説明

選択的COX−2阻害物質としてのピリミジン誘導体

本発明は式(I)
【化1】


で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。式(I)の化合物はCOX-2の有効かつ選択的な阻害物質であり、各種の病態および疾患の痛み、熱、および炎症の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン誘導体、その調製方法、それを含む医薬組成物、および医療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)にはCOX-1とCOX-2の2種類のアイソフォームが存在することが最近明らかになった。COX-1は初めに明らかにされた恒常性酵素に対応するが、COX-2は、ミトゲン、エンドトキシン、ホルモン、サイトカイン、増殖因子などの数多くの作用因子によって迅速かつ容易に誘導される。COXの作用によりつくられるプロスタグランジンは、生理的役割と病理的役割の両方を演ずる。COX-1は主として消化管の完全性や腎臓の血液流の維持などの重要な生理的機能に関与すると考えられている。これとは対照的に、誘導性形態のCOX-2は主としてプロスタグランジンの病理的作用に関与すると考えられており、ここでは炎症性の刺激、ホルモン、増殖因子、サイトカインなどの作用因子に応答して迅速なCOXー2酵素の誘導が生じる。従ってCOX-2の選択的阻害物質は、COX-1の阻害が引き起こす副作用を生じることなく、抗炎症、抗発熱および鎮痛の特性をもつと考えられる。本発明者は、COX-2の有効かつ選択的阻害物質である新規な化合物の群を見出した。
【発明の開示】
【0003】
つまり本発明は、式(I)
【化1】

【0004】
で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩
[式中:
Xは、酸素またはNR2からなる群から選択され;
R1は、H、C1-6アルキル、1〜5個のフッ素原子で置換されたC1-2アルキル、C3-6アルケニル、C3-6アルキニル、C3-10シクロアルキルC0-6アルキル、C4-12橋かけシクロアルキル、A(CR5R6)nおよびB(CR5R6)nからなる群から選択され;
R2は、HおよびC1-6アルキルからなる群から選択され;
R3は、1〜5個のフッ素原子で置換されたC1-2アルキルであり;
R4は、C1-6アルキル、NH2およびR8CONHからなる群から選択され;
R5およびR6は、HまたはC1-6アルキルから独立に選択され;
Aは、不置換5員または6員へテロアリールまたは不置換6員アリールあるいは1個以上のR7で置換された5員または6員ヘテロアリールまたは6員アリールであり;
R7は、ハロゲン、C1-6アルキル、1個以上のフッ素原子で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、1個以上のFで置換されたC1-6アルコキシ、NH2SO2、およびC1-6アルキルSO2からなる群から選択され;
Bは、
【化2】

【0005】
からなる群から選択され;
R8は、H、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルOC1-6アルキル、フェニル、HO2CC1-6アルキル、C1-6アルキルOCOC1-6アルキル、C1-6アルキルOCO、H2NC1-6アルキル、C1-6アルキルOCONHC1-6アルキルおよびC1-6アルキルCONHC1-6アルキルからなる群から選択され;
nは、0〜4である]
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表わすのに用いられる。
【0007】
基、または基の一部分としての用語「アルキル」は直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基またはt-ブチル基を意味する。
【0008】
用語「5員ヘテロアリール」は以下:
【化3】

【0009】
から選択されるヘテロアリールを意味する。
【0010】
用語「6員へテロアリール」は以下:
【化4】

【0011】
から選択されるヘテロアリールを意味する。
【0012】
用語「6員アリール」は:
【化5】

【0013】
を意味する。
【0014】
本発明には式(I)の化合物およびその医薬的に許容される誘導体の全ての異性体が包含されることを理解すべきで、全ての幾何異性体、互変異性体および光学異性体ならびにこれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)が含まれる。特にBに対称面がない場合、式(I)の化合物には、星印*で式中に示されているキラル中心がある。さらに、式(I)中のR5およびR6が異なる場合は、対応する化合物は、キラル中心と定義される不斉炭素原子により少なくとも1個のキラル中心を含むこと、またそのような化合物は光学異性体の対(すなわち鏡像異性体)の形態で存在することは、当業者なら理解すると思われる。
【0015】
本発明の化合物が、置換基としてアミノ基などの塩基性官能基を含む場合があることは理解されるところである。そのような塩基性官能基を用いて酸付加塩、特に医薬的に許容される塩を生成させることができる。医薬的に許容される塩としては、Berge, Bighley, and Monkhouse, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されているものが挙げられる。そのような塩は無機酸および有機酸から生成させることができる。その代表的な例としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、ビスメチレンサルチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サルチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、タウロコール酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸、および硝酸が挙げられる。
【0016】
本発明の化合物が置換基としてカルボキシ基を含む場合があることも理解されるところである。そのようなカルボキシ基を用いて塩、特に医薬的に許容される塩を生成させることができる。医薬的に許容される塩としては、Berge, Bighley, and Monkhouse, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されているものが挙げられる。好ましい塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0017】
本発明の1つの態様ではXはNR2である。
【0018】
本発明のもう1つの態様ではR1はC5-7シクロアルキルC0-2アルキル、C1-6アルキルまたはA(CR5R6)nである。
【0019】
本発明のもう1つの態様ではR2はHまたはメチルである。
【0020】
本発明のもう1つの態様ではR3はCHF2、CH2FまたはCF3である。もう1つの態様ではR3はCF3である。
【0021】
本発明のもう1つの態様ではR4はC1-6アルキル、例えばC1-3アルキル(例えばメチル)である。
【0022】
本発明のもう1つの態様ではR5およびR6は、Hまたはメチルから独立に選択される。もう1つの態様ではR5およびR6のいずれもがHである。
【0023】
本発明のもう1つの態様ではAは、
【化6】

