説明

部品供給装置

【課題】複数の部品を順に次工程に排出していくものにおいて、投入された複数の部品を最後の1つまで確実に排出可能とする部品供給装置を提供する。
【解決手段】上側に開口すると共に傾斜する底面部121を備え、複数の鉄系の部品10を収容する収容部120と、底面部121の傾斜の下側に溜まる部品10を磁力によって吸着して吊り上げる吊り上げ部130と、吊り上げられた部品10を吊り上げ部130から引き離す分離部150と、分離部150によって引き離された部品10を所定位置へ排出する排出部160とを設け、吊り上げ部130は、非磁性体から成るカバー部133で磁石部132の下側面132aのみを露出させるように形成して、露出される下側面132aの面積を吊り上げ方向から見た部品10の投影面積よりも小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の部品から所定数ずつ取り出されて次工程で使用される作業所に適用して好適な部品供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の部品から1つずつ順に次工程に排出する部品供給装置として、例えば特許文献1に示されるように、椀状の振動ボウルを用いたものが知られている。
【0003】
振動ボウルは、下側に設置された振動体によって振動されるようになっている。また、振動ボウルの内周面には、下方から上方に向けて螺旋状に繋がる搬送路が形成されており、更に、搬送路の上方終端近傍には、部品排出用のステップ部が設けられている。そして、振動ボウル内に複数の部品が投入されて、振動体によって振動ボウルが振動されることによって、部品は螺旋状の搬送路を上方に向けて1列に移動され、更にはステップ部によって部品が1つずつ外部に排出されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−232493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような振動ボウルを用いた部品供給装置では、複数の部品が共に振動し、その振動が互いに影響し合うことで、複数の部品は搬送路を1列に並んで移動されることになるため、次工程への排出に伴って振動ボウル内の部品数が低下してくると、部品の移動速度は低下していき、更には排出速度が低下してしまう。よって、振動ボウル内の部品数がある程度低下した段階で、新たに部品を投入していく必要が生じ、1度投入されたものの、いつまでも振動ボウルから排出されない部品が残ってしまい、使用する部品の先入れ、先出しを行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、複数の部品を順に次工程に排出していくものにおいて、投入された複数の部品を最後の1つまで確実に排出可能とする部品供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、上側に開口すると共に傾斜する底面部(121)を備え、複数の鉄系の部品(10)を収容する収容部(120)と、
接続される糸状部(131)の動きに応じて部品(10)に対する位置を移動可能として、底面部(121)の傾斜の下側に溜まる部品(10)を磁力によって吸着して吊り上げる吊り上げ部(130)と、
吊り上げられた部品(10)を吊り上げ部(130)から引き離す分離部(150)と、
分離部(150)によって引き離された部品(10)を所定位置へ排出する排出部(160)とを有し、
吊り上げ部(130)は、部品(10)を吸着する磁石部(132)と、
非磁性体から成り、磁石部(132)の下側面(132a)のみを露出させて、磁石部(132)を覆うカバー部(133)とを備え、
露出される下側面(132a)の面積は、吊り上げ方向から見た部品(10)の投影面積よりも小さく設定されたことを特徴としている。
【0008】
これにより、吊り上げ部(130)は、収容部(120)内において底面部(121)の傾斜の下側に溜まる部品(10)を磁石部(132)によって吸着する。この時、磁石部(132)の下側面(132a)の面積の設定と、非磁性体によるカバー部(133)の設定とによって、複数の部品(10)のうちの1つの部品(10)のみを吸着することができる。そして、分離部(150)によって部品(10)は分離され、排出部(160)によって所定位置へ排出される。
【0009】
つまり、本部品供給装置(100)によれば、収容部(120)内に収容される複数の部品(10)を1つずつ、更には最後の1つまで、確実に所定位置へ排出することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、分離部(150)は、下側に開口部(151)を備え、この開口部(151)から糸状部(131)と共に吊り上げ部(130)を上側に向けて内部まで収容可能とする容器体(150)であり、
開口部(151)の外形寸法は、部品(10)の外形寸法よりも小さく設定されたことを特徴としている。
【0011】
