説明

部品実装装置

【課題】部品供給装置の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができる部品実装装置を提供することを目的とする。
【解決手段】トレイ21を上下方向に複数段に積層して格納する格納部23から取り出されたトレイ21を格納部23と搭載ヘッドによる部品取り出し位置Pとの間で搬送するトレイ搬送部24において、基板搬送機構2に近接した側の先端部24aが、基板搬送機構2と部品供給部4Bとの間に設けられた作業ユニット配置スペース28の上方へ突出することが許容される構成とする。これにより、搭載ヘッドの動作ストロークを延長することなくトレイ21の全範囲を搭載ヘッドの取り出し可能範囲内に位置させることが可能となり、部品供給装置の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ供給装置によって供給されるトレイに収納された部品を搭載ヘッドによって取り出して基板に移送搭載する部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置において、半導体チップなどの部品を供給する方法として、トレイフィーダを用いる方法が知られている。このトレイフィーダは複数の部品を平面状に収納したトレイを多段に格納しておき、トレイを順次引き出して部品供給位置まで移動させることにより、部品を供給するものである(例えば特許文献1参照)。トレイによる部品供給方式では、部品は平板状の部品収納エリアに複数の部品が平面配列で収納されているため、トレイフィーダから引き出されたトレイを、部品搭載機構の搭載ヘッドによる部品の取り出し可能範囲内に位置させる必要がある。このため、トレイによる部品供給方式の対象となる部品実装装置においては、引き出されたトレイの搬送位置と部品搭載機構における搭載ヘッドのストロークとの関連を適正に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−201416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年部品実装ラインではフレキシブル生産に対応するため、ラインの汎用化が求められるようになっている。このため部品を供給するパーツフィーダとして、上述のトレイフィーダやテープに保持された状態の部品を供給するテープフィーダなどを必要に応じて使い分けることが可能な装着互換性が要求されている。しかしながら、従来のトレイフィーダにおいては、汎用型の部品実装装置にテープフィーダと装着互換性を持たせることが困難で、トレイフィーダがそのまま装着可能な機種が限定されていた。
【0005】
すなわち、テープフィーダにおいては搭載ヘッドによる部品取り出し位置はフィーダ本体の前端部に固定され、搭載ヘッドはこの部品取り出し位置まで移動すればよいのに対し、トレイフィーダを用いる場合には、複数の部品を収納したトレイの全範囲に搭載ヘッドが移動する必要があるため、搭載ヘッドの移動ストロークをテープフィーダを対象とする場合よりも大きく設定する必要があった。このため従来の実装ラインにおいては、トレイフィーダの装着を可能とするために搭載ヘッドのストロークを予め長く設定したトレイフィーダ対応機種を準備するなどの、個別対応を余儀なくされており、部品供給装置の装着互換性が損なわれて設備汎用化の要請に反することとなっていた。
【0006】
そこで本発明は、部品供給装置の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができる部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品実装装置は、トレイ供給装置によって供給されるトレイに収納された部品を搭載ヘッドによって取り出して基板に移送搭載する部品実装装置であって、前記基板を搬送して実装作業位置に位置決めして保持する基板位置決め部と、少なくとも前記トレイ供給装置を含む複数種類の部品供給装置が装着可能な部品供給部と、前記部品供給部から前記搭載ヘッドによって部品を取り出して前記基板に搭載する部品搭載機構と、前記基板位置決め部と前記部品供給部との間に設けられ、前記搭載ヘッドに保持された前記部品を
