説明

選択的アンモニア酸化用の二官能性触媒

ディーゼルエンジン排気流の処理のための触媒、方法、およびシステムが記載されている。一つ以上の実施様態においては、この触媒は、白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と耐火性金属酸化物とゼオライトとを含み、この酸化触媒は約300℃未満の温度ででもアンモニア除去に効果を示し、水熱養生によりアンモニア酸化効率の大きな低下を示さない。方法の側面では、まず車両のエンジン排気流をNOx低減触媒に通過させ、このNOx低減触媒から出るアンモニア含有排気流をアンモニア酸化触媒に通過させる。このような触媒を含むシステムも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃機関用の排出物処理用のシステムと触媒、それらの製造方法、およびディーゼルエンジンや希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジンでの利用が開示されている。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン排出物は、一酸化炭素(CO)や、未燃焼または部分燃焼の炭化水素またはこれらの酸化物(HC)、窒素酸化物(NOx)などのガス状排出物ばかりか、いわゆる粒子または粒子状物質を構成する凝縮相物質(液体や固体)を含む不均一な混合物である。これらの排出成分の一部または全部を無害成分に変換するために、触媒組成物やこのような触媒組成物を坦持する基材が、しばしばディーゼルエンジン排出物システムに取り付けられる。例えば、ディーゼル排出物システムは、ディーゼル酸化触媒、すすフィルター、及びNOxの低減触媒の一つ以上を有していてもよい。
【0003】
希薄排気条件の定置型発生源に用いられる有効性の実証されたNOx低減技術は、アンモニアの選択的接触還元(SCR)である。このプロセスにおいては、通常卑金属からなる触媒上で、NOx(=NO+NO2)がアンモニアと反応して窒素(N2)ができる。この方法では、90%を超えるNOxの還元が可能であり、このため、厳しいNOx低減目標を達成するための最良のアプローチの一つである。排気温度が触媒が活性を持つ温度範囲にある限り、SCRはNOxを効率的に変換する。
【0004】
希薄燃焼エンジン中のNOxの排ガス目標を達成するために、NH3を用いるNOx類のN2への還元に興味がもたれる。NH3を還元剤として用いる場合、変換が不完全であったり、排気温度が上昇したりすると、車両の排出口からNH3が漏出することがある。NH3の漏出を防止するために、排気流中に当量より少ない量のNH3を注入してもよいが、NOx変換率の減少が起こることとなる。逆に、NOx変換率を上げるために過剰にNH3をシステムに投入してもよいが、その排気をさらに処理して過剰なあるいは漏出するNH3を除く必要がある。当量のNH3であっても、排気温度が上昇すると、NOx低減触媒上に貯蔵されたアンモニアが放出され、NH3漏出を起こすことがある。白金坦持アルミナなどの従来の貴金属系の酸化触媒は、非常に効率的にNH3を除去できるが、これらは、望ましい生成物のN2に代えて、かなりの量の望ましくない副生成物のN2OとNOxを発生させる。したがって、225℃ほどの低温でもNH3酸化に活性を示し、250℃〜400℃で約60%を超えるN2選択性を示す触媒組成物が求められている。
【0005】
また、長期間の車両の通常運転における熱的化学的物理的なストレスに対して安定なアンモニア酸化触媒が、例えば典型的なディーゼル用途では最高約450℃に達する温度に対して安定なアンモニア酸化触媒も求められている。また、車両排出物システムは、例えば微粒子フィルターの熱再生の間のように、800℃を超える温度で短時間、運転するかもしれない。アンモニア酸化触媒は、これらの短期的な熱的ストレスに対しても安定であることが重要である。このため、これらの長期及び短期ストレスの触媒活性に与える累積効果をまねる加速養生条件が見出されている。このような養生条件の一つは、最高で約10%の水蒸気が存在する大気下に、700℃〜800℃で5〜50時間、触媒を暴露することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の側面としては、排ガス処理用の触媒、方法、およびシステムがあげられる。本発明の一つ以上の実施様態によれば、ディーゼル車両の排ガス流中で生産される排出物を処理する方法が提供される。車両のエンジン排気流をNOx低減触媒に通す。NOx低減触媒から排出されるアンモニアを含む可能性のある排気流を酸化触媒に通す。この酸化触媒は、白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と、耐火性金属酸化物とゼオライトとを含んでいる。この酸化触媒は、約300℃未満の温度、好ましくは250℃未満の温度で、アンモニアを除去するのに有効であろう。この酸化触媒は、水熱養生によりアンモニア除去性能に大きな低下を示さないであろう。一つ以上の実施様態においては、水熱養生とは、最高約700℃の温度、具体的には最高約800℃で、最長50時間、例えば約5〜約25時間、大気下で約10%水蒸気の存在下で、触媒を養生させることである。
【0007】
他の本発明の実施様態は、アンモニア酸化用触媒に関する。本触媒は、耐火性金属酸化物またはゼオライト上に坦持された白金成分と、白金と周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属が坦持されたゼオライトとの、相補的な機能を有する異なる二つの材料を含んでいる。この第二の金属は、ゼオライト上に、ゼオライト骨格上のイオン交換部位に配位した金属カチオンとして存在していてもよい。坦持される白金成分は、高活性で熱安定性であるアンモニア酸化機能を与える。ゼオライト上に坦持される第二の金属は、選択的接触還元反応によるNH3とNOxの新たな消費経路を与え、触媒のN2生産ヘの選択性を増加させる。N2選択性をさらに上げるために、この金属/ゼオライト成分を、低温で白金/耐火性金属酸化物成分によるNH3酸化で生産されたN2OをN2に分解するように設計してもよい。この酸化触媒は、約300℃未満で、好ましくは250℃未満の温度でアンモニアを除去するのに有効であろう。この酸化触媒は、最高約700℃の温度での水熱養生でも、アンモニア除去性能に大きな低下を示さないであろう。一つ以上の実施様態においては、この第二の金属が銅であり、ゼオライト上のイオン交換部位に配位して銅(II)イオンとして存在する。