これにより、吊り上げ部(130)を容器体(150)の内部まで収容することで、部品(10)を容器体(150)に当てて、磁石部(132)から引き離すことができる。よって、簡単な構造で吊り上げ部(130)からの部品(10)の分離を確実に行う分離部(150)とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、容器体(150)は、パイプ材から形成されたことを特徴としている。
【0013】
これにより、安価で入手しやすい材料を用いた容器体(120)とすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、吊り上げ部(130)における糸状部(131)の反吸着側は、所定部位(111)に固定されており、
収容部(120)と排出部(160)との間で先端部(141)が揺動する揺動部(140)を備え、
糸状部(131)の中間部が先端部(141)の揺動に沿って引っ張られることで、部品(10)に対する吊り上げ部(130)の位置が移動可能とされることを特徴としている。
【0015】
これにより、揺動部(140)という簡単な構造を設けることで吊り上げ部(130)の移動を可能とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、収容部(120)を振動させる振動部(170)を備えることを特徴としている。
【0017】
これにより、収容部(120)内において効果的に部品(10)を底面部(121)の傾斜の下側に溜まるようにすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、排出部(160)によって排出される部品(10)を検出する検出部(163)と、
吊り上げ部(130)による部品(10)の吊り上げから、検出部(163)による部品(10)の検出までの時間を計時する計時部と、
計時部によって計時される時間が予め定めた所定時間を越え、且つ、検出部(163)による部品(10)の検出がされない時に、警報信号を出力する警報出力部(183)とを備えることを特徴としている。
【0019】
これにより、作業者は、収容部(120)内の部品(10)がすべて吊り上げ部(130)によって排出部(160)の所定位置に排出された状態にあることを警報信号によって認識できるので、速やかに次のロットの部品(10)を収容部(120)に供給することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、排出部(160)によって部品(10)を所定数だけ所定位置へ排出することを1サイクルとして、所定数を設定する設定部(182)と、
所定位置へ排出される部品(10)の数をカウントするカウント部(163)と、
設定部(182)による所定数、およびカウント部(163)によるカウントが一致した時に、吊り上げ部(130)を停止状態にすると共に、所定数の部品(10)が所定位置から次工程に取り出された後に、吊り上げ部(130)を作動状態にする制御部(180)とを備えることを特徴としている。
【0021】
これにより、所定数ずつ部品(10)を取り出す定数取り出しの部品供給装置(100)として使用することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、収容部(120)は、着脱可能であり、部品(10)とは異なる他の部品を収容する他の収容部と交換可能であることを特徴としている。
【0023】
更に、請求項9に記載の発明では、吊り上げ部(130)、および分離部(150)は、着脱可能であり、部品(10)とは異なる他の部品の形状に応じて設定された他の吊り上げ部、および他の分離部と交換可能であることを特徴としている。
【0024】
これにより、仕様や種類の異なる他の部品に対しても容易に対応可能とする部品供給装置(100)として使用することができる。
【0025】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。第1実施形態は、所定製品の組付けに使用する所定数(例えば4個)のボルト(鉄系の部品)10を、1サイクルの組付け毎に作業者に対して排出するようにした定数取り出しの部品供給装置(以下、部品供給装置)100に適用したものである。
【0027】
尚、図1は部品供給装置100の外観形状を示す外観斜視図、図2は部品供給装置100を示す正面図、図3は図2中のIII部を示す拡大断面図、図4は図2中のIV方向から見た制御部180を示す矢視図である。
【0028】
部品供給装置100は、ベース部110に、ホッパ120、吊り上げ部130、揺動アーム140、分離パイプ150、排出シュート160、振動部170、および制御部180が設けられて形成されている。
【0029】
図1、図2に示すように、ベース部110は、直方体の箱状に形成されており、このベース部110の長手方向の一端側には上側に延びる柱部111が設けられている。また、ベース部110の略中央部には、後述するホッパ120を乗せるための受け部112が図示しないバネ部材を介して固定されている。そして、受け部112の下側には扁平円筒状のローラ113が固定されている。
