,1’−PhB)(インデニル)ZrCl、(1,2’−MeP)(2,1’−MeP)(インデニル)ZrCl、(1,2’−PhP)(2,1’−PhP)(インデニル)ZrCl、(1,2’−(i−Pr)NB)(2,1’−(i−Pr)NB)(インデニル)ZrCl
(1,2’−MeB)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrCl、(1,2’−PhB)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrCl、(1,2’−MeP)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrCl、(1,2’−PhP)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrCl、(1,2’−(i−Pr)NB)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrCl、(1,2’−MeB)(2,1’−MeB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−PhB)(2,1’−PhB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeP)(2,1’−MeP)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−PhP)(2,1’−PhP)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−(i−Pr)NB)(2,1’−(i−Pr)NB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeSi)(2,1’−MeB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeSi)(2,1’−PhB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeSi)(2,1’−MeP)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeSi)(2,1’−PhP)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl、(1,2’−MeSi)(2,1’−(i−Pr)NB)(インデニル)(シクロペンタジエニル)ZrCl等が挙げられる。
【0035】
これらの中で、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ZrCl、(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ZrCl、(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)(インデニル)ZrCl、(1,2’−PhP)(2,1’−MeSi)(インデニル)ZrClが好ましい。
【0036】
また、これらの化合物において、ジルコニウムを、チタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。また、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。
【0037】
式(1)に示す遷移金属化合物の合成方法は、例えば、「ジャーナル・オブ・オルガノメタリックケミストリー(J.Organomet.Chem)」第369巻、第359ページ(1989年)に記載された方法により合成できる。即ち、対応する置換されたシクロアルケニル陰イオンと上記のMのハライドとの反応が好ましい。
【0038】
[2] オレフィン重合用触媒
本発明の遷移金属化合物は、オレフィン重合用触媒として使用できる。この触媒は、好ましくは、この遷移金属化合物(A)の他に、活性化助触媒(B)及び必要に応じて(C)有機アルミニウム化合物を含有する。
(B)としては、遷移金属化合物(A)又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物が用いられる。
遷移金属化合物(A)又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物としては、重合活性が高く、触媒コストを低減できる点から、以下のものを好ましく挙げることができる。
(B−1)遷移金属化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物
(B−2)アルミノキサン
(B−3)ルイス酸
【0039】
(B−1)成分としては、(A)成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成するイオン性化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、特に、効率的に重合活性点を形成できる等の点から、次の式(7)又は(8)で表される化合物が好ましい。
(〔L1−R11h+(〔Z〕- ・・・(7)
(〔L2h+(〔Z〕- ・・・(8)
【0040】
式中、L1はルイス塩基である。L1の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、安息香酸エチル等のエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0041】
11は、水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R11の具体例としては、水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基等を挙げることができる。
【0042】
〔Z〕-は、非配位性アニオンであり、以下に示す〔Z1-又は〔Z2-が挙げられる。
〔Z1-は、複数の基が元素に結合したアニオン、即ち、〔M312・・・Gf〕で示される。
3は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。M3の具体例としては、B,Al,Si,P,As,Sb等が挙げられ、好ましくは、B及びAlが挙げられる。
【0043】
1〜Gfはそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M3の原子価)+1〕の整数を示す。
【0044】
1〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基等、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基等、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基等、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基等、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素等が挙げられる。
【0045】
〔Z2-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。