【0024】
からなる群から選択され、かつAは不置換または1個または2個のR7で置換されている。
【0025】
本発明のもう1つの態様ではR7は、ハロゲン(例えばF)、C1-3アルキル(例えばメチル)、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1-3アルキル(例えばCF3)、およびC1-3アルコキシ(例えばメトキシ)からなる群から選択される。
【0026】
本発明のもう1つの態様ではR8は、C1-6アルキル(例えばエチル)、フェニルおよびアミノメチルからなる群から選択される。
【0027】
本発明のもう1つの態様ではnは0〜2(例えば1)である。
【0028】
本発明のもう1つの態様では、XはNR2であり;R1はA(CR5R6)nであり;R2はHおよびC1-6アルキルからなる群から選択され;R3はCF3であり;R4は、C1-6アルキル、NH2およびR8CONHからなる群から選択され;R5およびR6はHまたはC1-6アルキルから独立に選択され;Aは、C5-7シクロアルキルまたは不置換5員または6員へテロアリールまたは不置換6員アリールあるいは1個以上のR7で置換された5員または6員ヘテロアリールまたは6員アリールであり;R7は、ハロゲン、C1-6アルキル、1個以上のフッ素原子で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、1個以上のFで置換されたC1-6アルコキシ、NH2SO2、およびC1-6アルキルSO2からなる群から選択され;R8は、H、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルOC1-6アルキル、フェニル、HO2CC1-6アルキル、C1-6アルキルOCOC1-6アルキル、C1-6アルキルOCO、H2NC1-6アルキル、C1-6アルキルOCONHC1-6アルキルおよびC1-6アルキルCONHC1-6アルキルからなる群から選択され;nは0〜4である。
【0029】
本発明には、上記した本発明の特定の態様の全ての組み合せも包含されることは理解すべきである。
【0030】
本発明のさらなる態様において、式(IA)
【化7】

【0031】
で表わされる化合物およびその医薬的に許容される塩が提供される。上記式中:
R2は、HおよびC1-6アルキルからなる群から選択され;
R4は、C1-6アルキル、NH2およびR8CONHからなる群から選択され;
R5およびR6は、HまたはC1-6アルキルから独立に選択され;
Aは、C5-7シクロアルキルまたは不置換5員または6員へテロアリールまたは不置換6員アリールあるいは1個以上のR7で置換された5員または6員ヘテロアリールまたは6員アリールであり;
R7は、ハロゲン、C1-6アルキル、1個以上のフッ素原子で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、1個以上のFで置換されたC1-6アルコキシ、NH2SO2、およびC1-6アルキルSO2からなる群から選択され;
R8は、H、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルOC1-6アルキル、フェニル、HO2CC1-6アルキル、C1-6アルキルOCOC1-6アルキル、C1-6アルキルOCO、H2NC1-6アルキル、C1-6アルキルOCONHC1-6アルキルおよびC1-6アルキルCONHC1-6アルキルからなる群から選択され;
nは0〜4である。
【0032】
式(IA)の化合物に関連する本発明の1つの態様では、R2はHまたはメチルである。
【0033】
本発明のもう1つの態様ではR4はC1-3アルキル(例えばメチル)である。
【0034】
本発明のもう1つの態様ではR5およびR6は、Hまたはメチルから独立に選択される。もう1つの態様ではR5およびR6はいずれもがHである。
【0035】
本発明のもう1つの態様ではAは、C5-7シクロアルキルまたは
【化8】