下方から撮像して認識する部品認識装置を少なくとも含み、前記部品搭載機構による作業動作において補助的に必要とされる機能を果たすために用いられる作業ユニットが着脱自在に配置される作業ユニット配置スペースとを備え、前記トレイ供給装置は、前記トレイを上下方向に複数段に積層して格納する格納部と、前記トレイを前記格納部と前記搭載ヘッドによる前記部品の取り出し位置との間で搬送するトレイ搬送部とを有し、前記トレイ搬送部において前記基板位置決め部に近接した側の先端部が、前記作業ユニット配置スペースの上方へ突出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トレイを上下方向に複数段に積層して格納する格納部から取り出されたトレイを格納部と搭載ヘッドによる部品取り出し位置との間で搬送するトレイ搬送部において基板位置決め部に近接した側の先端部が、基板位置決め部と部品供給部との間に設けられた作業ユニット配置スペースの上方へ突出することが許容される構成とすることにより、搭載ヘッドの動作ストロークを延長することなくトレイの全範囲を搭載ヘッドの取り出し可能範囲内に位置させることが可能となり、部品供給装置の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態の部品実装装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の部分平面図
【図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の部分断面図
【図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の側面図
【図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の部分断面図
【図6】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の部分断面図
【図7】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の動作説明図
【図9】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の動作説明図
【図10】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の動作説明図
【図11】本発明の一実施の形態の部品実装装置に装着されるトレイ供給装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2,図3を参照して、部品実装装置1の構造を説明する。なお図3は、図2におけるA−A断面を示している。図1において、基台1a上にはX方向に基板搬送機構2が配設されている。基板搬送機構2は部品が実装される基板3を搬送し、基板搬送機構2上に設定された実装作業位置に基板3を位置決めして保持する。したがって基板搬送機構2は基板3を実装作業位置において位置決めして保持する基板位置決め部となっている。基板搬送機構2の両側には基板3に実装される部品を供給する部品供給部4A,4Bが配置されている。部品供給部4A,4Bは、それぞれ基台1aを切り込んで設けられた台車収納部1bに、台車5A,5Bを着脱自在に収納した構成となっている。
【0011】
部品供給部4Aに収納される台車5Aの上部に設けられたフィーダ装着テーブル5aには、部品供給装置である複数のテープフィーダ6が並列して装着されている。フィーダ装
着テーブル5aの下方には、チップ型部品などの小型の部品を保持したキャリアテープを巻回収納したテープリール7が、それぞれのテープフィーダ6に対応して配列されている。テープリール7から引き出されたキャリアテープは、テープフィーダ6によってピッチ送りされ、これによりキャリアテープに保持された部品は、後述する部品搭載機構の搭載ヘッド17による部品取り出し位置へ供給される。
【0012】
部品供給部4Bに収納される台車5Bの上部に設けられたフィーダ装着テーブル5bには、部品供給装置であるトレイ供給装置20およびフラックス転写装置22が装着されている。トレイ供給装置20はバンプ付き部品25を収納したトレイ21を、搭載ヘッド17による部品取り出し位置に供給する機能を有している。すなわち、部品実装装置1は、少なくともトレイ供給装置20を含む複数種類の部品供給装置が装着可能な部品供給部4A,4Bを備えた構成となっている。そしてトレイ供給装置20とともに装着されるフラックス転写装置22は、バンプ付き部品25の基板3への搭載に先立って、バンプ付き部品25に形成されたバンプ25a(図4参照)などの接合用端子に塗布されるフラックス26を、塗膜の状態で供給する機能を有している。
【0013】
基台1aのX方向の一端部には、リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル8がY方向に水平に配設されている。Y軸移動テーブル8は水平方向に細長形状で設けられたビーム部材8aを主体としており、ビーム部材8aにはリニアレール8bが水平方向に配設されている。リニアレール8bには、リニアブロック9がY方向にスライド自在に嵌着している。リニアブロック9は、垂直姿勢で配設された矩形状の結合ブラケット10を介して、リニア駆動機構を備えたX軸移動テーブル13A,13Bと結合されている。