具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CFSO-,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4-,トリフルオロ酢酸アニオン(CFCO-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF-,フルオロスルホン酸アニオン(FSO-,クロロスルホン酸アニオン(ClSO-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO/SbF-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO/AsF-,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CFSO/SbF-等を挙げることができる。
【0046】
hは〔L1−R11〕,〔L2〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(h×a)である。
【0047】
式(8)において、L2は、M1、R12132、R143C又はR152である。
1は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M2は、周期律表第7〜12族元素を示す。M1の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I等を挙げることができ、M2の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Zn等を挙げることができる。
【0048】
12及びR13は、それぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基又は置換フルオレニル基を示す。R12,R13の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基等を挙げることができる。
【0049】
14は、炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基等を挙げることができる。
15はテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン等の大環状配位子を示す。R15の具体例としては、テトラフェニルポルフィン,フタロシアニン,アリル,メタリル等を挙げることができる。
【0050】
(B−1)成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀,テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
【0051】
(B−1)成分であるイオン性化合物は、一種で用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(B−2)成分のアルミノキサンとしては、式(9)で示される鎖状アルミノキサン、及び式(10)で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

(式中、R16は、それぞれ炭素数1〜20、好ましくは1〜8のアルキル基を示し、それらは同じであっても異なっていてもよい。また、pは2<p≦40、sは1<s≦50の整数である。)
【0055】
具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等のアルミノキサンが挙げられる。
上記のアルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。
【0056】
例えば、有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに、水を反応させる方法等がある。
【0057】
尚、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
また、これらのアルミノキサンは、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(B−3)成分のルイス酸については、特に制限はなく、有機化合物でも固体状無機化合物でもよい。
有機化合物としては、硼素化合物やアルミニウム化合物等が、効率的に活性点を形成できる点から好ましく用いられる。
硼素化合物としては、例えば、トリフェニル硼素,トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素,トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕硼素,トリス〔(4−フルオロメチル)フェニル〕硼素,トリメチル硼素,トリエチル硼素,トリ−n−ブチル硼素,トリス(フルオロメチル)硼素,トリス(ペンタフルオロエチル)硼素,トリス(ノナフルオロブチル)硼素,トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)硼素,トリス(3,5−ジフルオロ)硼素,トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕硼素,ビス(ペンタフルオロフェニル)フルオロ硼素,ジフェニルフルオロ硼素,ビス(ペンタフルオロフェニル)クロロ硼素,ジメチルフルオロ硼素,ジエチルフルオロ硼素,ジ−n−ブチルフルオロ硼素,ペンタフルオロフェニルジフルオロ硼素,フェニルジフルオロ硼素,ペンタフルオロフェニルジクロロ硼素,メチルジフルオロ硼素,エチルジフルオロ硼素,n−ブチルジフルオロ硼素等が挙げられる。
【0059】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムメチル、(1,1−ビ−2−ナフトキシ)アルミニウムメチル等が挙げられる。
【0060】
固体状無機化合物としては、マグネシウム化合物,アルミニウム化合物等が効率的に活性点を形成できる点から好ましく用いられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム,ジエトキシマグネシウム等が使用でき、アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム,塩化アルミニウム等が使用できる。
これらのルイス酸は一種用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
遷移金属化合物(A)又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物である(B−1)〜(B−3)の他に、(B)成分として、粘土、粘土鉱物及びイオン交換性層状化合物が好適に使用できる。
粘土は、細かい含水ケイ酸塩鉱物の集合体であって、適当量の水を混ぜてこねると可塑性を生じ、乾かすと剛性を示し、高温度で焼くと焼結するような物質である。また、粘土鉱物は、粘土の主成分をなす含水ケイ塩酸である。
上記オレフィン重合触媒成分の調製には、粘土、粘土鉱物のいずれを用いてもよく、これらは、天然産のものでも、人工合成したものであってもよい。
粘土及び粘土鉱物としては、モンモリロナイト含量が低いためベントナイトと呼ばれる粘土、モンモリロナイトに他の成分が多く含まれる木節粘土、ガイロメ粘土、繊維状の形態を示すセピオライト、パリゴルスカイト、また、非結晶質あるいは低結晶質のアロフェン、イモゴライト等がある。