【0036】
からなる群から選択され、かつAは不置換または1個または2個のR7で置換されている。
【0037】
本発明のもう1つの態様ではR7は、ハロゲン(例えばF)、C1-3アルキル(例えばメチル)、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1-3アルキル(例えばCF3)、およびC1-3アルコキシ(例えばメトキシ)からなる群から選択される。
【0038】
本発明のもう1つの態様ではR8は、C1-6アルキル(例えばエチル)、フェニルおよびアミノメチルからなる群から選択される。
【0039】
本発明のもう1つの態様ではnは0〜2(例えば1)である。
【0040】
本発明には、上記した本発明の特定の態様の全ての組み合せも包含されることは理解すべきである。
【0041】
好ましい態様において本発明は以下の化合物:
[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-メチル-(6-メチル-ピリジン-2-イルメチル)-アミン、
ベンジル-[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-アミン、
シクロヘキシル-[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-アミン、
を提供する。
【0042】
本発明の化合物、特に式(I)の化合物は医薬組成物で用いることが意図されているので、それらはそれぞれ実質的に純粋な形態、例えば少なくとも50%純粋、より好適には少なくとも75%純粋、好ましくは少なくとも95%純粋の形態で提供される(%は重量/重量の基準に基づく)。式(I)の化合物の純粋でない調製物は、医薬組成物で用いられるより純粋な形態を調製するのに用いることができる。本発明の中間体化合物の純度についてはそれより重要度は低いが、実質的に純粋な形態が式(I)の化合物に関しては好ましいことは容易に理解されるところである。本発明の化合物は可能ならいつも結晶形態で利用可能であることが好ましい。
【0043】
本発明の化合物を結晶化させると、あるいは有機溶媒から再結晶させると、結晶化の溶媒が結晶生成物中に存在する場合がある。本発明ではそのような溶媒和物もその範囲内に含まれる。同様に本発明の化合物を水を含有する溶媒から結晶化または再結晶化させる場合がある。そのような場合、水和物が形成されることがある。本発明ではその範囲内に化学量論水和物ならびに凍結乾燥などの処理でもたらされ得る可変量の水を含有する化合物も包含される。さらに、異なる結晶化条件により異なる多形体の結晶生成物の生成が起る場合がある。本発明ではその範囲内に式(I)の化合物の全ての多形体が包含される。
【0044】
本発明の化合物はCOX-2の有効かつ選択的な阻害物質である。この活性は、これらがCOX-1よりもCOX-2を選択的に阻害することができることにより示される。
【0045】
このCOX-2の選択的阻害活性を鑑みると、本発明の化合物を、ヒトおよび動物の医療、特にCOX-2が介在する各種の病態および疾患の痛み(慢性と急性の両方)、熱、および炎症の治療に用いるのは興味あるところである。そのような病態および疾患は当技術分野では周知であり、リウマチ熱;風邪などのインフルエンザまたは他のウイルスの感染が関与する症状;腰や首の痛み;頭痛;歯痛;捻挫および挫傷;筋炎;交感神経依存性痛;滑膜炎;リューマチ性関節炎も含めた関節炎;変形性関節炎も含めた退行性関節疾患;痛風および強直性脊椎炎;腱炎;滑液包炎;乾癬、湿疹、火傷および皮膚炎などの皮膚関連病態;スポーツによる傷および外科処置や歯科処置などから起る傷などの損傷が挙げられる。
【0046】
本発明の化合物は神経因性疼痛の治療にも有用である。神経因性疼痛症候群は神経損傷の後起きその痛みは元の損傷が治癒した後も何ヶ月も何年も続く。神経性損傷は末梢神経、脊髄神経根、脊髄、あるいは脳の特定領域で起こり得る。神経因性疼痛症候群はそれを引き起こした疾病または事象により伝統的に分類される。神経因性疼痛症候群としては:糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;慢性腰痛;多発性硬化症疼痛;線維筋肉痛;HIV関連神経因性疼痛;ヘルペス後神経痛や三叉神経痛などの神経痛;および肉体的外傷、歯根切除、癌、毒素、あるいは慢性炎症状態の結果として起る痛みが挙げられる。これらの病態は治療するのが難しく、いくつかの薬が知られているが限られた薬効しかなく、完全なる痛みの制御は達成されることはほとんどない。神経因性疼痛の症状は信じられないくらい不均質性で、多くの場合自然発生的なうずくようなまたちくちく刺すような痛み、あるいは持続する燃えるような痛みであると報告されている。加えて、「ちくちくする痛み」(感覚異常症および知覚不全)、触覚に対する高感受性(触覚過敏症)、無害性刺激の後に起る痛みの感覚(動的、静的、または熱的な異痛症)、有害性刺激に対する高感受性(熱的、冷的、機械的な痛覚過敏症)、刺激を取り除いた後の継続する痛みの感覚(痛覚過敏)、あるいは選択的感覚経路がないことまたは不足していること(感覚鈍麻)などの通常は痛くない感覚が関与する痛みがある。
【0047】
本発明の化合物はCOX-2が介在する他の病態の治療にも有用である。
【0048】
例えば、本発明の化合物は細胞および新生物のトランスフォメーションならびに転移性腫瘍の増殖を阻害するので、一部の癌性疾患、例えば結腸癌や前立腺癌の治療に有用である。本発明の化合物はまた結腸直腸の腺腫様ポリープの数を減らすのに有用であり、その結果結腸癌になるリスクが減る。本発明の化合物はまたHER-2/neuの過剰発現が関与する癌、特に乳癌の治療にも有用である。
【0049】
本発明の化合物はまた神経フリーラジカル(つまり酸化ストレス)の生成を阻害することで神経損傷を防ぐので、神経発作;癲癇;および癲癇性発作(大発作、小発作、ミオクローヌス癲癇、および部分発作を含む)の治療に有用である。
【0050】
本発明の化合物はまたプロスタノイド誘発平滑筋収縮を阻害するので、月経困難症および早期分娩の治療に有用である。
【0051】
本発明の化合物はまた炎症性肝臓疾患、例えば慢性ウイルス性B型肝炎、慢性ウイルス性C型肝炎、アルコール性肝臓傷害、一次性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、および肝臓移植拒絶反応などの肝臓疾患の治療に有用である。
【0052】
本発明の化合物は炎症性の病態を阻害するので、喘息、アレルギー性鼻炎、および呼吸窮迫症候群;炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎などの消化管疾患;および血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強膜腫、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、類肉腫症、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、結膜炎、および心筋虚血症の治療に有用である。
【0053】
本発明の化合物はまた網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、および眼組織に対する急性損傷の治療に有用である。
【0054】
本発明の化合物は、痴呆特に退行性痴呆(老人性痴呆、アルツハイマー病、ピック病、ハンチングトン舞踏病、パーキンソン病、およびクロイツフェルト・ヤコブ病が挙げられる)、および血管性痴呆(多発性脳梗塞性痴呆が挙げられる)、ならびに頭蓋内空間梗塞性の病変、損傷、感染とその関連する病態(HIV感染が挙げられる)、代謝、毒素、酸素欠乏、およびビタミン欠乏が関与する痴呆などの認知障害;および加齢が関与する中程度の認知障害特に年齢関与記憶障害;の治療に有用である。