【0030】
ホッパ120は、上側が開口し、複数のボルト10を収容する箱型の収容部であり、受け部112の上側に乗せられている。そして、ホッパ120の底面部121は、ベース部110の長手方向の一端側に向けて下側に傾斜するように形成されている。ホッパ120は、ベース部110(受け部112)に対して着脱可能であり、作業者の作業進捗や作業内容に応じて、別ロットのボルト10が収容されたホッパ、仕様の異なる別のボルトが収容されたホッパ、あるいはワッシャ、ナット等の別の部品が収容されたホッパと交換可能になっている。
【0031】
吊り上げ部130は、図3に示すように、マグネット(磁石部)132の外側にカバー部133が設けられた本体部の上端側に糸(糸状部)131が接続されて形成されている。
【0032】
マグネット132は、フェライト磁石等の永久磁石であり、円柱状を成して、この円柱状の軸線方向を上下方向として、下方に下側面132aを形成している。
【0033】
カバー部133は、マグネット132を覆う円筒状部と、この円筒状部から上側に延びる円錐状部とから成り、例えば、ステンレス材、アルミニウム材、真鍮材等の非磁性の特性を備える材料(非磁性体)から形成されている。カバー部133の円筒状部は、マグネット132に対して下側面132aのみを外部に露出させて他の外周面をすべて覆うようになっている。
【0034】
ここで、マグネット132の下側面132aの面積は、マグネット132の軸線方向(吊り上げ方向)から見たボルト10の投影面積よりも小さく設定されている。
【0035】
また、カバー部133の外径寸法は、後述する分離パイプ150の内径寸法よりも僅かに小さく設定されており、吊り上げ部130の本体部は、カバー部133の円錐状部によって、容易に分離パイプ150内に挿入可能となっている。
【0036】
そして、カバー部133の円錐状部の上側先端部に所定長さの糸131の一端側が接続されている。更に糸131の他端側は、後述する分離パイプ150内に挿通されて、柱部111の上側先端部(所定部位)に接続固定されている。糸131の中間部は、後述する揺動アーム140の先端部141、および分離パイプ150の位置で折れ曲がり、柱部111の上側先端部と先端部141との間が引っ張られた状態となり、また分離パイプ150から下側に向けて吊り上げ部130の本体部が垂れ下がる形となっている。
【0037】
尚、吊り上げ部130は、柱部111に対して着脱可能であり、作業者の作業内容に応じて、仕様の異なる別のボルト、あるいはワッシャ、ナット等の別の部品に対応する別の吊り上げ部と交換可能になっている。
【0038】
揺動アーム140は、摺動アーム143によって揺動作動することで、糸131の中間部に対する引っ張り位置を可変して、吊り上げ部130の本体部の位置を移動可能とする揺動部として形成されている。揺動アーム140は、細長の逆U字状に形成されており、逆U字状の2辺の下側が支持部142によってベース部110の長手方向の他端側に支持されている。また、揺動アーム140の上側の先端部141が図2中の矢印Aのように、ホッパ120の略上側と後述する排出シュート160の上側との間を、支持部142を中心として揺動可能となっている。
【0039】
揺動アーム140には、摺動アーム143が設けられて、上記の揺動作動が可能となっている。即ち、摺動アーム143は、細長の板状部材から成り、摺動アーム143の一端側は、支持部144によって揺動アーム140の中間部に回動可能に支持されている。また、摺動アーム143の他端側は、連結部145によって後述する振動部170のチェーン173に設けられてベース部110の長手方向に往復動(図2中の矢印B)する作動棒173aに連結されている。よって、摺動アーム143は作動棒173aによって、図2中の矢印Bのように略左右方向に摺動し、これに伴い、揺動アーム140が揺動するようになっている。
【0040】
分離パイプ150は、一旦、吊り上げ部130のマグネット132に吸着されたボルト10をこのマグネット132から引き離すための分離部であり、揺動アーム140の先端部141の下側に設けられている。分離パイプ150は、上側と下側とが開口し、吊り上げ部130の本体部を糸131と共に内部に収容可能とする容器体となっており、吊り上げ部130の本体部の上下方向の長さよりも長いパイプ材から形成されている。分離パイプ150は、揺動アーム140の先端部141の下側から更に下側に延びるように設けられている。
【0041】
分離パイプ150の下側に開口する開口部151の外形寸法、即ち、円形となる開口部151の内径寸法aは、ボルト10の外形寸法、即ち、ワッシャ10aの外径寸法bよりも小さくなるように設定されており、ボルト10は、分離パイプ150内に挿入されないようになっている。
【0042】
尚、分離パイプ150は、揺動アーム140に対して着脱可能であり、作業者の作業内容に応じて、仕様の異なる別のボルト、あるいはワッシャ、ナット等の別の部品に対応する別の分離パイプと交換可能になっている。