また、フィロ珪酸やフィロ珪酸塩等のフィロ珪酸類を挙げることができる。フィロ珪酸塩には、天然品として、スメクタイト族に属するモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、雲母族に属するイライト、セリサイト及びスメクタイト族と雲母族又は雲母族とバーミクキュライト族との混合層鉱物等を挙げることができる。合成品としては、フッ素四珪素雲母、ラポナイト、スメクトン等を挙げることができる。
【0062】
イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が、互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、これに含有されるイオンが交換可能であるものである。尚、上記の粘土鉱物の中には、イオン交換性層状化合物であるものもある。
イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HPO、γ−Zr(HPO、α−Ti(HPO及びγ−Ti(HPO等を挙げることができる。
【0063】
これらの(B)成分の体積平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、体積平均粒子径が3μm以下であることがさらに好ましい。
また、一般に粒子の集合体は粒径分布を有するが、(B)成分としては、体積平均粒子径が10μm以下であって、かつ、体積粒子径が3.0μm以下である粒子の含有割合が10重量%以上であることが好ましい。特に、体積平均粒子径が10μm以下であって、かつ、体積粒子径が1.5μm以下である粒子の含有割合が10重量%以上であることが好ましい。
体積平均粒子径及び粒径分布の測定方法としては、例えば、レーザー光による光透過性で粒径を測定する機器(GALAI Production Ltd.製のCIS−1)を用いる測定方法が挙げられる。
【0064】
これら(B)成分は、有機ケイ素化合物や有機アルミ二ウム化合物で前処理されたものであってもよい。
上記の(B)成分の中でも、四級アンモニウム塩(特に制限はないが、四級アルキルアンモニウム塩、四級アリールアンモニウム塩、四級アリールアルキルアンモニウム塩、四級ベンジルアンモニウム塩、複素芳香族アンモニウム塩等)を吸着ないし粘土等と反応し層間化合物を生成(インターカレーションともいう)する能力の高いものが好ましい。例えば、粘土又は粘土鉱物が好ましく、具体的には、フィロ珪酸類が好ましく、さらにスメクタイトが好ましく、特に好ましいのはモンモリロナイトである。また、合成品としてはフッ素四珪素雲母が好ましい。
【0065】
本発明の重合用触媒における、遷移金属化合物(A)と活性化助触媒(B)の使用割合について、(B)成分として(B−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは、10:1〜1:100、より好ましくは、2:1〜1:10の範囲が好ましい。上記範囲を逸脱する場合は、単位重量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
【0066】
(B)成分として(B−2)化合物を用いた場合、モル比で好ましくは、1:1〜1:1000000、より好ましくは、1:10〜1:10000の範囲が好ましい。この範囲を逸脱する場合は、単位重量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
【0067】
(B)成分として(B−3)化合物を用いた場合、モル比で好ましくは、10:1〜1:2000、より好ましくは5:1〜1:1000、さらに好ましくは2:1〜1:500の範囲である。この範囲を逸脱する場合は、単位重量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
尚、触媒成分(B)として、(B−1),(B−2)及び(B−3)等を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0068】
(B)成分として粘土、粘土鉱物、イオン交換性化合物を用いた場合、(A)成分と(B)成分との割合は、(B)成分の粘土等の単位質量[g]に対し、(A)成分の遷移金属錯体0.1〜1,000μmol、好ましくは1〜100μmolの範囲である。
【0069】
本発明の重合用触媒には、必要に応じて、有機アルミニウム化合物(C)を含有するものであってもよい。
ここで、(C)成分の有機アルミニウム化合物としては、式(11)で示される化合物が用いられる。
17AlX3−v ・・・(11)
(式中、R17は炭素数1〜10のアルキル基、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の実数である)
【0070】
式(11)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0071】
前記(A)触媒成分と(C)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは、1:1〜1:10000、より好ましくは、1:5〜1:2000、さらに好ましくは、1:10〜1:1000の範囲である。(C)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多い場合、特に、上記範囲を逸脱する時は、有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、また、少ない場合は、充分な触媒活性が得られず、好ましくない場合がある。
【0072】
本発明においては、各成分の接触に際し、又は、接触後、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物を共存又は接触させてもよい。
担体に担持するにあたっては、ポリマー上に担持するのが好ましく、このような担体ポリマーとしては、その粒径は1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。この粒径が1μmよりも小さいと重合体中の微紛が増大し、300μmを超えるものであると重合体中の粗大粒子が増大し、嵩密度の低下や製造工程でのホッパーのつまりの原因となる。この場合の担体の比表面積は、1〜1,000m2/g、好ましくは50〜500m2/gであり、細孔容積は0.1〜5m3/g、好ましくは0.3〜3m3/gである。
【0073】
接触は、窒素等の不活性気体中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素中で行なってもよい。
各成分の添加又は接触は、重合温度下で行なうことができることはもちろん、−30℃〜各溶媒の沸点、特に、室温から溶媒の沸点の間で行なうのが好ましい。
【0074】
[3] オレフィン重合体の製造方法
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述した遷移金属化合物(A)、活性化助触媒(B)、及び必要に応じて有機アルミニウム化合物(C)を、接触してなるオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを単独重合又は共重合させることを特徴とする重合体の製造方法である。