【0008】
本発明の他の実施様態は、NOxを含有する排気流の処理システムに関する。この処理システムは、NOxの低減に有効な上流の触媒と、アンモニア酸化に有効な下流の酸化触媒とを含んでいる。この酸化触媒は、白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と、耐火性金属酸化物とゼオライトとを含む。この酸化触媒は、約300℃未満で、好ましくは250℃未満の温度でアンモニアの除去に有効であろう。この酸化触媒は、水熱養生を行ってもアンモニア除去性能に大きな低下を示さないであろう。
【0009】
一つ以上の実施様態においては、本方法またはシステムで用いられる触媒であるNOx低減触媒が、SCR触媒、LNT触媒、または該NOx低減触媒からのアンモニアの漏出をもたらす他のNOx分解触媒を含んでいる。一つ以上の実施様態において、これらのNOx低減触媒組成物と酸化触媒組成物が、別個の基材上に配置されている。他の実施様態では、これらのNOx低減触媒および酸化触媒が、同一の基材上に配置されている。
【0010】
一つ以上の実施様態において、白金が耐火性金属酸化物上に分布されている。白金はゼオライトの上に分布されていてもよい。一つ以上の実施様態においては、白金が、合計触媒体積に対して約0.1g/ft3〜約10g/ft3の範囲の量で存在している。
【0011】
一つ以上の実施様態においては、前記白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属とが、前記ゼオライト上に分布されている。前記金属は、ゼオライトに対して重量で0.1%〜5%の範囲の量でゼオライト上に存在していてもよい。特定の実施様態では、この金属が銅、鉄、またはこれらの混合物である。
【0012】
一つ以上の実施様態においては、前記耐火性金属酸化物が、アルミナや、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、またこれらの物理的な混合物または原子ドープ体などの化合物から選ばれる。特定の実施様態においては、前記基材上の耐火性金属酸化物支持体の総量が、合計触媒体積に対して約0.01g/in3〜2.0g/in3の範囲である。一つ以上の実施様態においては、前記ゼオライトが、結晶構造がCHAやBEA、FAU、MOR、MFIのうちの一つを有する。ある実施様態においては、ゼオライト中のシリカのアルミナに対するモル比が約2〜約250である特定の実施様態においては、前記基材上のゼオライトの総負荷量が、合計触媒体積に対して約0.1g/in3〜4.0g/in3の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ある排出物処理システムの実施様態を示す模式図である。
【図2】図2は、以下の二触媒での定常状態でのNH3酸化の状況を示す:黒符号=0.57%のPtを坦持するAl23、触媒坦持量=0.5g/in3、Pt負荷量=5g/ft3;白符号=0.57%のPtを坦持するAl23、触媒坦持量=0.5g/in3、Pt負荷量=5g/ft3+2.5g/in3鉄交換ベータゼオライト(Fe=Fe23として1.1%、SAR=30)。NH3=500ppm、NO=0、O2=10%(空気として)、H2O=5%、残り=N2、GHSV=100,000/hr。実線は、データ点を連結する直線である。
【図3】図3は、過渡的なNH3酸化の評価のための、パルスランプNH3触媒作動開始試験の際のNH3供給口濃度状況と反応器温度状況を示す。ガス組成:O2=10%、H2O=5%、CO2=5%、残り=N2、GHSV=100,000/hr。
【図4】図4は、パルスランプ触媒作動開始試験により評価された一つの代表的な二官能性アンモニア酸化触媒の瞬間的な排出物の状況を示す。触媒=1.8重量%のPtを坦持するAl23=1.0g/in3、Pt負荷量=30g/ft3+0.5g/in3ベータゼオライト。
【図5】図5は、パルスランプ触媒作動開始試験により評価された一つの代表的な二官能性アンモニア酸化触媒の過渡的な排出物の状況を示す。触媒=1.8重量%のPtを坦持するAl23、1.0g/in3、Pt負荷量=30g/ft3+0.5g/in3ベータゼオライト。
【図6】図6は、パルスランプ触媒作動開始試験により評価された触媒中の異なるレベルの鉄交換ベータゼオライトを有する一連の二官能性のアンモニア酸化触媒のNOx(=NO+NO2)に対する選択性を示す。実線は、データの最小二乗回帰直線である。
【図7】図7は、パルスランプ触媒作動開始試験により評価された一連の二官能性のアンモニア酸化触媒において、触媒中の鉄交換ベータゼオライトの量の関数としての表したアンモニアの部分変換率を示す。実線は、データの最小二乗回帰直線である。
【図8】図8は、次の二触媒の定常状態でのNH3酸化状態を示す:黒符号=0.57%のPtを坦持するAl23、触媒坦持量=0.5g/in3、Pt負荷量=5g/ft3;白符号=0.57%のPtを坦持するAl23、触媒坦持量=0.5g/in3、Pt負荷量=5g/ft3+銅交換チャバザイト、触媒坦持量=2.5g/in3(銅=CuOとして2.5%、SAR=30)。NH3=500ppm、NO=0、O2=10%(空気として)、H2O=5%、残り=N2、GHSV=100,000/hr。実線は、データの点を連結する直線である。
【0014】
詳細な説明
本発明の例示的な実施様態をいくつか述べる前に、本発明は、以下の明細書に記載の構成または加工工程の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明には他の実施様態も可能であり、いろいろな方法で実行または実施可能である。
【0015】