【0055】
本発明の化合物はまた胃運動促進剤で改善される障害の治療にも有用である。胃運動促進剤により改善される障害としては、腸閉塞例えば術後腸閉塞や敗血症腸閉塞;胃食道逆流障害(GORD、または別名GERD);胃不全麻痺例えば糖尿病性胃不全麻痺;およびその他の腸機能障害例えば非潰瘍性消化不良(NUD)や非心臓性胸痛(NCCP)が挙げられる。
【0056】
本発明のさらなる態様により、ヒトまたは動物の医療で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0057】
本発明のさらなる態様により、COX-2が介在する病態を病むヒトまたは動物被験体の治療方法が提供され、その方法はそのような被験体に式(I)の化合物の有効量を投与することを含んでなる。
【0058】
本発明のさらなる態様により、炎症性障害を病むヒトまたは動物被験体の治療方法が提供され、その方法はそのような被験体に式(I)の化合物の有効量を投与することを含んでなる。
【0059】
本発明のさらなる態様により、COX-2が介在する病態の治療用治療薬の製造のための式(I)の化合物の使用が提供される。
【0060】
本発明のもう1つの態様により、炎症性障害の治療用治療薬の製造のための式(I)の化合物の使用が提供される。
【0061】
治療という用語には、特に明白に断らない限り、確定された症状の治療および予防的治療の両方が含まれることを理解されたい。
【0062】
本発明の化合物は有利にも1種以上の他の治療薬と組み合せて用いることができることは理解されると思われる。付加治療用の好適な薬剤の例としては、5HT1作動薬例えばtriptan(例えばsumatriptanまたはnaratriptan);アデノシンA1作動薬;EPリガンド;NMDAモジュレーター例えばグリシン拮抗薬;ナトリウムチャネル遮断薬(例えばlamotrigine);物質P拮抗薬(例えばNK1拮抗薬);カンナビノイド;アセトアミノフェンまたはフェナセチン;5-リポオキシゲナーゼ阻害薬;ロイコトリエン受容体拮抗薬;DMARD(例えばメトトレキセート);gabapentinとその関連化合物;三環系抗鬱薬(例えばamitryptilline);神経安定化型抗痙攣薬;モノアミン作用性取り込み阻害薬(例えばvenlafaxine);マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬;一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害薬例えばiNOS阻害薬またはnNOS阻害薬;腫瘍壊死因子α放出もしくは作用阻害薬;抗体治療薬例えばモノクローナル抗体治療薬;抗ウイルス薬例えばヌクレオシド阻害薬(例えばlamivudine)または免疫系モジュレーター(例えばインターフェロン);オピオイド鎮痛薬;局所麻酔薬;カフェインなどの刺激物質;H2-拮抗薬(例えばranitidine);プロトンポンプ阻害薬(例えばomeprazole);制酸薬(例えば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム;整腸剤(例えばsimethicone);鬱血除去薬(例えばphenylephrine、フェニルプロパノールアミン、pseudoephedrine、oxymetazoline、epinephrine、naphazoline、xylometazoline、propylhexedrine、またはlevo-desoxyephedrine);鎮咳薬(例えばcodeine、hydrocodone、carmiphen、carbetapentane、またはdextramethorphan);利尿薬;鎮静性または非鎮静性抗ヒスタミン薬;が挙げられる。本発明には、1種以上の他の治療薬と組み合せた式(I)の化合物の使用も包含されることを理解されたい。
【0063】
式(I)の化合物は医薬組成物の形態で簡便に投与される。つまり、本発明のもう1つの態様において、ヒトまたは動物の医療における使用に適合する式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物が提供される。そのような組成物は、1種以上の生理学的に許容される担体または賦形剤と混ぜて従来からのやり方で使用するのに都合良く提供することができる。
【0064】
式(I)の化合物はどのような適したやり方で投与するのにも製剤化することができる。例えば、局所投与用に、または吸入による投与用に、あるいはより好ましくは経口投与、経皮投与、または非経口投与用に製剤化することができる。医薬組成物は、式(I)の化合物の制御放出を行うことができるような形態にあってもよい。
【0065】
経口投与には、本医薬組成物は、許容される賦形剤と混ぜて在来の方法で調製された、例えばタブレット(舌下タブレットを含む)、カプセル、粉末、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとることができる。
【0066】
経皮投与には、本医薬組成物は経皮パッチ例えば経皮イオン導入パッチの形態で提供することができる。
【0067】
非経口投与には、本医薬組成物は注射または連続輸液として投与することができる(例えば経静脈的、経脈管的、皮下的に)。本組成物は、懸濁液、油性または水性媒体中の溶液または乳液のような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用調剤を含有していてもよい。注射による投与用には、好ましくはさらに保存剤を加えて、単位用量の供給形体、あるいは複数用量の供給形体をとることができる。
【0068】
別の形態として、非経口投与には、本作用成分を粉末形態にして、適切な媒体でもって再構成することもできる。
【0069】
本発明の化合物はデポー製剤として製剤化することもできる。そのような長期間作用性製剤は埋め込み(例えば皮下的または筋肉内的に)あるいは筋肉内注射により投与することができる。つまり、例えば、本発明の化合物は、適切な高分子もしくは疎水性の材料(例えば許容される油中の乳液として)またはイオン交換樹脂と混ぜて製剤化することができるし、あるいは少しずつ溶ける誘導体、例えば少しずつ溶ける塩として製剤化することもできる。
【0070】
上記で述べたように、本発明の化合物は他の治療薬との組み合せで用いることもできる。つまり本発明はさらなる態様において、さらなる治療薬と一緒に式(I)の化合物を含む組み合せが提供される。
【0071】
上記で言及した組み合せは、医薬製剤の形態での使用に都合良く提供することができ、従って医薬的に許容される担体もしくは賦形剤が混ぜられた上記で定義した組み合せを含んでなる医薬製剤は、本発明のさらなる態様をなす。そのような組み合せの個々の成分は、別々のまたは一緒の医薬製剤で順次的または同時的に投与することができる。
【0072】
式(I)の化合物を、同じ疾患状態に対して活性である第2の治療薬と組み合せて用いる場合、各化合物の用量は、その化合物が単独で使用された場合の用量とは異なる場合がある。適切な用量は、当業者なら容易に解かると思われる。
【0073】
ヒト治療用の、式(I)の化合物の推奨される1日当たりの用量は0.01mg/kg〜500mg/kg、例えば0.05mg/kg〜100mg/kg、さらには0.1mg/kg〜50mg/kgであり、1〜4個の用量で都合良く投与することができる。採用される正確な用量は、患者の年齢や健康状態、投与の経路により決まるものである。従って、例えば、1日当たりの用量が0.25mg/kg〜10mg/kgは、全身投与に適切であると考えられる。
【0074】
式(I)の化合物は、同様の構造の化合物を調製するのに当技術分野で知られている方法により調製することができる。
【0075】
式(I)の化合物は:
式(II) R1XHで表わされる化合物またはその保護誘導体と、式(III)
【化9】