尚、有機アルミニウム化合物(C)としては、上述の式(9)で表される化合物が用いられるが、好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物である。中でも、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0075】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、(C)成分の有機アルミニウム化合物は、予め(A)成分及び/又は(B)成分と接触させて用いてもよく、また、反応器中に(C)成分を投入しておき、(A)成分及び(B)成分と接触させて用いてもよい。
本発明のオレフィン重合体の製造方法によると、上述した重合用触媒を用いて、オレフィン類の単独重合、又はオレフィンと他のオレフィン類及び/又は他の単量体との共重合(つまり、異種のオレフィン類相互との共重合、オレフィン類と他の単量体との共重合、或いは異種のオレフィン類相互と他の単量体との共重合)を好適に行なうことができる。
【0076】
オレフィン類については、特に制限はないが、炭素数2〜20のα―オレフィンが好ましい。このα―オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6−フェニル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等のα−オレフィン類、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等のジエン類、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2−フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、3−フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4−ジクロロ−1−ブテン等のハロゲン置換α−オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等の環状オレフィン類、スチレン系としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン等のアルキルスチレン類、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン、更には、トリメチルシリルスチレン、ビニル安息香酸エステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0077】
また、上述した他のオレフィン類についても、上記オレフィン類の中から適宜選定すれば良い。
本発明において、上記オレフィン類は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。二種以上のオレフィンの共重合を行なう場合、上記オレフィン類を任意に組み合わせることができる。
【0078】
また、本発明においては、上記オレフィン類と他の単量体とを共重合させてもよく、この際用いられる他の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の鎖状ジオレフィン類、ノルボルネン、1,4,5,8―ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ノルボルネン等の多環状オレフィン類、ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状ジオレフィン類、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の不飽和エステル類等を挙げる事ができる。
【0079】
本発明においては、このオレフィン類として、特に、プロピレンが好適である。また、オレフィン類を重合させる方法については、特に制限はなく、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法、塊状重合法、懸濁重合法等、任意の重合法を採用する事ができる。
【0080】
重合溶媒を用いる場合には、その溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンセン等の炭化水素類やハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらは一種で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合に用いるモノマーもその種類によっては使用することができる。
【0081】
また、重合反応における触媒の使用量は、溶媒1L当たり、[A]成分が、通常0.5〜100μmol、好ましくは、2〜25μmolの範囲になるように選ぶのが重合活性及び反応器効率の面から有利である。
重合条件については、圧力は、通常、常圧〜2000kg/cmGの範囲が選択される。また、反応温度は、通常−50℃〜250℃の範囲である。重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択及び水素の導入等が挙げられる。
【0082】
本発明におけるオレフィンの重合時には、上記触媒を用いて予備重合を行なうことができる。この予備重合は、固体触媒成分に少量のオレフィンを接触させて行なうことができる。この場合の反応温度は、−20〜100℃、好ましくは−10〜70℃、特に好ましくは0〜50℃である。
また、この予備重合に際して用いる溶媒としては、不活性炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、モノマーが用いられるが、特に、脂肪族炭化水素が好ましい。この予備重合を無溶媒で行なうこともできる。
【0083】
予備重合生成物は、その極限粘度〔η〕(135℃、デカリン中での測定)が0.2dL/g、好ましくは0,5dL/g以上となるように行なうのがよく、触媒中の遷移金属成分1mmolあたりの予備重合生成物の量が、1〜10,000g、好ましくは10〜1,000gとなるように条件を調整することが好ましい。
[実施例]
【0084】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0085】
[遷移金属化合物]
実施例1
(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド[式(12)]の合成
【0086】
【化11】

【0087】
(a)ビス(2−メチル−4−iso−プロピルシクロペンタジエニル)フェニルホスフィンの合成
3,6,6−トリメチルフルベンを還元することによって1−メチル−3−iso−プロピルシクロペンタジエンを合成した。
窒素気流下、1−メチル−3−iso−プロピルシクロペンタジエンのリチウム塩1.9g(14.8mmol)を、脱水テトラヒドロフラン30mlに溶解し、−78℃に冷却した。
この溶液にジクロロフェニルホスフィン1.0ml(7.4mmol)を加えた後、室温まで昇温し、8時間攪拌を行なった。減圧下、溶媒を留去し、残査をヘキサンで抽出し、ビス(2−メチル−4−iso−プロピルシクロペンタジエニル)フェニルホスフィンを得た。収量は2.57g、収率は94.0%であった。
【0088】
(b)(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエン)の合成