本明細書および添付の請求項においては、特に明記される場合を除いて、「ある」や「一種の」などの単数で表示される対象物は、複数の対象物をも含むものとする。したがって、例えば、「ある触媒」は、二種以上の触媒の混合物等も含んでいる。本明細書において、「低減する」とは、何らかの方法により量を減少させること意味し、「低減」とは量の減少を意味する。本明細書に見られる「排気流」や「エンジン排気流」は、エンジンからの排出物、及び一種以上の他の触媒システム要素の、特に限定されるわけではないが例えばディーゼル酸化触媒及び/又はすすフィルターの下流の排出物をいうものとする。
【0016】
本発明の一つ以上の実施様態によれば、希薄燃焼またはディーゼル車両の排ガス流中で作られる排出物を処理する方法が提供される。ある実施様態においては、車両のエンジン排気流がNOx低減触媒中に導かれる。NOx低減触媒を出る排気流は、アンモニアを含むことがあるため、酸化触媒を通過させられる。この酸化触媒は、白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と、耐火性金属酸化物と、ゼオライトとを含んでいる。この酸化触媒は、約300℃未満の温度で、好ましくは250℃未満の温度でアンモニアの除去に有効であろう。この酸化触媒は、大気下で約10%水蒸気の存在下で、最高約700℃の温度で、好ましくは最高約800℃の温度で最長50時間処理しても、アンモニア除去性能に大きな低下は示さないであろう。
【0017】
一つ以上の実施様態において、本NOx低減触媒は、選択的接触還元(SCR)触媒、希薄NOxトラップ(LNT)触媒、または結果的にNOx低減触媒からアンモニアを排出または漏出させることとなる可能性のあるNOx分解用の他の触媒を含んでいる。
【0018】
このNOx低減触媒と酸化触媒の組成物は、同一の基材上に薄膜層として配置してもよいし、異なる基材上に薄膜層として配置してもよい。また、SCR触媒と選択的アンモニア酸化触媒は、同一の触媒容器中に収められていてもよし、異なる触媒容器に収められていてもよい。
【0019】
他の側面は、アンモニア酸化用の触媒に関する。ある実施様態においては、この触媒は、次の二つの互いに相補的な機能を有する明らかに異なる材料を含んでいる:耐火性金属酸化物またはゼオライト上に坦持された白金成分と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属を坦持するゼオライト。この第二の金属は、ゼオライト上に、ゼオライト骨格上のイオン交換部位に配位する金属カチオンとして存在していてもよい。この坦持される白金成分が、高活性で熱安定性であるアンモニア酸化性能をもたらす。ゼオライト上に坦持される第二の金属は、さらに選択的接触還元反応によりNH3とNOxとを消費する経路を提供し、この触媒のN2生産への選択性を増加させる。この金属/ゼオライト成分を、低温で白金/耐火性金属酸化物成分によるNH3の酸化により生産されるN2OをN2に分解するように設計して、さらにN2選択性を上げてもよい。この酸化触媒は、約300℃未満の温度で、好ましくは250℃未満の温度で、アンモニアの除去効率がよいであろう。この酸化触媒は、大気下で約10%水蒸気の存在下で、最高約700℃の温度で、好ましくは最高約800℃の温度で最長50時間養生しても、アンモニア除去性能の大きな減少が示さないであろう。一つ以上の実施様態において、この第二の金属は銅であり、これはゼオライト上のイオン交換部位に配位した銅(II)イオンとして存在している。
【0020】
他の実施様態は、NOx含有排気流の処理システムに関する。ある実施様態においては、この処理システムは、NOxの低減に有効な上流の触媒とアンモニア酸化に有効な下流の酸化触媒を含んでいる。この酸化触媒は、白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と、耐火性金属酸化物と、ゼオライトとを含んでいる。この酸化触媒は、約300℃未満の温度で、好ましくは250℃未満の温度でアンモニア除去に有効であろう。この酸化触媒は、大気下で約10%水蒸気の存在下で、最高約700℃の温度で、好ましくは最高約800℃の温度で最長50時間養生しても、アンモニア除去性能の大きな減少が示さないであろう。
【0021】
ひとつ以上の実施様態において、このエンジン処理システムは、連続的にまたは特定間隔で周期的に、アンモニア、またはアンモニア前駆体、または異なるアンモニア前駆体の混合物を排気流中に計量供給する計量供給システムを含んでいる。
【0022】
本発明の排出物処理システムの一つの実施様態を、模式的に図1に示す。図1から分かるように、ガス状汚染物質(未燃焼の炭化水素と一酸化炭素とNOxを含む)と粒子状物質を含む排出物が、11Aで示される排出物処理システムに供給されている。このガス状汚染物質(未燃焼の炭化水素と一酸化炭素とNOxを含む)と粒子状物質を含む排出物は、本排出物システム中でエンジン19から下流の位置に運ばれ、ここで、還元剤、例えばアンモニアまたはアンモニア前駆体が、この排気流に添加される。この還元剤は、ノズル(図示せず)を通して噴霧状で排気流中に注入される。ライン25に示す尿素水溶液をアンモニア前駆体とし、もう一つのライン26の空気と混合装置24中で混合することもできる。バルブ23を用いて正確な量の尿素水溶液を投入し、排気流でアンモニアに変換させてもよい。
【0023】
一つ以上の実施様態においては、アンモニアが添加された排気流は、CuCHAを含む上記のSCR触媒坦持基材12(また、請求の範囲も含め本明細書では「第一の基材」とも呼ぶ)に運ばれる。第一の基材12を通過する間に、排気流のNOx成分は、NOxのNH3による選択的接触還元により、N2とH2Oに変換される。また、供給口ゾーンから出てくる過剰のNH3を、下流のCuCHA含有アンモニア酸化触媒(図示せず)による酸化でN2とH2Oに変換することもできる。通常、この第一の基材はガス流通性のモノリス基材である。後ほど明らかとなるように、SCR触媒に入る前の一定距離の混合後の時点での排ガス流に直交する方向のアンモニア濃度の分布は、均一であっても、不均一であってもよい。SCR触媒16中で、NOxは、NH3によりN2とH2Oに変換される。残存するNH3は、SCR触媒16から下流のNH3酸化触媒16に漏出する。NH3酸化触媒中で、残存NH3はN2とH2Oに変換される。