【0076】
で表わされる化合物を反応させること;その後必要な場合は式(I)の化合物を別の式(I)の化合物に相互変換させること;および/または式(I)の化合物の保護誘導体を脱保護させること;を含んでなる方法により調製することができる。
【0077】
式(IA)の化合物は:
式(IIA) HNR2(CR5R6)nAで表わされるアミンまたはその保護誘導体と、R3がCF3である式(III)
【化10】

【0078】
で表わされる化合物を反応させること;その後必要な場合は式(I)の化合物を別の式(I)の化合物に相互変換させること;および/または式(I)の化合物の保護誘導体を脱保護させること;を含んでなる方法により調製することができる。
【0079】
式(I)または(IA)の化合物の全体的な合成を以下の図式 1に示す。図式中、X、R1およびR3はそうでないと断らない限り上記式(I)において定義したとおりであり、R4はC1-6アルキルであり;THFはテトラヒドロフランであり;MTBEはメチルt-ブチルエーテルであり;アルキルは直鎖または分岐鎖アルキル基例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチルまたはt-ブチル基である。
【0080】
図式 1を参照するに、X=Oである場合、式(I)の化合物は、式(III)の化合物を水素化ナトリウムの存在下に式(II)のアルコールで処理することにより簡便に調製することができる。この反応は、THFのような溶媒中、周囲温度と還流温度の間にある温度で都合よく行われる。
【0081】
図式 1を参照するに、X=NR2である場合、式(I)の化合物は、式(III)の化合物を式(II)のアミンで処理することにより調製することができる。これは、溶媒例えばニトリル(例えばメチルニトリル)中で、高められた温度(例えば約50℃〜還流温度)で都合良く行われる。溶媒の代わりにアミンの過剰量を用いることもできる。
【0082】
別のやり方として、式(II)のアミンによる式(III)の化合物の処理は、溶媒例えば第三級アミン(例えばNMP)中で、高められた温度(例えば120℃〜250℃)で、マイクロ波照射有りまたは無しで都合良く行われる。
【0083】
図式 1
【化11】

【0084】
簡便には、図式 1に示されている酸化は、モノ過硫酸塩化合物例えばペルオキシモノ硫酸カリウム(Oxone[商標]として知られている)を用いて行われ、この反応は溶媒例えばアルコール水溶液(例えばメタノール水溶液)中で、-78℃〜周囲温度の間の温度で行われる。
【0085】
別のやり方として、図式 1に示されている酸化は、触媒のタングステン酸ナトリウム二水和物の存在下に過酸化水素を用いて行うことができる。この反応は、溶媒例えば酢酸中で、周囲温度と還流温度の間の温度(例えば50℃)で行うことができる。
【0086】
図式 1を参照するに、式(VI)のジオンを環化して対応する式(IV)のピリミジンを得る反応は、チオロニウム塩例えば2-メチル-2-チオプソイド尿素硫酸塩を用いて、還流温度下で簡便に行われる。
【0087】
式(VI)の化合物は、式(VII)のアセトフェノンから、水素化ナトリウムの存在下にトリフルオロ酢酸エチル(Aldrich)で処理することにより容易に調製することができる。この反応は適切な溶媒例えばテトラヒドロフラン中で、0℃〜還流温度の間の温度で簡便に行われる。
【0088】
式(VIII)の化合物をアシル化して式(VII)の化合物を得る反応は、トリエチルアミンおよび触媒量のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)の存在下に式(IX)の化合物で処理することにより簡便に行うことができる。この反応は、溶媒例えば1,4-ジオキサン[1,4-ジオキサン]中周囲温度と還流温度の間の温度で好適に行われる。
【0089】
別のやり方として、式(VIII)の化合物をアシル化して式(VII)の化合物を得る反応は、(VIII)を、低温例えば-78℃のTHF中の過剰量のt-ブチルリチウムで処理し、次いで適切なアシル化剤例えばジメチルアセトアミドまたはN-メトキシ-N-メチルアセトアミドを加えることにより行うことができる。
【0090】
式VIIIの化合物の調製は、式Xの化合物を低温例えば-78℃のブチルリチウムで処理し、次いで適切なジスルフィドを加えることにより簡便に調製することができる。この反応は、適切な溶媒例えばジエチルエーテル中、-78℃〜周囲温度の間の温度で都合良く行われる。
【0091】
式(I)の化合物またはその中間体を調製するための図式 1に記載された反応は、置換基によっては適用できないこともあることは当業者には理解されると思われる。
【0092】
さらに、所望の式(I)の化合物を得るのに図式 1に記載された変換反応を記載されているのとは違った順序で行うこと、あるいは変換反応の1つ以上を改変することが必要になる場合があることは当業者なら理解すると思われる。
【0093】
図式 1の1つの変形体では、R4がC1-6アルキルまたはNH2である式(III)の化合物は、式(IV)A:
【化12】