【0014】
X軸移動テーブル13A、13BはX方向に細長形状で設けられたビーム部材13aを主体としており、ビーム部材13aにはリニアレール14が水平方向に配設されている。リニアレール14には、垂直姿勢で配設された矩形状の結合ブラケット16がリニアブロック(図示省略)を介してX方向にスライド自在に装着されており、結合ブラケット16には搭載ヘッド17が装着されている。搭載ヘッド17は、結合ブラケット16に結合されたリニア駆動機構によってX方向に移動する。
【0015】
搭載ヘッド17は複数の単位搭載ヘッド18を備えた多連型ヘッドであり、それぞれの単位搭載ヘッド18の下端部に設けられたノズル装着部には部品を吸着して保持する吸着ノズル18aが装着されている。吸着ノズル18aは、単位搭載ヘッド18に内蔵されたノズル昇降機構によって昇降する。Y軸移動テーブル8、X軸移動テーブル13を駆動することにより搭載ヘッド17はX方向、Y方向に移動し、これにより各単位搭載ヘッド18は部品供給部4Aのテープフィーダ6、部品供給部4Bのトレイ供給装置20によって供給されるトレイ21から部品を取り出して、基板搬送機構2に位置決めされた基板3に移送搭載する。
【0016】
Y軸移動テーブル8、X軸移動テーブル13は、搭載ヘッド17を部品供給部4A,4Bと基板搬送機構2との間で移動させるヘッド移動機構を構成し、さらにこのヘッド移動機構および搭載ヘッド17は、部品供給部4A,4Bから部品を取り出して基板3に移送搭載する部品搭載機構を構成する。このヘッド移動機構による移動において、搭載ヘッド17は図2,図3に示す移動ストロークSの範囲でY方向に移動可能となっている。
【0017】
図2、図3に示すように、台車5Bのフィーダ装着テーブル5bに装着されたトレイ供給装置20は、トレイ21を複数段に積層して格納する格納部23と、トレイ21を格納部23とバンプ付き部品25を搭載ヘッド17によって取り出すための部品取出し位置Pとの間で搬送(矢印a、b)するトレイ搬送部24とを備えた構成となっている。部品取出し位置Pは、バンプ付き部品25を収納した全ての部品収納範囲が搭載ヘッド17のY
方向の移動ストロークSの範囲内に収まるように設定されている。そして格納部23から部品取り出し位置Pまで搬送されたトレイ21を対象として、図3に示すように、搭載ヘッド17によるバンプ付き部品25の取り出しおよび基板3への移送搭載が行われる(矢印c)。バンプ付き部品25が取り出されて空となったトレイ21*は、トレイ搬送部24によって格納部23に戻し入れされる。
【0018】
フラックス転写装置22は搭載ヘッド17のストローク範囲S内に配置されており、バンプ付き部品25の基板3への搭載に際しては、吸着ノズル18aにバンプ付き部品25を保持した搭載ヘッド17をフラックス転写装置22の上方に移動させる。図2に示すように、フラックス転写装置22は平滑な底面を有する略矩形箱形状の転写ステージ22aに成膜スキージ27を組み合わせて構成されている。転写ステージ22a内にフラックス26を供給した状態で、成膜スキージ27をX方向に移動させるスキージング動作を行うことにより、転写ステージ22a内には、フラックス26を所定の膜厚に延展した塗膜が形成される。そしてバンプ付き部品25を保持した搭載ヘッド17を転写ステージ22aに対して昇降させることにより、バンプ付き部品25のバンプ25a(図4参照)には、フラックス26が転写により塗布される。
【0019】
すなわち本実施の形態に示す部品実装装置1は、少なくともトレイ供給装置20を含む複数種類の部品供給装置が装着可能な部品供給部4A,4Bを備え、トレイ供給装置20によって供給されるトレイ21に収納されたバンプ付き部品25を、搭載ヘッド17によって取り出して基板3に移送搭載する構成となっている。そしてトレイ供給装置20は、部品供給部4Bに着脱自在に収納される台車5Bに装着されており、台車5Bにはトレイ21から取り出されたバンプ付き部品25にフラックス26を転写するためのフラックス転写装置22が併せて装着される形態となっている。
【0020】
図2に示すように、部品供給部4Bと基板搬送機構2との間には部品認識装置19が配設されており、部品供給部4Bからバンプ付き部品25を取り出した搭載ヘッド17が部品認識装置19の上方を移動することにより、部品認識装置19は搭載ヘッド17に保持された状態のバンプ付き部品25を撮像して認識する。バンプ付き部品25を基板3に実装する際には、この認識結果に基づいて部品搭載時の位置補正が行われる。