【0024】
基材
一つ以上の実施様態において、このアンモニア酸化触媒用の基材は、通常自動車用触媒の製造に用いられるいかなる材料であってもよいが、通常、金属またはセラミックのハニカム構造を有している。いずれの適当な基材も使用可能であり、例えば、モノリス型ガス流通性基材で、基材の供給口から排出口面に伸びる複数の平行の微細ガス流路を持ち流路が流体通過に開放されているものが使用可能である。この流路、すなわち流体供給口から流体排出口に至る実質的に直線状の流路は、触媒材料が「薄膜状」に塗布された壁面により形成されており、流路を通過するガスは触媒材料と接触する。モノリス基材の流路は、薄壁の流路であり、その断面形状は、台形、長方形、正方形、正弦的、六角型、卵型、丸型等のいずれでもよい。これらの構造は、平方インチ断面当たり約60〜約1200個(cpsi)以上のガス導入用開口部(即ち、「セル」)を有していてもよい。市販のガス流通性基材の一例はコーニング400/6コージェライト材料であり、これは、コージェライト製で、開口部数が400cpsiで、壁厚が6ミルである。しかしながら、本発明は、特定の基材の型式や、材料、幾何形状に限定されるものではない。
【0025】
このセラミック基板は、いずれの適当な耐火性材料であってもよく、その例としては、コージェライト、コージェライト−αアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リチア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンケイ酸塩、ミリマイト、珪酸マグネシウム、ジルコン、ペタル石、αアルミナ、アルミノケイ酸塩などが挙げられる。
【0026】
本発明の実施様態の二官能性触媒複合体に有用な基材は、元来金属的であってもよく、一種以上の金属または金属合金を含んでいてもよい。金属製支持体の例としては、チタンやステンレス鋼などの耐熱製の金属や金属合金、鉄がほぼすべてあるいは主成分である他の合金があげられる。これらの合金は、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムの一種以上を含んでいてもよく、これらの金属の総量は、合金の少なくとも15重量%であること、例えば、10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウム、および最高20重量%のニッケルであることが好ましい。これらの合金は、少量または微量の一種以上の他の金属類、例えばマンガンや銅、バナジウム、チタンを含んでいてもよい。これらの金属性基材は、波板状またはモノリス状等のいろいろな形状で使用可能である。市販の金属基材の一例が、エミテックにより製造されている。しかしながら、本発明は、特定の基材の型式や材料、幾何形状に限定されるものではない。金属基材の表面を、高温下で、例えば1000℃以上で酸化して基材表面に酸化物層を形成し、合金の耐食性を向上させてもよい。このような高温誘起による酸化は、耐火性金属酸化物支持体と触媒促進作用を持つ金属成分の基材への接着性を上げることとなろう。
【0027】
触媒支持体
一つ以上の実施様態においては、高表面積の耐火性金属酸化物支持体上に白金が付着している。高表面積耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、これらの物理的混合物や、原子ドープ体等の化合物があげられるが、これらの例には限定されるものではない。この耐火性金属酸化物は、シリカ−アルミナ、結晶性または非晶性のアルミノケイ酸塩、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−ランタニア、アルミナ−バリア−ランタニア−ネオジミア、アルミナ−クロミア、アルミナ−バリア、アルミナ−セリア等の複合酸化物からなるか、これを含んでいてもよい。耐火性金属酸化物の一例は、比表面積が約50〜約300m2/gであるガンマアルミナである。
【0028】
いくつかの実施様態では、ゼオライト成分が、周期表のVB、VIB、VEB、VIIIB、IB、またはIIB族の金属の一つが付着した多孔性のアルミノケイ酸塩を含んでいる。これらの金属の例としては、鉄や銅があげられる。このゼオライト成分は、国際ゼオライト協会(IZA)出版のゼオライト構造データベース中にあげられているいずれか一つの骨格構造を持っていてもよい。この骨格構造としては、CHAやFAU、BEA、MFI、MORなどの型があげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
いくつかの実施様態では、その白金成分が、国際ゼオライト協会(IZA)出版のゼオライト構造データベース中にあげられているいずれか一つの骨格構造を持つゼオライト上に坦持されていてもよい。この骨格構造としては、CHAやFAU、BEA、MFI、MORなどの型があげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
薄膜層
一つ以上の実施様態においては、この触媒は、基材上に付着した、すなわち塗布により接着した薄膜層として利用される。白金成分を製造するのに好適な方法は、白金前駆体を適当な溶媒、例えば水に加えた混合物または溶液を準備することである。一般的には、経済性および環境的側面の視点から、白金の可溶性化合物または錯体の水溶液が好ましい。通常、前駆体を支持体上に分散させるのに化合物または錯体の形の白金前駆体が用いられる。本発明の目的において、「白金前駆体」とは、焼成によりあるいは使用初期に、分解するか触媒活性な形に転換するいずれかの化合物や錯体等を意味する。好適な白金錯体または化合物としては、白金塩化物類(例えば、[PtCl42-、[PtCl62-の塩類)や、白金水酸化物類(例えば、[Pt(OH)62-の塩類)、白金アンミン類(例えば、[Pt(NH342+、[Pt(NH344+の塩類)、白金水和物類(例えば、[Pt(OH242+)の塩類、白金ビス(アセチルアセトネート)、混合化合物や錯体(例えば、[Pt(NH32(Cl)2])があげられるが、これらに限定されるわけではない。