窒素気流下、ビス(2−メチル−4−iso−プロピルシクロペンタジエニル)フェニルホスフィン(2.6g、7.33mmol)を、脱水エーテル30mlに溶解し、−78℃に冷却した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液10.3ml(16.2mmol、1.57M)を加えた後、室温で8時間攪拌した。減圧下、溶媒を留去し、残査をヘキサンで洗浄することにより、ビス(2−メチル−4−iso−プロピルシクロペンタジエニル)フェニルホスフィンのジリチウム塩を得た。収量は1.8g、収率は67.8%であった。
【0089】
窒素気流下、このジリチウム塩1.0g(2.7mmol)を、脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、−78℃に冷却した。この溶液にジクロロジメチルシラン0.33ml(2.7mmol)を加え、室温まで昇温し、8時間攪拌を行なった。減圧下、溶媒を留去し、残査をヘキサン/ジクロロメタンで抽出することにより、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエン)を得た。
この化合物については、これ以上精製することなく次の反応に用いた。収量は1.03g、収率は91.6%であった。
【0090】
(c)(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドの合成
窒素気流下、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエン)を1.03g(2.53mmol)、脱水エーテル20mlに溶解し、−78℃に冷却した。
これにn−ブチルリチウムのヘキサン溶液3.5ml(5.49mmol、1.57M)を加え、室温まで昇温し、8時間攪拌を行なった。
減圧下、溶媒を留去し、残査をヘキサンで洗浄することにより、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエン)のジリチウム塩を得た。収量は0.53g(1.14mmol)、収率は44.9%であった。
【0091】
このジリチウム塩を、窒素気流下、脱水トルエン3mlに懸濁させ、−78℃に冷却した。これに、四塩化ジルコニウム0.26g(1.12mmol)のトルエン懸濁溶液を加え、室温まで昇温した後、8時間攪拌を行なった。
減圧下、溶媒を留去した後、脱水ジクロロメタンで残査を抽出し、ジクロロメタン/ヘキサンで再結晶を行ない、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを白色粉末として得た。収量は0.12g、収率は18.9%であった。
尚、H−NMR(CDCl)のスペクトルは、−0.50(s,3H),0.50(s,3H),1.04(d,6H),1.30(d,6H),2.33(s,6H),2.82(m,2H),6.28(2H),7.28〜7.67(m,5H)であった。
H−NMRの測定は、日本電子(株)製90MHzのNMR装置で測定した。
【0092】
実施例2
(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド[式(13)]の合成
【0093】
【化12】

【0094】
(a)(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)クロロボランの合成
2−ブロモ−1−インダノールから2−ブロモインデンを合成した。
窒素気流下、2−ブロモインデン10.0g(51.3mmol)とマグネシウム5gから、ブロモマグネシウムインデンを調製した。これに、トリメチルクロロシラン6.5mLを反応させることで、2−トリメチルシリルインデン7.14g(37.9mmol)を無色油状物として得た。
2−トリメチルシリルインデン7.14gを、ジクロロメタン20mLに溶解し、0℃で三塩化硼素(1.0M、ジクロロメタン溶液)38.0mLを添加し、室温で3時間攪拌した。
溶媒を除去することにより、(2−インデニル)ジクロロボランを、淡黄色固体として7.1g(36.1mmol)得た。
【0095】
これをヘキサン50mLに溶解した。この溶液に、0℃でジイソプロピルアミン10.1mL(72.2mmol)のヘキサン10mL溶液を滴下した。
滴下終了後、2時間加熱還流し、沈殿をろ別した。ろ液の溶媒を減圧下留去し、得られた油状物を減圧蒸留(140℃/90torr)することにより、無色の固体として、(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)クロロボラン6.42g(24.5mmol)を得た。
【0096】
この化合物のH−NMR(CDCl)のスペクトルは、−0.50(s,3H),0.50(s,3H),1.04(d,6H),1.30(d,6H),2.33(s,6H),2.82(m,2H),6.28(2H),7.28〜7.67(m,5H)であった。
【0097】
(b)(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエン)(インデン)の合成
窒素気流下、1,3−ジイソプロピルシクロペンタジエン2.38g(15.8mmol)を、トルエン15mL、ヘキサン15mLに溶解した。この溶液に、0℃でn−ブチルリチウム(1.56M,ヘキサン溶液)11.1mLを滴下し、室温で8時間攪拌した。
白色沈殿をろ別し、減圧下乾燥することにより、1,3−ジイソプロピルシクロペンタジエニルリチウム1.91g(12.2mmol)を得た。
【0098】
(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)クロロボラン3.20g(12.2mmol)を、テトラヒドロフラン20mLに溶解し、1,3−ジイソプロピルシクロペンタジエニルリチウム1.91gのテトラヒドロフラン(20mL)溶液に滴下した。
室温で4時間攪拌後溶媒を留去し、ヘキサン50mLで抽出することにより(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボランを淡黄色固体として4.36g(11.6mmol)得た。
【0099】
テトラヒドロフラン50mL中、ジイソプロピルアミン3.3mL(23.5mmol)と、n−ブチルリチウム(1.56M,ヘキサン溶液)15.0mLからリチウムジイソプロピルアミドを調製した。
(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボラン4.36g(11.6mmol)を、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、0℃で先に調製したリチウムジイソプロピルアミドを滴下した。
滴下終了後、室温で2時間攪拌した。これに、ジメチルジクロロシラン1.4mLを0℃で滴下し、滴下後、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去し、ヘキサン30mLで抽出した。ヘキサンを減圧下留去することにより、(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエン)(インデン)の白色固体2.44g(5.65mmol)を得た。
【0100】