【0021】
基台1aの上面において基板搬送機構2と部品供給部4Bとの間には、波線枠で示す作業ユニット配置スペース28が設けられている。作業ユニット配置スペース28は上述の部品認識装置19のように、搭載ヘッド17によって部品供給部4Bからバンプ付き部品25などの部品を取り出して基板3に移送搭載する部品搭載作業において、補助的に必要とされる機能を果たすために用いられる作業ユニットが必要に応じて配置される。このような作業ユニットとしては、例えば部品認識装置19以外に、部品供給部4Bによって供給される複数種類の部品に対応した吸着ノズル18aを交換自在に収納するノズルストッカ29などがある。部品供給部4Bに台車5Aと同様に複数のテープフィーダ6が装着されるような場合には、作業ユニット配置スペース28内の鎖線枠で示す位置に、ノズルストッカ29が配置される。
【0022】
すなわち部品実装装置1には、搭載ヘッド17に保持されたバンプ付き部品25を下方から撮像して認識する部品認識装置19を少なくとも含み、部品搭載機構による作業動作において補助的に必要とされる機能を果たすために用いられる作業ユニットが必要に応じて着脱自在に配置される作業ユニット配置スペース28が設けられている。そして本実施の形態においては、図2に示すように、トレイ搬送部24において基板位置決め部である基板搬送機構2に近接した側の先端部24aが、作業ユニット配置スペース28の上方へ突出する形態となっている。
【0023】
部品供給部4Bにトレイ供給装置20が装着された台車5Bをセットする場合には、ノズルストッカ29など先端部24aと位置的に干渉する作業ユニットは取り外される。このように、基板搬送機構2の方向に突出したトレイ搬送部24を備えたトレイ供給装置20を、部品供給部4Bに選択的に装着する場合において、トレイ搬送部24の先端部24aが作業ユニット配置スペース28の上方に突出することを許容することにより、Y方向の寸法が大きいタイプのトレイ21を用いる場合にあっても、Y軸移動テーブル8の移動ストロークを延長することなく、トレイ21を搭載ヘッド17のY方向の移動ストロークS内に位置させることができる。
【0024】
次に、図4,図5,図6を参照して、トレイ供給装置20の詳細構成を説明する。なお図5、図6(a)は、図4におけるB−B矢視、C−C断面をそれぞれ示している。各図において、格納部23は平面視して矩形断面形状を有する箱形のケーシングであり、X平面を形成してY方向に対向する2つのガイド部材30a、Y平面を形成してX方向に対向する2つのガイド部材30bによって、上下方向に段積みされた状態の複数のトレイ21を保持格納する構成となっている。それぞれのガイド部材30bには、格納部23内においてトレイ21を上下方向に移動させるためのトレイ昇降機構36が配設されている。
【0025】
格納部23は、トレイ搬送部24による搬送レベルLによって上下に上格納部23A、下格納部23Bに分割されており、上格納部23Aにはバンプ付き部品25が収納された状態の複数のトレイ21が段積み状態で格納される。ガイド部材30bの上部は中央部が切除されており、マシンオペレータが複数の新たなトレイ21を上格納部23A内に上方から格納する際には、この切除部分を利用してトレイ21の両側面を把持することにより、トレイ21のハンドリングを行う。また下格納部23Bには、バンプ付き部品25が取り出された後の空の複数のトレイ21*が、底板30d上に段積み状態で順次格納される。
【0026】
図4、図5に示すように、トレイ21には複数の凹部21aが格子配列で形成されており、それぞれの凹部21aには下面にバンプ25aが形成されたバンプ付き部品25が収納されている。トレイ21の下面21eには、両端の縁部に沿って凸部21dが突設されており、以下に説明する搬送レール31上をトレイ21が搬送される際には、凸部21dを搬送レール31のスライド面31aに沿って摺接させる。
【0027】
トレイ搬送部24は、格納部23の前面(トレイ21の取り出し方向・・図4において右側)から、2条の搬送レール31を水平方向に延出させた構成となっている。搬送レール31は、格納部23から取り出されたトレイ21がスライドするスライド面31aを搬送レベルLに位置させて水平に設けられている。格納部23から取り出されたトレイ21は、凸部21dをスライド面31aに摺接させてY方向にスライドし、このときトレイ21の側端面は、搬送レール31に設けられたガイド面31b(図5)によってガイドされる。
【0028】