代表的な市販の白金源は、ストレムケミカルズ社の99%ヘキサクロロ白金酸アンモニウムで、これは他の貴金属を微量含んでいる。しかしながら、本発明は、特定の型や組成、純度の白金前駆体に限定されるわけではない。白金前駆体の混合物または溶液を、いろいろな化学的手段の一つにより支持体に加える。これらの手段としては、支持体の白金前駆体の溶液への含浸があげられ、含浸の後に、酸性成分(例えば、酢酸)または塩基性成分(例えば、アンモニウムヒドロキシド)を用いる固定工程を行ってもよい。この湿った固体を、化学的に還元しても、焼成しても、あるいはそのまま使用してもよい。あるいは、この支持体を適当な媒体(例えば、水)中に懸濁し、溶液中で白金前駆体と反応させてもよい。支持体がゼオライトの場合は、後者の方法が通常用いられ、白金前駆体をゼオライト骨格のイオン交換部位に固定することが望ましい。他の加工工程としては、酸性成分(例、酢酸)または塩基性成分(例えば、アンモニウムヒドロキシド)や、化学還元、焼成による固定などが含まれる。
【0031】
一つ以上の実施様態において、この薄膜層は、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族の一つの金属が表面上に分布しているゼオライトを含んでいる。ゼオライトの例としては、結晶構造がCHAやBRA、FAU、MOR、MFIの一つをもつゼオライトがあげられるが、これに限定されるわけではない。この系列の金属の一例は銅である。金属をゼオライト上に分布させる好適な方法は、金属前駆体を適当な溶媒、例えば水に加えた混合物か溶液をまず準備することである。一般的には、経済性や環境的な面の視点から、可溶性の化合物または金属錯体の水溶液が好ましい。本発明の目的において、「金属前駆体」とは、ゼオライト支持体上に分散して触媒活性な金属成分を与えうるいずれかの化合物や錯体等である。例えばIB族金属の銅の場合、適当な錯体または化合物としては、無水および水和の硫酸銅や、硝酸銅、酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酸化銅、水酸化銅、銅アンミン塩類(例えば、[Cu(NH342+)があげられるが、これらに限定されるわけではない。代表的な市販の銅源は、ストレムケミカルズ社の97%酢酸銅であり、これは微量の他金属を、特に鉄とニッケルを含んでいることがある。しかしながら、本発明は、特定の型や組成、純度の金属前駆体に限定されているわけではない。この金属成分の溶液にゼオライトを添加して懸濁液を形成することもできる。この懸濁液を反応させて、銅成分をゼオライト上に分布させることができる。この結果、銅がゼオライトの空孔流路中およびゼオライト外表面上に分布することとなる。銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオンまたは酸化銅として分布できる。銅をゼオライト上に分布させた後に、このゼオライトを懸濁液液相から分離し、洗浄、乾燥できる。焼成して銅を固定してもよい。
【0032】
基材上に触媒層を形成するために、白金成分及び/又は金属ゼオライト成分からなる微分散触媒粒子を適当な媒体、例えば水に懸濁してスラリーを形成する。他の促進剤及び/又は安定剤及び/又は界面活性剤を、混合物、水溶液または水混和性媒体の溶液としてスラリーに添加してもよい。一つ以上の実施様態において、このスラリーを微粉砕して、実質的にすべての固体が、約10ミクロン未満の粒度をとるように、すなわち平均粒径で約0.1〜8ミクロンとなるようにする。ボールミル、連続アイガーミル等を用いてこの粉砕を行なってもよい。一つ以上の実施様態においては、この懸濁液またはスラリーのpHが、約2〜約7未満である。必要なら、適当量の無機酸または有機酸をスラリーに添加して、スラリーのpHを調整してもよい。スラリー中の固体含量は、例えば約20〜60重量%であってよく、特に好ましくは約35〜45重量%である。次いで、この基材をスラリー中に浸し、あるいはスラリーを基材上に塗布し、基材上に所望量の触媒層が形成するようにする。その後、この塗膜を有する基板を、約100℃で乾燥し、例えば300〜650℃に加熱して約1〜約3時間焼成する。乾燥と焼成は、通常大気下で行われる。必要なら、この塗布、乾燥、焼成プロセスを繰返し、最終的な所望量の触媒を支持体上に形成してもよい。いくつかの場合には、触媒が使用に供され運転時に遭遇する高温に曝されるまで、液体や他の揮発性成分が完全に除去されないこともある。
【0033】
焼成後の触媒坦持量は、塗布前後の基材重量の差から計算して求めることができる。当分野の熟練者には明らかなように、塗布スラリーの固体含量とスラリー粘度を変更することで、この触媒坦持量を変えることができる。あるいは上述のように、基材を塗布スラリー中に繰返し浸漬し、その後過剰のスラリーを除去してもよい。ある特定の実施様態においては、基材上の薄膜層の塗布量は約0.2〜約3.0g/in3であり、通常約2.0g/in3である。
【0034】
実施例
実施例1:二官能性アンモニア酸化触媒の調整
二官能性のAMOx触媒の製造は、通常、初期湿潤法により酸化物支持体上に塩基性のPt(IV)前駆体を含浸させることにより始めた。続く有機酸の含浸により表面pHを低下させ、Pt(IV)の沈殿させて、このPt(IV)を支持体上に固定した。次いで、得られた粉末を脱イオン水中に懸濁して固体含量が約40%のスラリーを得て、連続ミルまたは標準的なボールミルにより粉砕し、粒子数の90%が10μm未満となる粒度分布とした。pHを連続測定して5を越えないようにして、Pt(IV)の再溶解を防止した。これとは別に、通常、遷移金属でイオン交換したゼオライトからなる第二成分を水中に懸濁して、固体含量が約40%のスラリーを得て、粒子数の90%が10μm未満である凝集物径分布とした。この懸濁液に、約3%(固体量)のZrO2を酢酸ジルコニウムの溶液として添加した。これは、二つのスラリーを混合する際のゲル化を防止するのに必要であった。所望の坦持Pt/金属交換ゼオライト成分比を与える量で、これらの二つのスラリーを混合した。得られたスラリーを分析してPt含量を補正し、外径が1.0”で長さが3.0”であり、セル密度が400セル/in2、壁厚が6milである標準的な円柱状セラミックモノリス上に塗布した。塗布は、このモノリスを流路方向に平行にスラリー中に浸漬し、過剰のスラリーを気流で除き、得られた湿潤触媒コアを乾燥焼成して行った。いくつかの場合には、目的の塗布量とするのに、特に合計塗布量が>1.0g/in3の場合には、繰返し塗布が必要であった。触媒コアは、通常触媒活性の評価の前に高温下で焼成した。各々の評価に置ける具体的な養生条件を以下に述べる。