【0043】
排出シュート160は、揺動アーム140がベース部110の長手方向の他端側で略垂直方向に揺動した位置における分離パイプ150の下側(以下、排出シュート160の入口部とする)から、ベース部110の長手方向の他端側の外方の下側に向けて樋状に伸びて、吊り上げ部130から分離されたボルト10を作業者側(本発明の所定位置であり、以下、排出シュート160の出口部とする)へ排出する排出部である。尚、揺動アーム140の上記位置(図2中の実線)における分離パイプ150と排出シュート160の入口部との間には、ボルト10の飛び出しを防止する飛散防止板165が設けられている。
【0044】
排出シュート160には、出口部を開閉するシャッタ161が設けられている。シャッタ161は、L字状に折り曲げられた板部材から成り、L字状の短辺部が出口部に位置し、長辺部が排出シュート160の上側に位置するように配設され、長辺部の端部が排出シュート160の上側に回動可能に支持されている。
【0045】
シャッタ161のL字状の短辺部近傍の長辺部には排出シュート160の外側に沿うようにU字状を成すレバー部162の端部が固定されている。レバー部162のU字状の2辺は、排出シュート160の深さ寸法よりも大きくなるように(略2倍に)設定されている。シャッタ161は、通常は排出シュート160の出口部を閉塞する形となっており、作業者がレバー部162を上側に押し上げることで、回動されて出口部が開かれるようになっている。
【0046】
排出シュート160には、分離パイプ150で分離され、排出シュート160を通過するボルト10を検出する検出部としてのカウントセンサ163が設けられている。カウントセンサ163は、排出シュート160を順に通過していくボルト10を一つずつ検出してカウントするカウント部でもある。カウントセンサ163によって検出された検出信号(カウント信号)は、後述する制御部180に出力されるようになっている。
【0047】
また、排出シュート160には、作業者のレバー部162の操作によりシャッタ161が回動(開閉)されることで、接点スイッチ部が開閉されるリミットスイッチ164が設けられている。リミットスイッチ164によるシャッタ161の開閉状態を示す開閉信号は、後述する制御部180に出力されるようになっている。
【0048】
振動部170は、モータ171を駆動源として、駆動軸172、チェーン173、従動軸174を介してホッパ120の受け部112を振動させる振動手段として形成されている。
【0049】
モータ171は、シャフト171aを下向きにしてベース部110の一端側に配設されている。駆動軸172は、モータ171の下側で垂直方向に配設され、一端側はシャフト171aに接続されており、また他端側には歯車172aが設けられている。
【0050】
従動軸174は、受け部112の下側で垂直方向に配設され、一端側にはローラ113と接触する歯車174aが設けられており、また他端側には歯車174bが設けられている。そして、チェーン173が歯車172aと歯車174bとの間に掛けられている。チェーン173には作動棒173aが設けられており、作動棒173aはチェーン173と共に、図2中の矢印Bのように、ベース部110の長手方向に往復動する。
【0051】
よって、モータ171の駆動により、その駆動力は駆動軸172、チェーン173、従動軸174に伝達され、歯車174aが回転される。そして、接触するローラ113、更には受け部112が振動され、それに伴ってホッパ120が振動されるようになっている。また、モータ171の駆動により、作動棒173aが往復動されることで、この作動棒173aに連結される摺動アーム143が摺動され、揺動アーム140が揺動されるようになっている。
【0052】
制御部180は、排出シュート160の上側で、飛散防止板165の端部側に設けられており、図4に示すように、スイッチ181、設定部182、ブザー(警報出力部)183、および図示しない計時部を備えている。
【0053】
スイッチ181は、この部品供給装置100(モータ171、カウントセンサ161、リミットスイッチ164、制御部180)のON−OFFを設定するスイッチであり、作業者の手動操作によって電力の供給、停止が行われるようになっている。
【0054】
設定部182は、所定製品の1サイクルの組付けに使用されるボルト10の数(所定数、例えば4個)を作業者の手動操作によって設定する設定手段である。
【0055】
ブザー183は、作業者に対して、排出シュート160の出口部に所定数のボルト10が排出されて上記1サイクルの排出を完了したことを報せる完了信号(例えば、「ピッ」と言う音)を出力すると共に、ボルト10が排出シュート160の出口部に排出されないことを判定して、ホッパ120内のボルト10が空になったことを報せる警報信号(例えば、「ブー」と言う音)を出力する警報出力部である。
【0056】
また、図示しない計時部は、吊り上げ部130によるボルト10の吊り上げから、排出シュート160の出口部への排出までの1回分の所要時間を計時する計時手段である。