2条の搬送レール31の中間には、搬送駆動部40が配設されている。搬送駆動部40は、搬送レール31に沿って移動自在に設けられた搬送部材46を、ベルト44によってY方向に往復駆動する構成となっている。すなわち、格納部23の前面に配設されたモータ41の出力軸には駆動プーリ42が装着されており、駆動プーリ42とトレイ搬送部24の先端部24aに配設された従動プーリ43には、ベルト44がY水平方向に調帯されている。上側のベルト44には、結合部材45aを介して移動プレート45が結合されており、移動プレート45の上面には搬送部材46が固着されている。
【0029】
搬送部材46の格納部23側の側面には係止凹部46aが形成されており、トレイ21の前面に搬送部材46を接近させた状態では、トレイ21の取り出し方向における前面側
の係止端部21bは、搬送部材46の係止凹部46aに嵌合する。トレイ21の係止端部21bには、下面側に開口した形状のピン嵌合孔21c(被係合部)が形成されている。搬送部材46には、係止凹部46a内に下方から突出する係止ピン47(係合部)が、ピン駆動部47aによって突没自在に設けられている。係止端部21bを係止凹部46a内に嵌合させた状態でピン駆動部47aを駆動することにより、係止ピン47がピン嵌合孔21c内に突出し、これによりトレイ21の前面側は搬送部材46に係合される。すなわち、搬送部材46は、トレイ21の取り出し方向における前面側に設けられた被係合部と係合する係合部を備えた構成となっている。
【0030】
この状態でモータ41を正逆回転駆動することにより、ベルト44は往復動し(矢印d、e)、これにより、搬送部材46は係合状態にあるトレイ21とともにY方向に往復動する。すなわち上格納部23Aに段積みされた複数のトレイ21から切り出された最下段のトレイ21は、搬送部材46によって引き出されてスライド面31aに沿ってガイド面31bによってガイドされながら、図2に示す部品取り出し位置Pまで搬送される。そしてここで搭載ヘッド17によってバンプ付き部品25が取り出されて空になった後のトレイ21*は、トレイ搬送部24を逆送されて格納部23に戻し入れられ、下格納部23B内に格納される。
【0031】
すなわち、搬送駆動部40は、搬送部材46を搬送レール31に沿って駆動することにより、バンプ付き部品25を収納したトレイ21を格納部23から取り出し、さらにバンプ付き部品25が取り出された後の空のトレイ21*を格納部23内に戻し入れする機能を有している。なお、搬送駆動部40の構成としてここでは、モータ41によってベルト44を往復動させる構成例を示しているが、搬送部材46を直線往復動させることが可能な駆動機構であれば、ベルト駆動方式以外の各種の直動機構を採用してもよい。
【0032】
次に、格納部23においてトレイ21を上下方向に移動させるトレイ昇降機構36の構成について説明する。トレイ昇降機構36は、図4に示すように、両側のガイド部材30bに上側から順に配設されたトレイ切り出し部32、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34および段積み収納部35より構成される。トレイ切り出し部32、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34および段積み収納部35はいずれも爪駆動機構32b、33b、34b、35bによって突没する切り出し爪32a,上トレイ移動爪33a,下トレイ移動爪34aおよび段積み収納爪35aを1対で備えており、切り出し爪32a,上トレイ移動爪33a,下トレイ移動爪34aおよび段積み収納爪35aを格納部23内に突出させることにより、トレイ21を下面側から支持する機能を有している。
【0033】
ここで、図6(b)に示すように、トレイ切り出し部32、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34、段積み収納部35のうち、トレイ切り出し部32および段積み収納部35は、切り出し爪32a、段積み収納爪35aをトレイ21の下面21eに当接させることによりトレイ21を支持する。また上トレイ移動部33および下トレイ移動部34は、上トレイ移動爪33a、下トレイ移動爪34aをトレイ21の凸部21dの下面に当接させることによりトレイ21を支持するようになっている。
【0034】
図6(a)に示すように、トレイ切り出し部32、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34、段積み収納部35のうち、最上段に位置するトレイ切り出し部32は上下方向の位置が固定となっている。トレイ切り出し部32は、上格納部23Aに格納された複数の段積み状態のトレイ21のうち、最下段に位置する1枚のトレイ21のみを所定の固定された高さ位置において下方に切り出す機能を有している。上トレイ移動部33、下トレイ移動部34は、所定の高さ間隔Dを隔てて相対位置が固定されるとともに、第1昇降機構37によって昇降が自在となっている(矢印f)。これにより、上トレイ移動部33は、上格納部23Aにおいてトレイ切り出し部32によって切り出されたトレイ21を下方か