【0035】
実施例2:二官能性Pt/Al23+FeBEA触媒の定常状態での評価
図2は、Al23上に0.57重量%のPtが坦持された(0.5g/in3)、合計Pt坦持量が5g/ft3である触媒のNH3変換率(%)とN2選択性(%)のプロットである(黒符号)。この触媒は、評価前に大気下、750℃で5時間処理した。このデータは、250℃でほぼ完全なNH3の変換を示しているが、この触媒は、温度が上昇するとN2選択性が徐々に減少するという望ましくない性質を有していた。400℃では、N2選択性はわずかに36%であり、これは車両用途には適当でない。高温下における低選択性は、式1に従った坦持Pt触媒による相当量のNOxの製造の結果である。一酸化窒素が、車両排気の運転温度における坦持白金上でのアンモニアの主な酸化生成物であることはよく知られている。

式1. 4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2
【0036】
図2に併記しているのは、Al23上に坦持された0.57重量%Pt混合物(0.5g/in3)と鉄交換ベータゼオライト(2.5g/in3)からなる触媒でのNH3変換データとN2選択性データである(白符号)。モノリス上の総触媒坦持量は3.0g/in3であった。鉄交換ベータゼオライトの鉄含量は、Fe23として1.1重量%であった。白符号のデータは、鉄ベータ成分を含まない触媒とほぼ同等のNH3変換率を示している。これは、坦持Pt成分の合計負荷量が上に同じであるため、予測できたものであり、Pt/Al23上での主な酸化プロセス、式1は、鉄ベータ成分の存在でほとんど影響を受けない。しかしながら、N2選択性は、鉄交換ベータゼオライト成分の存在下では、高温下で実質的に改善された。400℃では、鉄ベータ含有触媒ではN2選択性が70%にまで増加し、これは、Pt/Al23触媒と較べると二倍の改良である。鉄交換ゼオライトは、SCR反応、式2によりNH3とNOから高選択的にN2を均化製造するためのよく知られた触媒である。これにより、鉄ベータゼオライトの存在下での選択性の増加の理由を理解することができる。坦持Pt成分は、式1のようにNH3をNOに転換する。この鉄ベータゼオライトは、次いで、式2の化学量論的なSCR反応にしたがって、未反応NH3と同等のものを用いて、このNO中間体をN2に転換させる。この機構により、式2の速度が式1の速度と同等か早い場合に、最高の選択性が得られるだろうことが容易にわかる。その結果、われわれは、触媒中のSCR成分の量が増加すると、NOxの生産の減少とN2選択性の増加が観察されると予測した(例5参照)。したがって、これらのデータは、選択的アンモニア酸化用の触媒を設計するに当たり二官能性の概念が価値あることを示している。

式2. 4NH3 + 6NO → 5N2 + 6H2
【0037】
実施例3:アンモニア酸化触媒のパルスランプ試験
パルスランプ試験は、過渡的な条件下でアンモニア酸化触媒の活性と選択性を測定するために開発された。これらの試験は、外径が0.75”で長さが2.5”で、セル密度が400セル/in2で、壁厚が6milであるの円柱状ガス流通性モノリス上に形成された触媒上で実施された。この試験は、三段階からなる。まず、触媒を、500ppmのアンモニアと10%の酸素、5%の水蒸気、5%の二酸化炭素を含み、残りが窒素であるガス流に、温度が150℃で、1800秒間暴露した。合計触媒体積あたりのGHSVは、100,000/hrであった。次いで、アンモニア供給を停止し、この触媒をさらに1200秒間平衡化させた。この後では、気相中にはNH3が観測されなかった。この時点で、温度を150℃から500℃へ3000秒間かけて直線的に上昇させた。この温度上昇の間に、気流の中にアンモニアを定期的に、パルス時間が5秒で停止時間が55秒間であるパルス状で0.07mmol添加した。停止期間中には、アンモニアを添加しなかった。図3は、ブランクのコージェライト基材に対するこの試験的アンモニア添加の状況を示すものであり、アンモニア吸脱着前平衡相の間のアンモニア濃度とパルスランプ相の間のアンモニア濃度とを示している。
【0038】
実施例4:典型的な二官能性アンモニア酸化触媒での瞬間的な排出挙動
図4は、坦持白金触媒での典型的な瞬間的排出挙動を示す。この触媒は、1g/in3のSBA−150アルミナとその上に坦持された30g/ft3のPt、および0.5g/in3のベータゼオライトとからなっていた。このデータによると、アンモニアが未消費の低温領域では、ゼオライト成分によるNH3の保持のため、NH3パルス幅のかなり大きな広がりが認められる。このような幅の増加は、ゼオライトを有さない触媒では認められなかった。200℃を超える温度に上げると、NH3が触媒上で消費されて排出口のNH3量が減少した。これに伴い、直ちに排気流中にN2Oが出現した。300℃まででは、N2Oが主な非N2排出物であったが、その後は、NOxが主体となった。この排出物パターンは、他の触媒機能を持たない坦持白金触媒に特徴的なものであった。したがって、触媒製剤に第二の触媒的機能を与える目的は、NOx及び/又はN2Oの生産を減少させることであった。
【0039】
実施例5:代表的な二官能性アンモニア酸化触媒での累積排出物データ
図4の瞬間的排出物データを積分すると、図5に示すアンモニア酸化の累積排出物組成図となる。触媒部は、実施例3のものと同じである。200℃〜250℃でのNH3累積量の変曲は、触媒作動開始領域を示し、250℃を超える温度でのNH3の平坦ラインは、この温度を超えるとアンモニアの排出がないことを示している。このデータは、明らかに、225℃でのN2Oの生産開始と300℃でのNOxの生産開始を示している。積分データを用いて、試験期間中のN2以外のN含有成分の正味排出量を決定した。正味窒素生産量は、NH3酸化の生成物がN2とNO、NO2、N2Oのみであると仮定して、物質収支の計算により決定した。各々の成分の触媒選択性は、被転換NH3の総量に対するその成分の総排気量の比率として計算した。