【0057】
制御部180は、作業者が入力する所定数、カウントセンサ163によって検出される検出信号(カウント信号)、リミットスイッチ164によって検出される開閉信号、計時部によって計時される所要時間、予め定められた所定時間(例えば、ボルト10の1個当たりの排出のための設定時間4秒×3=12秒)に応じて、モータ171の作動制御、およびブザー183の出力制御を行うようになっている(詳細後述)。
【0058】
次に、上記構成に基づく作動について説明する。作業者によって制御部180のスイッチ181がONされると、モータ171、および制御部180に電力が供給される。作業者は、所定製品の1サイクルの組付けに必要とされるボルト10の数(所定数4個)を設定して設定部182に入力する。
【0059】
そして、モータ171の駆動によって、チェーン173に設けられた作動棒173aが往復動し、摺動アーム143が摺動して、揺動アーム140が揺動する。また、モータ171の駆動によって、駆動軸172、チェーン173、従動軸174を介して歯車174aがローラ113に当接しながら回転する。また、制御部180の図示しない計時部が計時を開始する。
【0060】
揺動アーム140の先端部141が、排出シュート160の入口部の上側(図2中の実線の位置)にあると、柱部111と先端部141とが最も離れた位置関係となって、その間で糸131が引っ張られる長さも長くなり、吊り上げ部130の本体部は、分離パイプ150の内部に挿入された状態となっている。そして、揺動アーム140がホッパ120側(図2中の2点鎖線の位置)へ揺動していくと、柱部111と先端部141との間で糸131が引っ張られる長さが短くなり、吊り下げ部130の本体部は、ホッパ120の底面部121の傾斜の下側に溜まるボルト10に向けて下降していき、ボルト10はマグネット132に吸着される。
【0061】
尚、モータ171の駆動により歯車174aがローラ113に当接して回転することで、ローラ113および受け部112は振動され、更にホッパ120が振動され、ホッパ120内のボルト10は底面部121の傾斜の下側に向けて効果的に溜まる。
【0062】
ここで、マグネット132は、カバー部133によって下側面132aのみが露出するようになっており、また、下側面132の面積がボルト10の投影面積より小さく設定されており、更には、カバー部133が非磁性体によって形成されていることから、吊り上げ部130の本体部は、ホッパ120内の複数のボルト10のうち、確実に一つのボルト10のみを吸着する。
【0063】
そして、揺動アーム140が再び排出シュート160の入口部の上側に揺動していくと、柱部111と先端部141との間で糸131が引っ張られる長さが長くなり、吊り上げ部130の本体部は上昇していき、更には分離パイプ150の内部に挿入されていく。ここで、分離パイプ150の開口部151の内径寸法aは、ボルト10のワッシャ10aの外径寸法bよりも小さくなるように設定されていることから、ボルト10は分離パイプ150の開口部151に当たり停止する。この時、吊り上げ部130の本体部は、更に分離パイプ150の内部に挿入されていくため、ボルト10は、吊り上げ部130から分離される。
【0064】
分離されたボルト10は、飛散防止板165の間を落下して、排出シュート160の入口部から出口部に至る。カウントセンサ163は、排出シュート160を通過するボルト10を検出し、カウント信号として制御部180に出力する。
【0065】
そして、上記のボルト10の吊り上げ、分離、排出、検出の動作が繰り返され、カウントセンサ163によるボルト10のカウント信号が所定数(4個分)になると、制御部180は、ブザー183から完了信号を出力すると共に、一旦、モータ171の作動を停止させる。そして、作業者によってレバー部162が上側に押し上げられることでシャッタ161が開かれ、ボルト10が排出シュート160の出口部から取り出された時に、リミットスイッチ164から開信号が制御部180に出力され、この開信号によって制御部180はモータ171を再起動させる。作業者は、取り出した所定数のボルト10を用いて所定製品の組付けを行う。そして、モータ171の再起動により、再び所定数分のボルト10の吊り上げ、分離、排出、検出の動作が繰り返されていく。
【0066】
尚、上記の吊り上げ部130によるボルト10の吊り上げから、排出シュート160の出口部への排出までの1回分の所要時間が、予め定めた所定時間(設定時間4秒×3=12秒)を超えても、カウントセンサ163によるボルト10の検出(カウント)が成されないと、吊り上げ部130による吊り上げから排出までの動作を複数回(3回)行ってもボルト10の検出が成されないという状態になっており、即ちこれはホッパ120内のボルト10が空になったと判定して、制御部180はブザー183から警報信号を出力する。
【0067】