【0094】
で表わされる化合物を上記した酸化条件下で酸化することにより調製することができる。式(IV)Aの化合物は、図式 1の一般的な手順に従い式(VI),(VII)および(VIII)のスルフィド化合物の代りに対応するスルホニル誘導体を用いることで調製することができる。この例では式(VIII)の化合物のスルホニル誘導体は、上記したような標準的な手法を用いて(VIII)の酸化を経て調製することができる。
【0095】
式(I)の化合物は、式(I)の他の化合物を前駆体として利用して、相互変換により調整することができることは当業者なら理解すると思われる。アルキル化などの好適な相互変換は当業者には周知であり、多くの標準的な有機化学の教科書、例えば'Advanced Organic Chemistry' by Jerry March, fourth edition(Wiley, 1992)に記載されている[参照により本明細書に組み込む]。例えば、R1が、C1-6アルキル、1〜5個のフッ素原子で置換されたC1-2アルキル、C3-6アルケニル、C3-6アルキニル、C3-10シクロアルキルC0-6アルキル、C4-12橋かけシクロアルキル、A(CR5R6)n、またはB(CR5R6)n[但しnはゼロではない]である式(I)の化合物は、R1がHである対応する式(I)の化合物をアルキル化することにより調製することができる。
【0096】
R4がNHCOR6である式(I)の化合物を得るための、R4がNH2である式(I)の化合物のアシル化は通常の方法、例えば'Advanced Organic Chemistry', pp 417-424[参照により本明細書に組み込む]に記載されているもののような通常のアシル化剤を用いることで行うことができる。
【0097】
当業者なら理解するように、式(I)の化合物の合成の段階において分子内の反応性基の1つまたは複数を保護して望ましくない副反応を防ぐことが必要あるいは望ましい場合がある。式(I)の化合物の調製で使用される保護基は通常のやり方で使用することができる。例えば'Protective Groups in Organic Synthesis' by Theodora W Green and Peter G M Wuts, second edition,(John Wiley and Sons, 1991)に記載されているもの[参照により本明細書に組み込む]を参照されたい。ここにはそのような基の除去方法も記載されている。
【0098】
式(II)のアミンは既知の化合物であるか、または文献にある方法、例えば'Comprehensive Organic Transformations: a guide to functional group preparations' by Richard Larock (VCH, 1989)に記載されている方法[参照により本明細書に組み込む]により調製することができる。
【0099】
式(V)のチオロニウム塩は知られている化合物であるか、または文献にある方法、例えばA H Owens et al, Eur J Med Chem, 1988, 23(3), 295-300に記載されている方法[参照により本明細書に組み込む]により調製することができる。
【0100】
化合物(IX)および(X)は市販されている。
【0101】
上記した中間体のあるものは新規な化合物であり、本明細書における全ての新規な中間体は本発明のさらなる態様を形成することは理解すべきである。式(III)および(IV)の化合物は重要な中間体であり、本発明の特定の態様をなす。
【0102】
本発明の化合物の溶媒和物(例えば水和物)は、上記した工程段階の1つの後処理操作の際に形成させることができる。
【実施例】
【0103】
以下の中間体実施例および化合物実施例は本発明を説明するものであるが、決して本発明を限定するものではない。全ての温度の単位は℃である。フラッシュカラムクロマトグラフィーはMerck 9385シリカを用いて行った。固体相抽出[Solid Phase Extraction](SPE)クロマトグラフィーは15mmHgの真空下でVarian Mega Bond Elut(Si)カートリッジ(Anachem)を用いて行った。薄層クロマトグラフィー(Tlc)はシリカプレート上で行った。既に定義したものに加えて、次の略記号:Me、メチル;Ac、アシル;DMSO、ジメチルスルホキシド;TFA、トリフルオロ酢酸;DME、ジメトキシエタン;DCM、ジクロロメタン;NMP、N-メチルピロリドン;およびMTBE、メチルt-ブチルエーテルを用いる。
【0104】
中間体 1
2-ブロモ5-メチルスルファニルピリジン
【化13】

【0105】
無水ジエチルエーテル(240mL)中の2,5-ジブロモピリジン(10g、0.042モル)の撹拌懸濁液を窒素下で-78℃まで冷やし、次いでn-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、0.044モル、27.5mL)を滴下で加えた。この反応を-78℃で4時間撹拌し、次いでメチルジスルフィド(0.044モル、3.91mL)を滴下で加えた。反応を22℃まで昇温させ、さらに18時間撹拌した。反応を水(100mL)でクエンチし、水相と有機相に分けた。水層をジエチルエーテルで抽出した(x3)。抽出液を上記有機層と合わせ、ブラインで洗い、乾燥(MgSO4)させて、溶媒を除去した。粗生成物を-22℃においてジエチルエーテルから結晶化させることで精製して標題化合物を白色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3) - δ2.50 (s, 3H), 7.38(dd, 1H), 7.42(dd, 1H), 8.23(d, 1H)。
【0106】
中間体 2
1-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-エタノン
【化14】