【0040】
実施例6:坦持白金と鉄ベータゼオライトとからなる二官能性のアンモニア酸化触媒の、鉄ベータ含量の関数としてのNOx選択性
図6は、触媒のNOx生産への正味選択性を、触媒組成物中の鉄ベータゼオライト含量の関数として表した図である。図6の作成に用いた触媒の組成を表1に示す。図6は、アルミナSBA−150、シリカ−アルミナシラロックス1.5、及びチタニアINE108上に坦持されたPtでのデータを示す。これらの試料すべてでの一般的な傾向は、鉄ベータゼオライトの含量が増加すると、NOx種の生産レベルが低下することである。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例7:坦持白金と鉄ベータゼオライトからなる二官能性アンモニア酸化触媒の、鉄ベータ含量を関数とするアンモニア変換率
二官能性のアンモニア酸化触媒の二つの機能が速度論的には独立していて、各々の成分の活性が相互に影響を受けないことを示すことが重要である。鉄ベータゼオライトはそれ自体、式1のアンモニア酸化に有効な触媒ではなく、正味のアンモニア変換率は、坦持される白金成分に支配されている。このことは、図7に明らかに示されており、この中で、アンモニア変換率、したがってアンモニア酸化の比率は、試料中の鉄ベータゼオライトの量により影響を受けていない。この鉄ベータ成分はアンモニア酸化に非常に有効というわけではなかったが、坦持されている白金成分上でのアンモニア酸化の開始を阻害するわけでもなかった。データはまた、鉄ベータ成分がN2O生産に影響を与えないことを示し、これは、鉄系の触媒が400℃未満ではN2Oと反応しないという観測と一致する。これは、坦持された白金成分と鉄ベータ成分とが速度論的に独立していることを強く示している。
【0043】
実施例8:二官能性のPt/Al23+CuCHA触媒の定常状態での評価
図1と図2に示す図は、SCR活性成分の量の増加により、あるいは根本的により活性なSCR成分を使用することにより、N2選択性を増加させることができることを示している。この後者の戦略を、0.57重量%のPtを坦持するAl23(0.5g/ft3坦持量)と銅交換チャバザイトゼオライト(CuCHA、2.5g/ft3負荷量)からなり合計触媒坦持量が3.0g/in3である触媒の製造でもって説明する。坦持Pt成分の総量は、実施例2の量(5g/ft3のPt)と同じであった。この触媒を750℃で5時間、大気下で焼成した。この触媒を定常状態のNH3酸化条件下で評価した。図8では、NH3変換率とN2選択性を白符号でプロットし、坦持Ptのみの比較試料のものを黒符号でプロットした。実施例2のように、CuCHA成分を持つ触媒も持たない触媒も、NH3変換率はほぼ同じであった。しかしながら、N2選択性はCuCHA含有触媒の方が、比較試料と比べると実質的に高く、またFeBEA含有試料よりも高かった。400℃では、この触媒は、100%のNH3をN2に転換し、実質的にNOx生成がなかったが、FeBEA含有触媒は、400℃で約30%のNOxを生成した。これは、CuCHAがFeBEAよりSCR反応の触媒活性が高いという別の観察とも一致する。
【0044】
本明細書中の「一つの実施様態」、「特定の実施様態」、「一つ以上の実施様態」または「ある実施様態」は、その実施様態に関して述べられたある特定の形体、構造、材料、または特徴が、本発明の少なくとも一つの実施様態に含まれていることを意味する。したがって、この明細書中のいろいろな場所で出現する、「一つ以上実施様態において」、「特定の実施様態において」、「ある実施様態においては」、または「ある実施様態において」は、必ずしも本発明の同一の実施様態に関するものではない。また、一つ以上の実施様態において、上記特定の形体、構造、材料、または特徴を、結合して用いることもできる。
【0045】
特定の実施様態をもとに本発明を説明してきたが、これらの実施様態は、単に本発明の原理と利用法を叙述するためのものであることを理解する必要がある。当業界の熟練者には明らかなように、本発明の精神及び範囲から外れることなく、本発明のいろいろな変更や変化が可能である。したがって、添付の請求項及びそれらに相当するものの範囲内にある限り、本発明の変更や変化も本発明に属するものである。
【0046】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年2月27日出願の米国特許出願60/891,835および2008年2月27日出願の米国特許出願12/038,459の35U.S.C.§119(e)による優先権を主張するもので、これらの出願全体を本出願に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルまたは希薄燃焼車両の排ガス流中で生産される排出物を処理する方法において、
車両のエンジン排気流を少なくとも一つのNOx低減触媒に通過させ、さらに該NOx低減触媒から排出されるアンモニア含有の可能性のある排気流を酸化触媒に通過させる方法であって、
前記酸化触媒は、白金、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属、耐火性金属酸化物、及びゼオライトを含み、約300℃未満の温度でアンモニア除去に効果を示し、水熱養生によりアンモニア酸化効率の大きな低下を示さないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記NOx低減触媒が、SCR触媒、LNT触媒、または該NOx低減触媒からのアンモニアの漏出をもたらす他のNOx分解触媒を含んでいる請求項1の方法。
【請求項3】
前記のNOx低減触媒組成物と酸化触媒組成物が、別個の基材上に配置されている請求項1の方法。
【請求項4】
前記NOx低減触媒および前記酸化触媒が、同一の基材上に配置されている請求項1の方法。
【請求項5】
白金が、前記耐火性金属酸化物上に分布されている請求項1の方法。
【請求項6】