以上のように、本部品供給装置100においては、ボルト10を収容するホッパ120の底面部121を傾斜させ、吊り上げ部130のマグネット132を非磁性体のカバー部133によって覆うようにし、マグネット132の下側面132aのみが露出するようにし、更に下側面132aの面積をボルト10の吊り上げ方向から見た投影面積よりも小さくなるようにしているので、吊り上げ部130は、ホッパ120内において底面部121の傾斜の下側に溜まる複数のボルト10のうち1つのボルト10のみを吸着することができる。そして、分離部パイプ150によってボルト10は分離され、排出シュート160の出口部側へ排出される。
【0068】
つまり、本部品供給装置100によれば、ホッパ120内に収容される複数のボルト10を1つずつ、更には最後の1つまで、確実に排出シュート160の出口部側へ排出することができる。
【0069】
また、分離パイプ150の内径寸法aをボルト10のワッシャ10aの外形寸法bよりも小さくなるように設定しているので、吊り上げ部130の本体部を分離パイプ150の内部まで収容させることで、ボルト10を分離パイプ150に当てて、マグネット132から引き離すことができる。よって、簡単な構造で吊り上げ部130からのボルト10の分離を確実に行う分離部とすることができる。
【0070】
また、分離パイプ150をパイプ材から形成するようにしているので、安価で入手しやすい材料を用いた対応が可能となる。
【0071】
また、先端部141がホッパ120と排出シュート160との間で揺動する揺動アーム140を設けて、吊り上げ部130の糸131の中間部が揺動アーム140の先端部141によって引っ張られることで、吊り上げ部130の本体部が移動できるようにしており、簡単な構造での吊り上げ部130の移動対応を可能としている。
【0072】
また、振動部170を設けてホッパ120を振動させるようにしているので、ホッパ120内において効果的にボルト10を底面部121の傾斜の下側に溜まるようにすることができる。
【0073】
また、計時部による所要時間および所定時間の比較と、カウントセンサ163による検出状態とから、ホッパ120内のボルト10が空になったことを判定し、ブザー183から警報信号を出力するようにしているので、作業者は、速やかに次のロットのボルト10をホッパ120に供給することが可能となる。
【0074】
また、排出シュート160に排出されたボルト10がカウントセンサ163によって所定数カウントされた時に、吊り上げ部130を停止状態にし、更に、所定数のボルト10が排出シュート160から取り出された後に、吊り上げ部130を再び作動状態にするようにしているので、所定数ずつボルト10を取り出す定数取り出しの部品供給装置100として使用することができる。
【0075】
また、ホッパ120、吊り上げ部130、および分離パイプ150は着脱可能として、仕様の異なるボルト用、あるいは別部品(ワッシャ、ナット等)用のホッパ、吊り上げ部、および分離パイプと交換可能としているので、仕様や種類の異なる他の部品に対しても容易に対応可能とする部品供給装置100として使用することができる。
【0076】
(その他の実施施形態)
上記第1実施形態において、所定製品の1サイクルの組付け毎に作業者側に供給するボルト10の数(所定数)は、4つに限らず所定製品の組付けに必要とされる数に適宜設定可能である。
【0077】
また、ボルト10の分離部としてパイプ材から成る分離パイプ150を用いたが、例えば吊り上げ部130のマグネット132を電磁石として通電状態をOFFにすることでボルト10を分離するものとしても良い。
【0078】
また、揺動アーム140による吊り上げ部130の糸131の引っ張り状態を可変することで、吊り上げ部130の本体部の位置を移動可能となるようにしたが、例えば分離部として分離パイプ150を用いずに、吊り上げ部130に上記のような電磁石を使用して、揺動アーム140の先端部141に直接吊り上げ部130の本体部を接続したものとしても良い。
【0079】
また、ホッパ120に対する振動部170は、廃止したものとしても良い。これにより、ボルト10同士の干渉をなくして、ボルト10表面の傷付きをなくすことができる。
【0080】
また、カウントセンサ163、計時部を廃止して、ブザー183による警報信号の出力を廃止したものとしても良い。
【0081】
また、作業者側に所定数のボルト10を繰り返し供給する定数取り出しの部品供給装置100として説明したが、シャッタ161、カウントセンサ163、リミットスイッチ164、および揺動アーム140の停止、再起動の制御を廃止して、単純に1つずつボルト10を作業者側に供給するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】部品供給装置外観形状を示す外観斜視図である。
【図2】部品供給装置を示す正面図である。
【図3】図2中のIII部を示す拡大断面図である。
【図4】図2中のIV方向から見た制御部を示す矢視図である。
【符号の説明】
【0083】
10 ボルト(部品)
100 部品供給装置
111 柱部(所定部位)
120 ホッパ(収容部)
121 底面部
130 吊り上げ部