【0107】
無水1,4-ジオキサン(100mL)中の2-ブロモ5-メチルスルファニルピリジン(3.05g、14.9ミリモル)、トリエチルアミン(2.10mL、14.9ミリモル)および(1-エトキシビニル)トリブチル錫(10.1mL、29.8ミリモル)の撹拌溶液にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(5モル%、0.524g)を加え、反応を窒素下還流で18時間加熱した。冷やした後、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を加え、反応を窒素下でさらに18時間加熱した。反応を冷まし、反応混合物を飽和フッ化カリウム水溶液(250mL)とジエチルエーテル(250mL)の間に分配させた。エーテル層を分離し、2N塩酸(250mL)を加えた。酸の層を分離し、炭酸ナトリウムを溶液がpH 8となるまで少しずつ加えた。この溶液をジクロロメタン(3 x 200mL)で抽出した。この有機抽出液を合わせ、その溶媒を除去した。残留物をシクロヘキサン(60mL)とアセトニトリル(60mL)の間に分けた。アセトニトリルの層を分離し、溶媒を除去して茶色の固形物を得た。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル、95:5)で精製して標題化合物を白色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3) - δ2.56 (s, 3H), 2.69 (s, 3H), 7.60(dd, 1H), 7.96(d, 1H), 8.49(d, 1H)。
【0108】
中間体 3
4,4,4-トリフルオロ-1-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-ブタン-1,3-ジオン
【化15】

【0109】
無水テトラヒドロフラン(20mL)中の水素化ナトリウム(0.253g、6.31ミリモル)の撹拌溶液を窒素下で0℃まで冷やし、次いで無水テトラヒドロフラン(20mL)中の1-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-エタノン(0.880g、5.26ミリモル)を加えた。トリフルオロ酢酸エチル(0.751mL、6.31ミリモル)を滴下で加え、反応温度を22℃まで昇温させ、次いで還流まで加熱し、窒素下で17時間撹拌した。溶媒を除去し、その残留物を飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)とジクロロメタン(10mL)の間に分けた。水層を分離し、DCMで抽出した(x3)。有機層を合わせ、乾燥させ、溶媒を除去して標題化合物を得た。MS m/z 264(M+1)。
【0110】
中間体 4
2-メチルスルファニル-4-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン
【化16】

【0111】
4,4,4-トリフルオロ-1-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-ブタン-1,3-ジオン(0.600g、2.28ミリモル)の氷酢酸(6mL)溶液に2-メチル2-チオプソイド尿素硫酸塩(0.761g、2.74ミリモル)および酢酸ナトリウム(0.224g、2.74ミリモル)を加えた。反応を窒素下で120℃に21時間加熱した。反応を冷ました後水(10mL)を加えると固形物の沈殿が生じた。この反応混合物を水(10mL)の上に注ぎ、15分間22℃で撹拌した。この水溶液から沈殿物を濾過し、水で洗い、真空中で乾燥させて標題化合物を灰色の固形物として得た。MS m/z 317(M+1)。
【0112】
中間体 5
2-メタンスルホニル-4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン
【化17】

【0113】
2-メチルスルファニル-4-(5-メチルスルファニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン(0.617g、1.94ミリモル)のメタノール(50mL)撹拌溶液にoxone(4.89g、7.95ミリモル)の水(50mL)溶液を加えた。この懸濁液を22℃で19時間撹拌した。メタノールを真空中で除去して、水性懸濁液を酢酸エチル(3 x 50mL)で抽出した。この有機抽出液を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、その溶媒を真空中で除去して標題化合物を白色の固形物として得た。MS m/z 382(M+1)。
【0114】
実施例 1
ベンジル-[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-メチル-ピリミジン-2-イル-アミン
【化18】

【0115】
2-メタンスルホニル-4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン(30mg、0.0787ミリモル)の無水N-メチルピロリドン(1.5mL)溶液にベンジルアミン(0.157ミリモル、17μL)を加えた。反応を22℃で17時間撹拌した。溶媒を反応から除去(Genevac真空遠心分離器)し、この残留物を1gのシリカ固体相抽出カートリッジ(勾配溶離 - ジクロロメタン:シクロヘキサン1:1→ジクロロメタン)を用いて精製して標題化合物をクリーム色の固形物として得た。LC-MS保持時間 : 3.68分。MS m/z 409(M+1)。
【0116】
実施例 2〜13
以下の表 1に示されている実施例 2〜13を、実施例1に対して記載されたやり方で調製した。
【0117】
表 1
【化19】