(c)(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエン)(インデン)2.44g(5.65mmol)を、エーテル30mLに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム(1.56M,ヘキサン溶液)7.2mLを滴下し、室温で8時間攪拌した。
沈殿をろ別することにより、ジリチオ塩を白色固体として1.81g(4.2mmol)得た。これをトルエン20mLに懸濁させ、別にトルエン10mLに懸濁させた四塩化ジルコニウム0.95g(4.1mmol)を0℃で滴下した。
【0101】
室温で終夜攪拌し、溶媒を留去した後、ヘキサン40mLで抽出することにより黄色粉末として、(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.36g得た。
尚、H−NMR(C)のスペクトルは、0.56(d,3H),0.82(d,3H),0.95(d,3H),1.1−1.3(m,12H),1.59(d,3H),2.62(septet,1H),2.85−3.20(septet,2H),3.41(septet,1H),5.69(s,1H),6.48(s,1H),6.6−7.7(m,4H)であった。
H−NMRの測定は、日本電子(株)製90MHzのNMR装置で測定した。
【0102】
実施例3
(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド[式(14)]の合成
【0103】
【化13】

【0104】
窒素気流下、マグネシウム10g(411mmol)に脱水テトラヒドロフランを加えた。攪拌しながらジブロモエタンを0.2ml加え、マグネシウムを活性化した後、2−ブロモインデン10g(51.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。
【0105】
滴下終了後、室温で3時間加えた後、氷冷した。これに、ジクロロフェニルホスフィン3.48ml(25.5mmol)を加えた後、室温で8時間攪拌した。
減圧下、溶媒を留去し、ジクロロメタン/ヘキサン=1/1溶液で抽出を行なった。溶媒を留去し、残査をヘキサン洗浄することにより、フェニル−ビス(2−インデニル)ホスフィン3.2g(9.4mmol)を得た。
H−NMRのスペクトルは、(CDCl)3.52(s,2H),7.01〜7.70(m,15H)であった。
【0106】
次に、窒素気流下、このフェニル−ビス(2−インデニル)ホスフィン1.58g(4.6mmol)の脱水テトラヒドロフラン溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.56M)6.3ml(9.7mmol)を滴下した後、室温まで昇温し、8時間攪拌を行なった。
減圧下溶媒を留去し、残査をヘキサンで洗浄することにより、ジリチウム塩1.5g(3.5mmol、THF付加体)を得た。
これに、脱水テトラヒドロフランを加え、−78℃に冷却し、ジクロロジメチルシラン0.42ml(3.4mmol)を加え、室温で8時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、ヘキサン抽出を行ない、2,2’−フェニルホスホノ−1,1’−ジメチルシリル−ビスインデン1.30g(3.2mmol)を得た。
【0107】
これに、脱水ジエチルエーテルを加え、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムへキサン溶液(1.56M)2.2ml(3.4mmol)を加え、室温まで昇温し、8時間攪拌を行なった。
減圧下溶媒を留去し、残査をヘキサン洗浄することにより、ジリチウム塩を1.48g(3.1mmol、エーテル付加体)得た。
H−NMR(THF−d)のスペクトルは、0.25(s,3H),0.67(s,3H),6.35〜7.68(m,10H)であった。
【0108】
これに脱水トルエンを加え、−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウム0.72g(3.1mmol)トルエン懸濁液を加えて、室温にて8時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、残査をジクロロメタン/ヘキサンで抽出することにより、(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを0.23g得た。
H−NMR(CDCl)のスペクトルは、0.9(s,3H),1.21(s,3H),6.8〜7.6(m,15H)であった。
【0109】
実施例4
(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)(インデニル)ジルコニウムジクロリド[式(15)]の合成
【0110】
【化14】

【0111】
(a)(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデン)の合成
窒素気流下、2−ブロモインデン3.1g(15.9mmol)と、Mg1.6gを、テトラヒドロフラン50mL中で反応させ、ブロモマグネシウムインデンを調製した。
この溶液を、(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)クロロボラン4.11g(15.7mmol)のテトラヒドロフラン30mLの溶液に、0℃で滴下した。室温で4時間攪拌後、溶媒を留去し、ヘキサン40mL、ジクロロメタン10mLで2回抽出することにより、淡黄色固体のビス(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボランを、6.47g(19.0mmol)得た。
【0112】
テトラヒドロフラン50mL中で、ジイソプロピルアミン3.3mL(23.5mmol)とn−ブチルリチウム(1.58M,ヘキサン溶液)14.8mLを反応させ、リチウムジイソプロピルアミドを調製した。
ビス(2−インデニル)(ジイソプロピルアミノ)ボラン4.0g(11.7mmol)を、テトラヒドロフラン30mLに溶解し、これに0℃で先に調製したリチウムジイソプロピルアミドを滴下した。
【0113】
滴下終了後、室温で2時間攪拌すると暗緑色溶液となった。これに、テトラメチルジクロロジシラン2.0mLを、−78℃で滴下後、室温で2時間攪拌した。溶媒を留去し、ヘキサン30mLで2回抽出した。減圧下にて、ヘキサンを留去することにより、(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデン)の白色固体2.61g(5.7mmol)を得た。
【0114】
(b)(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデン)1.4g(3.1mmol)を、エーテル30mLに溶解し、−78℃でn−ブチルリチウム(1.58M,ヘキサン溶液)3.9mLを滴下し、室温で8時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去後、得られた固体をヘキサン30mLで洗浄することにより、ジリチオ塩を淡橙色固体として得た。
【0115】