ら支持し、トレイ搬送部24による搬送レベルLまで移動させる機能を有している。また下トレイ移動部34は、バンプ付き部品25が取り出されて格納部23に戻し入れられて搬送レベルLに位置する空のトレイ21*を、下格納部23Bに移動させる機能を有している。
【0035】
ここで、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34の高さ間隔Dおよびトレイ切り出し部32の高さ位置は、下トレイ移動部34の高さ位置が搬送レベルLに一致した状態において、トレイ切り出し部32が上格納部23A内に格納された複数枚のトレイ21のうちの最下段に位置する1枚のトレイ21を切り出して上トレイ移動部33に支持させることができるような位置関係に設定される(図7(a)に示す状態参照)。さらに段積み収納部35は第2昇降機構38によって昇降が自在となっており(矢印g)、下トレイ移動部34によって下方に移動した空のトレイ21*を受け取って、下格納部23Bにおいて段積みする機能を有している。この段積み収納部35と下トレイ移動部34との位置関係において、段積み収納部35は下トレイ移動部34の高さ位置の上方まで移動できるようになっており、これにより下トレイ移動部34によって支持されたトレイ21を、段積み収納部35に受け渡すことが可能となっている。
【0036】
次に図7〜図11を参照して、格納部23におけるトレイ21の移動動作について説明する。まず図7(a)に示すように、上格納部23Aに上方から所定枚数のトレイ21を段積み状態で供給する(矢印h)。このとき、第1昇降機構37によって上トレイ移動部33、下トレイ移動部34をともに上昇させて、下トレイ移動部34を搬送レベルLに位置させる。そして上トレイ移動部33の上トレイ移動爪33aが突出した状態で、トレイ21を上方から上格納部23A内に載置する。これにより、上格納部23A内では段積みされた複数枚のトレイ21が上トレイ移動部33によって支持された状態、すなわち最下段のトレイ21の凸部21dを上トレイ移動爪33aによって支持した状態となる。
【0037】
次いで図7(b)に示すように、段積みされた複数枚のトレイ21から、最下段のトレイ21を切り出す。すなわち、まずトレイ切り出し部32の切り出し爪32aを突出させることにより、最下段のトレイ21の直上に位置するトレイ21の下面を切り出し爪32aによって保持する。そしてこの状態で、第1昇降機構37(図6)を駆動して上トレイ移動部33の高さ位置が搬送レベルLと一致するように、上トレイ移動部33および下トレイ移動部34を下降させる。これにより、上トレイ移動部33によって支持された状態の最下段のトレイ21は、搬送レベルLまで移動する(矢印i)。次いで、トレイ21の取り出しが行われる。すなわち図8(a)に示すように、搬送駆動部40のモータ41を回転駆動してベルト44をトレイ受け取り方向(矢印j方向)へ移動させ、係止ピン47をトレイ21に係合させる(図4参照)。
【0038】
そしてこの状態からモータ41を回転駆動して、ベルト44をトレイ取り出し方向(矢印k方向)へ移動させることにより、トレイ21は係止ピン47によって引き出され、搭載ヘッド17によってバンプ付き部品25を取り出すための部品取り出し位置Pに位置する。この後、搭載ヘッド17による部品取り出しが実行され、空状態となったトレイ21は、逆方向(矢印l方向)に搬送され、格納部23に戻し入れされる。すなわち図9(a)に示すように、予め第1昇降機構37を駆動して下トレイ移動部34の高さ位置を搬送レベルLに位置させた状態で、トレイ21を格納部23内に搬入する。これにより、空のトレイ21*は下トレイ移動部34の下トレイ移動爪34aによって凸部21dの下面を支持された状態となる。そしてこの状態では、上トレイ移動部33は、上格納部23Aにおいて段積みされた状態の複数枚のトレイ21の最下段のトレイ21を、上トレイ移動爪33aによって支持した状態となる。
【0039】
次いで第1昇降機構37を駆動して、図9(b)に示すように、上トレイ移動部33、
下トレイ移動部34を下降させる。これにより上トレイ移動部33によって支持された新たなトレイ21が搬送レベルLに移動する(矢印m)。また下トレイ移動部34によって支持された空のトレイ21*は、下格納部23Bへ下降して、段積み収納部35への受け渡し位置まで移動する(矢印n)。そしてここで、空のトレイ21*の段積み収納部35への受け渡しが行われる。すなわち第2昇降機構38を駆動して、図10(a)に示すように、段積み収納爪35aを突出させた状態の段積み収納部35を上昇させ(矢印o)、トレイ21*の下面を段積み収納爪35aによって支持することにより、下トレイ移動部34によって保持された状態のトレイ21*を下方から掬い取る。