白金が、前記ゼオライト上に分布されている請求項1の方法。
【請求項7】
白金が、合計触媒体積に対して約0.1g/ft3〜約10g/ft3の範囲の量で存在している請求項1の方法。
【請求項8】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が、前記ゼオライト上に分布されている請求項1の方法。
【請求項9】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が、ゼオライトに対して重量で0.1%〜5%の範囲の量で前記ゼオライト上に存在している請求項1の方法。
【請求項10】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が銅である請求項1の方法。
【請求項11】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が鉄である請求項1の方法。
【請求項12】
前記耐火性金属酸化物が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及びこれらの物理的な混合物または原子ドープ体等の化合物から選ばれる請求項1の方法。
【請求項13】
前記基材上の耐火性金属酸化物支持体の総量が、合計触媒体積に対して約0.01g/in3〜2.0g/in3の範囲である請求項1の方法。
【請求項14】
前記ゼオライトの結晶構造が、CHA、BEA、FAU、MOR、MFIのうちの一つである請求項1の方法。
【請求項15】
ゼオライト中のシリカのアルミナに対するモル比が約2〜約250である請求項1の方法。
【請求項16】
前記基材上のゼオライトの総負荷量が、合計触媒体積に対して約0.1g/in3〜4.0g/in3の範囲である請求項1の方法。
【請求項17】
白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と、耐火性金属酸化物とゼオライトとを含み、約300℃未満の温度でアンモニア除去に効果を示し、水熱養生によりアンモニア酸化効率に大きな低下を示さないことを特徴とするアンモニア酸化用の触媒。
【請求項18】
白金が、前記耐火性金属酸化物上に分布されている請求項17の触媒。
【請求項19】
白金が、前記ゼオライト上に分布されている請求項17の触媒。
【請求項20】
白金が、合計触媒体積に対して約0.1g/ft3〜約10g/ft3の範囲の量で存在している請求項17の触媒。
【請求項21】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が、前記ゼオライト上に分布されている請求項17の触媒。
【請求項22】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が、ゼオライトに対して重量で0.1%〜5%の範囲の量でゼオライト上に存在している請求項17の触媒。
【請求項23】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が銅である請求項17の触媒。
【請求項24】
前記周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである金属が鉄である請求項17の触媒。
【請求項25】
前記耐火性金属酸化物が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及びこれらの物理的な混合物または原子ドープ体等の化合物から選ばれる請求項17の触媒。
【請求項26】
前記基材上の耐火性金属酸化物支持体の総量が、合計触媒体積に対して約0.01g/in3〜2.0g/in3の範囲である請求項17の触媒。
【請求項27】
前記ゼオライトの結晶構造が、CHA、BEA、FAU、MOR、MFIのうちの一つである請求項17の触媒。
【請求項28】
ゼオライト中のシリカのアルミナに対するモル比が約2〜約250である請求項17の触媒。
【請求項29】
前記基材上のゼオライトの総負荷量が、合計触媒体積に対して約0.1g/in3〜4.0g/in3の範囲である請求項17の触媒。
【請求項30】
NOxを低減する効果を示す上流にある少なくとも一つの触媒と;白金と、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、またはIIB族元素の一つである第二の金属と耐火性金属酸化物とゼオライトとを含み、約300℃未満の温度でアンモニア除去に効果を示し、水熱養生によりアンモニア酸化効率に大きな低下を示さない、アンモニアの除去に効果を示す下流にある酸化触媒と:からなることを特徴とするNOx含有排気流の処理システム。
【請求項31】
前記NOx低減触媒が、SCR触媒、LNT触媒、または該NOx低減触媒からのアンモニアの漏出をもたらす他のNOx分解触媒を含んでいる請求項30のエンジン処理システム。
【請求項32】
前記のNOx低減触媒組成物と酸化触媒組成物が、別個の基材上に配置されている請求項30のエンジン処理システム。
【請求項33】
前記NOx低減触媒および前記酸化触媒が、同一の基材上に配置されている請求項30のエンジン処理システム。
【請求項34】
アンモニアまたはアンモニア前駆体を前記排気流中に定量供給するための計量供給システムを含む請求項30のエンジン処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−519039(P2010−519039A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551823(P2009−551823)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055148
【国際公開番号】WO2008/106523
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【氏名又は名称原語表記】BASF Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, NJ 07932, USA
【Fターム(参考)】