これをトルエン20mLに懸濁させ、別に、トルエン10mLに懸濁させた四塩化ジルコニウム0.72g(3.1mmol)を0℃で滴下した。室温で終夜攪拌し、沈殿部をろ別、溶媒を半分に濃縮し、ヘキサン5mLを加えることにより、黄色粉末として(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)(インデニル)ジルコニウムジクロリド0.29gを得た。
尚、H−NMR(CDCl)のスペクトルは、0.50(s,6H),0.80(s,6H),1.41(d,6H),1.48(d,6H),4.08(septet,2H),6.25(s,2H),7.1−7.3(m,4H),7.5−7.8(m,4H)であった。
H−NMRの測定は、日本電子(株)製90MHzのNMR装置で測定した。
【0116】
[オレフィン重合体]
上記実施例1−4で合成した遷移金属化合物を使用してプロピレン、エチレン及び1−オクタデセンの重合を行った。
尚、重合したポリプロピレン、ポリエチレンについて、以下の項目を評価した。
(1)ペンタッドメソ分率[mmmm]
重合体の13C−NMRのうち、19〜22ppmに現れる9つのシグナルの総面積のうち、ペンタッドメソに帰属される21.8ppmのシグナルの占める面積の割合として下記の装置、条件にて測定した。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型NMR装置
観測核:13C(100.4MHz)
方法:H完全デカップリング法
濃度:約200mg/3mL(6.7×10kg/m)(10φ試料管)
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:1000回
【0117】
(2)融点
装置:パーキンエルマー社製DSC7
昇温速度:10℃/min
温度範囲:−50℃〜150℃
(3)極限粘度[η]
(株)離合社製VMR−053型自動粘度計を用いて、135℃、デカリン中で測定した、
【0118】
(4)分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件にて、ポリエチレン換算で測定した。
装置:ウォーターズALC/GPC 150C
カラム:東ソー製、GMHHR + H(S)HT×2
温度:145℃
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
流量:1mL/min.
【0119】
実施例5
プロピレンの重合
加熱乾燥した1Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下、室温でトルエン400mL及びトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを加えた。
攪拌しながら温度を50℃にした後、メチルアルミノキサン3mmolと実施例1で得られた(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを3μmol加えた。
続いて、プロピレンで圧力を0.7MPaに保ちながら30分重合した。重合反応終了後、反応生成物をメタノール中に投入し、充分攪拌した後、ろ別し、さらにメタノールで充分洗浄後、乾燥して、ポリプロピレン23.3gを得た。
得られたポリプロピレンの極限粘度は、1.21dl/g、ペンタッドメソ分率[mmmm]は5.3%であった。
このポリプロピレン、以下に示す実施例6−9及び比較例1,2で得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例6
遷移金属化合物を、実施例2で得られた(1,1’−MeSi)(2,2’−(i−Pr)NB)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例5と同様の方法で重合を行った。
得られたポリプロピレンの収量は45.5g、極限粘度は1.76dl/g、Mwは172,000、Mw/Mnは2.11、ペンタッドメソ分率[mmmm]は10.2%であった。
【0122】
実施例7
遷移金属化合物を、実施例3で得られた(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた以外は、実施例5と同様の方法で重合を行った。
得られたポリプロピレンの収量は0.8g、極限粘度は0.22dl/gであった。
【0123】
実施例8
遷移金属化合物を、実施例4で得られた(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例5と同様の方法で重合を行った。
得られたポリプロピレンの収量は108.0g、極限粘度は1.81dl/g、ペンタッドメソ分率[mmmm]は23.5%であった。
【0124】
実施例9
エチレンの重合
加熱乾燥した1Lのオートククレーブに、窒素雰囲気下、室温でトルエン400mL及びトリイソブチルアルミニウム5mmolを加えた。
攪拌しながら温度を50℃にした後、メチルアルミノキサン10mmolと実施例1で得られた(1,1’−MeSi)(2,2’−PhP)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを10μmol加えた。
続いてエチレンで圧力を0.8MPaに保ちながら10分間重合した。重合反応終了後、反応生成物をメタノール中に投入し、充分攪拌した後、ろ別し、さらにメタノールで充分洗浄後、乾燥してポリエチレン6.7gを得た。このポリエチレンの極限粘度は1.02dl/gであった。
【0125】
実施例10
高級α−オレフィン重合体の重合
加熱乾燥した10Lのオートクレーブに、C18のα−オレフィンである1−オクタデセンを3L、ヘプタンを3L加え、重合温度80℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム 5mmol、実施例4で合成した(1,1’−MeSiSiMe)(2,2’−(i−Pr)NB)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド 20μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 40μmolを加え、さらに水素を0.8MPa導入し、6時間重合した。
重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿、ろ過した後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン重合体を1.4kg得た。
【0126】
この高級α−オレフィン重合体については、以下の評価を行なった。
(1)融点(Tm:℃)、融解吸熱量(ΔH:J/g)
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下190℃で5分間保持した後、−10℃まで、5℃/分で降温させ、−10℃で5分間保持後、190℃まで10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱量(ΔH)カーブから観測されるピークのピークトップの融点(Tm)を測定した。
(2)半値幅(Wm:℃)
DSCにて融点(Tm)を測定した際の吸熱ピークの50%高さにおけるピーク幅を測定した。
【0127】
(3)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
GPC法により、下記の装置及び条件で測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnとして算出した。