131 糸(糸状部)
132 マグネット(磁石部)
132a 下側面
133 カバー部
140 揺動アーム(揺動部)
141 先端部
150 分離パイプ(分離部、容器体)
151 開口部
160 排出シュート(排出部)
163 カウントセンサ(検出部、カウント部)
170 振動部
180 制御部
182 設定部
183 ブザー(警報出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に開口すると共に傾斜する底面部(121)を備え、複数の鉄系の部品(10)を収容する収容部(120)と、
接続される糸状部(131)の動きに応じて前記部品(10)に対する位置を移動可能として、前記底面部(121)の傾斜の下側に溜まる前記部品(10)を磁力によって吸着して吊り上げる吊り上げ部(130)と、
吊り上げられた前記部品(10)を前記吊り上げ部(130)から引き離す分離部(150)と、
前記分離部(150)によって引き離された前記部品(10)を所定位置へ排出する排出部(160)とを有し、
前記吊り上げ部(130)は、前記部品(10)を吸着する磁石部(132)と、
非磁性体から成り、前記磁石部(132)の下側面(132a)のみを露出させて、前記磁石部(132)を覆うカバー部(133)とを備え、
露出される前記下側面(132a)の面積は、吊り上げ方向から見た前記部品(10)の投影面積よりも小さく設定されたことを特徴とする部品供給装置。
【請求項2】
前記分離部(150)は、下側に開口部(151)を備え、この開口部(151)から前記糸状部(131)と共に前記吊り上げ部(130)を上側に向けて内部まで収容可能とする容器体(150)であり、
前記開口部(151)の外形寸法は、前記部品(10)の外形寸法よりも小さく設定されたことを特徴とする請求項1に記載の部品供給装置。
【請求項3】
前記容器体(150)は、パイプ材から形成されたことを特徴とする請求項2に記載の部品供給装置。
【請求項4】
前記吊り上げ部(130)における前記糸状部(131)の反吸着側は、所定部位(111)に固定されており、
前記収容部(120)と前記排出部(160)との間で先端部(141)が揺動する揺動部(140)を備え、
前記糸状部(131)の中間部が前記先端部(141)の揺動に沿って引っ張られることで、前記部品(10)に対する前記吊り上げ部(130)の位置が移動可能とされることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の部品供給装置。
【請求項5】
前記収容部(120)を振動させる振動部(170)を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の部品供給装置。
【請求項6】
前記排出部(160)によって排出される前記部品(10)を検出する検出部(163)と、
前記吊り上げ部(130)による前記部品(10)の吊り上げから、前記検出部(163)による前記部品(10)の検出までの時間を計時する計時部と、
前記計時部によって計時される時間が予め定めた所定時間を越え、且つ、前記検出部(163)による前記部品(10)の検出がされない時に、警報信号を出力する警報出力部(183)とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の部品供給装置。
【請求項7】
前記排出部(160)によって前記部品(10)を所定数だけ前記所定位置へ排出することを1サイクルとして、前記所定数を設定する設定部(182)と、
前記所定位置へ排出される前記部品(10)の数をカウントするカウント部(163)と、
前記設定部(182)による前記所定数、および前記カウント部(163)による前記カウントが一致した時に、前記吊り上げ部(130)を停止状態にすると共に、前記所定数の前記部品(10)が前記所定位置から次工程に取り出された後に、前記吊り上げ部(130)を作動状態にする制御部(180)とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の部品供給装置。
【請求項8】
前記収容部(120)は、着脱可能であり、前記部品(10)とは異なる他の部品を収容する他の収容部と交換可能であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の部品供給装置。
【請求項9】
前記吊り上げ部(130)、および前記分離部(150)は、着脱可能であり、前記部品(10)とは異なる他の部品の形状に応じて設定された他の吊り上げ部、および他の分離部と交換可能であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−91067(P2009−91067A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261300(P2007−261300)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】