【0040】
次いで、下トレイ移動爪34aを没入させた後、第2昇降機構38を駆動して、図10(b)に示すように、段積み収納部35を空のトレイ21*とともに下降させる。そしてトレイ21*を下格納部23Bの底板30d上に載置した後、図11に示すように、段積み収納部35を上昇させるとともに、上トレイ移動部33、下トレイ移動部34をともに上昇させる。これにより、図7(a)に示す状態に戻り、これ以降、同様の動作が反復して実行される。
【0041】
上記説明したように、本実施の形態に示す部品実装装置1は、トレイ21を上下方向に複数段に積層して格納する格納部23から取り出されたトレイ21を格納部23と搭載ヘッド17による部品取り出し位置Pとの間で搬送するトレイ搬送部24を有する構成において、このトレイ搬送部24において基板搬送機構2に近接した側の先端部24aが、基板搬送機構2と部品供給部4Bとの間に設けられた作業ユニット配置スペース28の上方へ突出することが許容される構成としたものである。
【0042】
これにより、搭載ヘッド17の動作ストロークを延長することなくトレイ21の全範囲を搭載ヘッド17の取り出し可能範囲内に位置させることが可能となる。したがって、実装対象の基板品種に応じて、トレイ供給装置20が装着された台車5Bやテープフィーダ6が装着された台車5Aなどの部品供給装置を交換して装着する際の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の部品実装装置は、部品供給装置の装着互換性を向上させて、設備汎用化を促進することができるという利点を有し、トレイに収納された形態で供給される部品を基板に実装する分野に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 部品実装装置
3 基板
4A,4B 部品供給部
5A,5B 台車
6 テープフィーダ
8 Y軸移動テーブル
17 搭載ヘッド
19 部品認識装置
20 トレイ供給装置
21 トレイ
21c ピン嵌合孔
22 フラックス転写装置
23 格納部
23A 上格納部
23B 下格納部
24 トレイ搬送部
24a 先端部
25 バンプ付き部品
26 フラックス
28 作業ユニット配置スペース
31 搬送レール
31a スライド面
32 トレイ切り出し部
33 上トレイ移動部
34 下トレイ移動部
35 段積み収納部
36 トレイ昇降機構
40 搬送駆動部
46 搬送部材
47 係止ピン
S 移動ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ供給装置によって供給されるトレイに収納された部品を搭載ヘッドによって取り出して基板に移送搭載する部品実装装置であって、
前記基板を搬送して実装作業位置に位置決めして保持する基板位置決め部と、少なくとも前記トレイ供給装置を含む複数種類の部品供給装置が装着可能な部品供給部と、前記部品供給部から前記搭載ヘッドによって部品を取り出して前記基板に搭載する部品搭載機構と、
前記基板位置決め部と前記部品供給部との間に設けられ、前記搭載ヘッドに保持された前記部品を下方から撮像して認識する部品認識装置を少なくとも含み、前記部品搭載機構による作業動作において補助的に必要とされる機能を果たすために用いられる作業ユニットが着脱自在に配置される作業ユニット配置スペースとを備え、
前記トレイ供給装置は、前記トレイを上下方向に複数段に積層して格納する格納部と、前記トレイを前記格納部と前記搭載ヘッドによる前記部品の取り出し位置との間で搬送するトレイ搬送部とを有し、
前記トレイ搬送部において前記基板位置決め部に近接した側の先端部が、前記作業ユニット配置スペースの上方へ突出することを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
前記トレイ供給装置は前記部品供給部に着脱自在にセットされる台車に装着されており、前記台車には前記トレイから取り出された部品にフラックスを転写するためのフラックス転写装置が併せて装着されることを特徴とする請求項1記載の部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−267651(P2010−267651A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115393(P2009−115393)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】