・GPC測定装置
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
・測定条件
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ミリリットル/分
試料濃度 :2.2mg/ミリリットル
注入量 :160マイクロリットル
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム :HT−GPC(Ver.1.0)
【0128】
(4)立体規則性指標値(M2:mol%)
T.Asakura,M.Demura,Y.Nishiyamaにより報告された「Macromolecules,24,2334(1991)」で提案された方法に準拠して求めた。
即ち、13C−NMRスペクトルで、高級α−オレフィンに由来する、側鎖α位のCH炭素が立体規則性の違いを反映して分裂して観測されることを利用してM2を求めた。
13C−NMRの測定装置、測定条件
装置:日本電子(株)製 EX−400
測定温度:130℃
パルス幅:45°
積算回数:1000回
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
・立体規則性指標値(M2)の計算
混合溶媒に基づく大きな吸収ピークが、127〜135ppmに6本見られる。このピークのうち、低磁場側から4本目のピーク値を131.1ppmとし、化学シフトの基準とする。
このとき、側鎖α位のCH炭素に基づく吸収ピークが34〜37ppm付近に観測される。このとき、以下の式を用いてM2(モル%)を求める。
M2=〔(36.2〜35.3ppmの積分強度)/(36.2〜34.5ppmの積分強度)〕×100
【0129】
(5)X1(°)、X1強度比(%)
(広角X線散乱強度分布測定方法)
理学電機社製対陰極型ロータフレックスRU−200を用い、30kV,100mA出力のCuKα線(波長=1.54Å)の単色光を1.5mmのピンホールでコリメーションし、位置敏感型比例計数管を用い、露光時間1分で広角X線散乱(WAXS)強度分布を測定した。
評価結果を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
比較例1
(MeSi)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドよるプロピレンの重合
加熱乾燥した1Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下、室温でトルエン400mL及びトリイソブチルアルミニウム0.5mmolを加えた。攪拌しながら温度を50℃にした後、メチルアルミノキサン1mmolと、(MeSi)(3−メチル−5-iso-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol加えた。
続いて、プロピレンで圧力を0.7MPaに保ちながら60分重合した。重合反応終了後、反応生成物をメタノール中に投入し、充分攪拌した後ろ別し、さらにメタノールで充分洗浄後、乾燥してポリプロピレンを得た。
収量は117g、極限粘度は0.94dl/gであった。
【0132】
比較例2
(1,2’−MeSi)(2,1’−MeSi)(3,5−ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドによるプロピレンの重合
加熱乾燥した1Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下、室温でトルエン400mL及びトリイソブチルアルミニウム0.5mmolを加えた。攪拌しながら温度を50℃にした後、メチルアルミノキサン1mmolと(MeSi)(3,5-ジイソプロピルシクロペンタジエニル)(1,2’−インデニル)ジルコニウムジクロライドを1μmol加えた。
続いて、プロピレンで圧力を0.7MPaに保ちながら30分重合した。重合反応終了後、反応生成物をメタノール中に投入し、充分攪拌した後ろ別し、さらにメタノールで充分洗浄後、乾燥して、ポリプロピレンを得た。
収量は9.93g、極限粘度は0.24dl/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の遷移金属化合物は、オレフィン重合用触媒として有用であり、それを含有するオレフィン重合用触媒を用いると、高分子量の規則性ポリオレフィンが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される遷移金属化合物。
【化1】

[式中、Mは、周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素であり、Xは、Mと結合するσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよい。Yは、ルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なってよい。A、Aは架橋基を示し、これらのうち、少なくとも一つはホウ素又はリン原子が架橋原子となっている。qは1〜5の整数で、[(Mの原子価)−2]を示し、rは0〜3の整数を示す。Q及びQは、式(2)又は式(3)で表される構造を有する。Q及びQはそれぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。]
【化2】

[式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜4のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基又はヘテロ含有基を示す。]
【化3】

[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【請求項2】
請求項1に記載の遷移金属化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
さらに、活性化助触媒(B)、又は活性化助触媒(B)及び有機アルミニウム化合物(C)を含有する請求項2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
前記活性化助触媒(B)が、前記(A)成分又はその派生物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物、粘土、粘土鉱物又はイオン交換性層状化合物を含有する請求項3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィン類を単独重合又はオレフィン類と他のオレフィン類及び/又は他の単量体とを共重合させるオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られるオレフィン系重合体。

【国際公開番号】WO2005/073242
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517435(P2005−517435)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000858
【国際出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】