【表1】

【0118】
生物学的データ
ミクロソームアッセイ
ミクロソームh-COX2に対する阻害活性を、バキュロウイルス感染SF9細胞からのミクロソーム調製物に対して評価を行った。ミクロソーム調製物のアリコートを氷上でゆっくりと解凍し、それをアッセイ緩衝液[滅菌水、アルゴンで脱気、100mM HEPES(pH 7.4)、10mM EDTA(pH7.4)、1mMフェノール、1mM還元グルタチオン、20mg/mLゼラチン、および0.001mM Hematinを含有]の中に入れて1/40,000の希釈液を調製した。希釈したらこの酵素溶液を次に5秒間超音波処理(Branson超音波処理器、セッティングは4、1cmのチップ)して確実に均質な懸濁液とした。次に酵素溶液155μLを、試験化合物(所要試験濃度の40x)5μLか、対照用のDMSO 5μLが入った96ウェル微量滴定プレートの各ウェルに加えた。この後各プレートをかき混ぜ、室温で1時間インキュベートした。インキュベート期間の後、0.5μMアラキドン酸40μLを各ウェルに加えて最終濃度0.1μMを得た。この後プレートをかき混ぜて、丁度10分間(室温)インキュベートした後1M HCl(塩酸)25μLを各ウェルに加えて反応を停止させた。次に1M NaOH(水酸化ナトリウム)25μLを各ウェルに加えて溶液を中和した後、PGE2レベルを酵素免疫アッセイ(EIA)により測定した。
【0119】
本発明の化合物に対するミクロソームアッセイから、以下のCOX-2およびCOX-1の阻害に対するIC50値を得た。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩
[式中:
Xは、酸素またはNR2からなる群から選択され;
R1は、H、C1-6アルキル、1〜5個のフッ素原子で置換されたC1-2アルキル、C3-6アルケニル、C3-6アルキニル、C3-10シクロアルキルC0-6アルキル、C4-12橋かけシクロアルキル、A(CR5R6)nおよびB(CR5R6)nからなる群から選択され;
R2は、HおよびC1-6アルキルからなる群から選択され;
R3は、1〜5個のフッ素原子で置換されたC1-2アルキルであり;
R4は、C1-6アルキル、NH2およびR8CONHからなる群から選択され;
R5およびR6は、HまたはC1-6アルキルから独立に選択され;
Aは、不置換5員または6員へテロアリールまたは不置換6員アリールであるか、または1個以上のR7で置換された5員または6員ヘテロアリールまたは6員アリールであり;
R7は、ハロゲン、C1-6アルキル、1個以上のフッ素原子で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、1個以上のFで置換されたC1-6アルコキシ、NH2SO2、およびC1-6アルキルSO2からなる群から選択され;
Bは、
【化2】

からなる群から選択され;
R8は、H、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルOC1-6アルキル、フェニル、HO2CC1-6アルキル、C1-6アルキルOCOC1-6アルキル、C1-6アルキルOCO、H2NC1-6アルキル、C1-6アルキルOCONHC1-6アルキルおよびC1-6アルキルCONHC1-6アルキルからなる群から選択され;
nは、0〜4である]。
【請求項2】
式(IA)
【化3】

で表わされる化合物およびその医薬的に許容される塩
[上記式中、
R2は、HおよびC1-6アルキルからなる群から選択され;
R4は、C1-6アルキル、NH2およびR8CONHからなる群から選択され;
R5およびR6は、HまたはC1-6アルキルから独立に選択され;
Aは、C5-7シクロアルキルまたは不置換5員または6員へテロアリールまたは不置換6員アリールあるいは1個以上のR7で置換された5員または6員ヘテロアリールまたは6員アリールであり;
R7は、ハロゲン、C1-6アルキル、1個以上のフッ素原子で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、1個以上のFで置換されたC1-6アルコキシ、NH2SO2、およびC1-6アルキルSO2からなる群から選択され;
R8は、H、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルOC1-6アルキル、フェニル、HO2CC1-6アルキル、C1-6アルキルOCOC1-6アルキル、C1-6アルキルOCO、H2NC1-6アルキル、C1-6アルキルOCONHC1-6アルキルおよびC1-6アルキルCONHC1-6アルキルからなる群から選択され;
nは、0〜4である]。
【請求項3】
R2がHまたはメチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R4がC1-3アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R5およびR6がいずれもHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
AがC5-7シクロアルキルまたは
【化4】

からなる群から選択され、Aが不置換または1個または2個のR7で置換された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R7が、ハロゲン、C1-3アルキル、1〜3個のフッ素原子で置換されたC1-3アルキル、およびC1-3アルコキシからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R8が、C1-6アルキル、フェニルおよびアミノメチルからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
nが0〜2である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に定義され、かつ実施例1〜13に記載された式(I)で表わされる化合物。
【請求項11】
[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-メチル-(6-メチル-ピリジン-2-イルメチル)-アミン;
ベンジル-[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-アミン;
シクロヘキシル-[4-(5-メタンスルホニル-ピリジン-2-イル)-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル]-アミン。
【請求項12】
(A) 式(II) R1XHで表わされる化合物またはその保護誘導体と、式(III)
【化5】

で表わされる化合物を反応させること、その後必要な場合は
(B) 式(I)の化合物を別の式(I)の化合物に相互変換させること、および/または
(C) 式(I)の化合物の保護誘導体を脱保護させること、
を含んでなる、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法。
【請求項13】
(A) 式(IIA) HNR2(CR5R6)nAで表わされるアミンまたはその保護誘導体と、R3がCF3である式(III)
【化6】

で表わされる化合物を反応させること、その後必要な場合は
(B) 式(I)の化合物を別の式(I)の化合物に相互変換させること、および/または
(C) 式(I)の化合物の保護誘導体を脱保護させること、
を含んでなる、請求項2に記載の式(IA)の化合物の調製方法。
【請求項14】
1種以上の生理学的に許容される担体または賦形剤と混ぜられて、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または式(IA)の化合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
ヒト用医薬または獣医薬で使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または(IA)の化合物。
【請求項16】
COX-2が介在する病態を病むヒトまたは動物被験体の治療方法であって、該被験体に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または(IA)の化合物の有効量を投与することを含んでなる治療方法。
【請求項17】
炎症性疾患を病むヒトまたは動物被験体の治療方法であって、該被験体に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または(IA)の化合物の有効量を投与することを含んでなる治療方法。
【請求項18】
COX-2が介在する病態の治療用治療薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または(IA)の化合物の使用。
【請求項19】
炎症性疾患の治療用治療薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)または(IA)の化合物の使用。

【公表番号】特表2006−500372(P2006−500372A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−530197(P2004−530197)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009153
【国際公開番号】WO2004/018452
【国際公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】